(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081025
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】施設内環境の遠隔集中制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/58 20180101AFI20230602BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20230602BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230602BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20230602BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20230602BHJP
F24F 110/50 20180101ALN20230602BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20230602BHJP
【FI】
F24F11/58
F24F11/52
F24F7/007 B
F24F11/54
F24F110:10
F24F110:50
F24F110:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194673
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390036098
【氏名又は名称】シー・エイチ・シー・システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 俊彦
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BD02
3L056BD03
3L260AA04
3L260AA09
3L260BA02
3L260BA09
3L260BA12
3L260BA64
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA17
3L260CB63
3L260CB64
3L260FA03
3L260FA06
3L260FC01
3L260GA02
3L260GA12
3L260GA13
3L260GA24
3L260JA12
3L260JA13
3L260JA15
3L260JA17
3L260JA18
3L260JA23
3L260JA24
(57)【要約】
【課題】 中小規模の施設でも費用対効果の高い内部環境の遠隔集中管理を行う。
【解決手段】センサー、無線ユニット、インターネット上のクラウド、遠隔集中管理アプリケーション、個人用端末、を含む、施設内環境の遠隔集中管理システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー、無線ユニット、インターネット上のクラウド、遠隔集中管理アプリケーション、個人用端末、を含む、施設内環境の遠隔集中管理システムであって、
上記センサーは、
施設の内部の環境に基づく1以上の物理量及び/又はレベル値を取得し、
上記無線ユニットは、上記センサーと通信線を介して通信し、上記センサーから受信する上記1以上の物理量及び/又はレベル値を上記インターネット上のクラウドに送信し、
上記インターネット上のクラウドは、上記1以上の物理量及び/又はレベル値を蓄積し、
上記遠隔集中管理アプリケーションは、上記クラウドで蓄積された上記1以上の物理量及び/又はレベル値を用いて、上記施設の内部の雰囲気を評価し、
上記個人用端末は、インターネットを介して上記評価の結果を受信し表示する、
施設内環境の遠隔集中管理システム。
【請求項2】
上記1以上の物理量及び/又はレベル値が、上記施設の内部の温度、湿度、臭気レベル、気体組成から選ばれる1以上の値を含む、
請求項1に記載の施設内環境の遠隔集中管理システム。
【請求項3】
上記個人用端末が、スマートフォン、タブレット、PCから選ばれる、
請求項1に記載の施設内環境の遠隔集中管理システム。
【請求項4】
上記遠隔集中管理アプリケーションが、複数の施設について上記雰囲気を評価し、
上記個人用端末が、上記複数の施設毎の上記評価の結果を受信し表示する、
請求項1に記載の施設内環境の遠隔集中管理システム。
【請求項5】
上記遠隔集中管理アプリケーションが、上記評価の結果に基づいてユーザーに対して通知及び/又は警告を行うための信号を生成して、上記信号を上記個人用端末に送信し、
上記個人用端末が上記信号に基づく通知及び/又は警告を上記ユーザーに提供する、
請求項1に記載の施設内環境の遠隔集中管理システム。
【請求項6】
さらに空調・換気機器を有し、上記空調・換気機器は上記インターネットに接続し、温度、湿度、臭気レベル、気体組成から選ばれる1以上の値の目標値を受信して、上記目標値に従い稼働し、
上記目標値は、上記遠隔集中管理アプリケーションが生成する値及び/又は上記ユーザーが上記個人用端末を用いて送信する値である、
請求項1に記載の施設内環境の遠隔集中管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設内環境の遠隔集中制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスや施設などの施設の空調・換気機器を制御するための様々なシステムが既に知られている。例えば特許文献1に記載されたシステムでは、センサーが人の入室を検知すると制御装置が目標とする快適な室内雰囲気に合わせて空調・換気機器の運転を制御する。しかしながら、このシステムはそれまで無人だった施設内へ人が進入した場合に限り稼働するため、新たな人の侵入が無くても時々刻々室内環境が変化する施設、例えば公演中のライブハウスの室内雰囲気を素早く快適化することはできない。また、対象施設が無人の状態、例えば貸し会議室の使用前や人員入れ替え時に悪化した室内環境を素早く変化させる機能は欠けている。
【0003】
特許文献2には、複数の空調室内機に対応する複数のリモートコントロール装置に簡易にコマンドを入力することができる空調システムが記載されている。このシステムは例えばオフィスビルのような大規模施設の各室の空調を制御室で集中管理する状態を想定している。このようなシステムは、複数の施設建物の室内環境を改善するための具体的な動作や操作、例えば、複数の学習塾を経営するユーザーが、教室毎の事情に応じて教室の窓の開閉や空調・換気機器運転等の室内環境維持のためのルールを決めるといった場面を想定していない。
【0004】
特許文献3には、空気調和機から得られた運転データからその空気調和機の正確な故障原因や適切な修理情報などを導きだす診断システムが記載されている。この診断システムは、専門スタッフが多種の空調・換気機器を遠隔操作で保守点検する場面を想定している。このようなシステムは、制御される空調・換気機器が設置されている施設の実際の利用者、例えば施設オーナーや施設従業員にとっては扱い難い。
【0005】
これらの例が示すように、従来の換気・空調設備の遠隔集中制御システムはオフィスビル1棟全体や同型機器全体などの大規模な施設や機器を対象としている。しかしながら、実際に室内雰囲気が悪化し易い施設は中小施設やライブハウスであり、これらの施設は異なる地点に複数散在していることが多い。しかも、これらの施設にとって、空調・換気機器の管理を専門とするスタッフや設備を設けることは大きなコスト負担となる。このため、これらの中小型施設では効率的な空調管理システムの導入が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-109422号公報
【特許文献2】特開2017-146065号公報
【特許文献3】特開2017-219306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、専門的な人材や設備を必要とせず、分散する中小型施設の室内雰囲気を効率的に快適状態に制御することのできる、遠隔集中制御システムを求めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その結果、ユーザーがインターネットに接続したスマートフォンなどの個人用端末を用いて複数地点の施設雰囲気をいつでも・どこでも観察し、傾向分析と対策ができる、遠隔集中制御システムを完成した。すなわち本発明は以下のものである。
【0009】
(発明1)センサー、無線ユニット、インターネット上のクラウド、遠隔集中管理アプリケーション、個人用端末、を含む、施設内環境の遠隔集中管理システムであって、
上記センサーは、
施設の内部の環境に基づく1以上の物理量及び/又はレベル値を取得し、
上記無線ユニットは、上記センサーと通信線を介して通信し、上記センサーから受信する上記1以上の物理量及び/又はレベル値を上記インターネット上のクラウドに送信し、
上記インターネット上のクラウドは、上記1以上の物理量及び/又はレベル値を蓄積し、
上記遠隔集中管理アプリケーションは、上記クラウドで蓄積された上記1以上の物理量及び/又はレベル値を用いて、上記施設の内部の雰囲気を評価し、
上記個人用端末は、インターネットを介して上記評価の結果を受信し表示する、
施設内環境の遠隔集中管理システム。
(発明2)
上記1以上の物理量及び/又はレベル値が、上記施設の内部の温度、湿度、臭気レベル、気体組成から選ばれる1以上の値を含む、
発明1の施設内環境の遠隔集中管理システム。
(発明3)
上記個人用端末が、スマートフォン、タブレット、PCから選ばれる、
発明1の施設内環境の遠隔集中管理システム。
(発明4)
上記遠隔集中管理アプリケーションが、複数の施設について上記雰囲気を評価し、
上記個人用端末が、上記複数の施設毎の上記評価の結果を受信し表示する、
発明1の施設内環境の遠隔集中管理システム。
(発明5)
上記遠隔集中管理アプリケーションが、上記評価の結果に基づいてユーザーに対して通知及び/又は警告を行うための信号を生成して、上記信号を上記個人用端末に送信し、
上記個人用端末が上記信号に基づく通知及び/又は警告を上記ユーザーに提供する、
発明1の施設内環境の遠隔集中管理システム。
(発明6)
さらに空調・換気機器を有し、上記空調・換気機器は上記インターネットに接続し、温度、湿度、臭気レベル、気体組成から選ばれる1以上の値の目標値を受信して、上記目標値に従い稼働し、
上記目標値は、上記遠隔集中管理アプリケーションが生成する値及び/又は上記ユーザーが上記個人用端末を用いて送信する値である、
発明1の施設内環境の遠隔集中管理システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遠隔集中管理システムは、管理対象の施設に設置されている空調・換気機器の種類と数に関わらず、また、上記空調・換気機器の変更や更新に無関係に、上記施設の内部の環境が快適であるかどうか、あるいは公衆衛生上の基準に達しているかどうかを、いつでも・どこでも監視することができる。
本発明の遠隔集中管理システムは、ユーザーに対し、対象施設の内部環境について、評価レポート、通知、警告などを提供することができる。このため本発明システムは迅速に効率よく施設の内部の環境を改善することができる。
本発明の遠隔集中管理システムには、上記空調・換気機器の運転制御機能を付加することもできる。この場合、本発明システムのユーザーは、個人携帯端末から簡単に素早く、上記運転機器の運転を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明システムの構成を理解するためのイメージ図。
【
図2】本発明の遠隔集中管理アプリケーションが生成したCSVの1例。
【
図3】個人用端末に表示したユーザー向け画像の1例。
【
図4】本発明の遠隔集中管理アプリケーションが生成したレポートの1例の一部。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[遠隔集中管理システム]
本発明の遠隔集中管理システムは、センサー、無線ユニット、インターネット上のクラウド、遠隔集中管理アプリケーション、個人用端末、を含む。なお本発明において用語「クラウド」は、IaaS,PaaS,SaaS の総称として用いられる。
【0013】
[センサー]
本発明で用いるセンサーは、遠隔集中管理の対象となる施設の内部の環境に基づく物理量及び/又はレベル値を取得する装置である。典型的には、ここで検出する物理量は、温度、湿度、臭気レベル、気体組成から選ばれる1以上の値を含む。上記センサーは、例えば、上記施設内部の温度、湿度、二酸化炭素濃度、一酸化炭素濃度、オゾン濃度、次亜塩素酸、微小粒子状物質(PM2.5)濃度などを測定する機器である。上記センサーは、例えば、上記施設内部の臭い原因物質の濃度を測定し、上記濃度を臭いの強度(臭気レベル)値に換算する機器である。上記センサーは、上述の各種センサーの組み合わせであってもよく、また上記各種センサーを複合一体化した機器であってもよい。
【0014】
本発明のセンサーで上記物理量及び/又はレベル値を取得する頻度やタイミングは、後述の遠隔集中管理アプリケーションによって設定されている。具体的には、頻度やタイミングは上記本発明システムの適用施設や本発明システムのユーザーの必要性に応じて決定される。
【0015】
例えば、上記適用施設が室内雰囲気の急速な変化が予想されるライブハウスや学校であれば、上記センサーでは高い頻度であるいは継続的に上記物理量及び/又はレベル値を取得する。また例えば、上記適用施設がオフィスであれば、上記取得の頻度を営業時間帯に高く、営業時間外で低く設定することができる。
【0016】
上記センサー(もしくはセンサーの組み合わせ、以下、いずれも「センサー」と言う。)は、1つであっても複数であってもよい。例えば本発明システムを複数の施設に適用する場合には、上記センサーを各施設に設置し、各センサーが各施設の上記物理量及び/又はレベル値を取得する。
【0017】
[無線ユニット]
本発明で用いる無線ユニットは、上記センサーと通信線を介して通信し、上記センサーから受信する上記1以上の物理量及び/又はレベル値を上記インターネット上のクラウドに送信する。送信のタイミングは通常は上記センサーが上記物理量及び/又はレベル値の取得を完了した時である。
【0018】
例えば本発明システムを複数の施設に適用する場合には、上記無線ユニットは施設に設置された各センサーと通信し、各センサーで取得した物理量及び/又はレベル値が上記クラウドに送信される。
【0019】
[クラウド]
本発明で用いるクラウドはインターネット上に設置され、上記クラウドに設置されたデータセンターに上記1以上の物理量及び/又はレベル値が蓄積される。
【0020】
例えば本発明システムを複数の施設に適用する場合には、上記データセンサーでは各施設で取得された物理量及び/又はレベル値が個々の施設に紐付けされたデータセットとして蓄積される。例えば、上記センサーが学習塾の複数の教室:教室1,教室2,教室3,・・・に設置され各教室の二酸化炭素濃度、室温、湿度、臭いレベルが蓄積される場合には、教室1,教室2,教室3,・・・毎に割り当てられたデータ格納領域に検出・測定結果が蓄積される。
【0021】
[遠隔集中管理アプリケーション]
本発明で用いる遠隔集中管理アプリケーションは、上記施設で取得された物理量及び/又はレベル値を目標値と比較し、比較結果を基に上記施設の内部環境を評価する。上記遠隔集中管理アプリケーションは評価結果を後述の個人用端末にインターネットを介して送信する。
【0022】
本発明システムは、このような評価結果を定期的に自動生成してもよく、後述の個人用端末から送信されたユーザーのオーダーに応じて不定期に生成してもよい。上記評価結果の生成条件を施設(センサー設置地点)毎に変更することもできる。例えば、評価結果の生成頻度を、日中は店舗で高く、夜間はライブハウスで高く、といった差別化も可能である。
【0023】
[個人用端末]
本発明システムで用いる個人用端末は、個人が操作可能でインターネットに接続でき通信機能を有し得る端末の全てを指す。一般的には、上記個人用端末は、スマートフォン、タブレット、PCから選ばれる。本発明システムのユーザーがいつでも・どこでも対象施設の環境を管理するためには、スマートフォンが好ましい。
上記個人用端末は、いわゆるウェアラブル機器であってもよい。上記ウェアラブル機器としては、本発明システムのユーザーが装身具や衣類と同様に携行できるインターネットに接続して通信可能な機器であれば制限されない。このようなウェアラブル機器の形態は例えば、ペンやペンケースなどの携帯用文房具、メガネ、腕時計、リストバンド、アームバンド、イヤホン、マイクロフォン、帽子や手袋、ネックレスやイヤリングなどの各種アクセサリーなど、あるいはこれらの組み合わせである。
【0024】
本発明の個人用端末は、インターネットを介して上記評価結果を含むデータセットを受信する。上記遠隔集中管理アプリケーションは上記データセットに基づいて上記個人用端末の画面表示用データを生成し、上記個人用端末は、本発明のユーザーのために上記評価結果を含む施設内環境情報を画面表示する。
【0025】
一般的には、上記個人用端末の画面に、上記評価結果、例えば「良好」「注意」「不良」などのテキストと、最新の上記物理量及び/又はレベル値、例えば二酸化炭素濃度(ppm),温度(℃),湿度(%)などが表示される。
【0026】
本発明のシステムを利用すると、ユーザーは、対象施設から離れた地点にいても、全ての対象施設の内部環境をスマートフォンの画面で確認することができる。
【0027】
[通知,警告,レポート]
上記遠隔集中管理アプリケーションは、時事刻々変化する施設の内部環境に基づいて最新の評価結果を生成するだけでなく、本発明システムのユーザーに対してより強力で迅速な情報発信をすることができる。
【0028】
上記遠隔集中管理アプリケーションは、現実の施設内環境が予め設定された目標状態から一定範囲以上悪化していると判定した時には、上記悪化の程度に応じて、「注意」や「警告」に相当するメッセージを上記個人用端末から本発明のユーザーに提供する。このようなメッセージは画像、文字、音声、振動などの形態をとることができる。本発明のユーザーは、対象施設内の環境悪化が判定された時には、どこにいてもリアルタイムで警告メッセージをスマートフォンなどの個人用端末から受け取り、素早く環境改善に対応することができる。
【0029】
「警告」メッセージを受け取った本発明システムのユーザーが、例えば対象施設の空調・換気機器を操作した後にもセンサーが上記物理量及び/又はレベル値を測定し続け、施設内環境が目標範囲内であると上記遠隔集中管理アプリケーションが判定した時には、上記遠隔集中管理アプリケーションは環境改善を個人用端末から本発明のユーザーに通知することができる。この場合、上記遠隔集中管理アプリケーションはメッセージ生成データセットを個人用端末に送信し、上記個人用端末の画面に例えば「回復」,「良好」などのテキストが表示される。
【0030】
上記遠隔集中管理アプリケーションにおいて、上記目標範囲の内外を判定するためには、上記物理量及び/又はレベル値のそれぞれについて予め閾値が設定されている。例えば、以下のように設定できる。
【0031】
・二酸化炭素濃度の目標範囲:800ppm以上1000ppm以下,閾値:+200ppm(1200ppm超を異常と判定する)。
【0032】
・室温の目標範囲:20℃以上28℃以下,閾値:±2℃(18℃以下または30℃以上を異常と判定する)。
【0033】
・湿度の目標範囲:40%以上60%以下,閾値:±5%(35%以下または65%以上を異常と判定する)。
【0034】
・臭気レベルの目標範囲:指数65以下,閾値:+5(70指数以上を異常と判定する)。
【0035】
なお、いわゆる臭気センサーで測定できる臭気レベルとしては、6段階臭気強度表示法(レベル0,1,2,3,4,5に分類)、臭気指数表示法(10~40の指数で表示)、臭気濃度表示法(10~10000の濃度で表示)が一般的である。
【0036】
本発明システムでの遠隔集中管理アプリケーションは、ユーザーに対していわゆる「傾向と対策」を提供することもできる。例えば、時間、場所(施設)、観点(物理量及び/又はレベル値)などの様々な切り口で、管理対象施設の内部環境の特徴や変化傾向を導き、レポートを作成することができる。ユーザーは上記レポートを個人用端末にダウンロードすることができる。上記レポートのデータはクラウドに蓄積される。
【0037】
本発明システムでは、クラウドに蓄積された過去の様々な施設内環境情報に対して各種学習プログラムを実行することもできる。この場合、本発明システムでの遠隔集中管理アプリケーションは、対象施設の環境を目標状態に維持するための手段をユーザーに提案することができる。例えば、「毎日**時ごろ換気が必要」などの推奨動作を上記レポートやメッセージと共にユーザーのスマートフォンに表示することができる。
【0038】
[空調・換気機器]
本発明において、「空調・換気機器」は、管理対象の施設に設置されている、施設内雰囲気を調節するための機器全般を指す。上記空調・換気機器は、例えば、暖房、冷房、除湿、送風を行う室内機、上記室内機に連動するコントローラーや室外機、加湿器、消臭物質発生機器、いわゆる空気清浄機などの集塵機、いわゆるアロマディフューザーなどの芳香剤拡散機能を有する機器などである。上記空調・換気機器には、例えば、換気扇,全熱交換器及びダンパーなどの換気機能を有する機器も含まれる。
【0039】
空調・換気機器を有線あるいは無線で本発明システムに接続し、本発明の遠隔集中管理アプリケーションによって空調・換気機器を直接作動させることもできる。典型的には、上記「警告」を受け取ったユーザーが、自身のスマートフォンから上記空調・換気機器の設定値を変更するオーダーを送信し、上記空調・換気機器はインターネット経由で受信した上記オーダーに応じて動作する。例えば、ユーザーはスマートフォンの画面で「温度 プラス 2℃」を入力することによって、対象施設から離れた地点から対象施設の空調・換気機器を作動させることができる。
【0040】
[サービス]
本発明システムを用いて、ユーザーに対して例えば以下のサービスを提供することができる。
【0041】
(サービス例1)本発明システムを、換気設備や空調設備、脱臭装置やオゾン発生器(除菌・滅菌装置)、空気清浄機などの幅広い機器に連動させる。基本的にはケーブル配線を採用する。ユーザーは、遠隔地からスマートフォンやPCなどで室内の空気の状況をリアルタイムで把握する。遠隔集中管理アプリケーションが空気状況を示す値を異常と判定した場合、即座にスマホやPCに警報データを送信し、ユーザーは警報メッセージを受け取る(アラート機能)。ユーザーは、過去に蓄積されたテ゛ータをダウンロードして、室内環境の汚染度合いの傾向を分析することができる。分析の結果、ユーザーは各施設の課題(機器の劣化や汚染、想定を上回る人数を収容している、空調・換気機器の性能不足等)を発見することができる。
【0042】
(サービス例2)遠隔集中管理アプリケーションが機械学習プログラムを実行し、クラウドに蓄積された対象施設の莫大なデータを機械学習する。学習結果をもとに、遠隔集中管理アプリケーションが室内環境の汚染度合いの傾向や各施設の課題を導く。さらに遠隔集中管理アプリケーションは上記傾向と課題をレポートデータとして生成する。ユーザーは、定期的に(基本的に毎月)、そうした傾向や課題が掲載されたレポートを個人携帯端末から取得する。
【0043】
(サービス例3)対象施設でトラブルがあった場合、ユーザーは、スマートフォンやタブレット、PCで施設内機器の設定を変更する。その結果、ユーザーが施設に移動することなく、応急処置が完了する。例えば、二酸化炭素濃度が基準値をはるかに上回る場合、スマートフォンで二酸化炭素の目標値を下げることによって換気機器の運転強度を高める。この場合、換気機器の通常運転を維持する場合よりも短時間のうちに二酸化炭素濃度が減少する。
【実施例0044】
[例1]
図1として、本発明システムの構成を理解するためのイメージ図を示す。本発明システム(1)は、複数の施設(11,12,13)の内部環境を遠隔集中管理する。システム(1)は、センサー(21,22,23)、無線ユニット(31,32,33)、インターネット(4)上のクラウド(5)、クラウド(5)が提供する遠隔集中管理アプリケーション(6)、個人用端末(7)、を含む、クラウド上で多数のセンサーが取得した環境データが蓄積・分析される。
【0045】
[例2]
図2は、クラウドに蓄積された環境データに基づいて本発明の遠隔集中管理アプリケーションが生成したCSVの1例である。本発明システムのユーザーはこのようなCSVを自身の個人用端末にダウンロードすることができる。
【0046】
[例3]
図3は、本発明の遠隔集中管理アプリケーションが生成した個人用端末に表示したユーザー向け画像の1例である。センサー21から取得した現在の二酸化炭素濃度が886ppm、室温が22.0℃、湿度が40.2%、臭気レベルが44で、施設11の内部環境が良好であることと、直近の各値の変化を表すグラフが表示されている。本発明システムのユーザーは、いつでも・どこでも、このような画像データで個々の施設の内部環境を観察することができる。
【0047】
[例4]
空間容積が約300平方メートルの小規模ライブハウスにて本発明システムの実証実験を行なった。
【0048】
本発明システムの導入前には、二酸化炭素が異常値:3000ppm(基準値の3倍)から基準値:1000ppmまで減少するために必要とした時間は、換気装置を連続運転した場合には30分であった。この場合の、1分間で減少する二酸化炭素濃度は(3000―1000)/30=約66.7ppmであった。
【0049】
本発明システムを導入して警告メッセージ発出直後に換気装置の出力を強化したところ、2分半で異常値:3000ppmが650ppmに低下した。この場合の、1分間で減少する二酸化炭素濃度は、(3000-650)/2.5=940ppmであった。
【0050】
本発明システムの導入によって、二酸化炭素濃度低下効果は940/66.7=約14倍に向上したことが確認された。
【0051】
[例5]
床面積が100平方メートルの学校教室にて、本発明システムを試験運用した。これまでの使用経験で、在室人数の増加、連続使用、室内での飲食などによって室内環境が悪化することが分かっていた。本発明システムを用いて、各種環境値を1週間毎に集計しグラフ化して、室内環境の変化を定量的に把握した。担当者はスマートフォンで集計データやグラフを取得し、試験中に対象教室には入室しなかった。集計データやグラフを検討した結果、学校教室の窓の開閉ルールを決めることができた。本発明システムの利用によって、試行錯誤の負担を減らし、費用対効果の高い対応ができた。
【0052】
[例6]
床面積が50平方メートルの小型オフィスにて、本発明システムを試験運用した。これまでの使用経験で、在室人数の増加、営業時間の延長、室内での会食などによって室内環境が悪化することが分かっていた。本発明システムを用いて、各種環境値を1週間毎に集計しグラフ化して、室内環境の変化を定量的に把握した。担当者はスマートフォンで集計データやグラフを取得し、試験中に対象オフィスには入室しなかった。集計データやグラフを検討した結果、新たな換気設備の機種と設置位置を決めることができた。本発明システムの利用によって、試行錯誤の負担を減らし、費用対効果の高い対応ができた。
【0053】
[例7]
図4に、本発明の遠隔集中管理アプリケーションが生成したレポートの1例の一部を示す。ユーザーはこのような分析結果をレポートとして個人用端末にダウンロードすることができる。この例では、センサー2が設置された施設で過去1週間に取得された臭いレベルの結果が表示されている。ユーザーは、例えば、対象施設毎の臭気レベルの変化の大まかな傾向、時刻、日付、曜日などを尺度とした臭気レベルの高い時間域などを視覚的に把握できる。
本発明システムのユーザーは、典型的には、センサー、インターネット接続機器、スマートフォンを含むコンパクトな設備を用いて、複数の施設の内部環境を、いつでもどこでも同時に管理することができる。本発明システムは、少ない資源で多くの施設を集中管理する手段である。本発明システムは、従来の管理システムでは想定されていなかった、ライブハウス、学校、学習塾、診療所、集会所、会議室、室内スポーツ施設、飲食店、植物工場などの中小型施設の管理に有用である。本発明システムを災害対策や公衆衛生対策にも利用することができる。本発明は少ない人資源で多数施設を管理できる点で、少子高齢化社会にも対応できる。