(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081109
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】MEMSセンサ及びMEMSセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01P 15/125 20060101AFI20230602BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20230602BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/08 101A
H01L29/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194817
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】紙西 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,マーティン ウィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有真
【テーマコード(参考)】
4M112
【Fターム(参考)】
4M112AA02
4M112BA07
4M112CA23
4M112CA26
4M112CA31
4M112DA02
4M112DA07
4M112DA20
4M112EA03
4M112EA04
4M112FA01
4M112GA01
(57)【要約】
【課題】製造工程を簡素化しつつ感度を向上させることができるMEMSセンサを提供する。
【解決手段】MEMSセンサは、表面10aに空洞12の一部が露出する空洞12を有する第1基板10と、第1基板10に設けられて空洞12内に配置されるセンサ素子の電極13と、第1基板10に設けられて電極13を支持する支持部14と、第1基板10に支持部14を覆うように形成されて電極13と支持部14とを電気的に分離する素子分離部15と、第1基板10の電極13及び素子分離部15上に形成されるエピタキシャル成長層50と、第1基板10に接合されてセンサ素子を覆う第2基板20とを備える。エピタキシャル成長層50は、電極13上に配置される単結晶部51と素子分離部15上に配置される多結晶部52とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に空洞の一部が露出する空洞を有する第1基板と、
前記第1基板に設けられて前記空洞内に配置されるセンサ素子の電極と、
前記第1基板に設けられて前記電極を支持する支持部と、
前記第1基板に前記支持部を覆うように形成されて前記電極と前記支持部とを電気的に分離する素子分離部と、
前記第1基板の前記電極及び前記素子分離部上に形成されるエピタキシャル成長層と、
前記第1基板に接合されてセンサ素子を覆う第2基板と、を備え、
前記エピタキシャル成長層は、前記電極上に配置される単結晶部と前記素子分離部上に配置される多結晶部とを有している、
MEMSセンサ。
【請求項2】
前記素子分離部は、前記第1基板の厚さ方向に延在して前記電極と前記支持部とを分離する側壁部と、前記第1基板の表面に平行に延在して前記側壁部及び前記支持部上に配置される上壁部とを有している、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項3】
前記エピタキシャル成長層は、前記第1基板と同一材料から形成される、
請求項1又は請求項2に記載のMEMSセンサ。
【請求項4】
前記第1基板は、単結晶シリコン基板であり、
前記素子分離部は、酸化シリコンを有している、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項5】
前記電極は、前記支持部に支持されるベース部と、櫛歯状に形成される電極部とを有している、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項6】
前記電極は、前記センサ素子の可動電極及び固定電極の少なくとも一方の電極である、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項7】
前記センサ素子は、静電容量型加速度センサ素子である、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項8】
前記第2基板に、前記素子分離部上にある前記エピタキシャル成長層の多結晶部に接合される接合部が形成され、
前記接合部は、AlGe層によって形成されている、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項9】
前記第2基板に、前記電極から電気信号を取り出すパッド部と、前記接合部と前記パッド部とを電気的に接続する配線とが形成されている、
請求項8に記載のMEMSセンサ。
【請求項10】
前記第1基板に前記電極を取り囲むように形成されたシール用絶縁部を有し、
前記エピタキシャル成長層は、前記シール用絶縁部上に配置される多結晶部を有している、
請求項1から請求項9の何れか1項に記載のMEMSセンサ。
【請求項11】
前記第2基板に、前記シール用絶縁部上にある前記エピタキシャル成長層の多結晶部に接合されるシール部が形成され、
前記シール部は、AlGe層によって形成されている、
請求項10に記載のMEMSセンサ。
【請求項12】
第1基板の表面にセンサ素子の電極と前記電極を支持する支持部とを電気的に分離する素子分離部を形成し、
前記素子分離部が形成された前記第1基板の表面にエピタキシャル成長層を形成し、
前記エピタキシャル成長層が形成された前記第1基板の表面をエッチングして、前記第1基板の表面に空洞の一部が露出する空洞を形成するとともに前記空洞内に配置された前記センサ素子の電極と前記電極を支持する支持部とを前記素子分離部によって分離するように前記電極及び前記支持部を形成し、
前記センサ素子を覆うように前記第1基板に第2基板を接合し、
前記エピタキシャル成長層は、前記電極部上に配置される単結晶部と前記素子分離部上に配置される多結晶部とを有するように形成される、
MEMSセンサの製造方法。
【請求項13】
前記素子分離部は、前記第1基板の厚さ方向に延在して前記電極と前記支持部とを分離する側壁部と、前記第1基板の表面に平行に延在して前記側壁部及び前記支持部上に配置される上壁部とを有する、
請求項12に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項14】
前記第1基板は、単結晶シリコン基板であり、
前記素子分離部は、酸化シリコンを有している、
請求項12又は請求項13に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項15】
前記第2基板に、前記第1基板に形成された前記素子分離部上にある前記エピタキシャル成長層の多結晶部に接合される接合部を形成し、
前記接合部は、AlGe層によって形成される、
請求項12から請求項14の何れか1項に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項16】
前記第1基板に、前記電極を取り囲むようにシール用絶縁部が形成され、
前記エピタキシャル成長層は、前記シール用絶縁部上に配置される多結晶部を有するように形成される、
請求項12から請求項15の何れか1項に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項17】
前記第2基板に、前記シール用絶縁部上にある前記エピタキシャル成長層の多結晶部に接合されるシール部を形成し、
前記シール部は、AlGe層によって形成される、
請求項16に記載のMEMSセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MEMSセンサ及びMEMSセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術を用いて製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサが知られている。MEMSセンサとして、例えば特許文献1には、静電容量型MEMS加速度センサが開示されている。静電容量型MEMS加速度センサは、半導体基板に形成された互いに噛み合う櫛歯状の固定電極と可動電極とを備え、固定電極と可動電極との間の静電容量の変化を検出することにより加速度を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定電極と可動電極とを有する静電容量型MEMS加速度センサなどのMEMSセンサでは、固定電極と可動電極とを有するセンサ素子を第1基板の表面に形成し、センサ素子を覆うように第1基板に第2基板を接合し、第2基板からセンサ素子の電極の電気信号を取り出すことが考えられている。
【0005】
この場合、第1基板において表面に形成されたセンサ素子の電極と前記電極を支持する支持部とを素子分離部によって電気的に絶縁し、センサ素子の電極を素子分離部上に配置された配線にコンタクトを介して接続し、第1基板に形成された配線と第2基板に形成された接合部とを接合し、第2基板からセンサ素子の電極の電気信号を取り出すことが考えられる。
【0006】
しかしながら、このように形成されるMEMSセンサでは、第1基板にセンサ素子の電極から電気信号を取り出すための配線及びコンタクトが必要であることから製造工程が複雑化し、製造工程を簡素化することが望まれる。また、MEMSセンサでは、センサの感度を向上させることが望まれる。
【0007】
本開示は、製造工程を簡素化しつつ感度を向上させることができるMEMSセンサ及びMEMSセンサの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、表面に空洞の一部が露出する空洞を有する第1基板と、前記第1基板に設けられて前記空洞内に配置されるセンサ素子の電極と、前記第1基板に設けられて前記電極を支持する支持部と、前記第1基板に前記支持部を覆うように形成されて前記電極と前記支持部とを電気的に分離する素子分離部と、前記第1基板の前記電極及び前記素子分離部上に形成されるエピタキシャル成長層と、前記第1基板に接合されてセンサ素子を覆う第2基板と、を備え、前記エピタキシャル成長層は、前記電極上に配置される単結晶部と前記素子分離部上に配置される多結晶部とを有している、MEMSセンサを提供する。
【0009】
本開示によれば、第1基板の表面に形成されたセンサ素子の電極及び素子分離部上に形成されたエピタキシャル成長層は、電極上に配置される単結晶部と素子分離部上に配置される多結晶部とを有するので、多結晶部に第2基板の接合部を接合することで、センサ素子の電極からエピタキシャル成長層の単結晶部及び多結晶部を通じて第2基板の接合部に電気的に接続することができ、第2基板の接合部に接合するための配線及びコンタクトを形成する場合に比して、製造工程を簡素化することができる。エピタキシャル成長層の形成時に電極及び素子分離部上にそれぞれ単結晶部及び多結晶部を同時に形成することができ、製造工程をさらに簡素化することができる。また、第1基板の電極上に形成されるエピタキシャル成長層の単結晶部を電極として用いることができるので、センサの感度を向上させることができる。したがって、製造工程を簡素化しつつ感度を向上させることができる。
【0010】
また、本開示は、第1基板の表面にセンサ素子の電極と前記電極を支持する支持部とを電気的に分離する素子分離部を形成し、前記素子分離部が形成された前記第1基板の表面にエピタキシャル成長層を形成し、前記エピタキシャル成長層が形成された前記第1基板の表面をエッチングして、前記第1基板の表面に空洞の一部が露出する空洞を形成するとともに前記空洞内に配置された前記センサ素子の電極と前記電極を支持する支持部とを前記素子分離部によって分離するように前記電極及び前記支持部を形成し、前記センサ素子を覆うように前記第1基板に第2基板を接合し、前記エピタキシャル成長層は、前記電極部上に配置される単結晶部と前記素子分離部上に配置される多結晶部とを有するように形成される、MEMSセンサの製造方法を提供する。
【0011】
本開示によれば、素子分離部が形成された第1基板の表面にエピタキシャル成長層が形成され、エピタキシャル成長層が形成された第1基板の表面がエッチングされて、第1基板の表面に空洞の一部が露出する空洞が形成されるとともに空洞内に配置されたセンサ素子の電極と電極を支持する支持部とを素子分離部によって分離するように電極及び支持部が形成される。エピタキシャル成長層は、電極上の単結晶部と素子分離部上の多結晶部とを有するように形成されるので、多結晶部に第2基板の接合部を接合することで、センサ素子の電極からエピタキシャル成長層の単結晶部及び多結晶部を通じて第2基板の接合部に電気的に接続することができ、第2基板の接合部に接合するための配線及びコンタクトを形成する場合に比して、製造工程を簡素化することができる。エピタキシャル成長層の形成時に電極及び素子分離部上にそれぞれ単結晶部及び多結晶部を同時に形成することができ、製造工程をさらに簡素化することができる。また、第1基板の電極上に形成されるエピタキシャル成長層の単結晶部を電極として用いることができるので、センサの感度を向上させることができる。したがって、製造工程を簡素化しつつ感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るMEMSセンサの概略平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【
図4】
図4は、第1基板アセンブリの平面図である。
【
図5】
図5は、第2基板アセンブリの平面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す第1基板アセンブリの要部拡大図である。
【
図7】
図7は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図9】
図9は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図10】
図10は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図11】
図11は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図12】
図12は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図13】
図13は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図14】
図14は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図15】
図15は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図16】
図16は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図17】
図17は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
【
図19】
図19は、第1基板アセンブリに電極用の配線及びコンタクトを形成したMEMSセンサを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本開示の実施形態に係るMEMSセンサの概略平面図である。
図1に示すように、本開示の実施形態に係るMEMSセンサ1は、静電容量型加速度センサであり、センサ素子2としての静電容量型加速度センサ素子を有している。MEMSセンサ1は、センサ素子2を有する第1基板10を備えた第1基板アセンブリ11と、センサ素子2を覆うとともにセンサ素子2から電気信号を取り出すパッド部3が形成された第2基板20を備えた第2基板アセンブリ21とを備えている。
【0015】
以下では、第1基板10及び第2基板20の表面に沿う所定方向をX方向とするとともにX方向と直交する方向をY方向とし、X方向及びY方向と直交する第1基板10及び第2基板20の厚さ方向をZ方向とする。
図1では、第1基板10が第2基板20のZ方向上側に接合されたMEMSセンサ1が示されている。
【0016】
センサ素子2は、X方向に作用する加速度を検出するX軸センサ素子4と、Y方向に作用する加速度を検出するY軸センサ素子5とを有している。Y軸センサ素子5は、X軸センサ素子4のY方向に離間して配置されている。
【0017】
第1基板10に設けられたセンサ素子2は、第2基板20が第1基板10に接合されることにより、第2基板20によって覆われて密閉されている。第2基板20に形成されたパッド部3は、互いにY方向に離間して複数、具体的には5つ設けられている。パッド部3は、外部の電子部品などに接続されて外部の電子部品などにセンサ素子2の電気信号を取り出すように構成されている。
【0018】
Y軸センサ素子5は、X軸センサ素子4を平面視で90度回転したものと同様に構成されているので、X軸センサ素子4について説明し、Y軸センサ素子5については説明を省略する。
【0019】
図2は、
図1のII-II線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図3は、
図1のIII- III線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図4は、第1基板アセンブリの平面図である。
図5は、第2基板アセンブリの平面図である。
図6は、
図4に示す第1基板アセンブリの要部拡大図である。
【0020】
第1基板アセンブリ11は、
図2から
図4に示すように、表面である第1主面10aと第1主面10aの反対側の裏面である第2主面10bとを有する第1基板10を備えている。第1基板10は、平面視で、X方向に平行に延びる2辺とY方向に平行に延びる2辺とを有してY方向に長い長方形状に形成されている。第1基板10として、不純物をドーピングして導電性を付与した、例えば1Ω・m~5Ω・mの抵抗率を有する導電性単結晶シリコン基板が用いられる。
【0021】
第1基板10は、
図4に示すように、中央側にX軸センサ素子4及びY軸センサ素子5を有している。第1基板10は、X軸センサ素子4及びY軸センサ素子5にそれぞれ対応して第1主面10aに一部が露出する空洞12を有している。空洞12は、第1主面10aから第1基板10の厚さ方向に略直方体状に窪んで形成され、底壁部12aと底壁部12aから第1基板10の厚さ方向に延在する側壁部12bとを有している。空洞12は、第1基板10において少なくとも、後述する支持部14を除く部分に形成されている。
【0022】
第1基板10は、
図2及び
図3に示すように、空洞12内に配置されたX軸センサ素子4の電極13と、電極13を支持する支持部14とを有している。電極13として、第1基板10に対して固定される固定電極30と、固定電極30に対して変位可能である可動電極40とを有している。
【0023】
支持部14は、空洞12の底壁部12aから第1基板10の厚さ方向に第1基板10の第1主面10aまで略四角柱状に延在するように形成されている。支持部14は、固定電極用の支持部14と可動電極用の支持部14とを有している。固定電極30及び可動電極40はそれぞれ、空洞12内に底壁部12aに対して浮いた状態で支持部14に支持されている。電極13及び支持部14は、第1基板10の一部によって形成されている。
【0024】
第1基板10には、支持部14を覆うように電極13と支持部14とを電気的に分離する素子分離部15が形成されている。素子分離部15は、第1基板10の厚さ方向に電極13と支持部14の間に延在して電極13と支持部14とを分離する側壁部15aと、第1基板10の第1主面10aに平行に延在して側壁部15a及び支持部14上に配置される上壁部15bとを有している。素子分離部15の側壁部15aは、支持部14の周囲に沿って空洞12の底壁部12aから第1基板10の厚さ方向に第1基板10の第1主面10aまで略四角筒状に延在し、素子分離部15の上壁部15bは、平面視で四角形状に形成されている。素子分離部15は、酸化シリコンを有しており、絶縁膜である多結晶酸化シリコン膜によって形成されている。
【0025】
電極13は、素子分離部15を介して支持部14に支持されている。固定電極30は、
図3に示すように、固定電極用の素子分離部15を介して支持部14に支持されている。可動電極40は、
図2に示すように、可動電極用の素子分離部15を介して支持部14に支持されている。
【0026】
第1基板10は、X軸センサ素子4の電極13として互いに噛み合う櫛歯状に形成された固定電極30及び可動電極40を備えている。固定電極30及び可動電極40は、第1基板10の厚さ方向に同一厚さで形成されている。
【0027】
固定電極30は、
図6に示すように、支持部14に接続されるアンカ部31と、アンカ部31に接続されるベース部32と、ベース部32に接続されて櫛歯状に形成される複数の電極部33とを有している。アンカ部31、ベース部32及び複数の電極部33は、第1基板10の一部によって一体的に形成されている。
【0028】
アンカ部31は、固定電極用支持部14の周囲に沿って略四角筒状に素子分離部15を介して設けられ、支持部14に素子分離部15を介して接続されている。ベース部32は、アンカ部31に接続されてX方向に直線状に延在する第1直線部分32aと、第1直線部分32aからY方向に直線状に延在する第2直線部分32bと、第2直線部分32bからX方向に第1直線部分32aとは反対側に直線状に延在するとともにY方向に離間して配置される第3直線部分32c、第4直線部分32d及び第5直線部分32eとを有している。ベース部32は、支持部14に素子分離部15及びアンカ部31を介して支持されている。
【0029】
複数の電極部33は、ベース部32の第3直線部分32c、第4直線部分32d及び第5直線部分32eからそれぞれY方向に直線状に延在するとともにX方向に等間隔に離間して櫛歯状に形成されている。複数の電極部33は、第5直線部分32eからY方向一方側に延在し、第4直線部分32dからY方向両側に延在し、第3直線部分32cからY方向他方側に延在している。
【0030】
可動電極40は、支持部14に接続されるアンカ部41と、加速度の検出方向であるX方向に伸縮可能であるバネ部44と、バネ部44を介してアンカ部41に接続されるベース部42と、ベース部42に接続されて櫛歯状に形成される複数の電極部43とを有している。アンカ部41、バネ部44、ベース部42及び複数の電極部43は、第1基板10の一部によって一体的に形成されている。
【0031】
アンカ部41は、可動電極用支持部14の周囲に沿って略四角筒状に素子分離部15を介して設けられ、支持部14に素子分離部15を介して接続されている。バネ部44は、アンカ部41に接続されてX方向に直線状に延在する直線部分44aと、直線部分44aに接続されてY方向を長手方向とする長方形状に形成された環状部分44bとを有している。バネ部44は、X方向に作用する加速度に応じて環状部分44bがX方向に伸縮可能に構成されている。
【0032】
ベース部42は、バネ部44に接続されてX方向に直線状に延在する第1直線部分42aと、第1直線部分42aからY方向に直線状に延在する第2直線部分42bと、第2直線部分42bからX方向に第1直線部分42aとは反対側に直線状に延在するとともにY方向に離間して配置される第3直線部分42c及び第4直線部分42dとを有している。
【0033】
複数の電極部43は、ベース部42の第3直線部分42c及び第4直線部分42dからそれぞれY方向に直線状に延在するとともにX方向に等間隔に離間して櫛歯状に形成されている。複数の電極部43は、第3直線部分42c及び第4直線部分42dからそれぞれY方向両側に延在している。
【0034】
可動電極40の複数の電極部43は、固定電極30の複数の電極部33と互いに接触しない状態で互いに噛み合うように配置されている。可動電極40の電極部43と固定電極30の電極部33とは、X方向に間隔を空けて対向して配置されている。
【0035】
固定電極30及び可動電極40を有するX軸センサ素子4にX方向の加速度が作用すると、加速度に応じて固定電極30の電極部33に対して可動電極40の電極部43が相対的に移動して電極部33と電極部43との間の間隔が変化して固定電極30と可動電極40との間の静電容量が変化する。X軸センサ素子4は、固定電極30と可動電極40との間の静電容量の変化を電気信号として取り出すことで加速度を検出できるようになっている。
【0036】
図2及び
図3に示すように、第1基板10には、X軸センサ素子4の電極13及び素子分離部15上に、第1基板10と同一材料であるシリコン材料によるエピタキシャル成長層50が形成されている。エピタキシャル成長層50は、第1基板10の第1主面10aから所定厚さを有するように形成されている。エピタキシャル成長層50は、電極13上では単結晶に形成され、素子分離部15上では多結晶に形成され、電極13上に配置される単結晶部51と、素子分離部15上に配置される多結晶部(一点鎖線で囲まれる領域)52とを有している。
【0037】
エピタキシャル成長層50は、固定電極30のアンカ部31、ベース部32及び複数の電極部33上にアンカ部31、ベース部32及び複数の電極部33と平面視で同一形状に形成された単結晶部51と、固定電極用の素子分離部15上に素子分離部15と平面視で同一形状に形成された多結晶部52を有している。
【0038】
固定電極30上に形成されたエピタキシャル成長層50の単結晶部51は、固定電極30と同一材料による単結晶構造によって形成されることから、固定電極30とともに電極として用いることができる。電極部33上に形成されたエピタキシャル成長層50の単結晶部51は、電極部として用いることができる。素子分離部15上に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部52は、固定電極30から電気信号を取り出す固定電極用の端子部18を構成する。
【0039】
エピタキシャル成長層50はまた、可動電極40のアンカ部41、バネ部44、ベース部42及び複数の電極部43上にアンカ部41、バネ部44、ベース部42及び複数の電極部43と平面視で同一形状に形成された単結晶部51と、可動電極用の素子分離部15上に素子分離部15と平面視で同一形状に形成された多結晶部52を有している。
【0040】
可動電極40上に形成されたエピタキシャル成長層50の単結晶部51は、可動電極40と同一材料による単結晶構造によって形成されることから、可動電極40とともに電極として用いることができる。電極部43上に形成されたエピタキシャル成長層50の単結晶部51は、電極部として用いることができる。素子分離部15上に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部52は、可動電極40の電極部から電気信号を取り出す可動電極用の端子部18を構成する。
【0041】
第1基板10にはまた、第1主面10aの周縁部上にセンサ素子2の電極13を取り囲むようにシール用絶縁部16が形成されている。シール用絶縁部16は、酸化シリコンを有しており、絶縁膜である多結晶酸化シリコン膜によって形成されている。第1基板10には、シール用絶縁部16上にもエピタキシャル成長層50が形成されている。エピタキシャル成長層50は、シール用絶縁部16上では多結晶に形成され、シール用絶縁部16上に配置される多結晶部(一点鎖線で囲まれる領域)53を有している。エピタキシャル成長層50の多結晶部53は、シール用絶縁部16と平面視で同一形状に形成され、第2基板20に接合されてシールされる被シール部17を構成する。
【0042】
第1基板アセンブリ11では、
図4に示すように、センサ素子2が形成される素子領域E1と被シール部17が形成されるシール領域E2とは、第1境界ラインL1の内側及び外側にそれぞれ形成されている。素子領域E1には、Y軸センサ素子5が、X軸センサ素子4を平面視で90度回転して同様に形成されている。
【0043】
第2基板アセンブリ21は、
図2及び
図3に示すように、表面である第1主面20aと第1主面20aの反対側の裏面である第2主面20bとを有する第2基板20を備えている。第2基板20は、平面視で、X方向に平行に延びる2辺とY方向に平行に延びる2辺とを有してY方向に長い長方形状に形成されるとともに、第1基板10よりX方向に長く形成されている。第2基板20として、不純物をドーピングして導電性を付与した、例えば1Ω・m~5Ω・mの抵抗率を有する導電性単結晶シリコン基板が用いられる。
【0044】
第2基板20は、X軸センサ素子4及びY軸センサ素子5を覆うように第1基板10に接合されている。第2基板20には、
図5に示すように、第1基板10に形成された電極用の端子部18にそれぞれ接合される接合部22と、電極13から電気信号を取り出すパッド部3と、接合部22とパッド部3とを電気的に接続する配線23と、第1基板10に形成された被シール部17に接合してシールするシール部24とが形成されている。
【0045】
シール部24は、平面視で、第1基板10の被シール部17に対応して環状に形成されている。接合部22は、シール部24の内側に形成され、パッド部3は、シール部24の外側に形成されている。配線23は、X軸センサ素子4及びY軸センサ素子5からそれぞれ電気信号を取り出すために接合部22とパッド部3とを電気的に接続する4つの配線23と、第1基板10を接地するためにシール部24とパッド部3とを電気的に接続する1つの配線23とを有している。
【0046】
図2に示すように、第2基板20には、第1主面20a上に第1絶縁膜81が形成されている。第1絶縁膜81は、熱酸化膜である酸化シリコン膜によって形成されている。第1絶縁膜81上に接合部22とパッド部3とを電気的に接続する配線23が形成されている。配線23は、第1絶縁膜81上に形成されたバリア層上に形成されている。配線23は、AlとCuとの合金であるAlCu層によって形成されている。バリア層は、Ti層とTi層上に形成されるTiN層とが積層されたTi/TiN層によって形成されている。
【0047】
第2基板20には、配線23を覆うように第2絶縁膜83が形成されている。第2絶縁膜83は、酸化シリコン膜によって形成されている。第2絶縁膜83には、接合部22、パッド部3及びシール部24に対応する位置にそれぞれコンタクト孔が形成され、コンタクト孔がタングステンで埋め尽くされてコンタクト25が形成されている。
【0048】
第2基板20には、第2絶縁膜83上に接合部22、パッド部3及びシール部24が形成されている。接合部22及びパッド部3は、平面視で四角形状に形成され、シール部24は、平面視で矩形環状に形成されている。接合部22、パッド部3及びシール部24はそれぞれ、第2絶縁膜83上に形成された密着層84上に形成されている。
【0049】
パッド部3は、AlとCuとの合金であるAlCu層によって形成されている。接合部22は、Al層とAl層上に形成されるGe層とが積層されたAlGe層によって形成されている。シール部24は、Al層とAl層上に形成されるGe層とが積層されたAlGe層によって形成されている。密着層84は、Ti層とTi層上に形成されるTiN層とが積層されたTi/TiN層によって形成されている。
【0050】
第2基板20に形成された接合部22は、
図2及び
図3に示すように、第1基板10に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部52である端子部18に接合されている。固定電極及び可動電極用の端子部18はそれぞれ、固定電極及び可動電極用の接合部22に接合されている。
【0051】
第2基板20に形成されたシール部24は、
図2及び
図3に示すように、第1基板10に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部53である被シール部17に接合されている。これにより、第1基板10に設けられたX軸センサ素子4及びY軸センサ素子5は、第2基板20によって覆われて密閉されている。
【0052】
第2基板アセンブリ21では、
図5に示すように、接合部22が形成される素子領域E1とシール部24が形成されるシール領域E2とは、第2境界ラインL2の内側及び外側にそれぞれ形成されている。パッド部3が形成されるパッド領域E3とシール領域E2とは、第3境界ラインL3のX方向一方側及び他方側にそれぞれ形成されている。第2基板20には、Y軸センサ素子5用の接合部22及びパッド部3が、X軸センサ素子4用の接合部22及びパッド部3と同様にして形成されている。
【0053】
このようにして形成されるMEMSセンサ1は、X軸センサ素子4の固定電極30及び可動電極40の電極部33,43とパッド部3とがそれぞれ電気的に接続され、固定電極30と可動電極40の電極部33,43間の静電容量の変化を電気信号として取り出してX方向の加速度を検出するようになっている。MEMSセンサ1はまた、X軸センサ素子4と同様に構成されたY軸センサ素子5によってY方向の加速度を検出するようになっている。
【0054】
次に、このようにして形成されるMEMSセンサ1の製造方法について説明する。
【0055】
図7から
図12は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。第1基板アセンブリ11の製造では、まず、
図7に示すように、単結晶導電性シリコン基板である第1基板10が準備され、熱酸化法によって第1基板10の第1主面10a全体が熱酸化され、第1基板10の第1主面10aに熱酸化膜である酸化シリコン膜が形成される。次に、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、酸化シリコン膜がパターニングされ、酸化シリコン膜における素子分離部15の側壁部15aに対応する部分が開口される。
【0056】
そして、酸化シリコン膜をマスクとして、異方性エッチングによって、第1基板10の第1主面10aにおける素子分離部15の側壁部15aに対応する部分が除去されて素子分離部15の側壁部15aに対応するトレンチ61が形成される。
【0057】
トレンチ61の形成後に、エッチングによって第1基板10の第1主面10aに形成された酸化シリコン膜が取り除かれる。そして、熱酸化法によってトレンチ61の内面を含む第1基板10の第1主面10a全体が熱酸化されてトレンチ61の内面を含む第1基板10の第1主面10a全体に熱酸化膜である酸化シリコン膜71が形成される。
【0058】
次に、
図8に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、酸化シリコン膜71がパターニングされ、素子分離部15及びシール用絶縁部16が形成される。素子分離部15及びシール用絶縁部16は、多結晶酸化シリコン膜によって形成される。
【0059】
次に、
図9に示すように、シリコン材料を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法によるエピタキシャル成長によって、第1基板10の第1主面10aにエピタキシャル成長層50が素子分離部15及びシール用絶縁部16を完全に覆うように形成される。エピタキシャル成長層50は、単結晶である第1基板10の第1主面10a上では単結晶に形成され、酸化シリコン膜71によって形成された素子分離部15及びシール用絶縁部16上では多結晶に形成され、単結晶に形成される単結晶部51と多結晶に形成される多結晶部52、53とを有するように形成される。エピタキシャル成長層50の形成後には、CMP(Chemical Mechanical Polish)処理によって平坦化される。
【0060】
次に、
図10に示すように、CVD法によって、エピタキシャル成長層50上に絶縁膜として酸化シリコン膜72が形成される。そして、フォトリソグラフィ及び異方性エッチングによって第1基板10の第1主面10a及びエピタキシャル成長層50がパターニングされ、電極13の形状を残すようにトレンチ62が形成される。第1基板10の第1主面10aに電極13の形状が形成されるとともにエピタキシャル成長層50についても電極13の形状に対応する部分が形成されるようにトレンチ62が形成される。
【0061】
次に、
図11に示すように、CVD法によって、トレンチ62の内面全体を含むとともにエピタキシャル成長層50が形成された第1基板10の表面側全体に保護膜としての酸化シリコン膜が形成される。そして、エッチバックによってトレンチ62の側面上に形成された保護膜73を除く部分の保護膜が除去され、トレンチ62の側面上にのみ保護膜73が形成される。
【0062】
次に、
図12に示すように、エピタキシャル成長層50上に形成された酸化シリコン膜72をマスクとして、エッチング、具体的には異方性エッチングによってトレンチ62の底面部分が除去され、トレンチ62の底面が保護膜73より深くなるようにトレンチ62が深く形成される。保護膜73よりトレンチ62の底部には、第1基板10の結晶面が露出した露出空間が形成される。
【0063】
異方性エッチングに引き続いて、等方性エッチングによって、トレンチ62の露出空間に反応性イオン及びエッチングガスが供給され、反応性イオンなどの作用によって各露出空間を起点として第1基板10の厚さ方向にエッチングされつつ第1基板10の第1主面10aに平行な方向にエッチングされる。これにより、互いに隣接する全ての露出空間が一体化して、第1基板10の表面に空洞12の一部が露出する空洞12が形成されるとともに、空洞12内に電極13が浮いた状態で配置される。等方性エッチング後には、エピタキシャル成長層50上に形成された酸化シリコン膜72及び保護膜73が除去され、第1基板アセンブリ11が製造される。
【0064】
このようにして、表面に空洞12の一部が露出する空洞12を有する第1基板10に、空洞12内に配置されるセンサ素子4の電極13と、電極13を支持する支持部14とが設けられる。第1基板10には、支持部14を覆うように電極13と支持部14とを電気的に分離する素子分離部15が形成されると共に、電極13及び素子分離部15上に電極13上に配置される単結晶部51と素子分離部15上に配置される多結晶部52とを有するようにエピタキシャル成長層50が形成される。エピタキシャル成長層50は、シール用絶縁部16上にも多結晶部53を有するように形成される。
【0065】
図13から
図17は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。第2基板アセンブリ21の製造では、まず、
図13に示すように、単結晶導電性シリコン基板である第2基板20が準備され、熱酸化法によって第2基板20の第1主面20a全体が熱酸化され、第2基板20の第1主面20aに熱酸化膜である酸化シリコン膜が第1絶縁膜81として形成される。
【0066】
次に、PVD(Physical Vapor Deposition)法によって、第1絶縁膜81上にバリア層が形成され、バリア層上に配線層82が形成される。バリア層として、第1絶縁膜81上に形成されるTi層とTi層上に形成されるTiN層とが積層されたTi/TiN層が形成される。配線層82として、バリア層上に形成されるAlとCuとの合金であるAlCu層が形成される。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによってバリア層及び配線層82がパターニングされ、配線23が形成される。
【0067】
次に、
図14に示すように、CVD法によって、第2基板20の第1主面20aに形成された第1絶縁膜81及び配線23上に酸化シリコン膜が第2絶縁膜83として形成される。第2絶縁膜83の形成後には、CMP処理によって平坦化される。
【0068】
次に、
図15に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチングによって第2絶縁膜83に配線用のコンタクト孔が形成される。配線用のコンタクト孔は、接合部22、パッド部3及びシール部24に対応する位置に形成される。その後に、タングステン選択CVD法によって、前記コンタクト孔がタングステンで埋め尽くされてコンタクト25が形成される。
【0069】
コンタクト25の形成後には、PVD法によって、第2絶縁膜83上に密着層84が形成され、密着層84上にパッド層85が形成される。密着層84として、第2絶縁膜83上に形成されるTi層と該Ti層上に形成されるTiN層とが積層されたTi/TiN層が形成される。パッド層85として、密着層84上に形成されるAlとCuとの合金であるAlCu層が形成される。
【0070】
そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、密着層84及びパッド層85がパターニングされてパッド部3が形成されるとともに、密着層84及びパッド層85が接合部22及びシール部24に対応する部分の形状も残すように形成される。
【0071】
次に、
図16に示すように、フォトリソグラフィによって、パッド部3を覆うようにレジストパターン86が形成される。そして、レジストパターン86をマスクとしてウェットエッチングによって、パッド層85における接合部22及びシール部24に対応する部分が除去される。その後に、レジストパターン86が除去される。
【0072】
次に、
図17に示すように、PVD法によって、密着層84における接合部22及びシール部24に対応する部分上に、接合部及びシール部層87が形成される。第2基板20の第1主面20aに形成された第2絶縁膜83及びパッド部3上にも接合部及びシール部層87が形成される。接合部及びシール部層87として、Al層とAl層上に形成されるGe層とが積層されたAlGe層が形成される。
【0073】
接合部及びシール部層87の形成後に、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、接合部及びシール部層87がパターニングされて、接合部22及びシール部24が形成されるとともに、第2絶縁膜83及びパッド部3上に形成された接合部及びシール部層87が除去され、第2基板アセンブリ21が製造される。
【0074】
このようにして、第2基板20に、エピタキシャル成長層50の多結晶部52に接合される接合部22と、電極13から電気信号を取り出すパッド部3と、接合部22とパッド部3とを電気的に接続する配線23と、エピタキシャル成長層50の多結晶部53に接合されてシールするシール部24とが形成される。
【0075】
第1基板アセンブリ11及び第2基板アセンブリ21の製造後、第1基板アセンブリ11に第2基板アセンブリ21が接合され、第1基板10にセンサ素子2を覆うように第2基板20が接合される。第1基板10に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部52による端子部18に、第2基板20に形成された接合部22が接合されるとともに、第1基板10に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部53による被シール部17に、第2基板20に形成されたシール部24が接合される。
【0076】
第1基板アセンブリ11と第2基板アセンブリ21との接合は、第1基板アセンブリ11と第2基板アセンブリ21とが重ね合わせられるとともに所定の加圧が加えられた状態で、例えば440度~450度などの所定温度に加熱されることによって行われる。これにより、接合部22及びシール部24を形成するAlGe層においてAlGeが共晶反応されるとともに、接合部22とエピタキシャル成長層50の多結晶部52との接合面及びシール部24とエピタキシャル成長層50の多結晶部53との接合面においてAlGeSiが共晶反応され、接合部22及びシール部24とエピタキシャル成長層50の多結晶部52及び53とがそれぞれAlGe層によって共晶接合される。
【0077】
その後に、第1基板アセンブリ11の延長部分である第2基板アセンブリ21のパッド領域E3に対向する部分が、
図12に示す切断ラインL4に沿ってダイシングによって取り除かれ、MEMSセンサ1が製造される。
【0078】
MEMSセンサ1の製造では、第1基板10の表面にセンサ素子4の電極13と電極13を支持する支持部14とを電気的に分離する素子分離部15を形成し、素子分離部15が形成された第1基板10の表面にエピタキシャル成長層50を形成し、エピタキシャル成長層50が形成された第1基板10の表面をエッチングして、第1基板10の表面に空洞12の一部が露出する空洞12を形成するとともに空洞12内に配置されたセンサ素子4の電極13と電極13を支持する支持部14とを素子分離部15によって分離するように電極13及び支持部14を形成し、第2基板20に、第1基板10に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部52に接合される接合部22を形成し、センサ素子4を覆うように第1基板10に第2基板20を接合する。エピタキシャル成長層50は、電極13上に配置される単結晶部51と素子分離部15上に配置される多結晶部52とを有するように形成される。
【0079】
図18は、
図2に示すMEMSセンサの要部拡大図である。
図18に示すように、本実施形態に係るMEMSセンサ1では、第1基板10に、センサ素子4の電極13と支持部14とが設けられ、第1基板10には、支持部14を覆うように電極13と支持部14とを電気的に分離する素子分離部15が形成され、電極13上に配置される単結晶部51と素子分離部15上に配置される多結晶部52とを有するエピタキシャル成長層50が形成される。
【0080】
第2基板20には、エピタキシャル成長層50の多結晶部52に接合される接合部22と、センサ素子4の電極13から電気信号を取り出すパッド部3と、接合部22とパッド部3とを電気的に接続する配線23とが形成される。
【0081】
そして、第1基板10に、センサ素子4を覆うように第2基板20が接合され、第2基板20に形成された接合部22が第1基板10に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部52に接合される。これにより、エピタキシャル成長層50の単結晶部51を含むセンサ素子4の電極から、素子分離部15上に形成されるエピタキシャル成長層50の多結晶部52、第2基板20に形成された接合部22、コンタクト25及び配線23を通じてパッド部3にセンサ素子4の電気信号が取り出される。
【0082】
図19は、第1基板アセンブリに電極用の配線及びコンタクトを形成したMEMSセンサを説明する説明図である。
図19に示すMEMSセンサ100は、電極用の配線101及びコンタクト102が形成されている。MEMSセンサ100は、第1基板10において表面に形成されたセンサ素子の電極13と電極13を支持する支持部14とを素子分離部15によって電気的に絶縁し、電極13を素子分離部15上に配置された配線101にコンタクト102を介して接続し、第1基板10に形成された配線101と第2基板20に形成された接合部22とを接合し、第2基板20から電極13の電気信号を取り出すように形成されている。MEMSセンサ100の製造では、素子分離部15が形成された後に、コンタクト102及び配線101が形成され、その後に、配線101の周囲を囲む絶縁部103が形成される。
【0083】
本実施形態に係るMEMSセンサ1では、第1基板10の電極13及び素子分離部15上にエピタキシャル成長層50を形成し、第2基板20に形成された接合部22にエピタキシャル成長層50の多結晶部52を接合させるので、第1基板10に電極用の配線及びコンタクトを形成し、第2基板20に形成された接合部に配線を接合させるMEMSセンサに比べて、製造工程を簡素化することができる。また、第1基板10の電極13上に形成されるエピタキシャル成長層50の単結晶部51を電極として用いることができるので、センサの感度を向上させることができる。
【0084】
前述した実施形態において、固定電極30は、アンカ部31を設けることなしにベース部32が素子分離部15を介して支持部14に支持するようにしてもよい。また、可動電極40は、アンカ部41を設けることなしにベース部42がバネ部44を介して支持部14に支持するようにしてもよい。本実施形態では、固定電極30及び可動電極40上にエピタキシャル成長層50が形成されているが、可動電極40及び固定電極30の一方の電極にエピタキシャル成長層50を形成することも可能である。
【0085】
このように、本実施形態に係るMEMSセンサ1は、表面10aに空洞12の一部が露出する空洞12を有する第1基板10と、第1基板10に設けられて空洞12内に配置されるセンサ素子4の電極13と、第1基板10に設けられて電極13を支持する支持部14と、第1基板10に支持部14を覆うように形成されて電極13と支持部14とを電気的に分離する素子分離部15と、第1基板10の電極13及び素子分離部15上に形成されるエピタキシャル成長層50と、第1基板10に接合されてセンサ素子4を覆う第2基板20とを備え、エピタキシャル成長層50は、電極13上に配置される単結晶部51と素子分離部15上に配置される多結晶部52とを有している。
【0086】
これにより、第1基板10の表面10aに形成されたセンサ素子4の電極13及び素子分離部15上に形成されたエピタキシャル成長層50は、電極13上に配置される単結晶部51と素子分離部15上に配置される多結晶部52とを有するので、多結晶部52に第2基板20の接合部22を接合することで、センサ素子4の電極13からエピタキシャル成長層50の単結晶部51及び多結晶部52を通じて第2基板20の接合部22に電気的に接続することができ、第2基板20の接合部22に接合するためのコンタクト及び配線を形成する場合に比して、製造工程を簡素化することができる。エピタキシャル成長層50の形成時に電極13及び素子分離部15上にそれぞれ単結晶部51及び多結晶部52を同時に形成することができ、製造工程をさらに簡素化することができる。また、第1基板10の電極13上に形成されるエピタキシャル成長層50の単結晶部51を電極として用いることができるので、MEMSセンサ1の感度を向上させることができる。したがって、製造工程を簡素化しつつ感度を向上させることができる。
【0087】
また、素子分離部15は、第1基板10の厚さ方向に延在して電極13と支持部14とを分離する側壁部15aと、第1基板10の表面10aに平行に延在して側壁部15a及び支持部14の上側に配置される上壁部15bとを有している。これにより、素子分離部15内側の支持部14と素子分離部15外側の電極13とを電気的に分離することができ、比較的容易に素子分離を行うことができる。
【0088】
また、エピタキシャル成長層50は、第1基板10と同一材料から形成される。これにより、エピタキシャル成長層50を形成するときに電極13及び素子分離部15上にそれぞれ単結晶部51及び多結晶部52を同時に形成することができ、単結晶部51及び多結晶部52をそれぞれ形成する場合に比して製造工程の簡素化を図ることができる。
【0089】
また、第1基板10は、単結晶シリコン基板であり、素子分離部15は、酸化シリコンを有している。これにより、単結晶シリコン基板である第1基板10に素子分離部15に対応するトレンチ61を形成してトレンチ61を埋めるように熱酸化膜などの酸化シリコン膜を形成することで、比較的容易に素子分離を行うことができる。
【0090】
また、電極13は、支持部14に支持されるベース部32,42と、櫛歯状に形成される電極部33,43とを有している。これにより、電極13上に形成されるエピタキシャル成長層50の単結晶部51を電極部として用いることができ、電極部のサイズを大きくして感度を向上させることができる。
【0091】
また、電極13は、センサ素子4の可動電極40及び固定電極30の少なくとも一方の電極である。これにより、可動電極40及び固定電極30の少なくとも一方の電極上に形成されるエピタキシャル成長層50の単結晶部51を電極として用いることができる。
【0092】
また、センサ素子4は、静電容量型加速度センサ素子である。これにより、静電容量型加速度センサ素子を有するMEMSセンサ1において、製造工程を簡素化するとともに感度を向上させることができる。
【0093】
また、第2基板20に、素子分離部15上にあるエピタキシャル成長層50の多結晶部52に接合される接合部22が形成され、接合部22は、AlGe層によって形成されている。これにより、第1基板10に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部52に第2基板20側のAlGe層によって形成される接合部22を接合することで、センサ素子4の電極13からエピタキシャル成長層50の単結晶部51及び多結晶部52を通じて第2基板20の接合部22に電気的に接続することができる。エピタキシャル成長層50の多結晶部52にAlGe層によって形成される接合部22が接合されるので、エピタキシャル成長層50の単結晶部51に接合される場合に比して、エピタキシャル成長層50の多結晶部52にAlGeを拡散して接合させることができ、良好に接合することができる。
【0094】
また、第2基板20に、電極13から電気信号を取り出すパッド部3と、接合部22とパッド部3とを電気的に接続する配線23とが形成されている。これにより、第2基板20の接合部22から配線23を通じてパッド部3に電気的に接続することができ、第1基板10に設けられた電極13から第2基板20のパッド部3に電気的に接合することができる。
【0095】
また、MEMSセンサ1は、第1基板10に電極13を取り囲むように形成されたシール用絶縁部16を有し、エピタキシャル成長層50は、シール用絶縁部16上に配置される多結晶部53を有している。これにより、シール用絶縁部16上にあるエピタキシャル成長層50の多結晶部53に、第2基板20に形成されたシール部24を接合することで、センサ素子2を密閉して封止することができる。エピタキシャル成長層50の形成時に素子分離部15及びシール用絶縁部16上に多結晶部52、53を同時に形成することができ、製造工程を簡素化することができる。
【0096】
また、第2基板20に、シール用絶縁部16上にあるエピタキシャル成長層50の多結晶部53に接合されるシール部24が形成され、シール部24は、AlGe層によって形成されている。これにより、シール用絶縁部16上にあるエピタキシャル成長層50の多結晶部53に、第2基板20側のAlGe層によって形成されるシール部24が接合されるので、エピタキシャル成長層50の多結晶部53にAlGeを拡散して良好に接合することができる。
【0097】
また、本実施形態に係るMEMSセンサ1の製造方法は、第1基板10の表面10aにセンサ素子4の電極13と電極13を支持する支持部14とを電気的に分離する素子分離部15を形成し、素子分離部15が形成された第1基板10の表面10aにエピタキシャル成長層50を形成し、エピタキシャル成長層50が形成された第1基板10の表面10aをエッチングして、第1基板10の表面10aに空洞12の一部が露出する空洞12を形成するとともに空洞12内に配置されたセンサ素子4の電極13と電極13を支持する支持部14とを素子分離部15によって分離するように電極13及び支持部14を形成し、センサ素子4を覆うように第1基板10に第2基板20を接合し、エピタキシャル成長層50は、電極13上に配置される単結晶部51と素子分離部15上に配置される多結晶部52とを有するように形成される。
【0098】
これにより、素子分離部15が形成された第1基板10の表面10aにエピタキシャル成長層50が形成され、エピタキシャル成長層50が形成された第1基板10の表面10aがエッチングされて、第1基板10の表面10aに空洞12の一部が露出する空洞12が形成されるとともに空洞12内に配置されたセンサ素子4の電極13と電極13を支持する支持部14とを素子分離部15によって分離するように電極13及び支持部14が形成される。エピタキシャル成長層50は、電極13上に配置される単結晶部51と素子分離部15上に配置される多結晶部52とを有するように形成されるので、多結晶部52に第2基板20の接合部22を接合することで、センサ素子4の電極13からエピタキシャル成長層50の単結晶部51及び多結晶部52を通じて第2基板20の接合部22に電気的に接続することができ、第2基板20の接合部22に接合するためのコンタクト及び配線を形成する場合に比して、製造工程を簡素化することができる。エピタキシャル成長層50の形成時に電極13及び素子分離部15上にそれぞれ単結晶部51及び多結晶部52を同時に形成することができ、製造工程をさらに簡素化することができる。また、第1基板10の電極13上に形成されるエピタキシャル成長層50の単結晶部51を電極として用いることができるので、MEMSセンサ1の感度を向上させることができる。したがって、製造工程を簡素化しつつ感度を向上させることができる。
【0099】
また、素子分離部15は、第1基板10の厚さ方向に延在して電極13と支持部14とを分離する側壁部15aと、第1基板10の表面10aに平行に延在して側壁部15a及び支持部14の上側に配置される上壁部15bとを有している。これにより、素子分離部15内側の支持部14と素子分離部15外側の電極13とを電気的に分離することができ、比較的容易に素子分離を行うことができる。
【0100】
また、第1基板10は、単結晶シリコン基板であり、素子分離部15は、酸化シリコンを有している。これにより、単結晶シリコン基板である第1基板10に素子分離部15に対応するトレンチ61を形成してトレンチ61を埋めるように熱酸化膜などの酸化シリコン膜を形成することで、比較的容易に素子分離を行うことができる。
【0101】
また、第2基板20に、素子分離部15上にあるエピタキシャル成長層50の多結晶部52に接合される接合部22を形成し、接合部22は、AlGe層によって形成される。これにより、第1基板10に形成されたエピタキシャル成長層50の多結晶部52に第2基板20のAlGe層によって形成される接合部22を接合することで、センサ素子4の電極13からエピタキシャル成長層50の単結晶部51及び多結晶部52を通じて第2基板20の接合部22に電気的に接続することができる。エピタキシャル成長層50の多結晶部52にAlGe層によって形成される接合部22が接合されるので、エピタキシャル成長層50の単結晶部51に接合される場合に比して、エピタキシャル成長層50の多結晶部52にAlGeを拡散して接合させることができ、良好に接合することができる。
【0102】
また、第1基板10に電極13を取り囲むようにシール用絶縁部16が形成され、エピタキシャル成長層50は、シール用絶縁部16上に配置される多結晶部53を有するように形成される。これにより、シール用絶縁部16上にあるエピタキシャル成長層50の多結晶部53に、第2基板20に形成されたシール部24を接合することで、センサ素子2を密閉して封止することができる。エピタキシャル成長層50の形成時に素子分離部15及びシール用絶縁部16上に多結晶部52、53を同時に形成することができ、製造工程を簡素化することができる。
【0103】
また、第2基板20に、シール用絶縁部16上にあるエピタキシャル成長層50の多結晶部53に接合されるシール部24を形成し、シール部24は、AlGe層によって形成される。これにより、シール用絶縁部16上にあるエピタキシャル成長層50の多結晶部53に、第2基板20側のAlGe層によって形成されるシール部24が接合されるので、エピタキシャル成長層50の多結晶部53にAlGeを拡散して良好に接合し、センサ素子2を密閉して封止することができる。
【0104】
本実施形態では、MEMSセンサ1として、静電容量型加速度センサについて記載されているが、互いに噛み合う櫛場状に形成された固定電極及び可動電極を有するセンサ素子を有する他のMEMSセンサについても同様に適用可能である。
【0105】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 MEMSセンサ
2,4,5 センサ素子
3 パッド部
10 第1基板
12 空洞
13 電極
14 支持部
15 素子分離部
15a 側壁部
15b 上壁部
16 シール用絶縁部
20 第2基板
22 接合部
23 配線
24 シール部
30 固定電極
32,42 ベース部
33,43 電極部
40 可動電極
50 エピタキシャル成長層
51 単結晶部