(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080990
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】制御盾、制御棒及びそれらの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
F41H 5/08 20060101AFI20230602BHJP
F41B 15/00 20060101ALI20230602BHJP
F41B 15/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F41H5/08
F41B15/00 B
F41B15/02 A
F41B15/02 F
F41B15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194611
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】513228340
【氏名又は名称】田村装備開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】田村 忠嗣
【テーマコード(参考)】
2C014
【Fターム(参考)】
2C014KK01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多機能を有し制圧力に優れた制御盾、及び、多機能を有し制圧力に優れた制御棒を提供する。
【解決手段】制御盾は、盾本体の第1側部の辺縁を背面側に屈曲してなるリブ構造を有する打撃防御部、盾本体の第2側部の辺縁を連続山形に成形してなる連続突起部を有する刺突防御部、及び、盾本体の上部を山形に成形してなる先端部を有する突撃部を備える。制御棒は、刀剣状の抜き身部を有し、抜身部の前側端部に、先端方向に向かって順次、湾曲状凹部を成形してなる下肢拘束部、湾曲状凹部を成形してなる上肢拘束部兼打撃部、及び、先細る切先を成形してなる突撃部兼上部グリップ部を備える。制御盾と制御棒の組み合わせは、第1の係合部材を設けてなる担持部を盾本体の前面に備える制御盾と、前記第1の係合部材と着脱可能に係合する第2の係合部材を設けてなる着脱部を抜身部の側面に備える制御棒からなる。
【選択図】
図18A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状材料からなる盾本体、及び、当該盾本体の背面に設けられたグリップ部を有する制御盾であって、
前記盾本体は、正面視が縦長の形状を有し、
当該盾本体の両側部から任意に選ばれる第1側部の少なくとも一部に、当該第1側部の辺縁が盾本体の上下方向に走る屈曲軸に沿って盾本体の背面側に屈曲してなるリブ構造を有する打撃防御部を備え、
当該盾本体の両側部のうち前記第1側部に相対する第2側部の少なくとも一部に、盾本体の横方向に突出する山形の形状に成形してなる突起を、当該第2側部の辺縁に沿って複数配列させた連続突起部を有する刺突防御部を備え、
当該盾本体の上部に、盾本体の上方に突出する山形の形状に成形してなる先端部を少なくとも1つ有する突撃部を備える、制御盾。
【請求項2】
前記突撃部の先端部頂点を1つのみ有する場合には当該先端部頂点、又は、前記突撃部の先端部頂点を複数有する場合には最も前記刺突防御部に近い先端部頂点が、盾本体の幅方向の中間点から第1側部の方向に向かって盾本体の4分の1幅の地点までの間に配置されている、請求項1に記載の制御盾。
【請求項3】
前記盾本体の背面のグリップ部よりも上側の位置に、任意の装備を着脱可能に取り付け可能な第1の各種装備付加部、及び、前記グリップ部の上面に、任意の装備を着脱可能に取り付け可能な第2の各種装備付加部を備えている、請求項1又は2に記載の制御盾。
【請求項4】
細長い板状材料からなり、長手方向の一端側に茎部、他端側に抜身部を有する制御棒本体、及び、当該制御棒本体の茎部に設けられたグリップ部を有する刀剣状の制御棒であって、
前記抜身部は、長さが490~540mm、幅が95~105mmであり、
前記抜身部の前側端部に、茎部側から先端方向に向かって順次、長さが260~290mm、抜身部の峰側方向に向かう最大深さが55~65mmの湾曲状凹部を成形してなる下肢拘束部、長さが110~125mm、抜身部の峰側方向に向かう最大深さが9~15mmの湾曲状凹部を成形してなる上肢拘束部兼打撃部、及び、先細る切先を成形してなる長さ84~94mmの突撃部兼上部グリップ部を備える、制御棒。
【請求項5】
前記茎部と前記下肢拘束部を区切る凸部、前記下肢拘束部と前記上肢拘束部兼打撃部を区切る凸部、及び、前記上肢拘束部兼打撃部と前記突撃部兼上部グリップ部を区切る凸部は、抜身部の略最大幅となる高さを有している、請求項4に記載の制御棒。
【請求項6】
突撃部兼上部グリップ部の前側に峰側に浅く凹む湾曲状凹部を有し、上肢拘束部兼打撃部から突撃部兼上部グリップ部に亘る部分と相対する峰側の部分に、長さLeが150~170mm、抜身部の前側方向に向かう最大深さDeが20~25mmの湾曲状凹部を有し、かつ、抜身部の先端に長さ30~35mmの直線状の峰部を有する、請求項4又は5に記載の制御棒。
【請求項7】
前記請求項1に記載の制御盾の盾本体の前面に、第1の係合部材を設けてなる担持部を備える担持部付き制御盾、及び、前記請求項4に記載の制御棒の抜身部の少なくとも一方の側面に、前記第1の係合部材と着脱可能に係合する第2の係合部材を設けてなる着脱部を備える着脱部付き制御棒からなる、制御盾と制御棒の組み合わせ。
【請求項8】
前記第1の係合部材は第1の面ファスナーであり、前記第2の係合部材は前記第1の面ファスナーと着脱可能に係合する第2の面ファスナーである、請求項7に記載の制御盾と制御棒の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防犯用具に関し、詳しくは、暴漢、侵入者などの攻撃者からの攻撃に対する護身並びにそのような攻撃者の制御及び撃退に使用される制御盾、制御棒及びそれらの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
警察や警備会社などにおいて暴漢や侵入者などの暴力的な攻撃者に対抗するため、盾、警棒、刺股などの防犯用具が使用されている。また最近では、教育機関、金融機関、一般店舗でも、暴力的な攻撃者に対抗する防犯用具の需要が増えている。
盾は基本的に迎撃者が攻撃者の攻撃を防御するためのものであり、警棒は基本的に迎撃者が攻撃者に対し威嚇、反撃して攻撃者を制御、撃退するためのものであり、刺股は基本的に迎撃者が攻撃者の動きを止めて攻撃者を制御、拘束するためのものである。例えば、盾に関して特許文献1~2、警棒に関して特許文献3~4、及び、刺股に関して特許文献5~6がある。
防犯用具は、防御力、威嚇力、攻撃力、制御力、拘束力等の観点が異なる能力のいずれか一つに頼るだけでは、攻撃者に対して十分な制圧力を達成することが難しい。個々の防犯用具の弱点を補う方策として、迎撃者は攻撃者に対し、例えば、盾と警棒を同時に使用し、盾の防御力と警棒の威嚇力、攻撃力を連携させて制圧力を高めることができる。この例のように、防犯用具には、上記したような観点が異なる能力を総合的に発揮させることによって、攻撃者に対して高い制圧力を達成することが求められる。
また、攻撃者は迎撃者に対し、攻撃の種類やタイミング等を変えて様々な攻撃パターンで仕掛けてくるため、迎撃者としては攻撃者の動きに合わせて臨機応変に防御と反撃を切り替え、機を見て速やかに相手を拘束する必要がある。そのため防犯用具は、迎撃者が攻撃者の動きに合わせて、速やかに最適な防御、反撃又は拘束の動作に切り替え可能であることが求められる。
さらに防犯用具には、平常時の保管容易性や、緊急時の即応性などの利便性も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録3225159号
【特許文献2】特開2008-256262号
【特許文献3】特開2017-120166号
【特許文献4】特開2009-270808号
【特許文献5】実用新案登録3199166号
【特許文献6】特開2006-308171号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、様々な攻撃パターンに適切に対処できるように、異なる複数の防御機能を有し、さらに威嚇・反撃機能も有し、総合的な制圧力に優れた多機能性の制御盾を提供することである。
本発明の第2の目的は、様々な攻撃パターンを実行できるように、異なる複数の威嚇・反撃機能を有し、さらに攻撃者を拘束する機能も有し、総合的な制圧力に優れた多機能性の制御棒を提供することである。
本発明の第3の目的は、平常時に一体化して保管することができ、緊急時に一体化した状態で携行し、現場で瞬時に分離して迎撃態勢をとることができる即応性を備えた制御盾と制御棒の組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記第1の目的を達成する本発明の制御盾は、板状材料からなる盾本体、及び、当該盾本体の背面に設けられたグリップ部を有する制御盾であって、
前記盾本体は、正面視が縦長の形状を有し、
当該盾本体の両側部から任意に選ばれる第1側部の少なくとも一部に、当該第1側部の辺縁が盾本体の上下方向に走る屈曲軸に沿って盾本体の背面側に屈曲してなるリブ構造を有する打撃防御部を備え、
当該盾本体の両側部のうち前記第1側部に相対する第2側部の少なくとも一部に、盾本体の横方向に突出する山形の形状に成形してなる突起を、当該第2側部の辺縁に沿って複数配列させた連続突起構造を有する刺突防御部を備え、
当該盾本体の上部に、盾本体の上方に突出する山形の形状に成形してなる先端部を少なくとも1つ有する突撃部を備えることを特徴とする。
【0006】
上記第2の目的を達成する本発明の制御棒は、細長い板状材料からなり、長手方向の一端側に茎部、他端側に抜身部を有する制御棒本体、及び、当該制御棒本体の茎部に設けられたグリップ部を有する刀剣状の制御棒であって、
前記抜身部は、長さが490~540mm、幅が95~105mmであり、
前記抜身部の前側端部に、茎部側から先端方向に向かって順次、長さが260~290mm、抜身部の峰側方向に向かう最大深さが55~65mmの湾曲状凹部を成形してなる下肢拘束部、長さが110~125mm、抜身部の峰側方向に向かう最大深さが9~15mmの湾曲状凹部を成形してなる上肢拘束部兼打撃部、及び、先細る切先を成形してなる長さ84~94mmの突撃部兼上部グリップ部を備えることを特徴とする。
【0007】
上記第3の目的を達成する本発明の制御盾と制御棒の組み合わせは、前記本発明の制御盾の盾本体の前面に、第1の係合部材を設けてなる担持部を備える担持部付き制御盾、及び、前記本発明の制御棒の抜身部の少なくとも一方の側面に、前記第1の係合部材と着脱可能に係合する第2の係合部材を設けてなる着脱部を備える着脱部付き制御棒からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の制御盾は、打撃防御部及び刺突防御部を利用した複数の防御機能を有し、さらに、突撃部及び前記刺突防御部を利用した威嚇・反撃機能も有するので、総合的な制圧力に優れている。
本発明の制御棒は、打撃部及び突撃部を利用した複数の威嚇・反撃機能を有し、さらに下肢拘束部及び上肢拘束部を利用した複数の拘束機能も有するので、総合的な制圧力に優れている。
また、本発明の制御盾と制御棒の組み合わせは、平常時に一体化して保管することができ、緊急時に一体化した状態で携行し、現場で瞬時に分離して迎撃態勢をとることができる即応性を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の制御盾の一実施形態(制御盾101)を示す6面図
【
図9A】盾本体の一実施形態を屈曲加工する前の状態を示す正面図
【
図9B】盾本体の一実施形態を屈曲加工した後の状態を示す正面図及び右側面図
【
図11】本発明の制御棒の一実施形態(制御棒201)を示す6面図
【
図18A】脱着可能な制御盾と制御棒の分離状態を示す図
【
図18B】脱着可能な制御盾と制御棒の一体化状態を示す図
【
図19A】アルミニウム製制御盾の前面、及び、アルミニウム製制御棒の左側面を示す写真
【
図19B】アルミニウム製制御盾の背面、及び、アルミニウム製制御棒の右側面を示す写真
【
図20A】樹脂製制御盾の前面、及び、樹脂製制御棒の左側面を示す写真
【
図20B】樹脂製制御盾の背面、及び、樹脂製制御棒の右側面を示す写真
【
図21】制御盾を左手に、制御棒を右手に保持して立つ基本姿勢を示す写真
【
図22A】基本姿勢から上部打撃に対する防御姿勢に移る要領を示す第1の写真
【
図22B】基本姿勢から上部打撃に対する防御姿勢に移る要領を示す第2の写真
【
図22C】基本姿勢から上部打撃に対する防御姿勢に移る要領を示す第3の写真
【
図23A】腹部への刺突攻撃に対する防御姿勢をとる要領を示す第1の写真
【
図23B】腹部への刺突攻撃に対する防御姿勢をとる要領を示す第2の写真
【
図24A】制御盾上部の突撃部を使う打突要領を示す第1の写真
【
図24B】制御盾上部の突撃部を使う打突要領を示す第2の写真
【
図25A】盾本体背面のグリップ部よりも上側の位置に第1の各種装備付加部、及び、グリップ部上に第2の各種装備付加部をそれぞれ設け、第1の各種装備付加部にフラッシュライトを取り付け、第2の各種装備付加部にフラッシュライトのコントローラを取り付けた状態を、制御盾の背面から見た状態を示す写真
【
図25B】盾本体背面のグリップ部よりも上側の位置に第1の各種装備付加部、及び、グリップ部上に第2の各種装備付加部をそれぞれ設け、第1の各種装備付加部にフラッシュライトを取り付け、第1の各種装備付加部にフラッシュライトのコントローラを取り付けた状態を、制御盾の正面から見た状態を示す写真
【
図25C】盾本体背面のグリップ部よりも上側の位置に第1の各種装備付加部、及び、グリップ部上に第2の各種装備付加部をそれぞれ設け、第1の各種装備付加部にフラッシュライトを取り付け、第2の各種装備付加部からフラッシュライトのコントローラを取り外した状態を示す写真
【
図26A】盾本体背面のグリップ部よりも上側の位置に取り付けたフラッシュライトを、グリップ部上に取り付けたコントローラを操作して照射する要領を示す第1の写真
【
図26B】盾本体背面のグリップ部よりも上側の位置に取り付けたフラッシュライトを、グリップ部上に取り付けたコントローラを操作して照射する要領を示す第2の写真
【
図26C】盾本体背面のグリップ部よりも上側の位置に取り付けたフラッシュライトを、グリップ部上に取り付けたコントローラを操作して照射する要領を示す第3の写真
【
図27A】グリップ部上に取り付けたフラッシュライトを照射する要領を示す第1の写真
【
図27B】グリップ部上に取り付けたフラッシュライトを照射する要領を示す第2の写真
【発明を実施するための形態】
【0010】
図19A及び
図19Bは、本発明のアルミニウム製制御盾と本発明のアルミニウム製制御棒の組み合わせの一例を示す写真であり、具体的には、
図19Aは制御盾の前面及び制御棒の左側面を示す写真であり、
図19Bは制御盾の背面及び制御棒の右側面を示す写真である。
図20A及び
図20Bは、本発明の樹脂製制御盾と本発明の樹脂製制御棒の組み合わせの一例を示す写真であり、具体的には、
図20Aは制御盾の前面及び制御棒の左側面を示す写真であり、
図20Bは制御盾の背面及び制御棒の右側面を示す写真である。
また、
図21は、本発明のアルミニウム製制御盾を左手に保持し、本発明のアルミニウム製制御棒を右手に保持し、攻撃者に対峙する基本姿勢を示す写真である。
本発明の制御盾及び制御棒は、視覚的にも攻撃者を威嚇できる外観を備えているため、攻撃が始まる前に攻撃者の攻撃的な意思を喪失させ、退散に追い込む効果を期待できる。防犯用具という観点では、攻撃者が攻撃を始める前に威嚇力によって委縮し退散すれば、被害者が無傷で危機を脱することができるので、好ましい。
以下、本発明の制御盾、制御棒、及び、それらの組み合わせについて説明する。なお、本発明において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
I.制御盾
本発明の制御盾は、板状材料からなる盾本体、及び、当該盾本体の背面に設けられたグリップ部を有する制御盾であって、
前記盾本体は、正面視が縦長の形状を有し、
当該盾本体の両側部から任意に選ばれる第1側部の少なくとも一部に、当該第1側部の辺縁が盾本体の上下方向に走る屈曲軸に沿って盾本体の背面側に屈曲してなるリブ構造を有する打撃防御部を備え、
当該盾本体の両側部のうち前記第1側部に相対する第2側部の少なくとも一部に、盾本体の横方向に突出する山形の形状に成形してなる突起を、当該第2側部の辺縁に沿って複数配列させた連続突起構造を有する刺突防御部を備え、
当該盾本体の上部に、盾本体の上方に突出する山形の形状に成形してなる先端部を少なくとも1つ有する突撃部を備えることを特徴とする。
【0012】
図1~7に、本発明の制御盾の一例(制御盾101)を示す。
図1は制御盾101の6面図であり、
図2は正面図、
図3は背面図、
図4は上面図、
図5は底面図、
図6は右側面図、
図7は左側面図である。
また、
図8A乃至8Cは、制御盾101の背面に取り付けられるグリップ部用部材であり、具体的には、
図8Aは正面図、
図8Bは上面図又は底面図、
図8Cは、右側面図又は左側面図である。
【0013】
制御盾101は、板状材料からなる盾本体1の背面にグリップ部2及び第1の各種装備付加部3aが設けられており、さらにグリップ部の上面に第2の各種装備付加部3bが設けられている。
盾本体を形成する板状材料の素材は、盾に必要な強度、剛性、硬度、耐久性などの特性と、曲げ加工、穴あけ加工、塑性加工などの加工をすることができる成形・加工性を有する材料の中から適宜選定することができる。例えば、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属系材料、ポリカーボネート、カイデックス(登録商標)(積水成形工業株式会社製、高衝撃強度アクリル変性樹脂)などのエンジニアリングプラスチック及びフィラー添加複合樹脂などの樹脂系材料を用いることができる。
図示されている制御盾101の盾本体1は、縦長の正面視形状を有しており、正面視で長さL(上下方向寸法)が607mm、幅W(横方向寸法)が289mmであり、側面視で板厚Tが3mmである。
本発明において盾本体の寸法は、ヒト成人が盾を手に保持して戦闘の基本姿勢をとったときに、正面から見て上半身の領域又は頭部と胸部の領域がほぼ隠れる程度とされ、小柄な女性から大柄な男性まで対応するサイズとすることを考慮して、一般的には長さLがk560~660mm、幅Wが240~340mmの範囲で適宜設定される。板厚Tは特に制限されないが、盾としての十分な防御能力、素材特性及び重量を考慮すると、一般的には3~5mmの範囲で適宜設定される。
【0014】
グリップ部2の素材、形状は特に制限されないが、盾本体と同じ素材で形成することができる。
図8A~8Cに示すように、盾本体と同じ素材からなるベルト状の板状材料を屈曲成形してなる、ブリッジ状のグリップ部用部材2aを本体に取り付けてもよい。図示したグリップ部用部材2aは、ベルト状板状材料の中央部に設けられたブリッジ部2bの両端に、脚部2c及び台座部2dが屈曲成形され、台座部に、ねじ穴2eが形成されている。このグリップ部用部材2bを、台座部を介して盾本体の背面にねじ止めすると、ブリッジ部2bが脚部2cによって盾本体背面から所定高さに位置決めされる。
盾の使用者は、盾本体とブリッジ部の間のギャップに盾本体の下側から手を差し入れてブリッジ部を握りしめて持上げ、手の甲と前腕(前膊)で盾本体を支えることによって、盾を操作することができる。
【0015】
盾本体1は、大面積の平坦乃至略平坦な防御壁部4を有し、当該防御壁部4の両側部のうち、任意に選ばれる第1側部に、棒状凶器による打撃攻撃を受け止める打撃防御部5を備えており、第1側部に相対する第2側部にナイフ等の尖鋭凶器による腹部への刺突攻撃に対して威嚇し防御する刺突防御部6を備えている。また、盾本体1は、大面積の平坦乃至略平坦な防御壁部4の上部に、攻撃者に対して威嚇し反撃するために山形に突出させた突撃部7を備えている。従って本発明の制御盾は、打撃防御部及び刺突防御部を利用した複数の防御機能を有し、さらに突撃部及び刺突防御部を利用した威嚇・反撃機能も有するので、総合的な制圧力に優れている。
【0016】
打撃防御部5は、上記第1側部の辺縁が盾本体の上下方向に走る屈曲軸axisに沿って盾本体の背面側に屈曲してなるリブ構造8を有しており、このリブ構造によって打撃に対する盾本体の強度を増加させている。
図22A、22B及び22Cは、正面上部から打撃を受けた場合に、基本姿勢から盾を支えている肘を少し上にあげて棒状凶器が接近してくる方向に盾を向け、頭部と胸部を保護する要領を示す連続写真である。
図示されている制御盾101のリブ構造8は、リブ幅W(lib)が41mm、屈曲角度θ(lib)が120度である。本発明において打撃防御部のリブ構造となる辺縁部の幅と屈曲角度は特に制限されないが、一般的には、リブ幅が41~45mm、屈曲角度が120度~132度の範囲で適宜設定される。
図9A及び9Bは、盾本体1の第1側部の一部だけに打撃防御部5を設けた変形例である。
図9Aは、盾本体の素材を屈曲成形する前の打撃防御部となる部分5(pre)を有する状態を示す正面図であり、
図9Bは、盾本体の素材を屈曲成形した後のリブ構造8を有する打撃防御部5が形成された状態を示す正面図及び右側面図である。
打撃防御部5は、
図9A及び9Bの変形例に示すように第1側部の一部だけに設けてもよいが、打撃に対する防御範囲を広くするために、少なくとも第1側部の上端から第1側部の長さの2分の1までに亘る範囲に設けることが好ましく、第1側部の全体に亘り設けることが特に好ましい。
【0017】
刺突防御部6は、上記第2側部の辺縁に沿って山形の形状に成形してなる突起9を複数配列させた連続突起構造10を有する。連続突起構造の各突起は、当該第2側部の辺縁を盾本体の横方向に突出し、特に典型的な場合には、防御壁部4の平坦面と平行な方向に突出する山形の形状を有している。この刺突防御部によって、攻撃者からの刺突攻撃に対して威嚇し、反撃することができる。
図23A及び23Bは、正面からの腹部への刺突攻撃に対して、盾本体の位置を少し下に下げ、第2側部を下側にし、盾本体の長手方向を水平に保持して腹部を保護し、さらに刺突防御部の連続突起構造を正面に向けて立て、ナイフ等の尖鋭凶器の接近に対して威嚇、反撃する要領を示す連続写真である。
図示されている制御盾101の刺突防御部は、正面視で高さHが17mm、ピッチ幅W(pitch)が50mm、頂角の角度θ(side)が90度の突起9を第2側部の全体に亘り、8個配列させた連続突起構造10を有する。本発明において刺突防御部に形成する突起9の高さ、ピッチ幅、頂角の角度は特に制限されないが、一般的には、高さが16~19mm、ピッチ幅が50~55mm、頂角の角度が90度~99度の範囲で適宜設定される。
図10は、盾本体の第2側部の一部だけに連続突起構造10を有する刺突防御部6を設けた変形例である。刺突防御部6は、第2側部の一部だけに設けてもよいが、刺突攻撃に対する防御範囲を広くするために、少なくとも第2側部の下端から第2側部の長さの2分の1までに亘る範囲に設けることが好ましく、第2側部の全体に亘り設けることが特に好ましい。
【0018】
盾本体に2つある側部のうち、どちらに打撃防御部5、刺突防御部6を配置するかは特に制限されないが、上記したような打撃又は刺突攻撃に対する防御要領を想定すると、使用者が制御盾と制御棒を持って
図21の基本姿勢をとったときに、盾を持つ手と同じ側の側部に打撃防御部5を配置し、盾を持つ手とは反対の側部に刺突防御部6を配置する。例えば、使用者が盾を左手で持つ場合には、使用者から見て盾本体の左側に打撃防御部5を配置し、盾本体の右側に刺突防御部6を配置する。
また、一般的に使用者は利き手で制御棒を持ち、利き手とは反対側の手で制御盾を持つことを前提とすれば、使用者が
図21の基本姿勢をとったときに、利き手側となる側部に刺突防御部6を配置し、利き手の反対側となる側部に打撃防御部5を配置する。例えば、使用者の利き手が右手であり、その反対の左手で制御盾を持つ場合には、使用者から見て盾本体の左側に打撃防御部5を配置し、盾本体の右側に刺突防御部6を配置する。
【0019】
盾本体上部の突撃部7は、正面視で上方向に、特に典型的な場合には、防御壁部4の平坦面と平行な上方向に突出する山形の形状を有しており、このように山形に尖った先端部11を利用して攻撃者に対し威嚇、反撃する。
図24A及び24Bは、正面にいる攻撃者に対し、盾本体上部の突撃部を突き立てて反撃する要領を示す連続写真である。
図示されている制御盾101の突撃部7は、先端部の頂角角度θ(top)を81度とし、先端部の頂点を、盾本体の幅方向の中間点から打撃防御部5を備える第1側部の方向へ、盾本体の幅の8分の1相当の距離だけずらした地点に配置している。
本発明において、突撃部の頂角角度θ(top)は特に制限されないが、反撃力を高めるために、頂角角度が72度~81度の範囲で適宜設定される。
突撃部の先端部頂点の位置も特に制限されないが、反撃力を高めるために、盾本体の幅方向の中央付近に配置される。先端部頂点の位置は、盾の使用者が基本姿勢をとったときに盾本体の刺突防御部6を設けた側の上部越しに正面の様子を見やすくするために、盾本体の幅方向の中間点よりも、打撃防御部5を設けた第1側部にやや近い位置に配置することが好ましく、より具体的には、盾本体の幅方向の中間点から第1側部の方向に向かって盾本体の4分の1幅の地点までの間に配置することが好ましい。
図10は、盾本体の上部に山形に尖った先端部を2つ(11a、11b)有する突撃部7を設けた変形例である。突撃部は、山形に尖った先端部を2つ以上有していてもよいが、その場合には、盾本体の刺突防御部6を設けた側の上部越しに正面の様子を見やすくするために、最も刺突防御部6に近い先端部11aの頂点を、盾本体の幅方向の中間点から第1側部の方向に向かって盾本体の4分の1幅の地点までの間に配置することが好ましい。
【0020】
本発明の制御盾は、必要に応じて様々な装備を装着してもよい。例えば、制御盾の背面に、フラッシュライトを取り付けることができる。フラッシュライトは、暗所において周囲を探索するために使用するだけでなく、攻撃者の目に突然フラッシュライトを照射することによって相手の動きを止めることができる。
装備を着脱自在に取り付けることができるアタッチメント部材を制御盾の盾本体背面に取り付け、当該アタッチメント部材を介して、各種装備の中から必要に応じて任意に選んだものを制御盾の背面に着脱自在に取り付けることができる。そのようなアタッチメント部材としてピカティニーレール(MIL規格:MIL-STD-1913)があり、ピカティニーレール対応の装備であれば如何なるものも取り付けることができるので好ましい。
図3に示すように、制御盾の盾本体背面のグリップ部よりも上側の位置に、任意の装備品を着脱可能に取り付け可能な第1の各種装備付加部3a、及び、前記グリップ部の上面に、任意の装備品を着脱可能に取り付け可能な第2の各種装備付加部3bをそれぞれ設けてもよい。
図3の例では、第1の各種装備付加部3aはフラッシュライトを取り付けたときに、ライトの照射方向が斜め上方となる角度をつけて位置決めされている。なおフラッシュライトは、グリップ部2のブリッジ部上面に設けた第2の各種装備付加部3bに、直接取り付けてもよい。
図25A及び25Bは、盾本体背面のグリップ部よりも上側の位置に第1の各種装備付加部3aとして第1のピカティニーレール、及び、グリップ部2のブリッジ部上面に第2の各種装備付加部3bとして第2のピカティニーレールをそれぞれ設け、第1のピカティニーレールにフラッシュライトを取り付け、第2のピカティニーレール3bに前記フラッシュライトと接続されたコントローラを取り付けた状態を示す写真である。
図25Aは制御盾の背面から見た状態を示し、
図25Bは制御盾の正面から見た状態を示す。また、
図25Cはフラッシュライトのコントローラを、第2のピカティニーレールから取り外した状態を示す。フラッシュライトとコントローラは、無線又は有線のどちらで接続してもよい。
図26A、26B及び26Cは、フラッシュライトをグリップ部よりも上側の位置に設けた第1の各種装備付加部3aに取り付け、グリップ部2上に設けた第2の各種装備付加部3bにフラッシュライトのコントローラを取り付けた制御盾を用いて、フラッシュライトを照射する要領を示す写真である。
図26Aは、右手に持った制御棒を振り上げる直前の状態であり、
図26Bは、制御棒を振り上げて威嚇しながら制御盾の位置を少し上に上げてフラッシュライト照射準備に入った状態であり、
図26Cは、制御棒を振り上げたままグリップ部上のコントローラのスイッチを入れ、攻撃者の目を狙ってフラッシュライトを点灯した状態である。この例のように、フラッシュライトをグリップ部よりも上側の位置に取り付け、照射方向が制御盾の上下方向に対して斜め上方となる角度をつけて位置決めした場合には、攻撃者の目を狙いやすい高さ及び照射角度に設定できるため好ましい。また、フラッシュライトのコントローラをグリップ部のブリッジ部上面に取り付けることによって、グリップ部を掴んでいる手でフラッシュライトを容易に操作できるため好ましい。
また、
図27A及び27Bは、フラッシュライトをグリップ部2上の第2の各種装備付加部3bに直接取り付けた制御盾を用いて、フラッシュライトを照射する要領を示す写真である。
図27Aは、右手に持った制御棒を振り上げて威嚇しながら制御盾の位置を少し上に上げてフラッシュライト照射準備に入った状態であり、
図27Bは、制御棒を振り上げたままグリップ部上のフラッシュライトを直接操作し、攻撃者の目を狙ってフラッシュライトを点灯した状態である。
【0021】
また、
図2及び3に示すように、盾本体の平坦な防御壁部4に、拘束具、固定具、止血体その他の必要品を装着するための通し穴12を設けてもよい。通し穴12の形は特に制限されないが、図示の例では、スリット状の通し穴が設けられており、そこにベルト状の紐を通すことができる。
図20A及び20Bに、盾本体の通し穴を使って必要品を装着した状態を示す。
図20Aは、盾本体の前面側に止血帯13aを装着した状態を示しており、
図20Bは、盾本体の背面側に拘束帯13b及び前腕固定帯13cを装着した状態を示している。
【0022】
II.制御棒
本発明の制御棒は、細長い板状材料からなり、長手方向の一端側に茎部(なかごぶ)、他端側に抜身部(ぬきみぶ)を有する制御棒本体、及び、当該制御棒本体の茎部に設けられたグリップ部を有する刀剣状の制御棒であって、
前記抜身部は、長さが490~540mm、幅が95~105mmであり、
前記抜身部の前側端部に、茎部側から先端方向に向かって順次、長さが260~290mm、抜身部の峰側方向に向かう最大深さが55~65mmの湾曲状凹部を成形してなる下肢拘束部、長さが110~125mm、抜身部の峰側方向に向かう最大深さが9~15mmの湾曲状凹部を成形してなる上肢拘束部兼打撃部、及び、先細る切先(きっさき)を成形してなる長さ84~94mmの突撃部兼上部グリップ部を備えることを特徴とする。
【0023】
図11~17に、本発明の制御棒の一例(制御棒201)を示す。
図11は制御棒201の6面図であり、
図12は正面図、
図13は背面図、
図14は上面図、
図15は底面図、
図16は右側面図、
図17は左側面図である。なお本明細書においては、制御棒を刀剣と見立てたときに、刀身部の刃に相当する部分を前側と称し、前側が紙面から飛び出すように描いた図を正面図とし、刀身部の峰に相当する側を峰側と称し、峰側が紙面から飛び出すように描いた図を背面図とし、刀身部の切先に相当する部分を先端と称し、先端が紙面から飛び出すように描いた図を上面図とし、刀身部の茎(なかご)に相当する部分を茎部と称し、茎部が紙面から飛び出すように描いた図を底面図とし、前側を正面から見たときに右側となる面を描いた図を右側面図とし、前側を正面から見たときに左側となる面を描いた図を左側面図とする。
【0024】
制御棒201は、細長い板状材料からなる制御棒本体21の一端にグリップ部22を設けた刀剣状の外観を有している。
制御棒本体を形成する板状材料の素材は、防御・反撃に必要な強度、剛性、硬度、耐久性などの特性と、切削加工、穴あけ加工、塑性加工などの成形・加工性を有する材料の中から適宜選定することができる。例えば、上記した制御盾の素材と同様に、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属系材料、ポリカーボネート、カイデックス(登録商標)(積水成形工業株式会社製、高衝撃強度アクリル変性樹脂)などのエンジニアリングプラスチック及びフィラー添加複合樹脂などの樹脂系材料を用いることができる。
図示されている制御棒201の制御棒本体21は、刀剣の刀身部に相当する抜身部23と、当該抜身部の長手方向の一端側に設けられた茎部24を有している。茎部と抜身部の境界は、茎部の抜身部寄りの端部において制御棒の前側に突き出た突起部の突き出し開始点Pxであり、前記突起部は抜身部23の一部である。制御棒201の全長Lは606mmであり、抜身部23は、長さLaが490mm、側面視での幅W(抜身部の前側と峰側の間の最大寸法)が96mmであり、板厚Tが5mmである。
本発明において制御棒の全長、並びに、抜身部の全長及び幅は特に制限されないが、小柄な女性から大柄な男性までの対応サイズを考慮し、制御棒の全長Lは、一般的には600~660mmの範囲で適宜設定され、抜身部23は、一般的には長さLaが490~540mm、幅Wが95~105mmの範囲で適宜設定される。
制御棒本体の板厚Tは特に制限されないが、制御棒としての十分な防御・反撃能力、素材特性及び重量を考慮すると、一般的には3~5mmの範囲で適宜設定される。
【0025】
グリップ部22は、制御棒本体の一端に設けられた茎部24に握りやすい部材を取り付けてなる。グリップ部22の素材は特に制限されず、ナイフや工具のグリップ部に通常用いられている素材を用いてもよい。例えば、木材、プラスチックなどを素材からなるグリップ部用部材を、ねじ止めやリベット打ちなどの方法で取り付けることにより、グリップ部22とすることができる。なお、図示の例では、グリップ部22は手元側に、茎部の端部33が露出している。
グリップ部22の厚さは、握りやすさを考慮し、一般的には15~17mmの範囲で適宜設定される。
【0026】
抜身部23の前側端部は、茎部24側から先端方向に向かって順次、下肢拘束部25、上肢拘束部兼打撃部26、及び、突撃部兼上部グリップ部27を備えている。
従って本発明の制御棒は、打撃部及び突撃部を利用した複数の威嚇・反撃機能を有し、さらに下肢拘束部及び上肢拘束部を利用した複数の拘束機能も有するので、総合的な制圧力に優れている。
【0027】
下肢拘束部25、上肢拘束部兼打撃部26、及び、突撃部兼上部グリップ部27は、抜身部の峰側方向に向かって凹む湾曲状凹部を有している。茎部24と抜身部23の境界付近で制御棒の前側に突き出た突起部の頂点Pa、下肢拘束部25と上肢拘束部兼打撃部26を区切っている凸部の頂点Pb、及び、上肢拘束部兼打撃部26と突撃部兼上部グリップ部27を区切っている凸部の頂点Pcは、略一直線に並び、抜身部23の略最大幅となる高さを有している。ここで略最大幅とは、抜身部23の最大幅との差が5.0cm以下、好ましくは3.0cm以下、特に好ましくは1.0cm以下であることを意味する。
【0028】
下肢拘束部25は、長さLbが260~290mm、抜身部の峰側方向に向かう最大深さDbが55~65mmの湾曲状凹部28を有している。なお、下肢拘束部25の湾曲状凹部28の長さLbとは、湾曲状凹部28の両端にある2つの頂点Pa、Pbを制御棒の長手方向軸上に投影して得られる2つの点を結ぶ線分の長さを意味し、最大深さDbとは、湾曲状凹部28の両端にある2つの頂点Pa又はPbの位置における抜身部の幅から、湾曲状凹部28の最も狭い部分における抜身部の幅を差し引いて得られる2つ差分値のうち、大きいほうの差分値を意味する。
図28の写真に示すように、迎撃者が、抜身部の峰部を上にして下肢拘束部25の両端付近を両手で握り、湾曲状凹部内に攻撃者の両下肢を嵌め込んで、体重をかけて取り押さえることによって、攻撃者を拘束することができる。
【0029】
上肢拘束部兼打撃部26は、長さLcが110~125mm、抜身部の峰側方向に向かう最大深さDcが9~15mmの湾曲状凹部29を有している。なお、上肢拘束部兼打撃部26の湾曲状凹部29の長さLcとは、湾曲状凹部29の両端にある2つの頂点Pb、Pcを制御棒の長手方向軸上に投影して得られる
2つの点を結ぶ線分の長さを意味し、最大深さDcとは、両端にある2つの頂点Pb又はPcの位置における抜身部の幅から、湾曲状凹部29の最も狭い部分における抜身部の幅を差し引いて得られる2つ差分値のうち、大きいほうの差分値を意味する。
図29の写真に示すように、迎撃者が、抜身部の峰部を上にして上肢拘束部兼打撃部の両端付近を両手で握り、湾曲状凹部内に攻撃者の上肢を嵌め込んで、体重をかけて取り押さえることによって、攻撃者を拘束することができる。
上記した下肢及び上肢の取り押さえ要領は、非力な迎撃者が実施する場合であっても拘束された者に対して大きな苦痛を与え、抵抗する意思を奪うため、拘束された者は容易に離脱することができない。
【0030】
突撃部兼上部グリップ部27は、長さLdが84~94mmの先細る切先(きっさき)31を有しており、この切先を利用して攻撃者を打突することにより反撃する。
下肢拘束部25、上肢拘束部兼打撃部26、及び、突撃部兼上部グリップ部27を上記各寸法の範囲内で設定することにより、抜身部の各部が求められる機能を発揮するだけでなく、抜身部の重心がやや先端側に偏るため、制御棒を振り回したときの遠心力によって、上肢拘束部兼打撃部26の打撃力を大きくすることができる。
【0031】
上肢拘束部兼打撃部26の峰側は、
図28の写真に示すように、下肢拘束部25の湾曲状凹部28を利用して攻撃者を取り押さえるときに手で握る位置に当たるため、握りやすい形状にすることが好ましい。
また、突撃部兼上部グリップ部27の峰側は、
図29の写真に示すように、上肢拘束部兼打撃部26の湾曲状凹部29を利用して攻撃者を取り押さえるときに手で握る位置に当たるため、握りやすい形状にすることが好ましい。
かかる観点から、突撃部兼上部グリップ部27の前側を、峰側に浅く凹む湾曲状凹部30を有する先細り形状とし、上肢拘束部兼打撃部26から突撃部兼上部グリップ部27に亘る部分と相対する峰側の部分を、頂点Pdと頂点Peを両端とし、長さLeが150~170mm、抜身部の前側方向に向かう最大深さDeが20~25mmの湾曲状凹部32を有し、かつ、抜身部の頂点Peよりも先端側に長さ30~35mmの直線状の峰部を残した形状とすることが好ましい。
【0032】
III.制御盾と制御棒の組み合わせ
上記から明らかなとおり、本発明の制御盾と制御棒を組み合わせて使用することによって、異なる複数の防御機能、威嚇・反撃機能、制御機能、及び、拘束機能を発揮させることができるため、総合的に優れた制圧力を達成することができる。
また、本発明の制御盾の盾本体と、本発明の制御棒の制御棒本体は、どちらも板状材料からなり、平坦な表面を有する扁平形状であるため、制御盾の盾本体の前面に、制御棒の抜身部の側面を向き合わせて重ねた状態にすると、場所をとらずに保管することができる。
さらに、本発明の制御盾の盾本体の前面に、第1の係合部材を設けてなる担持部を備える担持部付き制御盾、及び、本発明の制御棒の抜身部の少なくとも一方の側面に、前記第1の係合部材と着脱可能に係合する第2の係合部材を設けてなる着脱部を備える着脱部付き制御棒を組み合わせることによって、制御盾と制御棒を、平常時には一体化して場所をとらずに保管し、緊急時には一体化した状態のまま携行して現場に急行し、現場に到着したときに瞬時に分離して迎撃態勢をとり、攻撃に対し即応できる。
図18A及び18Bは、第1及び第2の係合部材として面ファスナーを用いた実施形態を示す図である。
図18Aは、平坦な防御壁部の幅方向中央且つ上下方向上部から中間部に亘る領域に、第1の面ファスナーを設けてなる担持部41を有する制御盾と、右側面部の下肢拘束部を備える領域に、第2の面ファスナーを設けてなる着脱部42を有する制御棒を示した図である。
図18Bは、制御盾の担持部と制御棒の着脱部を向き合わせて重ねることにより、制御盾と制御棒を着脱可能に一体化した状態を示す図である。前記第1の面ファスナーと第2の面ファスナーは、係合させたときに制御棒の自重で剥離しない接合強度を有する面積を有している。
【符号の説明】
【0033】
102 制御盾
201 制御棒
1 盾本体
2 制御盾のグリップ部
2a グリップ部用部材
2b ブリッジ部
2c 脚部
2d 台座部
2e ねじ穴
3a 第1の各種装備付加部
3b 第2の各種装備付加部
4 防御壁部
5 打撃防御部
6 刺突防御部
7 突撃部
8 リブ構造
9 突起
10 連続突起構造
11、11a、11b 先端部
12 通し穴
13a 止血帯
13b 拘束帯
13c 前腕固定帯
21 制御棒本体
22 制御棒のグリップ部
23 抜身部
24 茎部
25 下肢拘束部
26 上肢拘束部兼打撃部
27 突撃部兼上部グリップ部
28 下肢拘束部の湾曲状凹部
29 上肢拘束部兼打撃部の湾曲状凹部
30 突撃部兼上部グリップ部の湾曲状凹部
31 切先
32 峰側の湾曲状凹部
33 茎部の端部
41 担持部
42 着脱部