(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080984
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20230602BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20230602BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20230602BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/34
B29K101:12
B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194596
(22)【出願日】2021-11-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2018年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 戦略的省エネルギー技術革新プログラム実用化開発助成事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】592252762
【氏名又は名称】東洋電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503384764
【氏名又は名称】株式会社保田鉄工所
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小平 和久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 久仁子
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 充
(72)【発明者】
【氏名】布施 充貴
(72)【発明者】
【氏名】舘山 勝
(72)【発明者】
【氏名】清家 聡
(72)【発明者】
【氏名】浅原 信雄
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AA29
4F204AB25
4F204AC03
4F204AD16
4F204AR06
4F204FA01
4F204FB01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
(57)【要約】
【課題】成形サイクル、省エネルギーに優れ、さらに表面品位、寸法精度に優れた成形品を得るための高流動成形が可能な成形方法を提供する。
【解決手段】樹脂材料から成形用金型を用いて成形品を得る成形方法であって、以下に示す工程を含む成形方法。
成形用金型を10~250℃/min以下の昇温速度で、(T1-10)~(T1+30)℃に加熱してオーバーシュート30℃以内に制御し、金型温度平衡時における表面温度分布が20℃以内である加熱工程、
金型に樹脂材料を配置し、金型を閉じて表面温度分布を20℃以内に維持しながら0.1~30MPaの圧力で1~300秒加圧賦形する工程、[工程3]金型内部で材料が加圧された状態のまま10~250℃/minの降温速度で(T2-30)~T2℃に金型および材料を冷却してアンダーシュート30℃以内に制御し、表面温度分布を20℃以内に維持しながら冷却する工程、
成形品を脱型する工程。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料から成形用金型を用いて成形品を得る成形方法であって、以下に示す工程1から工程4を含むことを特徴とする成形方法。
[工程1(加熱工程)]
成形用金型の金型成形面温度を10℃/min以上250℃/min以下の昇温速度で、(T1-10)℃以上、(T1+30)℃以下の温度に加熱する工程であって、
(T1-10)℃以上(T1+30)℃以下の加熱温度に対してオーバーシュート30℃((T1-10)℃以上(T1+60)℃以下)以内に制御するとともに、金型昇温後の金型温度平衡時における金型表面温度分布が20℃以内である加熱工程
[工程2(加熱賦形工程)]
加熱された前記金型に前記樹脂材料を配置し、金型を閉じて金型表面温度分布を20℃以内に維持しながら0.1MPa以上30MPa以下の圧力で1秒以上300秒以下加圧賦形する工程
[工程3(冷却工程)]
金型内部で材料が加圧された状態のまま10℃/min以上250℃/minの降温速度でT2以下、(T2-30)℃以上の冷却温度に前記金型および前記材料を冷却する工程であって、T2以下、(T2-30)℃以上の冷却温度に対してアンダーシュート30℃((T2-60)℃以上T2℃以下)以内に制御するとともに、金型表面温度分布を20℃以内に維持しながら冷却する工程
[工程4(脱型工程)]
金型を開き、成形品を脱型する工程
ここで、
T1=結晶性樹脂の場合:融点Tm、非晶性樹脂の場合:ガラス転移温度Tg
T2=結晶性樹脂の場合:結晶化温度Tc、非晶性樹脂の場合:ガラス転移温度Tg
である
【請求項2】
前記工程3で金型を降温させるに際し、金型の熱ひずみによる熱膨張速度Lが30×10-4/min以下、0.8×10-4/min以上であることを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
ここで、
L=α(Th-Tc)/t
Tc:冷却時の金型温度(℃)
Th:加熱時の金型温度(℃)
α:金型材料繊膨張係数(1/℃)
t:降温時間(min)
である。
【請求項3】
前記金型の冷却にミストを用いる、請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項4】
前記ミストを間欠的に前記金型内に噴霧して前記金型を冷却する、請求項1~3のいずれかに記載の成形方法。
【請求項5】
前記ミストの噴霧方法として、前記金型内部の冷却経路において、前記冷却経路1つに対し、2つ以上の前記ミストの噴霧口が、前記金型の冷却経路内表面から5mm以上50mm以下の距離Aを隔てて配置され、前記ミストを噴霧口から噴霧方向と前記冷却経路方向とのなす角αが40°以上90°以下、もしくは-40°以上-90°以下、となるように噴霧する、請求項1~4のいずれかに記載の成形方法。
【請求項6】
前記金型の加熱源に少なくとも熱媒体飽和蒸気を用いる、請求項1~5のいずれかに記載の成形方法。
【請求項7】
前記金型を加熱する際に少なくとも、温度の低い箇所を選択的に加熱するセルフセンシング機能を有する、請求項1~6のいずれかに記載の成形方法。
【請求項8】
前記金型の金型重量M(kg)に対する加熱源と金型が接触する加熱流路表面積S(mm2)の比が0.00015kg/mm2以上0.003kg/mm2以下である、請求項1~7のいずれかに記載の成形方法。
【請求項9】
前記樹脂材料が繊維強化樹脂材料である、請求項1~8のいずれかに記載の成形方法。
【請求項10】
前記樹脂材料が熱可塑性樹脂材料である、請求項1~9のいずれかに記載の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂材料から成形品を得る際に、成形サイクルに優れ、かつ成形時の消費エネルギーを小さくできる成形方法に関する。特に繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の成形時に本成形手法を適用すれば、力学特性や表面品位、寸法精度等に優れた成形品をハイサイクルかつ省エネルギーで成形可能である。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化複合材料(CFRP)は比強度・比剛性に優れており、近年、自動車部材向けのCFRPの開発も活発化している。
【0003】
CFRPの自動車への適用例としては、航空機やスポーツ材料で実績のある熱硬化性樹脂を用いたプリプレグ、レジントランスファーモールディング(RTM)、フィラメントワインディング(FW)による部材が上市されている。一方、熱可塑性樹脂を用いたCFRPは、高速成形が可能で、リサイクル性に優れることから、量産車向け材料として注目されている。その中でもプレス成形は生産性が高く、複雑な形状や大面積の成形にも対応できることから、金属成形の代替としての期待が高まっている。
【0004】
特許文献1は、成形サイクルをよくするため、冷却効率を向上させることを目的に、エアー(空気)またはスチーム(蒸気)を供給する送媒路と、冷却液媒体を混入させる液媒体供給路と、冷却液媒体の混入量を調整する制御部とを備えている金型冷却システム及び金型冷却方法を開示している。エアーまたはスチームを混合した冷却液媒体を金型内の流体通路に沿って流しているため入口付近と出口付近で温度バラツキが大きくなり、成形品内の温度履歴に差が生じるため、所望の表面品位や寸法精度を得ることができない。
【0005】
特許文献2は成形サイクルを短縮することを目的に、金型を高温から低温へ急激に冷却している。高温度範囲を急激に冷却しているため、目的温度以下にアンダーシュートしてしまい、次サイクルの昇温する際に無駄に加熱エネルギーを消費するため消費エネルギーに課題がある。また、広温度範囲で急速な昇降温を繰り返すため、金型寿命が短くなる。
【0006】
特許文献3は成形品の反りを小さくすることを目的に、成形用材料(プリプレグ)を樹脂融点以上に加熱し、樹脂融点以下に加温された金型でコールドプレスすることで成形品を得ているため、高流動成形ができず、所望の表面意匠や寸法精度、力学特性を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-94489号公報
【特許文献2】特開2020-152091号公報
【特許文献3】特開2013-103481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、樹脂材料成形品の表面意匠に優れ、短い成形時間かつ消費エネルギーが少ない製造方法が求められている。そこで本発明は、上記要求に鑑み、成形サイクル、省エネルギーに優れた樹脂成形品の製造方法であって、さらに表面品位、寸法精度に優れた成形品を得るための高流動成形が可能な成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る成形方法は以下の構成からなるものである。
〔1〕樹脂材料から成形用金型を用いて成形品を得る成形方法であって、以下に示す工程1から工程4を含むことを特徴とする成形方法。
[工程1(加熱工程)]
成形用金型の金型成形面温度を10℃/min以上250℃/min以下の昇温速度で、(T1-10)℃以上、(T1+30)℃以下の温度に加熱する工程であって、
(T1-10)以上(T1+30)℃以下の加熱温度に対してオーバーシュート30℃((T1-10)℃以上(T1+60)℃以下)以内に制御するとともに、金型昇温後の金型温度平衡時における金型表面温度分布が20℃以内である加熱工程
[工程2(加熱賦形工程)]
加熱された前記金型に前記樹脂材料を配置し、金型を閉じて金型表面温度分布を20℃以内に維持しながら0.1MPa以上30MPa以下の圧力で1秒以上300秒以下加圧賦形する工程
[工程3(冷却工程)]
金型内部で材料が加圧された状態のまま10℃/min以上250℃/minの降温速度でT2以下、(T2-30)℃以上の冷却温度に前記金型および前記材料を冷却する工程であって、T2以下、(T2-30)℃以上の冷却温度に対してアンダーシュート30℃((T2-60)℃以上T2℃以下)以内に制御するとともに、金型表面温度分布を20℃以内に維持しながら冷却する工程
[工程4(脱型工程)]
金型を開き、成形品を脱型する工程
ここで、
T1=結晶性樹脂の場合:融点Tm、非晶性樹脂の場合:ガラス転移温度Tg
T2=結晶性樹脂の場合:結晶化温度Tc、非晶性樹脂の場合:ガラス転移温度Tg
である
〔2〕前記工程3で金型を降温させるに際し、金型の熱ひずみによる熱膨張速度Lが30×10-4[1/min]以下、0.8×10-4[1/min]以上であることを特徴とする〔1〕に記載の成形方法。
ここで、
L=α(Th-Tc)/t
Tc:冷却時の金型温度(℃)
Th:加熱時の金型温度(℃)
α:金型材料繊膨張係数(1/℃)
t:降温時間(min)
である。
〔3〕前記金型の冷却にミストを用いる、〔1〕または〔2〕に記載の成形方法。
〔4〕前記ミストを間欠的に前記金型内に噴霧して前記金型を冷却する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の成形方法。
〔5〕前記ミストの噴霧方法として、前記金型内部の冷却経路において、前記冷却経路1つに対し、2つ以上の前記ミストの噴霧口が、前記金型の冷却経路内表面から5mm以上50mm以下の距離Aを隔てて配置され、前記ミストを噴霧口から噴霧方向と前記冷却経路方向とのなす角αが40°以上90°以下となるように噴霧する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の成形方法。
〔6〕前記金型の加熱源に少なくとも熱媒体飽和蒸気を用いる、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の成形方法。
〔7〕前記金型を加熱する際に少なくとも、温度の低い箇所を選択的に加熱するセルフセンシング機能を有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の成形方法。
〔8〕前記金型の金型重量M(kg)に対する加熱源と金型が接触する加熱流路表面積S(mm2)の比が0.00015kg/mm2以上0.003kg/mm2以下である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の成形方法。
〔9〕前記樹脂材料が繊維強化樹脂材料である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の成形方法。
〔10〕前記樹脂材料が熱可塑性樹脂材料である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の成形方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、金型昇降温時に狭い範囲で精密に昇降温度させることで高流動成形可能で、金型表面温度バラつきを小さくすると共に、オーバーシュート、アンダーシュートを抑え、消費エネルギーを削減することが可能かつ成形サイクルを短くすることが可能な成形方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の成形方法に用いる金型を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1の金型のX-X’面を示す正面図である。
【
図3】本発明の金型のZ-Z’面を示す上面図である。
【
図4】金型表面の温度測定箇所を説明するための上面図である。
【
図5】本発明の成形方法に用いる金型の例(金型構造1)を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【
図6】本発明の成形方法に用いる金型の例(金型構造2)を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【
図7】本発明の成形方法に用いる金型の例(金型構造3)を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【
図8】本発明の成形方法に用いる金型の例(金型構造4)を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【
図9】本発明の成形方法における1サイクルの成形温度-時間プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細説明する。本発明は、以下の実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
本発明者らは、高流動成形可能で成形サイクルを向上させつつ消費エネルギーを削減する手段を鋭意検討したところ、(T1-10)℃以上、(T1+30)℃以下からT2以下、(T2-30)℃以上の狭い温度範囲で精密に金型を昇降温させることで、高流動成形可能で消費エネルギーを削減することが可能かつ成形サイクルを短くすることが可能な成形方法を見出した。さらに、金型の温度変化が小さいため金型の劣化を抑えることができる。
【0014】
<加熱温度>
加熱後の金型表面温度(金型昇温完了後)(℃)の下限としては(T1-10)℃以上、好ましくは(T1+5)℃以上、より好ましくは(T1+10)℃である。(T1-10)℃未満であると、成形時に樹脂の粘度が高いことなどにより、高流動成形ができず、所望の表面意匠や寸法精度が得られない可能性がある。また、加熱後の金型表面温度(℃)の上限としては、(T1+30)℃以下、好ましくは(T1+25)℃以下、より好ましくは(T1+20)℃以下である。(T1+30)℃を超えると金型を昇降温させる温度範囲が広範囲になるため、成形サイクルが長くなる、エネルギー消費量が大きくなる等の可能性がある。ここでT1とは樹脂材料が結晶性樹脂の場合、融点Tm(℃)であり、非晶性樹脂の場合、ガラス転移温度Tg(℃)である。
【0015】
<冷却温度>
冷却後の金型表面温度(金型降温完了後)(℃)の下限としては(T2-30)℃以上であり、好ましくは(T2-25)℃、より好ましくは(T2-20)℃である。(T2-30)℃未満であると金型を昇降温させる温度範囲が広範囲になるため、成形サイクルが長くなる、エネルギー消費量が大きくなる等の可能性がある。冷却後の金型表面温度(℃)の上限値としてはT2℃以下であり、好ましくは(T2-5)℃以下、より好ましくは(T2-10)℃以下である。T2℃より高いと成形品を脱型する際に成形品が変形したり、破損したりする可能性がある。
【0016】
<過加熱(オーバーシュート)>
(T1-10)℃以上(T1+30)℃以下の加熱温度に対するオーバーシュートの上限は30℃以内(最高温度:T1+60 ℃以下)、好ましくは25℃以内(T1+55 ℃以下)、より好ましくは15℃以内(T1+45 ℃以下)に制御することが重要である。30℃を超えると金型を昇温させる温度範囲が広範囲になったり、成形金型温度に安定するまで要する時間が長くなったりするため、成形サイクルが長くなる、エネルギー消費量が大きくなる等の可能性がある。また、下限としてはT1が好ましい。下限値を下回ると、賦形性に劣り成形品の寸法精度に劣る可能性がある。
【0017】
<過冷却(アンダーシュート)>
T2以下、T2-30℃以上の冷却温度に対するアンダーシュートの下限は30℃(最低温度:(T2-60)℃以上)以内に制御することが重要である。下限を下回ると成形品を脱型する際に成形品が変形する可能性がある。下限値としては30℃以内(T2-60℃以上)、好ましくは25℃以内(T2-55℃以上)、さらに好ましくは20℃以内(T2-50℃以上)に制御することが好ましい。下限値を下回ると金型を昇温させる温度範囲が広範囲になったり、成形金型温度に安定するまで要する時間が長くなったりするため、成形サイクルが長くなる、エネルギー消費量が大きくなる等の可能性がある。
【0018】
<温度分布>
金型加熱後の金型温度平衡時における金型表面温度分布としては±20℃以内、±10℃以内が好ましく、±5℃以内がさらに好ましい。金型表面温度分布が±20℃を超えると、金型内で部分的に寸法が生じるため、金型を閉じた際にクリアランス精度が悪くなる可能性がある。
【0019】
加熱賦形工程において加熱された前記金型に前記樹脂材料を配置し、金型を閉じて加圧賦形するに際し、金型表面温度分布としては±20℃以内、±10℃以内が好ましく、±5℃以内がさらに好ましい。金型表面温度分布が±20℃を超えると、樹脂材料内で部分的に粘度差が生じるため、加圧する際に成形流動性が場所ごとに異なることにより、成形不良につながる可能性がある。また高温部では過加熱になり樹脂分解が発生する可能性がある。
【0020】
金型冷却時における金型表面温度分布としては±20℃以内、±10℃以内が好ましく、±5℃以内がさらに好ましい。温度バラつきが±20℃を超えると成形品内での結晶構造が異なり、目標とする寸法精度の成形品が得られない可能性がある。また、高温部では冷却不足により成形品脱型時に変形する可能性がある。
【0021】
熱可塑性樹脂成形体の成形方法において、前記加熱工程における昇温速度は、一定であってもよいし、変動してもよい。
【0022】
<昇温速度>
生産性、金型寿命の観点から昇温速度は10℃/min以上、150℃/min以下であることが好ましい。上記昇温速度は、昇温開始前金型表面温度から昇温完了後金型表面温度の差を昇温開始から昇温完了までに要した時間で除すことで算出することができる。下限値としては20℃/min以上が好ましく、50℃/min以上がさらに好ましい。下限値を下回ると成形サイクルが長くなるため生産性が悪くなる可能性がある。上限値としては120℃/min以下がより好ましく、110℃/min以下がさらに好ましい。上限を超えると急激に金型温度が変化するため、破損や熱疲労により金型寿命が短くなったり、オーバーシュートしたり、金型表面温度分布が悪くなったりする可能性がある。
【0023】
<加圧賦形>
前記加圧賦形工程において、上記金型は、金型キャビティ内や樹脂材料中に含まれる空気を排出しながら金型を閉めることができ、金型閉めの際に過度の力を加えることなく金型閉めを効率よく、少ないエネルギーで行うことができる観点から、金型のキャビティ面の温度を昇温させた後前記樹脂材料を配置後、前記金型を完全に閉じることが好ましい。
【0024】
前記加圧賦形工程において、金型の閉じ方は特に限定されず、短時間で一度に閉めてもよいし、段階的に閉めてもよい。
【0025】
ここで、段階的に閉める方法としては、例えば、複数回(例えば2~5回)に分けて、型締め速度を変えて閉める方法、一定速度で一度に連続的に閉める方法、等が挙げられる。
【0026】
また、金型を閉じる際の速度の下限としては1mm/min以上、2mm/min以上が好ましくは5mm/minがより好ましい。下限を下回ると成形サイクルに時間がかかるため生産性の観点から好ましくない。また、材料が金型キャビティ―末端まで流動するまえに固化してしまい成形品がショートショットとなる可能性がある。速度の上限としては1000mm/min以下、500mm/min以下が好ましく、100mm/min以下がより好ましい。速度上限を超えると金型が破損したり、材料が均一に流れず等不良が発生したりする可能性がある。金型を段階的に閉める方法として、材料に触れるまでは高速で型締めし、材料に触れてから加圧中は低速で型締めする方法が生産性、材料品質の観点から好ましい。
【0027】
また、金型を段階的に閉める方法として、金型位置を制御しても良いし、型締め力を変化させても良い。型締め力を変化させて段階的に金型を閉じる好適な一例としては、金型に設置したかさ高い基材に接触した段階では、低圧で金型を閉じ、基材を溶かしながら見かけ密度を上昇させ、最終的に型締め力を上げて金型を完全に閉鎖する方法等が挙げられる。
【0028】
上記加圧賦形時の圧力(型締め圧力)の下限としては、0.1MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がより好ましく、1MPa以上がさらに好ましい。上限としては30MPa以下が好ましく、20MPa以下がより好ましく、10MPa 以下がさらに好ましい。下限を下回ると、圧力不足により成形品内に欠陥が発生したり、ショートショットが発生したりする可能性がある。上限を上回ると、設備または金型が大型重工になる可能性があるためコストアップにつながる可能性がある。
【0029】
加圧賦形工程は、寸法精度、欠陥レスの成形品が得られやすい観点から、温度T1以上、(T1+30)℃以下で加圧されている時間が1秒以上、300秒以下であることが好ましい。下限値としては、2秒以上がより好ましく、5秒以上がさらに好ましい。上限としては180秒以下がより好ましく、60秒以下がさらに好ましい。
【0030】
生産性の観点からは、短いほうが好ましいが下限値を下回ると成形不良が発生する可能性がある。上限を超えると生産性の観点、樹脂劣化の観点から好ましくない。
【0031】
<冷却速度>
冷却工程における降温速度は10℃/min以上、250℃/min以下であることが好ましい。上記昇温速度は、昇温開始前金型表面温度から昇温完了後金型表面温度の差を昇温開始から昇温完了までに要した時間で除すことで算出することができる。下限値としては20℃/min以上が好ましく、50℃/min以上がさらに好ましい。下限値を下回ると成形サイクルが長くなるため生産性が悪くなる可能性がある。上限値としては120℃/min以下がより好ましく、110℃/min以下がさらに好ましい。上限を超えると急激に金型温度が変化するため、破損や熱疲労により金型寿命が短くなったり、アンダーシュートしたり、金型表面温度分布が悪くなったりする可能性がある。
【0032】
冷却工程において、前記金型キャビティ面は、多段階で冷却してもよい。例えば固化温度まで低速で冷却し、固化温度以下で素早く冷却させる方法等が生産性の観点から好ましい。
【0033】
<熱膨張速度>
冷却工程において前記金型をT1以上T1+30℃以下の加熱された状態からT2以下、(T2-30)℃以上に降温するに際し、金型の熱ひずみによる単位時間当たりの熱膨張速度L(1/min)の上限として30×10-4(1/min)以下、好ましくは20×10-4(1/min)以下、さらに好ましくは10×10-4(1/min)以下、下限として、0.8×10-4(1/min)以上、好ましくは1.5×10-4(1/min)以上、さらに好ましくは3.0×10-4(1/min)以上の範囲で降温させることが好ましい。30×10-4(1/min)を超えると繊膨張による金型ひずみ速度が速すぎるため、繰り返し成形をするに際し、金型に亀裂などが生じやすくなり、金型寿命が短くなる可能性がある。また、0.8×10-4(1/min)を下回ると降温速度が遅いため生産サイクルが遅くなる可能性がある。ここで、L=α(Th-Tc)/tで表され、Tc:冷却後の金型温度(℃)、Th:加熱後の金型温度(℃)、α:金型材料熱膨張係数(1/℃)、t:降温時間(min)である。
【0034】
<成形材料>
前記加圧賦形工程において、金型のキャビティ内に配置する樹脂材料の数は特に限定されず、1つであってもよいし、複数であってもよい。金型キャビティ内には、樹脂材料のみを配置してもよいし、他の部材と共に配置してもよい。
【0035】
ここで、樹脂材料は、型内に配置する前にあらかじめ樹脂融点以上に予備加熱をしてもよい。特に樹脂材料として板状のプリプレグを用いる場合、樹脂材料を熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合はガラス転移温度+30℃以上、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合は融点+30℃以上まで予備加熱することが好ましい。
【0036】
本発明に係る樹脂材料は樹脂単体であってもよいし、強化繊維を含んでいてもよい。
【0037】
<樹脂種>
上記熱可塑性樹脂としては、結晶性樹脂であってもよいし、非晶性樹脂であってもよい。中でも、流動性が融点前後で大きく変化する特性を有する観点から、結晶性樹脂が好ましい。上記熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。なお、結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合物を用いる場合、熱可塑性樹脂に含まれる結晶性樹脂のTm及び非晶性樹脂のTgのうち最も高い温度が要件を満たすことが好ましい。
【0038】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6/12、ポリアミド6/10、ポリアミド6I、ポリアミド6T等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂;等が挙げられる。また、上述の結束剤の熱可塑性樹脂に挙げた樹脂を用いてもよい。中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらの変性熱可塑性樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からより好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂がさらに好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド系樹脂がよりさらに好ましく、ポリアミド66を好適に用いることができる。また、上記熱可塑性樹脂は、単独で用いても良いが、融点の異なる熱可塑性樹脂を複数組み合わせて用いても良い。好適なものとしてPA66と、PA6、PA6/12、PA6/10、PA6T等との混合物を用いることができる。
【0039】
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に-CO-O-(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート等が挙げられる。
【0040】
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
ポリアミドの具体例としては、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカブロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
【0042】
共重合ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物等が挙げられる。特にポリアミド6、66、610は機械的特性とコストの観点から好ましい。さらにポリアミドに無機系の酸化防止剤を配合させることが好ましい。
【0043】
<酸化防止剤>
無機系の酸化防止剤としては、ハロゲン化銅あるいはその誘導体を用いることができ、たとえば、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、メルカプトベンズイミダゾールとヨウ化銅との錯塩などが挙げられる。なかでもヨウ化銅、メルカプトベンズイミダゾールとヨウ化銅との錯塩を好適に使用できる。ハロゲン化銅あるいはその誘導体の添加量としては、熱可塑性ポリアミド樹脂100重量部に対し0.001~5重量部の範囲にあることが好ましい。添加量が0.001部未満では予熱時の樹脂分解や発煙、臭気を抑えることができず、5重量部以上では改善効果の向上が見られなくなる。更に0.002~1重量部が熱安定化効果とコストのバランスから好ましい。
【0044】
上記熱可塑性樹脂材料としては、上記熱可塑性樹脂に強化繊維が含まれていてもよく、例えば、シート状等にした上記強化繊維に上記熱可塑性樹脂を付着、積層、塗布、浸漬、含浸等させた複合材料、上記強化繊維に上記熱可塑性樹脂をコーティングしたコーティング複合糸を用いることができる。
【0045】
<繊維種>
強化繊維の種類としては制限がないが、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維が好ましい。なかでも炭素繊維が好ましい。炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、繊維強化樹脂成形品の軽量化効果の観点から好ましく使用でき、これらは1種または2種以上を併用しても良い。中でも、得られる繊維強化樹脂成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。
【0046】
<繊維径>
強化繊維の単繊維径は0.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、4μm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の単繊維径は20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度は3.0GPa以上が好ましく、4.0GPa以上がより好ましく、4.5GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド弾性率は200GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、240GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度または弾性率がそれぞれ、この範囲であれば、繊維強化樹脂材料の力学特性を高めることができる。
【0047】
<繊維長>
本発明に係る樹脂材料を構成する強化繊維は、連続繊維であってもよいし、所望の長さに切断されたチョップド繊維であってもよい。チョップド繊維である場合、チョップド繊維の数平均繊維長は、5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましい。チョップド繊維の数平均繊維長は、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、25mm以下がさらに好ましい。チョップド繊維の数平均繊維長が5mm未満であると、繊維強化樹脂材料とした際の力学特性が低下する。一方、チョップド繊維の数平均繊維長が100mmを超えると、成形性が低下する。なお、数平均繊維長は、100本のチョップド繊維それぞれについて、繊維の繊維方向の最大長を繊維長Lfとして測定し、その算術平均値を数平均繊維長とする。
【0048】
連続繊維である場合、特に制限はないが織物、編み物、組紐等が好ましく用いられる。
【0049】
<繊維本数>
100本以上のチョップド繊維が繊維方向に揃い束になったチョップド繊維束において、チョップド繊維束内の数平均繊維数は4000本以下が好ましく、3000本以下がより好ましく、2000本以下がさらに好ましい。この範囲であれば繊維強化樹脂材料の力学特性を高めることができる。また強化繊維束内の数平均繊維数の下限は100本以上が好ましく、150本以上がより好ましく、200本以上がさらに好ましい。この範囲であれば繊維強化樹脂材料の流動性を高めることができる。
【0050】
<繊維含有率>
本発明に係る樹脂材料に含まれる強化繊維の体積割合としては繊維体積含有率Vf(-)が0.07以上、好ましくは0.14以上、さらに好ましくは0.23以上であり、上限値は0.55以下、好ましくは0.5以下、0.45以下である。この範囲であれば、樹脂材料の流動性と成形品の力学特性を高めることができる。
【0051】
<サイジング>
本発明に係る樹脂材料を構成する強化繊維には、サイジング剤が付与されていることが好ましい。サイジング剤としては、特に限定されないが、熱分解開始温度が200℃以上のものが好ましく、250℃以上のものがより好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。この範囲であれば成形時にサイジング剤の分解を抑制でき、成形品の力学特性を高めることができる。
【0052】
具体的に、サイジング剤としては、エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物を使用できる。好ましくは、エポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤、または、ポリアミド樹脂を主成分とするサイジング剤を用いることである。これらは1種または2種以上を併用してもよい。また、サイジング剤を付与した強化繊維に更に該サイジング剤とは異種のサイジング剤で処理することも可能である。なおここで、主成分とは溶質成分の70重量%以上を占める成分のことをいう。
【0053】
<金型>
上記実施形態に用いる金型としては、例えば、上金型と下金型との2つの型からなる金型、3つ以上の型からなる金型等が挙げられる。上記金型には、他の構成部品、温度調節機構、温度計、圧力計、ベント機能等が備えられていてもよい。
【0054】
上記金型を構成する材料としては、鋼材が好ましく、例えば、アルミ、炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼、超硬鋼、アルミ合金、銅合金、真鍮、チタン、マグネシウム合金等が挙げられる。より一層迅速かつ正確なキャビティ面の温度調整が可能となる観点から、金型は、キャビティ面を含む第一の部分と、上記第一の部分よりも外側の第二の部分とで異なる材質で構成されていてもよい。
【0055】
前記金型に用いる材料の繊膨張係数としては4.0×10-6/℃以上、30×10-6/℃以下が好ましい。下限値としては8.0×10-6/℃以上がより好ましく、10×10-6/℃以上がさらに好ましい。上限値としては25×10-6/℃以下がより好ましく、15×10-6/℃以下がさらに好ましい。この範囲であれば、狭い温度範囲で金型温度を短時間で昇降温させた際に、寸法変化が小さく、金型の破損が発生しにくくなり、さらに、優れた寸法精度の成形品を得ることができる。
【0056】
上記金型を閉じた際にできる内部空間である金型のキャビティの形状としては、特に限定されず、製造する成形品によって適宜選択することができる。金型のキャビティ面は、平面、凹凸面、波形面、これらの組み合わせ、等の形状であってもよい。
【0057】
上記金型は、キャビティ面が離型処理されていることが好ましい。上記離型処理としては、金型キャビティ面に外部離型剤を塗布する方法や金型表面を予め表面処理しておく方法等が挙げられる。
【0058】
上記外部離型剤としては、市販の炭化水素系、フッ素系、シリコン系、植物油脂系、ボロンナイトライトなどが用いられ、ポリアミド樹脂を含む成形品に対する外部離型剤の好適な例として炭化水素系のものが使用される。
【0059】
また、金型表面を予め離型処理する方法としては、金型表面にクロムメッキ、窒化チタン処理、フッ素系樹脂のコーティング、セラミックコーティング、シリコーンコーティング、PTFEコーティングを施すなどの公知の技術が用いられる。
【0060】
上記金型は、加熱機構と冷却機構とを併せ持つことが好ましい。
【0061】
<金型加熱機構>
上記加熱機構としては、例えば、電気等で加熱する棒ヒーター、プレートヒーター、オイル、水蒸気、加熱蒸気等の熱媒体を金型内の流路に流す機構等が挙げられる。
【0062】
特に温度分布に優れた金型昇温には少なくとも熱媒体の飽和蒸気を用いた熱媒気相加熱方式を用いることが好ましい。熱媒気相加熱方式では熱媒体加熱用ヒーターで熱媒を加熱することにより、熱媒を気化させ、前記金型内の流路壁面の温度を一定に保つことで金型表面の温度を均―にすることが可能である。
【0063】
熱媒体加熱用ヒーターには電気ヒーターなどを用いることができる。熱媒体加熱用ヒーターで熱媒体を加熱し、熱媒体の気相部の温度を温度センサーにて測定し、ヒーターON/OFFを繰り返すことで温度制御し、金型内の流路が飽和蒸気圧となる温度に保つことができる。
【0064】
熱媒体としては、使用温度領域にあわせて、有機化合物または無機物を用いることができる。
【0065】
有機化合物の一例としては、多価アルコール類(グリセリン、ポリグリコールなど)フェノール類およびフェノール性エーテル類(アニソール、ジフェニルエーテル、フェノール類など)、ポリフェニル類(ターフェニルなど)、塩素化ベンゼンおよびポリフェニル(o-ジクロルベンゼン、ポリクロルポリフェニル、カネクロールなど)、ケイ酸エステル類(テトラアリルケイ酸塩など)、分留タールおよび石油類(ナフタレン誘導体、鉱油など)等があげられる。
【0066】
無機物としては、融解塩と融解金属(合金)とがあり、融解塩の一例として、硝酸塩系、炭酸塩系、塩化物系があげられ、融解金属の一例として、Hg,Na,Na-K(合金)、Pb、Pb-Bi(共融混合物)等があげられる。
【0067】
また、熱媒気相加熱方式では、熱媒体飽和蒸気により金型内の流路壁面が間接加熱されているため、金型内の温度の低い部分で飽和蒸気の凝縮が生じ、エネルギーを必要とする部分に選択的にエネルギーを供給する、いわゆるセルフセンシング機能を持った加熱が可能となる。
【0068】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂成形体の成形方法に用いられる前記金型は、金型内の流離壁面が、熱媒体飽和蒸気により間接加熱され、セルフセンシング機能により、前記金型を加熱するに際し、金型表面温度を設定温度以上に過剰加熱(オーバーシュート)することなく、目的の温度にシートを加熱することが可能である。
【0069】
加熱機構は1種であってもよいし、複数種であってもよい。特に、棒ヒーターと熱媒気相加熱方式を組み合わせると、昇温速度、温度均一性に優れた加熱が可能となり好ましい。
【0070】
前記金型の金型重量M(kg)に対する前記加熱機構と金型内が接触する加熱流路表面積S(mm2)の比が0.00015kg/mm2以上、0.003kg/mm2以下であることが好ましい。下限値としては0.0003kg/mm2以上が好ましく、0.0005kg/mm2以上がさらに好ましい。下限値を下回ると金型強度が低くなり、加圧成形時の圧力上限が低くなってしまう可能性がある。上限としては0.0025kg/mm2以下がより好ましく、0.0020kg/mm2以下がさらに好ましい。上限を超えると昇温に時間がかかったり、金型温度分布が悪くなったりする可能性がある。
【0071】
<金型冷却機構>
前記金型の冷却機構としては、オイル、水、空気、水蒸気、過熱蒸気、ミスト等の冷媒体を金内の流路に流す機構、水蒸気やミスト、空気等を金型キャビティ内に吹き込む機構等が挙げられる。上記実施形態では、圧縮成形後の金型キャビティ面の温度をT2以下、(T2-30)℃以上の温度に制御することが重要である。冷却機構としては、適切な温度に調整しやすい観点から、ミストを用いることが好ましく、また複数の機構を備えていてもよく、ミストと空気等の冷却機構を備えていることがより好ましい。冷却溶媒が金型流路内に残っていると再昇温時の遅れ、温度ムラ、増エネと成る可能性があるため、冷却溶媒を通水した後、最後にエアーブローを行うことで残置水を防ぎ、よりアンダーシュートを押さえることが可能となる。
【0072】
また、前記ミスト冷却機構において、前記ノズル内に水と空気を供給し、前記ノズル内で混合することでミスト化することも可能である。空気と水の混合比(空気/水)として、下限は500以上、好ましくは1000以上、さらに好ましくは3000以上であり、上限としては20000以下、好ましくは10000以下、さらに好ましくは5000以下である。この範囲であると小さなミストを作ることが可能となり、水滴比表面積が大きくなることで水の蒸発潜熱を高効率に利用して高速且つ精度良く冷却が可能になるため冷却効率を上げることが可能となる。
【0073】
金型冷却機構にミストを用いる場合、ミストを噴霧させる噴霧口1穴あたりの金型表面積が500cm2/個以下であるノズルが、前記金型内に挿入されていることが好ましい。噴霧口1穴あたりの金型表面積は300cm2/個以下が好ましく、100cm2/個以下がより好ましい。500cm2/個を超える場合、金型冷却速度が遅く、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。なお、高効率で冷却媒体を蒸発させるためには、ミストは比表面積が大きい小粒径であることが好ましい。
【0074】
ミスト冷却機構において、ノズル1本あたりの噴霧口(ノズルの穴)の数は3個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、5個以上がさらに好ましい。ノズル1本あたりの噴霧口の数が3個未満の場合、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。
【0075】
前記ミスト冷却機構において、前記ミストの噴霧方向と前記ノズルの長手方向のなす角度αが40°以上90°以下であることが好ましい。また、角度αは50°以上であることがより好ましく、60°以上であることがさらに好ましい。角度αが40°未満の場合、短時間での冷却が困難になる恐れがある。
【0076】
前記ミストの噴霧方向と前記ミストが噴霧される前記金型の内表面のなす角度γが40°以上90°以下であることが好ましい。また、角度γは50°以上であることがより好ましく、60°以上であることがさらに好ましい。角度γが40°未満の場合、短時間での冷却が困難になる恐れがある。
【0077】
前記ミスト冷却機構において、前記噴霧口が前記金型の内表面から10mm以上50mm以下の距離Aを隔てて配置され、前記ミストを斜め上方に向けて噴霧することが好ましい。また、距離Aは15mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましい。ミストの出口と金型の内表面との距離Aが10mm未満の場合、100℃以上の冷却温度で制御することが困難で、金型表面温度バラツキが大きくなってしまう。さらに、距離Aは45mm以下がより好ましく、40mm以下がさらに好ましい。距離Aが50mmを超える場合、短時間での冷却が困難になる恐れがある。
【0078】
前記ミスト冷却機構において、前記噴霧口が30mm以上100mm以下の距離Bを隔てて隣接することが好ましい。また、距離Bは35mm以上がより好ましく、40mm以上がさらに好ましい。距離Bが30mm未満の場合、100℃以上の冷却温度で制御することが困難で、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。さらに、距離Bは95mm以下がより好ましく、90mm以下がさらに好ましい。距離Bが100mmを超える場合、短時間での冷却が困難で、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。
【0079】
前記ミスト冷却機構において、前記ノズル内を流れる水の流量が100ml/分以上1000ml/分以下であることが好ましい。また、1本のノズル内を流れる水の流量は150ml/分以上がより好ましく、200ml/分以上がさらに好ましい。1本のノズル内を流れる水の流量が100ml/分の未満の場合、短時間での冷却が困難になる恐れがある。さらに、1本のノズル内を流れる水の流量は900ml/分以下がより好ましく、800ml/分以下がさらに好ましい。1本のノズル内を流れる水の流量が1000ml/分を超える場合、100℃以上の冷却温度で制御することが困難で、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。
【0080】
前記ミスト冷却機構において、前記ノズル内の圧力が0.1MPa以上2MPaに制御されることが好ましい。また、ノズル内の圧力(エアー圧)は0.1MPa以上1.8MPa以下がより好ましく、0.1MPa以上1.5MPa以下がさらに好ましい。ノズル内の圧力がこの範囲を外れると、ミストがノズルから噴出しないことがあるため、100℃以上の冷却温度制御が困難で、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。
【0081】
閉鎖された空間に事前に生成したミストを吹き込むと閉鎖空間の圧力が上がり、ミスト噴霧圧との圧力差が少なくなりミスト化が阻害される可能性があるため、金型内冷却流路は開放形にすることが好ましい。
【0082】
前記ミスト冷却機構において、前記噴霧口の開口面積が0.01mm2以上0.8mm2以下であることが好ましい。また、噴霧口の開口面積は0.05mm2以上がより好ましく、0.07mm2以上がさらに好ましい。噴霧口の開口面積が0.01mm2未満の場合、ミスト量が少ないため、短時間での冷却が困難になる恐れがある。さらに、噴霧口の開口面積は0.7mm2以下がより好ましく、0.5mm2以下がさらに好ましい。噴霧口の開口面積が0.8mm2を超える場合、ミストになりにくいため、100℃以上の冷却温度で制御することが困難で、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。前記噴霧口の形状は特に限定されず、円形、矩形、三角形等の形状を採用することができる。
【0083】
前記ミスト冷却機構において、前記ノズルが、前記金型内で前記長手方向に30cm以上200cm以下のノズル長さCを有することが好ましい。また、ノズル長さCは30cm以上180cm以下がより好ましく、30cm以上150cm以下がさらに好ましい。ノズル長さCがこの範囲を外れると、ノズルのたわみによりミストが均一に噴射しないため、100℃以上の冷却温度で制御することが困難で、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。
【0084】
前記ミスト冷却機構において、ノズルから噴霧されるミストが100℃以上の冷却温度で制御できるように、前記ミストを間欠的に前記金型内に噴霧するパルス式を採用することが好ましい。連続噴霧式でも良いが媒体流量を制御する必要があり難易度が高い。
【0085】
前記ミスト冷却機構において、前記ミストを0.1秒以上10秒以下の噴霧時間で間欠的に前記金型内に噴霧することが好ましい。また、ミスト噴霧時間は1秒以上がより好ましく、3秒以上がさらに好ましい。ミスト噴霧時間が0.1秒未満の場合、ミストが出にくくなり、短時間での冷却が困難になる恐れがある。さらに、ミスト噴霧時間は8秒以下がより好ましく、6秒以下がさらに好ましい。ミスト噴霧時間が10秒を超える場合、100℃以上の冷却温度で制御することが困難で、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。
前記ミスト冷却機構において、前記ミストを0.1秒以上5秒以下の噴霧停止時間をおいて間欠的に前記金型内に噴霧することが好ましい。また、ミスト噴霧停止時間は1秒以上がより好ましく、3秒以上がさらに好ましい。ミスト噴霧停止時間が0.1秒未満の場合、100℃以上の冷却温度で制御することが困難で、金型表面温度バラツキが大きくなる恐れがある。さらに、ミスト噴霧停止時間は4秒以下がより好ましく、3秒以下がさらに好ましい。ミスト噴霧停止時間が5秒を超える場合、短時間での冷却が困難になる恐れがある。
【0086】
前記ミスト冷却機構において、前記ノズル内に空気が供給されて前記ノズル内を流れる水と混合される部位において、前記空気の流入方向と前記水の流入方向のなす角度βが0°より大きく90°未満であることが好ましい。また、角度βは0°より大きく70°未満がより好ましく、0°より大きく50°未満がさらに好ましい。エアー流入方向と水流入方向の角度βがこの範囲を外れると、所望の流量の水がノズル穴から出ず、短時間での冷却が困難になる恐れがある。
【実施例0087】
以下実施例を用いて本発明の詳細を説明する。各種測定方法、計算方法および評価方法は以下のとおりである。
【0088】
[生産性評価]
図1から
図8に示す400×750(mm)のモデル金型を使用して成形実験を行った。1サイクルの成形温度-時間プロファイルを
図9に示す。
【0089】
金型表面を150℃(初期温度)から220℃まで加熱し、IRヒーターを用いて内部温度が290℃になるまで予備加熱した繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料(360×660mm)を金型キャビティ内中心にチャージして、金型を閉じて10MPaにて1min加圧賦形後、150℃まで冷却し金型を開け成形品を脱型する工程を1サイクルとして、金型加熱、加圧賦形、冷却、脱型までの工程を3サイクル繰り返した際に要した時間で評価した。
【0090】
3サイクルの合計時間が25分未満をA、25分以上30分未満をB、30分以上をCと評価した。
【0091】
[成形性評価]
生産性評価に用いた同金型を用いて、成形性評価を行った。金型キャビティ面積を完全充填かつ成形品の反りがない(OK:実使用上問題ないレベル)、未充填部が発生する、もしくは成形品の反りが発生する(NG:実使用上問題があるレベル)かで評価した。
【0092】
[昇温速度評価]
図4に示す金型表面の15点(黒丸)の金型表面温度を計測し、金型表面初期温度150℃から加熱を開始してから
図5~8に示す金型構造の金型で金型表面の平均温度が、220℃以上になるまでの時間より算出した。
【0093】
[オーバーシュート評価]
金型を220℃まで昇温する際に、220℃到達後、
図4に示す金型表面の15点(黒丸)の温度を計測し、
図5~8に示す金型構造の金型で過加熱された平均温度が15℃以下をA、15℃以上30℃未満をB、30℃以上をCと評価した。
【0094】
[加熱安定時間]
図4に示す金型表面の15点(黒丸)の温度を計測し、
図5~8に示す金型構造の金型を加熱し、220℃を超えオーバーシュートした金型温度が220±5℃以内のハンチングになるまでの安定時間を計測した
【0095】
[降温速度]
図4に示す金型表面の15点(黒丸)の温度を計測し、金型表面温度が冷却を開始してから
図5~8に示す金型構造の金型の平均温度が、150℃以下になるまでの時間より算出した。
【0096】
[単位時間当たりの熱膨張速度]
図4に示す金型表面の15点(黒丸)の温度を計測し、金型表面温度が冷却を開始してから
図5~8に示す金型構造の金型の測定点15点の温度が、150℃以下に冷却した際のそれぞれの時間と金型材料熱膨張係数から算出し、0.8×10
-4から30×10
-4(1/min)の範囲内であるか評価した。
【0097】
全測定点の値が範囲内である場合をA、1点以上5点未満範囲から外れる場合をB、5点以上範囲から外れる場合をCと評価した。
【0098】
[アンダーシュート評価]
金型を220℃から150℃まで冷却する際に、150℃到達後、
図4に示す金型表面の15点(黒丸)の温度を計測し、
図5~8に示す金型構造の金型の過冷却された平均温度が20℃以下をA、20℃以上30℃未満をB、30℃以上をCと評価した。
【0099】
[温度分布]
金型表面の温度分布の評価として、
図4に示す金型表面の15点(黒丸)の温度を計測し、
図5~8に示す金型構造の金型で温度測定点Dが220℃(加熱工程時)および150℃(冷却工程)に達した時の15点の温度分布(最大温度差)が5℃未満をA、5℃以上20℃未満をB、20℃以上をCとした。
【0100】
[使用原料]
・強化繊維束:炭素繊維束(ZOLTEK社製“PX35-13”、繊維数50,000本)を用いた。
・熱可塑性樹脂シート: ポリアミド6樹脂(東レ(株)社製、“アミラン”(登録商標)CM1001)からなるポリアミドマスターバッチを用いて、シートを作製した。樹脂融点は225℃である。
【0101】
[基材の作製]
繊維[F]を、繊維束の長手方向に対して角度15°に切断刃が傾いたロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を切断し、繊維長12.7mm、幅1mm、厚み0.1mm、繊維数1000本のチョップド繊維束を得た。
【0102】
上記切断工程から続いて、チョップド繊維束を均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的であるランダムマットを得た。得られた不連続繊維マットの目付は1270g/m2であった。
【0103】
得られた不連続繊維マットにプレス機を用いて280℃、3MPaで5分加圧し、マトリックス樹脂を含浸させ、冷却することで2mm厚みの繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料の基材を得た。
【0104】
[Vf(繊維強化樹脂成形材料中の炭素繊維の含有率)]
スタンパブル基材から約2gのサンプルを切り出し、その質量を測定した。その後、サンプルを500℃に加熱した電気炉の中で1時間加熱してマトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。室温まで冷却してから、残った炭素繊維の質量を測定した。炭素繊維の質量に対するの、マトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばす前のサンプルの質量に対する比率を測定し、炭素繊維の含有率(%)を算出した。今回使用したサンプルの体積含有率は35vol%であった。
【0105】
<比較例1>
炭素鋼(熱膨張率11.7×10
-6/min)からなる
図5に示す金型構造1のモデル金型を用いて成形検討を行った。加熱機構には電気ヒーターを用い、冷却溶媒には水を用いた。実験条件を表1に示す。
【0106】
金型表面を150℃(冷却温度)から220℃(加熱温度)まで加熱し、IRヒーターを用いて内部温度が290℃になるまで予備加熱した繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料(幅360mm、長さ660mm、厚み2mm)を金型キャビティ内中心にチャージして、金型を閉じて10MPaにて1min加圧賦形後、冷却水を金型片側から一方向に10L/minで流入し、流入と逆側より排出させて金型を150℃まで冷却し、金型を開け成形品を脱型する工程を1サイクルとして、金型加熱、加圧賦形、冷却、脱型までの工程を3サイクル繰り返し成形検討を行った。前記記載の評価方法で各項目を評価した。結果を表1に示す。
【0107】
表に示す結果より、オーバーシュート、アンダーシュートが大きく、加熱温度分布、生産性、成形性に劣ることから総合評価をNGと評価した。
【0108】
<比較例2>
冷却水の流量を0.2L/minとする以外は比較例1と同条件にて成形評価を行った。
オーバーシュートが大きく、加熱・冷却温度分布、生産性、成形性に劣ることから総合評価をNGとした。
【0109】
<比較例3>
冷却溶媒にエアーを用いて、エアー流量を600L/minとする以外は比較例1と同条件にて成形評価を行った。オーバーシュートが大きく、加熱温度分布、生産性に劣ることから総合評価をNGとした。
【0110】
<比較例4>
冷却溶媒に水(0.2L/min)とエアー(500L/min)を混合させ生成したミストを用いた以外は比較例1と同条件にて成形評価を行った。オーバーシュートが大きく、生産性に劣ることから総合評価をNGとした。
【0111】
<比較例5>
炭素鋼からなる
図6に示す金型構造2のモデル金型を用いて成形検討を行った。冷却溶媒に水(0.2L/min)とエアー(500L/min)を混合させ生成したミストを用いて、ミストの噴霧方向とノズルの長手方向のなす角を90°となるようにミストノズルを設置し、ノズルの隣接する孔の距離50mmで13点からミストを金型キャビティ方向の冷却配管壁面へ流入した。多点式ミストノズルを用いる以外は比較例2と同条件にて成形評価を行った。オーバーシュートが大きく、加熱温度分布、生産性に劣ることから総合評価をNGとした。
【0112】
<比較例6>
炭素鋼からなる
図7に示す金型構造3のモデル金型を用いて、加熱機構に電気ヒーターと熱媒気相加熱方式を用いる以外は比較例1と同条件にて成形評価を行った。アンダーシュート、生産性に劣ることから総合評価をNGとした。
【0113】
<比較例7>
加熱源に熱媒気相加熱方式のみを用いること以外は比較例6と同条件にて成形評価を行った。アンダーシュート、生産性に劣ることから総合評価をNGとした。
【0114】
<実施例1>
炭素鋼からなる
図8に示す金型構造4のモデル金型を用いて成形検討を行った。加熱機構に電気ヒーターと熱媒気相加熱方式を用いること以外は比較例5と同条件にて成形評価を行った。昇温・降温速度、温度分布、生産性、成形性に優れることから総合評価をOKとした。
【0115】
<実施例2>
成形時の加熱温度を230℃とすること以外は実施例1と同条件にて成形評価を行った。昇温・降温速度、温度分布、生産性、成形性に優れることから総合評価をOKとした。
【0116】
<実施例3>
成形時の加熱温度を250℃とすること以外は実施例1と同条件にて成形評価を行った。昇温・降温速度、温度分布、生産性、成形性に優れることから総合評価をOKとした。
【0117】
<比較例8>
成形時の加熱温度を260℃とすること以外は実施例1と同条件にて成形評価を行った。生産性に劣ることから総合評価をNGとした。
【0118】
<実施例4>
成形時の冷却温度を160℃とすること以外は実施例1と同条件にて成形評価を行った。昇温・降温速度、温度分布、生産性、成形性に優れることから総合評価をOKとした。
【0119】
<実施例5>
アルミ(熱膨張率23.8×10
-6/min)からなる
図8に示す金型構造4のモデル金型を用いて成形検討を行った。金型材質にアルミを用いること以外は実施例1と同条件にて成形評価を行った。昇温・降温速度、温度分布、生産性、成形性に優れることから総合評価をOKとした。
【0120】
本発明は繊維強化樹脂成形材料の成形時に適用される。得られる成形品は自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、航空機内装材、輸送用箱体等に好適に用いることができる。