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特開2023-81107MEMSセンサおよびMEMSセンサの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081107
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】MEMSセンサおよびMEMSセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20230602BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230602BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20230602BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
B81B3/00
B81C1/00
G01P15/08 101C
G01P15/08 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194811
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 宜久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有真
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,マーティン ウィルフリード
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA07
3C081AA17
3C081BA04
3C081BA07
3C081BA22
3C081BA32
3C081BA44
3C081BA46
3C081BA48
3C081BA53
3C081CA02
3C081CA13
3C081CA19
3C081CA20
3C081CA23
3C081CA27
3C081CA29
3C081CA32
3C081CA40
3C081DA03
3C081DA25
3C081DA26
3C081DA30
3C081DA43
3C081EA02
(57)【要約】
【課題】分離部のシームに沿った破壊を抑制できるMEMSセンサを提供する。
【解決手段】MEMSセンサ1は、空洞11を有する導電性のデバイス側基板10と、空洞11内に配置されたセンサ部5と、空洞11の周壁部12,13からセンサ部5に向かうX方向に延びてセンサ部5に接続されており、センサ部5を支持する、第1支持部15及び第2支持部16と、平面視において第1支持部15及び第2支持部16をY方向に横断しており、第1支持部15及び第2支持部16をX方向に電気的に絶縁する、分離部50と、を備えている。分離部50は、デバイス側基板10に対して厚み方向に凹んだトレンチ51と、トレンチ51の内壁面上に形成されたトレンチ絶縁層52と、トレンチ絶縁層52上にさらに形成されており、X方向に対向する部分のうち少なくとも一部がX方向に結合されている、トレンチ結合層53とを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に空洞を有する導電性のデバイス側基板と、
前記空洞内に配置されたMEMS電極と、
前記空洞の周壁部から前記MEMS電極に向かう第1方向に延びて前記MEMS電極に接続されており、前記MEMS電極を支持する、支持部と、
平面視において前記支持部を前記第1方向に交差する第2方向に横断しており、前記支持部を、前記MEMS電極側と前記デバイス側基板側とに分離して前記第1方向に電気的に絶縁する、分離部と、
を備え、
前記分離部は、
前記デバイス側基板に対して厚み方向に凹んだトレンチと、
前記トレンチの内壁面上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上にさらに形成されており、前記第1方向に対向する部分のうち少なくとも一部が前記第1方向に結合されている、結合層と
を有しているMEMSセンサ。
【請求項2】
前記絶縁層は、シリコン酸化膜である、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項3】
前記結合層は、ポリシリコンである、
請求項1又は2に記載のMEMSセンサ。
【請求項4】
前記結合層は、前記トレンチのうち少なくとも口元側において結合されている、
請求項1~3のいずれか1つに記載のMEMSセンサ。
【請求項5】
前記デバイス側基板に接続されて、該デバイス側基板との間に前記MEMS電極が収容される収容空間を構成する、リッド側基板と、
前記収容空間の外部において前記MEMS電極から電気信号を取り出すパッド部と、
前記MEMS電極と前記パッド部とを電気的に接続する導電経路と
をさらに備えており、
前記導電経路は、前記デバイス側基板に埋設された内側導電経路部を含んでいる、
請求項1~4のいずれか1つに記載のMEMSセンサ。
【請求項6】
厚み方向に空洞を有する導電性のデバイス側基板と、
前記空洞内に配置されたMEMS電極と、
前記デバイス側基板に接続されて、該デバイス側基板との間に前記MEMS電極が収容される収容空間を構成する、リッド側基板と、
前記収容空間の外部において前記MEMS電極から電気信号を取り出すパッド部と、
前記MEMS電極と前記パッド部とを電気的に接続する導電経路と
を備え、
前記導電経路は、前記デバイス側基板に埋設された内側導電経路部を含んでいる、MEMSセンサ。
【請求項7】
前記内側導電経路部は、
前記デバイス側基板に対して厚み方向に凹んだトレンチと、
前記トレンチの内壁面上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上にさらに形成された導電層と
を有している、
請求項6に記載のMEMSセンサ。
【請求項8】
前記絶縁層は、シリコン酸化膜である、
請求項7に記載のMEMSセンサ。
【請求項9】
前記導電層は、導電性のポリシリコンである、
請求項7又は8に記載のMEMSセンサ。
【請求項10】
前記デバイス側基板の厚み方向において、
前記内側導電経路部の表面は、前記デバイス側基板の表面と面一である、
請求項7~9のいずれか1つに記載のMEMSセンサ。
【請求項11】
前記内側導電経路部は、平面視において、前記収容空間の内側に対向する位置から前記収容空間の外側に対向する位置に延びている、
請求項7~10のいずれか1つに記載のMEMSセンサ。
【請求項12】
前記デバイス側基板の表面と前記内側導電経路部の表面とにわたって形成された主絶縁層と、
前記主絶縁層上にさらに形成されており、前記リッド側基板に接合される、接合層と、
をさらに備えており、
平面視で、前記内側導電経路部は前記接合層を横断している、
請求項7~11のいずれか1つに記載のMEMSセンサ。
【請求項13】
前記内側導電経路部は、前記接合層を横断する第1方向に延びており、前記第1方向に交差する第2方向に対向する前記内壁面を有しており、
前記内壁面上に形成された前記絶縁層上にさらに形成された前記導電層は、少なくとも一部が前記第2方向に結合されている、
請求項12に記載のMEMSセンサ。
【請求項14】
前記導電層は、前記トレンチのうち少なくとも口元側において結合されている、
請求項12又は13に記載のMEMSセンサ。
【請求項15】
前記パッド部は、前記主絶縁層上に形成されており、
前記主絶縁層上に形成されており、前記パッド部に接続されたパッド配線第1端部から平面視で前記内側導電経路部に対向するパッド配線第2端部まで延びる、パッド配線と、
前記主絶縁層を貫通しており前記パッド配線第2端部と前記内側導電経路部とを電気的に接続する、パッド配線コンタクトと
を更に備えた、
請求項12~14のいずれか1つに記載のMEMSセンサ。
【請求項16】
前記空洞の周壁部から前記MEMS電極に向かう第3方向に延びて前記MEMS電極に接続されており、前記MEMS電極を支持する、支持部と、
平面視において前記支持部を前記第3方向に交差する第4方向に横断しており、前記支持部を、前記MEMS電極側と前記デバイス基板側とに分離して前記第3方向に電気的に絶縁する、分離部と、
前記主絶縁層上に形成されており、平面視で、前記支持部のうち前記分離部よりも前記MEMS電極側に対向するMEMS電極配線第1端部から、前記内側導電経路部に対向するMEMS電極配線第2端部まで延びる、MEMS電極配線と、
前記主絶縁層を貫通しており、前記支持部のうち前記MEMS電極側に位置する部分と前記MEMS電極配線第1端部とを電気的に接続するMEMS電極配線第1コンタクトと、
前記主絶縁層を貫通しており、前記内側導電経路部と前記MEMS電極配線第2端部とを電気的に接続するMEMS電極配線第2コンタクトと
をさらに備えた、
請求項12~15のいずれか1つに記載のMEMSセンサ。
【請求項17】
前記分離部は、
前記デバイス側基板に対して厚み方向に凹んだトレンチと、
前記トレンチの内壁面上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上にさらに形成されており、前記第3方向に対向する部分のうち少なくとも一部が前記第3方向に結合されている、結合層と
を有している、
請求項16に記載のMEMSセンサ。
【請求項18】
デバイス側基板において、MEMS電極から第1方向に延びる導電経路を前記第1方向に交差する第2方向に横断するトレンチを形成し、
前記トレンチの内壁面上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上にさらに結合層を、前記第1方向に対向する部分のうち少なくとも一部が前記第1方向に結合するようにそれぞれ形成し、
前記MEMS電極を覆うように前記デバイス側基板にリッド側基板を接合する、
MEMSセンサの製造方法。
【請求項19】
前記結合層をアニール処理する、
請求項18に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項20】
デバイス側基板において、MEMS電極から電気信号を取出すパッド部まで第1方向に延びる導電経路の一部に、前記第1方向に沿って延びるトレンチを形成し、
前記トレンチの内壁面上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に導電層をさらに形成し、
前記MEMS電極を覆うように前記デバイス側基板にリッド側基板を接合する、
MEMSセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSセンサおよびMEMSセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デバイス基板の一部により形成された櫛歯状の固定電極および櫛歯状の可動電極を有する加速度センサが開示されている。この固定電極及び可動電極の各歯の基端部には、絶縁膜が埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-217473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記絶縁膜によって、固定電極及び可動電極の各歯を電気的に絶縁する分離部が構成されている。分離部は、該分離部の両側に位置する部分を電気的に絶縁する機能を有する他、両者を機械的に接続する機能をも有する。すなわち、分離部はアイソレーションジョイントとも称される場合がある。
【0005】
分離部は、デバイス基板に対して厚み方向に凹んでおり平面視で電極を横断する方向に延びるトレンチを形成し、トレンチの内壁面上に絶縁層を形成することによって構成されている。絶縁層は、平面視において、トレンチの内周壁面に沿って周方向に連続している。分離部の幅方向の中央部には、絶縁層が互い幅方向に対向しておりトレンチに沿って延びるシームが構成される。分離部はシームに沿って破断するおそれがある。
【0006】
本発明は、分離部のシームに沿った破壊を抑制できるMEMSセンサ及びMEMSセンサを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、
厚み方向に空洞を有する導電性のデバイス側基板と、
前記空洞内に配置されたMEMS電極と、
前記空洞の周壁部から前記MEMS電極に向かう第1方向に延びて前記MEMS電極に接続されており、前記MEMS電極を支持する、支持部と、
平面視において前記支持部を前記第1方向に交差する第2方向に横断しており、前記支持部を、前記MEMS電極側と前記デバイス側基板側とに分離して前記第1方向に電気的に絶縁する、分離部と、
を備え、
前記分離部は、
前記デバイス側基板に対して厚み方向に凹んだトレンチと、
前記トレンチの内壁面上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上にさらに形成されており、前記第1方向に対向する部分のうち少なくとも一部が前記第1方向に結合されている、結合層と
を有しているMEMSセンサを提供する。
【発明の効果】
【0008】
この構成によれば、分離部は第1方向に対向する絶縁層の間のシームが結合層によって第1方向に結合されているので、分離部のシームに沿った破壊を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本開示の一実施形態に係るMEMSセンサの概略的な平面図である。
図2図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3はデバイス側基板アセンブリの製造工程の一部を示す断面図である。
図4図4図3の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図5図5図4の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図6図6図5のA部の拡大図である。
図7図7図6のVII-VII線に沿ったトレンチの断面図である。
図8図8図5の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図9図9図8のIX-IX線に沿ったトレンチの断面図である。
図10図10図8の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図11図11図10のXI-XI線に沿ったトレンチの断面図である。
図12図12図10の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図13図13図12の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図14図14図13の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図15図15図14の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図16図16図15の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図17図17図16の次工程を示すデバイス側基板アセンブリの断面図である。
図18図18はリッド側基板アセンブリの製造工程の一部を示す断面図である。
図19図19図18の次工程を示すリッド側基板アセンブリの断面図である。
図20図20図19の次工程を示すリッド側基板アセンブリの断面図である。
図21図21図20の次工程を示すリッド側基板アセンブリの断面図である。
図22図22はデバイス側基板アセンブリにリッド側基板アセンブリを接合する工程の一部を示す断面図である。
図23図23図22の次工程を示すデバイス側基板アセンブリ及びリッド側基板アセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係るMEMSセンサ1を概略的に示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。本実施形態に係るMEMSセンサ1は静電容量型加速度センサである。図1及び図2を参照して、MEMSセンサ1は、センサ部5を有するデバイス側基板アセンブリ2と、デバイス側基板アセンブリ2に接合されて該デバイス側基板アセンブリ2との間にセンサ部5を収容する収容空間Zを構成するリッド側基板アセンブリ3とを有している。図1において、リッド側基板アセンブリ3は一部が透過して示されている。
【0012】
デバイス側基板アセンブリ2は、平面視矩形状のデバイス側基板10を含んでいる。以下の説明では、便宜上、平面視における、デバイス側基板10の長手方向をX方向、短手方向をY方向し、デバイス側基板10の厚み方向をZ方向とそれぞれ称する。換言すれば、Y方向は平面視においてX方向に直交しており、Z方向はX方向及びY方向の両方に直交している。図1における、右側を+X方向、左側を-Y方向、上側を+Y方向、下側を-Y方向とそれぞれ称する。図2における、上側を+Z方向、下側を-Z方向と称する。
【0013】
リッド側基板アセンブリ3は、デバイス側基板10に対してX方向に小さいリッド側基板90を有している。
【0014】
デバイス側基板10は、導電性シリコン基板により構成されている。図2に示されるようにデバイス側基板10は、+Z方向側の第1主面10aと-Z方向側の第2主面10bとを含んでいる。デバイス側基板10は第1主面10aに対して-Z方向に凹んだ空洞11を有している。
【0015】
図1に示されるように、空洞11は、X方向の両端部におけるY方向の中央部が、Y方向及びZ方向に延びる第1周壁部12及び第2周壁部13によって区画されており、底部がX方向及びY方向に延びる底壁部14によって区画されている。
【0016】
空洞11の第1周壁部12には、-X方向に延びてセンサ部5に接続されており、センサ部5を+X方向側から支持する第1支持部15が形成されている。空洞11の第2周壁部13には、+X方向に延びてセンサ部5に接続されており、センサ部5を-X方向側から支持する第2支持部16が形成されている。第1支持部15及び第2支持部16はそれぞれ、デバイス側基板10の一部によってY方向に一対に形成されている。
【0017】
図2に示されるように、空洞11には、第1主面10a側の表層部にセンサ部5が配置されている。図1に示されるように、センサ部5は、MEMS電極であって、デバイス側基板10の一部に形成されている。具体的には、センサ部5は、+X方向側に位置する櫛歯状の可動電極20と、-X方向側に位置しており可動電極20の各歯に組み合わされる櫛歯状の固定電極30とを有している。可動電極20は第1支持部15によって底壁部14に対して+Z方向に浮いた状態で支持されている。固定電極30は第2支持部16によって底壁部14に対して+Z方向に浮いた状態で支持されている。
【0018】
可動電極20は、+X方向側の端部にデバイス側基板10の一部によって形成されたばね機構21を有している。可動電極20は、ばね機構21を介してX方向、Y方向及びZ方向に変位可能である。ばね機構21は+X方向側の端部が2つに分岐しており、それぞれ一対の第1支持部15に接続されている。
【0019】
固定電極30は、+Y方向側半部に位置する第1固定電極31と、-Y方向側半部に位置する第2固定電極32とを有している。第1固定電極31及び第2固定電極32はそれぞれ一対の第2支持部16に接続されている。一対の第2支持部16には+Z側の表面に酸化膜18がそれぞれ形成されている。酸化膜18によって、第1固定電極31及び第2固定電極32はZ方向に撓みが生じており、これによってセンサ部5による静電容量のZ方向における変化の検出性が向上する。
【0020】
センサ部5は、加速度を受けて可動電極20が変位すると、可動電極20の変位に応じた可動電極20及び固定電極30間の静電容量の変化が電気信号として後述するパッド部40から取り出される。
【0021】
一対の第1支持部15それぞれには、第1支持部15をMEMS電極側とデバイス側基板10側とに分離してX方向に電気的に絶縁する分離部50が形成されている。分離部50は、平面視で第1支持部15を横断するようにX方向に延びている。図2に示されるように、分離部50は、第1支持部15の表面(+Z方向側)から裏面(-Z方向側)まで至っており、本実施形態ではさらに空洞11内に-Z方向へ突出している。
【0022】
分離部50は、デバイス側基板10に対してZ方向に凹んだトレンチ51と、トレンチの内壁面上に周方向に連続的に形成されたトレンチ絶縁層52と、トレンチ絶縁層52上にさらに周方向に連続的に形成されたトレンチ結合層53とを有している。トレンチ結合層53は少なくともX方向に対向する部分が互いに結合されている。トレンチ絶縁層52はシリコン酸化膜によって構成されている。トレンチ結合層53はポリシリコンによって構成されている。トレンチ結合層53は、トレンチ51のうち少なくともデバイス側基板10の第1主面10a側において互いに結合されている。
【0023】
図1に示されるように、一対の第2支持部16にもそれぞれ、第2支持部16をX方向に電気的に絶縁する分離部50が同様に形成されている。第2支持部16において、分離部50は、酸化膜18よりも-X方向側に位置している。
【0024】
デバイス側基板10の第1主面10a上には、可動電極20及び固定電極30を除く領域において、主絶縁層17が形成されている。主絶縁層17は、例えばシリコン酸化膜である。主絶縁層17上には、収容空間Zの外側に複数のパッド部40が形成されている。パッド部40は導電性を有する電極パッドである。パッド部40は、本実施形態ではAlSiである。パッド部40は、導電経路60を介してセンサ部5に電気的に接続されている。
【0025】
パッド部40は、+X方向側の端部に位置する第1パッド部41と、-X方向側の端部において+Y方向側に位置する第2パッド部42と、-X方向の端部において-Y方向側に位置する第3パッド部43とを有している。第1パッド部41、第2パッド部42及び第3パッド部43はそれぞれ、導電経路60を介して、可動電極20、第1固定電極31及び第2固定電極32に電気的に接続されている。
【0026】
以下、第1パッド部41と可動電極20とを接続する導電経路60を例にとって説明する。導電経路60は、センサ部5に接続されるMEMS電極配線61と、パッド部40に接続されるパッド配線62と、MEMS電極配線61とパッド配線62とを接続する内側導電経路部70とを含んでいる。
【0027】
図2に示されるように、MEMS電極配線61は、収容空間Zにおいて、主絶縁層17上に形成されている。MEMS電極配線61は、X方向に延びており、センサ部5側に位置するMEMS電極配線第1端部61aとセンサ部5とは反対側に位置するMEMS電極配線第2端部61bとを有している。MEMS電極配線第1端部61aは、第1支持部15のうち分離部50よりもセンサ部5側に位置する部分に対して主絶縁層17を間に挟んでZ方向に対向している。MEMS電極配線第2端部61bは、分離部50に対してセンサ部5とは反対側に位置する部分に対して主絶縁層17を間に挟んでZ方向に対向している。すなわち、MEMS電極配線61は、平面視において分離部50をX方向に横断している。
【0028】
パッド配線62は、収容空間Zの外側において、主絶縁層17上に形成されている。パッド配線62は、X方向に延びており、第1パッド部41に接続されたパッド配線第1端部62aとセンサ部5側に位置するパッド配線第2端部62bとを有している。
【0029】
内側導電経路部70は、収容空間Zの内側から外側へX方向に延びておりデバイス側基板10の第1主面10aに対して-Z方向に凹んだトレンチ71と、トレンチ71の内壁面上に形成されたトレンチ絶縁層72と、トレンチ絶縁層72上に形成されたトレンチ導電層73とを含んでいる。内側導電経路部70は、収容空間Zの内側に位置する内側導電経路第1端部70aと、収容空間Zの外側に位置する内側導電経路第2端部70bとを有している。内側導電経路第1端部70aは、平面視においてMEMS電極配線第2端部61bに対してZ方向に対向している。内側導電経路第2端部70bは、平面視においてパッド配線第2端部62bに対してZ方向に対向している。
【0030】
トレンチ絶縁層72はシリコン酸化膜である。トレンチ導電層73は導電性のポリシリコンである。内側導電経路部70は、デバイス側基板10の第1主面10aとZ方向に面一状に形成されている。
【0031】
主絶縁層17には、MEMS電極配線第1端部61aに対向した位置にZ方向に貫通した第1コンタクト孔17aと、MEMS電極配線第2端部61b及び内側導電経路第1端部70a間の位置にZ方向に貫通した第2コンタクト孔17bと、パッド配線第2端部62b及び内側導電経路第2端部70b間の位置にZ方向に貫通した第3コンタクト孔17cとが形成されている。
【0032】
第1コンタクト孔17aには第1コンタクト81が埋め込まれている。第2コンタクト孔17bには第2コンタクト82が埋め込まれている。第3コンタクト孔17cには第3コンタクト83が埋め込まれている。第1~第3コンタクト81~83は導電性を有する部材である。第1~第3コンタクト81~83は本実施形態ではAlSiである。
【0033】
したがって、MEMS電極配線61は、第1コンタクト81を介してセンサ部5に接続されており、第2コンタクト82を介して内側導電経路部70に接続されている。パッド配線62は、第3コンタクト83を介して内側導電経路部70に接続されている。したがって、導電経路60は、収容空間Zの内側における主絶縁層17上のMEMS電極配線61と、収容空間Zを内側から外側にわたっておりデバイス側基板10の厚み方向内側に位置する、すなわちデバイス側基板10に埋設された、内側導電経路部70と、収容空間Zの外側における主絶縁層17上のパッド配線62とによって構成されている。
【0034】
図1に示されるように、主絶縁層17上には、収容空間Zの周縁部に沿って矩形枠状の接合層19が形成されている。接合層19は、平面視において内側導電経路部70をY方向に横断している。ここで、内側導電経路部70は、上述したように、デバイス側基板10の第1主面10aに対して面一状に形成されているので、デバイス側基板10及び内側導電経路部70にわたって形成される主絶縁層17は第1主面10aに沿って凹凸がなく平坦である。このため、主絶縁層17上に形成される接合層19も平坦である。
【0035】
以上説明したように、デバイス側基板アセンブリ2は、デバイス側基板10と、センサ部5と、パッド部40と、分離部50と、導電経路60とによって少なくとも構成されている。
【0036】
図2に示されるように、リッド側基板90は、シリコン基板により構成されている。リッド側基板90は、デバイス側基板アセンブリ2側(-Z方向)に面する第1主面90aと、反対側(+Z方向)に面する第2主面90bとを有している。リッド側基板90は、第1主面90aから-Z方向に突出しており平面視における外周縁部に沿う環状の周縁堤91を有している。本実施形態では周縁堤91は、デバイス側基板10の接合層19に沿う矩形状に形成されている。
【0037】
リッド側基板90は、周縁堤91の内側に、凹所92が形成されている。凹所92は、デバイス側基板10にZ方向に対向する部分を選択的に+Z方向に掘り下げることによって形成されている。凹所92の位置や形状は、図2に示したものに限定されず、センサ部5の形状を考慮して適宜決定することができる。
【0038】
周縁堤91の-Z方向側に面する頂面には、接合パッド93が形成されている。接合パッド93は、周縁堤91の全周に亘って形成されている。
【0039】
デバイス側基板アセンブリ2とリッド側基板アセンブリ3とを接合する接合材94は、周縁堤91に沿って矩形環状に形成されている。接合材94は、例えば、導電性粒子を含有するガラスフリットである。接合材94は、デバイス側基板アセンブリ2に対して接合層19に接合されており、リッド側基板アセンブリ3に対して接合パッド93に接合されている。接合材94によって、デバイス側基板アセンブリ2とリッド側基板アセンブリ3とが接合されて、こららの間にセンサ部5が収容される収容空間Zが構成される。
【0040】
次に、MEMSセンサ1の製造方法について説明する。まず、図3図17を参照して、デバイス側基板アセンブリ2の製造方法について説明する。図3に示されるように、半導体基板の元基板である第1半導体ウエハ101が用意される。第1半導体ウエハ101は、導電性を有するウエハであり、例えば導電性シリコンウエハである。
【0041】
第1半導体ウエハ101は、デバイス側基板10の第1主面10a及び第2主面10bにそれぞれ対応する第1主面101a及び第2主面101bを有している。以下において、第1半導体ウエハ101の第1主面101aのうち、接合材94に対応する領域をシール領域Esとし、シール領域Esによって囲まれた領域をデバイス領域Edとし、シール領域Esの外側の領域をパッド領域Epと称する。
【0042】
まず、第1半導体ウエハ101の第1主面101a全体が熱酸化される。これにより、第1半導体ウエハ101の第1主面101a上に第1熱酸化膜102が形成される。次いで、第1熱酸化膜102がパターニングされて、エッチングにより分離部50のトレンチ51及び内側導電経路部70のトレンチ71を形成すべき領域に開口が形成される。次いで、第1熱酸化膜102をハードマスクとする異方性エッチングによって第1半導体ウエハ101が掘り下げられてトレンチ51,71が形成される。すなわち、分離部50のトレンチ51と、内側導電経路部70のトレンチ71とが同時に形成される。
【0043】
次に、図4に示されるように、トレンチ51,71の内壁面を熱酸化することにより、トレンチ51,71の内壁面にトレンチ熱酸化膜103(トレンチ絶縁層52,72)が形成される。すなわち、分離部50のトレンチ絶縁層52と、内側導電経路部70のトレンチ絶縁層72とが同時に形成される。
【0044】
次に、図5に示されるように、第1半導体ウエハ101の第1主面101a側から全面的に導電性のポリシリコン104をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により堆積させる。これにより、分離部50のトレンチ結合層53と、内側導電経路部70のトレンチ導電層73とが同時に形成される。次いで、第1半導体ウエハ101の第1主面101a側をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により研磨して表面のポリシリコン104を除去して、第1主面101a上の第1熱酸化膜102を表出させる。
【0045】
ここで、図6及び図7を参照して、トレンチ51,71におけるトレンチ熱酸化膜103上に堆積したポリシリコン104について説明する。図6は、図5のA部の拡大図であり、図7図6のVII-VII線に沿ったトレンチ51の断面図である。図6及び図7に示されるように、トレンチ熱酸化膜103は、トレンチ51の内壁面55にわたって連続的に形成されている。
【0046】
具体的には、トレンチ熱酸化膜103は、トレンチ51の+X方向側の第1側壁55aに形成されたトレンチ第1熱酸化膜103aと、トレンチ51の-X方向側の第2側壁55bに形成されたトレンチ第2熱酸化膜103bと、トレンチ51の+Y方向側の第3側壁55cに形成されたトレンチ第3熱酸化膜103cと、トレンチ51の-Y方向側の第4側壁55dに形成されたトレンチ第4熱酸化膜103dと、トレンチ51の-Z方向側の底壁55eに形成されたトレンチ第5熱酸化膜103eとを、一体的に有している。トレンチ第1熱酸化膜103aとトレンチ第2熱酸化膜103bとはX方向に離間しており、トレンチ第3熱酸化膜103cとトレンチ第4熱酸化膜103dとはY方向に離間している。
【0047】
ポリシリコン104は、トレンチ第1熱酸化膜103a上に堆積した第1ポリシリコン104aと、トレンチ第2熱酸化膜103b上に堆積した第2ポリシリコン104bと、トレンチ第3熱酸化膜103c上に堆積した第3ポリシリコン104cと、トレンチ第4熱酸化膜103d上に堆積した第3ポリシリコン104dと、トレンチ第5熱酸化膜103e上に堆積した第5ポリシリコン104eとを、一体的に有している。本実施形態では、第1ポリシリコン104aと第2ポリシリコン104bとがX方向に互いに当接しており、両者によってY方向に延びるシーム110が構成されている。
【0048】
ここで、本実施形態では、アニール処理が実施されて、ポリシリコン104の再配列及び/又は再結合が促進される結果、第1ポリシリコン104aと第2ポリシリコン104bとが互いにX方向に結合されて、少なくとも第1主面101a側においてシーム110が強固に結合する。図示は省略するが、トレンチ71の断面も、トレンチ51の断面に対してX方向からY方向に変更する点を除いて同様に構成されており、その説明を省略する。
【0049】
次に、図8に示されるように、第1熱酸化膜102がパターニングされて、固定電極30の基端部に対応する部分を除いてエッチングにより第1熱酸化膜102が除去される。これにより、酸化膜18が形成される。
【0050】
図9は、図8のIX-IX線に沿ったトレンチ71をY方向に横断する断面図である。図9に示されるように、トレンチ71の表面は、第1熱酸化膜102が除去された第1半導体ウエハ101の第1主面101aと面一状に形成されている。
【0051】
次に、図10に示されるように、例えばCVD法によって、第1半導体ウエハ101の第1主面101a側の表面全体に酸化シリコン(SiO)である第1絶縁膜105(主絶縁層17)を堆積させる。次いで、第1絶縁膜105がフォトリソグラフィ及びエッチングにより選択的に除去されて、第1~第3コンタクト孔17a~17cが形成される。
【0052】
図11は、図10のXI-XI線に沿ったトレンチ71をY方向に横断する断面図である。図11に示されるように、第1半導体ウエハ101の第1主面101aとトレンチ71の表面とが面一状に形成されているため、これらにわたって堆積される第1絶縁膜105も平坦に形成されている。これによって、第1絶縁膜105による内側導電経路部70のパッシベーションカバレッジが向上するので、Y方向に隣り合う内側導電経路部70が相互に導通することが防止される。
【0053】
次に、図12に示されるように、第1絶縁膜105上にメタル層106がPVD(Physical Vapor Deposition)法により堆積される。このとき、第1~第3コンタクト孔17a~17cにもメタル層106が積層されて、第1~第3コンタクト81~83が形成される。メタル層106は、導電性を有する金属である。第1~第3コンタクト81~83は、本実施形態ではAlSiである。次いで、メタル層106はフォトリソグラフィ及びエッチングにより選択的に除去されて、デバイス領域EdにMEMS電極配線61が形成され、シール領域Esに接合層19が形成され、パッド領域Epにパッド部40及びパッド配線62が形成される。
【0054】
次に、図13に示されるように、例えばCVD法によって、第1半導体ウエハ101の第1主面101a側の表面全体に、酸化シリコン(SiO)である第2絶縁膜107が形成される。次いで、第2絶縁膜107上に、所定領域以外の領域に開口を有するレジストが形成される。上記所定領域とは、デバイス領域Edにおける、可動電極20、固定電極30、第1支持部15及び第2支持部16を形成すべき領域を含む。上記レジストをマスクとして第1絶縁膜105及び第2絶縁膜107をエッチングにより除去する。
【0055】
次に、図14に示されるように、上記レジストをマスクとして、第1半導体ウエハ101のうち第1絶縁膜105及び第2絶縁膜107が除去された部位を異方性エッチングによりさらに掘り下げる。これにより、第1半導体ウエハ101の第1主面101a側の表層部が、可動電極20、固定電極30、第1支持部15及び第2支持部16の形状に形成されると共に、これらの間にトレンチ108が形成される。
【0056】
次に、図14のB部を拡大して示す図15に示されるように、例えばCVD法によって、第1半導体ウエハ101の第1主面101a側の表面全域と、トレンチ108の内面全域(トレンチ108を区画する側面及び底面)とに、酸化シリコン(SiO)である保護膜109が形成される。エッチバックにより、保護膜109は、トレンチ108の側壁上に形成された部分を除いて除去される。これにより、トレンチ108の側壁上のみに保護膜109が形成される。
【0057】
次に、図16に示されるように、第2絶縁膜107をマスクとする異方性エッチングにより、トレンチ108の底面がさらに掘り下げられる。これにより、トレンチ108の底部に、第1半導体ウエハ101の結晶面が露出した露出空間が形成される。この異方性エッチングに引き続いて、等方性エッチングによりトレンチ108の露出空間に反応性イオン及びエッチングガスが供給される。その結果、反応性イオンなどの作用により、第1半導体ウエハ101が、各露出空間を起点に第1半導体ウエハ101の厚さ方向にエッチングされつつ、第1半導体ウエハ101の表面に平行な方向にエッチングされる。
【0058】
これにより、デバイス領域Edにおいては、互いに隣接する全ての露出空間が一体化して、第1半導体ウエハ101の内部に空洞11が形成されると共に、空洞11において、可動電極20は、第1周壁部12に対して第1支持部15により支持されて浮いた状態とある。同様に、空洞11において、固定電極30は、第2周壁部13に対して第2支持部16により支持されて浮いた状態となる。また、分離部50が、第1支持部15及び第2支持部16をそれぞれY方向及びZ方向に横断しつつ、空洞11に突出するように形成される。
【0059】
最後に、図17に示されるように、エッチングにより、第2絶縁膜107及び保護膜109が除去されて、デバイス側基板アセンブリ2が完成する。
【0060】
次に、図18図21を参照して、リッド側基板アセンブリ3の製造方法について説明する。図18に示されるように、半導体基板の元基板である第2半導体ウエハ201が用意される。第2半導体ウエハ201は、導電性を有するウエハであり、例えば導電性シリコンウエハである。
【0061】
第2半導体ウエハ201は、リッド側基板90の第1主面90a及び第2主面90bにそれぞれ対応する第1主面201a及び第2主面201bを有している。第2半導体ウエハ201の第1主面201a上に全面的に例えばスパッタ法によって金属膜203を堆積させる。次いで、金属膜203がフォトリソグラフィ及びエッチングによりパターニングされて接合パッド93が形成される。
【0062】
次に、図19に示されるように、第2半導体ウエハ201の接合パッド93の内側の領域を、第1主面201a側から選択的に掘り下げることによって、凹所92が形成されると同時に周縁堤91が形成される。
【0063】
次に、図20に示されるように、選択的なエッチングによって、第2半導体ウエハ201の周縁堤91に対して凹所92とは反対側に、トレンチ202を形成する。トレンチ202は、デバイス側基板アセンブリ2にリッド側基板アセンブリ3を接合したときに、パッド部40を露出させるときに、第2半導体ウエハ201の端部を切断するために使用される。
【0064】
次に、図21に示されるように、接合パッド93上に、接合材94が印刷される。これにより、リッド側基板アセンブリ3が完成する。
【0065】
次に、デバイス側基板アセンブリ2とリッド側基板アセンブリ3とを接合する工程について説明する。図22に示されるように、デバイス側基板アセンブリ2に対してリッド側基板アセンブリ3の位置を合わせた後、リッド側基板アセンブリ3をデバイス側基板アセンブリ2に向けて押し付ける。これによって、接合材94の全体がデバイス側基板アセンブリ2の接合層19に密着し、両者が接合される。
【0066】
次に、図23に示されるように、リッド側基板アセンブリ3の不要部分(トレンチ202に対して凹所92とは反対側に位置する部分)を選択的に切断することによって、デバイス側基板アセンブリ2のパッド部40を露出させる。これにより、MEMSセンサ1が製造される。
【0067】
上記説明した実施形態に係るMEMSセンサ1及びその製造方法によれば次の効果が発揮される。
【0068】
(1)MEMSセンサ1は、厚み方向に空洞11を有する導電性のデバイス側基板10と、空洞11内に配置されたMEMS電極である可動電極20及び固定電極30を含むセンサ部5と、空洞11の第1周壁部12及び第2周壁部13からセンサ部5に向かうX方向に延びてセンサ部5に接続されており、センサ部5を支持する、第1支持部15及び第2支持部16と、平面視において第1支持部15及び第2支持部16をY方向に横断しており、第1支持部15及び第2支持部16をX方向に電気的に絶縁する、分離部50と、を備えている。分離部50は、デバイス側基板10に対して厚み方向に凹んだトレンチ51と、トレンチ51の内壁面上に形成されたトレンチ絶縁層52と、トレンチ絶縁層52上にさらに形成されており、X方向に対向する部分のうち少なくとも一部がX方向に結合されている、トレンチ結合層53とを有している。
【0069】
本構成によれば、分離部50はX方向に対向するトレンチ絶縁層52(トレンチ第1熱酸化膜103a及びトレンチ第2熱酸化膜103b)の間のシーム110がトレンチ結合層53によってX方向に結合されている。これによって、分離部50のシーム110に沿った破壊を抑制できる。
【0070】
(2)トレンチ絶縁層52をシリコン酸化膜により容易に形成できる。
【0071】
(3)トレンチ結合層53をポリシリコンにより容易に形成できる。
【0072】
(4)トレンチ結合層53は、トレンチ51のうち少なくとも第1半導体ウエハ101の第1主面101a側において結合されている。
本構成によれば、トレンチ51の口元側において、シーム110が少なくともX方向に結合されるので、底側で結合される場合に比して、分離部50のシームに沿った破壊をより一層抑制できる。
【0073】
(5)デバイス側基板10に接続されて、デバイス側基板10との間にセンサ部5が収容される収容空間Zを構成するリッド側基板90と、収容空間Zの外部においてセンサ部5から電気信号を取り出すパッド部40と、センサ部5とパッド部40とを電気的に接続する導電経路60とをさらに備えている。導電経路60は、デバイス側基板10に埋設された内側導電経路部70を含んでいる。
本構成によれば、導電経路60をデバイス側基板10に厚みの増大を抑制しつつ形成できる。
【0074】
(6)内側導電経路部70は、デバイス側基板10に対して厚み方向に凹んだトレンチ71と、トレンチ71の内壁面上に形成されたトレンチ絶縁層72と、トレンチ絶縁層72上にさらに形成されたトレンチ導電層73とを有している。
本構成によれば、内側導電経路部70を容易に構成できる。
【0075】
(7)トレンチ絶縁層72をシリコン酸化膜により容易に形成できる。
【0076】
(8)トレンチ導電層73を導電性のポリシリコンにより容易に形成できる。
【0077】
(9)デバイス側基板10の厚み方向において、内側導電経路部70の表面は、デバイス側基板10の表面と面一である。
また、デバイス側基板10の第1主面10aと内側導電経路部70の表面とにわたって形成された主絶縁層17と、主絶縁層17上にさらに形成されており、リッド側基板90に接合される、接合層19とをさらに備えている。平面視で、内側導電経路部70は接合層19を横断している。
本構成によれば、デバイス側基板10及び内側導電経路部70に亘る表面を平坦に構成できるので、デバイス側基板10の第1主面10a及び内側導電経路部70に亘ってにさらなる主絶縁層17を平坦に形成できる。さらに、平坦な主絶縁層17上に接合層19を平坦に形成しやすい。よって、デバイス側基板10に対してリッド側基板90を平坦な接合層19を介して容易に接合しやすい。
しかも、主絶縁層17を、Y方向に隣接する内側導電経路部70にわたって積層した場合でも、上述したように内側導電経路部70はデバイス側基板10の第1主面10aと面一に形成されているので、主絶縁層17の内側導電経路部70に対するパッシベーションカバレッジが向上する。これによって、隣り合う内側導電経路部70間の導通を防止しやすい。
【0078】
(10)内側導電経路部70は、平面視において、収容空間Zの内側に対向する位置から収容空間Zの外側に対向する位置に延びている。
本構成によれば、収容空間Zの内側から外側との境界領域において、内側導電経路部70によってデバイス側基板10の表面の凹凸を抑制できるので、リッド側基板90を容易に接合しやすい。
【0079】
(11)内側導電経路部70は、接合層19を横断するX方向に延びており、Y方向に対向する内壁面を有しており、対向する内壁面上に形成されたトレンチ絶縁層72上にさらに形成されたトレンチ導電層73は、少なくとも一部がY方向に結合されている。
本構成によれば、内側導電経路部70はY方向に対向するトレンチ絶縁層72の間のシームがトレンチ導電層73によってY方向に結合されているので、内側導電経路部70のシームに沿った破壊を抑制できる。
【0080】
(12)トレンチ導電層73は、トレンチ71のうち少なくともデバイス側基板10の第1主面10a側において結合されている。
本構成によれば、トレンチ71の口元側でシームが結合されるので、底側で結合される場合に比して、内側導電経路部70のシームに沿った破壊をより一層抑制できる。
【0081】
(13)パッド部40は、主絶縁層17上に形成されており、主絶縁層17上に形成されておりパッド部40に接続されたパッド配線第1端部62aから平面視で内側導電経路部70に対向するパッド配線第2端部62bまで延びるパッド配線62と、主絶縁層17を貫通しておりパッド配線第2端部62bと内側導電経路部70とを電気的に接続する第3コンタクト(パッド配線コンタクト)83とを更に備えている。
本構成によれば、デバイス側基板10に埋設された内側導電経路部70と、主絶縁層17を介してデバイス側基板10の表面側に形成されたパッド部40とを電気的に接続できる。
【0082】
(14)空洞11の第1周壁部12及び第2周壁部13からセンサ部5に向かうX方向に延びてセンサ部5に接続されており、センサ部5を支持する、第1支持部15及び第2支持部16と、平面視において第1支持部15及び第2支持部16をY方向に横断しており第1支持部15及び第2支持部16をX方向に電気的に絶縁する分離部50と、主絶縁層17上に形成されており平面視で第1支持部15及び第2支持部16のうち分離部50よりもセンサ部5側に対向するMEMS電極配線第1端部61aから、内側導電経路部70に対向するMEMS電極配線第2端部61bまで延びる、MEMS電極配線61と、主絶縁層17を貫通しており、第1支持部15及び第2支持部16のうちセンサ部5側に位置する部分とMEMS電極配線第1端部61aとを電気的に接続する第1コンタクト81(MEMS電極配線第1コンタクト)と、主絶縁層17を貫通しており内側導電経路部70とMEMS電極配線第2端部61bとを電気的に接続する第2コンタクト82(MEMS電極配線第2コンタクト)とをさらに備えている。
本構成によれば、デバイス側基板10に埋設された内側導電経路部70と、主絶縁層17を介してデバイス側基板10の第1主面10a側に形成されたMEMS電極配線61とを電気的に接続できる。
【0083】
(15)MEMSセンサの製造方法は、デバイス側基板10において、MEMS電極である可動電極20及び固定電極30を含むセンサ部5からX方向に延びる導電経路をY方向に横断するトレンチ51を形成し、トレンチ51の内壁面上にトレンチ絶縁層52を形成し、トレンチ絶縁層52上にさらにトレンチ結合層53を、互いに少なくとも一部がX方向に結合するようにそれぞれ形成し、センサ部5を覆うようにデバイス側基板10にリッド側基板90を接合する。
本構成によれば、分離部50はX方向に対向するトレンチ絶縁層52(トレンチ第1熱酸化膜103a及びトレンチ第2熱酸化膜103b)の間のシーム110がトレンチ結合層53によってX方向に結合されている。これによって、分離部50のシーム110に沿った破壊を抑制できる。
【0084】
(16)トレンチ結合層53をアニール処理することによって、トレンチ結合層53を互いにより結合させやすく、シーム110に沿った破壊がより一層防止される。
【0085】
(17)デバイス側基板10において、MEMS電極である可動電極20及び固定電極30を含むセンサ部5から電気信号を取出すパッド部40までX方向に延びる導電経路の一部に、X方向に沿って延びるトレンチ71を形成し、トレンチ71の内壁面上にトレンチ絶縁層72を形成し、トレンチ絶縁層72上にトレンチ導電層73をさらに形成し、センサ部5を覆うようにデバイス側基板10にリッド側基板90を接合する。
本構成によれば、導電経路60をデバイス側基板10に厚みの増大を抑制しつつ形成できる。
【0086】
(18)デバイス側基板10を製造するときに、第1半導体ウエハ101に対してトレンチ51,71を同時に形成し、トレンチ51、71の内壁面にトレンチ絶縁層52,72を同時に形成し、トレンチ絶縁層52,72上にトレンチ結合層53及びトレンチ導電層73を同時に形成し、これによって、分離部50と内側導電経路部70とを同時に形成する。
本構成によれば、分離部50と内側導電経路部70とが同時に形成されるので、それぞれ別の工程で形成する場合に比して、工程の数が低減する。これによって、MEMSセンサ1を効率的に製造でき、例えばそれぞれをエッチングにより形成するときのマスクを統合することができるので製造コストを低減できる。
【0087】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0088】
上記実施形態では、CVD法によってポリシリコン104を堆積させた後に、アニール処理を実施するようにしたが、トレンチ51,71において、ポリシリコン104が互い対向する部分が互いに結合している場合には、アニール処理を実施しなくてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 MEMSセンサ
2 デバイス側基板アセンブリ
3 リッド側基板アセンブリ
5 センサ部
10 デバイス側基板
11 空洞
15 第1支持部
16 第2支持部
17 主絶縁層
19 接合層
20 可動電極
30 固定電極
40 パッド部
50 分離部
51 トレンチ
52 トレンチ絶縁層
53 トレンチ結合層
60 導電経路
61 MEMS電極配線
62 パッド配線
70 内側導電経路部
71 トレンチ
72 トレンチ絶縁層
73 トレンチ導電層
81 第1コンタクト
82 第2コンタクト
83 第3コンタクト
90 リッド側基板
93 接合パッド
94 接合材
101 第1半導体ウエハ
103 トレンチ熱酸化膜
104 ポリシリコン
105 第1絶縁膜
106 メタル層
107 第2絶縁膜
108 トレンチ
109 保護膜
110 シーム
201 第2半導体ウエハ
202 トレンチ
203 金属膜
図1
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