(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081072
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】毛質用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20230602BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230602BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230602BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230602BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230602BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/27
A61K8/44
A61K8/39
A61K8/86
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194756
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】平野 彩花
(72)【発明者】
【氏名】鈎 美智
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AC102
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC432
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD202
4C083AD391
4C083AD392
4C083CC32
4C083EE28
(57)【要約】
【課題】皮膜性樹脂を用いずに適度なスタイリング性がありながら、毛髪にハリ・コシを付与する亜鉛化合物の毛髪への浸透力が維持された毛髪用組成物を提供すること。
【解決手段】亜鉛化合物、グリセリルグルコシド、アルギニン誘導体、及びソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルを含有する毛髪用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛化合物、グリセリルグルコシド、アルギニン誘導体、及びソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルを含有する毛髪用組成物。
【請求項2】
前記亜鉛化合物がグルコン酸亜鉛である、請求項1に記載の毛髪用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪にハリ・コシ感を付与し、スタイリング時に使用すると髪にボリューム
感を出しやすくするとともに、毛髪をスタイリングした状態を好適に維持することができる毛質用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪が細くしなやかな人や、加齢に伴い毛髪が細くなったり、毛髪本数が減少したりした人は、希望する髪形にスタイリングすることが難しいことから、スタイリングの補助方法の開発が望まれている。これまでに、毛髪の表面に皮膜性の物質を付着させ、毛髪剛性を高めることでスタイリングしやすくするために、種々の整髪用の皮膜性樹脂の開発がなされ提案されてきた。しかし、これらの整髪用の皮膜性樹脂は、毛髪表面の手触りを著しく悪くしたり、毛髪の持つ柔軟性を失わせたりするだけでなく、湿度の高い状況では皮膜剛性を失いスタイリングした髪型が崩れてしまったり、櫛などを使用するとスタイリングが崩れやすくなるなどの課題点が解消できなかった。
【0003】
また、毛髪自体のハリやコシを向上させる技術としては、毛髪の内部に亜鉛化合物を浸透させる方法(特許文献1)が提案されている。しかし、皮膜性樹脂を含まないスタイリング組成物に亜鉛化合物を配合した場合、毛髪への浸透量が十分に得られないという課題があった。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮膜性樹脂を用いずに適度なスタイリング性がありながら、毛髪にハリ・コシを付与する亜鉛化合物の毛髪への浸透力が維持された毛髪用組成物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、驚くべきことに、亜鉛化合物を含有する毛髪用組成物に対して、グリセリルグルコシド、アルギニン誘導体、及びソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルを配合することで、皮膜性樹脂を用いずに適度なスタイリング性がありながら、毛髪にハリ・コシを付与する亜鉛化合物の毛髪への浸透力が維持されることを見出した。
【0008】
本発明は、例えば以下に記載の発明を包含する。
項1.
亜鉛化合物、グリセリルグルコシド、アルギニン誘導体、及びソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルを含有する毛髪用組成物。
項2.
前記亜鉛化合物がグルコン酸亜鉛である、項1に記載の毛髪用組成物。
【発明の効果】
【0009】
皮膜性樹脂を用いずに適度なスタイリング性がありながら、毛髪にハリ・コシを付与する亜鉛化合物の毛髪への浸透力が維持された毛髪用組成物を提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本発明は毛髪用組成物、特に、亜鉛化合物、グリセリルグルコシド、アルギニン誘導体、及びソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルを含有する毛髪用組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本発明は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0011】
本発明に用いられる亜鉛化合物としては、有機酸亜鉛、又はハロゲン化亜鉛等が例示される。有機酸亜鉛としては、例えば、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛、ピロリドンカルボン酸亜鉛などが挙げられ、中でもグルコン酸亜鉛が好ましい。ハロゲン化亜鉛としては、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛などが挙げられ、中でも塩化亜鉛が好ましい。亜鉛化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。亜鉛化合物は、本開示の毛髪用組成物中において、例えば、塩、イオン、又は溶媒和物、或いはこれらの組合せ等の形態を有していることができる。
【0012】
本発明で用いられる亜鉛化合物の配合量は、効果が奏される範囲であれば特に制限はされないが、例えば組成物全体に対して、例えば、0.01質量%~5質量%とすることができる。当該範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0,4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4又は4.5質量%であってもよい。より具体的には、例えば、0.1質量%~2質量%であってもよい。
【0013】
本発明で用いられるグリセリルグルコシドとしては、特に制限されず、公知のグリセリルグルコシドを用いることができる。グリセリルグルコシドは、グルコースとグリセリンとがグリコシド結合することによって形成された反応生成物である。グリコシド結合には、グルコースの糖構造の平面より下であるアキシアル方向に置換基が結合したα-グリコシド結合と、グルコースの糖構造の平面より上であるエクアトリアル方向に置換基が結合したβ-グリコシド結合とが存在する。また、グリセリルグルコシドには、グリセリンの1位にグルコースが結合したものと、グリセリンの2位にグルコースが結合したものとが存在する。そのため、グリセリルグルコシドの具体例としては、例えば1-α-グリセリルグルコシド、1-β-グリセリルグルコシド、2-α-グリセリルグルコシド、2-β-グリセリルグルコシド等が挙げられる。グリセリルグルコシドは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
本発明で用いられるグリセリルグルコシドの配合量は、効果が奏される範囲であれば特に制限はされないが、例えば組成物全体に対して0.1~10質量%程度が挙げられる。なお、当該範囲の上限または下限は、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9質量%であってもよい。より具体的には、例えば、当該範囲は、1~5質量%程度である。
【0015】
本発明に用いられるアルギニン誘導体としては、特に制限されず、公知のアルギニン誘導体を用いることができる。アルギニン誘導体は、アルギニンを用いて形成された化合物である。アルギニン誘導体の具体例としては、例えばL-アルギニン塩酸塩、ジヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩等が挙げられる。アルギニン誘導体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明で用いられるアルギニン誘導体の配合量は、効果が奏される範囲であれば特に制限はされないが、例えば組成物全体に対して0.01~5質量%程度が挙げられる。なお、当該範囲の上限または下限は、例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、又は4.5質量%であってもよい。例えば当該範囲は、0.1~3質量%程度である。
【0017】
本発明に用いられるソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルとしては、特に制限されず、公知のソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルを用いることができる。ソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルの具体例としては、例えば酸化プロピレンの平均付加モル数が10であるもの、25であるもの、33であるもの、35であるもの等が挙げられる。ソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明で用いられるソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルの配合量は、効果が奏される範囲であれば特に制限はされないが、例えば組成物全体に対して0.01~5質量%程度が挙げられる。なお、当該範囲の上限または下限は、例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、又は4.5質量%であってもよい。例えば当該範囲は、0.1~3質量%程度である。
【0019】
本発明の毛髪用組成物中の亜鉛化合物の配合量と、グリセリルグルコシド、アルギニン誘導体、及びソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルの3成分の配合量の合計との質量比は、特に制限はされないが、亜鉛化合物/(グリセリルグルコシド+アルギニン誘導体+ソルビトールのポリプロピレングリコールエーテル)=0.05~0.3程度が挙げられる。なお、当該範囲の上限または下限は、例えば、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.12、0.15、0.18、0.2、又は0.25であってもよい。例えば当該範囲は、0.1~0.2程度である。
【0020】
本発明の毛髪用組成物中のグリセリルグルコシドの配合量と、アルギニン誘導体の配合量との質量比は、特に制限はされないが、グリセリルグルコシド/アルギニン誘導体=5~25程度が挙げられる。なお、当該範囲の上限または下限は、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24であってもよい。例えば当該範囲は、10~15程度である。
【0021】
本発明の毛髪用組成物中のグリセリルグルコシドの配合量と、ソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルの配合量との質量比は、特に制限はされないが、グリセリルグルコシド/ソルビトールのポリプロピレングリコールエーテル=1~5程度が挙げられる。なお、当該範囲の上限または下限は、例えば、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5であってもよい。例えば当該範囲は、2.5~3.5程度である。
【0022】
本発明の毛髪用組成物中のアルギニン誘導体の配合量と、ソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルの配合量との質量比は、特に制限はされないが、アルギニン誘導体/ソルビトールのポリプロピレングリコールエーテル=0.1~0.6程度が挙げられる。なお、当該範囲の上限または下限は、例えば、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、又は0.55であってもよい。例えば当該範囲は、0.2~0.3程度である。
【0023】
本発明の毛髪用組成物は常法により製造することができる。また、本発明の毛髪用組成物の形態としては特に限定されず、例えばペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、エアゾール状、スプレー状等が挙げられる。本発明の毛髪用組成物の用途としては、公知のものを適宜採用することができ、例えばヘアジェル、ヘアスプレー、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアムース、ポマード、チック、ヘアクリーム等のヘアスタイリング剤としての用途が挙げられる。また、本発明の毛髪用組成物は、医薬部外品、化粧品、または医薬品として用いることができる。
【0024】
本発明の毛髪用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に毛髪用組成物に配合し得る公知の任意成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
【0025】
このような公知の任意成分としては、例えば、例えば界面活性剤、噴射剤、保湿剤、防腐剤、pH調整剤、香料、溶剤等が挙げられる。
【0026】
界面活性剤の具体例としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ラウリルグリコシド、デシルグリコシド等のアルキルグリコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール水添ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモウニム等の第4級アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばN-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジエチルグリシン等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-アルキル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
噴射剤の具体例としては、例えば液化石油ガス(LPGともいう。)、窒素ガス、炭酸ガス、ジメチルエーテル(DMEともいう。)等の液化ガス、窒素、炭酸ガス等の圧縮ガスが挙げられる。
【0028】
保湿剤の具体例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリスリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール等の糖アルコール、アミノ酸類、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、コラーゲン誘導体、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、海水(乾固物を含む)、海洋深層水(乾固物を含む)、キトサン誘導体、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ジグリセリン・エチレンオキシド・プロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0029】
防腐剤の具体例としては、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、ウンデシレン酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸塩等の有機酸及びその誘導体、イソプロピルメチルフェノール等のフェノール類、フェノキシエタノール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0030】
pH調整剤の具体例としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、グリセロリン酸、並びにこれらのカリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩等の各種塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
整髪剤組成物に用いられる公知の香料としては、天然香料や合成香料であってもよい。また、単品香料や調合香料であってもよい。香料の具体例としては、例えばメントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0032】
溶剤としては、水やアルコールを用いることができる。水の具体例としては、例えば蒸留水、純水、超純水、精製水、水道水等が挙げられる。アルコールの具体例としては、例えばメタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等の低級アルコールが挙げられる。
【0033】
なお、本発明の毛髪用組成物において、加脂剤とも呼ばれる油脂類、ロウ類、炭化水素類、高級アルコール、エステル化合物、セルロース誘導体、シリコーン誘導体、及び蛋白質誘導体が配合されていると、スタイリングされた毛髪表面の手触りを著しく悪くしたり、毛髪の持つ柔軟性を失わせたりするだけでなく、湿度の高い状況では皮膜剛性を失いスタイリングした髪型が崩れてしまう。そのため、加脂剤の配合量は少量、例えば5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、加脂剤は配合されていないことがさらに好ましい。
【0034】
前記加脂剤としては、例えば、油脂類:シア脂、ホホバ油、ラノリン、ロウ類:カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、炭化水素類:ワセリン、ミネラルオイル、高級アルコール:セタノール、エステル化合物:ラウリン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、イステテアリン酸イソステアリル、セルロース誘導体:ヒドロキシエチルセルロース、シリコーン誘導体:ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、蛋白質誘導体:加水分解ケラチン、加水分解シルクなどが挙げられる。
【実施例0035】
以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
表1に示す配合量にて、参考例1、実施例1、及び比較例1~3の被検体を常法にて調製した。なお、表1において、各成分の右側に記載した数字は、各成分の含有量(質量%)を意味し、合計で100質量%となるように配合した。
【0037】
表1に記載する各成分の詳細は以下のとおりである。中実シリカは、市販の中実シリカを使用した。一次粒子の平均粒子径が40nm、二次粒子の平均粒子径が7.4μmであった。複数の一次粒子が凝集して二次粒子を形成しており、複数の一次粒子間に気孔を有していた。中空シリカは、市販の中空シリカを使用した。平均粒子径は3.7μmであった。外殻部は、複数の気孔を有していた。なお、各実施例、及び比較例において、中実シリカと中空シリカの質量比は、中実シリカ/中空シリカ=1/8であった。グリセリルグルコシドは、市販のグリセリルグルコシドを使用した。1-α-グリセリルグルコシド、1-β-グリセリルグルコシド、2-α-グリセリルグルコシド、及び2-β-グリセリルグルコシドが混在しているものを使用した。アルギニン誘導体は、市販のジヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩を使用した。ソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルは、市販のソルビトールのポリプロピレングリコールエーテルを使用した。酸化プロピレンの平均付加モル数は10であった。
【0038】
[亜鉛浸透量評価]
毛髪への亜鉛浸透量評価は、非破壊元素分析が可能な蛍光X線分析装置を用いて行った。本分析法を用いることで、毛髪に含まれる亜鉛成分の特性X線強度が得られ、この特性X線強度は、元素の濃度に比例するため、強度を比較することでサンプルの亜鉛量を相対的に比較することができる。まず、市販の人毛黒髪を用意した。この人毛黒髪は根本で束ねられており、長さ15cm、一束の重さ2gであった。ラウリル硫酸ナトリウム(SLSともいう。)10%溶液を用いて、試験用サンプルの人毛黒髪を事前に洗浄した。さらに乾燥させた後、このサンプルから5本毛髪を切り出し、各被検体0.1gを塗布し、毛髪全体に指で馴染ませた。続けて、毛束をSLS 1%溶液100mlに5秒、イオン交換水100mlに5秒、別のイオン交換水100mlに5秒浸漬させて洗浄した後、57℃に設定した定温送風乾燥器(東京理科機器株式会社製:EYELA WINDY OVEN WFO-600SD)にて30分乾燥させた。これらの工程を合計10回繰り返し、測定サンプルとした。前記測定サンプルの亜鉛量を上記装置にて測定し、参考例1を100%としたときの亜鉛量の変化率を表1に示す。
【0039】
[セット性評価]
セット性の評価は、株式会社テクノ・ハシモト製のコーミングテスター(型式SK-7A)を用いて行った。まず、コーミングテスター専用の市販の人毛黒髪を用意した。この人毛黒髪は根本で揃えられており、長さ30cm、一束の重さ250gであった。一束の人毛黒髪の根本部分から約3cmの範囲に亘り、公知の接着剤を塗布した。接着剤を塗布した箇所を2枚の板で挟み込んで固定し、試験用サンプルを作成した。ラウリル硫酸ナトリウム(SLSともいう。)10%溶液を用いて、試験用サンプルの人毛黒髪を事前に洗浄した。さらに乾燥させた後、上記のコーミングテスターにセットした。くし通しを10回行うプログラムを実施して、くし通し時の荷重を測定した。ここで、10回の測定のうち、最初の数回はデータにばらつきが生じることがあるため、6回から10回までの5回分の測定結果を使用した。5回分のくし通し時の荷重を積算して、荷重積算値の初期値とした。次に、荷重積算値の初期値を測定した人毛黒髪に対して、各実施例、又は比較例の整髪剤組成物1gを塗布した。さらに、毛髪全体に整髪剤組成物を馴染ませた。この人毛黒髪を上記のコーミングテスターにセットし、くし通しを10回行うプログラムを実施して、くし通し時の荷重を測定した。6回から10回までの5回分のくし通し時の荷重を積算して、荷重積算値の測定値とした。
【0040】
以下の式から、整髪剤組成物を塗布する前後の荷重積算値の変化率(%)を算出した。結果を表1に示す。
荷重積算値の変化率(%)=(測定値/初期値)×100
【0041】
【0042】
表1の通り、毛髪の荷重積算値が初期値より上昇し、セット性を向上させるグリセリルグルコシド、アルギニン誘導体、ソルビトールのポリプロピレングルコールエーテルをそれぞれ単独で配合した比較例1~3では、毛髪への亜鉛導入量が参考例1に比して低下したが、前記3成分を配合した実施例1では、驚くべきことに亜鉛導入量の低下が抑制され、かつセット性も非常に良好な結果を示した。
【0043】
本発明の毛髪用組成物の処方例を表2に示す。なお各処方の配合量は特に記載のない限り質量%を示す。
【0044】