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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080997
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
E02F9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194623
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岡島 一道
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB02
2D015GB07
(57)【要約】
【課題】コストを低減することが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、作業機械本体2と、物体検出センサ3a~3bと、旋回角度センサ61と、コントローラ4と、を備える。作業機械本体2は、走行体11と、旋回体12と、を有する。旋回体12は、走行体11の上側に配置され、走行体11に対して旋回可能である。物体検出センサ3a~3bは、旋回体12に配置されている。旋回角度センサ61は、旋回体12の旋回角度を検出する。コントローラ4は、旋回体12を旋回させて物体検出センサ3a~3bで作業機械本体2の周囲の物体を検出し、物体を検出した場合、物体検出センサ3a~3bによって検出される作業機械本体2から物体までの距離と、物体が検出された旋回角度とに基づいて作業機械本体2に対する物体の位置を特定し、特定した位置に基づいて仮想壁Wを設定する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体の上側に配置され、前記走行体に対して旋回可能な旋回体と、を有する作業機械本体と、
前記旋回体に配置された少なくとも1つの物体検出センサと、
前記旋回体の旋回角度を検出する旋回角度センサと、
前記旋回体を旋回させて前記物体検出センサで前記作業機械本体の周囲の物体を検出し、物体を検出した場合、前記物体検出センサによって検出される前記物体までの距離と、前記物体が検出された前記旋回角度とに基づいて前記作業機械本体に対する前記物体の位置を特定し、前記特定した位置に基づいて仮想壁を設定する制御部と、を備えた、
作業機械。
【請求項2】
前記旋回体は、作業機を有し、
前記物体検出センサは、検出方向が前記作業機と重ならないように前記旋回体に配置されている、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記旋回体は、作業機を有し、
前記制御部は、前記仮想壁に前記作業機が近づく動作を制限する動作制限を実行する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記動作制限は、前記作業機の停止を含む、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記動作制限は、前記旋回体の旋回の停止を含む、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項6】
前記制御部は、前記仮想壁に前記旋回体が近づく動作を制限する動作制限を実行する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記動作制限は、前記旋回体の旋回の停止を含む、
請求項6に記載の作業機械。
【請求項8】
前記作業機および前記走行体の姿勢を検出する姿勢検出部を更に備え、
前記制御部は、前記作業機の最も外側の最外位置を検出し、前記最外位置が前記仮想壁から所定範囲内に入った場合に前記動作制限を実行する、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項9】
前記制御部は、前記作業機械本体の周囲を複数の領域に分け、
前記仮想壁は、前記複数の領域に対応した複数の壁部を有し、
各々の前記領域において特定された前記物体の位置に基づいて、前記領域に対応した前記壁部が設定される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項10】
前記制御部は、物体が検出されない前記領域について、前記領域に対応する前記壁部を設定しない、
請求項9に記載の作業機械。
【請求項11】
前記複数の壁部の各々について設定するか否かを選択する選択部を更に備えた、
請求項9に記載の作業機械。
【請求項12】
前記制御部は、前記作業機械本体を囲むように配置された設定前の初期仮想壁を記憶しており、
前記初期仮想壁は、複数の初期壁部を有し、
前記制御部は、前記物体の位置に基づいて前記初期壁部を移動させることによって前記壁部を設定する、
請求項9に記載の作業機械。
【請求項13】
前記作業機械本体の少なくとも一部と前記仮想壁の少なくとも一部分を表示する表示部を更に備えた、
請求項1~12のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項14】
前記制御部は、前記旋回体の旋回中心を基準として前記作業機械本体の周囲を、第1領域と第2領域と第3領域と第4領域の4つの領域に分け、
前記第1領域は、前記走行体の前後方向における一方側の領域であり、前記第2領域は、前記前後方向における他方側の領域であり、
前記第3領域は、前記走行体の幅方向における一方側の領域であり、前記第4領域は、前記幅方向における他方側の領域であり、
前記仮想壁は、矩形状であり、前記走行体の前記一方側に前記幅方向に沿って配置された第1壁部と、前記走行体の前記他方側に前記幅方向に沿って配置された第2壁部と、前記走行体の前記幅方向における前記一方側に前記前後方向に沿って配置された第3壁部と、前記走行体の前記幅方向における前記他方側に前記前後方向に沿って配置された第4壁部と、を有し、
前記制御部は、
前記第1領域において特定された前記物体の位置に基づいて前記第1壁部を設定し、前記第2領域において特定された前記物体の位置に基づいて前記第2壁部を設定し、前記第3領域において特定された前記物体の位置に基づいて前記第3壁部を設定し、前記第4領域において特定された前記物体の位置に基づいて前記第4壁部を設定する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項15】
走行体の上側に配置されている旋回体を旋回させて、前記走行体および前記旋回体を含む作業機械本体の周囲の物体を検出する検出ステップと、
前記作業機械本体から前記物体までの距離と、前記物体が検出された旋回角度とに基づいて前記作業機械本体に対する前記物体の位置を特定する位置特定ステップと、
前記特定された位置に基づいて仮想壁を設定する設定ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事や、管埋設工事等でショベル機械が多く使用される。市街地等の道路で使用される場合、小型のショベル機械を導入した場合であっても、側方を走行する自動車、フェンス、ガードレール等の障害物に注意しながら作業者はショベル機械を運転する必要がある。
【0003】
そのため、例えば特許文献1では、ショベル機械の動きを制限するために仮想壁を設定することが開示されている。特許文献1では、旋回体の前部、後部、左部および右部、さらに斜め方向の部分にも物体検出センサを配置し、ショベル機械の周囲の障害物を検出するとともにショベル機械からの距離を検出して仮想壁が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/189030号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す構成では、旋回体の全周に亘ってセンサを複数配置する必要があるためコストが高くなる。
【0006】
本開示は、コストを低減することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様にかかる作業機械は、作業機械本体と、少なくとも1つの物体検出センサと、旋回角度センサと、制御部と、を備える。作業機械本体は、走行体と、旋回体と、を有する。旋回体は、走行体の上側に配置され、走行体に対して旋回可能である。物体検出センサは、旋回体に配置されている。旋回角度センサは、旋回体の旋回角度を検出する。制御部は、旋回体を旋回させて物体検出センサで作業機械本体の周囲の物体を検出し、物体を検出した場合、物体検出センサによって検出される作業機械本体から物体までの距離と、物体が検出された旋回角度とに基づいて作業機械本体に対する物体の位置を特定し、特定した位置に基づいて仮想壁を設定する。
【0008】
本開示の他の態様にかかる作業機械の制御方法は、検出ステップと、位置特定ステップと、設定ステップと、を備える。検出ステップは、走行体の上側に配置されている旋回体を旋回させて、走行体および旋回体を含む作業機械本体の周囲の物体を検出する。位置特定ステップは、作業機械本体から物体までの距離と、物体が検出された旋回角度とに基づいて作業機械本体に対する物体の位置を特定する。設定ステップは、特定された位置に基づいて仮想壁を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様によれば、コストを低減することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルを示す側面図である。
図2】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの平面図である。
図3】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルおよびその制御システムの構成を示すブロック図である。
図4】(a)本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの姿勢検出を説明するための側面模式図である、(b)本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの旋回角度を説明するための平面図である。
図5A】本開示の実施形態において作業機が物体検出姿勢に設定された状態の油圧ショベルを示す側面図である。
図5B】本開示の実施形態において作業機が物体検出姿勢に設定された状態の油圧ショベルを示す平面図である。
図6】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルと初期仮想壁を示す平面図である。
図7】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルにおける物体の検出エリアの一例を示す平面図である。
図8】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの周囲における物体の検出を説明するための平面図である。
図9図8において検出された物体の位置に基づいて設定された仮想壁と油圧ショベルを示す平面図である。
図10】工事現場を示す平面図である。
図11図10に示す工事現場において仮想壁を設定した状態を示す平面図である。
図12】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルにおけるディスプレイの表示を示す図である。
図13】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの仮想壁の作成動作を示すフロー図である。
図14】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルにおいて作業機の仮想壁への接近を監視する動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械の一例としての油圧ショベルについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
<構成>
(油圧ショベル1の概要)
図1は、本実施の形態の油圧ショベル1の構成を示す側面図である。図2は、本実施の形態の油圧ショベル1の構成を示す平面図である。
【0013】
油圧ショベル1(作業機械の一例)は、作業機械本体2と、物体検出センサ3a~3cと、コントローラ4(制御部の一例)(図3参照)と、を有している。
【0014】
作業機械本体2は、走行体11と、旋回体12と、を有する。走行体11は、一対の走行装置11a、11bを有する。各走行装置11a、11bは、履帯11c、11dを有している。エンジンからの駆動力によって走行モータが回転して履帯11c、11dが駆動されることによって油圧ショベル1が走行する。
【0015】
旋回体12は、走行体11の上側に配置されている。旋回体12は、旋回モータ27(図3参照)によって上下方向に沿った軸を中心として走行体11に対して旋回可能に構成されている。旋回体12にはスイングマシナリが配置されている。走行体11には、スイングサークルが配置されており、スイングマシナリの出力ピニオンと噛み合っている。旋回モータ27の回転駆動がスイングマシナリ(図示せず)によって減速され出力ピニオンから出力される。これにより、スイングマシナリがスイングサークルの内側または外側を回転移動し走行体11に対して旋回体12が回転する。
【0016】
旋回体12は、旋回フレーム13と、キャブ14と、作業機15と、を有する。旋回フレーム13は、走行体11の上側に配置されており、走行体11に対して旋回可能なフレームである。キャブ14は、旋回フレーム13の前部左側位置に設けられている。キャブ14は、オペレータが運転時に着座する運転席として設けられている。キャブ14の内部には、運転席、作業機15を操作するためのレバー、各種の表示装置(後述するディスプレイ53含む)等が配置されている。
【0017】
尚、本実施の形態において断りなき場合、前後左右はキャブ14内の運転席を基準として説明する。運転席が正面に正対する方向を前方向とし、前方向に対向する方向を後方向とする。運転席が正面に正対したときの側方方向の右側、左側をそれぞれ右方向、左方向とする。
【0018】
作業機15は、旋回体12の前部中央位置に取り付けられている。作業機15は、図1に示すように、ブーム21、アーム22、バケット23を有する。ブーム21の基端部は、旋回体12に回動可能に連結されている。また、ブーム21の先端部はアーム22の基端部に回動可能に連結されている。アーム22の先端部は、バケット23に回動可能に連結されている。バケット23は、その開口が旋回体12の方向(後方)を向くことができるようにアーム22に取り付けられている。バケット23が、このような向きに取り付けられた油圧ショベル1は、バックホウと呼ばれている。
【0019】
ブーム21、アーム22およびバケット23のそれぞれに対応するように油圧シリンダ24~26(ブームシリンダ24、アームシリンダ25およびバケットシリンダ26)が配置されている。これらの油圧シリンダ24~26が駆動されることによって作業機15が駆動される。これにより、掘削等の作業が行われる。
【0020】
旋回体12のキャブ14の後側には、エンジンルーム16が配置されている。エンジンルーム16には、エンジン、エンジンを冷却する冷却ユニット、および油圧ポンプ等が収納されている。
【0021】
(物体検出センサ3a~3c)
物体検出センサ3a~3cは、作業機械本体2の周囲の物体を検出する。物体検出センサ3a~3cは、物体の存在を検出するとともに、物体検出センサ3a~3cの各々から物体までの距離に関する距離情報を検出し、検出した距離情報をコントローラ4に送信する。物体検出センサ3a~3cとしては、ミリ波レーダ、超音波センサ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)およびカメラ等の少なくとも1種を用いることができる。なお、距離情報としては、距離そのものであってもよいし、コントローラ4で距離を演算するために必要な情報であってもよい。
【0022】
図2に示すように、物体検出センサ3a~3cは、作業機械本体2の旋回体12の左側面部12aと右側面部12bと後側面部12cの各々に配置されている。左側面部12aに配置されている物体検出センサ3aは、旋回体12の周囲のうち左側に存在する物体を検出する。右側面部12bに配置されている物体検出センサ3bは、旋回体12の周囲のうち右側に存在する物体を検出する。後側面部12cに配置されている物体検出センサ3cは、旋回体12の周囲のうち後側に存在する物体を検出する。
物体検出センサ3a~3cの各々の検出方向が作業機15と重ならないように、作業機15が配置されている旋回体12の前部以外の場所に物体検出センサ3a~3cが配置されている。これにより、作業機15による物体の誤検出を抑制することができる。
【0023】
(油圧ショベル1の制御構成)
図3は、油圧ショベル1およびその制御システムの構成を示すブロック図である。図3に示すように、油圧ショベル1は、エンジン31と、油圧ポンプ32と、動力伝達装置33と、ポンプ制御装置34と、制御弁35と、上述したコントローラ4を含む。
【0024】
エンジン31は、コントローラ4からの指令信号により制御される。油圧ポンプ32は、エンジン31によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ32から吐出された作動油は、ブームシリンダ24と、アームシリンダ25と、バケットシリンダ26と、旋回モータ27とに供給される。
【0025】
上述した旋回モータ27は、例えば油圧モータである。旋回モータ27は、油圧ポンプ32からの作動油によって駆動される。旋回モータ27は、旋回体12を旋回させる。
【0026】
油圧ポンプ32は可変容量ポンプである。油圧ポンプ32にはポンプ制御装置34が接続されている。ポンプ制御装置34は、油圧ポンプ32の傾転角を制御する。ポンプ制御装置34は、例えば電磁弁を含み、コントローラ4からの指令信号により制御される。コントローラ4は、ポンプ制御装置34を制御することで、油圧ポンプ32の容量を制御する。なお、図3では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0027】
制御弁35は、油圧ポンプ32から油圧シリンダ24-26及び旋回モータ27に供給される作動油の流量を制御する。油圧シリンダ24-26および旋回モータ27と油圧ポンプ32とは、制御弁35を介して油圧回路によって接続されている。制御弁35は、コントローラ4からの指令信号によって制御される。コントローラ4は、制御弁35を制御することで、作業機15の動作を制御する。コントローラ4は、制御弁35を制御することで、旋回体12の旋回を制御する。
【0028】
動力伝達装置33は、エンジン31の駆動力を走行体11に伝達する。履帯11c、11dは、動力伝達装置33からの駆動力によって駆動されて、油圧ショベル1を走行させる。動力伝達装置33は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。或いは、動力伝達装置33は、HST(Hydro Static Transmission)、或いはHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などの他の形式のトランスミッションであってもよい。
【0029】
コントローラ4は、CPUなどのプロセッサ41を含む。プロセッサ41は、油圧ショベル1の制御のための処理を行う。コントローラ4は、記憶装置42を含む。記憶装置42は、RAM或いはROMなどのメモリ、及び、HDD(Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含む。記憶装置42は、油圧ショベル1の制御のためのデータ及びプログラムを記憶している。
【0030】
油圧ショベル1の制御システムは、操作装置51を含む。操作装置51は、オペレータによって操作可能である。操作装置51は、例えば、レバー、ペダル、或いはスイッチを含む。操作装置51は、オペレータによる操作に応じた操作信号をコントローラ4に出力する。コントローラ4は、オペレータによる操作装置51の操作に応じて、作業機15を動作させるように、制御弁35を制御する。コントローラ4は、オペレータによる操作装置51の操作に応じて、旋回体12を旋回させるように、制御弁35を制御する。コントローラ4は、オペレータによる操作装置51の操作に応じて、油圧ショベル1を走行させるように、エンジン31及び動力伝達装置36を制御する。
【0031】
油圧ショベル1の制御システムは、入力装置52とディスプレイ53(表示部の一例)とを含む。入力装置52は、オペレータによって操作可能である。入力装置52は、例えばタッチスクリーンである。ただし、入力装置52は、ハードウェアキーを含んでもよい。オペレータは、入力装置52を操作することで、油圧ショベル1に関する各種の設定を入力する。入力装置52は、オペレータの操作に応じた入力信号を出力する。オペレータが入力装置52を操作することによって、後述する仮想壁Wの設定制御が実行される。
【0032】
ディスプレイ53は、例えばLCD、OELD、或いは他の種類のディスプレイである。ディスプレイ53は、コントローラ4からの表示信号に応じた画面を表示する。
【0033】
油圧ショベル1の制御システムは、姿勢検出部60と、旋回角度センサ61と、を含む。姿勢検出部60は、油圧ショベル1の姿勢を検出する。
【0034】
姿勢検出部60は、走行体11と作業機15の姿勢を検出する。姿勢検出部60は、走行体姿勢センサ62と、作業機姿勢検出部63と、を含む。
【0035】
走行体姿勢センサ62は、走行体11の姿勢を検出する。走行体11の姿勢は、走行体11のピッチ角θ1を含む。走行体姿勢センサ62は、ピッチ角θ1を含む第1姿勢データをコントローラ4に出力する。図4(a)に示すように、走行体11のピッチ角θ1は、水平方向に対する走行体11の前後方向の傾斜角度である。走行体姿勢センサ62は、例えばIMU(Inertial Measurement Unit)である。走行体姿勢センサ62は、走行体11の姿勢を示す第1姿勢データをコントローラ4に出力する。
【0036】
作業機姿勢検出部63は、作業機15の姿勢を検出する。作業機15の姿勢は、ブーム角θ2と、アーム角θ3と、バケット角θ4と、を含む。作業機姿勢検出部63は、ブーム角θ2とアーム角θ3とバケット角θ4とを示す第2姿勢データをコントローラ4に出力する。
【0037】
作業機姿勢検出部63は、ブーム角センサ63aと、アーム角センサ63bと、バケット角センサ63cと、を含む。ブーム角センサ63aは、ブーム角θ2を検出する。ブーム角センサ63aは、例えばIMUである。ブーム角θ2は、走行体11の上下方向に対するブーム21の角度である。アーム角センサ63bは、アーム角θ3を検出する。アーム角θ3は、ブーム21に対するアーム22の角度である。アーム角センサ63bは、例えばIMUである。バケット角センサ63cは、バケット角θ4を検出する。バケット角θ4は、アーム22に対するバケット23の角度である。バケット角センサ63cは、例えばバケットシリンダ26のストローク長を検出する。バケットシリンダ26のストローク長からバケット角θ4が検出される。作業機姿勢検出部63は、作業機15の姿勢を示す第2姿勢データをコントローラ4に出力する。
【0038】
旋回角度センサ61は、旋回体12の走行体11に対する旋回角θ5を検出する。旋回角度センサ61は、旋回角θ5を示す旋回角データをコントローラ4に出力する。図4(b)は旋回角θ5を説明するための図である。図4(b)に示すように、走行体11の履帯11c、11dに沿った方向であって、旋回体12の旋回中心12gを通る直線を第1基準線L1とする。また、旋回体12の旋回中心12gを通って旋回体12の前後方向に沿った直線を旋回線Mとする。旋回角θ5は、第1基準線L1と旋回線Mによって形成される角度である。旋回角度センサ61は、例えば旋回モータ27に配置されたエンコーダや、スイングマシナリの歯を検出するセンサである。
【0039】
コントローラ4は、操作装置51から操作信号を受信する。コントローラ4は、入力装置52から入力信号を受信する。コントローラ4は、ディスプレイ53に表示信号を出力する。コントローラ4は、走行体姿勢センサ62から第1姿勢データを受信する。コントローラ4は、作業機姿勢検出部63から第2姿勢データを受信する。コントローラ4は、旋回角度センサ61から旋回角度データを受信する。コントローラ4は、物体検出センサ3a~3cから物体までの距離情報を受信する。
【0040】
オペレータが入力装置52を操作して、仮想壁Wの設定制御を実行した場合、コントローラ4は、作業機15を物体検出姿勢に設定する。そして、コントローラ4は、旋回モータ27を駆動させることによって旋回体12を旋回させながら、物体検出センサ3を用いて作業機械本体2の周囲の物体を検出する。なお、仮想壁Wは、コントローラ4上で設定される仮想の壁であり、地面に対して垂直に配置されていると仮想される。
【0041】
図5Aは、作業機15が物体検出姿勢に設定された状態の油圧ショベル1を示す側面図である。図5Bは、作業機15が物体検出姿勢に設定された状態の油圧ショベル1を示す平面図である。周囲の物体を検出するために旋回体12を旋回させる際には、物体との干渉を避けるために旋回半径を出来るだけ小さくするように作業機15を物体検出姿勢に保つ方が好ましい。物体検出姿勢では、作業機15は、図5Aおよび図5Bに示すように、ブーム角θ2が最小値に設定され、アーム角θ3が最大値に設定され、バケット角θ4が最大値に設定される。この状態で、図5Bの矢印Aに示すように物体を検出するために、旋回体12の旋回が実行される。
【0042】
旋回体12を旋回させる角度は、物体検出センサ3a~3cによって作業機械本体2の全周に亘って検出を行うことができる方が好ましい。例えば、本実施の形態では旋回体12の左側面部12aと右側面部12bに物体検出センサが配置されているため、少なくとも180°旋回体12を旋回させることによって、作業機械本体2の全周に亘って物体の検出を行うことができる。また、同じエリアを複数の物体検出センサで検出してもよく、その場合、物体検出の精度を向上することができる。
【0043】
(仮想壁の設定)
コントローラ4は、特定した物体の位置に基づいて仮想壁Wを設定する。コントローラ4は、記憶装置42にテンプレートとなる初期仮想壁W´を有する。図6は、油圧ショベル1と初期仮想壁W´を示す平面図である。図6に示すように、初期仮想壁W´は、油圧ショベル1の全体を囲む矩形状に設定されている。初期仮想壁W´は、第1初期壁部W1´と第2初期壁部W2´と第3初期壁部W3´と第4初期壁部W4´で形成されている。図6では、第1基準線L1と旋回線Mは一致している。
【0044】
第1初期壁部W1´と第2初期壁部W2´は、走行体11の第1基準線L1に対して垂直に配置されている。第1基準線L1に対して垂直であって旋回中心12gを通る直線を第2基準線L2すると、第3初期壁部W3´と第4初期壁部W4´は、第2基準線L2に対して垂直に配置されている。第1初期壁部W1´の一方の端と第3初期壁部W3´の一方の端が接続されている。第3初期壁部W3´の他方の端と第2初期壁部W2´の一方の端が接続されている。第2初期壁部W2´の他方の端と第4初期壁部W4´の一方の端が接続されている。第4初期壁部W4´の他方の端と第1初期壁部W1´の他方の端が接続されている。これによって矩形状の初期仮想壁W´が形成されている。
【0045】
コントローラ4は、特定した物体の位置に基づいて第1初期壁部W1´、第2初期壁部W2´、第3初期壁部W3´、および第4初期壁部W4´の各々の位置を移動させることによって仮想壁Wを設定する。図6に示すように、第1初期壁部W1´と第2初期壁部W2´は、第1基準線L1に沿ったY方向(前後方向の一例)に移動させる。第3初期壁部W3´および第4初期壁部W4´は、第2基準線L2に沿ったX方向(幅方向の一例)に移動させる。
【0046】
コントローラ4は、平面視において旋回中心12gを中心として所定距離を半径とする円を検出エリアとしており、検出エリアを4つのエリアに区切っている。所定距離は、適宜設定すればよいが、例えば、旋回中心12gから作業機15が達することが可能な最大の長さを所定距離に設定してもよい。
【0047】
図7は、検出エリアRの一例を示す平面図である。図7では、検出エリアRは90°間隔で4つのエリアに区切られている。検出エリアRは、第1エリアR1、第2エリアR2、第3エリアR3、および第4エリアR4を含む。ここで、第1基準線L1のうち旋回中心12gから第1基準線L1に沿った一方向に伸びる半直線をL11とし、他方方向に伸びる半直線をL12とする。第1エリアR1は、半直線L11から周方向の両側に45°広がったエリアである。第2エリアR2は、半直線L12から周方向の両側に45°広がったエリアである。第2エリアR2は、第2基準線L2において第1エリアR1と線対称に形成されたエリアである。
【0048】
第2基準線L2のうち旋回中心12gから第2基準線L2に沿った一方向に伸びる半直線をL21とし、他方方向に伸びる半直線をL21とする。第3エリアR3は、半直線L21から周方向の両側に45°広がったエリアである。第4エリアR4は、半直線L22から周方向の両側に45°広がったエリアである。第4エリアR4は、第1基準線L1において第3エリアR3と線対称に形成されたエリアである。
第1初期壁部W1´は、図6に示すように、半直線L11と垂直に交わるように配置されており、第1エリアR1に対応している。第2初期壁部W2´は、半直線L12と垂直に交わるように配置されており、第2エリアR2に対応している。第3初期壁部W3´は、半直線L21と垂直に交わるように配置されており、第3エリアR3に対応している。第4初期壁部W4´は、半直線L22と垂直に交わるように配置されており、第4エリアR4に対応している。
【0049】
図8は、油圧ショベル1の周囲における物体の検出を説明するための平面図である。図9は、検出された物体の位置に基づいて設定された仮想壁Wと油圧ショベル1を示す平面図である。図8では、第1エリアR1において物体N1が検出されている。第2エリアR2では、物体N2が検出されている。第3エリアR3では、物体N3が検出されている。第4エリアR4では、物体N4、N5が検出されている。
【0050】
コントローラ4は、物体検出センサ3a~3cから受信した物体までの距離情報と、物体を検出したときの旋回角データに基づいて、油圧ショベル1に対する物体の位置を特定する。詳しくは、コントローラ4は、第1エリアR1において検出された物体N1の油圧ショベル1に対する位置P1を特定する。油圧ショベル1に対する位置P1とは、第2基準線L2から第1基準線L1に沿った物体N1までの位置であり、第1基準線L1に沿った第2基準線L2から物体N1までの距離d1ともいえる。コントローラ4は、位置P1まで初期仮想壁W´の第1初期壁部W1´をY方向に沿って移動し、図9に示す仮想壁Wの第1壁部W1を設定する。
【0051】
コントローラ4は、第2エリアR2において検出された物体N2の油圧ショベル1に対する位置P2を特定する。油圧ショベル1に対する位置P2とは、第2基準線L2から第1基準線L1に沿った物体N2の位置であり、第1基準線L1に沿った第2基準線L2から物体N2までの距離d2ともいえる。コントローラ4は、位置P2まで初期仮想壁W´の第2初期壁部W2´をY方向に沿って移動し、図9に示す仮想壁Wの第2壁部W2を設定する。
【0052】
コントローラ4は、第3エリアR3において検出された物体N3の油圧ショベル1に対する位置P3を特定する。油圧ショベル1に対する位置P3とは、第1基準線L1から第2基準線L2に沿った物体N3の位置であり、第2基準線L2に沿った第1基準線L1から物体N3までの距離d3ともいえる。コントローラ4は、位置P3まで初期仮想壁W´の第3初期壁部W3´をX方向に沿って移動し、図9に示す仮想壁Wの第3壁部W3を設定する。
【0053】
コントローラ4は、第4エリアR4において検出された物体N4、N5の油圧ショベル1に対する位置P4、P5を特定する。第4エリアR4における油圧ショベル1に対する位置P4、P5とは、第1基準線L1から第2基準線L2に沿った物体N4、N5の位置であり、第2基準線L2に沿った第1基準線L1から物体N4、N5までの距離d4、d5ともいえる。コントローラ4は、第1基準線L1からの距離が近い物体N5の位置P5まで初期仮想壁W´の第4初期壁部W4´をX方向に沿って移動し、図9に示す仮想壁Wの第4壁部W4を設定する。
【0054】
このように、同じエリアにおいて複数の物体が検出された場合には、油圧ショベル1に対する距離が近い物体の位置に仮想壁を設定する。
【0055】
なお、位置P1~P5は、物体N1~N5のうち油圧ショベル1に最も近い部分に設定してもよいし、物体N1~N5のうち油圧ショベル1に最も近い部分から油圧ショベル1側に所定距離分、移動した位置としてもよい。油圧ショベル1側に移動するとは、第1エリアR1および第2エリアR2において検出された物体の場合、物体から第1基準線L1に沿って油圧ショベル1側に移動した位置である。また、第3エリアR3および第4エリアR4において検出された物体の場合、物体から第2基準線L2に沿って油圧ショベル1側に移動した位置である。
【0056】
コントローラ4は、第1壁部W1と第3壁部W3を接続し、第3壁部W3と第2壁部W2を接続し、第2壁部W2と第4壁部W4を接続し、第4壁部W4と第1壁部W1を接続する。このように、コントローラ4は、隣り合う壁部を接続することによって、図9に示すように、前後左右の4面の仮想壁Wを設定することができる。
【0057】
なお、検出エリアRにおいて物体が検出されないエリアが存在する場合、そのエリアについては、仮想壁の壁部を設定しなくてもよい。例えば、第1エリアR1において物体が検出されない場合には、第1壁部W1を設定しなくてもよい。
【0058】
さらに、オペレータの入力装置52による入力によって、所定の壁部を設定しないような制御を行うことができる。
【0059】
図10は、工事現場を示す平面図である。図10には、道路を複数のロードコーン101で区切った工事現場が示されている。図10では、片側1車線を封鎖して工事をしている状態を示す。複数のロードコーン101は、中央車線に沿って配置されている。ロードコーン101を挟んで一方の側では車両が通行し、他方の側では工事が行われている。このような場合、オペレータは、第1壁部W1、第2壁部W2および第3壁部W3を設定しないように入力装置52(選択部の一例)を用いて選択することができる。オペレータによる選択は、旋回体12の旋回による物体の検出の前に行ってもよいし、物体の検出後に行ってもよい。図11は、図10に示す工事現場において、第4壁部W4のみが設定されている仮想壁Wを示す図である。図11に示す仮想壁Wは、複数のロードコーン101に沿って設定されている。
【0060】
コントローラ4は、設定した仮想壁Wをディスプレイ53に表示させる。油圧ショベル1がカメラを有している場合には、旋回体12の旋回の際に全周を撮影することによって、周囲の状態を撮像し、仮想壁Wとともにディスプレイ53に表示する。これによって、オペレータは油圧ショベル1に対して仮想壁Wが設けられている位置を認識することができる。図12に示すディスプレイ53の表示画面D1では、油圧ショベル1の全体と周囲の物体と仮想壁Wが平面視において表示されている。図12に示すディスプレイ53の表示画面D2では、油圧ショベル1の後側面部12cと仮想壁Wの第2壁部W2と物体Nが表示されている。
【0061】
(監視制御)
コントローラ4は、作業機15の仮想壁Wへの接近を監視する。
【0062】
コントローラ4は、第1姿勢データと第2姿勢データに基づいて、作業機15の最外位置を常時算出する。最外位置は、作業機15のうち旋回中心12gから最も遠い距離にある位置である。図11において、作業機15の最外位置P1が示されている。
【0063】
記憶装置42は、作業機15の寸法データを記憶している。寸法データは、ブーム21、アーム22、およびバケット23の長さ、厚み、および幅等の形状データである。
一例を挙げると、寸法データは、ブーム21の長さL1と、アーム22の長さL2と、バケット23の長さL3を含む。詳細には、ブーム21の長さL1は、ブーム21を旋回体12に接続するブームピン28とアーム22をブーム21に接続するアームピン29との間の距離である。アーム22の長さL2は、アームピン29とバケット23をアーム22に接続するバケットピン30との間の距離である。バケット23の長さは、バケットピン30とバケット23の刃先23aとの間の距離である。
【0064】
コントローラ4は、記憶装置42に記憶されている寸法データと、ピッチ角θ1、ブーム角θ2、アーム角θ3、およびバケット角θ4とに基づいて、作業機15の最も外側の再外位置を算出する。
【0065】
コントローラ4は、作業機15の最外位置P1が仮想壁Wから所定範囲に入ったことを検出した場合、作業機15または旋回体12に対して仮想壁Wに近づく動作を制限する動作制限を実行する。動作制限は、作業機15または旋回体12が仮想壁Wに近づく動作を制限できればよく、作業機15の動作または旋回体12の旋回を停止することを含む。図13には、作業機15の最外位置P1が仮想壁Wから所定範囲内に入った状態が示されている。コントローラ4は、最外位置P1を常時算出し、最外位置P1が仮想壁Wから所定距離以内に進入した場合、作業機15の動作または旋回体12の旋回を減速し、仮想壁Wに達する前に停止する。所定範囲は、仮想壁Wの油圧ショベル1側であって、作業機15の動作および旋回体12の旋回を仮想壁Wに達するまえに停止可能な範囲に設定することができる。
【0066】
コントローラ4は、制御弁35を制御することによって、油圧シリンダ24~26および旋回モータ27への作動油の供給を停止し、作業機15の動作および旋回体12の旋回を停止することができる。コントローラ4は、ポンプ制御装置34を制御して油圧ポンプ32からの作動油の供給を停止することによって作業機15の動作および旋回体12の旋回を停止することができる。また、作動油の供給を徐々に減少することによって、作業機15の動作および旋回体12の旋回を減速することができる。
【0067】
作業機15の最外位置P1が仮想壁Wから所定範囲に入ったことを検出した際に、旋回体12の旋回が停止した状態で作業機15が動作している場合には、コントローラ4は、作業機15に対して動作制限を実行する。また、作業機15の最外位置P1が仮想壁Wから所定範囲に入ったことを検出した際に、作業機15の動作が停止した状態で旋回体12が旋回している場合には、コントローラ4は、旋回体12の旋回に対して動作制限を実行する。
【0068】
なお、コントローラ4は、作業機15の最外位置P1だけでなく旋回体12の他の部分が仮想壁Wから所定範囲に入ったことを検出してもよい。
【0069】
コントローラ4は、作業機15の最外位置P1が仮想壁Wから所定距離以内に進入した場合、作業機15の動作または旋回体12の旋回を減速して停止するとともに、警報を発してもよい。警報は、ディスプレイ53に表示してもよいし、音、光等であってもよい。
【0070】
<動作>
次に、本実施の形態の油圧ショベル1の制御動作について説明する。
【0071】
(仮想壁作成動作)
本実施の形態の油圧ショベル1の制御動作のうち仮想壁Wの作成動作について説明する。図13は、油圧ショベル1の仮想壁Wの作成動作を示すフロー図である。
【0072】
はじめに、ステップS1において、コントローラ4は、オペレータが入力装置52を用いて仮想壁の設定制御を実行するように入力操作を行ったことを受信する。
【0073】
次に、ステップS2において、コントローラ4は、ポンプ制御装置34および制御弁35を制御することによって、油圧シリンダ24~26に供給される作動油を調整し、作業機15を図5Aおよび図5Bに示す物体検出姿勢にする。
【0074】
次に、ステップS3において、コントローラ4は、旋回体12を旋回させながら物体検出センサ3a~3cによって油圧ショベル1の周囲の物体の検出を行う。コントローラ4は、設定された検出エリアR内において物体の検出を行う。コントローラ4は、検出エリアRの外側において物体を検出した場合には、物体を検出したと判定しなくてもよい。
【0075】
次に、ステップS4において、コントローラ4は、物体検出センサ3a~3cのうち物体を検出したセンサから物体までの距離情報と、物体を検出した際の旋回角θ5とから、検出された物体の位置を特定する。図8に示す例では、第1エリアR1において物体N1が検出され位置P1が特定されている。第2エリアR2において物体N2が検出されて位置P2が特定されている。第3エリアR3において物体N3が検出されて位置P3が特定されている。第4エリアR4において物体N4、N5が検出されて位置P4、P5が特定されている。
【0076】
次に、ステップS5において、コントローラ4は、検出エリアRを分割した複数のエリアの各々のエリアにおいて複数の物体が検出された場合は、各々のエリアにおいて、油圧ショベル1に最も近い物体の位置を特定する。第4エリアR4では、2つの物体N4、N5が検出されているため、油圧ショベル1に近い方の物体N5の位置P5が採用される。
【0077】
次に、ステップS6において、コントローラ4は、各々のエリアにおいて特定された物体の位置に、各々のエリアに対応する初期仮想壁の壁部を移動させ、仮想壁Wを設定する。具体例では、コントローラ4は、初期仮想壁W´の第1初期壁部W1´を位置P1に移動し、初期仮想壁W´の第2初期壁部W2´を位置P2に移動し、初期仮想壁W´の第3初期壁部W3´を位置P3に移動し、初期仮想壁W´の第4初期壁部W4´を位置P5に移動する。そして、コントローラ4は、第1壁部W1と第3壁部W3を接続し、第3壁部W3と第2壁部W2を接続し、第2壁部W2と第4壁部W4を接続し、第4壁部W4と第1壁部W1を接続することによって、仮想壁Wを作成する。
【0078】
次に、ステップS7において、コントローラ4は、作成した仮想壁Wの壁部の各々について設定するか否かを選択するための表示をディスプレイ53に行わせる。この表示を見て、オペレータは、入力装置52を用いて仮想壁Wの各壁部を設定するか否かについて選択する。例えば、オペレータは、図11に示すように、第4壁部W4だけを設定するような選択をすることができる。
【0079】
次に、ステップS8において、コントローラ4は、ディスプレイ53に油圧ショベル1、周囲画像とともに、ステップS7で設定すると選択された壁部分で形成された仮想壁Wを表示させる。
これにより、検出した物体に基づいた仮想壁Wを設定することができる。
【0080】
(接近監視動作)
次に、本実施の形態の油圧ショベル1の制御動作のうち作業機15の仮想壁Wへの接近監視について説明する。図14は、作業機15の仮想壁Wへの接近を監視する動作を示すフロー図である。
【0081】
はじめに、ステップS11において、コントローラ4は、ピッチ角θ1、ブーム角θ2、アーム角θ3、およびバケット角θ4を含む第1姿勢データをおよび第2姿勢データを受信する。
【0082】
次に、ステップS12において、コントローラ4は、記憶装置42に記憶されている寸法データと、受信したピッチ角θ1、ブーム角θ2、アーム角θ3、およびバケット角θ4から作業機15の最外位置Pを算出する。
【0083】
次に、ステップS13において、コントローラ4は、算出した最外位置Pが仮想壁Wから所定距離の範囲に進入したか否かを判定する。
【0084】
ステップS13において、最外位置Pが所定範囲内に進入していないと判定した場合、制御は、ステップS11に戻り、コントローラ4は、第1姿勢データおよび第2姿勢データを受信する。
【0085】
ステップS13において、最外位置Pが所定範囲内に進入したと判定した場合、ステップS14において、コントローラ4は、作業機15の動作を停止する。具体的には、コントローラ4は、ポンプ制御装置34および制御弁35の少なくとも一方を制御することによって、油圧シリンダ24~26および旋回モータ27への作動油の供給を減少して停止する。これによって、作業機15の動作および旋回体12の旋回が減速して停止する。また、コントローラ4は、ディスプレイ53に警報を表示する。
【0086】
これにより、作業の最中に、検出した物体に近づくことを防止することができる。
【0087】
(特徴)
(1)
本実施の形態の油圧ショベル1は、作業機械本体2と、物体検出センサ3a~3cと、旋回角度センサ61と、コントローラ4(制御部の一例)と、を備える。作業機械本体2は、走行体11と、旋回体12と、を有する。旋回体12は、走行体11の上側に配置され、走行体11に対して旋回可能である。物体検出センサ3a~3cは、旋回体12に配置されている。旋回角度センサ61は、旋回体12の旋回角度を検出する。コントローラ4は、旋回体12を旋回させて物体検出センサ3a~3cで作業機械本体2の周囲の物体を検出し、物体を検出した場合、物体検出センサ3a~3cによって検出される物体までの距離と、物体が検出された旋回角度とに基づいて作業機械本体2に対する物体の位置を特定し、特定した位置に基づいて仮想壁Wを設定する。
【0088】
このように旋回体12を旋回させて作業機械本体2の周囲の物体を検出しているため、物体検出センサを配置する数を少なくでき、コストを低減することができる。また、旋回体12を旋回することによって作業機械本体2の周囲の物体を検出するため、作業機15による誤検出を起こす恐れのある位置に物体検出センサを配置する必要がなく、作業機15による誤検出を抑制することができる。
【0089】
(2)
本実施の形態の油圧ショベル1では、旋回体12は、作業機15を有する。物体検出センサ3a~3bは、検出方向が作業機15と重ならないように旋回体12に配置されている、
これにより、作業機15による物体の誤検出を抑制することができる。
【0090】
(3)
本実施の形態の油圧ショベル1では、旋回体12は、作業機15を有する。コントローラ4は、仮想壁Wに作業機15が近づく動作を制限する動作制限を実行する。
【0091】
これにより、仮想壁Wの外側に作業機15が進入することを防ぎ、作業機15が物体に接触することを防止できる。
【0092】
(4)
本実施の形態の油圧ショベル1では、動作制限は、作業機15の停止を含む。
【0093】
これにより、仮想壁Wの外側に作業機15が進入する前に作業機15を停止することができる。
【0094】
(5)
本実施の形態の油圧ショベル1では、動作制限は、旋回体12の旋回の停止を含む。
【0095】
これにより、仮想壁Wの外側に作業機15が進入する前に旋回体12の旋回を停止することができる。
【0096】
(6)
本実施の形態の油圧ショベル1では、コントローラ4は、仮想壁Wに旋回体12が近づく動作を制限する動作制限を実行する。
【0097】
これにより、仮想壁Wの外側に旋回体12が進入することを防ぎ、旋回体12が物体に接触することを防止できる。
【0098】
(7)
本実施の形態の油圧ショベル1では、動作制限は、旋回体12の旋回の停止を含む。
【0099】
これにより、仮想壁Wの外側に旋回体12が進入する前に旋回を停止することができる。
【0100】
(8)
本実施の形態の油圧ショベル1は、作業機15および走行体11の姿勢を検出する姿勢検出部60を更に備える。コントローラ4は、作業機15の最も外側の最外位置Pを検出し、最外位置Pが仮想壁Wから所定範囲内に入った場合に動作制限を実行する。
【0101】
このように、作業機15の最も外側の部分が仮想壁Wに進入することを防ぐことができ、作業機15が物体に接触することを防止できる。
【0102】
(9)
本実施の形態の油圧ショベル1では、コントローラ4は、作業機械本体2の周囲を4つの第1エリアR1~第4エリアR4(複数の領域の一例)に分ける。仮想壁Wは、第1エリアR1~第4エリアR4に対応した第1壁部W1~第4壁部W4(複数の壁部の一例)を有する。第1エリアR1~第4エリアR4の各々の領域において特定された物体の位置に基づいて、第1エリアR1~第4エリアR4に対応した第1壁部W1~第4壁部W4が設定される。
【0103】
これにより、各エリアにおいて適切な位置に仮想壁Wを設定することができる。
【0104】
(10)
本実施の形態の油圧ショベル1では、コントローラ4は、物体が検出されない領域について、領域に対応する壁部を設定しない。
【0105】
これにより、物体が検出されていない領域には仮想壁Wが配置されてないようにすることができる。例えば、作業機械本体2の前側に物体が検出されない場合には、前側には壁部(例えば第1壁部W1)が設定されないようにできる。
【0106】
(11)
本実施の形態の油圧ショベル1は、第1壁部W1~第4壁部W4の各々について設定するか否かを選択する入力装置52(選択部の一例)を更に備える。
【0107】
これにより、作業者が仮想壁Wを設ける必要がないと判断した箇所には仮想壁Wを設定しないようにできる。例えば、図11に示すように、第4壁部W4のみを設定することができる。
【0108】
(12)
本実施の形態の油圧ショベル1では、コントローラ4は、作業機械本体2を囲むように配置された設定前の初期仮想壁W´を記憶している。初期仮想壁W´は、複数の第1初期壁部W1´~第4初期壁部W4´を有する。コントローラ4は、物体の位置に基づいて第1初期壁部W1´~第4初期壁部W4´を移動させることによって第1壁部W1~第4壁部W4を設定する。
【0109】
これにより、コントローラ4がテンプレートして記憶している初期仮想壁W´の第1初期壁部W1´~第4初期壁部W4´を物体の検出に合わせて適宜移動させることによって仮想壁Wを設定することができる。
【0110】
(13)
本実施の形態の油圧ショベル1は、作業機械本体2の少なくとも一部と仮想壁Wの少なくとも一部分を表示するディスプレイ53(表示部の一例)を更に備える。
【0111】
これにより、作業者はディスプレイ53を確認することによって設定された仮想壁Wの位置を確認することができる。
【0112】
(14)
本実施の形態の油圧ショベル1では、コントローラ4は、旋回体12の旋回中心12gを基準として作業機械本体2の周囲を第1エリアR1(第1領域の一例)と第2エリアR2(第2領域の一例)と第3エリアR3(第3領域の一例)と第4エリアR4(第4領域の一例)の4つの領域に分ける。第1エリアR1は、走行体11の第1基準線L1に沿ったY方向(前後方向の一例)における一方側の領域であり、第2エリアR2は、走行体11の第1基準線L1に沿った方向における他方側の領域である。第3エリアR3は、走行体11の第2基準線L2に沿ったX方向(幅方向の一例)における一方側の領域であり、第4領域R4は、走行体11の第2基準線L2に沿った方向における他方側の領域である。仮想壁Wは、矩形状であり、走行体11のY方向における一方側に第2基準線L2に沿って配置された第1壁部W1と、走行体11のY方向における他方側に第2基準線L2に沿って配置された第2壁部W2と、走行体11のX方向における一方側に第1基準線L1に沿って配置された第3壁部W3と、走行体11のX方向における他方側に第1基準線L1に沿って配置された第4壁部W4と、を有する。コントローラ4は、第1エリアR1において特定された物体の位置に基づいて第1壁部W1を設定し、第2エリアR2において特定された物体の位置に基づいて第2壁部W2を設定し、第3エリアR3において特定された物体の位置に基づいて第3壁部W3を設定し、第4エリアR4において特定された物体の位置に基づいて第4壁部W4を設定する。
【0113】
これにより、旋回体12の旋回中心12gを基準として分けた4つの第1エリアR1~第4エリアR4の各々に対応する壁部を設定することができる。
【0114】
(15)
本実施の形態の油圧ショベル1の制御方法は、ステップS3(検出ステップの一例)と、ステップS4およびステップS5(位置特定ステップの一例)と、ステップS7(設定ステップの一例)と、を備える。ステップS3は、走行体11の上側に配置されている旋回体12を旋回させて、走行体11および旋回体12を含む作業機械本体2の周囲の物体を検出する。ステップS4、S5は、物体までの距離と、物体が検出された旋回角度とに基づいて作業機械本体2に対する物体の位置を特定する。ステップS7は、特定された位置に基づいて仮想壁Wを設定する。
【0115】
このように旋回体12を旋回させて作業機械本体2の周囲の物体を検出しているため、物体検出センサを配置する数を少なくでき、コストを低減することができる。また、旋回体12を旋回することによって作業機械本体2の周囲の物体を検出するため、作業機15による誤検出を起こす恐れのある位置に物体検出センサを配置する必要がなく、作業機15による誤検出を抑制することができる。
【0116】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0117】
(A)
なお、上記実施の形態では、記憶装置42に初期仮想壁W´が記憶されているが、初期仮想壁W´が記憶されていなくてもよい。第1エリアR1~第4エリアR4の各々において検出した物体の位置を特定し、特定した位置に基づいて第1壁部W1~第4壁部W4を設定すればよい。第1エリアR1および第2エリアR2では、第1基準線L1に対して垂直な第1壁部W1および第2壁部W2を作成し、第3エリアR3および第4エリアR4では、第2基準線L2に対して垂直な第3壁部W3および第4壁部W4を作成し、第1壁部W1~第4壁部W4を繋ぎ合わせることで仮想壁Wを作成してもよい。
【0118】
(B)
上記実施の形態では、検出エリアRを4つのエリアに分割しているが、4つに限らなくてもよい。また、検出エリアRは等間隔に分けなくてもよい。また、初期壁部および壁部も4つに限らなくてもよいが、検出エリアRの分割数に対応する方が好ましい。
【0119】
(C)
上記実施の形態では、物体検出センサは3つ配置されているが、3つに限らなくてもよく、4つ以上であってもよいし、2つ以下であってもよい。作業機15の動作による物体の誤検出を抑制するためには、物体検出センサは、その検出方向が作業機15と重ならないような位置に配置されている方が好ましい。
【0120】
(D)
上記実施の形態では、ブーム角センサ63aはIMUであるが、これに限らなくてもよく、ブームシリンダ24のストローク長を検出するセンサであってもよい。アーム角センサ63bはIMUであるが、これに限らなくてもよく、アームシリンダ25のストローク長を検出するセンサであってもよい。また、バケット角センサ63cは、バケットシリンダ26のストロークを検出するセンサであるが、これに限らなくてもよく、IMUであってもよい。要するに、ブーム角センサ63aとアーム角センサ63bとバケット角センサ63cは、各々の角度を検出できるセンサであればよい。
【0121】
(E)
上記実施の形態では、旋回モータ27は油圧モータであるが、これに限られるものではなく、電動モータであってもよい。この場合、作業機15の最外位置Pが仮想壁Wに接近した際には、油圧シリンダ24~26に供給される作動油を停止するとともに、コントローラ4からの指令によって電動モータを停止する。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本開示によれば、誤検出を抑制することが可能な効果を有し、作業機械等に有用である。
【符号の説明】
【0123】
1:油圧ショベル、2:作業機械本体、3a:物体検出センサ、3b:物体検出センサ、3c:物体検出センサ、4:コントローラ、11:走行体、11a:走行装置、11b:走行装置、11c:履帯、11d:履帯、12:旋回体、12a:左側面部、12b:右側面部、12c:後側面部、12g:旋回中心、13:旋回フレーム、14:キャブ、15:作業機、16:エンジンルーム、21:ブーム、22:アーム、23:バケット、23a:刃先、24:ブームシリンダ、25:アームシリンダ、26:バケットシリンダ、27:旋回モータ、28:ブームピン、29:アームピン、30:バケットピン、31:エンジン、32:油圧ポンプ、33:動力伝達装置、34:ポンプ制御装置、35:制御弁、41:プロセッサ、42:記憶装置、51:操作装置、52:入力装置、53:ディスプレイ、60:姿勢検出部、61:旋回角度センサ、62:走行体姿勢センサ、63:作業機姿勢検出部、63a:ブーム角センサ、63b:アーム角センサ、63c:バケット角センサ、101:ロードコーン、W:仮想壁
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図2
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図5A
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