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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081043
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】フレア形成工具
(51)【国際特許分類】
   B21D 41/02 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
B21D41/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194698
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】391010220
【氏名又は名称】レッキス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】石川 悟
(72)【発明者】
【氏名】穴山 貴一
(57)【要約】
【課題】安定した加圧力を発生させると共に主軸を回転させるためのトルクを低減することができるフレア形成工具を提供する。
【解決手段】フレア形成工具10として、フレアホルダ56と、フレアホルダ56内部に配置され、先端部50を備えると共に、後端側に雄ねじが形成された送りねじ部52を備えた主軸14と、先端部50に主軸14に偏心して配置されたフレアコーン12と、主軸14の外側においてその軸方向に沿って延在され、その周方向に沿って配置された複数の加圧ばね76と、主軸14の送りねじ部52と螺合する雌ねじが形成された内周部を有する主軸受け部96を中心部に備え、外周部に沿って加圧ばね76の前端を支持する前側支持部92を備えるクラッチフランジ66と、加圧ばね76の後端を主軸14の軸方向回りに回動可能に支持する加圧ばね受け60と、主軸14を回転させる駆動機構22と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工管の端部にフレアを形成するためのフレア形成工具であって、
筐体の内部に配置され、先端側において前記被加工管を咬持するためのパイプクランプが着脱可能に配置されるフレアホルダと、
前記フレアホルダの内部において軸方向に沿って前後動可能に配置され、外周形状が円筒状の先端部を備えると共に、後端側に雄ねじが形成された送りねじ部を備えた主軸と、
前記先端部に、前記主軸の軸中心に対して偏心して配置され、回転可能なフレアコーンと、
前記主軸の外側において前記主軸の軸方向に沿って延在され、前記主軸の周方向に沿って複数個配置された複数の加圧手段と、
前記フレアホルダの内部に配置され、中心部において、前記主軸の前記送りねじ部と螺合する雌ねじが形成された内周部を有する円筒形状の主軸受け部を備え、外周部に沿って、複数の前記加圧手段の前端を支持する前側支持部を備える、クラッチフランジと、
中央部に形成され、前記主軸が回転可能に挿入される貫通穴と、前記主軸の軸方向回りに回動可能な回動手段と、を有し、前記回動手段を介して複数の前記加圧手段の後端を支持する加圧手段受け部と、
前記主軸を回転させる駆動機構と、
を備えた、フレア形成工具。
【請求項2】
前記クラッチフランジと前記加圧手段受け部との間に配置され、前記加圧手段の外周形状に沿って形成された複数の加圧手段保持部を有するサポート部材を備える請求項1に記載のフレア形成工具。
【請求項3】
前記クラッチフランジは、前面から前記主軸の軸方向前方側へ向けて延出されたクラッチピン受けを備え、
前記フレアホルダは、後端部が前記加圧手段受け部と連結されると共に、前記クラッチフランジの前方側に配置され、前記クラッチピン受けと係合可能なクラッチピンと、前記クラッチピンを前記主軸の軸方向後方側へ向けて付勢するピン付勢手段と、を備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のフレア形成工具。
【請求項4】
前記クラッチフランジは、外側部に、前記主軸の径方向外側へ向けて延出された捩じりばね衝突部を備え、
一方の端部が前記筐体の内部に固定され、他方の端部は、前記フレアコーンが前記被加工管と当接し、前進が制限された前記主軸の回転によって前記主軸の軸方向後方側へオフセットされる前記クラッチフランジの前記捩じりばね衝突部に衝突するように配置された捩じりばねを備える、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のフレア形成工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレア形成工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、銅管の端部を円錐形に拡径してフレアを形成するには、手動又は電動のフレア形成工具が用いられている。例えば、特許文献1には、先端に先端拡大部が形成された主軸と、被先端拡大部に回転可能に支持されたフレアコーンと、筐体の先端に着脱可能に設けられたパイプクランプと、を具備し、モータを回転させることによってパイプクランプに咬持された被加工管の先端にフレアを形成する電動フレア形成工具が開示されている。ここでは、主軸は歯車減速装置の最終歯車の軸に摺動可能にスプライン結合されている。また、主軸には、主軸に固定されたクラッチと、クラッチに係脱し、かつ、筐体に形成された雌ねじに螺合した送りねじ軸と、送りねじ軸と先端拡大部との間に挿入された1つの加圧ばねと、が設けられている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のフレア形成工具によれば、加圧力は、1つの加圧ばねの性能に依存する。フレアコーンを前端まで前進させ、フレア形成を行う場合は、加圧ばねによって主軸を強く加圧する必要があるが、ばねの荷重は公差内でばらつきがあり、この様なばらつきが加圧力の差に影響を及ぼす。このため、フレア加工成形の精度にばらつきを生じる可能性がある。また、加圧ばねは、その内側に主軸を通し、主軸と加圧ばねを覆う様に送りねじ軸が配置される。このため、送りねじ軸のねじ径を一定程度大きくする必要があり、主軸及び送りねじ軸を回転させるためのトルクが大きくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-126931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、安定した加圧力を発生させると共に主軸を回転させるためのトルクを低減することができるフレア形成工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、被加工管の端部にフレアを形成するためのフレア形成工具であって、筐体の内部に配置され、先端側において被加工管を咬持するためのパイプクランプが着脱可能に配置されるフレアホルダと、フレアホルダの内部において軸方向に沿って前後動可能に配置され、外周形状が円筒状の先端部を備えると共に、後端側に雄ねじが形成された送りねじ部を備えた主軸と、先端部に、主軸の軸中心に対して偏心して配置され、回転可能なフレアコーンと、主軸の外側において主軸の軸方向に沿って延在され、主軸の周方向に沿って複数個配置された複数の加圧手段と、フレアホルダの内部に配置され、中心部において、主軸の送りねじ部と螺合する雌ねじが形成された内周部を有する円筒形状の主軸受け部を備え、外周部に沿って、複数の加圧手段の前端を支持する前側支持部を備える、クラッチフランジと、中央部に形成され、主軸が回転可能に挿入される貫通穴と、主軸の軸方向回りに回動可能な回動手段と、を有し、回動手段を介して複数の加圧手段の後端を支持する加圧手段受け部と、主軸を回転させる駆動機構と、を備えたフレア形成工具が提供される。
【0007】
さらに、本発明の別の態様によれば、クラッチフランジと加圧手段受け部との間に配置され、加圧手段の外周形状に沿って形成された複数の加圧手段保持部を有するサポート部材を備えてもよい。
【0008】
また、本発明の別の態様によれば、クラッチフランジは、前面から主軸の軸方向前方側へ向けて延出されたクラッチピン受けを備え、フレアホルダは、後端部が加圧手段受け部と連結されると共に、クラッチフランジの前方側に配置され、クラッチピン受けと係合可能なクラッチピンと、クラッチピンを主軸の軸方向後方側へ向けて付勢するピン付勢手段と、を備えてもよい。
【0009】
さらに、本発明の別の態様によれば、クラッチフランジは、外側部に、主軸の径方向外側へ向けて延出された捩じりばね衝突部を備え、一方の端部が筐体の内部に固定され、他方の端部は、フレアコーンが被加工管と当接し、前進が制限された主軸の回転によって、主軸の軸方向後方側へオフセットされるクラッチフランジの捩じりばね衝突部に衝突するように配置された捩じりばねを備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るフレア形成工具によれば、駆動機構によって回転された主軸は、その送りねじ部が、クラッチフランジの主軸受け部と螺合しながら、軸方向前方側へ移動(前進)される。前進されたフレアコーンが被加工管に当接してフレアの形成が開始されると、主軸は、前進を妨げられた状態で回転しようとするため、主軸受け部に主軸が螺合されたクラッチフランジは、軸方向後方側へ向けてオフセットされる。このため、クラッチフランジに支持された複数の加圧手段は圧縮され、その前端側(クラッチフランジ側)へ向けたばね反力を生じさせる。このようなばね反力は、主軸受け部に螺合された主軸に作用し、主軸は、フレアコーンを介して被加工管を加圧することができる。また、クラッチフランジは、所定の位置まで、例えば、これを係止するものが無い位置までオフセットされると、主軸と共に回転する。クラッチフランジは、主軸と共に回転を始めると、これ以上オフセットしなくなり、加圧手段は、圧縮され、ばね反力を生じさせた状態を維持してクラッチフランジ及び回動手段と共に回転する。ここでは、加圧手段は複数設けられていることから、必要とされる加圧力を各加圧手段で分担することができる。このため、各加圧手段が分担する加圧力を、加圧手段の加圧力の公差によって変動し得る範囲を避けて設定することができ、加圧力を安定して生じさせることができる。さらに、送りねじ部は、主軸の後端側に形成されており、複数の加圧手段は、主軸の周方向に沿ってその外側に配置されている。このため、例えば、特許文献1に開示されたフレア形成工具のように主軸と加圧ばねを覆う様に送りねじ軸を形成する場合と比較して、送りねじ部及び主軸の軸径を小さくすることができる。これによって、例えば、特許文献1に開示されたフレア形成工具のような既存の工具を用いて同じ加圧力を発生させる場合と比較して、主軸を回転させるためのトルクを低減することができる。
【0011】
さらに、本発明の別の態様によれば、クラッチフランジと加圧手段受け部との間に配置され、加圧手段の外周形状に沿って形成された複数の加圧手段保持部を有するサポート部材を備える。このため、何らかの軸を通さずに加圧手段を配置する場合であっても、加圧手段の位置を安定させると共に遊びを減らすことができ、フレアコーンを介して被加工管を安定して加圧することができる。
【0012】
また、本発明の別の態様によれば、クラッチピン受けを備えたクラッチフランジは、クラッチピンを備え、後端部が加圧手段受け部と連結されたフレアホルダの内部に配置されている。このため、クラッチピン受けがクラッチピンによって係止されたクラッチフランジをフレアホルダの内部に安定して配置することができ、さらに、クラッチフランジの主軸受け部に螺合された主軸をフレアホルダに安定して配置することができる。
【0013】
さらに、本発明の別の態様によれば、クラッチフランジは、外側部に、主軸の径方向外側へ向けて延出された捩じりばね衝突部を有し、フレア形成工具は、一方の端部が筐体の内部に固定され、他方の端部が、主軸の軸方向後方側へオフセットされたクラッチフランジの捩じりばね衝突部に衝突するように配置された捩じりばねを備える。このため、回転を開始した直後のクラッチフランジの捩じりばね衝突部が、捩じりばねと衝突し(を押圧し)、衝突音を発生させることができる。これによって、例えば、クラッチピンとクラッチピン受けとの衝突音が小さくなる場合であっても、捩じりばねと捩じりばね衝突部との衝突音によって、クラッチフランジ(クラッチ機構)が作動していることをユーザに知らせることができる。
【0014】
以上のことから、本発明に係るフレア形成工具は、安定した加圧力を発生させると共にトルクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係るフレア形成工具の側面図を筐体の片側を取り外した状態で示す。
図2図2は、フレア形成工具の内部を前方側から見た斜視図を示す。
図3図3は、フレア形成工具の内部を後方側から見た斜視図を示す。
図4図4は、フレア形成工具の分解斜視図を示す。
図5図5は、フレア形成工具の加工装置部の主軸の軸方向かつ工具の水平方向に沿って切断した断面図を示す。
図6図6は、加工装置部を前方側から見た斜視図を示す。
図7図7は、加工装置部を後方側から見た斜視図を示す。
図8A図8Aは、サポート部材を前方側から見た斜視図を示す。
図8B図8Bは、サポート部材を後方側から見た斜視図を示す。
図9図9は、加圧ばねが配置されたサポート部材を前方側から見た斜視図を示す。
図10A図10Aは、クラッチフランジを前方側から見た斜視図を示す。
図10B図10Bは、クラッチフランジを後方側から見た斜視図を示す。
図11図11は、クラッチフランジと捩じりばねとを前方側から見た斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本実施形態に係るフレア形成工具について説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。また、添付の図面に示されたフレア形成工具は、一例とされており、これに限らず、異なる寸法のフレア形成工具が形成されてもよい。
【0017】
図1は、本実施形態に係るフレア形成工具10の側面図を示す。フレア形成工具10は、管(例えば、銅管)の端部を円錐形に拡径してフレアを形成するための手動又は電動の工具である。ここでは、電動のフレア形成工具10が一実施例として示されている。図中には、管(図示省略)の先端を拡径するためのフレアコーン12を先端に備える主軸14(図2参照)が前進及び後進される方向の工具前後方向、装置幅方向及び工具上下方向をそれぞれ矢印で示す。図中に示されるFRは、工具前方側を示し、図中のW(図2参照)は、工具幅方向を示し、図中のUPは、工具上方側を示す。
【0018】
図1に示されるフレア形成工具10は、その筐体16が、工具下方側にユーザが把持するための把持部18を有するピストル形状とされている。筐体16には、その工具下方側に、充電可能な電池20が配置され、電池20の工具上方側には、電池20に接続されると共に、金属製のフレアコーン12及び主軸14を駆動(回転)するための駆動機構22が設けられている。
【0019】
図1及び図2に示されるように、駆動機構22は、電池20に正逆スイッチ28を介して接続されたモータ30と、モータ30によって駆動され、主軸14を回転させる歯車減速機構32と、を備える。歯車減速機構32は、具体的には、モータ30の回転軸に直結された第1ピニオン34と、第1ピニオン34と連結された第1ギア36と、第1ギア36の回転軸に配置された第2ピニオン37を介して第1ギア36と連結された第2ギア38と、第2ギア38と連結されたスプライン軸受け40と、を有する。
【0020】
図3に示されるように、主軸14の工具後端側には、スプライン42が連結されており、主軸14は、スプライン42が取り付けられた工具後端側がスプライン軸受け40(図2参照)に連結されることによって、前後動可能に回転させることができる。また、スプライン軸受け40に挿入されたスプライン42の工具後方側には、主軸14の工具前方側への加圧を補助するための補助ばね44が主軸14の軸方向に沿って配置されている。
【0021】
図1に示されるように、フレア形成工具10の工具上方側には、フレア形成を行うための加工装置部46が設けられている。図4に示されるように、加工装置部46は、可動部分である主軸14、後述するクラッチフランジ66及び加圧ばね76等と、これらを内部に収容するホルダ部48と、によって構成されている。
【0022】
主軸14は、外周形状が円筒状とされ、管を拡径するためのフレアコーン12が回転可能に配置される先端部50と、後端側には、外周に雄ねじが形成された送りねじ部52を備える。また、主軸14には、工具後方側に連結されたスプライン42の脱落防止のために、その工具後方側に止め輪54が取り付けられている。なお、ここでは、脱落防止のために止め輪54が用いられているとして説明するが、これに限らず、例えば、ロ―ルピン、ナット等の止め輪以外の部品が脱落防止のために用いられてもよい。
【0023】
図4及び図5に示されるように、ホルダ部48は、工具前方側に配置され、外周形状が筒状に形成された金属製のフレアホルダ56と、正面視で正方形状の金属板であって、その四隅が、フレアホルダ56の後端部と六角ボルト58を介して連結される加圧手段受け部としての加圧ばね受け60と、によって構成されている。
【0024】
図6に示されるように、フレアホルダ56は、その工具前方側において円筒状に形成され、パイプクランプ(図示省略)が収容される先端収容部56Aと、その工具後方側において先端収容部56Aと連続的に形成された円筒形状の後部ホルダ56Bと、によって構成されている。後部ホルダ56Bは、その工具幅方向の両側部並びに工具上方側及び工具下方側に開口を有する。また、先端収容部56Aの内側には、コーン側ニードルベアリング62(図5参照)が配置されており、主軸14は、コーン側ニードルベアリング62を介してホルダ部48の内側に収容(配置)されている。また、図7に示されるように、先端収容部56Aの工具後方側には、後述するクラッチフランジ66が当接する被加圧部64が形成されている。
【0025】
図4及び図5に示されるように、加圧ばね受け60の前面には、工具前方側へ向けて突出した円筒形状のベアリング取付部68が形成されており、ベアリング取付部68の内周部から加圧ばね受け60にかけて主軸14を挿入するための貫通穴が貫通成形されている。ベアリング取付部68の外周側には、内周形状がベアリング取付部68の外周形状と略同一に形成され、ベアリング取付部68回りに回動可能な環状の前側スラストニードルベアリング70(回動手段)が配置されている。また、加圧ばね受け60の後面には、背面視で円形状の凹部が形成されており、凹部の内側には、外周形状が凹部の内周形状と略同一に形成された環状の後側スラストニードルベアリング72が配置されている。前進された主軸14は、スプライン42が後側スラストニードルベアリング72によって係止されるように構成されている。このため、加工をしない場合(パイプクランプを収容しない場合)において、主軸14が、駆動され、前進されたときには、この状態で係止され、これ以上前進しないように構成されている。
【0026】
フレアホルダ56と加圧ばね受け60とによって形成されたホルダ部48の内部には、金属製のクラッチフランジ66と、金属製又は樹脂製のサポート部材74と、加圧手段としての複数の加圧ばね76と、が配置されている。クラッチフランジ66は、後部ホルダ56Bの工具幅方向の両側部並びに工具上方側及び工具下方側の開口から露出された状態で配置されている。ここでは、加圧ばね76は、コイルばねとされ、6個のコイルばねが設けられている。なお、以下の説明では、加圧ばね76は、6個のコイルばねとして説明するが、これに限らず、例えば、加圧手段は、ソレノイド等の他の加圧手段が用いられてもよく、また、6個よりも多数又は少数設けられてもよい。
【0027】
前側スラストニードルベアリング70の工具前方側には、外周形状が円筒状に形成されたサポート部材74が配置されている。図8A及び図8Bに示されるように、サポート部材74は、その前面に、工具前方側へ向けて突出して形成され、クラッチフランジ66と連結(嵌合)するための前側突起部78を備える。また、サポート部材74の外周部には、加圧ばね保持部80が、周方向に沿って等間隔(ここでは、加圧ばね76は6個であるため、60度間隔)で形成されている。加圧ばね保持部80は、サポート部材74を工具前後方向(厚さ方向)に沿って貫通成形されており、内部に加圧ばね76を収容できるように、その内周形状が、加圧ばね76の外周形状に合わせて形成されている。
【0028】
図9に示されるように、サポート部材74の中心部には、正面視で円形状の貫通部82が、工具前後方向(厚さ方向)に沿って貫通成形されている。貫通部82には、ベアリング取付部68が挿入され、ベアリング取付部68の内側には、ニードルベアリング84(図5参照)が挿入されている。
【0029】
図5に示されるように、サポート部材74の加圧ばね保持部80に加圧ばね76が収容され、サポート部材74の工具前方側には、クラッチフランジ66が配置される。
【0030】
図10Aに示されるように、クラッチフランジ66の前面の外縁には、工具前方側へ向けて突出された、クラッチピン受け86が形成されている。また、クラッチフランジ66の前面の中心部には、工具前方側へ向けて突出した円筒形状の突出部88が形成されている。クラッチピン受け86の前面及び突出部88の前端は、フレアホルダ56の内部に配置されたときに、フレアホルダ56の被加圧部64と当接するように構成されている。具体的には、被加圧部64は、突出部88の前端の外周形状に沿って形成されている。クラッチフランジ66の外側部には、主軸14の径方向外側へ向けて延出され、後述するクラッチピン90と衝突(係合)可能に構成された捩じりばね衝突部99が形成されている。
【0031】
図10Bに示されるように、クラッチフランジ66の工具後方側には、加圧ばね76の前端を支持する前側支持部92が、周方向に沿って等間隔(ここでは、加圧ばね76は6個であるため、60度間隔)、かつ、加圧ばね保持部80と対向する位置に形成されている。また、クラッチフランジ66は、サポート部材74の前側突起部78と対向する位置に貫通形成され、前側突起部78と連結(嵌合)するための嵌合部94を備える。
【0032】
クラッチフランジ66の中心部には、工具後方側へ向けて突出された円筒状に形成され、主軸14が挿入される円筒形状の主軸受け部96が形成されている。主軸受け部96の内周部には雌ねじが形成されており、主軸受け部96に挿入された主軸14の送りねじ部52と螺合するように構成されている。
【0033】
図11に示されるように、フレアホルダ56(図5参照)の後部ホルダ56Bの工具幅方向の両側部には、開口から露出するクラッチフランジ66と対向する位置に工具後方側へ向けて延在するクラッチピン90が配置されている。クラッチピン90の工具前方側には、クラッチピン90を工具後方側へ向けて付勢するピン付勢手段としての付勢ばね100が配置されている。このため、クラッチフランジ66は、クラッチピン受け86がクラッチピン90に係止されることによって、フレアホルダ56の内部に安定して配置されている。
【0034】
フレアホルダ56の工具下方側には、一方の端部102Aが筐体16の内部に固定されており、他方の端部102Bがクラッチフランジ66の工具後方側に位置する捩じりばね102が配置されている。他方の端部102Bは、工具後方側へオフセットされたときのクラッチフランジ66の捩じりばね衝突部99と工具前後方向において同じ位置となるようにその位置が調整されている。また、捩じりばね102の他方の端部は、工具後方側へオフセットされた捩じりばね衝突部99と衝突するように、工具上方側へ向けて折り曲げられている。
【0035】
続いて、本実施形態の作用及び効果について、以下に説明する。
【0036】
本実施形態に係るフレア形成工具10によれば、ユーザが、正逆スイッチ28を介して駆動機構22を起動することによって、モータ30が起動し、主軸14が回転する。回転された主軸14は、その送りねじ部52が、クラッチフランジ66の主軸受け部96と螺合しながら、工具前方側へ移動(前進)する。フレアコーン12が被加工管に当接してフレアの形成が開始されると、主軸14は、前進を妨げられた状態で回転しようとするため、主軸受け部96に主軸14が螺合されたクラッチフランジ66は、工具後方側へ向けてオフセットされる。このため、クラッチフランジ66に支持された複数(6個)の加圧ばね76は圧縮され、工具前方側へ向けたばね反力を生じさせる。このように生じたばね反力は、主軸受け部96に螺合された主軸14に作用し、主軸14は、フレアコーン12を介して被加工管を加圧することができる。また、クラッチフランジ66は、クラッチピン90がクラッチピン受け86を係止することができなくなる位置まで工具後方側へオフセットされると、主軸14と共に回転する。クラッチフランジ66は、主軸14と共に回転を始めるとこれ以上オフセットしなくなり、加圧ばね76は、圧縮され、ばね反力を生じさせた状態を維持してクラッチフランジ66及び前側スラストニードルベアリング70と共に回転する。ここでは、加圧ばね76は複数設けられていることから、必要とされる加圧力を各加圧ばね76で分担することができる。このため、各加圧ばね76が分担する加圧力を、加圧ばね76の加圧力(ばね力)の公差によって変動し得る範囲を避けて、すなわち、変動する範囲の下限値よりも小さな荷重で設定することができ、加圧力を安定して生じさせることができる。
【0037】
さらに、送りねじ部52は、主軸14の後端側に形成されており、複数の加圧ばね76は、主軸14の周方向に沿ってその外側に配置されている。このため、例えば、特許文献1に開示されたフレア形成工具のように主軸と加圧ばねを覆う様に送りねじ軸を形成する場合と比較して、送りねじ部52及び主軸14の軸径を小さくすることができる。これによって、特許文献1に開示されたフレア形成工具のような既存の工具を用いて同じ加圧力を発生させる場合と比較して、主軸14を回転させるためのトルクを低減することができる。
【0038】
また、加圧ばね76を複数(6個)設け、主軸14の外側に配置することによって、主軸14の近傍に他の部品を配置することができる。さらに、加圧ばね76を複数設けることによって、各加圧ばね76で負担する加圧力を低減できることから、外径を小さくし、かつ/又は、長さを短くして、その寸法を小さくすることができる。これらの事から、筐体16の内部に配置される加工装置部46の寸法を小さくすることができ、従って、フレア形成工具10を小型、かつ、軽量にすることができる。
【0039】
さらに、本実施形態に係るフレア形成工具10によれば、クラッチフランジ66と加圧ばね受け60との間には、加圧ばね保持部80を有するサポート部材74が配置されている。このため、何らかの軸を通さずに加圧ばね76を配置する場合であっても、加圧ばね76の位置を安定させると共に遊びを減らすことができ、フレアコーン12を介して被加工管を安定して加圧することができる。
【0040】
また、本実施形態に係るフレア形成工具10によれば、クラッチピン受け86を備えたクラッチフランジ66は、クラッチピン受け86と係合可能なクラッチピン90を備え、後端部が加圧ばね受け60と連結されたフレアホルダ56の内部に配置されている。このため、クラッチピン受け86がクラッチピン90によって係止されたクラッチフランジ66をフレアホルダ56の内部に安定して配置することができ、さらに、クラッチフランジ66の主軸受け部96に螺合された主軸14をフレアホルダ56に安定して配置することができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係るフレア形成工具10によれば、クラッチフランジ66のクラッチピン受け86をフレアホルダ56の中心から(主軸14から)径方向に離れた位置に配置することができる。このため、クラッチピン受け86の位置におけるトルクを相対的に増加させることができ、クラッチピン90が、オフセットされ、回転を始めたクラッチフランジ66のクラッチピン受け86を乗り越えるために必要とする力を小さくすることができる。これによって、クラッチピン90がクラッチピン受け86を乗り越える際に発生する衝突音が小さくなり、ユーザが、クラッチ機構の作動、すなわち、主軸14が工具前方側に最大限前進されていることに気付きづらくなる。フレアホルダ56の工具下方側に配置された捩じりばね102は、回転するクラッチフランジ66の捩じりばね衝突部99によって、他方の端部102Bが押圧され、捩じりばね衝突部99が移動(通過)すると、ばね反力によって元の位置へ復帰する。この際に、端部102Bが筐体16と衝突するため音を生じさせる。これによって、クラッチピン90とクラッチピン受け86との衝突音が小さくなる場合であっても、捩じりばね102と捩じりばね衝突部99との衝突音によって、クラッチ機構が作動していることをユーザに知らせることができる。
【0042】
以上のことから、本実施形態に係るフレア形成工具10は、安定した加圧力を発生させると共にトルクを低減することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るフレア形成工具10によれば、ホルダ部48は、クラッチフランジ66と主軸14とが内部に配置されたフレアホルダ56の後端部を加圧ばね受け60に六角ボルト58で螺合(連結)するだけの構造である。このため、例えば、主軸にクラッチを固定させるような場合に必要とされるような特殊な工具等を使用することなく簡便に組付けることができる。
【0044】
なお、ここでは、フレア形成工具10は、電動であるとして説明したが、これに限らず、低トルクで主軸を駆動することができるため、手動及び公知(市販)のドリルを用いて駆動できるフレア形成工具が構成されてもよい。
【0045】
以上、フレア形成工具10の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者が想到する範囲において、上記の実施形態の様々な変形が本発明の実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
10 フレア形成工具
12 フレアコーン
14 主軸
16 筐体
50 先端部
52 送りねじ部
60 加圧ばね受け(加圧手段受け部)
66 クラッチフランジ
70 前側スラストニードルベアリング(回動手段)
74 サポート部材
76 加圧ばね(加圧手段)
80 加圧ばね保持部(加圧手段保持部)
86 クラッチピン受け
90 クラッチピン
92 前側支持部
96 主軸受け部
99 捩じりばね衝突部
100 付勢ばね(ピン付勢手段)
102 捩じりばね
102A 一方の端部
102B 他方の端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11