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特開2023-80904コインホルダー、及びコインホルダーの作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080904
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】コインホルダー、及びコインホルダーの作成方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 1/12 20060101AFI20230602BHJP
   A44C 3/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A47G1/12
A44C3/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194464
(22)【出願日】2021-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】520490761
【氏名又は名称】株式会社K4
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】栗山 二郎
【テーマコード(参考)】
3B111
3B114
【Fターム(参考)】
3B111BA03
3B111BC01
3B111BE03
3B114AA01
3B114AA14
3B114BF03
3B114JB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コインをコイン枠に嵌入した後、コインにダメージを与えることなく、装飾部材をコイン枠にロウ付けする手段を提供する。
【解決手段】コイン1と、コイン1を収容し外周に装飾部材がロウ付けされるコイン枠2と、コイン枠2に嵌入され、コイン1の表裏両面を封止する透明耐熱性素材3a、3bとを備え、コイン枠2は、その下端周縁内側に、透明耐熱性素材3a、3bの周縁と下端周縁内側とを密着させる接着剤の溜り部9と、その上端周縁に、所定の治具で透明耐熱性素材3a、3bとコイン1とを封止可能な折り曲げ部7とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインと、前記コインを収容し外周に装飾部材がロウ付けされるコイン枠と、前記コイン枠に嵌入され、前記コインの表裏両面を封止する透明耐熱性素材とを備え、
前記コイン枠は、その下端周縁内側に、前記透明耐熱性素材の周縁と前記下端周縁内側とを密着させる接着剤の溜り部と、その上端周縁に、所定の治具で前記透明耐熱性素材と前記コインとを封止可能な折り曲げ部とを有することを特徴とするコインホルダー。
【請求項2】
前記透明耐熱性素材の周縁と前記下端周縁内側とが、前記溜り部とその周辺に塗布された接着剤により密着され、前記折り曲げ部の周縁内側と前記透明耐熱性素材の周縁とが接着剤により密着されていることを特徴とする請求項1に記載のコインホルダー。
【請求項3】
前記透明耐熱性素材が、ジルコニアであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコインホルダー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のコインホルダーの外周に装飾部材がロウ付けされた装飾部材付コインホルダー。
【請求項5】
上端周縁に所定の治具で折り曲げ可能な折り曲げ部と下端周縁の内側に、接着剤の溜り部とを有するコイン枠に、透明耐熱性素材で挟持したコインを嵌入し、
前記接着剤の溜り部とその周辺に塗布された接着剤により、前記透明耐熱性素材の周縁と前記コイン枠の下端内側周縁とを密着し、
前記折り曲げ部を所定の治具で折り曲げる際に、前記折り曲げ部の内側周縁と前記透明耐熱性素材の周縁とを接着剤で密着し、
前記コイン枠に前記耐熱性素材で挟持されたコインが嵌入されたコインホルダーの外周に装飾部材をロウ付けし、
前記装飾部材が接合された装飾部材付コインホルダーを洗浄して仕上げることを特徴とする装飾部材付コインホルダーの作成方法。
【請求項6】
前記透明耐熱性素材が、ジルコニアであることを特徴とする請求項5に記載の装飾部材付コインホルダーの作成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装身具に用いられる装飾部材付コインホルダーに関し、特にコインが嵌入されたコイン枠(コインホルダー)の外周に装飾部材をロウ付けすることができるコインホルダー、及びそのコインホルダーの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネックレス、ペンダント、ブレスレット、ブローチ等の装身用アクセサリーには、コインホルダーを用いたものが少なくない。これは、金貨、銀貨、記念コインや、欧米でラッキーアイテムとして知られる6ペンスコイン等をホルダーに収蔵して、人体への取付け具により、装身具として用いるものである。
【0003】
かかるコインホルダーは、コインをほぼ隙間なく収容できる形状及び大きさであって、コイン両面のほぼ全体(一部外縁部を除いて)を視認できるように構成した、貴金属性の枠体(本明細書では「コイン枠」という)にコインを入れ、嵌入手段により脱落しないように封入してなるものである。封入手段には、通常は、コイン枠側面の上端(嵌入側端部)の数か所に爪状突起を設け、この爪状突起を内側に折り曲げて、コインの脱落を防ぐという方法がとられることが多い。
【0004】
また、単にコインをコイン枠に入れたのみでは、アクセサリーとしての審美的評価が十分高くない場合も考えられる。そのため、コイン枠の外周及び外縁を覆うように、飾り物(本明細書では「装飾部材」という)が取り付けられることも多い。通常、この装飾部材は美的な外形を持つ貴金属等の装飾体で、多くの場合コイン枠にロウ付け、例えば銀の飾り物であれば銀ロウ付け、金の飾り物であれば金ロウ付け等で取り付けられる。
【0005】
従来から、コインホルダーの構造や作成方法の改善に関して、種々の提案がなされている(特許文献1~4)。例えば、特許文献1には、コインの両側又は片側に、透明強化ガラス又は透明樹脂板からなるカバー体を装着してなるコインホルダーが開示されている。
【0006】
特許文献2には、コインの着脱をワンタッチでおこなうことができ、吊下用リングの向きが一定であるのみならず、保持されたコインの脱落がなく、かつ製造工程も極めて少ないコインホルダーが開示されている。また、特許文献3には、コイン枠の側面内周にひだ状の凹凸を設け、中のコインが回動しないようにしたコイン状装飾体ホルダーが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献4には、装飾品を展示するに際して、装飾品の表裏や、天面・底面をいちどきに見ることができ、装飾品をあたかも宙に浮いたように視認できるように保持する装飾品ホルダーが開示されている。
しかしながら、これらの先行技術は、以下に述べる本発明の課題の解決に資するような内容を持つものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭60-164909号公報
【特許文献2】実用新案平5-23042号公報
【特許文献3】特許第2722184号公報
【特許文献4】特許第3656753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したコイン枠に装飾部材をロウ付けで接合してなるコインホルダーにおいては、従来はまずコイン枠に装飾部材をロウ付けし、その後コイン枠にコインを嵌入して制作する必要があった。その理由は、ロウ付けの際の熱で、コインに変形・変色等のダメージが生じるためである。
【0010】
すなわち、装飾部材をコイン枠に接合する方法として、強い加熱を必要としないハンダ付けや接着剤による接合では、接着強度が不十分であり、かつ経年劣化の可能性も高いので、ロウ付けによらざるを得ない。ロウ付けは、被接合体をガスバーナーで加熱して行われる。ガスバーナーの火炎温度は、1300℃程度であり、被接合体は1000℃程度もしくはそれ以上に加熱される。
【0011】
コインの材質として、金、銀、青銅、黄銅、白銅などが多く用いられるが、これらはいずれも融点が900~1100℃程度の金属である。したがって、ロウ付けの際にコインに変形や変色が生じることは避け難い。本発明者らの知見によれば、ガラス等の保護カバーを用いても、コインが受けるダメージはほとんど軽減されない。
【0012】
一方、下記のような理由により、コインをコイン枠に嵌入した後、装飾部材をコイン枠にロウ付けする方法に対する強いニーズがある。その第一の理由は、購買者が店頭で商品のコインホルダーを選択する際の嗜好の問題である。例えば、予めコイン枠に装飾部材が接合されている場合は、コインが気に入っても、装飾部材が気に入らないというケースや、逆に装飾部材のデザインが気に入っているのに、コインが気に入らないというケースも生じうる。
【0013】
これに対して、コイン枠にコインが入ったコインホルダーと、装飾部材をそれぞれ独立の商品として、店頭に陳列展示し、購買者が自分の好みにより、コイン(コインホルダー)と装飾部材をそれぞれ独立に選んで、任意に組み合わせたものを接合できるようにすれば、多様な購買者の嗜好により広く答えられ、購買意欲が増すことが期待される。そのためには、コインをコイン枠に嵌入した後、コインにダメージを与えることなく、装飾部材をコインホルダーにロウ付けする(コイン枠にロウ付けする)技術の確立が必要である。これが、コインホルダーに装飾部材をロウ付けする方法が必要な第一の理由である。
【0014】
コインをコイン枠に嵌入した後(コインホルダー)に、装飾部材をコイン枠にロウ付けする方法が必要な第二の理由は、コインの嵌入の手間の問題である。装飾部材の接合前にコインを嵌入する場合は、コイン枠の嵌入側端部の上部全周を治具により内側に折り曲げて(コイン枠の側面は低高薄肉円筒で形成されていることが多い)、コインを嵌入することができる。これに対して、予め装飾部材を接合したコイン枠では、装飾部材が邪魔になるため、治具を使ってコイン枠の嵌入端全周を加工するということができない。
【0015】
そのため、この場合は、嵌入端の数か所に爪状突起を設けて、これを人力で内側に折り曲げてコインを嵌入する。その際、爪によりコインに傷がつかないように、コイン面にマスキングテープを貼り、折り曲げ後にこのマスキングテープを除去しなければならない。この作業には意外に手間がかかり、嵌入に要する時間が、装飾部材が接合されていない場合の数倍になる。従って、作業の手間という観点からも、コインをコイン枠に嵌入した後、コインにダメージを与えることなく、装飾部材をコイン枠にロウ付けする技術の確立が望まれる。
【0016】
さらに、従来技術においては、コインをコイン枠に嵌入した後(コインホルダー)では、洗浄による仕上げができないという問題がある。これはコインとコインを挟持する保護ガラスを嵌入した後に洗浄すると、粘着性の洗浄液がコインと保護ガラスの間に入り、コインを汚してしまうためである。このため、コインとその保護ガラスの嵌入後に洗浄・仕上げを行うことのできるコインホルダーの技術の確立が望まれている。
上述したように、本発明の課題は、コインを収容するコイン枠と、コイン枠にロウ付けされた装飾部材とを備えたコインホルダーにおいて、コインをコイン枠に嵌入した後、コインにダメージを与えることなく、装飾部材をコイン枠にロウ付けでき、かつコインの嵌入後に洗浄・仕上げを可能とする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明は、コインと、前記コインを収容し外周に装飾部材がロウ付けされるコイン枠と、前記コイン枠に嵌入され、前記コインの表裏両面を封止する透明耐熱性素材とを備え、
前記コイン枠は、その下端周縁内側に、前記透明耐熱性素材の周縁と前記下端周縁内側とを密着させる接着剤の溜り部と、その上端周縁に、所定の治具で前記透明耐熱性素材と前記コインとを封止可能な折り曲げ部とを有することを特徴とするコインホルダーである。
【0018】
上記折り曲げ部の周縁内側と前記透明耐熱性素材の周縁とが、溜り部とその周辺に設けられる接着剤により密着され防水構造となる。また、上端の耐熱性素材は上記折り曲げ部の内側に施す接着剤により密着され防水構造となる。さらに本発明のコインホルダーは、コインを透明耐熱性素材、例えばジルコニアで挟持しているので、ロウ付けの種類に関わらずロウ付け時の熱による変色・変形等を防ぐことができる。
【0019】
また、本発明のコインホルダーの作成方法は、上端周縁に所定の治具で折り曲げ可能な折り曲げ部と下端周縁の内側に、接着剤の溜り部とを有するコイン枠に、透明耐熱性素材で挟持したコインを嵌入し、
前記接着剤の溜り部とその周辺に塗布された接着剤により、前記透明耐熱性素材の周縁と前記コイン枠の下端内側周縁とを密着し、
前記折り曲げ部を所定の治具で折り曲げる際に、前記折り曲げ部の内側周縁と前記透明耐熱性素材の周縁とを接着剤で密着し、
前記コイン枠に前記耐熱性素材で挟持されたコインが嵌入されたコインホルダーの外周に装飾部材をロウ付けし、
前記装飾部材が接合された装飾部材付コインホルダーを洗浄し仕上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
透明耐熱性素材の一つである透明耐熱性素材セラミックスやジルコニアは、耐熱性と断熱性に優れるため、ロウ付けのガスバーナーの高熱によっても、それ自身が変化しないのみならず、ガスバーナーの熱のコインへの熱伝達を防ぐことができる。そのため、コイン枠にコインを嵌入した状態で、装飾部材をコイン枠にロウ付けしても、コインの温度はあまり高くならず、その変形・変色等のダメージがほとんど無いことが確かめられている。
【0021】
また、透明耐熱性素材の中でも、ジルコニアは溶融温度が2700℃以上と耐熱性が高いのみならず、熱伝導率が鋼の1/10以下と極めて低いため、本発明の目的に最も好適であることが見出された。これにより、コインにまったくダメージを与えずに、装飾部材のロウ付けをすることが、より確実に行えるようになった。さらに、本発明のコインホルダーは防水構造であることから、従来は不可能であったコインホルダーに装飾部材をロウ付けした後の最終工程において、磨き・洗浄の仕上げを行うことができる。これにより、コインや装飾部材の汚れ、傷の発生を大幅に軽減することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の望ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施例であるコインホルダーの外観写真である。また図2は、このコインホルダーの各部品を分解して示す側面図である。
【0023】
図2に見られるように、このコインホルダイー10は、コイン1、コイン枠2、透明耐熱性素材(以下、透明耐熱性セラミックス円板)3a,3bから構成されている。透明耐熱性セラミックス円板3は、コインをロウ付けの熱から保護するカバー、及び防水構造としての役割を担うものである。
以下、各部品について、順次詳細に説明する。
【0024】
図3は、コイン枠の形状・寸法を示す図で、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)のA―A断面図で、図3(b)には寸法を記載している。
このコイン枠2は、側面が短高(3mm程度)の薄肉円筒胴部5からなり、その底部には張出し部6が設けられ、底部中央は穴あきで、中のコインの裏面のほぼ全体(外縁近くの一部を除く)を視認できるようになっている。また、枠上面は開放されていて、ここからコイン等を嵌入する。薄肉円筒胴部5と張り出し部6と接合周縁には、接着剤の溜り部9が形成されている。張り出し部6に載置され薄肉円筒胴部5に接する透明セラミックス円板3bは、接着剤によりコイン枠2と密着される。かかる密着と溜り部6とにより、洗浄工程における洗浄液の下面からの侵入が防止される。なお、接着剤はロウ付けの高温に影響を受けない耐熱性の接着剤が好適である。
【0025】
本発明において、薄肉円筒部5の直径や高さは、中に入れるコイン1のサイズに応じて適宜変更すればよい。また、薄肉円筒胴部5も、円筒状に限る必要はなく、コインを隙間なく収容できる形状及び大きさであって、前記コイン両面のほぼ全体(一部外縁部を除いて)を視認できるように構成したものであればよい。
【0026】
本実施例においては、コイン枠の材質にプラチナを用いているが、材質はこれに限る必要はなく、ロウ付けの熱に耐えることができ、ある程度の審美性を持つものであればよい。ただし、ロウ付けするという観点から、一般的には金属製のものを用いる。
【0027】
次に図2に示す透明耐熱性素材である透明セラミクス円板3について説明する。耐熱性の透明耐熱性セラミックス材料としては、例えば、石英ガラス(SiO2)、コランダム(結晶性Al2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、YAG(3Y2O3・5Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)などがあげられる。これらの中で、石英ガラスは、使用温度の上限が1000℃程度で、耐熱性が十分とは言えない。コランダム、酸化イットリウム、YAGは、融点は1900~2500℃で、耐熱性に問題は無いが、熱伝導率が11~27W/m・Kで、鋼の熱伝導率(約40W/m・K)の1/2~1/3程度の値であり、断熱性の面で十分とは言い難い。
【0028】
これに対して、ジルコニアは融点が2700℃以上、熱伝導率が3W/m・K程度と鋼の10分の1以下の値であり、耐熱性及び断熱性いずれの面でも申し分ない。また、ジルコニアは、比較的多用されているセラミックスで、入手のし易さにもさほど問題がない。したがって、本発明に用いる透明耐熱性セラミックスとして、ジルコニアが最も好適といえる。
【0029】
本発明において、透明耐熱性セラミックス円板3の厚みは1~2mmであることが望ましい。これが1mm未満では、断熱性が不十分であり、2mmを超えても、耐熱性や断熱性が頭打ちになる反面、コインホルダーの重量や材料費が大きくなって好ましくないためである。
【0030】
本実施例においては、透明耐熱性セラミックス円板3は、平板状のものを用いているが、これに限る必要はなく、例えば表面が僅かに外側に張り出したレンズ状のものであってもよい。円板の語はこれらの板状のも含む意味である。
【0031】
図4は、コイン枠2にコイン1、及びコイン1の表裏両面に透明耐熱性セラミックス円板3を封入した状態を示す図で、図4(a)はコイン1、透明耐熱性セラミックス円板3を嵌入し、折り曲げ部7を折り曲げる前の状態を示す断面側面図、図4(b)は折り曲げ部7を折り曲げた状態を示す断面側面図、図4(c)は、図4(b)の斜視図である。
【0032】
まず、図4(a)に示すように、コイン枠2の上端が開放された状態で、コイン1及び透明耐熱性セラミックス円板3bを所定の配列で、コイン枠2内に嵌め込む。なお、コイン枠1の下端周縁には、事前に接着剤を溜り部9に溜まるように厚めに塗布しておき、コイン枠1の下端周縁と透明耐熱性セラミックスの周縁とを固着させる。コイン枠1の薄肉円筒胴部5と張り出し部6との接合部周辺に接着剤の溜り部9が必要とされるのは、透明耐熱性セラミックス円板3を嵌入した後は、その周辺に接着剤に再塗布を行うことができないためである。これに対して、コイン枠2の上端周辺の折り曲げ部7と透明耐熱性セラミックス円板3との接合部は、折り曲げ後においても接着の悪い箇所については、そこをシールするように接着剤を再塗布することができる。
【0033】
本実施例では、コイン枠2の上端全周にわたって折り曲げ部7を設けているが、接着剤の塗布の仕方(防水構造となるように薄肉円筒胴部5と透明耐熱性セラミックス円板3との隙間を接着剤で充填する等)により、コイン枠2の上端に所定の間隔で複数の切り欠き部を設け、切り欠かれていない部分のみ折り曲げ部7とするような嵌入の仕方であってもよい。折り曲げ部7の幅は、1~2mm程度でよい。
【0034】
次いで、透明耐熱性セラミックス円板3aを嵌め込み、コイン枠上端周縁と折り曲げ部7とに接着剤を塗布し、図4(b)に示すように、コイン枠2の上端の折り曲げ部7を、治具を用いた一種のプレス加工で 内側に折り曲げて透明耐熱性セラミックス3とコイン1とを封入する。本実施例においては、透明耐熱性セラミックス円板3a、3bでコインの両面を挟んでいる。これは、ロウ付けの際に、コイン枠の上下両方からガスバーナーで加熱されることを想定しているためである。
【0035】
図5は、本実施例における装飾部材の形状を示す図で、図5(a)は平面図、図5(b)は側面図である。装飾部材4の内壁8は、コイン枠2の側面形状に沿うようにほぼ同径の円筒状に加工されている。また、装飾部材4の内壁の高さhは、コインを嵌入した時のコイン枠の高さとほぼ同じになるように制作されている。
【0036】
装飾部材4は、主にこれを作成するものの美的創造力に依存するため、その形状・模様等は多種多様であり、本実施例の形状はほんの一例に過ぎない。また、その材質も、貴金属やセラミックス等が多く用いられるが、ロウ付けの熱に耐える耐熱性とある程度の美観を有するものであれば特に限定する必要はない。
【0037】
図6は、コイン枠2と装飾部材4を接合する部分の断面図である。組立の際には、コイン枠2を装飾部材4に挿入する。コイン枠2の外面は、装飾部材4の内壁面8にほぼ隙間なく嵌合する。また、装飾部材の内壁面8の上端が、コイン枠2の上面(折り曲げ部の上面)と同じ高さになるようにする。この状態で、装飾部材4をコイン枠2にロウ付けで接合する。ロウ付けは、ガスバーナーで接合部が赤熱状態になるまで加熱しておき、棒状のロウ材料の先端を加熱・溶融させて、例えば図6に矢印で示すような部位にロウを供給する。これにより、装飾部材4とコイン枠2の強固な接合が可能となる。
【0038】
ただし、装飾部材4にはこれを装身具として使うための取り付け部(図示していない)が必要である。例えば、ネックレスやペンダントにする場合は、首周りの鎖への取り付け部が、ブスレットにする場合は、手首回りのバンドへの取り付け部が、ブローチにする場合は、衣服に係合するピン止め部が必要である。
【0039】
図7は、本発明の方法と従来法での装飾部材付コインホルダーの作成方法の比較を示すブロック図で、図7(a)は本発明の方法、図7(b)は従来法の工程を示す。
図7(a)の本発明の方法では、コイン枠の下端周縁と溜り部7に接着剤を塗布する工程(S1)、コイン枠2に透明耐熱性セラミックス円板3bをコイン枠2に嵌入する工程(S2)、コインの嵌入工程(S3)、コイン枠2に透明耐熱性セラミックス円板3aをコイン枠2に嵌入する工程(S4)、コイン枠2の上端周縁と折り曲げ部7に接着剤を塗布する工程(S5)、治具によりコイン枠の上端部の折り曲げ部7を折り曲げる工程(S6)、ここまでの工程でコインホルダーが完成する。そして、コイン枠2に装飾部材をロウ付けする工程(S7)、コイン枠にコインと透明耐熱性セラミックスが封入されたコインホルダー10と装飾部材4とを磨き・洗浄・仕上げ工程(S8)で、装飾部材付コインホルダーが完成する。本発明のコインホルダーは、防水構造であることから、洗浄の際に洗浄液がコインと透明耐熱性セラミックス円板3a、3bとの間に入ることがないことから、最終工程で磨きと洗浄とを行うことができる。
【0040】
これに対して、図7(b)の従来法では、コイン枠2に装飾部材4をロウ付けする工程(S1)、コイン枠と装飾部材の磨き・洗浄、仕上げ工程(S2)を行う。装飾部材4をコイン枠2にロウ付けする際に、ロウ付けの熱でコインと保護用透明ガラスとが変形変色する。また従来法ではコインと保護ガラスの嵌入後では、防水構造でないため洗浄と仕上げができない。このため、コインを嵌入する前に装飾部材4をコイン枠2にロウ付けする必要があり、かかるロウ付けによる汚れを洗浄するため、ロウ付け後に洗浄と仕上げの工程が必要となる。そして、コイン枠にコインを嵌入する工程(S4)、コイン枠の爪倒し工程(S6)、洗浄液が入らないように洗浄する工程(S7)、そして磨き仕上げの最終の工程(S8)で、装飾部材付コインホルダーが完成する。
【0041】
上記従来工程において、爪倒しは熟練のいる作業であり、この作業は治具を使って行うことが出来ず、非常に時間のかかる厄介な作業になっている。また、コイン枠の内部に洗浄液が入らないよう細心の注意を持って洗浄しなければならず、ユーザも防水構造でないことに留意した取扱いを行わなければならない。しかし、本発明のコインホルダーの作成方法により、上述した厄介かつ留意の必要な作業手間が大幅に軽減されることになった。また、防水構造により、水回りにおける取扱いに留意する必要が無い等、その取扱いの恩恵を受けることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施例であるコインホルダーの外観写真である。
図2】本実施例のコインホルダーの各部品を分解して示す側面図である。
図3】本実施例におけるコイン枠の形状・寸法を示す図である。
図4】本実施例においてコイン枠にコイン及びセラミックス円板を嵌入・嵌入した状態を示す図である。
図5】本実写例における装飾部材の形状を示す図である。
図6】本実施例におけるコイン枠と装飾部材を接合する部分の断面図である。
図7】本発明の方法と従来法でのコインホルダーの作成工程の比較を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1:コイン
2:コイン枠
3,3a,3b:透明耐熱性セラミックス円板
4:装飾部材
5:薄肉円筒胴部
6:張り出し部
7:折り曲げ部
8:装飾部材の内壁面
9:溜り部
10:コインホルダー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7