(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080994
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20230602BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194619
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 泰治
(72)【発明者】
【氏名】金法 順正
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】土井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】中川 英治
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151JA03
5F151JA04
5F251JA03
5F251JA04
(57)【要約】
【課題】より剥離しにくい加飾層を用いて太陽電池モジュールを加飾する。
【解決手段】受光面を有する太陽電池セルと、
前記太陽電池セルを封止する封止層と、
前記封止層の上において前記受光面の少なくとも一部を覆う織物で形成された加飾層と
を有する太陽電池モジュール。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面を有する太陽電池セルと、
前記太陽電池セルを封止する封止層と、
前記封止層の上において前記受光面の少なくとも一部を覆う織物で形成された加飾層と
を有する太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記織物の表面を保護する保護層を有する
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記織物は、光透過率が相対的に高い第1領域と、光透過率が相対的に低い第2領域とを有する
請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第1領域と前記第2領域とが、それぞれ織密度の異なる領域である
請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記第1領域と前記第2領域とが、それぞれ光透過性の異なる糸を用いて織られた領域である
請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記第1領域と前記第2領域とが、それぞれ太さの異なる糸を用いて織られた領域である
請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記織物が、15デシテックス以下の糸を用いて織られている
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記織物の密度が、たて方向及びよこ方向のいずれも300本/2.54cm以下である
請求項7に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記織物の厚みが、100μm以下である
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記糸が、モノフィラメントである
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記織物が染料で着色されている
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を加飾する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、電卓等の小型電子機器、帽子やジャケット等の衣服、屋根や壁等の建物における家庭用発電設備、又は広大な敷地での大規模発電施設等様々な場所で使用されるようになってきている。太陽電池モジュールは、一般的には黒色やそれに類似する色をしており、消費者の嗜好の多様性に対応するため意匠性の改善が望まれている。
【0003】
意匠性に関し、顔料や染料等を用いた加飾層を積層することにより太陽電池モジュールに様々な色を着けることが検討されている。例えば特許文献1は、鱗片状光輝性顔料を含む加飾層を用いた太陽電池モジュールを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加飾層の面方向全体に、鱗片状顔料が基材の表面に沿って配向したものは、鱗片状顔料が密接に複数重なりあった積層構造となりやすい。このため、鱗片状粒子間に加飾層を構成する樹脂が入り込まなかったり、入り込んだとしても部分的であったり、ごくわずかの量しか入り込まない状態が太陽電池モジュール全面にわたり発生し、基材層と表面層の間に存在する加飾層で太陽電池モジュールが剥がれてしまう層間剥離現象が発生するおそれがある。特に、光輝性を有する鱗片状顔料では、鱗片状顔料と樹脂との接着力が弱く、鱗片状顔料間に樹脂が入り込んだ場合においてもこのような層間剥離の問題が発生しやすい。
【0006】
またさらに鱗片状顔料は、加飾層の厚み方向において、比重の関係より一方の面に集中して鱗片状顔料が層状に配置された構造を取りやすい。このような場合には、鱗片状顔料が多く存在している面と当該面と接触する他の層との界面の接着力が弱くなるおそれがあり、加飾層の鱗片状顔料が多く存在している面と当該面と接触している他の層との界面にて剥離現状が発生しやすい。特にこれらの剥離の問題は、柔軟性又は可撓性を有する太陽電池モジュールにて発生リスクが大きい。
【0007】
これに対し本発明は、より剥離しにくい加飾層を用いて太陽電池モジュールを加飾する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、受光面を有する太陽電池セルと、前記太陽電池セルを封止する封止層と、前記封止層の上において前記受光面の少なくとも一部を覆う織物で形成された加飾層とを有する太陽電池モジュールを提供する。
【0009】
この太陽電池モジュールは、前記織物の表面を保護する保護層を有してもよい。
【0010】
前記織物は、光透過率が相対的に高い第1領域と、光透過率が相対的に低い第2領域とを有してもよい。
【0011】
前記第1領域と前記第2領域とが、それぞれ織密度の異なる領域であってもよい。
【0012】
前記第1領域と前記第2領域とが、それぞれ光透過性の異なる糸を用いて織られた領域であってもよい。
【0013】
前記第1領域と前記第2領域とが、それぞれ太さの異なる糸を用いて織られた領域であってもよい。
【0014】
前記織物が、15デシテックス以下の糸を用いて織られていてもよい。
【0015】
前記織物の密度が、たて方向及びよこ方向のいずれも300本/2.54cm以下であってもよい。
【0016】
前記織物の厚みが、100μm以下であってもよい。
【0017】
前記糸が、モノフィラメントであってもよい。
【0018】
前記織物が染料で着色されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より剥離しにくい加飾層を用いて太陽電池モジュールを加飾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】太陽電池モジュール1の断面構造を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.構成
図1は、一実施形態に係る太陽電池モジュール1の外観を例示する図である。太陽電池モジュール1は、その表面すなわち受光面に加飾層を有する。加飾層とは、飾りを与える層すなわち太陽電池モジュール1を見た者の美感を惹き起こす層をいう。具体的には、加飾層は、形状、色彩、模様、又はこれらの組み合わせを含む外観を有する。ここでは、加飾層が模様を有する例を示している。
【0022】
図2は、太陽電池モジュール1の断面構造を例示する図である。
図2は、太陽電池モジュール1の受光面に垂直な断面を示す。太陽電池モジュールは、保護層11、加飾層12、封止層13、太陽電池セル14、保護層15、接着層16、及び基材17を有する。これらの層は、太陽電池モジュール1の受光面すなわち最表面からこの順番で積層される(なお太陽電池セル14は、封止層13の内部に封止されている)。
【0023】
保護層11は、加飾層12を保護するための層である。保護層11は、例えば樹脂製のフィルム又はガラスのパネルである。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエステルが用いられる。太陽電池モジュール1の発電電力を高める観点から光透過性が高い材料が用いられてもよい。太陽電池モジュール1の耐久性及び発電電力の観点から、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)製のフィルムが用いられてもよい。また、太陽電池モジュールのメンテナンス頻度を下げるために、保護層11の表面に、防汚処理や超親水化処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに、見る角度により柄を変えたり、柄に立体感を与えたりするため、レンチキュラーレンズを保護層11の表面に設けてもよい。
【0024】
加飾層12は、太陽電池セル14に意匠性(又は審美性)を付与するための層であり、織物で形成される。この織物は、その織組織の変化又は着色により意匠性が付与される。光透過性及び耐剥離性の観点から、加飾層12の織物を織る際に用いられる糸の太さは、15デシテックス以下であってもよいし、13デシテックス以下であってもよいし、10デシテック以下であってもよい。下限は特にないが、織物の取り扱い性の観点から、織物を織る際に用いられる糸の太さは1デシテックス程度以上であってもよい。
【0025】
加飾層12の織物を構成する糸は、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド等の合成繊維、アセテート繊維等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、又は綿、麻、絹、毛等の天然繊維、若しくはこれらの組み合わせにより形成される。熱に対する形態安定性及び光透過性の観点から、ポリエステル繊維が用いられてもよい。
【0026】
この繊維は、短繊維及び長繊維のいずれであってもよいが、光透過性及び太陽電池モジュール1内での毛羽汚れの発生を防止する観点から、長繊維であってもよい。長繊維を用いる場合、この繊維はマルチフィラメント及びモノフィラメントのいずれであってもよい。光透過性の観点からはモノフィラメントであってもよいし、意匠性及び耐剥離性の観点からはマルチフィラメントであってもよい。また、意匠性(柄を鮮明に表す)の観点からは、光沢が基準よりも低い繊維(例えばフィラメントの中に酸化チタンを含むもの。いわゆるセミダル糸又はフルダル糸)が用いられてもよい。
【0027】
一例において、加飾層12は柄すなわち模様を有する。加飾層12に柄を付与する手法は以下の3つである。(ア)織組織による柄の付与。(イ)着色による柄の付与。(ウ)上記2つの組み合わせ。
【0028】
織組織により柄を付与する場合、一例においては、光(可視光)透過量の差が用いられる。すなわち、光透過量の多い領域と少ない領域とで模様を形成する。光透過量が異なる領域を形成する手法は以下の4つである。(a)光透過性が異なる糸を使用する。(b)太さが異なる糸を使用する。(c)織密度を異ならせる。(d)上記3つのうち2つ又は3つの組み合わせ。
【0029】
光透過性が異なる糸としては、例えば、ブライト糸、セミダル糸、及びフルダル糸の中から異なるものを併用すること、又は天然繊維と化学繊維とを併用することが考えられる。あるいは、撚りの異なる糸(例えば強撚糸と弱撚糸)を併用してもよい。一例において、光透過性の低い繊維として、ポリエステル繊維又はナイロン繊維等で形成されたモノフィラメントのフルダル糸、若しくは絹等の天然繊維を用い、光透過性の高い糸としてポリエステル繊維又はナイロン繊維等で形成されたモノフィラメントのブライト糸又はセミダル糸が用いられる。
【0030】
より具体的には、経糸及び緯糸の一部に光透過性の低い糸を用いてストライプ柄を形成したり、経糸及び緯糸の一部に光透過性の低い糸を用いて格子柄を形成したりすることができる。
【0031】
また、太さの異なる糸を併用することにより柄を形成してもよい。あるいは、素材及び太さが同じ糸のみを用いる場合であっても、織密度の高い領域と低い領域とを形成することにより柄を形成することができる。あるいは、織密度の高い領域を相対的に光透過性が低い糸で形成し、織密度の低い部分を光透過性が高い糸で形成することにより、柄の視認性をより高めること、すなわち柄をより明確にすることができる。
【0032】
着色により柄を付与する場合、例えば染料が用いられる。着色に用いる染料は糸を構成する繊維に応じて、分散染料、酸性染料、スレン染料、反応染料、直接染料、及び媒染染料等の中から選択される。染料ではなく顔料を用いて着色をしてもよいが、染料を用いた方が光透過性に優れた織物が得られる。
【0033】
着色は繊維の紡糸段階、糸の段階、及び織物の段階等、どの段階で行われてもよい。着色の手法は、紡糸段階での樹脂への着色剤の練りこみ、糸の段階での着色、織物の段階での着色、捺染やインクジェット等を用いた印刷等、どのような手法が用いられてもよい。印刷は、織物の全面に隙間なく着色するものであってもよいし、一部に任意の柄を付与するものであってもよい。
【0034】
なお、加飾層12において形成される柄はストライプ状や格子状のものだけではなく、その他の柄、例えば、水玉、幾何学柄、又は花柄等の柄であってもよい。さらに、1つ又は並べて設置される複数の太陽電池モジュール1を見た際に、何らかのメッセージやスローガン、企業ロゴなどが視認できるように加飾層12の柄を構成してもよい。レンチキュラーレンズと組み合わせる場合、レンチキュラーレンズのピッチに合わせ、あらかじめ設計しておいた柄を加飾層12に形成すればよい。
【0035】
加飾層12の織密度は、光透過性及び耐剥離性の観点から、経方向及び緯方向ともに300本/2.54cm以下であってもよい。少なくとも一方の織密度が200本/2.54cm以下であってもよいし、150本/2.54cm以下であってもよい。織密度の下限は特に限定されるものではないが、織物の形状維持や取り扱い性の観点から経方向及び緯方向ともに5本/2.54cm以上であってもよいし、10本/2.54cm以上であってもよいし、50本/2.54cm以上であってもよい。なお、織密度の差によって柄を形成する場合、柄における背景となる部分が上記の織密度であればよく、部分的に上記密度を超える領域があってもよい。
【0036】
加飾層12の厚みは、光透過性及び耐剥離性の観点から150μm以下であってもよい。100μm以下であってもよいし、80μm以下であってもよいし、50μm以下であってもよい。下限は特に限定されるものではないが、太陽電池モジュールへの意匠性の付与及び織物の取り扱い性の観点からは5μm以上であってもよい。加飾層12の厚みとは経糸と緯糸が交差した部分の厚みをいう。なお、厚みの差によって柄を形成する場合、柄における背景となる部分が上記の厚みであればよく、部分的に上記の厚みを超える領域があってもよい。
【0037】
封止層13は、複数の太陽電池セル14を封止するための層である。すなわち、封止層13は、複数の太陽電池セル14を保持し、保護層11及び保護層15に接着して太陽電池セル14を水分など外部環境から保護する。封止層13としては、樹脂系の封止材、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂、又はシリコーン樹脂等を用いることができる。封止材には、透明性、柔軟性、接着性、引張強度、又は耐候性など要求される特性に応じて添加剤が配合される。
【0038】
太陽電池セル14は、受光面で受けた光の光エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する素子である。太陽電池セルとしては、シリコン系(アモルファスシリコン、単結晶シリコン、又は多結晶シリコン等)、化合物系(カルコパイライト系等)、又は有機系等、どのような材料系のものが用いられてもよい。太陽電池モジュール1は複数の太陽電池セル14を有しており、これら複数の太陽電池セル14は配線(図示略)を介して接続されている。封止層13にはこの配線も含めて封止されている。
【0039】
保護層15は、封止層13及び太陽電池セル14を保護するための層である。保護層15は、例えば樹脂製のフィルム又はガラスのパネルである。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエステルが用いられる。保護層15の材料は保護層11と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
接着層16は、保護層15と基材17とを接着するための層である。接着層16としては、封止層13と同じ材料(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー系樹脂、又はシリコン樹脂等)が用いられてもよいし、封止層13とは異なる接着材が用いられてもよい。
【0041】
基材17は、太陽電池モジュール1全体を保護し、機械的強度を与えて取り扱いを容易にするための層である。基材17の材料は、太陽電池モジュール1の用途又は要求される特性に応じて、例えば、ゴムシート、プラスチックシート、繊維材料(織物、編物、又は不織布など)、金属板、ガラス板、及びこれらを用いた複合材料の中から選択される。一例において、基材17は、織物に多孔質膜及び/又は無孔質膜を積層したシートである。このような構成の基材17を用いることにより、太陽電池モジュール1は全体としてフレキシブル性又は柔軟性を有する。これにより、太陽電池モジュール1を巻き取ったり、折りたたんだりして保管することができる。あるいは、太陽電池モジュール1を衣服に取り付けた場合においてその衣服をたたんで保管したときに、巻き癖又はたたみ癖の発生を抑えることができる。なお、多孔質膜及び無孔質膜としては、柔軟性の観点から合成皮革等で用いられているウレタン樹脂が用いられてもよい。耐久性の観点からはエステル系のウレタン樹脂が用いられてもよいし、ポリカーボネート系のウレタン樹脂が用いられてもよい。さらに、巻き癖又はたたみ癖防止の観点及び織物等繊維材料のほつれ防止の観点から、繊維シート上にて樹脂を湿式法で凝固させ積層された多孔質膜が用いられてもよい。
【0042】
基材17は、剛性のある(又は固い、折りたためない)板状のものであってもよい。また、基材17に加えて(又は基材17を省略して)、保護層11、加飾層12、封止層13、太陽電池セル14、及び保護層15をフレームで挟んで保持してもよい。
【0043】
なお図示は省略するが、太陽電池モジュール1は、発電された電力を外部に出力するためのケーブル及びコネクタを有する。
【0044】
2.実施例
本願の発明者らは、太陽電池モジュール1の具体的な実施例として以下の試料を作製した。
【表1】
【0045】
(1)実施例1
加飾層12として、経糸及び緯糸がいずれも8デシテックスのポリエステル糸(モノフィラメント、ブライト糸)を用いた。織密度が低い領域(たて方向180本/2.54cm、よこ方向130本/2.54cm)と高い領域とにより模様を形成した(
図3)。
図3において色の濃い部分が織密度の低い領域であり、色の薄い部分が織密度の高い領域である。これらの領域により、黒地(太陽電池セル14及び基材17の色)に白(織密度が高い領域の糸の色)で格子が描かれた、意匠性に優れる太陽電池モジュールが得られた。加飾層12の厚みは55μmである。この太陽電池モジュールは、基材17の柔軟性により巻き取って保管することができ、利便性の高いものである。
【0046】
なお、加飾層12の厚みは、経糸と緯糸の重なり立った部分を電子顕微鏡(SEMEDX Type H形、(株)日立サイエンスシステムズ製)で観察して測定した。また、織密度は同様に電子顕微鏡を用い1mm当たりの糸の本数を数え、2.54cmあたりの本数に換算した。
【0047】
保護層11及び保護層15として、エチレンテトラフルオロエチレン製のフィルムを用いた。太陽電池セル14として、アモルファスシリコン系の太陽電池セルを用いた。封止層13及び接着層16として、ホットメルト型の接着剤を用いた。基材17としては、ポリエステル製の織物の片面に、その織物上でポリエーテル系のウレタン樹脂を湿式凝固させて形成した多孔質膜を形成し、さらにその多孔質膜上にポリカーボネート系の無孔質のウレタン樹脂膜を、バインダー樹脂を用いて貼り付けた黒色のシートを用いた。基材17は、太陽電池モジュール1の外装が織物となる向きで使用した。
【0048】
実施例1の試料において太陽電池モジュールの発電電力を測定した。電力測定に用いた太陽電池モジュール(試料)の大きさは、幅206cm×長さ96cmであった。実施例1の試料において測定された発電電力と、加飾層12を有さない点以外は実施例1と同様にして作製した同面積の試料において同一の光源を用いて測定された発電電力を比較し、次式(1)により発電電力の減衰率を求めた。
減衰率(%)=(1-Pw/Po)×100 …(1)
ここで、Pwは織物を有する太陽電池モジュールの発電電力[W]を、Poは織物を有さない太陽電池モジュールの発電電力[W]を示す。
【0049】
実験によると、Pw=78.4Wであり、Po=82.1Wであり、減衰率は4.5%であった。加飾層12すなわち織物を加えることによる発電電力の低下は抑制されていることが分かる。
【0050】
(2)実施例2
加飾層12には、経糸及び緯糸がいずれも10デシテックスのポリエステル糸(モノフィラメント、ブライト糸)を用いた。織密度が低い領域(たて方向及びよこ方向いずれも130本/2.54cm)と高い領域とにより
図3(実施例1)と同様の模様を形成した。さらに、加飾層12に対し、赤色と青色の分散染料を用いて転写捺染法により幾何学柄(
図4)を形成した。この太陽電池モジュールは、受光面からみると青色、赤色、白色(織密度が高い領域の糸の色)、及び黒色(太陽電池セル14及び基材17の色)で描かれた幾何学柄を有する意匠性に優れるものであった。この太陽電池モジュールは、基材17の柔軟性により巻き取って保管することができ、利便性の高いものである。
【0051】
実施例2の試料において、実施例1と同様に発電電力を測定した。電力測定に用いた太陽電池モジュールの大きさは、幅110cm×長さ80cmであった。実施例2では、Pw=29.0Wであり、Po=40.3Wであり、減衰率は28.3%であった。加飾層12すなわち織物を加えることによる発電電力の低下は抑制されていることが分かる。
【0052】
(3)参考例1
図3に示す赤、青、黒の部分を顔料とバインダー樹脂を用いて着色することにより幾何学模様を付与した織物を用いた以外は実施例2と同様にして太陽電池モジュールを得た。得られた太陽電池モジュールの発電電力は、11.28Wであった。従って、太陽電池モジュールに柄を付与することによって発生した発電電力の減衰率は72.0%と発電電力は大きく低下した。この原因は、顔料で着色したため、染料で着色した例と比べ加飾層の光透過性が低下したためと考えられる。
【0053】
(4)まとめ
本発明によれば、色及び/又は柄を有する加飾層によりして優れた意匠性を有し、かつ(加飾層を有さない構成と比較して)発電電力の低下が少ない太陽電池モジュール1を得ることができる。太陽電池モジュール1は加飾層に鱗片状粒子を用いていないため、使用時に加飾層が剥離してしまう可能性が低減される。基材17として適切な材料を選択すれば、巻き取って保管することができたり、広げて使用する際も巻き癖がついていなかったり、実用性に優れた太陽電池モジュール1を得ることができる。
【0054】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下で説明する事項のうち少なくとも2つが組み合わせて適用されてもよい。
【0055】
太陽電池モジュール1の断面構造は
図2において例示したものに限定されない。太陽電池セル14、封止層13、及び加飾層12以外の層は省略されてもよい。例えば、太陽電池モジュール1は、保護層11を有さなくてもよい。あるいは、保護層11が加飾層12と接着又は接合されていなくてもよい。このような構成によれば、外観を変更するために加飾層12を交換することができる。あるいは、太陽電池モジュール1は、
図2において例示した層以外の層を有してもよい。例えば、太陽電池モジュール1は、加飾層12を封止層13又は保護層11に接着する接着層を有してもよい。
【0056】
加飾層12は太陽電池モジュール1の受光面の全面を覆っていなくてもよく、太陽電池セル14の受光面(正確には封止層13の受光面に相当する面)の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0057】
加飾層12の織物は、光の透過率が異なる領域を有していなくてもよく、受光面の全面がほぼ同一の透過率であってもよい。すなわち、織物の織密度及び使用される糸の特性は織物の全面に渡ってほぼ均一であってもよい。この場合において、加飾層12の織物は着色により意匠性が与えられる。単一の太陽電池モジュール1は単色で着色されてもよいし、複数色に塗り分けられてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…太陽電池モジュール、11…保護層、12…加飾層、13…封止層、14…太陽電池セル、15…保護層、16…接着層、17…基材