(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080912
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】筆記具のペン先
(51)【国際特許分類】
B43K 1/02 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
B43K1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194480
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】大津 真樹
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350HA01
2C350NA06
2C350NA22
2C350NC02
2C350NC11
2C350NC46
(57)【要約】
【課題】 インキ内に浸されて引き上げられたとき、面部のインキ付着を十分に抑制できる筆記具のペン先を提供する。
【解決手段】 インキ内に浸されて引き上げられる筆記具のペン先であって、所定の範囲の表面粗さを有する金属面であって、インキに対する接触角が60度以上である撥水促進面を有する筆記具のペン先を提供する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ内に浸されて引き上げられる筆記具のペン先であって、
所定の範囲の表面粗さを有する金属面であって、前記インキに対する接触角が60度以上である撥水促進面を有することを特徴とする筆記具のペン先。
【請求項2】
前記撥水促進面の前記インキに対する接触角が70度以上であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具のペン先。
【請求項3】
インキ内に浸されて引き上げられる筆記具のペン先であって、
所定の範囲の表面粗さを有する金属面であって、前記インキに対する接触角が平滑面に比べて20%以上高い撥水促進面を有することを特徴とする筆記具のペン先。
【請求項4】
前記撥水促進面の前記インキに対する接触角が平滑面に比べて40%以上高いことを特徴とする請求項3に記載の筆記具のペン先。
【請求項5】
ステンレス鋼の面からなる前記撥水促進面が、算術平均高さSa(ISO25718)で0.09μm以上0.35μm以下の範囲内の表面粗さを有することを特徴とする請求項1または3に記載の筆記具のペン先。
【請求項6】
ステンレス鋼の面からなる前記撥水促進面が、算術平均高さSa(ISO25718)で0.12μm以上0.31μm以下の範囲内の表面粗さを有することを特徴とする請求項2または4に記載の筆記具のペン先。
【請求項7】
前記所定の範囲内において、平滑な側から表面粗さを増加させていくと、当初、接触角が増加し、更に表面粗さを増加させていくと、接触角が増加から減少に転じる傾向を示すことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の筆記具のペン先。
【請求項8】
前記撥水促進面がペン先の表(おもて)面に設けられていることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の筆記具のペン先。
【請求項9】
前記撥水促進面と隣接する前記撥水促進面でない面とにより刻印が形成されることを特徴とする請求項8に記載の筆記具のペン先。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、万年筆、つけペンのペン先をはじめとする、インキ内に浸されて引き上げられる筆記具のペン先に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な筆記用具が普及しているが、例えば、コンバータ式の万年筆では、インキをコンバータ内に充填するとき、ペン先がインキ内に浸されて引き上げられる。このようなペン先の中には、レーザ加工等により、インキ溝の内面やその周辺の面部を梨地にしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。インキ溝の内面やその周辺の面部を梨地にすることにより、撥水性が抑えられ、濡れやすくなり、インキがペン先の先端まで流れ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のペン先では、インキに浸して引き上げたとき、濡れ性が高められたインキ溝の周辺の面部がインキで汚れた状態となる。このため、インキ溝の周辺部に付着したインキが落ちて紙面を汚したり、インキ溝の周辺部に付着したインキが使用者の指等に付着したりする虞があり、ペン先の美観も損なわれる。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、インキ内に浸されて引き上げられたとき、面部のインキ付着を十分に抑制できる筆記具のペン先を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの実施態様に係る筆記具のペン先は、
インキ内に浸されて引き上げられる筆記具のペン先であって、
所定の範囲の表面粗さを有する金属面であって、前記インキに対する接触角が60度以上である撥水促進面を有する。
【0007】
本発明のその他の実施態様に係る筆記具のペン先は、
インキ内に浸されて引き上げられる筆記具のペン先であって、
所定の範囲の表面粗さを有する金属面であって、前記インキに対する接触角が平滑面に比べて20%以上高い撥水促進面を有する。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明により、インキ内に浸されて引き上げられたとき、面部のインキ付着を十分に抑制できる筆記具のペン先を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】様々な表面粗さを有するステンレス板を試作し、万年筆等に用いるインキを滴下して接触角を測定した試験の結果を示す表である。
【
図2A】実施例及び比較例を示す図(写真)である。
【
図2B】
図2Aに示す実施例及び比較例がインキ内に浸されて引き上げられた後の状態を示す図(写真)である。
【
図3A】微少な凹凸が形成されたペン先の表面にインキが付着した状態を模式的に示す図である。
【
図3B】
図3Aに示す凹凸より大きな凹凸が形成されたペン先の表面にインキが付着した状態を模式的に示す図である。
【
図4A】本発明に係るペン先に刻印が形成された変形例を示す斜視図である。
【
図4B】
図4Aに示すペン先がインキ内に浸されて引き上げられた後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
万年筆やつけペンのような筆記具のペン先は、インキに浸されて引き上げられるときがあるが、そのとき、ペン先の面部にインキが付着する虞がある。このため、面部に付着したインキが落ちて紙面を汚したり、面部に付着したインキが使用者の指等に付着したりする虞があり、ペン先の美観も損なわれる。このような課題を解決するため、下記に示すように、発明者らはペン先のインキに対する接触角を測定する試験を行った。
【0011】
(接触角の測定)
万年筆やつけペンのペン先の材料として、ステンレス鋼が多く用いられる。発明者らは、ステンレス製の板材を用いて、インキに対する接触角を測定する試験を行った。具知的には、様々な表面粗さを有するステンレス板を試作し、万年筆に用いるインキを滴下して接触角を測定した。
更に詳細に述べれば、協和界面科学株式会社製の自動接触角計DMo-602で、液滴法(θ/2法)で測定した。ステンレス板に滴下した液滴に光を当て、撮像装置で液滴の画像を捉え、画像解析で接触角を計算した。上記の自動接触角計を用いて、表面粗さの異なるステンレス板上にインキを1μLを滴下し、液滴を光で投影し、着滴後、5s、10s経過時の液滴の画像を捉え、画像解析で接触角を計算した。
【0012】
次に、
図1A及び
図1Bを参照しながら、接触角を測定した試験の結果について詳細に説明する。
図1Aは、様々な表面粗さを有するステンレス板を試作し、万年筆等に用いるインキを滴下して接触角を測定した試験の結果を示す表である。
図1Bは、
図1Aに示す試験結果を表すグラフである。
今回の試験に用いたインキは、20℃環境下の白金プレートを用いた垂直平板法による測定で、49.4mN/mの表面張力を有する。万年筆やつけペンに用いるインキの表面張力は、一般的に40~60mN/mの範囲内にあるといわれているが、試験で用いたインキは、万年筆やつけペンに用いるインキにおける代表的な表面張力を有するといえる。
【0013】
図1Aの表では、ステンレス板の表面粗さに対応した5秒後及び10秒後の接触角が示されている。
図1Bのグラフでは、横軸がステンレス板の表面粗さ(Sa[μm])を示し、縦軸が接触角(度)を示す。
図1Bでは、
図1Aに示すデータをプロットし、滑らかな曲線で繋いでグラフを描いている。
図1A、
図1Bから明らかなように、10秒後の接触角の方が5秒後の接触角より小さな値となる。実用上、ペン先がどのぐらいインキを弾くかという観点から、以下においては、値の小さい10秒後のデータに基づいて考察を行うものとする。
【0014】
図1Aの表で、一番上の算術平均高さSa(ISO25718)で0.082μmの面は、研磨を行っていない平滑面の表面粗さを示す。その次の算術平均高さSa(ISO25718)で0.090μmの面は、JIS R6010でP400(所謂400番)の研磨紙を用いて研磨した面の表面粗さを示す。表の下側に進むにつれて、より粗い研磨紙を用いて研磨した表面粗さを示す。例えば、算術平均高さSa(ISO25718)で0.330μmの面は、JIS R6010でP60(所謂60番)の研磨紙を用いて研磨した面の表面粗さを示す。
【0015】
接触角については、
図1Bから明らかなように、平滑面側から表面粗さを増加させていくと接触角が増加していき、算術平均高さSa(ISO25718)で0.200μmぐらいで接触角がピークに達し、更に表面粗さを増加させると接触角が増加から減少に転じる傾向を示す。
【0016】
例えば、算術平均高さSa(ISO25718)で0.082μmの平滑面では、接触角が50度を下回る。算術平均高さSa(ISO25718)で0.090μm及び0.330μmの表面粗さを有する面では、60度を超える接触角を有し、算術平均高さSa(ISO25718)で0.276μm及び0.319μmの表面粗さを有する面では、70度を超える接触角を有し、算術平均高さSa(ISO25718)で0.159μmの表面粗さを有する面では、80度を超える接触角を有する。算術平均高さSa(ISO25718)で0.360μmの表面粗さを有する面では、接触角が60度を下回る。
このように、ステンレス板が所定の範囲の表面粗さを有する場合に、平滑面に比べてより大きな接触角が得られることを知見した。
【0017】
上記のような様々な表面粗さを有するステンレス製のペン先を試作して、実際にインキに付けて引き上げた状態を観察する試験を行った。その結果、接触角が50度未満となる平滑面を有するペン先では、インキの付着が問題となることが判明した。一方、接触角が60度以上の面を有するペン先では、インキ付着を十分に抑制できることが判明した。
【0018】
(実施例及び比較例)
次に、
図2A及び
図2Bを参照しながら、接触角が60度以上の面を有するペン先である実施例と、平滑面を有するペン先である比較例について、インキ内に浸されて引き上げられた状態を説明する。
図2Aは、実施例及び比較例を示す図(写真)である。
図2Bは、
図2Aに示す実施例及び比較例がインキ内に浸されて引き上げられた後の状態を示す図(写真)である。
【0019】
図2A、
図2Bの左側が、接触角が50度未満の平滑面を有するペン先(比較例)を示し、右側が、接触角が60度以上の表面粗さを有するペン先(実施例)を示す。
図2Bに示すように、ペン先をインキに浸して引き上げたとき、比較例では、面部の全面にインキが付着した。
一方、ペン先をインキに浸して引き上げたとき、実施例では、ペン先の面部が概ねインキを弾いて、インキ付着を十分に抑制できることが実証された。更に、接触角が70度以上の表面粗さを有するペン先では、面部が更に強くインキを弾いて、インキ付着を更に効果的に抑制できることが実証された。
【0020】
(接触角の範囲)
以上のように、接触角が60度以上の面であれば、実用上、インキ付着を十分に抑制することができる。このような面を、「撥水促進面」と称することができる。更に、接触角が70度以上の撥水促進面であれば、インキ付着を更に効果的に抑制することができる。
【0021】
平滑面よりも表面粗さを増すことによりインキ付着を抑制することを考えると、接触角の値でなく、基準となる平滑面との比較で、上記の範囲を規定することも考えられる。平滑面の接触角が概略50度とみなせるので、接触角が60度以上の撥水促進面は、接触角が平滑面に比べて20%(=60/50-1)以上高い撥水促進面と表すこともできる。同様に、接触角が70度以上の撥水促進面は、接触角が平滑面に比べて40%(=70/50-1)以上高い撥水促進面と表すこともできる。
【0022】
つまり、接触角が平滑面に比べて20%以上高い撥水促進面であれば、インキ付着を十分に抑制することができ、接触角が平滑面に比べて40%以上高い撥水促進面であれば、インキ付着を更に効果的に抑制することができる。
【0023】
(表面粗さの範囲)
次に、
図1Bを参照しながら、上記の接触角の範囲を満たす撥水促進面の表面粗さの範囲を検討する。
図1Bから明らかなように、算術平均高さSa(ISO25718)で0.09μm以上0.35μm以下の範囲内の表面粗さを有する場合、接触角が60度以上となる。更に、算術平均高さSa(ISO25718)で0.12μm以上0.31μm以下の範囲内の表面粗さを有する場合、接触角が70度以上となる。
【0024】
同様に、算術平均高さSa(ISO25718)で0.09μm以上0.35μm以下の範囲内の表面粗さを有する場合、接触角が平滑面に比べて20%以上高くなる。更に、算術平均高さSa(ISO25718)で0.12μm以上0.31μm以下の範囲内の表面粗さを有する場合、接触角が平滑面に比べて40%以上高くなる。
【0025】
図1Bのグラフは、代表的な表面張力(49.4mN/m)を有するインキを用いた試験結果を示すものである。よって、上記の表面粗さの範囲を有する場合には、万年筆やつけペンに用いる任意の市販のインキにおいても、実用上、インキ付着を十分に抑制することができると考えられる。特に、接触角70度以上に対応する算術平均高さSa(ISO25718)で0.12μm以上0.31μm以下の範囲にある場合には、万年筆やつけペンに用いる任意の市販のインキにおいて、確実にインキ付着を抑制することができると考えられる。
【0026】
(表面粗さ及び接触角の関係)
上記のように、接触角が60度以上である撥水促進面を有する範囲内において、平滑な側から表面粗さを増加させていくと、当初、接触角が増加し、更に表面粗さを増加させていくとピークに達し、ピークの表面粗さを越えて表面粗さを増加させると、接触角が増加から減少に転じる傾向を示す(
図1B参照)。このような傾向を示すことについて、
図3A及び
図3Bを参照しながら、以下に詳細に説明する。
図3Aは、微少な凹凸が形成されたペン先の表面にインキが付着した状態を模式的に示す図である。
図3Bは、
図3Aに示す凹凸より大きな凹凸が形成されたペン先の表面にインキが付着した状態を模式的に示す図である。
【0027】
図3A及び
図3Bを参照しながら、金属面を平滑面から粗面化していって、表面に形成する凹凸の大きさを徐々に大きくしていく場合を考える。
図3Aに示すような微少な凹凸2が形成された場合、毛細管現象でインキが凹凸2の凹部2A内に流入することがない。これにより、インキ液滴Dと凹凸2の凸部2Bが点接触する状態となり、撥水性が増大して、接触角が増大すると考えられる。
【0028】
図3Aの状態を維持する場合においては、凹凸の大きさが大きくなれば、より点接触の度合いが増すので、接触角が増大すると考えられる。更に、凹凸の大きさを大きくしていくと、
図3Bに示すように、毛細管現象でインキが凹凸4の凹部4A内に流入して凹部4A内に充填された状態になる。このため、インキ液滴Dと凹凸4(凹部4A及び凸部4B)との接触面積が増える。これにより、界面自由エネルギが増大し、濡れ性が増大して、接触角が減少すると考えられる。
【0029】
特許文献1に「梨地にすることにより濡れやすくなる」という記載があるが、この梨地では、
図3Bに示すような状態が生じていると想定される。よって、特許文献1に記載の梨地は、上記の表面粗さの範囲よりもかなり粗い面であると想定される。
【0030】
このように、所定の範囲内において、平滑な側から表面粗さを増加させていくと、当初、接触角が増加し、更に表面粗さを増加させていくと、接触角が増加から減少に転じる傾向を示す。この傾向を把握することにより、大きな接触角が得られる最適な表面粗さの範囲を得ることができる。実際、ペン先の表面粗さはある程度の幅があるので、表面加工時に、表面粗さの中央値が接触角のピークとなるように、粗さ設定を行うのが好ましい。
【0031】
(本発明に係るペン先)
以上のように、本発明に係るペン先は、インキ内に浸されて引き上げられる筆記具のペン先であって、所定の範囲の表面粗さを有する金属面であって、インキに対する接触角が60度以上である撥水促進面を有する。同様に、本発明に係るペン先は、所定の範囲の表面粗さを有する金属面であって、インキに対する接触角が平滑面に比べて20%以上高い撥水促進面を有する。なお、撥水促進面は、母材の金属の面である場合も、鍍金した金属の面である場合もあり得る。
【0032】
ペン先がこのような接触角を有することにより、ペン先がインキ内に浸されて引き上げられたとき、面部のインキ付着を十分に抑制することができる。これにより、ペン先からインキが落ちて紙面を汚したり、ペン先のインキが使用者の指等に付着したりすることを抑制でき、ペン先の美観も損なわれることもない。
【0033】
ペン先のステンレス鋼の面からなる撥水促進面が、算術平均高さSa(ISO25718)で0.09μm以上0.35μm以下の範囲内の表面粗さを有するとき、60度以上の接触角、または平滑面に比べて20%以上高い接触角を得ることができる。ペン先がこのような範囲の表面粗さを有することにより、ペン先がインキ内に浸されて引き上げられたとき、面部のインキ付着を確実に抑制することができる。
【0034】
更に、本発明に係るペン先は、撥水促進面の前記インキに対する接触角が70度以上であることがより好ましい。同様に、本発明に係るペン先は、インキに対する接触角が平滑面に比べて40%以上高い撥水促進面を有することがより好ましい。
【0035】
ペン先がこのような接触角を有することにより、ペン先がインキ内に浸されて引き上げられたとき、面部のインキ付着を更に効果的に抑制することができる。
【0036】
このとき、ペン先のステンレス鋼の面からなる撥水促進面が、算術平均高さSa(ISO25718)で0.12μm以上0.33μm以下の範囲内の表面粗さを有するとき、70度以上の接触角、または平滑面に比べて40%以上高い接触角を得ることができる。ペン先がこのような範囲の表面粗さを有することにより、ペン先がインキ内に浸されて引き上げられたとき、面部のインキ付着を確実により効果的に抑制することができる。
【0037】
(変形例)
次に、
図4A及び
図4Bを参照しながら、変形例として、撥水促進面と隣接する撥水促進面でない面とにより刻印が形成されたペン先の説明を行う。
図4Aは、本発明に係るペン先に刻印が形成された変形例を示す斜視図である。
図4Bは、
図4Aに示すペン先がインキ内に浸されて引き上げられた後の状態を示す斜視図である。
【0038】
4Aに示すように、撥水促進面と隣接する撥水促進面でない面とにより、美観に優れた刻印を形成することができる。
図4Aでは、撥水促進面で囲まれた撥水促進面でない面により、複数のS字状の刻印が形成されているところを示す。なお、
図4Aに示す刻印の形状は一例に過ぎず、その他の任意の形状の刻印を形成することができる。
更に、
図4Bに示すように、ペン先がインキ内に浸されて引き上げられたとき、撥水促進面でない面にインキが残り、周囲の撥水促進面にはインキが付着していない状態となる。このため、撥水促進面でない面に残ったインキにより、刻印の模様がより際だって示されることになる。
【0039】
このように、撥水促進面と隣接する撥水促進面でない面とにより刻印が形成される場合には、撥水促進面でない面に残存したインキにより、刻印の模様を更に際立たせることができ、より美観に優れたペン先を提供できる。
【0040】
<撥水促進面を有する面>
以上のように、ペン先の面部へのインキ付着の抑制効果や、ペン先の装飾効果を考慮すると、少なくとも、撥水促進面がペン先の表(おもて)面に設けられていることが好ましい。これにより、インキ付着が抑制できるとともに美観に優れたペン先を少ない製造コストで提供することができる。
【0041】
本発明の実施例、変形例等を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0042】
2 凹凸
2A 凹部
2B 凸部
4 凹凸
4A 凹部
4B 凸部
D インキ液滴