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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081120
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】既設管の更生方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/162 20060101AFI20230602BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20230602BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F16L55/162
F16L1/00 J
E03F7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194835
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】398062574
【氏名又は名称】カナフレックスコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】金尾 茂樹
【テーマコード(参考)】
2D063
3H025
【Fターム(参考)】
2D063EA07
3H025EA01
3H025EB13
3H025EB25
3H025EE04
(57)【要約】
【課題】排水用主管に対する更生管の設置作業が煩雑になることを防止しつつ、排水用主管に接合された取付管と更生管との接合部を容易かつ適正に止水する。
【解決手段】地中に埋設された排水用主管1に更生管3を設置する更生管設置工程K1と、前記取付管2と前記排水用主管1との接合位置22の下方に位置する前記更生管3の接合部23を特定する接合部特定工程K2と、前記取付管2内に供給ホース61を挿入し、前記接合部23に位置する前記更生管3と前記排水用主管1との間を封止する止水材60を供給する止水材供給工程K3と、前記更生管3内に穿孔装置を進入させ、前記接合部23の特定情報に基づいて前記更生管3の穿孔作業を行うことにより、前記取付管2に連通する開口部25を前記更生管3に形成する開口部形成工程K4と、を備えている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された排水用主管と、該排水用主管の中途部に接合された取付管と、を有する既設管の更生方法であって、
前記排水用主管内に更生管を設置する更生管設置工程と、
前記取付管と前記排水用主管との接合位置の下方に位置する前記更生管と前記排水用主管との接合部を特定する接合部特定工程と、
前記取付管内に、止水材の供給ホースを挿入し、前記接合部に位置する前記更生管と前記排水用主管との間を封止するように前記止水材を供給する止水材供給工程と、
前記更生管内に穿孔装置を進入させ、前記接合部の特定情報に基づいて前記更生管の穿孔作業を行うことにより、前記取付管に連通する開口部を前記接合部に形成する開口部形成工程と、を備えた既設管の更生方法。
【請求項2】
前記更生管設置工程において、可撓性を有する素材からなる前記更生管が巻き付けられた回転体を回転させることにより該回転体から繰り出された前記更生管を、前記排水用主管の内部全域に引き込んで設置した後、該排水用主管に対して前記更生管を固定する、請求項1記載の既設管の更生方法。
【請求項3】
前記止水材供給工程の前に、前記接合部特定工程において、前記更生管内にマーキング用作業装置を進入させ、前記更生管の内部から前記接合位置の画像を撮影することにより前記更生管の接合基準点を特定するとともに、該接合基準点を示すマーキングを前記更生管に形成した後、
前記開口部形成工程において、前記マーキングに基づき、前記更生管の穿孔位置及び穿孔範囲を特定して前記穿孔作業を行う、請求項1又は2記載の既設管の更生方法。
【請求項4】
前記止水材供給工程において、前記供給ホースから前記接続部に位置する更生管上に前記止水材を充填し、その充填圧力に応じて供給された前記止水材により前記更生管と前記排水用主管との間を封止した後、
前記開口部形成工程において、前記更生管と、該更生管上に充填された前記止水材と、を同時に切除することにより、前記開口部を形成する、請求項1~3の何れか1項に記載の既設管の更生方法。
【請求項5】
前記供給ホースの先端部にL字型に屈曲した止水材吐出部を設け、
前記止水材供給工程において、前記取付管内に前記止水材吐出部を挿入した後、該止水材吐出部を回転させつつ前記止水材を供給して、前記接合部に位置する前記更生管と前記排水用主管との間を止水材で封止する、請求項1~3の何れか1項に記載の既設管の更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された排水用主管と、該排水用主管の中途部に接合された取付管と、を有する既設管の更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水や雨水等を案内する排水用主管(管体)等からなる既設管を配設経路に沿って地中に埋設し、この配設経路の途中に相隣接する既設管同士を接続するためのハンドホールやマンホール等の接続部を設けてなる排水管構造が用いられている。このような排水管構造において、可撓性を有する素材からなる更生管(補助管)を回転体に繰り出し自在に巻き付け、この回転体を回転させることにより繰り出される更生管を、一対の接続部間に配設された排水用主管の内部全域に挿入した後、この排水用主管に更生管を固定する排水管補修方法(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
また、地中に埋設された排水用主管(下水道本管からなる第1の管路)と取付管(第2の管路)との接合部に、経時的に硬化する樹脂組成物を前記排水用主管及び取付管の両方に跨るように噴射し、その噴射された樹脂組成物の硬化により、前記更生管の内側に止水層を形成する止水層形成工程と、前記排水用主管及び/又は取付管の内周面に更生管を設置し、該更生管により前記止水層の内面を被覆する更生管設置工程と、を含む止水工法(特許文献2参照)が知られている。
【0004】
さらに、地中に埋設された排水用主管(下水管)の内側に、更生管(新設管)を挿通し、排水用主管と更生管の隙間に二液硬化型薬液を供給して硬化させることにより、排水用主管の補修を行う下水管補修方法(特許文献3)が知られている。当該方法では、根元側が薬液供給手段に連通され、その先端部が薬液吐出口に形成され、内部に二液混合用のミキサーを内蔵したフレキシブルホース製の薬液供給用パッカーを準備し、パッカーの先端側の外周部に伸縮性袋体を外嵌してこの袋体内部を流体供給手段に連通し、排水用主管に連通した取付管内に袋体付きパッカーを下向きに挿入する。そして、パッカー先端が更生管の外周面に到達した時点で、袋体内に流体を加圧充填して袋体を膨張させることにより、取付管とパッカーの隙間をシールし、その状態で薬液供給用パッカー内に薬液を供給して排水用主管と更生管との間に薬液を充填、硬化させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4172138号公報
【特許文献2】特開2018-91438号公報
【特許文献3】特開平4-161540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示された排水管補修方法によれば、回転体から繰り出された更生管を、排水用主管内に挿入して固定することにより、例えば排水用主管の配設経路に設けられたハンドホールやマンホール等からなる一対の接続部の間に配設された排水用主管の内部全域を、更生管によって補修する作業を極めて迅速に行うことが可能である。しかし、この構成では、前記一方の接続部と他方の接続部との間に、地上側の汚水桝に連結された取付管が設けられている場合に、この取付管と更生管との接合部を適正に止水することが困難であり、この部分から既設管と更生管との間に家庭の排水等が侵入して、取付管から更生管への排水性が阻害され易いという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に示す止水工法によれば、地中に埋設された排水用主管と、地上側の汚水桝に連通する取付管との接合部に、経時的に硬化する樹脂組成物を噴射して止水層を形成することにより、排水用主管と更生管との隙間に家庭の排水等が侵入するのを、ある程度は抑制することができる。しかし、上述の止水工法では、その実施形態に開示されているように、マンホール等の接続部から排水用主管内に噴射装置を導入し、排水用主管と取付管との接合部をカメラ等で下方から確認しつつ、排水用主管及び取付管の内周面に向けて止水層形成用の樹脂組成物を噴射することにより、止水層を形成するように構成されている。このため、適正量の樹脂組成物を正確に噴射することが困難であり、止水性を十分に確保することは困難であった。
【0008】
また、排水用主管と取付管との接合部に止水層を形成した後に、更生管を排水用主管(下水道本管)内に挿入して設置しているため、この更生管と前記止水層との間に隙間が形成されることが避けられず、この隙間に家庭の排水等が侵入し易いという問題がある。なお、特許文献2の実施形態に開示されているように、前記止水層を形成した後、排水用主管内に管状の更生管形成用のライニング材を導入し、このライニング材の両端を閉塞部材で閉塞した状態で、地上に配置された作業装置からホースを介して閉塞空間内に圧縮空気を導入することにより、更生管用ライニング材を拡径して、その外周面を排水用主管の内周面及び止水層の鍔状部の内面に密着させるようにすれば、更生管と止水層との隙間をなくすことも可能である。しかし、この構成では、ライニング材を拡径して排水用主管の内周面に密着させるという極めて煩雑な作業を必要であるために、施工コストが高く付くとともに、施工期間が長くなることが避けられない。
【0009】
特許文献3に開示された下水管更生方法では、排水用主管内に更生管を挿通した後に、排水用主管に連通した取付管内に薬液供給手段を挿入し、排水用主管と更生管の隙間に二液硬化型薬液を供給して硬化させることにより、排水用主管と更生管の隙間をシールする止水層を設けるように構成されているので、家庭の排水等が前記隙間に侵入するのを抑制することができる。しかし、前記薬液の硬化後に、排水用主管と更生管との接合部に位置する止水層(薬液)及び更生管を切除して、排水用主管と更生管との接合部を連通させる開口部を形成する必要があるが、前記取付管は、その直径が通常120mm程度であり、作業者が取付管内に入って前記切除作業を行うことが不可能である。
【0010】
このため、上述の下水管更生方法では、二液硬化型薬液の硬化後に、取付管内に挿入した削孔機により硬化した薬液及び更生管を切除するようにしている。しかし、前記取付管はL字形等の複雑な形状に折曲していることが多く、地上から削孔機を操作して前記切除作業を適正に行った場合に、排水用主管に対する取付管の接合部に対応した開口部を更生管に正確に形成することが困難であり、例えば開口部の直径が小さくなって更生管への排水性が阻害されたり、逆に開口部の直径が大きくなって前記止水層が破壊されたりする等の問題があった。
【0011】
本発明の目的は、前述の状況に鑑み、排水用主管に対する更生管の設置作業が煩雑になることを防止しつつ、排水用主管の中途部に接合された接合された取付管と更生管との接合部を容易かつ適正に止水して、取付管から更生管への排水性を良好に確保することが可能な既設管の更生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る既設管の更生方法は、地中に埋設された排水用主管と、該排水用主管の中途部に接合された取付管と、を有する既設管の更生方法であって、前記排水用主管内に更生管を設置する更生管設置工程と、前記取付管と前記排水用主管との接合位置の下方に位置する前記更生管と前記排水用主管との接合部を特定する接合部特定工程と、前記取付管内に、止水材の供給ホースを挿入し、前記接合部に位置する前記更生管と前記排水用主管との間を封止するように前記止水材を供給する止水材供給工程と、前記更生管内に穿孔装置を進入させ、前記接合位置の特定情報に基づいて前記更生管の穿孔作業を行うことにより、前記取付管に連通する開口部を前記更生管に形成する開口部形成工程と、を備えたものである。
【0013】
本発明に係る既設管の更生方法は、管更生構造製造方法(管更生構造生産方法)である。該管更生構造製造方法により製造される管更生構造は、前記排水用主管と、前記取付管と、前記更生管と、前記止水材と、前記開口部と、から構成される。
【0014】
この構成によれば、更生管設置工程で排水用主管内に更生管を設置した後、止水材供給工程において、取付管内に止水ホールを挿入して止水材を供給するように構成されているため、特許文献2に示された止水工法、つまり排水用主管内に噴射装置を導入して、排水用主管及び取付管の内周面に止水層形成用の樹脂組成物を噴射して止水層を形成した後、地中に埋設された排水用主管内に更生管を設置する工法のように、この更生管と前記止水層との間に隙間が形成されることはない。したがって、止水材で必要個所を適正に封止することにより、取付管から更生管への排水性を良好に確保することができる。
【0015】
しかも、接合部特定工程で特定された接合部の特定情報に基づいて、穿孔装置による更生管の穿孔作業を行うように構成されているため、更生管に開口部を形成する作業を容易かつ正確に行うことができる。したがって、取付管がL字形等の複雑な形状に折曲している場合においても、更生管の穿孔位置及び穿孔範囲を正確に特定して穿孔装置による穿孔作業を適正に行うことが可能であり、取付管から更生管への排水性が損なわれること等を効果的に防止することができる。
【0016】
また、前記更生管設置工程において、可撓性を有する素材からなる前記更生管が巻き付けられた回転体を回転させることにより該回転体から繰り出された前記更生管を、前記排水用主管の内部全域に引き込んで設置した後、該排水用主管に対して前記更生管を固定することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、排水用主管の内部全域に更生管を設置する作業を容易かつ短時間で行うことができる。しかも、上述のように更生管と排水用主管との間に止水材を供給して、両者の間に形成された隙間を封止することにより、この隙間に浸入した家庭の排水又は土砂等により更生管もしくは排水用主管が傷付けられたり、取付管から更生管への排水性が損なわれたりするのを防止できるという利点がある。
【0018】
また、前記止水材供給工程の前に、前記接合部特定工程において、前記更生管内にマーキング用作業装置を進入させ、前記更生管の内部から前記接合位置の画像を撮影することにより前記更生管の接合基準点を特定するとともに、該接合基準点を示すマーキングを前記更生管に形成した後、前記開口部形成工程において、前記マーキングに基づき、前記更生管の穿孔位置及び穿孔範囲を特定して前記穿孔作業を行うことが好ましい。
【0019】
この構成によれば、前記更生管の上方部が止水材で覆われている場合においても、前記取付管に連通する適正な大きさの開口部を更生管に形成する作業を、前記更生管内に進入させた穿孔装置により容易かつ正確に形成することができる。
【0020】
また、前記止水材供給工程において、前記供給ホースから前記接続部に位置する更生管上に前記止水材を充填し、その充填圧力に応じて供給された前記止水材により前記更生管と前記排水用主管との間を封止した後、前記開口部形成工程において、前記更生管と、該更生管上に充填された前記止水材と、を同時に切除することにより、前記開口部を形成するものであってもよい。
【0021】
この構成によれば、更生管と前記排水用主管との間を止水材によって容易に封止することができるとともに、開口部形成工程において、取付管に連通する適正な大きさの開口部を、更生管の適正位置に形成することができる。
【0022】
また、前記供給ホースの先端部にL字型に屈曲した止水材吐出部を設け、前記止水材供給工程において、前記取付管内に前記止水材吐出部を挿入した後、該止水材吐出部を回転させつつ前記止水材を供給して、前記接合部に位置する前記更生管と前記排水用主管との間を止水材で封止するようにしてもよい。
【0023】
この構成によれば、例えば作業者が入ることができない取付管の下端部に位置する更生管と前記排水用主管との間を止水材により封止する作業を容易かつ正確に行うことができるという利点がある。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る既設管の更生方法によれば、排水用主管に対する更生管の設置作業が煩雑になることを防止しつつ、排水用主管の中途部に接合された取付管と更生管との接合部を容易かつ適正に止水して、取付管から更生管への排水性を良好に確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る既設管の更生方法の実施形態を示す工程図である。
図2】既設管の設置状態を示す断面図である。
図3】更生管の設置工程を示す説明図である。
図4】排水用主管内に更生管を設置した状態を示す断面図である。
図5】更生管の構成を示す一部拡大断面図である。
図6】更生管の接合部特定工程を示す断面図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8】止水材の供給工程を示す断面図である。
図9】開口部の形成工程を示す断面図である。
図10】更生管に開口部を形成した状態を示す断面図である。
図11】本発明の第二実施形態に係る既設管の更生方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る既設管の更生方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0027】
(第一実施形態)
図2は、本発明が適用される既設管10の設置状態を示し、図3は、既設管10に更生管3を設置する工程を示している。既設管10は、地中に埋設されたコンクリート製のヒューム管等からなる排水用主管1と、相隣接する排水用主管1,1の端部同士を接続するためのコンクリート製のマンホールからなる接続部11,12と、一対の接続部11,12の間に位置する排水用主管1の中途部に接合されたコンクリート製の取付管2と、を有している。この取付管2は、地上側の汚水桝(図示せず)等と排水用主管1とを連結して、家庭の排水等を排水用主管1内に導出するものである。
【0028】
この発明に係る既設管10の更生方法は、図1に示すように、地中に埋設された排水用主管1内に更生管3を設置する更生管設置工程K1と、取付管2と排水用主管1との接合位置の下方に位置する更生管3と排水用主管1との接合部を特定する接合部特定工程K2と、前記接合部に位置する更生管3と排水用主管1との間を封止するように止水材を供給する止水材供給工程K3と、更生管3内に穿孔装置を進入させて、前記接合部の特定情報に基づき更生管3に穿孔作業を行うことにより、前記取付管2に連通する開口部を更生管3に形成する開口部形成工程K4と、を備えている。
【0029】
更生管設置工程K1は、図略のカメラ等により排水用主管1内の調査を行った後、排水用主管1内を洗浄車の高圧ジェットにより洗浄するとともに、排水用主管1内に浸入した樹木の根等からなる障害物を除去する等の処理を行う前処理工程と、排水用主管1内に更生管3を引き込む引込工程と、後述の仕上げ工程と、を有している。
【0030】
前記引込工程では、図3に示すように、排水用主管1の配設経路に設けられたマンホール等からなる2つの接続部11,12のうちの一方、例えば図3の左側に位置する接続部11の上端開口部付近に、可撓性を有する合成樹脂製の管体からなる更生管3が巻き付けられた回転体30と、ガイドローラ等を有する更生管3の案内装置31とを配置する。次いで、更生管3の先端に取り付けられた帽子型のキャップ41に、図3の右側に位置する他方の接続部12の上端開口部付近に配置されたウインチ42により巻き取られるワイヤー43を固定する。そして、ウインチ42からなる引込手段を作動させることにより、接続部11の上端開口部から排水用主管1内に更生管3を引き込んで設置する。なお、前記ウインチ42に代え、更生管3を空気圧等の流体圧に応じて押し込む手段や、その他の設置手段を用いてもよい。
【0031】
更生管3は、図4に示すように、排水用主管1の内径Sよりも小さい、例えば286mm程度の外径Rと250mm程度の内径rとを有しているが、この寸法に限定されるものではない。そして、排水用主管1内に更生管3が設置された状態では、両者の間に排水用主管1の内径Sと更生管3の外径Rとの寸法差に対応した隙間13が形成されることになる。
【0032】
図5に示すように、更生管3は、内面が略フラットな内管壁33と、この内管壁33の外面に形成された外管壁32と、を有している。外管壁32は、例えば内管壁33の外面に螺旋状に巻き回される帯状の芯材34と、この芯材34を被覆するとともに、内管壁33の外面に融着させる融着層35と、を有している。そして、芯材34及び融着層35からなる補強用の凸部38が、更生管3の外周部に沿って螺旋状に延びるように形成されるとともに、相隣接する凸部38,38の間に一定幅の凹部39が形成されている。
【0033】
更生管3の外周部に補強用の凸部38が設けられることにより、回転体30に巻き付け得る程度の可撓性が更生管3に与えられるとともに、設置時に更生管3が円筒形状を安定して保持し得る強度が更生管3に与えられている。なお、前記螺旋状に延びる補強用の凸部38に代え、更生管3の外周部に環状の凸部と凹部とを一定間隔で設けた構造としてもよい。また、図例では、台形状の凸部38を更生管3の外周部に設けているが、これに限られず、矩形状、又は半円形状の凸部を設けた構造としてもよい。
【0034】
芯材34は、硬質樹脂(又は硬質樹脂組成物)から構成される。硬質樹脂には、エンジニアリングプラスチック等の既知の樹脂を広く利用できる。かかる硬質樹脂の例としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEI(ポリエーテルイミド)、PAR(ポリアリレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、POM(ポリアセタール)、PP(ポリプロピレン)、上記で挙げた以外の任意の他の飽和ポリエステルおよびこれらのポリマーブレンド体のいずれか一つが挙げられる。
【0035】
上述のPPSおよびPPEは、高い耐熱性、強度、剛性、優れた寸法安定性を有するとともに熱可塑性樹脂としての成形加工性にも優れた高耐熱エンジニアリングプラスチックである。PPSおよびPPEは、従来は金属や熱硬化性樹脂の代替として用いられ、射出成形により加工されることが多い。このPPS又はPPEから構成される芯材34は、吸水率が極めて低く、また、吸水による寸法変化も小さく、寸法安定性に優れている。しかも耐熱水性にも優れている。
【0036】
前記PPSは、リニア型のものであっても、架橋型のものであってもよいが、リニア型を使用することによって芯材に弾力性を付与することができる。また、PPEは変性PPE(m-PPE)であってもよく、成形性に優れるPS(ポリスチレン)などのスチレン系樹脂や、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂が更に含まれていてもよい。
【0037】
芯材34を構成する硬質樹脂は、上記のような樹脂材料に、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、含水ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の強化材が添加されて強化されている。この強化材としては、芯材34の強度を確保する観点から、ガラス繊維を採用することが好ましい。なお、PC(ポリカーボネート)、芳香族ナイロン、PS(ポリスチレン)、ABS樹脂、AS樹脂、不飽和ポリエステルおよびこれらに類するポリマーブレンド材料により芯材34を構成することが可能である。さらに、芯材34を構成する硬質樹脂は、必要に応じてエラストマーなどの他の樹脂成分を含んでいてもよい。また、芯材3を構成する硬質樹脂は、強化繊維を含まなくてもよい。
【0038】
融着層35は、耐薬品性に優れた熱可塑性樹脂、例えば塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂や、例えばスチレン系、ナイロン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等から構成することができる。これらの熱可塑性エラストマーにオレフィン系樹脂を配合すれば、内圧(例えば内水圧)、外圧(例えば外水圧)、偏平強度、圧縮強度、引張強度などの向上を図ることができるため、より好ましい。
【0039】
特に耐油性が要求される場合には、上記ポリオレフィン樹脂のうちでも、直線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、他の低密度ポリエチレン、および中密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも一種を含む材料で融着層35を構成することが好ましい。この場合、他のオレフィン系樹脂(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等)などが配合されていてもよい。また、特に可撓性が要求される場合には、融着層35は、上記熱可塑性エラストマーのうちでも、水添スチレン系熱可塑性エラストマー、具体的にはスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)を使用することが好ましい。前記SEBSには、SEBSの酸変性品やアミン変性品も含まれる。
【0040】
内管壁33は、内側層である下巻層36と、この下巻層36の外側に積層される外側層37とを備える。下巻層36及び外側層37には、前記融着層35と同様の材質が採用される。外側層37は、例えばバインダー層、クロス糸、中巻層、及び、横糸等で構成される。具体的には、下巻層36の外面に、クロス糸を異なる方向に巻回して互いに交差させて配置するとともに、このクロス糸を変性ポリプロピレンで形成されたバインダー層で被覆する。さらに、バインダー層上に横糸を同一方向に巻回するとともに、この横糸をスチレン系エラストマーからなる中巻層で融着する等により外側層37が構成される。
【0041】
本実施形態において、クロス糸及び横糸には、ポリビニールアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアリレート繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、又は、液晶ポリエステル繊維の何れかで構成された補強繊維が採用される。このうち、補強繊維の強度を確保する観点から、高強度・高弾性率・高耐熱性を備える「スーパー繊維」である、ポリアリレート繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアラミド繊維の何れかを採用することが好ましい。
【0042】
前記更生管3は、内管壁33の外側層37において、同一方向に巻回される横糸と、異なる方向に巻回されて互いに交差するクロス糸と、の二種類の補強繊維が巻回されることにより構成されている。これにより、更生管3における耐内圧特性を高めることができる。なお、外側層37に巻回する補強繊維を布状に構成してもよい。これにより、更生管3に耐内圧特性をさらに向上させることが可能となる。
【0043】
このような内管壁33の下巻層36は、まず押出成形機から軟化点以上融点以下の温度で平帯状に押出された下巻層形成用の帯状材を、管成形用マンドレルの上でその側縁部が重なり合うように螺旋状に巻き付けることにより形成される。そして、前記下巻層36の上に、別の押出成形機から同じく上記温度条件下で平帯状に押出されたバインダー層及び中巻層成用の帯状材を、同じく側縁部が重なり合うように螺旋状に巻き付けて、筒状の外側層37を積層することにより、内周面がほぼ平滑な内管壁33が形成される。
【0044】
上述の構成を有する更生管3を、引込工程において排水用主管1内に引き込んだ後、前記回転体30、案内装置31、及びウインチ42等を取り外す。次いで、仕上げ工程において更生管3の端部をグラインダー等により切断する。また、この切断端部から更生管3と排水用主管1との隙間13(図4参照)に、下記の端末処理剤を詰め込むとともに、更生管3の切断端部を端末処理剤で封止することにより、更生管3の管口処理を行う。
【0045】
前記端末処理剤としては、ポリオールを主成分とする基剤と、ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤と、適宜の発泡剤等と、を混合して発泡させた硬質発泡体ポリウレタンが好適に使用される。硬質ポリウレタン発泡体からなる端末処理剤を用いた場合は、これを早期に硬化させることができるとともに、一定の保形性が得られるために、特に地震により発生する振動を良好に吸収して、排水用主管1や更生管3の割れやヒビが入ることを良好に回避できるという利点がある。なお、硬質ポリウレタン発泡体に代えて、硬質発泡ポリスチレンや、その他の合成樹脂材、もしくは合成ゴム材等を用いてもよく、時間の経過に応じて硬化する適宜の材料を使用可能である。
【0046】
また、モルタル等のコンクリート材、もしくは前記端末処理剤と同様の材料、つまりポリウレタン発泡体等からなる裏込め材を、接続部11,12の間に配設された排水用主管1の略全域に亘って充填するようにしてもよい。例えば、更生管3の管口処理を行う際に、更生管3の切断端部に位置する更生管3と排水用主管1との隙間に、予め裏込め材充填用のチューブを挿入しておき、このチューブを介して前記隙間13内に裏込め材を供給することにより、排水用主管1の内周面に沿ってその長さ方向の略全域に亘り裏込め材を充填するようにしてもよい。これにより、排水用主管1と更生管3とを強固に固定することができる。
【0047】
上述のように更生管設置工程K1において、排水用主管1内に更生管3を引き込んで固定するように構成した場合には、排水用主管1の埋設部を掘り起こす等の開削工事が不要であるため、既設管10の更生に要する作業時間及び費用を大幅に低減することができる。具体的には、本実施形態に係る更生管3の引込工法によれば、従来の開削工法と比較して、作業時間を約10分の1に短縮することができるとともに、単位長さ当りの費用を約半分に削減することが可能である。
【0048】
次いで、前記接合部特定工程K2において、図6に示すように、撮像カメラ51及び細径のドリル52等を備えた自走式作業ロボット、又は手動の作業機等からなるマーキング用作業装置5を更生管3内に進入させる。そして、更生管3の内部から、取付管2と排水用主管1との接合位置22の画像を撮像カメラ51で撮影することにより、図7及び図8に示す更生管3と排水用主管1との接合部23を特定するとともに、更生管3の接合基準点24を特定する。
【0049】
前記接合位置22とは、取付管2の内周面下端部と、これに対応して排水用主管1の上部に形成された連通孔14の周縁部と、の接合部位を示している。また、接合部23とは、前記連通孔14の周縁部に沿って更生管3の外周面上に形成される一定幅の円環状部であって、後述の止水材60の接合力に応じて排水用主管1の下面に接合される部位である。一方、接合基準点24とは、取付管2の軸心Jと更生管3との交点であって、更生管3に開口部25を形成する際に基準となる点を示している。
【0050】
この場合、取付管2の上端から取付管2内に照明ランプ53を挿入し、この照明ランプ53により更生管3の上方に光を照射すれば、更生管3の内部から前記接合位置22の画像を鮮明に撮影することが可能である。したがって、更生管3が光透過性の低い素材からなっている場合においても、更生管3の接合基準点24を、接合位置22の画像に基づいて正確に特定することができる。次いで、マーキング用作業装置5のドリル52を上昇させて更生管3に細径のドリル孔を形成することにより(図7参照)、接合基準点24を示すマーキングを更生管3に形成する。
【0051】
なお、更生管3が光透過性の高い素材で形成されている場合には、必ずしも照明ランプ53を必要とせず、取付管2内に差し込む自然光を利用して、前記更生管3の接合基準点24を特定可能である。また、ドリル孔に代えて、更生管3の内面に着色を施す等により、接合基準点24を示すマーキングを形成してもよい。
【0052】
次に、上述の止水材供給工程K3において、図8に示すように、止水材供給装置6の供給ホース61を、取付管2の上端から該取付管2内に挿入する。止水材供給装置6は、例えば止水材生成用の主剤及び硬化剤を収容する収容ボンベ62,63と、止水材噴射ノズル64と、を有し、この止水材噴射ノズル64の先端部に可撓性を有する素材からなる供給ホース61が接続されたものである。そして、作業者が、取付管2の上方から止水材供給装置6を操作して、取付管2と排水用主管1との接合位置22の下方に位置する更生管3上に所定量の止水材60を充填し、その充填圧に応じて前記接合部23に位置する更生管3と排水用主管1との間を封止するように止水材60を供給する。
【0053】
供給ホース61は、例えば、ポリブデンからなる外側チューブと、テフロン(登録商標)からなり、外側チューブに挿入されて先端付近が外側チューブから突出する内側チューブと、から構成される。これにより、供給ホース61の中間付近は、供給ホース61の先端を接合部23の近辺へ押し込むことができる強度及び可撓性を有するとともに、供給ホース61の先端付近は、折り曲げることが可能な強度を有する。この場合、中間付近が、供給ホース61の先端を接合部23の近辺へ押し込むことができる強度を有し、供給ホース61の先端付近が、折り曲げることが可能な強度を有していれば、供給ホース61の原材料は、特に限定されない。また、供給ホース61の中間付近が、供給ホース61の先端を接合部23の近辺へ押し込むことができる強度及び可撓性を有するため、取付管2の種々の形状に対応して、供給ホース61の先端を接合部23の近辺へ押し込むことができる。すなわち、この構成によれば、取付管2が如何なる形状を有するものであっても、これに対応させるように供給ホース61を変形させて止水材60を適正に注入することができる。
【0054】
すなわち、前記更生管3上に所定量の止水材60を充填すれば、その自重に応じて止水材60が側方に流動することにより、前記接合部23に形成された更生管3と排水用主管1との隙間13内に止水材60が侵入して、更生管3と排水用主管1との接合部23が止水材60で封止される。また、接合部23の上方に位置する取付管2と排水用主管1との接合位置22を止水材60で封止することも可能である。
【0055】
次いで、上述の開口部形成工程K4では、図9に示すように、削孔刃71を備えた自走式作業ロボット等からなる穿孔装置7を更生管3内に進入させ、前記接合部23の特定情報に基づいて更生管3の穿孔作業を行うことにより、取付管2及び排水用主管1の連通孔14に導通する開口部25を、更生管3と排水用主管1との接合部23に形成する。なお、接合部特定工程K2で使用したマーキング用作業装置5のドリル52を、削孔刃71に交換する等により、マーキング用作業装置5を穿孔装置7として用いることも可能である。
【0056】
上述のように地中に埋設された排水用主管1内に更生管3を設置する更生管設置工程K1と、排水用主管1の中途部に接合された取付管2と排水用主管1との接合位置22の下方に位置する更生管3の接合部23を特定する接合部特定工程K2と、取付管2の上端から取付管2内に、止水材60の供給ホース61を挿入し、接合部23に位置する更生管3と排水用主管1との間を封止するように止水材60を供給する止水材供給工程K3と、更生管3内に穿孔装置7を進入させ、前記接合部23の特定情報に基づいて更生管3の穿孔作業を行うことにより、取付管2に連通する開口部25を接合部23に形成する開口部形成工程K4と、を備えた本発明の既設管10の更生方法によれば、排水用主管1に対する更生管3の設置作業が煩雑になるのを防止しつつ、接合部23に位置する更生管3と排水用主管1との間を容易かつ適正に止水して、取付管2から更生管3への排水性を良好に確保することができる。
【0057】
すなわち、上述の第一実施形態では、更生管設置工程K1で排水用主管1内に更生管3を設置した後、止水材供給工程K3において、取付管2の上端から該取付管2内に止水材供給装置6の供給ホース61を挿入して、地中に埋設された排水用主管1と地上側の汚水桝(図示せず)に連通する取付管2との接合位置22に、経時的に硬化する硬質ポリウレタン発泡体等の発泡樹脂材からなる止水材60を噴射するように構成している。このため、特許文献2に開示された止水工法のように、排水用主管内に噴射装置を導入して、取付管と排水用主管との接合部をカメラ等で確認しつつ、該排水用主管及び取付管の内周面に止水層形成用の樹脂組成物を噴射して止水層を形成する場合のように、適正量の止水材を正確に噴射することが困難となることはなく、必要かつ十分な量の止水材60を適正位置に正確に供給することが可能である。
【0058】
なお、図5に示すように、更生管3の外周部に補強用の凸部38及び凹部39が形成されている場合、凸部38が邪魔になって凹部29内に止水材60を充満させることが困難になる可能性がある。しかし、硬質ポリウレタン発泡体等の発泡樹脂材からなる止水材60を用いれば、凸部38を乗り越えて凹部39内に供給された少量の止水材60を発泡させることにより、該止水材60により凹部39の全体を覆うことができる。したがって、上述の更生管3を用いた場合においても、接合部23に位置する更生管3と排水用主管1との間を止水材60により容易かつ十分に封止して、取付管2から更生管3への排水性を良好に確保することができる。
【0059】
また、上述のように、地中に埋設された排水用主管1内に更生管3を挿入した後に、前記接合部23に位置する更生管3と排水用主管1との間に止水材60を供給して、この部分を封止するようにしている。このため、更生管3と排水用主管1とが接合部23において強固に接合されるとともに、止水材60によって必要個所が容易かつ確実に止水されることになる。すなわち、特許文献2に開示された止水工法のように、排水用主管と取付管との接合部に止水層を形成した後、既設管内に更生管を設置する際に、前記止水層と更生管との間に隙間が形成されることはない。したがって、更生管の設置する際に更生管用ライニング材を拡径して、止水層と更生管との隙間をなくして止水性を確保するという煩雑な作業も不要であり、施工費用を安価に抑えるとともに、施工期間を短縮することができる。
【0060】
さらに、本発明では、接合部特定工程K2で特定された接合部23の特定情報に基づき、更生管3内に進入させた穿孔装置7により更生管3の穿孔作業を行うように構成したため、取付管2及び排水用主管1の連通孔14に対応した大きさの開口部25を更生管3に正確に形成することができる。したがって、取付管2がL字形等の複雑な形状に折曲している場合においても、前記穿孔作業を適正に行うことが可能であり、不適切な穿孔作業が行われて、取付管2から更生管3への排水性が阻害されたり、止水材60の供給個所が破壊されたりするのを効果的に防止することができる。
【0061】
なお、上述の第一実施形態では、止水材供給工程K3において、取付管2の上端から該取付管2内に、止水材供給装置6の供給ホース61を挿入し、取付管2と排水用主管1との接合位置22と、その下方に位置する接合部23と、の両方を止水材60で封止しているが、これに限らず、種々の変形が可能である。例えば、取付管2と排水用主管1とが接合位置22において密着しており、この部分に排水等が侵入する虞がない場合には、更生管3と排水用主管1との接合部23のみを止水材60で封止すればよい。また、更生管3と排水用主管1との隙間13に止水材60を必ずしも侵入させる必要はなく、止水材60で更生管3と排水用主管1との接合部23の内周面部を覆うことにより、この部分を封止するようにしてもよい。
【0062】
また、上述の第一実施形態に示すように、止水材供給工程K3において、取付管2と排水用主管1との接合位置22の下方に形成された排水用主管1と更生管3との隙間13に止水材60を供給して、この隙間13を封止するように構成した場合には、取付管2内に流入した家庭の排水等が、前記隙間13に侵入するのを確実に防止することができる。したがって、取付管2から更生管3への排水性が損なわれたり、前記隙間13に浸入した汚水又は土砂等により更生管3もしくは排水用主管1が傷つけられたりするのを効果的に防止することができる。
【0063】
第一実施形態に示すように、更生管設置工程K1において、可撓性を有する素材からなる更生管3が巻き付けられた回転体30を回転させることにより該回転体30から繰り出された更生管3を、排水用主管1の内部全域に引き込んだ後、この排水用主管1に対して更生管3を固定するように構成すれば、接続部11,12の間に配設された排水用主管1の全域に更生管3を設置する作業を容易かつ短時間で行うことができる。この反面、更生管3と排水用主管1との間に所定の隙間13が形成されることが避けらず、この隙間13に家庭の排水又は土砂等が侵入し易い傾向がある。しかし、上述のように取付管2と排水用主管1との接合部23に形成された排水用主管1と更生管3との隙間13に止水材60を供給して、この隙間13を止水材60で封止するようにすれば、更生管3への排水性が損なわれたり、前記隙間13に浸入した家庭の排水又は土砂等により更生管3もしくは排水用主管1が傷付けられたりするのを効果的に防止することができる。
【0064】
また、本発明の第一実施形態では、上述のように止水材供給工程K3の前に、接合部特定工程K2において、更生管3内にマーキング用作業装置5を進入させ、更生管3の内部から接合位置22の画像を撮影することにより、更生管3の接合基準点24を特定するとともに、この接合基準点24を示すマーキングを更生管3に形成している。次いで、開口部形成工程K4において、前記マーキングに基づき、更生管3の穿孔位置及び穿孔範囲を特定して穿孔作業を行うように構成している。したがって、更生管3の上方部が止水材60で覆われているために、更生管3の内方から前記接合位置22を視認することができない場合でも、前記マーキングに基づいて、取付管2及び排水用主管1の連通孔14に対応した大きさの開口部25を適正位置に形成することが可能であり、取付管2から更生管3への排水性が損なわれること等を効果的に防止することができる。
【0065】
なお、更生管3及びその上方部に位置する止水材60がそれぞれ光透過性の高い素材で形成されている場合には、必ずしも止水材供給工程K3の前に、接合部特定工程K2において、更生管3の上方に位置する取付管2との排水用主管1との接合位置22を特定する必要はない。例えば、止水材供給工程K3の後に、更生管3内に進入させたカメラ等の映像に基づいて、取付管2との排水用主管1との接合位置22及び更生管3の接合基準点24を特定するようにしてもよい。
【0066】
また、止水材供給工程K3の前に、接合部特定工程K2において、取付管2内にカメラ等を挿入し、更生管3の上方から接合位置22の画像を撮影しつつ、これに基づいて接合基準点24にドリル孔を形成する等により、接合基準点24を示すマーキングを更生管3に形成した後、止水材供給工程K3において、止水材供給装置6の供給ホース61を取付管2内に挿入して、止水材60を供給するようにしてもよい。
【0067】
さらに、第一実施形態に示すように、止水材供給工程K3において、供給ホース61から前記接合部23に位置する更生管3上に止水材60を充填し、その充填圧力に応じて供給された止水材60により更生管3と排水用主管1との間を封止するように構成した場合には、この封止位置をカメラ等で確認することなく、更生管3上に所定量の止水材60を供給して、これを側方に拡散させることにより、止水材60を必要個所に供給することができる。しかも、開口部形成工程K4において、前記接合位置22の下方に位置する更生管3と、その上方に充填された止水材60と、を同時に切除することにより、取付管2内に流入した下水等を更生管3内に導出するための開口部25を容易かつ適正に形成することができる。
【0068】
(第二実施形態)
図11は、本発明の第二実施形態に係る既設管10の更生方法を示している。この第二実施形態に係る既設管10の更生方法では、止水材供給装置6の供給ホース61の先端部に、所定角度のL字型に屈曲した止水材吐出部65を設け、止水材供給工程K3において、取付管2内に止水材吐出部65を挿入した後、該止水材吐出部65を回転させつつ止水材60を供給して、前記接合部23に位置する取付管2と排水用主管1との間を封止するように構成されている。
【0069】
この構成によれば、前記止水材吐出部65を用いることにより、更生管3と排水用主管1との接合部23に位置する取付管2と排水用主管1との間を封止するのに必要かつ十分な量の止水材60を供給する作業を容易に行うことが可能である。したがって、上述の第一実施形態に示すように、供給ホース61から前記接合部23に位置する更生管3上に止水材60を充填し、その充填圧に応じて更生管3と排水用主管1との間を封止する場合に比べて、止水材60の供給量を削減しつつ、必要個所を止水材60で適正に被覆することができるという利点がある。なお、前記止水材60の供給作業を、より容易に行い得るようにするには、前記止水材吐出部65を、テフロン(登録商標)製のチューブ等からなる供給ホース61よりも高い剛性を有する素材、例えばポリブデン管等により構成することが望ましい。
【符号の説明】
【0070】
1 排水用主管
2 取付管
3 更生管
5 マーキング用作業装置
6 止水材供給装置
7 穿孔装置
11,12 接続部
13 隙間
14 連通孔
22 接合位置
23 接合部
24 接合基準点
25 開口部
30 回転体
31 案内装置
41 キャップ
42 ウインチ
43 ワイヤー
51 撮像カメラ
52 ドリル
53 照明ランプ
60 止水材
61 供給ホース
62,63 収容ボンベ
64 止水材噴射ノズル
65 止水材吐出部
71 削孔刃
J 取付管の軸心
K1 更生管設置工程
K2 接合部特定工程
K3 止水材供給工程
K4 開口部形成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11