(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080910
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散ペースト、カーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法、合材ペースト、リチウムイオン電池正極用電極及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230602BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230602BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230602BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20230602BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01B1/24 A
H01B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194478
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】市 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 有志
【テーマコード(参考)】
5G301
5H050
【Fターム(参考)】
5G301DA19
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050DA04
5H050DA10
5H050DA18
5H050EA08
5H050FA16
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA10
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】粘度が低く、カーボンナノチューブが適度に分散し、導電性に優れる正極用電極を形成できるカーボンナノチューブ分散ペースト、カーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法、合材ペースト、リチウムイオン電池正極用電極及びリチウムイオン電池の提供。
【解決手段】カーボンナノチューブ(B)と、有機溶剤(C)とを含有するカーボンナノチューブ分散ペーストであって、前記カーボンナノチューブ(B)の含有量が、前記カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1~10質量%であり、インピーダンス測定により得られる、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしたBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に前記リアクタンスの極小値が存在する、カーボンナノチューブ分散ペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(B)と、有機溶剤(C)とを含有するカーボンナノチューブ分散ペーストであって、
前記カーボンナノチューブ(B)の含有量が、前記カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1~10質量%であり、
インピーダンス測定により得られる、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしたBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に前記リアクタンスの極小値が存在する、カーボンナノチューブ分散ペースト。
【請求項2】
前記有機溶剤(C)がN-メチル-2-ピロリドンである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散ペースト。
【請求項3】
顔料分散樹脂(A)をさらに含有し、
前記顔料分散樹脂(A)の含有量が、前記カーボンナノチューブ(B)100質量部に対して10~100質量部である、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ分散ペースト。
【請求項4】
前記Bodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に存在するリアクタンスの最小値が、周波数1kHzにおけるリアクタンスの値の5倍以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ分散ペースト。
【請求項5】
せん断速度1.0sec-1における粘度が10Pa・s以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ分散ペースト。
【請求項6】
カーボンナノチューブ(B)と、有機溶剤(C)とを含有するカーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法であって、
前記カーボンナノチューブ(B)の含有量が、前記カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1~10質量%であり、
インピーダンス測定により得られる、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしたBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に前記リアクタンスの極小値が存在するように前記カーボンナノチューブ(B)及び有機溶剤(C)を混合し、前記カーボンナノチューブ(B)を分散させる、カーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法。
【請求項7】
カーボンナノチューブ(B)と、有機溶剤(C)とを含有するカーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法であって、
前記カーボンナノチューブ(B)の含有量が、前記カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1~10質量%であり、
インピーダンス測定により得られる、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしたBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に前記リアクタンスの極小値が存在するように前記カーボンナノチューブ分散ペーストを管理する、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ分散ペーストと、電極活物質とを含有する、合材ペースト。
【請求項9】
正極芯材と、前記正極芯材の表面に請求項8に記載の合材ペーストを塗布してなる層とを有する、リチウムイオン電池正極用電極。
【請求項10】
請求項9に記載のリチウムイオン電池正極用電極を有する、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ分散ペースト、カーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法、合材ペースト、リチウムイオン電池正極用電極及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、非水電解質二次電池の一種であって、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池である。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いこと、充電エネルギーの保持特性が優れていること、見た目上の容量が減るいわゆるメモリー現象が小さいこと等の優れた特性を有する。従って、リチウムイオン電池は、携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、ハイブリッド自動車、電気自動車等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
ここで、リチウムイオン電池は、主に正極用電極、負極用電極、これら正極用電極と負極用電極とを絶縁するためのセパレータ、非水電解液等を備えている。上記正極用電極は、正極芯材の表面に正極合材層が形成されたものである。当該正極合材層は、カーボンナノチューブ等の導電助剤、バインダー及び溶剤を含む導電ペースト(「導電助剤分散ペースト」ともいう。)に電極活物質を混和した正極用合材ペーストを正極芯材の表面に塗布し、これを乾燥することで、製造することができる。
【0004】
例えば特許文献1には、カーボンナノチューブ及び分散媒を含み、粘度が100~5000mPa・sであり、最大粒子径が20μm以下であり、交流インピーダンス測定により得られるアドミッタンスの濃度依存性が30μS/質量%以下であるカーボンナノチューブ分散スラリーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導電助剤分散ペーストは、作業性並びに正極用合材ペーストの安定性及び塗工性等を考慮した場合、粘度が低い方が好ましい。
また、近年、リチウムイオン電池には、電池性能のさらなる向上が求められている。電極活物質の周りに存在する導電助剤が、正極用電極の正極合材層中でどのような分散状態にあるかで導電性は大きく変化し、電池性能にも影響を及ぼす。
導電助剤は、複数の一次粒子が鎖状につながった構造(以下、「鎖状構造」又は「ストラクチャー」ともいう。)を形成する。例えば
図1(a)に示すように、導電助剤の一例である導電性顔料の一次粒子10の相互作用が強すぎて、導電ペースト中で導電性顔料の一次粒子が過度に凝集していると、正極合材層を形成したときに効率的に導電パスが形成されず、電極内で電子が十分に流れにくくなる。一方、
図1(c)に示すように、導電性顔料の一次粒子10の相互作用が弱すぎてストラクチャーが切れてしまい、導電パスが形成されず、電極内で電子が十分に流れにくくなる。
そのため、導電性顔料等の導電助剤には、
図1(b)に示すように、効率的に導電パスが形成されるように、導電ペースト中で適度に分散していることが求められる。
なお、
図1中、符号20は活物質である。
【0007】
正極合材層中での導電助剤の分散状態は、導電ペースト中での導電助剤の分散状態に反映される。すなわち、導電助剤が適度に分散している導電ペーストを用いれば、効率的に導電パスが形成された正極合材層を形成できる。
導電ペーストは導電助剤を高濃度で含有していることから、そのままの状態で導電助剤の粒子径や粒子間距離の分布等の分散状態を測定することは困難である。そのため、例えば導電ペーストを希釈して粒度分布測定などを行い、粒子径を測定することが一般的である。
しかし、導電ペーストを希釈すると導電助剤の一次粒子の相互作用が変わってしまうため、導電ペースト中の導電助剤の分散状態が測定結果に反映されない場合がある。
【0008】
本発明は、粘度が低く、カーボンナノチューブが適度に分散し、導電性に優れる正極用電極を形成できるカーボンナノチューブ分散ペースト、カーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法、合材ペースト、リチウムイオン電池正極用電極及びリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] カーボンナノチューブ(B)と、有機溶剤(C)とを含有するカーボンナノチューブ分散ペーストであって、
前記カーボンナノチューブ(B)の含有量が、前記カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1~10質量%であり、
インピーダンス測定により得られる、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしたBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に前記リアクタンスの極小値が存在する、カーボンナノチューブ分散ペースト。
[2] 前記有機溶剤(C)がN-メチル-2-ピロリドンである、前記[1]のカーボンナノチューブ分散ペースト。
[3] 顔料分散樹脂(A)をさらに含有し、
前記顔料分散樹脂(A)の含有量が、前記カーボンナノチューブ(B)100質量部に対して10~100質量部である、前記[1]又は[2]のカーボンナノチューブ分散ペースト。
[4] 前記Bodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に存在するリアクタンスの最小値が、周波数1kHzにおけるリアクタンスの値の5倍以上である、前記[1]~[3]のいずれかのカーボンナノチューブ分散ペースト。
[5] せん断速度1.0sec-1における粘度が10Pa・s以下である、前記[1]~[4]のいずれかのカーボンナノチューブ分散ペースト。
[6] カーボンナノチューブ(B)と、有機溶剤(C)とを含有するカーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法であって、
前記カーボンナノチューブ(B)の含有量が、前記カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1~10質量%であり、
インピーダンス測定により得られる、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしたBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に前記リアクタンスの極小値が存在するように前記カーボンナノチューブ(B)及び有機溶剤(C)を混合し、前記カーボンナノチューブ(B)を分散させる、カーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法。
[7] カーボンナノチューブ(B)と、有機溶剤(C)とを含有するカーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法であって、
前記カーボンナノチューブ(B)の含有量が、前記カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1~10質量%であり、
インピーダンス測定により得られる、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしたBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に前記リアクタンスの極小値が存在するように前記カーボンナノチューブ分散ペーストを管理する、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法。
[8] 前記[1]~[5]のいずれかのカーボンナノチューブ分散ペーストと、電極活物質とを含有する、合材ペースト。
[9] 正極芯材と、前記正極芯材の表面に前記[8]の合材ペーストを塗布してなる層とを有する、リチウムイオン電池正極用電極。
[10]前記[9]のリチウムイオン電池正極用電極を有する、リチウムイオン電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粘度が低く、カーボンナノチューブが適度に分散し、導電性に優れる正極用電極を形成できるカーボンナノチューブ分散ペースト、カーボンナノチューブ分散ペーストの製造方法、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法、合材ペースト、リチウムイオン電池正極用電極及びリチウムイオン電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】導電ペースト中及び正極合材層中での導電助剤の分散状態の一例を示す図であり、(a)は導電助剤の一次粒子の相互作用が強すぎる場合の導電助剤の分散状態の一例を示す図であり、(b)は導電助剤の一次粒子の相互作用が適度である場合の導電助剤の分散状態の一例を示す図であり、(c)は導電助剤の一次粒子の相互作用が弱すぎる場合の導電助剤の分散状態の一例を示す図である。
【
図2】インピーダンス測定により得られるBodeプロットの一例を示す図であり、(a)はカーボンナノチューブのストラクチャーの成長の度合いが高い場合のBodeプロットの一例を示す図であり、(b)はカーボンナノチューブのストラクチャーの成長の度合いが中程度である場合のBodeプロットの一例を示す図であり、(c)はカーボンナノチューブのストラクチャーの成長の度合いが低い場合のBodeプロットの一例を示す図である。
【
図3】インピーダンス測定により得られるBodeプロットの一例を示す図であり、(a)はカーボンナノチューブ(B)の一次粒子の凝集体の粒子径が均一である場合のBodeプロットの一例を示す図であり、(b)はカーボンナノチューブ(B)の一次粒子の凝集体の粒子径が不均一である場合のBodeプロットの一例を示す図である。
【
図4】実施例4と、比較例1、3におけるBodeプロットを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの総称である。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタクリルアミドの総称である。「重合性不飽和モノマー」とは、ラジカル重合しうる重合性不飽和基を有するモノマーを意味し、該重合性不飽和基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルエーテル基等が挙げられる。「誘導体」とは、ある化合物に対し、官能基の導入、原子の置換、又はその他の化学反応により分子内の小部分(複数の部分でもよい)を変化させて得られる化合物を意味する。例えば、ナフタレンに、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等の官能基を1種又は2種以上導入した化合物はナフタレン誘導体である。
【0013】
[カーボンナノチューブ分散ペースト]
本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストは、カーボンナノチューブ(B)と、有機溶剤(C)とを含有するリチウムイオン電池正極用導電ペーストである。
本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストは、顔料分散樹脂(A)をさらに含有することが好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、顔料分散樹脂(A)、カーボンナノチューブ(B)及び有機溶剤(C)以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
【0014】
<カーボンナノチューブ(B)>
カーボンナノチューブ(B)としては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブが挙げられる。これらの中でも、カーボンナノチューブ分散ペーストの粘度及び導電性、並びにコストのバランスに優れる観点から、多層カーボンナノチューブが好ましい。
これらカーボンナノチューブ(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0015】
カーボンナノチューブ(B)の平均外径は、カーボンナノチューブ(B)の分散性及びカーボンナノチューブ分散ペーストの導電性がより向上する観点から、1~25nmが好ましく、3~20nmがより好ましく、5~15nmがさらに好ましい。
なお、カーボンナノチューブ(B)として市販品を用いる場合、カーボンナノチューブ(B)の平均外径としてメーカーのカタログ値を採用してもよい。
【0016】
カーボンナノチューブ(B)の平均長さは、カーボンナノチューブ(B)の分散性及びカーボンナノチューブ分散ペーストの導電性がより向上する観点から、0.1~100μmが好ましく、0.5~80μmがより好ましく、1~60μmがさらに好ましい。
なお、カーボンナノチューブ(B)として市販品を用いる場合、カーボンナノチューブ(B)の平均長さとしてメーカーのカタログ値を採用してもよい。
【0017】
カーボンナノチューブ(B)の比表面積は、1~1000m2/gが好ましく、10~500m2/gがより好ましい。カーボンナノチューブ(B)の比表面積が上記範囲内であれば、カーボンナノチューブ分散ペーストの導電性がより向上し、また、粘度が適度に低くなる。
カーボンナノチューブ(B)の比表面積は、BET(Brunauer-Emmet-Teller)法により測定したBET比表面積である。
BET法では、ガス吸着法による比表面積測定器を用い、カーボンナノチューブ(B)の表面に吸着ガスとして窒素を吸着させ、その際の圧力と吸着量との関係からBET式によって吸着量を測定し、比表面積を算出する。
【0018】
<有機溶剤(C)>
有機溶剤(C)としては、上述した樹脂(A2)の重合に用いられる有機溶剤又は重合後の溶媒置換に用いられる置換溶媒を好適に用いることができる。好ましい有機溶剤(C)の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール等が挙げられる。これらの中でも、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
これら有機溶剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0019】
<顔料分散樹脂(A)>
顔料分散樹脂(A) は、カーボンナノチューブ(B)を分散させる樹脂である。
顔料分散樹脂(A)としては、カーボンナノチューブ(B)の分散性を向上させる樹脂であれば、特に制限なく用いることができる。好ましい顔料分散樹脂(A)の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂(PVP)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、カーボンナノチューブ(B)の分散性がより向上し、また、カーボンナノチューブ分散ペーストの粘度が適度に低くなる観点から、顔料分散樹脂(A)は非架橋の樹脂であることが好ましい。その中でも特に、カーボンナノチューブ(B)の分散性及びカーボンナノチューブ分散ペーストの貯蔵安定性がより向上する観点から、顔料分散樹脂(A)としてポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
これら顔料分散樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
ポリビニルアルコール樹脂としては、変性基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
以下、本明細書において、変性基を有していない、すなわち未変性のポリビニルアルコール樹脂を「ポリビニルアルコール樹脂(a1)」ともいう。また、変性基を有するポリビニルアルコール樹脂を「変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)」ともいう。
ポリビニルアルコール樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂(a1)及び変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)のいずれか一方を用いてもよいし、ポリビニルアルコール樹脂(a1)及び変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)を併用してもよい。
【0021】
ポリビニルアルコール樹脂(a1)は、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルを重合し、得られる重合体を更にけん化することで得られる。
変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)は、以下に示す(1)~(4)のいずれかの方法によって製造することができる。
(1)酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルと、それ以外の重合性不飽和基含有モノマーとを共重合し、得られる重合体を更にけん化する方法。
(2)ポリビニルアルコールに重合性不飽和基含有モノマーをマイケル付加させる方法。
(3)アルデヒド化合物でポリビニルアルコールをアセタール化する方法。
(4)アルコール、アルデヒド及びチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させ、ポリビニルアルコールの重合をする方法。
【0022】
変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)は、エステル基、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、アミノ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基(変性基)を有する側鎖を含有することが好ましい。
【0023】
ポリビニルアルコール樹脂(a1)及び変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)は、カーボンナノチューブ(B)の分散性及びカーボンナノチューブ分散ペーストの貯蔵安定性がより向上する観点から、それぞれ高けん化度(高極性)であることが好ましい。具体的には、けん化度が85mol%以上100mol%未満であることが好ましく、90mol%以上100mol%未満であることがより好ましく、95mol%以上100mol%未満であることがさらに好ましく、96mol%以上100mol%未満であることが特に好ましい。
【0024】
また、顔料分散樹脂(A)は、高極性であるほどカーボンナノチューブ(B)への吸着性が向上する傾向があり、なかでもポリビニルアルコール樹脂(a1)及び変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)はけん化度が高いほどカーボンナノチューブ(B)への吸着性が良好となる。
【0025】
ポリビニルアルコール樹脂(a1)及び変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)は、カーボンナノチューブ(B)の分散性及びカーボンナノチューブ分散ペーストの貯蔵安定性がより向上する観点から、それぞれ平均重合度が50~3,000であることが好ましく、100~2,000であることがより好ましく、100~1,500であることがさらに好ましい。
【0026】
<任意成分>
任意成分としては、例えば結着剤(バインダー)、顔料分散樹脂(A)以外及び結着剤以外の樹脂成分(他の樹脂成分)、カーボンナノチューブ(B)以外の導電性顔料(他の導電性顔料)、中和剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤等が挙げられる。
【0027】
結着剤は、ペーストを塗布して得られる膜を基材に接着させる効果を有する樹脂であり、このような樹脂としては、例えば前記顔料分散樹脂(A)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、フッ素系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)がより好ましい。
これら結着剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
他の導電性顔料としては、例えばカーボンナノチューブ(B)以外の導電性カーボン(他の導電性カーボン)等が挙げられる。
他の導電性カーボンとしては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛等が挙げられる。
これら他の導電性カーボンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0029】
他の導電性カーボンの平均1次粒子径は、10~80nmが好ましく、20~50nmがより好ましい。他の導電性カーボンの平均1次粒子径が上記範囲内であれば、カーボンナノチューブ分散ペーストの導電性がより向上し、また、粘度が適度に低くなる。
【0030】
他の導電性カーボンの比表面積は、1~500m2/gが好ましく、30~150m2/gがより好ましい。他の導電性カーボンの比表面積が上記範囲内であれば、カーボンナノチューブ分散ペーストの導電性がより向上し、また、粘度が適度に低くなる。
【0031】
他の導電性カーボンは、顔料分散性が高まる観点から、塩基性であることが好ましく、具体的には、pHが7.5以上であることが好ましく、8.0~12.0であることがより好ましく、8.5~11.0であることがさらに好ましい。
【0032】
また、他の導電性カーボンは、導電性が高まる観点から、複数の一次粒子がストラクチャーを形成している状態が好ましく、ストラクチャー指数が1.5~4.0であることがより好ましく、1.7~3.2であることが特に好ましい。
ストラクチャー自体は電子顕微鏡で撮影した画像でも比較的容易に観察できるが、ストラクチャー指数はストラクチャーの度合いを定量化した数値である。ストラクチャー指数は一般的にDBP吸油量(mL/100g)を比表面積(m2/g)で割った値で定義することができる。ストラクチャー指数が1.5以上であれば、ストラクチャーが発達しているために、十分な導電性が得られやすくなる。ストラクチャー指数が4.0以下であれば、DBP吸油量に対して粒子径が大きくなりにくいため、導電経路の減少を抑制でき、十分な導電性が得られやすくなる。加えて、カーボンナノチューブ分散ペーストの粘度が高くなりすぎることを抑制できる。
【0033】
<含有量>
カーボンナノチューブ(B)の含有量は、カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1~10質量%であり、1.2~8質量%が好ましく、1.5~6質量%がより好ましい。カーボンナノチューブ(B)の含有量が上記下限値以上であれば、カーボンナノチューブ分散ペーストの導電性が高まる。カーボンナノチューブ(B)の含有量が上記上限値以下であれば、カーボンナノチューブ(B)の分散性を良好に維持できる。
【0034】
カーボンナノチューブ(B)の含有量は、カーボンナノチューブ分散ペーストの固形分の総質量に対して10~100質量%が好ましく、30~95質量%がより好ましく、50~90質量%がさらに好ましく、60~90質量%が特に好ましい。カーボンナノチューブ(B)の含有量が上記下限値以上であれば、カーボンナノチューブ分散ペーストの導電性がより高まる。カーボンナノチューブ(B)の含有量が上記上限値以下であれば、カーボンナノチューブ(B)の分散性をより良好に維持できる。
なお、「カーボンナノチューブ分散ペーストの固形分」とは、カーボンナノチューブ分散ペーストに含まれる成分のうち、溶剤成分(有機溶剤(C)及び水)以外の全成分を意味する。
【0035】
有機溶剤(C)の含有量は、カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して90~99質量%が好ましく、92~98.8質量%がより好ましく、94~98.5質量%がさらに好ましい。有機溶剤(C)の含有量が上記下限値以上であれば、カーボンナノチューブ(B)の分散性をより良好に維持できる。有機溶剤(C)の含有量が上記上限値以下であれば、カーボンナノチューブ分散ペーストの導電性がより高まる。
【0036】
カーボンナノチューブ分散ペーストが顔料分散樹脂(A)を含有する場合、その含有量は、カーボンナノチューブ(B)100質量部に対して10~100質量部が好ましく、12~70質量部がより好ましく、15~50質量部がさらに好ましい。顔料分散樹脂(A)の含有量が上記下限値以上であれば、カーボンナノチューブ(B)の分散性をより良好に維持できる。顔料分散樹脂(A)の含有量が上記上限値以下であれば、カーボンナノチューブ分散ペーストの導電性がより高まる。
【0037】
カーボンナノチューブ分散ペーストの水分量は、カーボンナノチューブ分散ペーストの総質量に対して1質量%未満が好ましく、0.7質量%未満がより好ましく、0.5質量%未満がさらに好ましい。水分量が少ないほど、電池性能を良好に維持しやすくなる。
水分量が上記範囲内であるカーボンナノチューブ分散ペーストは、実質的に非水系の導電ペーストといえる。
カーボンナノチューブ分散ペーストの水分量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定することができる。具体的には、カールフィッシャー水分率計(例えば京都電子工業株式会社製、製品名「MKC-610」)を用い、この水分率系に備えられた水分気化装置(例えば京都電子工業株式会社製、製品名「ADP-611」)の設定温度を130℃として測定することができる。
【0038】
<インピーダンススペクトル>
本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストは、インピーダンス測定により得られる、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしたBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に前記リアクタンスの極小値が存在することを特徴する。リアクタンスの極小値は、周波数60~200kHzの範囲に存在することが好ましく、周波数70~150kHzの範囲に存在することがより好ましい。
なお、本発明において、リアクタンスとは複素インピーダンスの虚数部を意味する。
Bodeプロットにおいては、リアクタンスの極小値が2点以上存在することもある。特にカーボンナノチューブ(B)を2種以上併用した場合や、カーボンナノチューブ(B)と他の導電性カーボンを併用した場合、カーボンナノチューブ分散ペーストの分散時間が極端に短い場合などにこの傾向は顕著である。また、使用するカーボンナノチューブ(B)の種類によっても、リアクタンスの極小値が2点以上存在することがある。リアクタンスの極小値が2点以上存在する場合、少なくとも一方の極小値が周波数50~250kHzの範囲に存在すればよい。
【0039】
カーボンナノチューブ(B)はカーボンナノチューブ分散ペースト中でストラクチャーを形成しているが、Bodeプロットおけるリアクタンスの極小値は、カーボンナノチューブ(B)のストラクチャーの成長の度合い、すなわちカーボンナノチューブ(B)の一次粒子の凝集体の大きさによって移動する。例えば、
図2に示すように、一次粒子10の相互作用が強く、ストラクチャーの成長の度合いが高くなるほど、すなわちカーボンナノチューブ(B)の一次粒子10の凝集体30が大きくなるほど、Bodeプロットおけるリアクタンスの極小値は、低周波領域に移動しやすくなる傾向にある。
なお、
図2(a)はストラクチャーの成長の度合いが高い場合のBodeプロットであり、
図2(b)はストラクチャーの成長の度合いが中程度である場合のBodeプロットであり、
図2(c)はストラクチャーの成長の度合いが低い場合のBodeプロットである。
【0040】
Bodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲にリアクタンスの極小値が存在していれば、カーボンナノチューブ(B)のストラクチャーが適度に成長している、すなわち、カーボンナノチューブ分散ペースト中でカーボンナノチューブ(B)の一次粒子が適度にストラクチャーを保持しながら分散していることを意味する。よって、本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストを含む合材ペーストを用いて正極合材層を形成したときに、正極合材層中でカーボンナノチューブ(B)の一次粒子が適度にストラクチャーを保持しながら分散する。そのため、効率的に導電パスが形成され、導電性に優れる正極用電極を形成できる。加えて、カーボンナノチューブ分散ペーストの粘度も低くなる傾向にある。
【0041】
Bodeプロットは、例えば以下に示すインピーダンス測定により得られる。
(測定セルの準備)
表面が金メッキ処理された厚さ0.3mmの銅板を対向させ、電極間距離9mmの2極式の電極を用いる。電極の大きさは100mm2とする。20mlの円筒状容器に、カーボンナノチューブ分散ペーストを15ml充填し、電極がペーストに完全に埋没するよう挿入する。
【0042】
(インピーダンス測定)
カーボンナノチューブ分散ペーストに、25℃で、インピーダンスアナライザを用いて、ピーク間電圧が0.1Vの正弦交流電圧を印加し、周波数を100Hz~100MHzの間で掃引しながら500点、複素インピーダンスと位相差を測定する。得られたデータから、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしてBodeプロットを作成する。
【0043】
前記Bodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲に存在するリアクタンスの最小値(X)は、周波数1kHzにおけるリアクタンスの値(Y)の5倍以上であることが好ましく、より好ましくは7.5~30倍であり、さらに好ましくは10~30倍である。
前述のとおり、Bodeプロットにおいては、リアクタンスの極小値が2点以上存在することもある。50~250kHZの範囲に複数の極小値が存在する場合にも、50~250kHZの範囲における最小値にて計算(X/Y)を行えばよい。
前記値(Y)に対する前記最小値(X)の割合は、カーボンナノチューブ(B)の一次粒子の凝集体の粒度分布に影響される。例えば、
図3(a)に示すように、カーボンナノチューブ(B)の一次粒子10の凝集体30の粒子径が均一になる、すなわち揃っているほど、前記値(Y)に対する前記最小値(X)の割合は大きくなる傾向にある。一方、
図3(b)に示すように、カーボンナノチューブ(B)の一次粒子10の凝集体30の粒子径が不均一になるほど、前記値(Y)に対する前記最小値(X)の割合は小さくなる傾向にある。
【0044】
前記最小値(X)が前記値(Y)の5倍以上であれば、カーボンナノチューブ分散ペースト中におけるカーボンナノチューブ(B)の一次粒子の凝集体の粒子径が均一であることを意味する。よって、本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストを含む合材ペーストを用いて正極合材層を形成したときに、正極合材層中でカーボンナノチューブ(B)の一次粒子がより均一に分散する。そのため、より効率的に導電パスが形成され、導電性により優れる正極用電極を形成できる。
【0045】
<粘度>
カーボンナノチューブ分散ペーストは、作業性、塗工性に優れる観点から、せん断速度1.0sec-1における粘度が10Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以下であることがより好ましい。カーボンナノチューブ分散ペーストの粘度が上記上限値以下であれば、このペーストを用いて作製される合材ペーストが増粘することを抑制できる。
なお、カーボンナノチューブ分散ペーストの粘度は、コーン&プレート型粘度計を用い、25℃にて測定される値である。
【0046】
<製造方法>
カーボンナノチューブ分散ペーストは、例えば、インピーダンス測定により得られるBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲にリアクタンスの極小値が存在するように、カーボンナノチューブ(B)及び有機溶剤(C)と、必要に応じて顔料分散樹脂(A)及び任意成分の1つ以上とを分散機を用いて均一に混合し、カーボンナノチューブ(B)を分散させる(分散処理する)ことにより得られる。その際、前記最小値(X)が前記値(Y)の5倍以上となるように、カーボンナノチューブ(B)及び有機溶剤(C)と、必要に応じて顔料分散樹脂(A)及び任意成分の1つ以上とを混合し、カーボンナノチューブ(B)を分散させることが好ましい。
カーボンナノチューブ(B)の配合量や、分散の程度(分散時間等)の組み合わせによって、リアクタンスの極小値が現れる周波数や、前記値(Y)を調整することができる。
【0047】
分散機としては、例えばビーズミル、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー等が挙げられるものの、これらに限らず使用できる。また、分散機の中でも短時間で所望のインピーダンススペクトルが得られる点でビーズミル又はボールミルが好ましい。ビーズミルとしては、例えばLMZミル、ダイノミル等が挙げられ、LMZミルが好ましい。
【0048】
<作用効果>
以上説明した本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストは、インピーダンス測定により得られるBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲にリアクタンスの極小値が存在しているので、粘度が低く、かつ、カーボンナノチューブ(B)の一次粒子が適度にストラクチャーを保持しながら分散している。よって、本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストを含む合材ペーストを用いて正極合材層を形成したときに、正極合材層中でカーボンナノチューブ(B)の一次粒子が適度にストラクチャーを保持しながら分散する。そのため、効率的に導電パスが形成され、電子が十分に流れやすくなり、導電性に優れる正極用電極を形成できる。
【0049】
上述したように、導電ペーストは導電助剤を高濃度で含有していることから、そのままの状態で導電助剤の粒子径や粒子間距離の分布等の分散状態を測定することは困難である。そのため、例えば導電ペーストを希釈して粒度分布測定などを行うことが一般的であるが、導電ペーストを希釈すると導電助剤の一次粒子の相互作用が変わってしまうため、導電ペースト中の導電助剤の分散状態が測定結果に反映されない場合がある。
しかし、本発明であれば、インピーダンス測定により、カーボンナノチューブ分散ペーストを希釈することなくカーボンナノチューブ(B)の分散状態を判断できるので、導電ペースト中の導電助剤の分散状態が測定結果に反映される。
【0050】
本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストは、電極の一部である正極合材層を形成するための合材ペースト用の材料として好適である。
【0051】
[カーボンナノチューブ分散ペーストの品質管理方法]
カーボンナノチューブ分散ペーストは、例えば、インピーダンス測定により得られるBodeプロットにおいて、周波数50~250kHzの範囲にリアクタンスの極小値が存在するように、品質管理される。その際、前記最小値(X)が前記値(Y)の5倍以上となるように、カーボンナノチューブ分散ペーストを品質管理することが好ましい。
本発明であれば、インピーダンス測定により、カーボンナノチューブ分散ペーストを希釈することなくカーボンナノチューブ(B)の分散状態を判断できるので、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質を容易に管理できる。
品質管理の方法としては特に制限されないが、例えばカーボンナノチューブ(B)の配合量や、分散の程度の組み合わせによって、リアクタンスの極小値が現れる周波数を調整することで、カーボンナノチューブ分散ペーストの品質を管理すればよい。
【0052】
[合材ペースト]
本発明の合材ペーストは、上述した本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストと、電極活物質とを含有するリチウムイオン電池正極用合材ペーストである。
本発明の合材ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、本発明のカーボンナノチューブ分散ペースト及び電極活物質以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
【0053】
<電極活物質>
電極活物質としては、例えばニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等のリチウム複合酸化物等が挙げられる。
これら電極活物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0054】
<任意成分>
合材ペーストに含まれる任意成分としては、例えば樹脂、顔料、中和剤、顔料分散剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、酸化防止剤、粘性調整剤等が挙げられる。
【0055】
<含有量>
合材ペーストにおけるカーボンナノチューブ分散ペーストの含有量は、導電性及びリチウムイオン伝導性がより高まる観点から、カーボンナノチューブ分散ペーストに含まれるカーボンナノチューブ(B)の含有量が、合材ペーストの固形分の総質量に対して0.1~10質量%となる量が好ましく、より好ましくは0.5~8質量%であり、さらに好ましくは1~5質量%である。
なお、「合材ペーストの固形分」とは、合材ペーストに含まれる成分のうち、溶剤成分以外の全成分を意味する。
【0056】
電極活物質の含有量は、合材ペーストの総質量に対して40~70質量%が好ましく、50~65質量%がより好ましく、55~65質量%がさらに好ましい。
電極活物質の含有量は、合材ペーストの固形分の総質量に対して80~99.5質量%が好ましく、90~99質量%がより好ましく、95~98質量%がさらに好ましい。
【0057】
合材ペーストに含まれる溶剤成分(有機溶剤(C)、水等)の含有量は、合材ペーストの総質量に対して30~60質量%が好ましく、35~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい。
【0058】
<製造方法>
合材ペーストは、例えばカーボンナノチューブ分散ペースト及び電極活物質と、必要に応じて任意成分及び有機溶剤の1つ以上を、分散機を用いて均一に混合、分散させることにより得られる。
合材ペーストの製造に用いる有機溶剤としては、カーボンナノチューブ分散ペーストの説明において先に例示した有機溶剤(C)が挙げられる。合材ペーストの製造に用いる有機溶剤と、カーボンナノチューブ分散ペーストに含まれる有機溶剤(C)とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、同じ種類であることが好ましい。
分散機としては、カーボンナノチューブ分散ペーストの説明において先に例示した分散機が挙げられる。
【0059】
<作用効果>
以上説明した本発明の合材ペーストは、上述した本発明のカーボンナノチューブ分散ペーストを含むので、正極合材層を形成したときに、正極合材層中でカーボンナノチューブ(B)の一次粒子が適度にストラクチャーを保持しながら分散する。そのため、効率的に導電パスが形成され、電子が十分に流れやすくなり、導電性に優れる正極用電極を形成できる。
本発明の合材ペーストは、電極の一部である正極合材層を形成するために用いられるが、正極芯材と正極合材層との間に設けられるプライマー層を形成するために本発明の合材ペーストを用いてもよい。
【0060】
[リチウムイオン電池正極用電極]
本発明のリチウムイオン電池正極用電極は、正極芯材と、正極芯材の表面に上述した本発明の合材ペーストを塗布してなる層とを有する。
本発明のリチウムイオン電池正極用電極は、例えば本発明の合材ペーストを正極芯材の表面に塗布し、塗布された合材ペーストを乾燥して、合材ペーストの表面に正極合材層を形成することで得られる。このようにして得られるリチウムイオン電池正極用電極は、正極芯材と、正極芯材の表面に形成された正極合材層とを有し、この正極合材層が本発明の合材ペーストを塗布してなる層に相当する。
【0061】
正極芯材としては、導電性を有する物質であれば特に制限されないが、金属が好ましく、具体的にはアルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、及びこれらの合金等が挙げられる。
正極芯材の形状としては、薄膜状、網状、繊維状等が挙げられる。これらの中でも、薄膜状が好ましい。
【0062】
合材ペーストの塗布方法としては、ダイコーター等を用いた公知の方法により行うことができる。
合材ペーストの塗布量は特に限定されないが、例えば乾燥後の正極合材層の厚みが0.04~0.30mmとなるように設定することが好ましく、より好ましくは0.06~0.24mmである。
【0063】
合材ペーストの乾燥方法としては特に制限されず、例えば減圧乾燥、加圧乾燥、加熱乾燥、風乾等が挙げられる。
合材ペーストを乾燥する際の温度(乾燥温度)は、例えば80~200℃が好ましく、100~180℃がより好ましい。
合材ペーストを乾燥する際の温度(乾燥時間)は、例えば5~120秒が好ましく、5~60秒がより好ましい。
【0064】
以上説明した本発明のリチウムイオン電池正極用電極は、正極芯材の表面に上述した本発明の合材ペーストを塗布してなる層を有するので、正極合材層中でカーボンナノチューブ(B)の一次粒子が適度にストラクチャーを保持しながら分散している。そのため、本発明のリチウムイオン電池正極用電極は、効率的に導電パスが形成され、電子が十分に流れやすくなり、導電性に優れる。
【0065】
[リチウムイオン電池]
本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明のリチウムイオン電池正極用電極を有する。
本発明のリチウムイオン電池は、例えば本発明のリチウムイオン電池正極用電極と、負極用電極とを透過性のセパレータを間に介して対面に配置し、これらをロール状(渦巻状)に捲回した捲回電極体を電池ケースに収容し、そこに電解液を注液することで得られる。このようにして得られるリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池正極用電極と、負極用電極と、電解液と、セパレータと、これらを収容する電池ケースとを備える。
【0066】
負極用電極としては、リチウムイオン電池に用いられる公知の負極用電極を用いることができる。
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いて製造した多孔性フィルム、及びこれらを積層した積層フィルム;不織布等が挙げられる。
【0067】
電解液としては、非水系電解液が挙げられる。非水系電解液は、有機溶媒に電解質が溶解した溶液である。
有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、アセトニトリル等のニトリル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これら有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
電解質としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2]2B等が挙げられる。これら電解質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
非水系電解液としては、カーボネート類にLiPF6が溶解した溶液が好ましく、該溶液はリチウムイオン電池の電解液として特に好適である。
【0068】
以上説明した本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明のリチウムイオン電池正極用電極を有するので、効率的に導電パスが形成されており、電子が十分に流れやすくなり、電池性能に優れる。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
[顔料分散樹脂(A)の製造方法]
<製造例1:顔料分散樹脂(A1)の製造>
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル100質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加えて、約60℃の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、得られた樹脂溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、ポリビニルアルコール(顔料分散樹脂(A1))を得た。
得られた顔料分散樹脂(A1)は、けん化度が99mol%、重合度が500であった。
【0071】
<製造例2:顔料分散樹脂(A2)の製造>
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル100質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加えて、約60℃の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、得られた樹脂溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、ポリビニルアルコール(顔料分散樹脂(A2))を得た。
得られた顔料分散樹脂(A2)は、けん化度が90mol%、重合度が500であった。
【0072】
<製造例3:顔料分散樹脂(A3)の製造>
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル97質量部及びビニルスルホン酸3質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加えて、約60℃の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、得られた樹脂溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、スルホン酸変性ポリビニルアルコール(顔料分散樹脂(A3))を得た。
得られた顔料分散樹脂(A3)は、けん化度が90mol%、重合度が300であった。
【0073】
<製造例4:顔料分散樹脂(A4)の製造>
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル90質量部及び1-ペンテン-4,5-ジオール10質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加えて、約60℃の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、得られた樹脂溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、ジオール変性ポリビニルアルコール(顔料分散樹脂(A4))を得た。
得られた顔料分散樹脂(A4)は、けん化度が90mol%、重合度が300であった。
【0074】
[測定・評価方法]
<インピーダンスの測定>
(測定セルの準備)
表面が金メッキ処理された厚さ0.3mmの銅板を対向させ、電極間距離9mmの2極式の電極を用いた。電極の大きさは100mm2とした。20mlの円筒状容器に、実施例及び比較例で得られた各カーボンナノチューブ分散ペーストを15ml充填し、電極がペーストに完全に埋没するよう挿入した。
【0075】
(インピーダンス測定)
実施例及び比較例で得られた各カーボンナノチューブ分散ペーストに、25℃で、インピーダンスアナライザ(Keysight社製、商品名「4294A」)を用いて、ピーク間電圧が0.1Vの正弦交流電圧を印加し、周波数を100Hz~100MHzの間で掃引しながら500点、複素インピーダンスと位相差を測定した。得られたデータから、縦軸にリアクタンス、横軸に周波数をプロットしてBodeプロットを作成した。
【0076】
<粘度の測定>
実施例及び比較例で得られた各カーボンナノチューブ分散ペーストについて、コーン&プレート型粘度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、商品名「HAAKE Mars3」、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度1.0sec-1で25℃にて粘度を測定し、下記基準により評価した。S、A、Bを合格とする。
S:粘度が、1.0Pa・s未満である。
A:粘度が、1.0Pa・s以上、かつ5.0Pa・s未満である。
B:粘度が、5.0Pa・s以上、かつ10.0Pa・s未満である。
C:粘度が、10.0Pa・s以上である。
【0077】
<体積抵抗率の測定>
体積抵抗率の測定では、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンの5質量%溶液(株式会社クレハ製、商品名「KFポリマーL#7305」、溶媒:N-メチル-2-ピロリドン)を使用した。
カーボンナノチューブ分散ペースト中のカーボンナノチューブ(B)の質量と、カーボンナノチューブ分散ペースト中の顔料分散樹脂(A)及びバインダー(KFポリマーL#7305)中のポリフッ化ビニリデンを合計した質量との比が1:9となるように、実施例及び比較例で得られた各カーボンナノチューブ分散ペーストとバインダー(KFポリマーL#7305)を量り取り、超音波ホモジナイザーで2分間混合して塗工材を得た。
ガラス板(2mm×100mm×150mm)上に塗工材をドクターブレード法にて塗工して、80℃で60分加熱乾燥し、ガラス板上に塗工膜を形成した。得られた塗工膜について膜厚を測定した後、ASPプローブ(株式会社三菱化学アナリテック製、商品名「MCP-TP03P」)を用いて、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、商品名「Loresta-GP MCP-T610」)で抵抗値を測定し、得られた抵抗値に抵抗率補正係数(RCF)4.532及び塗工膜の膜厚を乗じて体積抵抗率を算出した。体積抵抗率は下記基準により評価した。S、A、Bを合格とする。
S:体積抵抗率が、5Ω・cm未満であり、導電性は非常に良好である。
A:体積抵抗率が、5Ω・cm以上、かつ10Ω・cm未満であり、導電性は良好である。
B:体積抵抗率が、10Ω・cm以上、かつ15Ω・cm未満であり、導電性は普通である。
C:体積抵抗率が、15Ω・cm以上であり、導電性は劣る。又は平滑性のある塗工膜を作製できなかった。
【0078】
[実施例1~15、比較例1~11]
表1~4に記載の配合組成に従い、顔料分散樹脂(A)、カーボンナノチューブ(B)、及び有機溶剤(C)を混合し、表1~4に記載した分散時間となるようにボールミルにてカーボンナノチューブ(B)を分散させ、カーボンナノチューブ分散ペースト(X-1)~(X-15)及びカーボンナノチューブ分散ペースト(Y-1)~(Y-11)を得た。なお、表中の顔料分散樹脂(A)及びカーボンナノチューブ(B)の配合量は固形分の値である。
得られた各カーボンナノチューブ分散ペーストを用いて、インピーダンスを測定し、得られたBodeプロットから、リアクタンスの極小値(X)が存在する周波数、リアクタンスの極小値(X)、周波数1kHzにおけるリアクタンスの値(Y)、値(Y)に対する最小値(X)の割合(X/Y)を求めた。結果を表1~4に示す。なお、実施例4と、比較例1、3については、Bodeプロットを
図4に示す。
また、得られた各カーボンナノチューブ分散ペーストを用いて、粘度の測定及び体積抵抗率の測定を行った。結果を表1~4に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
表中の略号は以下の通りである。また、表中の空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0部)を意味する。
・A1:製造例1で得られたポリビニルアルコール(けん化度99mol%、重合度500)。
・A2:製造例2で得られたポリビニルアルコール(けん化度90mol%、重合度500)。
・A3:製造例3で得られたスルホン酸変性ポリビニルアルコール(けん化度90mol%、重合度300)。
・A4:製造例4で得られたジオール変性ポリビニルアルコール(けん化度90mol%、重合度300)。
・A5:ポリアクリル酸(重量平均分子量:15,000)。
・A6:ポリビニルピロリドン(重量平均分子量:30,000)。
・B1:ENERMAX61(CABOT社製、多層カーボンナノチューブ、平均外径:4~16nm、比表面積230~350cm3/g)。
・B2:ENERMAX31(CABOT社製、多層カーボンナノチューブ、平均外径:10~20nm、比表面積200~260cm3/g)。
・B3:ENERMAX12(CABOT社製、多層カーボンナノチューブ、平均外径:30~50nm、比表面積85~110cm3/g)。
【0084】
表1、2から明らかなように、各実施例で得られたカーボンナノチューブ分散ペーストは、粘度が低く、カーボンナノチューブが適度に分散し、体積抵抗率が低く、導電性に優れていた。
一方、表3、4から明らかなように、各比較例で得られたカーボンナノチューブ分散ペーストは、粘度と導電性の両方を満足するものではなかった。