(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008093
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】人体重心位置の簡易可視化システム、及び人体重心位置の簡易可視化方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
A61B5/107 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111373
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 智
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA11
4C038VB35
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】被験者が所定の距離だけ離れた荷重検出器を把持するだけで、水平方向のみならず垂直方向に生じる荷重も検知し、被験者の重心の位置を正確に算出して表示でき、且つ、簡易的な構造を有する、人体重心位置の簡易可視化システムを提供する。
【解決手段】先端部とセンサ部を有する荷重検出器と、重心の位置を算出する演算部と、重心の位置を表示する表示部と、を備える人体重心位置の簡易可視化システムにおいて、演算部は、荷重検出器におけるセンサ部によって検知された荷重と、被験者が先端部以外で床面に体重をかけている体重作用点に生じる第2の荷重と、に基づいて、重心の位置を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体における重心の位置を算出し、該重心の位置を可視化する人体重心位置の簡易可視化システムであって、
前記被験者が、四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを載置する先端部、及び該先端部に生じる荷重を検知するセンサ部を有する荷重検出器と、
前記荷重検出器における前記センサ部によって検知された前記荷重の情報に基づいて前記重心の位置を算出する演算部と、
前記演算部で算出された前記重心の位置を表示する表示部と、
を備え、
前記演算部は、前記荷重検出器における前記センサ部によって検知された前記荷重と、前記被験者が前記先端部以外で床面に体重をかけている体重作用点に生じる第2の荷重と、に基づいて、前記重心の位置を動的に算出することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化システム。
【請求項2】
前記演算部は、さらに、前記先端部において、前記被験者が四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを載置する接触位置の前記床面からの高さと、前記接触位置と前記体重作用点の間の水平距離と、前記被験者の体重とに基づき、前記重心の位置を算出することを特徴とする、請求項1に記載の人体重心位置の簡易可視化システム。
【請求項3】
前記荷重検出器における前記先端部は、前記被験者が四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを載置する際に回転モーメントが生じ難い所定の低モーメント形状を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の人体重心位置の簡易可視化システム。
【請求項4】
前記低モーメント形状は、垂直方向に延びる板状の形状であることを特徴とする、請求項3に記載の人体重心位置の簡易可視化システム。
【請求項5】
前記表示部は、さらに、前記演算部で前記重心の位置が算出された時点以前における、前記重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の人体重心位置の簡易可視化システム。
【請求項6】
前記被験者の画像を撮像する撮像機をさらに備え、
前記表示部は、前記撮像機が撮像した前記被験者を動画像として表示し、該動画像に重ねて、前記演算部で算出された前記重心の位置および/または、前記演算部で算出された時点以前における、前記重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の人体重心位置の簡易可視化システム。
【請求項7】
被験者の身体における重心の位置を算出し、該重心の位置を可視化する人体重心位置の可視化方法であって、
荷重の情報の基となるパラメータを事前に入力する入力ステップと、
前記被験者が、垂直方向及び水平方向の荷重を検出可能な荷重検出器の先端部を、四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを前記先端部に載置することで、前記荷重を検知する荷重検知ステップと、
前記荷重検知ステップにおいて検知された前記荷重の情報に基づいて前記重心の位置を算出する重心位置算出ステップと、
前記重心位置算出ステップにおいて算出された前記重心の位置を表示する重心位置可視化ステップと、
を有し、
前記重心位置算出ステップにおいて、前記荷重検知ステップにおいて検知された前記荷
重と、前記被験者が前記先端部以外で床面に体重をかけている体重作用点に生じる第2の荷重と、に基づいて、前記重心の位置を動的に算出することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化方法。
【請求項8】
前記重心位置算出ステップにおいて、さらに、前記先端部において、前記被験者が四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを載置する接触位置の前記床面からの高さと、前記接触位置と前記体重作用点の間の水平距離と、前記被験者の体重とに基づき、前記重心の位置を算出することを特徴とする、請求項7に記載の人体重心位置の簡易可視化方法。
【請求項9】
前記重心位置算出ステップにおいて、前記荷重検知ステップにおいて検知されうる、前記先端部に生じる回転モーメントを無視して前記重心の位置を算出することを特徴とする、請求項7または8に記載の人体重心位置の簡易可視化方法。
【請求項10】
前記重心位置算出ステップにおいて、前記接触位置と前記体重作用点を前記被験者の身体を支える二点とし、前記接触位置における、垂直方向に生じる前記荷重と水平方向に生じる前記荷重との合力を第1荷重ベクトルとし、前記体重作用点における、垂直方向に生じる前記第2の荷重と水平方向に生じる前記第2の荷重との合力を第2荷重ベクトルとし、
前記第1荷重ベクトルと前記第2荷重ベクトルの交点を前記重心の位置とすることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の人体重心位置の簡易可視化方法。
【請求項11】
前記重心位置可視化ステップにおいて、さらに、前記重心位置算出ステップにおいて前記重心の位置が算出された時点以前における、前記重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の人体重心位置の簡易可視化方法。
【請求項12】
前記重心位置可視化ステップにおいて、前記荷重検知ステップにおいて撮像した前記被験者を動画像として表示し、該動画像に重ねて、前記重心位置算出ステップにおいて算出された前記重心の位置および/または、前記重心位置算出ステップにおいて算出された時点以前における、前記重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の人体重心位置の簡易可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体重心位置の簡易可視化システム、及び人体重心位置の簡易可視化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天板と三分力ロードセルとを備えるフォースプレートと、三分力ロードセルから出力された荷重データに基づいて被験者の重心移動を測定するデータ処理装置と、を備える重心動揺システムが公知である。当該重心動揺システムとしては、天板には足踏み動作基準マーカが設けられ、データ処理装置は、天板上の足踏み位置に基づいて複数回の足踏み動作における足踏み位置関連パラメータを算出するCPUを有し、CPUは、天板上の所定位置を原点として、左右各々の足毎に、各足踏み動作の際に足裏が接地した位置の絶対座標を算出して、複数回の足踏み動作における足底接地位置の中心位置及び前後左右方向のバラツキを算出する足踏み位置バラツキ算出処理を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、測定面に作用する荷重を検出する荷重センサと、荷重センサの検出信号によって被検者の重心位置を検出する重心検出装置と、測定面に配された複数の圧力検出部を備える圧力分布センサと、圧力分布センサの検出信号によって被検者の足圧作用領域を検出する足圧領域検出装置と、重心変位方向における足圧作用領域の基準幅寸法を足圧作用領域の検出信号に基づいて設定する基準幅寸法設定装置と、足圧作用領域の基準幅寸法に対する幅方向寸法割合をもって被検者の重心位置の変位量を求める重心変位量演算装置と、重心変位量演算装置で求められた重心位置の変位量に基づいた測定結果を外部表示する表示装置と、を有するバランス能力測定装置も公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一般的に、人間の体幹における重心の位置は、姿勢や立位の安定性、あるいは転倒のリスク評価等の観点から重要である。また、当該観点からは、人間が安定した立位を保持した状態における重心の位置より、何等かの動作をしている状態における重心の位置が、より重要と言える。上記の特許文献に示す重心動揺システム及びバランス能力測定装置について、通常これらは人間が上に立って使用するものであり、足底が接する部分に取り付けられた複数のセンサによって人間の体幹における重心の位置を測定する。ここで、上記の特許文献に示す重心動揺システム及びバランス能力測定装置において、足底に対して水平方向にかかる荷重の情報は得られるが、垂直方向にかかる荷重の情報は得られず、不明確である。重心がより低い位置にある場合には、姿勢としてより安定であることから、垂直方向の重心の位置を取得することは重要である。
【0005】
垂直方向における重心の位置に関する情報、すなわち、重心が高い位置にあるか低い位置にあるかの情報を取得するにあたり、既知の技術としては、例えばモーションキャプチャ等の技術を使用することが考えられる。しかし、このような技術を使用する場合には、例えば装置の設置場所が限られる、高コストのシステムを要するといった課題が生じる。特に、足底が接する部分にロードセル(荷重検出器)を適用する場合には、このような課題が顕著となる。また、このような装置を使用するにあたっては、健常な人体のモデルが必要であるため、例えば人体に不自由があるといった場合には、重心の位置が正確に算出できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-056278号公報
【特許文献2】特開2016-209546号公報
【特許文献3】特開2016-179048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、被験者が所定の距離だけ離れた荷重検出器を把持するだけで、水平方向のみならず垂直方向にかかる荷重も検知し、被験者の重心の位置を正確に算出して表示でき、且つ、簡易的な構造を有する、人体重心位置の簡易可視化システムを提供することを最終的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、
被験者の身体における重心の位置を算出し、該重心の位置を可視化する人体重心位置の簡易可視化システムであって、
前記被験者が、四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを載置する先端部、及び該先端部に生じる荷重を検知するセンサ部を有する荷重検出器と、
前記荷重検出器における前記センサ部によって検知された前記荷重の情報に基づいて前記重心の位置を算出する演算部と、
前記演算部で算出された前記重心の位置を表示する表示部と、
を備え、
前記演算部は、前記荷重検出器における前記センサ部によって検知された前記荷重と、前記被験者が前記先端部以外で床面に体重をかけている体重作用点に生じる第2の荷重と、に基づいて、前記重心の位置を動的に算出することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化システムである。
【0009】
本発明によれば、簡易的に、且つ正確に、被験者の重心の位置を算出し、表示することができる。また、本発明における人体重心位置の簡易可視化システムは、一の荷重検出器を備えていればよいため、構造が簡易となる。そのため、容易に持ち運びが可能であり、本発明における人体重心位置の簡易可視化システムがあれば、例えば床の上等、場所を問わず被験者の重心の位置を算出できる。なお、表示部で表示する重心の位置は、座標上のポイントとして図示する態様の他、座標を数値で表示する態様も含む。
【0010】
また、本発明においては、前記演算部は、さらに、前記先端部において、前記被験者が四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを載置する接触位置の前記床面からの高さと、前記接触位置と前記体重作用点の間の水平距離と、前記被験者の体重とに基づき、前記重心の位置を算出することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化システムとしてもよい。ここで、接触位置の前記床面からの高さ、前記接触位置と前記体重作用点の間の水平距離、前記被験者の体重は、既知の数値として予め入力するようにしてもよい。これによれば、演算部における演算の内容を簡略化することができ、より簡易的に、且つ正確に、荷重を検知し、被験者の重心の位置を算出できる。
【0011】
また、本発明においては、前記荷重検出器における前記先端部は、前記被験者が四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを載置する際に回転モーメントが生じ難い所定の低モーメント形状を有することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化システムとしてもよい。これによれば、重心の位置を算出する際に回転モーメントを無視することが可能であり、モデルをより簡略化することで、より簡易的に重心の位置を算出できる。
【0012】
また、本発明においては、前記低モーメント形状は、垂直方向に延びる板状の形状であることを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化システムとしてもよい。これによれば、先端部に回転モーメントが生じ難い。
【0013】
また、本発明においては、前記表示部は、さらに、前記演算部で前記重心の位置が算出された時点以前における、前記重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化システムとしてもよい。これによれば、重心の位置の移動の度合いを把握することができ、例えば重心の位置の移動の度合いが大きい場合は、被験者の体勢が不安定な可能性があると分かる。
【0014】
また、本発明においては、前記被験者の画像を撮像する撮像機をさらに備え、前記表示部は、前記撮像機が撮像した前記被験者を動画像として表示し、該動画像に重ねて、前記演算部で算出された前記重心の位置および/または、前記演算部で算出された時点以前における、前記重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化システムとしてもよい。これによれば、表示部において、重心の位置の算出結果のみならず撮像した被験者を表示できるため、被験者の重心の位置がより明確に把握しやすい。
【0015】
また、本発明においては、
被験者の身体における重心の位置を算出し、該重心の位置を可視化する人体重心位置の簡易可視化方法であって、
荷重の情報の基となるパラメータを事前に入力する入力ステップと、
前記被験者が、垂直方向及び水平方向の荷重を検出可能な荷重検出器の先端部を、四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを前記先端部に載置することで、前記荷重を検知する荷重検知ステップと、
前記荷重検知ステップにおいて検知された前記荷重の情報に基づいて前記重心の位置を算出する重心位置算出ステップと、
前記重心位置算出ステップにおいて算出された前記重心の位置を表示する重心位置可視化ステップと、
を有し、
前記重心位置算出ステップにおいて、前記荷重検知ステップにおいて検知された前記荷重と、前記被験者が前記先端部以外で床面に体重をかけている体重作用点に生じる第2の荷重と、に基づいて、前記重心の位置を動的に算出することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化方法としてもよい。
【0016】
本発明によれば、簡易的なステップで、且つ正確に、被験者の重心の位置を算出し、表示することができる。
【0017】
また、本発明においては、前記重心位置算出ステップにおいて、さらに、前記先端部において、前記被験者が四肢のいずれかで把持する、あるいは四肢のいずれかを載置する接触位置の前記床面からの高さと、前記接触位置と前記体重作用点の間の水平距離と、前記被験者の体重とに基づき、前記重心の位置を算出することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化方法としてもよい。これによれば、より簡易的に、且つ正確に、荷重を検知し、被験者の重心の位置を算出できる。
【0018】
また、本発明においては、前記重心位置算出ステップにおいて、前記荷重検知ステップにおいて検知されうる、前記先端部に生じる回転モーメントを無視して前記重心の位置を算出することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化方法としてもよい。これによれば、重心位置算出ステップにおける演算がより容易となり、重心の位置の算出結果が分かりやすい。
【0019】
また、本発明においては、前記重心位置算出ステップにおいて、前記接触位置と前記体重作用点を前記被験者の身体を支える二点とし、前記接触位置における、垂直方向に生じ
る前記荷重と水平方向に生じる前記荷重との合力を第1荷重ベクトルとし、前記体重作用点における、垂直方向に生じる前記第2の荷重水平方向に生じる前記第2の荷重との合力を第2荷重ベクトルとし、前記第1荷重ベクトルと前記第2荷重ベクトルの交点を前記重心の位置とすることを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化方法としてもよい。これによれば、重心の位置を算出するために必要な情報は、二種類の荷重ベクトルのみでよいため、より少ないシステムの容量で重心の位置を算出することができ、より短時間で重心の位置を把握できる。
【0020】
また、本発明においては、前記重心位置可視化ステップにおいて、さらに、前記重心位置算出ステップにおいて前記重心の位置が算出された時点以前における、前記重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化方法としてもよい。これによれば、重心の位置の変化が一目で把握しやすい。
【0021】
また、本発明においては、前記重心位置可視化ステップにおいて、前記荷重検知ステップにおいて撮像した前記被験者を動画像とし表示し、該動画像に重ねて、前記重心位置算出ステップにおいて算出された前記重心の位置および/または、前記重心位置算出ステップにおいて算出された時点以前における、前記重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することを特徴とする、人体重心位置の簡易可視化方法としてもよい。これによれば、表示部において、重心の位置の算出結果のみならず撮像した被験者を表示できるため、被験者の重心の位置がより明確に把握しやすい。
【0022】
なお、上記の課題を解決するための手段は、可能な限り互いに組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被験者が所定の距離だけ離れたロードセルを把持するだけで、水平方向のみならず垂直方向にかかる荷重も検知できる。その結果、体勢を変えた際やバランスを崩した際の被験者の重心の位置を正確に算出でき、例えば転倒の未然防止に活かすことができる。また、人体重心位置の簡易可視化方法について、プロトタイプは二次元であるが、同様の人体重心位置の簡易可視化システムを三次元に適応すれば、三次元動作における重心の位置を算出できるため、スポーツ医学等の面に応用することも可能である。
【0024】
本発明では、さらに、他の限定要素等が加わることで、次のような副次的効果を奏する。すなわち、本発明における人体重心位置の簡易可視化システムが撮像機を備えることで、被験者を撮像して動画像として表示し、その動画像の中に被験者の重心の位置を表示することができる。その結果、被験者が重心の位置を把握することがより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システムの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システムを用いて荷重を検知する態様を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システムを用いて被験者の重心の位置を算出する方法を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システムにおけるPCのディスプレイに表示される重心の位置の算出結果の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システムを用いた人体重心位置の簡易可視化方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施例2における人体重心位置の簡易可視化システムの一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施例2における人体重心位置の簡易可視化システムを用いて荷重を検知する態様を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施例2における人体重心位置の簡易可視化システムにおけるPCのディスプレイに表示される重心の位置の算出結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施例1〕
以下、本発明の実施例1に係る人体重心位置の簡易可視化システム、及び人体重心位置の簡易可視化方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施例はあくまで本発明に係る人体重心位置の簡易可視化システム、及び人体重心位置の簡易可視化方法の一例に過ぎず、その構成、形状、構造、方法等を限定する趣旨ではない。以下の実施形態においては、被験者が荷重検出器を把持するだけで、水平方向のみならず垂直方向にかかる荷重も検知でき、荷重の情報に基づいて被験者の重心の位置を算出して表示する人体重心位置の簡易可視化システムについて説明する。
【0027】
<装置構成>
図1は、本発明の実施形態における人体重心位置の簡易可視化システム1の全体構成の一例を示す概略図である。本発明の実施形態における人体重心位置の簡易可視化システム1は、荷重検出器としてのロードセル部2と、PC3と、A/Dボード4とを備える。被験者が重心の位置を測定する際には、ロードセル部2に荷重をかけるようにロードセル部2の先端を指先で軽く把持する。ロードセル部2は、被験者がその先端部(後述)を把持することによって生じる荷重を検知する。ロードセル部2の構造については、以下の
図2で説明する。PC3は、ロードセル部2において検知された荷重の情報を取得し、演算部としてのCPU31において、荷重の情報に基づいて被験者の重心の位置を算出する。また、PC3は、表示部としてのディスプレイ32に、算出結果を表示することで重心の位置を可視化する。A/Dボード4は、ロードセル部2とPC3に介在して接続される。A/Dボード4は、ロードセル部2が発信するアナログ信号をサンプリングしてデジタルデータに変換した後、PC3にデジタルデータを送信する。なお、ロードセル部2とA/Dボード4の間の接続、及びPC3とA/Dボード4の間の接続は、有線であっても無線であってもよい。また、ロードセル部2がデジタルデータを出力することが可能である場合は、人体重心位置の簡易可視化システム1の構成要素としてA/Dボード4は不要である。
【0028】
図2は、本発明の実施形態における人体重心位置の簡易可視化システム1を用いて荷重を検知する態様を示す説明図である。
図2においては、A/Dボード4の図示を省略する。ロードセル部2は、先端部21とセンサ部22を有する。被験者が重心の位置を測定する際には、例えば
図2に示すように先端部21を把持し、センサ部22が先端部21に生じる荷重を検知し、この荷重の情報がPC3に送信され、PC3においてこの荷重の情報から重心の位置が算出される。PC3は、算出された時点の重心の位置をディスプレイ32に表示する。なお、ディスプレイ32には、算出された時点の重心の位置と共に当該時点の前の所定期間における重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することもできる。詳細は以下の
図4で説明する。
【0029】
先端部21は垂直方向に延びる略板状の形状を有する。その厚みは例えば10mm以下であってもよい。また、先端に向かって細くなるように形成されていてもよい。さらに、弾性を有する部材で周囲を被覆していてもよい。被験者は、この先端部21の先端を複数の指の先端で軽く摘まむ形で把持する。このため、被験者が先端部21を把持する点においては回転モーメントが生じ難く、センサ部22が先端部21に生じる荷重を検知する際には回転モーメントの影響を無視することが可能となる。センサ部22は、垂直方向(Z方向ともいう)の荷重を検知する第1ロードセル22aと、水平方向(X方向ともいう)
の荷重を検知する第2ロードセル22bを含む。そして、被験者が先端部21を把持する点に対して垂直方向にかかる荷重(
図2に示すF1)、及び被験者が先端部21を把持する点に対して水平方向にかかる荷重(
図2に示すf1)を検知する。
【0030】
人体重心位置の簡易可視化システム1を用いて被験者が重心の位置を算出する際には、被験者が先端部21以外で、体重を支えている点(
図2では左足を置いている点)にも荷重が生じる。具体的には、体重を支えている点に対して垂直方向にかかる荷重(
図2に示すF2)、及び体重を支えている点に対して水平方向にかかる荷重(
図2に示すf2)が生じる。PC3のCPU31は、F2については被験者の体重からF1を減算した値、f2についてはf1を反転した値として演算を実行する。ここで、F2及びf2は、本発明における第2の荷重に相当する。
【0031】
人体重心位置の簡易可視化システム1においては、PC3のデータ入力部(図示略)に事前に入力された以下の3つの情報に基づき、重心の位置を算出する。1つ目の情報は、上述のとおり被験者の体重である。2つ目の情報は、
図2に示すHである。Hは、被験者が先端部21を把持する点と床面の間の垂直距離である。3つ目の情報は、
図2に示すDである。Dは、被験者が先端部21を把持する点と、先端部21以外(本実施例においては床面)で被験者の体重を支えている点の間の水平距離である。第2ロードセル22bは、水平方向の荷重として、被験者が先端部21を把持する点と、先端部21以外で被験者の体重を支えている点を結んだ方向の力を検知可能に設置される。
【0032】
なお、
図2に示す、荷重を検知する際の態様はあくまで一例である。例えば、先端部21を把持する代わりに、先端部21に片足を置く等の態様にしてもよい。他に、床面においては片足に体重をかけて立つ代わりに、両足を揃えて立つ、あるいは椅子等に座る等の態様にしてもよい。また、先端部21の形状について、回転モーメントが生じ難い形状であれば
図2に示す形状の限りではない。例えば径が10mm以下程度であり垂直方向に延びる円柱状の形状であってもよい。
【0033】
<測定方法>
図3は、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システム1を用いて被験者の重心の位置を算出する方法を示す模式図である。被験者が
図2に示すような態様で重心の位置を算出する際には、被験者が先端部21を把持する点(
図3に示す点A)、及び被験者が先端部21以外に床面に体重をかけている点(
図3に示す点B)の二点を、被験者の身体を支える二点として非常に単純化してモデル化している。なお、
図3に示す荷重F1、f1、F2、f2、及びH、及びDは、
図2に示すものと同じである。また、
図3に示す通り、F1、F2、HはZ方向にかかる荷重及び寸法、f1、f2、DはX方向にかかる荷重及び距離である。ここで、点Aは、本発明における接触位置に相当する。また、点Bは、本発明における体重作用点に相当する。
【0034】
上述の通り、被験者が先端部21を把持する際には、被験者の体重、及びH、及びDの3つの情報をPC3のデータ入力部に事前に入力する。その場合、点Aにおいて生じた垂直方向のF1と水平方向のf1に基づいて、点Bにおいて生じた垂直方向のF2と水平方向のf2が求まる。そして、F1とf1の合力が水平方向に対して成す角をθ1、F2とf2の合力が水平方向に対して成す角をθ2としたとき、以下の式(1)(2)が成立する。
tanθ1=F1/f1 θ1=arctan(F1/f1)・・・・・(1)
tanθ2=F2/f2 θ2=arctan(F2/f2)・・・・・(2)
【0035】
以上のように、荷重F1、f1、F2、f2の情報からθ1及びθ2の値が求まる。そうすると、座標平面上において、F1とf1の合力及びF2とf2の合力の交点Gが求ま
る。この交点Gが被験者の重心の位置である。このようにして、水平方向のみならず垂直方向における重心の位置を算出できる。ここで、F1とf1の合力は、本発明における第1荷重ベクトルに相当する。同様に、F2とf2の合力は、本発明における第2荷重ベクトルに相当する。
【0036】
<システム構成>
図4は、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システム1におけるPC3のディスプレイ32に表示される画面の一例を示す説明図である。PC3のディスプレイ32には、被験者の重心の位置、及びPC3のCPU31が取得した荷重の情報が表示される。荷重の情報に基づいて算出された被験者の重心の位置は、
図2に示すDの方向(水平方向)とHの方向(垂直方向)を二軸とした座標平面上に表示される。重心の位置は時間経過に沿って継続的に測定されているため、上述の通り、座標平面上には、CPU31による算出時点における重心の位置を表示することができる。また、CPU31による算出時点の前の所定期間における重心の位置の連続的な移動軌跡を表示することができる。CPU31による算出時点の重心の位置を示すマークは、例えば連続的な移動軌跡を示すマークと異なる色で表示する等、当該時点の重心の位置であることが分かるように表示されるようにしてもよい。なお、重心の位置を示す座標は、数値で表示するようにしてもよい。また、重心の位置に係るデータがロードセル部2に記録されるようにしてもよい。また、座標平面上には重心の位置の連続的な移動軌跡は表示せず、当該時点の重心の位置のみを表示するようにしてもよい。
【0037】
重心の位置としては、水平方向のみならず垂直方向の位置も表示されるため、被験者は重心の位置の高さを把握することが可能である。これによって、重心の位置が水平方向にのみ表示される場合と比較して、被験者は、体勢を変えた際やバランスを崩した際の重心の位置をより正確に把握し、例えば転倒の未然防止に活かすことができる。なお、一般的に、転倒の際には、何かに掴まろうとする動作が無意識に行われる。例えば、手を置く位置を身体から遠ざけていくと、重心の位置が足底の上部の範囲を超えて移行し、限界の範囲を超えると転倒するが、その際、腰を屈めるといった動作を保護的に行っている。本実施例に係る人体重心位置の簡易可視化システム1を用いて、例えばロードセル部2を水平方向及び垂直方向にスライドして被験者の身体から遠ざけていくテストを実施することで、上述のような動作の評価を行うことができる。ロードセル部2がある程度以上遠ざかると被験者は姿勢を維持できなくなるが、この過程の動作を評価することで、転倒等の偶発的なイベントの評価や管理に繋げることが可能である。なお、人体重心位置の簡易可視化システム1は、例えばモーター等のアクチュエータを有し、ロードセル部2が自動的にスライドするようにしてもよい。
【0038】
なお、
図3に示す「Start」には重心の位置の算出の開始後の経過時間、「Loadcell X」及び「Loadcell Z」には
図2に示すf1及びF1の値、「BodyGC X」及び「BodyGC Z」には
図2に示すf2及びF2の値が表示される。これらの表記はあくまで一例であり、類似の意味であれば他の表記であってもよい。
【0039】
<フローチャート>
図5は、本発明の実施形態における人体重心位置の簡易可視化システム1を用いた人体重心位置の簡易可視化方法を示すフローチャートである。以下、
図5を用いて人体重心位置の簡易可視化方法の流れについて説明する。本フローチャートでは、まず、被験者が荷重の情報の基となるパラメータをPC3のデータ入力部に入力する(S101)。荷重の情報の基となるパラメータとは、被験者の体重、及び
図2に示すH、及び
図2に示すDである。ここで、S101は、本発明における入力ステップに相当する。被験者がロードセル部2の先端部21を把持することで、3つのパラメータに基づき、ロードセル部2のセンサ部22が荷重F1、f1を検知する(S102)。ここで、S102は、本発明にお
ける荷重検知ステップに相当する。ロードセル部2は、検知した荷重の情報をPC3のCPU31に伝達する(S103)。PC3のCPU31は、荷重F1、f1の情報に基づいて荷重F2、f2を求める。具体的には、被験者の体重からF1を減算してF2を求め、f1を反転してf2を求める。そして、荷重F1、f1、F2、f2と、H及びDの情報に基づいて重心の位置を算出する(S104)。荷重の情報は時間経過に沿って継続的にCPU31に伝達されており、それに伴って重心の位置も継続的に算出されている。ここで、S104は、本発明における重心位置算出ステップに相当する。算出された重心の位置は二次元の座標平面上に表示され、PC3のディスプレイ32において、CPU31による算出時点の重心の位置と共に当該時点の前の所定期間における重心の位置の連続的な移動軌跡が表示される(S105)。
【0040】
また、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システム1は容易に持ち運びが可能であり、人体重心位置の簡易可視化システム1があれば、例えば床の上等、場所を問わず被験者の重心の位置を測定できる。
【0041】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システム1に対して、被験者を撮像するためのカメラを構成要素として加えた例について説明する。
【0042】
<装置構成>
図6は、実施例2における人体重心位置の簡易可視化システム10の一例を示す概略図である。実施例2における人体重心位置の簡易可視化システム10は、構成要素として、ロードセル部20、及びPC30、及びA/Dボード40の他に、カメラ5を備える。カメラ5は、A/Dボード40を介してPC30に接続されている。カメラ5は荷重を検知する際の被験者を撮像し、得られた撮像データはアナログ信号としてA/Dボード40に送信された後、デジタルデータに変換されてPC30に送信される。カメラ5は方向や角度を調整することができ、被験者を撮像する方向や角度は自由に変更することができる。なお、実施例1における人体重心位置の簡易可視化システム1の構成と同様に、カメラ5とA/Dボード40の間の接続は、有線であっても無線であってもよい。また、ロードセル部20やカメラ5がデジタルデータを出力することが可能である場合は、人体重心位置の簡易可視化システム10の構成要素としてA/Dボード40は不要である。また、PC30が例えばカメラを内蔵し、被験者の撮像が可能である場合には、可視化システム10は、構成要素としてカメラ5を備えていなくてもよい。ここで、カメラ5は、本発明における撮像機に相当する。
【0043】
図7は、実施例2における人体重心位置の簡易可視化システム10を用いて荷重を検知する態様を示す説明図である。
図7に示す荷重を検知する態様について、被験者がロードセル部20の先端部210を掴んでいる状態をカメラ5で撮像し、PC30のディスプレイ320にリアルタイムで動画像として表示する点以外は、実施例1の
図2に示す荷重を検知する態様と同様である。なお、多様な方向や角度から被験者を撮像できるよう、カメラ5は複数あってもよい。
【0044】
<システム構成>
図8は、実施例2における人体重心位置の簡易可視化システム10におけるPC30のディスプレイ320に表示される重心の位置の算出結果の一例を示す説明図である。PC30のディスプレイ320には、実施例1の
図4と同様に被験者の重心の位置、及びPC30のCPU310が取得した荷重の情報が表示され、さらに別画面において、カメラ5で撮像した動画像がリアルタイムで表示される。被験者の重心の位置を示す二次元の座標は、動画像における被験者に重ねて表示することができる。これによって、実施例1のよ
うに動画像が表示されない場合と比較して、被験者の重心の位置がより明確に可視化され、被験者はより容易に重心の位置を把握できる。また、カメラ5を例えばスマートフォンで代用した場合は、被験者を撮像することに加え、被験者の重心の位置の算出に必要な演算をスマートフォンにおいて実行することや、動画像を表示することや、重心の位置に係るデータを記録することが可能であり、人体重心位置の簡易可視化システム10の構成要素としてPC30が不要となり、より簡易化することができる。
【0045】
なお、実施例2における人体重心位置の簡易可視化システム10を用いた人体重心位置の簡易可視化方法について、被験者の重心の位置を算出する方法は、実施例1の
図3と同様である。また、荷重の情報の基となるパラメータの入力から算出した重心の位置の表示までのフローは、実施例1の
図5と同様である。実施例2においては、被験者がロードセル部20の先端部210を掴んでいる状態をカメラ5で撮像するステップは、S102に含まれ、また、カメラ5で撮像した動画像をPC30のディスプレイ320にリアルタイムで表示するステップは、S105に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1、10 :人体重心位置の簡易可視化システム
2、20 :ロードセル部
21、210 :先端部
22、220 :センサ部
22a、220a :第1ロードセル
22b、220b :第2ロードセル
3、30 :PC
31、310 :CPU
32、320 :ディスプレイ
4、40 :A/Dボード
5 :カメラ