(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080950
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】ランニングフォーム評価システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20230602BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20230602BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A63B69/00 Z
A63B71/06 T
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194539
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】514224699
【氏名又は名称】リオモ インク
【氏名又は名称原語表記】LEOMO,Inc.
【住所又は居所原語表記】2000 Central Avenue, Boulder, Colorado 80301 United States of America
【日本における営業所】東京都品川区西五反田7-22-17
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】加地 邦彦
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB14
4C038VB31
4C038VB35
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】コストのかかる大規模な装置や高価なシステムの構築を要することなく、被験者の走行時における左右両脚からの着地による衝撃ノイズや計測誤差の影響を極力抑えて、より正確なランニング競技の動作解析を行う。
【解決手段】装着者の両脚大腿部のそれぞれに装着され、各部位の三次元的な変位又は回転を検出可能な複数の一対の体動センサー40a及び40bと、一対の体動センサー40a及び40bによる検出結果に基づいて装着者の脚の非接地状態を検出し、検出された非接地状態に係る各検出結果を、接地側の状態を示す接地状態データD1~D6として抽出する接地状態検出部117hと、接地状態検出部117hによって抽出された接地状態データD1~D6に基づいてランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部117gと、指標算出部117gが算出した指標を表示又は出力する出力インターフェース111とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の体動を検出し、体動の変化に基づいたランニングフォームを評価するシステムであって、
前記装着者の両脚大腿部のそれぞれに装着され、各部位の三次元的な変位又は回転を検出可能な複数の一対の体動センサーと、
前記一対の体動センサーによる検出結果に基づいて前記装着者の脚の非接地状態を検出し、検出された非接地状態に係る各検出結果を、接地側の状態を示す接地状態データとして抽出する接地状態検出部と、
前記接地状態検出部が抽出した接地状態データに基づいて前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部と、
前記指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力デバイスと
を備えることを特徴とするランニングフォーム評価システム。
【請求項2】
前記ランニングフォームを評価するための基準値からの乖離量と、前記ランニングフォームを評価する指標との相関を保持する指標データを記憶する記憶部と、
前記指標算出部は、前記接地状態データに基づいて前記指標データを参照し、基準値からの乖離量に応じたランニングフォームを評価する指標を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のランニングフォーム評価システム。
【請求項3】
前記基準値からの乖離量に基づいてランニングフォームの安定状態が継続された安定期間を算出する安定性算出部をさらに備え、
前記記憶部は、前記安定性算出部が算出した前記安定期間と、前記安定期間以降の前記乖離量と、前記安定化能力を評価する指標との相関を前記指標データとして記憶し、
前記指標算出部は、前記安定性算出部の算出結果に応じて前記指標データを参照して、前記ランニングフォームを評価する指標を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のランニングフォーム評価システム。
【請求項4】
前記指標算出部は、装着者による設定操作に基づいて、前記所定期間内における平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択された値を前記基準値として設定することを特徴とする請求項2又は3に記載のランニングフォーム評価システム。
【請求項5】
装着者の体動を検出し、体動の変化に基づいたランニングフォームを評価するプログラムであって、コンピューターを、
前記装着者の両脚大腿部のそれぞれに装着され、各部位の三次元的な変位又は回転を検出可能な複数の一対の体動センサーと、
前記一対の体動センサーによる検出結果に基づいて前記装着者の脚の非接地状態を検出し、検出された非接地状態に係る各検出結果を、接地側の状態を示す接地状態データとして抽出する接地状態検出部と、
前記接地状態検出部が抽出した接地状態データに基づいて前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部と、
前記指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力デバイス
として機能させることを特徴とするランニングフォーム評価プログラム。
【請求項6】
前記コンピューターを、さらに、
前記ランニングフォームを評価するための基準値からの乖離量と、前記ランニングフォームを評価する指標との相関を保持する指標データを記憶する記憶部として機能させ、
前記指標算出部は、前記接地状態データに基づいて前記指標データを参照し、基準値からの乖離量に応じたランニングフォームを評価する指標を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載のランニングフォーム評価プログラム。
【請求項7】
前記コンピューターを、さらに、
前記基準値からの乖離量に基づいてランニングフォームの安定状態が継続された安定期間を算出する安定性算出部
として機能させ、
前記記憶部は、前記安定性算出部が算出した前記安定期間と、前記安定期間以降の前記乖離量と、前記安定化能力を評価する指標との相関を前記指標データとして記憶し、
前記指標算出部は、前記安定性算出部の算出結果に応じて前記指標データを参照して、前記ランニングフォームを評価する指標を算出する
ことを特徴とする請求項6に記載のランニングフォーム評価プログラム。
【請求項8】
前記指標算出部は、装着者による設定操作に基づいて、前記所定期間内における平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択された値を前記基準値として設定することを特徴とする請求項6又は7に記載のランニングフォーム評価プログラム。
【請求項9】
装着者の体動を検出し、体動の変化に基づいたランニングフォームを評価する方法であって、
前記装着者の両脚大腿部のそれぞれに、各部位の三次元的な変位又は回転を検出可能な複数の一対の体動センサーを装着し、接地状態検出部が、前記一対の体動センサーによる検出結果に基づいて前記装着者の脚の非接地状態を検出し、検出された非接地状態に係る各検出結果を、接地側の状態を示す接地状態データとして抽出する接地状態検出ステップと、
指標算出部が、前記接地状態検出ステップにおいて抽出された接地状態データに基づいて前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出ステップと、
出力デバイスが、前記指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力ステップと
を備えることを特徴とするランニングフォーム評価方法。
【請求項10】
前記ランニングフォームを評価するための基準値からの乖離量と、前記ランニングフォームを評価する指標との相関を保持する指標データを記憶部が記憶する記憶ステップをさらに含み、
前記指標算出ステップでは、前記接地状態データに基づいて前記指標データを参照し、基準値からの乖離量に応じたランニングフォームを評価する指標を算出する
ことを特徴とする請求項9に記載のランニングフォーム評価方法。
【請求項11】
前記基準値からの乖離量に基づいてランニングフォームの安定状態が継続された安定期間を安定性算出部が算出する安定性算出ステップをさらに含み、
前記記憶ステップでは、前記安定性算出部が算出した前記安定期間と、前記安定期間以降の前記乖離量と、前記安定化能力を評価する指標との相関を前記指標データとして記憶し、
前記指標算出ステップでは、前記安定性算出部の算出結果に応じて前記指標データを参照して、前記ランニングフォームを評価する指標を算出する
ことを特徴とする請求項10に記載のランニングフォーム評価方法。
【請求項12】
前記指標算出ステップでは、装着者による設定操作に基づいて、前記所定期間内における平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択された値を前記基準値として設定することを特徴とする請求項9又は10に記載のランニングフォーム評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランニングにあたり地面反力を容易に且つ安価に推定して、効率的に速く走れるランニングフォームを評価するためのシステム、プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にランニング競技では、効率的に速く走るために、短い時間に地面を押すことが重要となり、そのための身体各部位の動かし方や接地の仕方、各筋出力の発揮の仕方等が影響することとなる。このことから従来より、ランニング競技の動作解析では、その最終的な出力を床反力計で計測することで、ランニングフォームを評価することが行われている。
【0003】
ところが、床反力計は非常に高価であり走路の所定位置に埋め込む必要があることから、設備のコストが過大となるうえ、被験者となるランナーは床反力計の設置位置に歩幅を合わせて接地することが求められるため、任意の距離における応力の変化を正確に計測することが非常に難しいという問題がある。
【0004】
また、この問題を解決するために、トレッドミルと呼ばれるベルトコンベア状の踏み台をモーターの力で動かす装置に床反力計を内蔵させて、任意の設置位置における床反力の計測を継続的に可能とするシステムも開発されている。しかしながら、このようなトレッドミルを利用した装置でも、設備のコストは相変わらず大きく、また、床が動力で動くため、被験者の走行フォームは、自身で地面を蹴る必要がある通常の地面でのフォームとは相違してしまい、正確なデータが得られないということが多くの研究でも報告されている。
【0005】
これに対して、従来より、特許文献1に開示されたような、競技者が身体に加速度センサーを装着し、身体の動きを計測することで床反力計の計測を代替するという試みもされている。この特許文献1に開示された運動解析システムでは、被験者の胴体部分(例えば、右腰、左腰、又は腰の中央部)に、慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)を内蔵した運動解析装置を装着し、被験者の走行(歩行も含む)における動きを捉えて、速度、位置、姿勢角(ロール角、ピッチ角、ヨー角)等を計算し、さらに、被験者の運動を解析し、被験者の走行状態(各種走行情報)を算出後、走行状態の変化点を検出し、走行状態の変化点を含む走行情報である運動解析情報を生成する。
【0006】
このような特許文献1に開示されたシステムによれば、例えば、被験者の走行運動における着地、踏込、離地等の特徴点を検出することができる。具体的には、上下方向加速度(加速度センサーのz軸の検出値)が正値から負値に変化するタイミングで着地を検出し、着地の後、上下方向加速度が負の方向にピークとなった以降に進行方向加速度がピークになる時点で踏込を検出し、上下方向加速度が負値から正値に変化した時点で離地(蹴り出し)を検出することができる。そして、腰回転のタイミングが蹴り出しのタイミングにどれだけ近いかを表す運動指標に基づいて運動解析情報を得ることができる。例えば、脚が流れている走り方では、片脚を着いたときに逆脚はまだ身体の後ろに残っているので、蹴り出し後に腰の回転タイミングが来る場合は脚が流れている走り方と判断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、被験者の胴体部分(例えば、右腰、左腰、又は腰の中央部)に、単一の慣性計測ユニットを装着して走行状態の変化点を検出するものであることから、左右両脚からの着地による衝撃ノイズが非常に大きいうえに、腰の回転によってセンサーの向きが安定せず、解析結果に一定の限界があった。例えば、ランニング中の前傾が入るとそれまで鉛直方向であったセンサーが回転し前後方向の加速度を拾ってしまうこととなり、これを計算で補正しても、衝撃ノイズや計測誤差が大きく影響を及ぼしてしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、コストのかかる大規模な装置や高価なシステムの構築を要することなく、被験者の走行時における左右両脚からの着地による衝撃ノイズや計測誤差の影響を極力抑えて、より正確なランニング競技の動作解析を実現するランニングフォーム評価システム、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明は装着者の体動を検出し、体動の変化に基づいたランニングフォームを評価するシステムであって、前記装着者の両脚大腿部のそれぞれに装着され、各部位の三次元的な変位又は回転を検出可能な複数の一対の体動センサーと、前記一対の体動センサーによる検出結果に基づいて前記装着者の脚の非接地状態又は接地状態を検出し、検出された非接地状態又は接地状態に基づいて判定された非接地状態に係る各検出結果を接地状態データとして抽出する接地状態検出部と、抽出された接地状態データに基づいて前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部と、前記指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力デバイスとを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、装着者の体動を検出し、体動の変化に基づいたランニングフォームを評価する方法であって、
(1) 前記装着者の両脚大腿部のそれぞれに、各部位の三次元的な変位又は回転を検出可能な複数の一対の体動センサーを装着し、接地状態検出部が、前記一対の体動センサーによる検出結果に基づいて前記装着者の脚の非接地状態を検出し、非接地状態に係る各検出結果を、接地側の状態を示す接地状態データとして抽出する接地状態検出ステップと、
(2) 指標算出部が、前記接地状態検出ステップにおいて前記接地状態検出部が検出した非接地状態に係る各検出結果を接地状態データとして抽出し、抽出された接地状態データに基づいて前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出ステップと、
(3) 出力デバイスが、前記指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力ステップと
を含む。
【0012】
なお、上述した本発明に係るシステムや方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。
すなわち、本発明は装着者の体動を検出し、体動の変化に基づいたランニングフォームを評価するプログラムであって、コンピューターを、
前記装着者の両脚大腿部のそれぞれに装着され、各部位の三次元的な変位又は回転を検出可能な複数の一対の体動センサーと、
前記一対の体動センサーによる検出結果に基づいて前記装着者の脚の非接地状態を検出する接地状態検出部と、
前記接地状態検出部によって検出された非接地状態に係る各検出結果を、接地側の状態を示す接地状態データとして抽出し、抽出された接地状態データに基づいて前記ランニングフォームを評価する指標を算出する指標算出部と、
前記指標算出部が算出した指標を表示又は出力する出力デバイス
として機能させることを特徴とする。
【0013】
このような本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、タブレットPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築して、本発明に係る方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、この発明では、従来、腰や胸といった体幹部に装着されていたセンサーの位置を両腿とし、接地している脚とは逆脚での計測を行う。つまり、右足が接地している際の地面反力計測を左脚のセンサーで行う。これにより、本発明によれば、逆脚のデータを使うことで着地による衝撃を受けることがない。接地した脚からみると足首、膝、接地側股関節、逆股関節の先にセンサーがついていることから、ランニングでは逆脚は接地せず股関節を中心として回転運動をしているので、逆側股関節(右接地の際は左股関節)の動きを円滑且つ性格に計測することができる。例えば、腿につけたセンサーの腿鉛直方向の加速度には、腰の水平面上の回転は大きく影響しないことから、概ね鉛直方向に近いので目的とする加速を検出することができる。
【0015】
以上の結果、本発明によれば、コストのかかる大規模な装置や高価なシステムの構築を要することなく、被験者の走行時における左右両脚からの着地による衝撃ノイズや計測誤差の影響を極力抑えて、より正確なランニング競技の動作解析を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係るランニングフォーム評価システムの使用態様を示す説明図である。
【
図2】実施形態で用いられるセンサーで検出されるパラメーターの概要を示す説明図である。
【
図3】実施形態に係る各装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係るランニングフォーム評価方法を示すシーケンス図である。
【
図5】実施形態に係る動作解析処理を示すフロー図である。
【
図6】実施形態で取得される体動再現データの一部(R_Thing-AccZ及びL_Thing-AccZ)を示す得説明図である。
【
図7】実施形態で取得される体動再現データの一部を示す得説明図である。
【
図8】実施形態で取得される体動再現データの一部を示す得説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、情報端末装置100を用いて、ランニング競技の動作解析に本発明を適用し、ランニング競技のトレーニングについてコーチングを可能とするランニングフォーム評価システムを提供する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置などを例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
(ランニングフォーム評価システムの構成)
図1に本実施形態に係る情報端末装置100を用いたランニングフォーム評価システムの使用態様を示し、
図2に本実施形態に係るセンサーで検出されるパラメーターの概要を示す。また、
図3は各装置の内部構成を示すブロック図である。
図1~
図3に示すように、本実施形態に係るランニングフォーム評価システムは、装着者1が使用する情報端末装置100と、装着者1の両大腿部に装着され情報端末装置100に対して無線接続される体動センサー40(40a及び40b)とから構成されている。
【0019】
そして、本システムでは、これら体動センサー40用い、ランニング競技における動作解析を実行するとともに、基準値からの乖離量に基づいてランニングフォームを評価する指標を提供する。この指標は、指標データを参照することにより求められる。本実施形態では、体動データから取得される基準値或いは閾値に基づいて指標データを参照し、安定化能力を評価する指標を求める。この基準値は、装着者による設定操作に基づいて、所定期間内における平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択することができる。
【0020】
(各装置の構成)
以下に、本システムを構成する各装置の具体的な内部構成について説明する。
(1)体動センサー
体動センサー40a及び40bは、装着者1の左右の両大腿部に装着され、各大腿部における三次元的な変位又は回転を検出する一対のセンサーである。本実施形態において体動センサー40a及び40bは、装着者の左右大腿部の前面に取り付けられる。これら体動センサー40a及び40bは、物体の加速度を計測する3軸加速度計と、物体の角速度を検出する3軸ジャイロスコープ、磁場の大きさ・方向を計測する3軸磁気センサーが搭載され、9軸の動きを検知可能となっている。
【0021】
そして、これらの体動センサー40(各体動センサー40a及び40b)は、
図3に示すように、それぞれ無線通信部を有している。この無線通信部は、内部にアンテナを有し、BTLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy,Bluetooth(登録商標) 4.0)等による近距離無線通信のデータ通信用プロトコルを実行する機能によって、情報端末装置100と通信処理が可能となっている。なお、本実施形態において、各体動センサー40の無線通信部は、低消費電力通信用のプロトコルとしてBTLEを採用したが、例えば、ANT、ANT+等を採用することもできる。また、通常のBluetooth(登録商標)を採用することもできる。
【0022】
なお、本実施形態では、基本的に情報端末装置100と体動センサー40との間における近距離無線通信で構築される範囲でシステムが構築可能となっており、通信ネットワーク上のサーバー等とは実際の測定時には接続されず、いわゆるオフラインでのスタンドアローンとして、システムの運用が可能となっている。
【0023】
(2)情報端末装置
図3に本実施形態に係る情報端末装置の内部構成を示す。本実施形態に係る情報端末装置100は、例えばスマートフォンなどの小型の端末装置であり、一般的な矩形状の端末装置でもよく、腕時計型などのウェアラブル端末や、据え置きタイプ、自転車のハンドル部分等に取付けられるマウント型など、種々の形態を採用することができる。なお、この情報端末装置は、走行中に体動データの記録のみを行うときにはバッグなどの収納具にしまっておいてもよい。
【0024】
具体的に情報端末装置100は、
図3に示すように、無線インターフェース113と、制御部117と、メモリ114と、出力インターフェース111と、入力インターフェース112とを備えている。詳述すると、本実施形態に係る情報端末装置100は、各体動センサー40によって検出された検出結果を収集する機能を有し、無線インターフェース113によって各体動センサー40と相互に通信処理を行って、各体動センサー40による検出結果を取得できるようになっている。情報端末装置100のメモリ114は、体動センサー40による検出結果を体動データとして記録する体動記録部としての機能を果たしている。ここで、体動データとは、各種センサーが検出した一次データであり、この体動データを記録し解析し、必要な情報を抽出したり、補正したりした二次データが体動再現データである。
【0025】
なお、各体動センサー40から送信される検出結果には、各体動センサー40を識別するセンサー識別情報が付加されており、情報端末装置100のメモリ114には、当該識別情報が蓄積され、制御部117では無線インターフェース113から取得した際、いずれの体動センサー40から取得した検出結果であるかを判別可能となっている。なお、この識別情報には、各センサーの装着部位を特定する装着部位情報が含まれており、この装着部位情報に基づいて、体動再現データの算出が可能となっている。さらに体動データ内には、各体動センサー40から検出結果を取得した際の時刻情報も含まれている。
【0026】
無線インターフェース113は、通信ネットワークを介した各種情報の送受信や、wifiやBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を制御するモジュールであり、種々のプロトコルにより、各体動センサー40と通信をしたり、3G通信により上記サーバー装置等との間でデータの送受信を行う。さらに、情報端末装置100は、出力インターフェース111と入力インターフェース112とを備えている。入力インターフェース112は、マウス、キーボード、操作ボタンやタッチパネルなどユーザー操作を入力するデバイスである。また、出力インターフェース111には、ディスプレイやスピーカーなど、映像や音響を出力するデバイスが含まれる。特に、この出力インターフェース111には、液晶ディスプレイなどの表示部が含まれるとともに、この表示部は、入力インターフェースであるタッチパネルに重畳されている。
【0027】
出力インターフェース111に接続された表示部は、体動再現データに対する解析結果を表示又は出力する出力デバイスであり、表示情報生成部117eによって生成された表示情報を、出力インターフェース111を通じて表示する。この表示部に掌は、情報端末装置100に内蔵されたディスプレイや、外部に接続された外部ディスプレイに表示される。
【0028】
一方、入力インターフェース112には動画取得部を設けてもよい。この動画取得部は、装着者の体動を撮影し記録した動画データを取得するデバイスであり、例えばスマートフォンなどに内蔵された一般的なカメラで実現され、装着者が自身を撮影したりすることによってフォームのチェックなどを行える他、後述するようなセンサーが取得した体動データと、カメラが撮影した動画との同期処理を行うためにも用いられる。ここで取得される動画データには、映像が記録された映像データと、その映像とともに録音された音声データ、撮影時刻、終了時刻、時間経過などのタイムスタンプ等のメタデータが含まれる。
【0029】
入力インターフェース112には、情報端末装置100に内蔵された内蔵カメラ115や、外部の外部カメラが接続可能となっており、これらの撮影手段で撮影された動画データが取得され、メモリ114に蓄積されたり、制御部117における処理に供される。なお、外部カメラから取得される動画データには、撮影時に逐次リアルタイムで取得されるストリーミングデータの他、外部カメラで撮影され蓄積されたファイル形式の動画データを撮影後にダウンロードして取得されるものも含まれる。
【0030】
また、情報端末装置100は、本実施形態において、各センサーから取得した体動データに基づいて、装着者の体動を解析し、体動再現データを生成する機能を有している。具体的に情報端末装置100は、
図3に示すように、制御部117を備えており、この制御部117は、各部を制御する際に必要な種々の演算を行うCPU等の演算処理装置である。なお、情報端末装置100の各機能は、この制御部117において、本発明のランニングフォーム評価プログラムを実行することにより、制御部117上に仮想的に構築される。詳述すると、制御部117は、ランニングフォーム評価アプリケーションが実行されることによって、体動データ取得部117aと、体動算出部117bと、解析部117dと、表示情報生成部117eとが仮想的に構築される。
【0031】
体動データ取得部117aは、無線インターフェース113を介して、各体動センサー40から体動データを取得して記録するモジュールであり、本実施形態では、各体動センサー40a及び40bと無線通信を行って、これらの検出結果である体動データを取得する。この体動データ取得部117aは、体動データ記録部としての機能を果たし、体動データを一時的にメモリ114内に蓄積したり、体動センサー40による各検出結果を、体動算出部117bに送出したりする。
【0032】
体動算出部117bは、体動記録部であるメモリ114に蓄積された体動センサー40a及び40bによる各検出結果である体動データ、例えば各体動センサー40a及び40bの変位や回転、それらの加速度、角速度、角加速度等に基づいて、装着者の体動を体動再現データとして算出するモジュールである。ここで、体動センサー40による各検出結果である体動データは、いわゆる9軸センサーで測定される値であり、本実施形態では、物体に作用する加速度(重力加速度を含む。)の方向と大きさ、物体の角速度(大きさ、方向、中心位置)、磁場の大きさ・方向(方角)である。
【0033】
ここで算出される体動としては、ランニング時における左右の両大腿部の股関節を中心とする回転、上下・左右・前後方向の移動や加速度、回転の角速度、この角速度の時間的変化、及びその変化の滑らかさが含まれる。詳述すると、本実施形態では、体動センサー40a及び40bは左右の大腿部に取り付けられ、
図2に示すように、センサーによって検出される体動(単発的運動、反復運動)は両大腿部の運動となる。
【0034】
本実施形態において体動算出部117bは、体動センサー40による各検出結果である体動データと、これら体動センサー40の基準値からの乖離量に基づいて、装着者の体動を体動再現データとして算出する。このとき体動算出部117bは、具体的には各体動センサー40の三次元的な座標、速度及び加速度に基づいて、各体動センサー40間における相対的な変位や速度、加速度及び回転(角運動量)に基づいて、身体各部位の変位(体動)の軌跡に基づいて体動再現データを算出する。
【0035】
詳述すると、体動算出部117bは、先ず体動センサー40a及び40bの検出結果である体動データを用いて、装着者のランニングにおける特徴点を検出する処理を行う。装着者のランニングにおける特徴点は、体動センサーによる検出結果が特徴的な挙動を示す検出値及びその変化、時間(時刻)に対応するデータの部分であり、例えば、着地、踏込、離地等の装着者の特徴的な体動に基づく加速度の変化などが挙げられる。また、体動算出部117bは、検出された特徴点のタイミングを基準として、接地時間及び衝撃時間の各値を算出する処理を行う。具体的には、特徴点を含む演算データから、特徴点を検出したタイミングを基準として、その値が継続した時間長や、一定の単位時間内における変化率に基づいて、接地時間及び衝撃時間の各値を算出する。
【0036】
そして、本実施形態において体動算出部117bは、体動再現データに基づいて体動の再現性を評価するための安定基準値を設定する基準値設定部117cと、一対の体動センサー40a及び40bによる検出結果に基づいて装着者の脚の非接地状態を検出する接地状態検出部117hとを備えている。
【0037】
基準値設定部117cは、指標算出部117gに対して、装着者1による設定操作に基づいて所定期間内における平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択された値を基準値として設定する。この基準値の設定操作では、例えば、所定時間間隔をおいて同一の動作を数回繰り返し、その平均値や最小値、最大値の他、装着者1がベストだと思った時点の値を理想値としたりすることができる。また、本実施形態では、他者(多数の他ユーザーや上級者、プロ等)の基準値と、体動再現データとを紐付けて蓄積したデータベースを備えており、上級者やプロの理想値など任意の数値をデータベースから呼び出して設定することもでき、また、入力された体動再現データに類似する体動再現データを検索し、その体動再現データに紐付けられた基準値を呼び出して基準値設定部117cに設定することができる。
【0038】
このとき、呼び出された基準値にはその基礎となった他者の体動再現データが時系列順に蓄積されており、現ユーザーの体動再現データに類似する体動再現データを検索することで、類似する特性や傾向のランニングフォームに対する基準値を設定することができる。この設定に用いられた他者の体動再現データの変化の経過を追跡することにより、その基準値を用いてランニングフォームの矯正を行った結果についてシミュレーションや予測をすることができる。
【0039】
接地状態検出部117hは、検出された特徴点に基づいて、装着者の脚の非接地状態を検出し、検出された非接地状態に係る各検出結果を接地側の状態を示す接地状態データとして抽出するモジュールである。詳述すると本実施形態における接地状態検出部117hは、例えば体動センサーを構成する加速度センサー及び角速度センサーの検出値(体動データ)などに基づいて特徴的な挙動を示す検出値及びその変化、時間(時刻)に基づいて特徴点を検出し、そのタイミングを基準として、接地時間及び衝撃時間、それらの変化率、周期性に応じて接地している状態若しくは接地していない状態の時間的範囲を特定するとともに、接地側の状態を示す非接地状態として特定された範囲に含まれる時間長分のデータにフラグを設定する。このフラグが設定されたデータを接地状態データD1~D6として抽出し、解析部117dは、この接地状態データを含めて、体動再現データとして生成する。
【0040】
上述した体動算出部117bで取得された体動データは、解析部117dへ入力され、相対的な変位や速度、加速度、角速度等に基づいて、装着者1の左右の大腿部それぞれにおける瞬間的な相対的変位(距離や回転)、背部及び要部の相対的な回転運動から体動再現データが生成される。そして、解析部117dは、これらの体動データや接地状態データ等の一次データと、体動再現データなどの二次データとを用いて体動のタイミング、姿勢の崩れ等によってランニングフォームが評価する。
【0041】
詳述すると、解析部117dは、体動データや接地状態データ、体動再現データに基づいて、装着者1の体動の各要素を項目毎に解析するモジュールである。本実施形態では、解析部117dは、基準値設定部117cからの乖離量を算出して体動の再現性を解析するとともに、体動算出部117bが抽出した各大腿部相互の角速度変化や揺動の振幅やゆらぎの特性を解析する特性解析部としての機能を果たし、ここで解析された特性は、例えば、振幅-時間で定義されるタイムライン上に波形として表現され、動作時に装着者を録画したビデオデータと同期すなどの処理がなされたうえで、表示情報生成部117eを介して出力デバイスで表示又は出力される。
【0042】
なお、この解析部117dによる他の解析方法としては、装着者1を3次元的に表示させた立体的なデータを生成するものであってもよく、また、XY平面に投影した2次元的なデータを生成するものであってもよい。また、例えば、模範となる体動データが蓄積されたメモリ114から、模範となる体動データを抽出し、装着者の体動再現データと比較することで、正常な体動とのズレなどを示した改善データを生成してもよい。さらには、予め、性別、身長、体重、年齢などユーザー情報を登録しておくことで、各ユーザー情報に基づいた解析を行ってもよい。そして、解析部117dは、この立体画像データや改善データなどの解析結果を情報端末装置100に送信する。
【0043】
解析部117dは、ランニングフォーム評価処理に係るモジュールとして、指標算出部117gと安定性算出部117fとを備えている。安定性算出部117fは、安定基準値を算出し、その安定基準値からの乖離量に基づいて体動の再現性を評価するモジュールである。指標算出部117gは、体動データから取得される基準値或いは閾値に基づいて指標データを参照しランニングフォームを評価する指標を算出するモジュールである。具体的に、この解析部117dでは、接地状態データについて、ピークの数、各ピークの高さh、ピークの裾の長さ(時間)B、及びピークの形状(ピークの鋭さ、高低の順序、単位時間当たりの積分値(面積等)など)を認識し、ピークが複数あるときには、それぞれのピークの高さh1及びh2、ピークの裾の長さ(時間)及びピークの形状、ピーク間の距離(時間差)を認識して指標との比較に基づいて評価を行う。
【0044】
特に、本実施形態において指標算出部117gは、
図6に示すように、接地状態検出部117hが抽出した接地状態データD1~D6に基づいてランニングフォームを評価する指標を算出する。また、本実施形態において指標算出部117gは、装着者による設定操作に基づいて、所定期間内における、平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択された値を基準値として設定する機能を備えている。
【0045】
安定性算出部117fは、体動再現データや基準値を用いて、装着者の運動を解析し、装着者のランニングフォームの再現性・持続性を評価するために、算出したランニングフォームの変化点を検出する処理を行う。特に、本実施形態において安定性算出部117fは、体動再現データを用いて、装着者自身や他者の過去のランニングフォームを分析し、分析結果である全体分析情報を生成する処理を行う。
【0046】
このとき安定性算出部117fは、装着者が選択した日付や、特徴点が類似する過去の走行記録を検索し、その走行における各種の運動情報の一部又は全部について、平均値の算出処理、走行終了時の最終値の選択処理、これらの値が基準値よりも良いか否か(或いは悪いか否か)や改善率が基準値よりも高いか否か(或いは低いか否か)の判定処理等を行う。また、安定性算出部117fは、予め決められた所定の項目や装着者が選択した項目について、走行した日付毎の平均値(或いは最終値)を算出(或いは選択)して時系列順の指標を生成する。
【0047】
指標算出部117gは、装着者が選択した日付の走行における走行成績を評価し、評価結果の情報や、走り方の改善方法、タイムの短縮方法、トレーニング指導などのコーチングに関する指標を生成する。指標算出部117gは、メモリ114に記憶されている各種の運動情報を用いて、装着者の過去の複数回の走行結果を比較して分析し、或いは、装着者の過去の走行結果を他の装着者の走行結果と比較して分析し、分析結果の情報である比較分析情報を指標に含めることができる。具体的には、指標算出部117gは、装着者が選択した複数の日付の各々の走行について、それぞれ詳細分析情報と同様の比較分析情報を生成し、或いは、装着者が選択した日付の走行と他の装着者の過去の走行とについて、それぞれ詳細分析情報と同様の比較分析の情報を生成する。
【0048】
なお、本実施形態において解析部117dは、同期処理機能を備えており、この同期処理機能は、体動データを表示する時間軸と、カメラで撮影された映像を表示する時間軸とを合致させる同期処理を実行するために、キャリブレーション処理を実行するようにしてもよい。具体的に、本実施形態にかかる同期処理機能は、体動センサー40を反応させる装着者1による所定の特徴的行為(キャリブレーション行為)を映像又は音声中から抽出するとともに、体動データ中の特徴的行為による特徴的反応を抽出し、抽出された特徴的行為のタイミングと特徴的反応のタイミングとを合致させることにより同期処理を行う。この特徴的行為としては、例えば、ランニング時の走り出しなど、静止状態から急激に加速力が作用したときに発生する振動や、体動センサー40自体を所定か数だけ叩いたり揺すったりするなど、短時間中に体動センサー40に対して所定回数振動を加えるような行為が挙げられる。
【0049】
このような特徴的行為の抽出処理としては、例えば画像認識処理によって所定時間長内において所定の形状や色の図形が一定の振幅やリズムで変位するのを検出することで、装着者1が「ランニングを開始する」、「その場で飛び跳ねる」などの特徴的な行為をしていることを認識して、その間の最大変位となった映像中のフレームの撮影時刻を読み出し、その時間情報をキャリブレーション信号として検出する。また、動画データに音声データが含まれているときには、装着者1が叩く音を抽出して、その抽出された時間情報をキャリブレーション信号として検出してもよい。
【0050】
さらに、録画データが長時間にわたるサイズであるときには、ユーザー操作を補助的に行い、ユーザー操作によって指定された時間幅に絞って上記特徴的行為の抽出を行うようにしてもよい。一方、上述した体動センサー40の特徴的反応の検出は、体動センサー40に備えられた各種センサー、例えば加速度センサーの検出値を走査して、一定の振幅以上の反応が所定の時間幅内において所定回数繰り返されている箇所を抽出することにより行う。なお、この特徴的行為及び特徴的反応の検出は、いずれか一方を先に行い、検出された一方のタイムスタンプを参考にして、他方の走査範囲を絞って検出処理を実行するようにしてもよい。
【0051】
そして、抽出された特徴的行為のタイミングと特徴的反応のタイミングとを合致させるには、上述した特徴的行為が行われた時刻のタイムスタンプ(時間情報)と、特徴的反応が検出された時刻のタイムスタンプを整合させるように、両者の再生開始時刻を揃えることにより同期処理を行う。その際、繰り返し行われた行為や反応の間隔に差異がある場合には、動画の再生時間又は体動センサーのタイムラインの長さを伸張させて、動画データと体動再現データの再生開始時刻と終了時刻を整合させるようにして、同期させる。
【0052】
表示情報生成部117eは、出力インターフェース111で表示される表示情報を生成するモジュールであり、解析部117dが解析した体動再現データを動画に対応させて表示又は出力する表示情報を生成する。この表示情報は、本実施形態では、内蔵カメラ115や外部カメラ等で撮影した動画を画面上に表示するとともに、これと、解析部117dが解析した体動再現データとタイムラインとを対比可能に同期させて表示する。なお、この表示情報には表示データとともに、音響信号やその他の出力制御信号が含まれる。
【0053】
また、表示画面には、タッチ操作のためのGUI(Graphical User Interface)が含まれ、このGUIが表示されるタッチパネルに対する操作は、入力インターフェース112に入力され表示情報生成部117eによる表示を切り替えることができる。例えば、内蔵カメラ115や外部カメラで撮影した装着者1の動画を画面に表示したり、タイムラインには体動再現データに含まれる各運動パラメーターを個別的に表示したりでき、表示モードを切り替えることにより、情報端末装置100の内蔵カメラ等で撮影した装着者1を正面から撮影した動画を表示させたり、タイムラインに体動再現データに含まれる各運動パラメーターを重ね合わせて表示することもできる。なお、表示モードを切り替える他の様式としては、例えば、動画にタイムラインを重ね合わせて全画面表示するなど種々の方法を採用することができる。
【0054】
メモリ114は、各種のデータを記録する記憶装置であり、各情報端末装置100を識別する識別情報や、各体動センサー40の装着部位情報、各部位に装着された体動センサー40の相対位置関係、及び上述したユーザー情報や模範となる体動データなどが蓄積されている。メモリ114は、指標データ記憶する記憶部としての機能を果たしており、指標データは、安定性算出部117fが算出した安定期間と、安定期間以降の乖離量と、安定化能力を評価する指標との相関を保持するテーブルデータである。
【0055】
(ランニングフォーム評価方法)
以上の構成を有するランニングフォーム評価システムを動作させることによって、本実施形態に係るランニングフォーム評価方法を実施することができる。
図4にランニングフォーム評価システムの記録動作を示し、
図5に動作解析時における処理を示す。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
(1)記録動作
先ず、装着者1は、左右の両大腿部に一対の体動センサー40a及び40bを装着する。そして、情報端末装置100側で本発明のプログラムであるランニングフォーム評価アプリケーションを起動し、各体動センサー40から検出結果を取得すべくアプリケーションに対して計測開始操作を入力する。このとき必要に応じて外部カメラの撮影開始操作を行う(S201)。この計測開始操作を受けて、情報端末装置100の制御部117は、各体動センサー40と接続処理を行う(S101)。接続処理された後、各体動センサー40では、装着者1の動作の検出を開始する(S102)。具体的には、装着者の大腿部に取り付けられた体動センサー40により各部位の三次元的な変位、回転又は加速度を検出する。
【0056】
次いで、取得された各検出結果は、各体動センサー40の無線通信部を介して、微弱電波により情報端末装置100の無線インターフェース113へと送信される(S103)。情報端末装置100の無線インターフェース113が各検出結果の取得が開始されると(S202)、体動記録部であるメモリ114に、体動センサー40a及び40bによる検出結果を体動データとして記録を開始し、継続して各体動センサー40から送信されてくる検出信号を順次記録してゆく(S203)。この際、必要に応じて競技を開始する前に、装着者はキャリブレーション操作を行ってもよい。具体的には、例えば、カメラの前で、ジャンプしたり装着者1自身の体や体動センサー40自体を所定か数だけ叩いたり揺すったりするなど、短時間中に体動センサー40に対して所定回数振動を加えるような動作を行う。
【0057】
次いで、ランニングを開始し、ランニング中は継続して体動センサー40の検出値の取得し、及び録画処理が継続して実行され、計測が終了しない限り(S206における「N」)、メモリ114等に体動データとして記録される。このとき情報端末装置100に内蔵された内蔵カメラや、外部に接続された外部カメラで撮影された動画データを取得してもよく、その動画データがメモリ114に蓄積されたり、制御部117における処理に供される。この間、体動センサー40による検出データを、リアルタイムで解析して、接地状態データD1~D6を抽出しつつ(S204)、情報端末装置100の表示部に表示する。この解析の1つとして、記録された体動データに基づいてランニングフォームの評価処理が行われる(S205)。
【0058】
その後、例えば、一定時間以上の静止状態を検出したり、装着者の終了操作を検出することによって、競技の終了を検知し、計測を終了するとともに(S206における「Y」)、必要に応じて録画処理を停止する(S207)。その後、各センサーとの通信を切断する(S104)。
【0059】
(2)ランニングフォーム評価処理
上記ステップS205におけるランニングフォーム評価処理について詳述する。
図5に示すように、体動データ取得部117aにより体動データが収集されるとともに、必要に応じて動画データが収集される(S301)。このとき、各センサーから取得された検出値である体動データは、一次データとして表示情報生成部117eに入力され直接出力処理(S306)することができるとともに、体動算出部117bに入力されて必要な情報が抽出され、解析部117dにおいて解析されたり補正されたりして体動再現データである二次データとして表示情報生成部117dに入力され出力処理されることとなる。
体動算出部117bに入力された一次データについては、接地状態検出部117hにおいて装着者の脚の非接地状態が検出され、検出された非接地状態に係る各検出結果が、接地側の状態を示す接地状態データとして抽出される(S302)。本実施形態における接地状態検出部117hは、例えば体動センサーを構成する加速度センサー及び角速度センサーの検出値(体動データ)などに基づいて特徴的な挙動を示す検出値及びその変化、時間(時刻)に基づいて特徴点が検出され、そのタイミングを基準として、接地時間及び衝撃時間、それらの変化率、周期性に応じて接地している状態若しくは接地していない状態の時間的範囲を特定するとともに、非接地状態として特定された範囲に含まれる時間長分のデータにフラグを設定する。このフラグが設定されたデータを、接地側の状態を示す接地状態データD1~D6として抽出される。
【0060】
そして、体動算出部117b及び解析部117dによって、メモリ114に蓄積された体動センサー40による各検出結果及び接地状態データD1~D6の一次データに基づく評価・解析を行うとともに、これらの一次データと各体動センサー40の相対位置関係に基づいて算出された二次データである体動再現データとに基づく解析を行う。先ず、メモリ114に記録された体動データに基づいてランニング動作解析ステップを行う(S303)。詳述すると、体動算出部117bが、先ず体動センサー40a及び40bの検出結果である体動データを用いて、装着者のランニングにおける特徴点を検出する処理を行う。
装着者のランニングにおける特徴点は、体動センサーによる検出結果が特徴的な挙動を示す検出値及びその変化、時間(時刻)に対応するデータの部分であり、例えば、着地、踏込、離地等の装着者の特徴的な体動に基づく加速度の変化などが挙げられる。また、体動算出部117bは、検出された特徴点のタイミングを基準として、接地時間及び衝撃時間の各値を算出する処理を行う。具体的には、特徴点を含む演算データから、特徴点を検出したタイミングを基準として、その値が継続した時間長や、一定の単位時間内における変化率に基づいて、接地時間及び衝撃時間の各値を算出する。
【0061】
なお、このランニング動作解析ステップでは、ユーザーが操作によって設定した基準値を安定性基準値として用いることができ、その安定性基準値からの乖離量を比較することにより再現性を評価してもよく、複数回反復される動作であるときには、その反復運動に関するパラメーターの所定期間(若しくは所定回数)にわたる平均値を安定基準値として算出してもよい。
この基準値の設定については、基準値設定部117cが、装着者1の操作に応じ、メモリ114に蓄積された体動再現データに基づいて、体動の再現性を評価するための安定基準値を設定する。具体的には、装着者1による設定操作に基づいて所定期間内における平均値、最大値、最小値又は任意の代表値から選択された値を基準値として設定する。例えば、この基準値の設定操作では、例えば、所定時間間隔をおいて同一の動作を数回繰り返し、その平均値や最小値、最大値の他、装着者1がベストだと思った回の値を理想値としたり、上級者やプロの理想値など任意の数値を入力して設定することもできる。
【0062】
そして、ランニング動作解析の結果に基づいて指標データを参照し、ランニングフォームに関する評価及びその安定化能力等の評価する指標を、指標算出部117gによって算出する指標算出ステップを実行する(S304)。この指標の算出では、
図6~
図8に示すように、所定の抽出された接地状態データD1~D6について分析を行い、例えば、
図7(a)に示すような、ピークの数、各ピークの高さh、ピークの裾の長さ(時間)B、及びピークの形状(ピークの鋭さ、高低の順序、単位時間当たりの積分値(面積等)など)を認識する。同図(b)に示すように、ピークが複数あるときには、それぞれのピークの高さh1及びh2、ピークの裾の長さ(時間)B1及びB2、及びピークの形状、ピーク間の距離(時間差)を認識する。
【0063】
そして、この認識したピークに関する情報に基づいて、ランニングフォームを評価する指標を算出する。例えば、
図7(a)に示すように、ピークの数が1つで裾野の長さBが狭い場合には「タイミングが早い」といった評価がなされる。また、同図(b)に示すように、ピーク数の2つであり1ピーク目が2ピーク目よりも高いときには「タイミングが少し遅い」と評価され、同図(c)のように、同様にピーク数が2つであっても、1ピーク目と2ピーク目が同じくらいの高さで、2ピーク目の裾野が広くなだらかな形状のときは「タイミングは普通」と評価される。
【0064】
さらに、同図(d)に示すように、ピークが2つであっても、先行する1つ目のピークが極端に低いときにも「タイミング普通」と判断されるが、
図8(a)に示すように、ピークの形状が台形をなしているときには、「タイミングが少し遅い」と判断される。
図8(b)では、ピーク数が1で裾野の幅も一般的だが右側がなだらかなときには「タイミングが早い」と判断され、同図(c)のように、ピーク数が1つであっても裾野の長さBが狭く形状が鋭角をなしているときにも「タイミングが早い」と判断される。また、
図8(d)のように、ピーク数が2つで2番目が台形をなし、裾野が広く右肩がなだらかであるときには「タイミングが普通」であり、同図(e)に示すように、ピークが2つであっても、先行する1つ目のピークが極端に低く、裾野が広く両ピークともになだらかなときには「タイミングが遅い普通」と判断される。
【0065】
また、この指標算出ステップでは、安定基準値からの乖離量が所定の閾値内に収まっているかを随時監視し、これら体動のパラメーターが安定状態を維持していた安定期間を算出するようにしてもよい。例えば、競技開始からの平均値を順次算出し、その平均値が所定の変化量内に収まっている間の平均値を安定基準値とする。安定基準値は、随時に更新され、現在値がこの安定基準値から離れた量を乖離量として随時監視する。その後、算出された指標に基づいて評価処理及び所定の診断処理を行い(S305)、その診断処理の結果及び指標を、これらと対比可能に同期された動画及び体動再現データとともに、情報端末装置100のディスプレイやスピーカーによる音響等によって表示又は出力する(S306)。
【0066】
(ランニングフォーム評価プログラム)
なお、上述した本実施形態に係るランニングフォーム評価システム及びランニングフォーム評価方法は、上述したランニングフォーム評価アプリケーションのように、所定の言語で記述された本発明のランニングフォーム評価プログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。すなわち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築してランニングフォーム評価方法を実施することができる。
【0067】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、センサーの位置を両腿とし、接地している脚とは逆脚での計測を行う。つまり、右足が接地している際の地面反力計測を左脚のセンサーで行う。これにより、本実施形態によれば、逆脚のデータを使うことで着地による衝撃を受けることがない。接地した脚からみると足首、膝、接地側股関節、逆股関節の先にセンサーがついていることから、ランニングでは逆脚は接地せず股関節を中心として回転運動をしているので、逆側股関節(右接地の際は左股関節)の動きを円滑且つ性格に計測することができる。例えば、腿につけたセンサーの腿鉛直方向の加速度には、腰の水平面上の回転は大きく影響しないことから、概ね鉛直方向に近いので目的とする加速を検出することができる。
【0068】
以上の結果、本実施形態によれば、コストのかかる大規模な装置や高価なシステムの構築を要することなく、被験者の走行時における左右両脚からの着地による衝撃ノイズや計測誤差の影響を極力抑えて、より正確なランニング競技の動作解析を実現できる。
【0069】
また、本実施形態に係るランニングフォーム評価プログラムでは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、また、コンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。この記録媒体として、具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【0070】
なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0071】
D1~D6…接地状態データ
1…装着者
40…体動センサー
100…情報端末装置
111…出力インターフェース
112…入力インターフェース
113…無線インターフェース
114…メモリ
115…内蔵カメラ
117…制御部
117a…体動データ取得部
117b…体動算出部
117c…基準値設定部
117d…解析部
117e…表示情報生成部
117f…安定性算出部
117g…指標算出部
117h…接地状態検出部