(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080971
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】プロファイルデータ導出システム、プロファイルデータ導出方法、プロファイルデータ導出プログラム、評価値算出システム、評価値算出方法、評価値算出プログラム、平坦性判定システム、平坦性判定方法および平坦性判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 7/02 20060101AFI20230602BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G01C7/02
E01C23/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194572
(22)【出願日】2021-11-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年9月3日、ヤマイチ・コンストラクション株式会社 代表 山下様に公開 (2)令和3年9月3日、阪神北県民局宝塚土木事務所三田業務所 主査 田中様に公開 (3)令和3年9月30日、国土交通省(i-Construction大賞 応募審査資料)に公開
(71)【出願人】
【識別番号】516225913
【氏名又は名称】株式会社エムアールサポート
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(74)【代理人】
【識別番号】100129377
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】草木 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】森 誉光
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA33
2D053FA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】路面の舗装工事を行う前に、舗装工事が行われた場合の路面の平坦性を判定する。
【解決手段】本発明の平坦性判定システム1は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶部11aと、3次元設計面データ記憶部11aに記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する操作部3と、3次元設計面データ記憶部11aに記憶された3次元設計面データに基づいて、操作部3で指定された調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出部13と、プロファイルデータ導出部13で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するためのIRI値を算出する評価値算出部14と、評価値算出部14で算出されたIRI値に基づいて調査箇所の平坦性を判定する平坦性評価部15とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶手段と、
前記3次元設計面データに記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定手段と、
前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定手段で指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段とを備えることを特徴とするプロファイルデータ導出システム。
【請求項2】
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、
前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、
前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定ステップで指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップとを備えることを特徴とするプロファイルデータ導出方法。
【請求項3】
コンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータを、
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付手段、
前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付手段、
前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データに基づいて、前記指定情報受付手段で受け付けた指定情報により指定される前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段として機能させることを特徴とするプロファイルデータ導出プログラム。
【請求項4】
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶手段と、
前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定手段と、
前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定手段で指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段と、
前記プロファイルデータ導出手段で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出手段とを備えることを特徴とする評価値算出システム。
【請求項5】
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、
前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、
前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定ステップで指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップと、
前記プロファイルデータ導出ステップで導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出ステップとを備えることを特徴とする評価値算出方法。
【請求項6】
コンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータを、
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付手段、
前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付手段、
前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データに基づいて、前記指定情報受付手段で受け付けた指定情報により指定される前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段、
前記プロファイルデータ導出手段で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出手段として機能させることを特徴とする評価値算出プログラム。
【請求項7】
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶手段と、
前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定手段と、
前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定手段で指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段と、
前記プロファイルデータ導出手段で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値算出手段で算出された評価値に基づいて調査箇所の平坦性を判定する平坦性評価手段とを備えることを特徴とする平坦性判定システム。
【請求項8】
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、
前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、
前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定ステップで指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップと、
前記プロファイルデータ導出ステップで導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値算出ステップで算出された評価値に基づいて調査箇所の平坦性を判定する平坦性評価ステップとを備えることを特徴とする平坦性判定方法。
【請求項9】
コンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータを、
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付手段、
前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付手段、
前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データに基づいて、前記指定情報受付手段で受け付けた指定情報により指定される前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段、
前記プロファイルデータ導出手段で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出手段、
前記評価値算出手段で算出された評価値に基づいて調査箇所の平坦性を評価する平坦性判定手段とを備えることを特徴とする平坦性判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば舗装工事が行われる路面の平坦性を判定する際に使用されるプロファイルデータ導出システム、プロファイルデータ導出方法、プロファイルデータ導出プログラム、評価値算出システム、評価値算出方法、評価値算出プログラム、平坦性判定システム、平坦性判定方法および平坦性判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路は、車両等が通行することにより凹凸が生じることから補修する必要があり、その補修を行う際には、道路の路面の凹凸状態についてのデータが取得される。その後、路面の凹凸状態に応じて、どのように補修を行うかを示す補修計画面である3次元設計面データが作成されて、その3次元設計面データに基づいて舗装工事が行われる。
【0003】
なお、路面の凹凸状態について、自動車の乗り心地を評価するために路面の凹凸を指数で表わしたものとして、国際ラフネス指数(IRI:International Roughness Index)が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
舗装工事に際して3次元設計面データを作成する場合に、どのように補修を行うかの考え方が異なると互いに異なる3次元設計面データが作成される。すなわち、例えば同一の補修箇所について舗装工事を行う際に、複数の設計者がそれぞれ3次元設計面データを作成した場合、それらの3次元設計面データは互いに異なるものとなるのが一般的である。
【0006】
また、従来は、舗装工事を行う際に使用される3次元設計面データを作成する場合に、新たに敷設する層の厚さが所定厚さ以上であるか否かが重視されてきた。従来のように新たに敷設する層の厚さ管理を重視して作成された3次元設計面データに基づいて舗装工事が行われた場合に、その補修が行われた後の路面の国際ラフネス指数が大きい値となり、路面の平坦性が非常に悪くなる場合があった。
【0007】
さらに従来は、3次元設計面データに基づいて実際に補修を行った後でなければ、路面の平坦性を評価することができなかったため、場合によっては、補修施工後に平坦性が悪いために、路面の補修がやり直される場合もある。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、路面の補修を施工する前に3次元設計面データに基づいて補修施工後の路面の平坦性を判定することを可能とするプロファイルデータ導出システム、プロファイルデータ導出方法、プロファイルデータ導出プログラム、評価値算出システム、評価値算出方法、評価値算出プログラム、平坦性判定システム、平坦性判定方法および平坦性判定プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係るプロファイルデータ導出システムは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶手段と、前記3次元設計面データに記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定手段と、前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定手段で指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプロファイルデータ導出方法は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定ステップで指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプロファイルデータ導出プログラムは、コンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータを、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付手段、前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付手段、前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データに基づいて、前記指定情報受付手段で受け付けた指定情報により指定される前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段として機能させることを特徴とする。
【0013】
これにより、本発明に係るプロファイルデータ導出システム、プロファイルデータ導出方法およびプロファイルデータ導出プログラムでは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データに基づいて、調査箇所のプロファイルデータを導出することができる。そのため、路面の舗装工事を行う前に、3次元設計面データに基づいて舗装工事が行われた場合の路面の平坦性を判定することができる。
【0014】
本発明に係る評価値算出システムは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶手段と、前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定手段と、前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定手段で指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段と、前記プロファイルデータ導出手段で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る評価値算出方法は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定ステップで指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップと、前記プロファイルデータ導出ステップで導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出ステップとを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る評価値算出プログラムは、コンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータを、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付手段、前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付手段、前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データに基づいて、前記指定情報受付手段で受け付けた指定情報により指定される前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段、前記プロファイルデータ導出手段で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出手段として機能させることを特徴とする。
【0017】
これにより、本発明に係る評価値算出システム、評価値算出方法および評価値算出プログラムでは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データに基づいて、調査箇所についての平坦性を判定するための評価値を算出することができる。そのため、路面の舗装工事を行う前に、3次元設計面データに基づいて舗装工事が行われた場合の路面の平坦性を判定することができる。
【0018】
本発明に係る平坦性判定システムは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶手段と、前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定手段と、前記3次元設計面データ記憶手段に記憶された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定手段で指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段と、前記プロファイルデータ導出手段で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出手段と、前記評価値算出手段で算出された評価値に基づいて調査箇所の平坦性を判定する平坦性評価手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る平坦性判定方法は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、前記3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、前記調査箇所指定ステップで指定された前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップと、前記プロファイルデータ導出ステップで導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出ステップと、前記評価値算出ステップで算出された評価値に基づいて調査箇所の平坦性を判定する平坦性判定ステップとを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る平坦性判定プログラムは、コンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータを、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付手段、前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付手段、前記3次元設計面データ受付手段で受け付けた3次元設計面データに基づいて、前記指定情報受付手段で受け付けた指定情報により指定される前記調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出手段、前記プロファイルデータ導出手段で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するための評価値を算出する評価値算出手段、前記評価値算出手段で算出された評価値に基づいて調査箇所の平坦性を評価する平坦性判定手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
これにより、本発明に係る平坦性判定システム、平坦性判定方法および平坦性判定プログラムでは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データに基づいて、路面の舗装工事を行う前に、舗装工事が行われた場合の路面の平坦性を判定することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によれば、路面の舗装工事を行う前に、3次元設計面データに基づいて舗装工事が行われた場合の路面の平坦性を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る平坦性判定システム1の概略構成を示した図である。
【
図4】点群データを三次元TINモデルに変換して調査箇所における各点のデータを導出する方法を説明する図である。
【
図5】
図5(a)は、補修起工時における2車線の道路の平面図であり、
図5(b)は、補修起工時におけるマンホール周辺部の拡大図である。
【
図6】マンホール周辺部の標高を示す模式図である。
【
図7】3種類の補修計画面の作成方法を説明する図である。
【
図8】道路の路面における線状の調査箇所の例を示す図である。
【
図10】3種類の補修計画面における調査個所のIRI値を示す図である。
【
図11】
図1の平坦性判定システム1の平坦性判定方法を示す図である。
【
図12】調査箇所における各点のデータを導出する方法の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
本発明の実施形態に係る平坦性判定システム1は、平坦性判定装置2と、平坦性判定装置2に接続される操作部3及び表示画面5とを有している。平坦性判定装置2は、取込装置2aを有しており、取込装置2aを介して外部からのデータを取り込み可能に構成される。
【0026】
平坦性判定装置2は、
図1に示すように、制御部10を有しており、制御部10は、例えば、マイクロコンピュータなどで構成されており、CPUと、平坦性判定装置2の動作を制御するプログラムが格納されたROMと、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶されるRAMとを備えている。即ち、制御部10は、CPU、メモリ及びインターフェースを含む通常のマイクロコンピュータを主体として構成されるもので、メモリに記憶されている平坦性判定プログラムに従い所定の演算、処理を行って、周辺ハードウェアとの協働の下に、取込装置2aから取り込んだデータに基づいて、平坦性を判定する。
【0027】
平坦性判定装置2の制御部10は、3次元設計面データ記憶部11aを含む3次元設計面データ受付部11と、指定情報受付部12と、プロファイルデータ導出部13と、評価値算出部14と、平坦性判定部15とを有している。また、平坦性判定装置2の制御部10には、操作部3と、表示画面5とが接続されている。
【0028】
3次元設計面データ受付部11は、取込装置2aから供給された3次元設計面データを受け付ける。3次元設計面データ受付部11により受け付けられた3次元設計面データは、3次元設計面データ記憶部11aに記憶される。
【0029】
3次元設計面データとは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データであり、舗装工事を行う路面の計画面を示す3次元データである。すなわち、3次元設計面データは、舗装工事を行う路面の計画面における各点についての緯度、経度及び標高(高さ)に対応したデータを含んでいる。
【0030】
舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを作成する際、まず、補修起工時における道路の路面の凹凸状態についてのデータが3Dスキャナ2などにより取得される。3Dスキャナ2は、レーザ光を照射することにより道路の路面及びその周辺の各点を3次元座標化された点群データ(平面位置座標を有する標高の集合)として取得する。
【0031】
補修起工時における道路の路面の凹凸状態についてのデータが取得されると、その路面の凹凸状態を改善するための補修計画面を示す3次元設計面データが作成される。
【0032】
補修計画面は、縦横断計画を含んでおり、道路の縦断方向に沿った縦断計画が行われた後、道路の複数個所における横断方向に沿った横断計画が行われることにより、補修する際に使用される補修計画面が取得される。したがって、補修計画面には、縦断計画面を示す計画面データと、複数の横断計画面を示す計画面データとが含まれる。
【0033】
縦断計画は、道路の中央部において、道路の縦断方向に沿った線上の各点の標高についての計画を含んでいる。例えば、
図2は、道路の中央部に沿った線上の各点の標高についての縦断計画面を示している。
図2では、補修計画が必要である補修箇所が、左側の補修がされない箇所と右側の補修されない箇所との間にある。
図2の補修箇所には、点群データに基づいた標高の変化が図示されると共に、縦断計画面が図示されている。
【0034】
図2の縦断計画面は、道路の中央部に沿った線上の各位置における標高が、道路の平坦性などを考慮して計画された後、それらの標高を接続することにより得られる。道路の中央部に沿った線上の位置は、例えば10mおきの位置や20mおきの位置である。
【0035】
縦断計画において、道路の中央部に沿った線上の各位置での標高について計画された後で横断計画が行われる。横断計画は、道路の中央部に沿った線上の各位置での道路の横断方向に沿った線上にある各点の標高についての計画である。例えば、
図3は、
図2のa点での道路の横断方向に沿った線上にある各点の標高についての横断計画面を示している。
図3では、補修計画が必要である補修箇所が、道路の左側端部と道路の右側端部との間にある。補修箇所には、点群データに基づいた標高の変化が図示されると共に、横断計画面が図示されている。
図3では、道路の傾斜を分かりやすいように誇張して図示している。
【0036】
横断計画面は、
図2に示した道路の中央部に沿った線上の各位置について、道路中央の標高から道路の両端に向かって下方に傾斜する傾斜面の傾斜度などを考慮して計画されることにより得られる。例えば道路の横断計画を行う場合、通常、道路中央から道路の端に向かって所定の傾斜度で下方に傾斜するように設計されるのが一般的である。
【0037】
例えば、
図3の横断計画面では、
図2の縦断計画面におけるa点の道路中央の標高から、道路の両端に向かって所定の傾斜度で下方に傾斜する傾斜面に沿って、a1点まで標高が低下し、その後、a1点と道路の左側端部及び道路の右側端部とを接続する接続面に沿って、道路の左側端部及び道路の右側端部まで標高が低下する。したがって、横断計画面に基づいて補修されると、補修箇所に形成されるアスファルト舗装の表層部と、道路の左側端部及び道路の右側端部のコンクリート部とは、段差がない状態で接続される。なお、
図3の横断計画面は、横断計画面の例であり、横断計画の方法は、それに限られない。したがって、横断計画面は、例えば、道路中央から道路の端に向かって異なる複数の傾斜度で下方に傾斜する傾斜面が接続されるように設計されてよい。
【0038】
上述のようにして得られた道路の中央部に沿った線上の各位置における横断計画面を縦断方向に接続することにより、路面を補修する際の補修計画面(3次元設計面データ)が取得される。
【0039】
補修計画面において、縦横断計画により設計された各点を頂点として連結された3角形平面の集合体である三次元TINモデル(不定形三角網)に変換して、道路の路面における各点の緯度、経度及び標高に対応したデータを導出可能であり、調査領域における各点が、縦横断計画により取得されてない場合でも、各点の緯度、経度及び標高に対応したデータを導出することが可能である。
【0040】
具体的には、
図4において、A
1点、A
2点及びA
3点の各点が、縦横断計画により取得されている場合、A
1点、A
2点及びA
3点を頂点として連結された3角形平面の集合体である三次元TINモデルに変換される。線状の調査箇所上にあるa
1点及びa
2点は、その3角形平面の内部にあり、A
1点、A
2点及びA
3点を通過する平面上にあるとして、a
1点及びa
2点における標高に対応したデータを導出する。
【0041】
以下、3次元設計面データの作成方法の具体例について、マンホール周辺部の補修計画面を示す3次元計画面データの作成方法を説明する。
【0042】
図5(a)は、補修起工時における2車線の道路の平面図であり、上側の車線の道路には、マンホールが設けられている。
図5(b)は、補修起工時におけるマンホール周辺部の拡大図である。
図5(b)には、マンホール周辺部の路面の凹凸状態についてのデータの一部が図示されている。本実施形態では、横断方向に沿う線上において、マンホールの道路外側に位置する2箇所の平面位置N1,N2の標高がn
1メートル,n
2メートルであり、マンホールの道路内側に位置する2箇所の平面位置N3,N4の標高がn
3メートル,n
4メートルである場合について説明する。
【0043】
図6は、マンホール周辺部の標高を示す模式図であり、
図5(b)に示した各点の標高を示している。本実施形態では、平面位置N1の標高は、マンホールの標高T1よりもt
1cm高く、平面位置N2の標高は、マンホールの標高T1よりもt
2cm低く、平面位置N3の標高は、マンホールの標高T1よりもt
3cm高く、平面位置N4の標高は、マンホールの標高T1よりもt
4cm高く場合について説明する。
【0044】
このように、マンホール周辺部において平面位置N1~N4の標高がマンホールの標高T1よりも低い場合、その標高差が少なくなるように3次元設計面データが作成される。
図7(a)~
図7(c)では、3次元設計面データの含まれるマンホール周辺部の設計方法を示している。
【0045】
例えば、
図7(a)に示す3次元設計面データAでは、マンホールの標高T1は変えないで、平面位置N1~N4の標高がマンホールの標高T1よりも少し高くなるように、補修計画面が作成されている。例えば、3次元設計面データAにおいて、N1~N2間の勾配とN3~N4間の勾配とは同じ一定の勾配であり、N2とN3とを結べば、N1~N4まで同じ一定の勾配になる。
【0046】
図7(b)に示す3次元設計面データBでは、マンホールの標高T1は変えないで、平面位置N1~N4の標高がマンホールの標高T1よりも少し低くなるように、補修計画面が作成されている。例えば、3次元設計面データAにおいて、N1~N2間の勾配とN3~N4間の勾配とは同じ一定の勾配であり、N2とN3とを結べば、N1~N4まで同じ一定の勾配になる。
【0047】
図7(c)に示す3次元設計面データCでは、マンホールの標高T1は変えないで、平面位置N1~N2の標高がマンホールの標高T1よりも少し低くなり、平面位置N3~N4の標高がマンホールの標高T1よりも少し低くなるように補修計画面が作成されている。
【0048】
このように、
図7(a)~
図7(c)に示すようにマンホール周辺部において路面の凹凸を無くすための補修計画面を互いに異なる補修方法に基づいて作成すると、互いに異なる補修計画面となることが分かる。なお、道路のように長いスパンで工事する場合、縦断方向または横断方向について、補修計画面の道路の勾配は全ての領域で同じ一定の勾配であることが、平坦性を確保する為には望ましいが、マンホールのような附帯物がある場合、局所的に附帯物の標高に合わせるので、
図7(a)及び
図7(b)に示すように歪な形状になる場合がある。
【0049】
図7(a)~
図7(c)では、マンホール周辺部についての設計方法を示しているが、マンホール周辺部以外の領域についても同様に、互いに異なる補修方法に基づいて作成すると、互いに異なる補修計画面となる。
【0050】
指定情報受付部12は、操作部3が操作されることにより指定された道路の路面における線状の調査箇所についての指定情報を受け付けて記憶する。具体的には、指定情報受付部12は、表示画面5に表示された3次元設計面データにおいて、操作部3が操作されることにより、始点(起点)と、終点と、始点と終点との間の経路とが指定された際に、その線状の調査箇所についての指定情報を記憶する。
【0051】
本実施形態では、道路の路面の平坦性を調査するために、
図8に示すように、車線中央から路肩側に100cmの位置a1に沿った直線状の調査箇所A1、または、道路の車線における外側車輪通過位置a2に沿った直線状の調査箇所A2が指定される。例えば、国際ラフネス指数は、1つの線状の調査箇所における各点の緯度、経度及び標高に対応したデータに基づいて作成された縦断プロファイルがあれば計算可能である。
【0052】
このように、指定情報受付部12は、直線状の調査箇所A1が指定される場合、指定情報として、始点1と、終点1と、始点1と終点1との間の直線状の経路についての指定情報を受け付ける。また、指定情報受付部12は、直線状の調査箇所A2が指定される場合、指定情報として、始点2と、終点2と、始点2と終点2との間の直線状の経路についての指定情報を受け付ける。
【0053】
なお、線状の調査箇所を指定する方法は任意であり、例えば、始点についての緯度および経度と、終点についての緯度および経度が数値で指定され、その間の経路が直線で指定されてもよい。また、3次元設計面データが表示画面5に表示された画面上において、始点と終点とがポイント指定され、その間の経路が直線で指定されてもよい。
【0054】
プロファイルデータ導出部13は、3次元設計面データに含まれる調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したデータを導出して、道路の路面のプロファイルデータ、すなわち縦断プロファイル(路面の高さの変化を示したもの)を作成する。本実施形態において、道路の路面の縦断プロファイルには、始点の緯度、経度及び標高に対応したデータと、終点の緯度、経度及び標高に対応したデータと、始点と終点との間の経路における等間隔おきの緯度、経度及び標高に対応したデータとを含んでいる。
【0055】
本実施形態において、プロファイルデータ導出部13は、始点と終点との間の経路において、25cm以下の間隔(本実施形態では、25cmおきの等間隔)でデータを取り出して、道路の路面の縦断プロファイルを作成する。始点と終点との間の経路においてデータを取り出す間隔は、任意に設定可能である。
【0056】
具体的には、プロファイルデータ導出部13は、始点についての緯度および経度と、終点についての緯度および経度とに基づいて、始点と終点との間の経路上にある所定間隔おきの各点についての緯度および経度を導出するとともに、その各点についての標高を導出する。すなわち、プロファイルデータ導出部13により導出されるプロファイルデータは、調査箇所上にある所定間隔おきの各点についての緯度、経度及び標高のデータを含んでいる。プロファイルデータは、道路の縦断方向に沿った断面(路面の高さの変化)を示したものである。
【0057】
プロファイルデータ導出部13により作成された縦断プロファイルは、
図9に示すように、線状の調査箇所における等間隔おきの緯度、経度及び標高に対応したデータを含む。
図9において、a、b及びcは、それぞれ、緯度、経度及び標高を示す数値である。
図9では、データNO.1が始点における緯度、経度及び標高に対応したデータであり、データNO.nが終点における緯度、経度及び標高に対応したデータであり、データNO.2~NO.n-1が始点と終点との間の経路における等間隔おきの緯度、経度及び標高に対応したデータである。
【0058】
評価値算出部14は、プロファイルデータ導出部13により導出されたプロファイルデータに基づいて、平坦性を評価するための評価値を算出する。本実施形態において、平坦性を評価するための評価値としては、自動車の乗り心地を評価するために路面の凹凸を指数で表わした国際ラフネス指数(IRI:International Roughness Index)が使用される。
【0059】
評価値算出部14におけるIRI値の計算は、道路の路面のプロファイルデータを用いて、計算プログラムを利用してコンピュータで処理されるのが一般的である。この計算プログラムの代表的なものとしては、Provalと呼ばれるソフトウェアがある。例えば、IRI値は、1つの線状の調査箇所における各点の緯度、経度及び高さに対応したデータに基づいて作成された縦断プロファイルがあれば計算可能である。
【0060】
平坦性判定部15は、評価値算出部14により算出されたIRI値に基づいて調査箇所の平坦性を判定する。平坦性判定部14は、IRI値が小さいほど平坦性が良好と判定する。本実施形態では、平坦性判定部14は、IRI値が3以下である場合に、平坦性が良好と判定する。
【0061】
平坦性判定部15における評価の具体例は、下記のようになる。
IRI値が0(完全平坦)~3mm/m程度の場合:
損傷レベル 小(望ましい管理水準) 新設舗装と同等のレベル。路面の凹凸量は目立たない。(良好なアスファルト舗装面で、IRI値=1.4~2.4mm/m程度)
【0062】
IRI値が3~8mm/m程度の場合:
損傷レベル 中(補修が必要) 古い舗装の場合で劣化がかなり進行したような状態。
【0063】
IRI値が8mm/m程度以上の場合:
損傷レベル 大(早急な補修が必要) 古い舗装の場合で劣化が進行し、明確な損傷が連続的に発生している状態。
【0064】
上述したように、マンホール周辺部において路面の凹凸を無くすための補修計画面を、互いに異なる補修方法に基づいて作成すると、異なる補修計画面となることが分かった。そのため、3次元設計面データA、B、Cにおいて、
図10(a)~
図10(c)に示すように同一の調査個所を指定した場合でも、その調査個所上のプロファイルデータは、3次元設計面データA、B、Cごとに異なり、そのプロファイルデータにより算出されるIRI値も同様に、3次元設計面データA、B、Cごとに異なる値となる。
【0065】
図10(a)~
図10(c)に示す3次元設計面データA、B、Cにおいて、調査個所上のプロファイルデータにより算出されるIRI値が、それぞれ、C
A、C
B、C
Cであるとすると、そのIRI値の大きさにより、調査個所の平坦性を判定することができる。
【0066】
例えば、3次元設計面データA、B、CのそれぞれのIRI値がCA<CB<CCであるとすると、3次元設計面データA、B、Cのそれぞれに基づいて路面の舗装工事を行った場合、舗装工事の調査個所の平坦性は、3次元設計面データAが最も良好であり、3次元設計面データCが最も悪くなると考えられる。すなわち、例えば、3次元設計面データのIRI値が2.994であれば、その3次元設計面データに基づいて舗装工事を行うと、調査個所の平坦性は良好なものとなるのに対して、3次元設計面データのIRI値が4.232であれば、その3次元設計面データに基づいて舗装工事を行うと、調査個所の平坦性は悪く、舗装工事を行ったにもかかわらず、補修が必要な程度の路面の平坦性となる。
【0067】
このように、マンホール周辺部において路面の凹凸を無くすための補修計画面を複数作成して、その補修計画面(3次元設計面データ)における同一の調査個所のプロファイルデータに基づいてIRI値を算出することにより、補修計画面を作成した段階で、その補修計画面に基づいて舗装工事を行った場合の調査個所の平坦性を評価することができる。
【0068】
すなわち、マンホールの高さを変えずにマンホールの高さに路面を合わせる方がよいか、または、マンホールの高さを上下させた後で、高さを変えたマンホールの高さに路面を合わせる方がよいか、など、それぞれの場合の補修計画面における調査個所のIRI値を比較することにより、どちらの補修計画面がよいかを、路面の舗装工事を行う前に、評価することができる。
【0069】
なお、
図10(a)~
図10(c)に示す3次元設計面データA、B、Cでは、1つの調査個所のIRI値の大きさを比較しているが、3次元設計面データA、B、Cにおいて、複数の調査個所のIRI値の大きさを比較してもよい。
【0070】
以上説明したように、3次元設計面データの評価する際に、従来のように新たに敷設する層の厚さを重視した場合、舗装工事後の路面の平坦性が悪くなることがあるのに対して、舗装工事後の路面の平坦性を重視することで、舗装工事後の路面の平坦性を確実に良好なものとすることができる。
【0071】
舗装工事後の路面の平坦性が悪い場合、車が跳ねてバウンドすると舗装がいがみ、ちょっとした摩耗で凹んでも跳ねると凹が大きくなるため、路面の寿命が短くなる問題がある。これに対して、舗装工事後の路面の平坦性が良好なものとなると、車が跳ねなくなるため、路面の長寿命化が可能となる。
【0072】
舗装工事後の路面の平坦性が悪い場合、がたがたの道を車両が走行することになり、昼夜を問わず、車から大きな音がなり近隣住民に騒音被害をもたらす。特に、トラックの場合、騒音発生が顕著で、平坦性が悪化する程に、荷台の荷物がガタガタと大きな音を立てるようになる。これに対して、舗装工事後の路面の平坦性が良好なものとなると、騒音の低減が可能となる。
【0073】
車両は、摩擦抵抗が少ない平坦な道路を走行する方が、車両の燃費性能は良くなる。そのため、舗装工事後の路面の平坦性が悪い場合、車両の燃費性能を悪化させて、その分燃料を多く使用し、排出ガスが多くなり、道路周辺の環境悪化や地球温暖化の要因になる。これに対して、舗装工事後の路面の平坦性が良好なものとなると、車両の燃費悪化を防止することが可能となる。
【0074】
本実施形態の平坦性判定システム1における平坦性判定方法について、
図11に基づいて説明する。
【0075】
ステップS1において、舗装工事を行う領域について、別途、作成された3次元設計面データ(補修計画面)を平坦性判定装置2に供給する。3次元設計面データ受付部11は、3次元設計面データを受け付けて、そのデータを3次元設計面データ記憶部11aに記憶する。
【0076】
ステップS2において、操作部5bが操作されることにより、3次元設計面データの路面上に線状の調査箇所が指定される。指定情報受付部12は、操作部3の操作に基づいて指定された調査箇所についての指定情報を受け付けて、その指定情報を記憶する。
【0077】
ステップS3において、プロファイルデータ導出部14は、3次元設計面データに基づいて、調査箇所上のプロファイルデータを導出する。
【0078】
ステップS4において、評価値算出部14は、プロファイルデータに基づいて、調査箇所についてのIRI値を算出する。
【0079】
ステップS5において、平坦性判定部15は、IRI値にもとづいて、その調査箇所についての平坦性を判定する。
【0080】
本実施形態の平坦性判定システム1は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶部11aと、3次元設計面データ記憶部11aに記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する操作部3と、3次元設計面データ記憶部11aに記憶された3次元設計面データに基づいて、操作部3で指定された調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出部13と、プロファイルデータ導出部13で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するためのIRI値を算出する評価値算出部14と、評価値算出部14で算出されたIRI値に基づいて調査箇所の平坦性を判定する平坦性評価部15とを備える。
【0081】
本実施形態の平坦性判定方法は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、調査箇所指定ステップで指定された調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップと、プロファイルデータ導出ステップで導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するためのIRI値を算出する評価値算出ステップと、評価値算出ステップで算出されたIRI値に基づいて調査箇所の平坦性を判定する平坦性判定ステップとを備える。
【0082】
本実施形態の平坦性判定プログラムは、コンピュータに読み込まれることにより、コンピュータを、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付部11、3次元設計面データ受付部11で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付部12、3次元設計面データ受付部11で受け付けた3次元設計面データに基づいて、指定情報受付部12で受け付けた指定情報により指定される調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出部13、プロファイルデータ導出部13で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するためのIRI値を算出する評価値算出部14、評価値算出部14で算出されたIRI値に基づいて調査箇所の平坦性を評価する平坦性判定部15とを備える。
【0083】
これにより、本実施形態の平坦性判定システム1、平坦性判定方法および平坦性判定プログラムでは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データに基づいて、路面の舗装工事を行う前に、舗装工事が行われた場合の路面の平坦性を判定することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0085】
上記実施形態では、3次元設計面データの取得(S1)、調査個所の指定(S2)、プロファイルデータの導出(S3)、評価値の算出(S4)及び平坦性の判定(S5)を行う平坦性判定方法について説明したが、それに限られない。
【0086】
上記実施形態の変形例としては、3次元設計面データの取得(S1)、調査個所の指定(S2)、プロファイルデータの導出(S3)及び評価値の算出(S4)を行って、評価値を算出する評価値算出方法がある。なお、本変形例に係る評価値算出システム及び評価値算出プログラムについても同様である。
【0087】
本変形例の評価値算出システム1は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶部11aと、3次元設計面データ記憶部11aに記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する操作部3と、3次元設計面データ記憶部11aに記憶された3次元設計面データに基づいて、操作部3で指定された調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出部13と、プロファイルデータ導出部13で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するためのIRI値を算出する評価値算出部14とを備える。
【0088】
本変形例の評価値算出方法は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、調査箇所指定ステップで指定された調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップと、プロファイルデータ導出ステップで導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するためのIRI値を算出する評価値算出ステップとを備える。
【0089】
本変形例の評価値算出プログラムは、コンピュータに読み込まれることにより、コンピュータを、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付部11、3次元設計面データ受付部11で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付部12、3次元設計面データ受付部11で受け付けた3次元設計面データに基づいて、指定情報受付部12で受け付けた指定情報により指定される調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出部13、プロファイルデータ導出部13で導出されたプロファイルデータに基づいて平坦性を評価するためのIRI値を算出する評価値算出部14として機能させる。
【0090】
これより、本変形例の評価値算出システム、評価値算出方法および評価値算出プログラムでは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データに基づいて、調査箇所についての平坦性を判定するための評価値を算出することができる。そのため、路面の舗装工事を行う前に、3次元設計面データに基づいて舗装工事が行われた場合の路面の平坦性を判定することができる。
【0091】
上記実施形態明の変形例としては、3次元設計面データの取得(S1)、調査個所の指定(S2)及びプロファイルデータの導出(S3)を行って、プロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出方法がある。なお、本変形例に係るプロファイルデータ導出システム及びプロファイルデータ導出プログラムについても同様である。
【0092】
本変形例のプロファイルデータ導出システム1は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを記憶する3次元設計面データ記憶部11aと、3次元設計面データ記憶部11aに記憶された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する操作部3と、3次元設計面データ記憶部11aに記憶された3次元設計面データに基づいて、操作部3で指定された調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出部13とを備える。
【0093】
本変形例のプロファイルデータ導出方法は、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを取得する3次元設計面データ取得ステップと、3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する調査箇所指定ステップと、3次元設計面データ取得ステップで取得された3次元設計面データに基づいて、調査箇所指定ステップで指定された調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出ステップとを備える。
【0094】
本変形例のプロファイルデータ導出プログラムは、コンピュータに読み込まれることにより、コンピュータを、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データを受け付ける3次元設計面データ受付部11、3次元設計面データ受付部11で受け付けた3次元設計面データで示される路面において調査箇所を指定する指定情報を受け付ける指定情報受付部12、3次元設計面データ受付部11で受け付けた3次元設計面データに基づいて、指定情報受付部12で受け付けた指定情報により指定される調査箇所上にある複数の位置における標高に対応したプロファイルデータを導出するプロファイルデータ導出部13として機能させる。
【0095】
これにより、本変形例に係るプロファイルデータ導出システム、プロファイルデータ導出方法およびプロファイルデータ導出プログラムでは、舗装工事を行う際に使用される路面の3次元設計面データに基づいて、調査箇所のプロファイルデータを導出することができる。そのため、路面の舗装工事を行う前に、3次元設計面データに基づいて舗装工事が行われた場合の路面の平坦性を判定することができる。
【0096】
上記実施形態では、平坦性を評価するための評価値として、国際ラフネス指数(IRI値)が使用されるが、それに限られない。例えば、平坦性を評価するための評価値として、3mσ値(3メートルシグマ値)や、その他の平坦性σ値を使用してもよい。
【0097】
上記実施形態では、車線中央から路肩側に所定距離の位置または道路の車線における外側車輪通過位置での路面のプロファイルデータに基づいて、国際ラフネス指数を計算しているが、車線中央から路肩側に所定距離の位置、道路の車線における外側車輪通過位置及び道路の車線における内側車輪通過位置での路面の縦断プロファイルに基づいて、ハーフカーラフネス指数(HRI)や、左右車輪走行位置のIRI平均値(MRI)を計算してもよい。
【0098】
上記実施形態では、マンホール周辺部において路面の凹凸を無くすための複数の3次元設計面データ(補修計画面)について、路面の舗装工事を行う前に、複数の3次元設計面データにおける調査個所のIRI値を比較することにより、複数の3次元設計面データの何れの平坦性が良好かを判定する場合について説明したが、それに限られない。例えば、本線と副線とが交差する交差点の舗装工事において、本線と副線との取り付け部分の平坦性の評価を、路面の舗装工事を行う前に行うことも可能である。本線と副線とのつなげ方が異なる複数の3次元設計面データを作成することにより、路面の舗装工事を行う前に、つなげ方により平坦性がどうかわるか、または、どのつなぎ方がよいかを評価することができる。
【0099】
上記実施形態では、線状の調査箇所における等間隔おきの緯度、経度及び標高に対応したデータを導出してプロファイルデータを作成しているが、線状の調査箇所における複数の位置における緯度、経度及び標高に対応したデータは、等間隔おきのデータに限られない。
【0100】
また、上記実施形態では、プロファイルデータを例えばProvalと呼ばれるソフトウェアを使用したが、プロファイルデータを解析する解析ソフトウェアとしては、Provalと呼ばれるソフトウェア以外を使用可能である。
【0101】
上記実施形態では、3角形平面の集合体である三次元TINモデル(不定形三角網)に変換して、線状の調査箇所における各点の緯度、経度及び高さに対応したデータを導出しているが、
図12に示すように、線状の調査箇所の両側にそれぞれ近接領域を形成し、その近接領域内にある点群データに基づいて、線状の調査箇所における各点の緯度、経度及び高さに対応したデータを導出してよい。
図12において、A
1点、A
2点及びA
3点の点が縦横断計画により得られる場合、線状の調査箇所上にあるa
1点及びa
2点は、近接領域内にある点群データのなかから、線状の調査箇所上にある点近傍にある点群データ(1または複数の点群データ)を選択し、その点群データに基づいて、線状の調査箇所における各点の緯度、経度及び高さに対応したデータを導出してよい。
【0102】
例えば、線状の調査箇所上にあるa1点の高さに対応したデータは、A1点及びA2点の高さの平均値に基づいて導出し、a2点の高さに対応したデータは、A1点及びA3点の高さの平均値に基づいて導出してよい。近接領域内にある点群データのなかから選択された線状の調査箇所上にある点近傍にある点群データに基づいて、線状の調査箇所における点の高さに対応したデータを導出する方法は、それに限られない。線状の調査箇所の両側の近接領域の幅は、任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 平坦性判定システム
3 操作部
11 3次元設計面データ受付部(3次元設計面データ受付手段)
11a 3次元設計面データ記憶部(3次元設計面データ記憶手段)
12 指定情報受付部
13 プロファイルデータ導出部(プロファイルデータ導出手段)
14 評価値算出部(評価値算出手段)
15 平坦性評価部(平坦性評価手段)