(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081106
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】マイクロホン用風防
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
H04R1/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194810
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】川澄 泰之
(57)【要約】
【課題】含水による音響特性の低下を抑制できるマイクロホン用風防を提供する。
【解決手段】マイクロホン2を囲繞するための多孔質の周壁1aを有し、鉛直方向下側に配置される周壁1aの軸方向端部が、それぞれ鉛直方向下側に向けて細くなる先細部6を有するマイクロホン用風防1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロホンを囲繞するための多孔質の周壁を有し、鉛直方向下側に配置される前記周壁の軸方向端部が、それぞれ前記鉛直方向下側に向けて細くなる先細部を有するマイクロホン用風防。
【請求項2】
複数の前記先細部を有する、請求項1に記載のマイクロホン用風防。
【請求項3】
マイクロホンを囲繞するための多孔質の周壁を有し、前記周壁が、鉛直方向上側に配置される端部から鉛直方向下側に配置される端部まで前記周壁を軸方向に貫通する貫通路を有するマイクロホン用風防。
【請求項4】
マイクロホンを囲繞するための多孔質の周壁を有し、前記周壁が、径方向に空気層を挟む二重構造を有するマイクロホン用風防。
【請求項5】
前記周壁と前記周壁の鉛直方向上側の端部に連なる多孔質の天壁とからなる、請求項1~4の何れか1項に記載のマイクロホン用風防。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はマイクロホン用風防に関する。
【背景技術】
【0002】
風切音を抑制するためのマイクロホン用風防が知られている(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-139134号公報
【特許文献2】特開2003-163982号公報
【特許文献3】特開2015-064594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロホン用風防は多孔質であるため、雨粒などの水がかかると含水し、マイクロホンの音響特性を低下させる。
【0005】
そこで本開示の目的は、含水による音響特性の低下を抑制できるマイクロホン用風防を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態において、マイクロホン用風防は、マイクロホンを囲繞するための多孔質の周壁を有し、鉛直方向下側に配置される前記周壁の軸方向端部が、それぞれ前記鉛直方向下側に向けて細くなる先細部を有するマイクロホン用風防である。このような構成によれば、周壁が含水した時に水を重力により先細部を通じて下側に効率的に排出することができるので、含水量を抑制し、もって音響特性の低下を抑制することができる。先細部は例えば、鉛直方向下側に向けて徐々に又は段差状に細くなる構成とすることができる。
【0007】
一実施形態において、マイクロホン用風防は、複数の前記先細部を有する。このような構成によれば、周壁が含水した時に水を重力により複数の先細部を通じて下側に効率的に排出することができるので、含水による音響特性の低下をより一層抑制することができる。複数の先細部は例えば周方向に並べて設けられる。
【0008】
幾つかの実施形態において、マイクロホン用風防は、マイクロホンを囲繞するための多孔質の周壁を有し、前記周壁が、鉛直方向上側に配置される端部から鉛直方向下側に配置される端部まで前記周壁を軸方向に貫通する貫通路を有するマイクロホン用風防である。このような構成によれば、周壁が含水した時に周壁から蒸発した水蒸気を貫通路を通じて効率的に排出することができるので、乾燥を促進し、含水量を抑制することができる。また、径方向外側から吹き付けられ、周壁の径方向外側部分と貫通路からなる空気層を通り抜け、周壁の径方向内側部分の外周面で弾かれた水を、重力により貫通路を通じて下側に効率的に排出することができるので、含水量をより一層抑制することができる。さらに、周壁が、径方向に貫通路からなる空気層を挟む二重構造を形成することができるので、径方向外側から吹き付けられる水に対する防水性を強化することができる。周壁は、例えば周方向に並ぶ複数の貫通路を有してもよい。
【0009】
幾つかの実施形態において、マイクロホン用風防は、マイクロホンを囲繞するための多孔質の周壁を有し、前記周壁が、径方向に空気層を挟む二重構造を有するマイクロホン用風防である。このような構成によれば、径方向外側から吹き付けられる水に対する防水性を強化することができる。
【0010】
一実施形態において、マイクロホン用風防は、前記周壁と前記周壁の鉛直方向上側の端部に連なる多孔質の天壁とからなるマイクロホン用風防である。このような構成によれば、マイクロホン用風防全体の含水量を効率的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、含水による音響特性の低下を抑制できるマイクロホン用風防を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】比較例のマイクロホン用風防を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態のマイクロホン用風防を示す上面図である。
【
図3】
図2に示すマイクロホン用風防の側面図である。
【
図4】
図2に示すマイクロホン用風防の底面図である。
【
図6】
図2に示すマイクロホン用風防の先細部の作用を説明するための説明図である。
【
図7】第2実施形態のマイクロホン用風防を示す上面図である。
【
図8】
図7に示すマイクロホン用風防の側面図である。
【
図9】第3実施形態のマイクロホン用風防を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に例示説明する。
【0014】
実施形態を説明する前にまず比較例を説明する。
【0015】
図1に示すように、比較例のマイクロホン用風防1(以下、単に風防1ともいう)は、風切音を抑制するためにマイクロホン2を囲繞する多孔質体である。より具体的には、風防1は、マイクロホン2を囲繞するための多孔質の周壁1aと、鉛直方向上側(以下、単に上側ともいう)に配置される周壁1aの軸方向端部(以下、単に上側の端部ともいう)に連なる多孔質の天壁1bと、からなる。
【0016】
風防1でマイクロホン2を囲繞するための構造(以下、音響機器構造ともいう)は、例えば、風防1、マイクロホン2、アンプ3、連結部材4及び配線5を有する。アンプ3は棒状であり、上側の端部にマイクロホン2を保持する。連結部材4は環状をなし、中央の開口部に配置されるアンプ3と風防1の周壁1aの内周面とを連結する。配線5は連結部材4よりも鉛直方向下側(以下、単に下側ともいう)でアンプ3に連なる。音響機器構造は、例えば、騒音計などの音を測定する機器(音響センサー)に適する。
【0017】
風防1は、例えば、ポリウレタンなどの材料を発泡させた発泡材や、金網などからなる。風防1は多孔質であることにより、外部の音(空気振動)をマイクロホン2まで伝える通気性を有する。しかし風防1はこの多孔質性により、雨粒などの水を吸収して保持する性質(含水性)と、水を通過させる性質(通水性)を有する。風防1が含水状態になると、音が伝わる孔が水で塞がれてマイクロホン2の音響特性が低下してしまうため、含水量を抑制できる追加的構造が望まれる。また、周壁1aの径方向外側から吹き付けられる水がマイクロホン2まで侵入すると故障を招く虞があるため、通水性を抑制、つまり防水性を強化できる追加的構造が望まれる。
【0018】
以下に説明する実施形態の風防1は、比較例について上述した構造に加えて、含水量抑制機能と防水性強化機能の少なくとも一方を発揮できる追加的構造を有する。
【0019】
一実施形態として、まず第1実施形態を説明する。
【0020】
図2~
図6に示す第1実施形態の風防1は、含水量抑制機能を発揮できる第1の追加的構造として、下側に配置される周壁1aの軸方向端部(以下、単に下側の端部ともいう)が、それぞれ下側に向けて細くなる複数の先細部6を有する構造を有する。各々の先細部6の水平断面積は下側に向けて徐々に減少する。したがって、周壁1aに含まれる水の圧力は、各々の先細部6内において下側に向けて徐々に増加する。その結果、
図6に示すように、周壁1aに含まれる水を重力により下側の端部で各々の先細部6を通じて周壁1aから下側に効率的に排出することができるので、含水量を抑制し、もって音響特性の低下を抑制することができる。複数の先細部6は、図示するように、例えば周方向に並べて設けられる。先細部6の数は図示するような9個に限らず、1個以上であればよい。先細部6は水平断面積が下側に向けて徐々に減少する構成に限らず、例えば、水平断面積が下側に向けて段差状に減少する構成としてもよい。つまり、先細部6は例えば、下側に向けて徐々に又は段差状に細くなる構成とすることができる。
【0021】
また風防1は、含水量抑制機能と防水性強化機能の両方を発揮できる第2の追加的構造として、周壁1aが、周方向に並べて設けられそれぞれ周壁1aを上側の端部から下側の端部まで軸方向に貫通する複数の貫通路7を有する構造を有する。したがって、周壁1aが含水した時に周壁1aから蒸発した水蒸気を各々の貫通路7を通じて効率的に排出することができるので、乾燥を促進し、含水量を抑制することができる。また、
図5に示すように、径方向外側から吹き付けられ、周壁1aの径方向外側部分9と貫通路7からなる空気層8を通り抜け、周壁1aの径方向内側部分10の外周面で弾かれた水を、重力により貫通路7を通じて下側に効率的に排出することができるので、含水量をより一層抑制することができる。さらに、周壁1aが、各々の貫通路7の周辺部において、径方向に貫通路7からなる空気層8を挟む二重構造を形成することができるので、径方向外側から吹き付けられる水に対する防水性を強化することができる。貫通路7の数は図示するような9個に限らず、1個以上であればよい。各々の貫通路7の形状は図示するような上面視円形状に限らず、例えば楕円形状や多角形状としてもよい。複数の貫通路7は周方向に並べて設けられる配置に限らない。なお、各々の貫通路7の下側の端部は、例えば、図示するように複数の先細部6上で開口する。
【0022】
第1実施形態の風防1は、第1の追加的構造と第2の追加的構造の両方を有する構成に限らず、いずれか一方のみを有する構成としてもよい。
【0023】
次に第2実施形態を説明する。
【0024】
図7~
図8に示す第2実施形態の風防1は、貫通路7の数と配置が異なる点を除いて第1実施形態の風防1と同一の構成を有する。より具体的には、第2実施形態では周壁1aが、周方向に並べて設けられる複数(例えば、図示するような9個)の貫通路7からなる第1貫通路群11と、第1貫通路群11よりも径方向外側において周方向に並べて且つ第1貫通路群11から周方向にずらして設けられる複数(例えば、図示するような9個)の貫通路7からなる第2貫通路群12と、を有する。このような構成によれば、含水量抑制機能と防水性強化機能の両方を発揮することができる。また、図示するように、二重構造を第1貫通路群11と第2貫通路群12によって全周に亘って形成した場合には、防水性強化機能をより一層強めることができる。なお、各々の貫通路7の下側の端部は、例えば、図示するように複数の先細部6上で開口する。
【0025】
次に第3実施形態を説明する。
【0026】
図9に示す第3実施形態の風防1は、防水性強化機能を発揮できる第3の追加的構造として、周壁1aが、径方向に空気層8を挟む二重構造を有する構造を有する。より具体的には、風防1は、周壁1aの径方向外側部分9と天壁1bの軸方向外側部分を形成する外側部材13と、周壁1aの径方向内側部分10と天壁1bの軸方向内側部分を形成する内側部材14と、からなり、周壁1aの径方向外側部分9と周壁1aの径方向内側部分10との間に空気層8を形成する。このような構成によれば、二重構造により防水性強化機能を発揮することができる。
【0027】
本開示は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0028】
したがって、前述した実施形態の風防1は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0029】
周壁1aの外周面の形状は図示するような上面視円形状に限らず、例えば、上面視楕円形状、上面視多角形状、上面視星形状など、適宜設定できる。風防1は周壁1aと天壁1bからなる構成に限らない。アンプ3や連結部材4の形状等は適宜設定できる。
【符号の説明】
【0030】
1 マイクロホン用風防
1a 周壁
1b 天壁
2 マイクロホン
3 アンプ
4 連結部材
5 配線
6 先細部
7 貫通路
8 空気層
9 周壁の径方向外側部分
10 周壁の径方向内側部分
11 第1貫通路群
12 第2貫通路群
13 外側部材
14 内側部材