(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080921
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】過酸化水素濃度の測定方法及び過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/414 20060101AFI20230602BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G01N27/414 301P
G01N27/414 301V
G01N27/416 341G
G01N27/416 311K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194498
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】根崎 孝介
(72)【発明者】
【氏名】安池 友時
(72)【発明者】
【氏名】南 豪
(72)【発明者】
【氏名】大代 晃平
(57)【要約】
【課題】試薬や過酸化水素分解手段を用いることなく、過酸化水素濃度を容易かつ迅速に行うことができる過酸化水素濃度の測定方法を提供する。
【解決手段】フェニルボロン酸化合物をレセプタとして導入した延長ゲートを有するトランジスタ型センサを用いて、測定対象水を延長ゲートに接触させて測定対象水中の過酸化水素濃度を測定する。トランジスタ型センサは、電界効果トランジスタよりなるトランジスタ部位と、該トランジスタ部位から離隔した検出部位とを有しており、該検出部位は、金属膜と、該金属膜の表面に結合された前記フェニルボロン酸化合物とを有しており、該金属膜と前記電界効果トランジスタのゲート電極とが配線により電気的に接続されており、該金属膜の該フェニルボロン酸化合物を有する面に測定対象水を接触させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルボロン酸化合物をレセプタとして導入した延長ゲートを有するトランジスタ型センサを用いて、測定対象水を延長ゲートに接触させて測定対象水中の過酸化水素濃度を測定する方法。
【請求項2】
測定対象水中の過酸化水素濃度が1ng/L~100mg/Lの範囲である、請求項1の過酸化水素濃度の測定方法。
【請求項3】
前記フェニルボロン酸化合物が4-メルカプトフェニルボロン酸である。請求項1又は2の過酸化水素濃度の測定方法。
【請求項4】
前記トランジスタ型センサは、電界効果トランジスタよりなるトランジスタ部位と、該トランジスタ部位から離隔した検出部位とを有しており、
該検出部位は、金属膜と、該金属膜の表面に結合された前記フェニルボロン酸化合物とを有しており、
該金属膜と前記電界効果トランジスタのゲート電極とが配線により電気的に接続されており、
該金属膜の該フェニルボロン酸化合物を有する面に測定対象水を接触させる請求項3の過酸化水素濃度の測定方法。
【請求項5】
フェニルボロン酸化合物をレセプタとして導入した延長ゲートを有する過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサ。
【請求項6】
前記フェニルボロン酸化合物が4-メルカプトフェニルボロン酸である請求項5の過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサ。
【請求項7】
前記トランジスタ型センサは、電界効果トランジスタよりなるトランジスタ部位と、該トランジスタ部位から離隔した検出部位とを有しており、
該検出部位は、金属膜と、該金属膜の表面に結合された前記フェニルボロン酸化合物とを有しており、
該金属膜と前記電界効果トランジスタのゲート電極とが配線により電気的に接続されており、
該金属膜の該フェニルボロン酸化合物を有する面が測定対象水を接触させる面となっている請求項5又は6の過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の過酸化水素濃度を測定する方法に関するものであり、特に有機トランジスタを用いて、超純水等に含まれる低濃度の過酸化水素濃度を測定する方法に好適な過酸化水素濃度の測定方法に関する。また、本発明は、過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程で使用される洗浄用超純水は、超純水製造工程において紫外線で有機物が酸化処理される。紫外線による有機物の酸化処理の副産物として過酸化水素が生成する。超純水の純度を維持するため、過酸化水素の極低濃度化の管理が求められ、超純水の製造工程で極低濃度の過酸化水素を測定する技術が必要となる。
【0003】
過酸化水素濃度をオンラインで測定する方法として、従来はヨウ素による電量滴定法が用いられているが、定量下限値が高い(0.5μg/L程度);測定に試薬が必要である;廃液が生じる;測定時間が長い(15分程度);などの課題がある。また、試薬を使用するため、現場でオンライン測定するには補充の手間がかかる。
【0004】
水中の過酸化水素濃度の測定装置として、水中の過酸化水素の分解手段と、過酸化水素の分解前後の溶存酸素濃度の測定手段とを備えたものがある(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-63303号公報
【特許文献2】特開2020-176868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、試薬や過酸化水素分解手段を用いることなく、過酸化水素濃度を容易かつ迅速に測定することができる過酸化水素濃度の測定方法と、過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は次である。
【0008】
[1] フェニルボロン酸化合物をレセプタとして導入した延長ゲートを有するトランジスタセンサを用いて、測定対象水を延長ゲートに接触させて測定対象水中の過酸化水素濃度を測定する方法。
【0009】
[2] 測定対象水中の過酸化水素濃度が1ng/L~100mg/Lの範囲である、[1]の過酸化水素濃度の測定方法。
【0010】
[3] 前記フェニルボロン酸化合物が4-メルカプトフェニルボロン酸である。[1]又は[2]の過酸化水素濃度の測定方法。
【0011】
[4] 前記トランジスタ型センサは、電界効果トランジスタよりなるトランジスタ部位と、該トランジスタ部位から離隔した検出部位とを有しており、
該検出部位は、金属膜と、該金属膜の表面に結合された前記フェニルボロン酸化合物とを有しており、
該金属膜と前記電界効果トランジスタのゲート電極とが配線により電気的に接続されており、
該金属膜の該フェニルボロン酸化合物を有する面に測定対象水を接触させる[3]の過酸化水素濃度の測定方法。
【0012】
[5] フェニルボロン酸化合物をレセプタとして導入した延長ゲートを有する過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサ。
【0013】
[6] 前記フェニルボロン酸化合物が4-メルカプトフェニルボロン酸である[5]の過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサ。
【0014】
[7] 前記トランジスタ型センサは、電界効果トランジスタよりなるトランジスタ部位と、該トランジスタ部位から離隔した検出部位とを有しており、
該検出部位は、金属膜と、該金属膜の表面に結合された前記フェニルボロン酸化合物とを有しており、
該金属膜と前記電界効果トランジスタのゲート電極とが配線により電気的に接続されており、
該金属膜の該フェニルボロン酸化合物を有する面が測定対象水を接触させる面となっている[5]又は[6]の過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサ。
【発明の効果】
【0015】
本発明の過酸化水素濃度の測定方法及び過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサは、測定可能な濃度範囲が広い(例えば1ng/Lから100mg/L)、必要なサンプル水量が少なく、試薬を使用しない、測定時間が短い(30秒から3分、特に1分~5分程度)等の長所を有する。
【0016】
また、本発明の過酸化水素濃度の測定方法及び過酸化水素検出および濃度測定用トランジスタ型センサでは、サンプル水を、追加処理を行うことなく、純水製造システムの原水槽に戻すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】過酸化水素濃度測定装置の構成を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、フェニルボロン酸化合物をレセプタとして修飾した延長ゲートを有するトランジスタ型センサを用い、測定対象水を延長ゲートに接触させて測定対象水中の過酸化水素濃度を測定する。なお、測定対象水は、半導体の製造工程などで使用される純水が好適であり、その電気伝導度は1mS/m以下であることが好ましい。
【0019】
有機薄膜トランジスタは、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体、封止膜等から構成されている。本発明では、ゲート電極を一部延長させた検出電極となる延長ゲートにレセプタを修飾することで、過酸化水素の濃度増加に伴う閾値電圧の変化を定量的に読み出す。
【0020】
本発明の一態様では、過酸化水素用センサチップは、人工レセプタとしてフェニルボロン酸化合物を用いる。フェニルボロン酸化合物は、
図2(a)の通り、チオール基を介して延長ゲート金電極表面に結合し、電極表面を修飾する。フェニルボロン酸化合物は、
図2(b)のように、過酸化水素によって酸化され、フェノール化合物に変換される。フェニルボロン酸化合物はベンゾオキサボロールに置き換えることができる。また、トランジスタ型人工レセプタは1000mg/Lを超える重金属イオン(Cu、Zn、Feなど)やピラニア溶液などの極端な酸が含まれると分解する可能性があるので、測定対象の溶液中に含まれないことが好ましい。
【0021】
本発明で用いるトランジスタ型センサのトランジスタ部位は、公知のトランジスタ構造により構成することができ、無機トランジスタでも、有機トランジスタであってもよい。中でも、小型で簡易的に用いることができる有機高分子よりなる薄膜トランジスタ(TFT)が好ましい。
【0022】
図1(a)、(b)に、トランジスタ型センサの構成の一例を示す。
図1(a)に示すトランジスタ型センサは、トランジスタ部位10と検出部位20である延長ゲートとから構成されている。
【0023】
トランジスタ部位10は、ガラス等よりなる基板11上にゲート電極12が形成され、その表面に、AlOx膜13が形成され、テトラデシルホスホン酸(TDPA。構造図を
図3(b)に示す。)よりなるゲート絶縁膜14が形成されている。その上に、ソース15及びドレイン16の電極が形成されている。
【0024】
ソース電極15、ドレイン電極16間に有機高分子半導体層17が形成されている。これらを封止するように封止膜18が形成されている。
【0025】
検出部位20である延長ゲートは、PEN基板21上の金属膜22を備えている。金属膜22の表面(図の上面)側は、
図2(a)の通り、チオール化させたフェニルボロン酸化合物が化学的に結合している。フェニルボロン酸化合物としては、4-メルカプトフェニルボロン酸が好適である。4-メルカプトフェニルボロン酸の金属膜表面への結合量は1×10
-9~1×10
-8mol/cm
2御程度が好適である。
【0026】
金属膜22上に合成樹脂製の流路材23が配置されている。流路材23に設けられた流路孔Sの一部が金属膜22の上面に露呈している。また、流路孔Sに差し込まれるようにして、Ag/AgCl電極よりなる参照電極24が設けられている。
【0027】
金属膜22とゲート電極12とが配線30によって導通されている。
【0028】
この流路孔Sに、過酸化水素を含む測定対象水を流通させると、
図2(b)に示すようにフェニルボロン酸がフェノール化する反応に伴って変化するトランジスタの閾値電圧又はドレイン電流値の変化を計測することによって、測定対象水中の過酸化水素濃度をモニタリングすることができる。
【0029】
図1(b)では、流路材23が省略されている。
図1(b)のその他の構成は
図1(a)と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
図1(b)では、金属膜22に過酸化水素を含む測定対象水を接触させて、トランジスタの閾値電圧又はドレイン電流値の変化を計測することによって、測定対象水中の過酸化水素濃度を測定する。
【0030】
トランジスタを構成する材料は特に限定されるものではない。例えば基板はガラス、セラミックガラス、セラミックス、金属等の無機材料の他、樹脂、紙等の有機材料等を適用することにより、フレキシブルな形態のセンサを構成することができる。
【0031】
有機トランジスタの場合は、基板としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリパラキシリレン(パリレン(登録商標))等の樹脂、紙等を用いることができる。
【0032】
ゲート電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、チタン、酸化インジウム(ITO)、PEDOT:PSS等が挙げられ、ソース電極・ドレイン電極の材料としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム、PEDOT:PSS等の導電性高分子が挙げられる。
【0033】
ゲート絶縁膜の構成材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、自己組織化単分子膜(SAM)、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサン、イオン液体、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)AF、サイトップ(登録商標))等が挙げられる。
【0034】
有機半導体の構成材料としては、P型の場合は、ペンタセン、ジナフトチエノチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(Cn-BTBT)、TIPSペンタセン、TES-ADT、ルブレン、P3HT、PBTTT等を用いることができ、N型の場合は、フラーレン等を用いることができる。PBTTTの構造式を
図3(a)に示す。
【0035】
封止膜(保護膜)の構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)AF)、サイトップ(登録商標)、ポリパラキシリレン(パリレン(登録商標))等が挙げられる。サイトップ(登録商標)の構造式を
図3(b)に示す。
【0036】
流路材の構成材料としては、シリコン樹脂等が挙げられる。
【0037】
薄膜トランジスタの作製方法は、蒸着法、スパッタリング法等のドライプロセスでも、スピンコート、バーコート、スプレーコート等による塗布、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、凸版反転印刷、インクジェット印刷等の各種印刷機による印刷でもよい。印刷によれば、より効率的に低コストで作製することができる。
【0038】
延長ゲートである検出部位20の金属膜にフェニルボロン酸化合物を結合させるには、金属膜をフェニルボロン酸化合物溶液、例えば4-メルカプトフェニルボロン酸を溶解させたメタノール溶液に浸漬すればよい。この溶液の濃度は1~10mM程度が好適であり、浸漬時間は1~2Hr程度が好適である。
【0039】
図1のように、トランジスタ部位と検出部位である延長ゲートが別個に作製され、使用時にこれらを連結する構成とすることにより、試料と直接接触する延長ゲートのみを寿命に応じて容易に交換して取り付けることができる。これにより、トランジスタ部位は安定した状態での計測が可能である。また、センサ全体を交換する必要がなく、しかも、検出部位は洗浄操作を行うことにより繰り返し利用可能であるため、経済的であるという利点も有している。
【0040】
本発明では、前記トランジスタセンサを超純水に浸漬して閾値電圧の変化を定量的に読み込み、超純水中の過酸化水素濃度を測定することが好ましい。
【0041】
具体的には、前記トランジスタ型センサを対象水系に電極部全体が浸かるように設置する。前記トランジスタ型センサを設置する場所は、UV処理設備の処理水あるいは過酸化水素分解設備の給水、さらに過酸化水素分解設備の処理水などが対象となるが、これに限定されない。また、前記トランジスタ型センサを上記設備に直接設置してもよいし、バイパスラインに設置してもよいが、前記トランジスタ型センサの消耗を避けるためにバイパスラインに設置することが望ましく、さらに消耗を避けるために測定時にのみバイパスラインに通水し測定することが好ましい。また、上記設備に設置することが困難、もしくは前記トランジスタ型センサの消耗が激しい場合は、上記設備から超純水をサンプリングしてから、そのサンプリング水に前記トランジスタ型センサを浸漬し測定してもよい。
【0042】
前記測定対象水は、出来るだけ室温で測定することが望ましい。高温の水の場合、前記トランジスタ型センサの消耗が激しくなる。上記ラインに直接もしくはバイパスラインに前記トランジスタ型センサを設置する場合、前記測定対象水の温度がなるべく室温になるように冷却用の熱交換器を別途設置する、もしくは、ラインを長めにとって前記トランジスタ型センサに接触する際の前記測定対象水の温度が室温になるようにすることが好ましく、これに限定されない。
【実施例0043】
[実施例1]
<実験条件>
Milli-Q精製装置(ミリポア)で製造した超純水にキシダ化学製の過酸化水素30%(特級)を添加し、100,50,10,5,1mg/L、100,50,10,5,1μg/L、500,100,50,30,10,7.5,5,3,1ng/Lの濃度の過酸化水素水溶液を作製した。
【0044】
フェニルボロン酸化合物として4-メルカプトフェニルボロン酸を導入した延長ゲート型の有機トランジスタ(
図1(b)の構成のもの)を製作した。金属膜22へのフェニルボロン酸化合物(4-メルカプトフェニルボロン酸)の導入はメタノールに4-メルカプトフェニルボロン酸を10mMになるように溶解させ溶液に、金属膜22を1時間浸漬させた後、メタノールおよび超純水にて洗浄することにより行った。
【0045】
このトランジスタの検出部位20を上記の各溶液に浸漬し、5分後の閾値電圧を計測した。
【0046】
なお、トランジスタの主要部分の材料、厚さは次のとおりである。
【0047】
ゲート電極:アルミニウム,30nm
ソース及びドレイン:金,30nm
有機半導体:PBTTT
封止膜:Cytop(登録商標)
金属膜:金,厚さ100nm、面積15mm2
ソース・ドレイン間隔:50μm
【0048】
<結果・考察>
結果を
図4~7に示す。
図4~7の通り、過酸化水素濃度と閾値電圧には良好な相関関係を得られた。なお、
図4~7のy軸の閾値電圧は、各過酸化水素濃度の閾値電圧(V
th)とブランクの閾値電圧(V
th0)の差をV
th0で除した数値(V
th-V
th0)/V
th0を用いた。
【0049】
[実施例2]
<実験条件>
図1(a)の通り、延長ゲートに流路材23を一体化したこと以外は実施例1と同一構成の有機トランジスタを用いて、リアルタイムに過酸化水素の濃度を測定した。流路材23は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて形成した。
【0050】
延長ゲートの測定部の面積は15mm2である。流路孔Sの流路サイズは、高さ50μm、幅100μm、金属膜と接する部分の長さは6mmである。
【0051】
ゲート電極-ソース電極間の電圧VGSは-3.0V、ドレイン電極-ソース電極間の電圧VDSは-1.0Vとした。
【0052】
過酸化水素濃度を10μg/Lに調整した過酸化水素水溶液と超純水を流速46μL/minで交互に流した際のドレイン電極とソース電極間に流れる電流IDSを測定することで、リアルタイム測定の追随性について試験した。
【0053】
<結果・考察>
結果を
図8に示す。
図8に示す通り、過酸化水素溶液と超純水を交互に流した際、流体の種類を変更した後に1分以内にI
DSの値が変化した後に定常状態に達した。これより、このトランジスタによると、追随性良くリアルタイム過酸化水素の濃度を測定できることが認められた。
【0054】
[実施例3]
<実験条件>
実施例1と同一構成の4-メルカプトフェニルボロン酸を導入した延長ゲート型の有機トランジスタを用いて、過酸化水素および過酸化物(過酸化ベンゾイル(BPO)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)、tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)、硝酸イオン(NO3
-)、次亜塩素酸イオン(ClO-))を100ng/Lになるように調整した水溶液について測定を行った。
【0055】
ゲート電極-ソース電極間の電圧Vthは-3.0V、ドレイン電極-ソース電極間の電圧Vthは-1.0Vとした。
【0056】
<結果・考察>
結果を
図9に示す。
図9の通り、該トランジスタ型センサは過酸化水素の特異的な検出が可能であることが示唆された。なお、
図9のy軸の閾値電圧は、各過酸化水素濃度の閾値電圧(V
th)とブランクの閾値電圧(V
th0)の差をV
th0で除した数値(V
th-V
th0)/V
th0を用いた。