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特開2023-81123バックアップ電源システム、車両、バックアップ電源の充電方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081123
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】バックアップ電源システム、車両、バックアップ電源の充電方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20230602BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230602BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230602BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230602BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20230602BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/04 N
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
H01M10/44 Q
H01M10/48 301
H01M10/48 P
B60R16/04 S
B60R16/033 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194839
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷田 真一
(72)【発明者】
【氏名】竹中 一雄
(72)【発明者】
【氏名】東出 貴司
(72)【発明者】
【氏名】愛宕 克則
(72)【発明者】
【氏名】松尾 光洋
(72)【発明者】
【氏名】影山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】平城 久雄
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD03
5H030AA03
5H030AS08
5H030BB01
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】蓄電部の劣化を抑制できるバックアップ電源システムを提供する。
【解決手段】バックアップ電源システム1は、充電回路21と、温度検出部23と、制御部3と、を備える。充電回路21は、設定された充電電流に従って蓄電部20を充電する。温度検出部23は、蓄電部20の温度を検出する。制御部3は、充電回路21を制御する。制御部3は、劣化状態検出部31と、設定部32と、を備える。劣化状態検出部31は、蓄電部20の劣化状態を検出する。設定部32は、劣化状態検出部31の検出結果及び温度検出部23の検出温度に基づいて、充電電流及び充電電圧を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された充電電流に従って蓄電部を充電する充電回路と、
前記蓄電部の温度を検出する温度検出部と、
前記充電回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記蓄電部の劣化状態を検出する劣化状態検出部と、
前記劣化状態検出部の検出結果及び前記温度検出部の検出温度に基づいて、前記充電電流及び充電電圧を設定する設定部と、を備える、
バックアップ電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記劣化状態検出部で劣化状態を検出するときに前記充電回路から前記充電電流として検出用電流を供給させ、前記劣化状態検出部の検出結果及び前記温度検出部の検出温度に基づいて前記充電電圧の目標電圧を設定し、前記充電回路から前記充電電流として第1充電電流を供給させ、前記蓄電部を前記目標電圧まで充電させる、
請求項1に記載のバックアップ電源システム。
【請求項3】
前記目標電圧までの充電後において前記温度検出部の現在の検出温度が前記第1充電電流の設定時の前記検出温度と異なる場合は、
前記劣化状態検出部は、前記蓄電部の劣化状態を再検出し、
前記設定部は、前記劣化状態検出部の再検出の検出結果及び前記温度検出部の現在の検出温度に基づいて、前記目標電圧及び前記第1充電電流を再設定する、
請求項2に記載のバックアップ電源システム。
【請求項4】
前記劣化状態検出部は、前記蓄電部の内部抵抗及び静電容量を測定し、測定した前記内部抵抗の測定値及び前記静電容量の測定値に基づいて前記蓄電部の劣化状態を検出する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のバックアップ電源システム。
【請求項5】
前記劣化状態検出部は、前記蓄電部の劣化状態を再検出するとき、前記蓄電部の前記内部抵抗を再測定し、再測定した前記内部抵抗の再測定値と、前記蓄電部の劣化状態の前回の検出で用いた前記静電容量の前記測定値とに基づいて、前記蓄電部の劣化状態を再検出する、
請求項4に記載のバックアップ電源システム。
【請求項6】
前記蓄電部は、
前記蓄電部の劣化状態を検出するための検出用電圧及び検出用電流が前記蓄電部に入力される検出期間と、
前記検出期間に続く期間であって設定又は再設定された前記充電電流及び前記充電電圧に従って前記蓄電部が充電される充電期間と、を有し、
前記検出期間の開始時の前記蓄電部が完全放電状態である場合、前記劣化状態検出部は、前記検出期間において前記検出期間の開始時から所定時間経過後に前記検出用電圧及び前記検出用電流に基づいて、前記蓄電部の劣化状態を検出又は再検出する、
請求項4又は5に記載のバックアップ電源システム。
【請求項7】
前記蓄電部は、
前記蓄電部の劣化状態を検出するための検出用電圧及び検出用電流が前記蓄電部に入力される検出期間と、
前記検出期間に続く期間であって設定又は再設定された前記充電電流及び前記充電電圧に従って前記蓄電部が充電される充電期間と、を有し、
前記検出期間の開始時の前記蓄電部が完全放電状態でない場合、前記劣化状態検出部は、前記検出期間の開始時の前記検出用電圧及び前記検出用電流に基づいて前記蓄電部の劣化状態を検出する、
請求項4又は5に記載のバックアップ電源システム。
【請求項8】
前記蓄電部を備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載のバックアップ電源システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のバックアップ電源システムと、
前記蓄電部の出力電力によって動作する1つ以上の電気機器と、
前記バックアップ電源システム及び前記1つ以上の電気機器を搭載した車両本体と、を備える、
車両。
【請求項10】
設定された充電電流に従って蓄電部を充電回路で充電する充電工程と、
前記蓄電部の温度を検出する温度検出工程と、
前記充電回路を制御する制御工程と、を有し、
前記制御工程は、
前記蓄電部の劣化状態を検出する劣化状態検出工程と、
前記劣化状態検出工程の検出結果及び前記温度検出工程の検出温度に基づいて、前記充電電流及び充電電圧を設定する設定工程と、を有する、
バックアップ電源の充電方法。
【請求項11】
請求項10に記載のバックアップ電源の充電方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バックアップ電源システム、車両、バックアップ電源の充電方法、及びプログラムに関し、より詳細には、蓄電部への充電を制御するバックアップ電源システム、車両、バックアップ電源の充電方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の充放電装置(バックアップ電源装置)は、蓄電部の温度が低いほど蓄電部の充電電圧を高く設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-163713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の充放電装置では、蓄電部の温度のみに基づいて充電電圧を設定するため、充電電圧を精度良く設定できない。このため、蓄電部の最悪な状態を想定して充電電圧を設定する必要があり、充電電圧を最適範囲の値よりも高く設定する必要がある。このように、蓄電部の充電電圧が高く設定されるため、蓄電部が劣化し易い。
【0005】
本開示の目的は、上記の事情を鑑みたものであり、適切な充電電圧の設定が可能となり、かつ、過充電などに伴う蓄電部の劣化を抑制できるバックアップ電源システム、車両、バックアップ電源の充電方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るバックアップ電源システムは、充電回路と、温度検出部と、制御部と、を備える。前記充電回路は、設定された充電電流に従って蓄電部を充電する。前記温度検出部は、前記蓄電部の温度を検出する。前記制御部は、前記充電回路を制御する。前記制御部は、劣化状態検出部と、設定部と、を備える。前記劣化状態検出部は、前記蓄電部の劣化状態を検出する。前記設定部は、前記劣化状態検出部の検出結果及び前記温度検出部の検出温度に基づいて、前記充電電流及び充電電圧を設定する。
【0007】
本開示の一態様に係る車両は、前記バックアップ電源システムと、1つ以上の電気機器と、車両本体と、を備える。前記1つ以上の電気機器は、前記蓄電部の出力電力によって動作する。前記車両本体は、前記バックアップ電源システム及び前記1つ以上の電気機器を搭載する。
【0008】
本開示の一態様に係るバックアップ電源の充電方法は、充電工程と、温度検出工程と、制御工程と、を有する。前記充電工程は、設定された充電電流に従って蓄電部を充電回路で充電する。前記温度検出工程は、前記蓄電部の温度を検出する。前記制御工程は、前記充電回路を制御する。前記制御工程は、劣化状態検出工程と、設定工程と、を有する。前記劣化状態検出工程は、前記蓄電部の劣化状態を検出する。前記設定工程は、前記劣化状態検出工程の検出結果及び前記温度検出工程の検出温度に基づいて、前記充電電流及び前記充電電圧を設定する。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記バックアップ電源の充電方法を1以上のプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、適切な充電電圧の設定が可能となり、かつ、過充電などに伴う蓄電部の劣化を抑制できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係るバックアップ電源システムの構成図である。
図2図2は、同上のバックアップ電源システムを搭載した車両において一部を透視した側面図である。
図3図3は、同上のバックアップ電源システムにおいて蓄電部の充電電圧と温度との相関関係を示す相関関係図である。
図4図4は、同上のバックアップ電源システムの動作例を説明する動作説明図である。
図5図5は、変形例に係るバックアップ電源システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係るバックアップ電源システムについて説明する。下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の例に過ぎない。また、下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(1)実施形態
(1-1)概要
図1及び図2を参照して、本実施形態のバックアップ電源システム1の概要を説明する。
【0014】
図1に示すように、バックアップ電源システム1は、主電源4に失陥が発生した場合に、主電源4に代わって電気機器5に電力を供給する。これにより、電気機器5は、主電源4に失陥が発生した場合であっても、バックアップ電源システム1から供給される電力によって動作を継続可能である。ここで、主電源4の失陥とは、主電源4の故障、劣化又は断線等によって主電源4の出力電圧(内部電圧ともいう)が所定の閾値電圧以下に低下すること(換言すれば、主電源4から電気機器5への電力の供給が停止すること)である。
【0015】
バックアップ電源システム1は、例えば車両9(例えば四輪自動車)に搭載される(図2参照)。以下の説明では、バックアップ電源システム1が車両9に搭載されたシフトバイワイヤシステム用のバックアップ電源システムである場合を例示する。ただし、バックアップ電源システム1は、シフトバイワイヤシステム用に限定されず、例えばドア施錠/解錠装置であってもよいし、ブレーキシステムであってもよい。ドア施錠/解錠システムは、車両9のドアの施錠及び解錠を電動で切り替えるシステムである。ブレーキシステムは、車両9の各車輪に設けられたブレーキ機構を電動で動作させるシステムである。
【0016】
車両9は、バックアップ電源システム1と、バックアップ電源システム1を搭載する車両本体91と、を備える。車両9は、バックアップ電源システム1の他に、主電源4と、電気機器5と、自動変速機6と、駆動源7と、を備える。
【0017】
主電源4は、車両9に搭載されたバッテリ(例えば鉛蓄電池)であり、電気機器5及び駆動源7の後述の点火装置に電力を供給する。
【0018】
駆動源7は、例えば、ガソリン等を燃料として駆動するエンジンであり、エンジンの燃焼室内の混合気を着火して燃焼させる点火装置を含む。
【0019】
自動変速機6は、シフトレバーの位置に基づいて駆動源7の出力軸の回転を自動的に変速して車両9の駆動輪に伝達する機構である。シフトレバーは、運転者が自動変速機6のシフト位置を切り替えるための操作レバーである。自動変速機6のシフト位置は、パーキング位置(Pレンジ)、リバース位置(Rレンジ)、ニュートラル位置(Nレンジ)、ドライブ位置(Dレンジ)を含む。パーキング位置は、車両の駐車時に使用され、ドライブ位置は、車両の前進時に使用され、リバース位置は、車両の後退時に使用される。
【0020】
電気機器5は、主電源4から供給される電力によって動作する機器であり、例えばシフトバイワイヤシステム5である。以下、電気機器5をシフトバイワイヤシステム5とも記載する。シフトバイワイヤシステム5は、シフトレバーの位置に基づいて自動変速機6のシフト位置の切り替えを電動で行うシステムである。シフトバイワイヤシステム5は、駆動制御部51と、アクチュエータ52と、を備える。駆動制御部51は、シフトレバーの位置に基づいてアクチュエータ52に制御信号を出力することで、アクチュエータ52の駆動を制御する。アクチュエータ52は、駆動制御部51からの制御信号に応じて、自動変速機6のシフト位置を切り替えるように構成されている。
【0021】
バックアップ電源システム1では、主電源4に失陥が発生していない場合は、主電源4から電気機器5に電力が供給される。一方、主電源4に失陥が発生した場合は、バックアップ電源システム1から電気機器5に電力が供給される。これにより、主電源4に失陥が発生した場合でも、バックアップ電源システム1から電気機器5に電力が供給されるため、電気機器5は、自動変速機6のシフト位置の切り替えが可能である。
【0022】
(2)詳細構成
図1を参照して、バックアップ電源システム1の構成を詳しく説明する。
【0023】
図1に示すように、バックアップ電源システム1は、蓄電部20と、充電回路21と、放電回路22と、第1ダイオードD1と、第2ダイオードD2と、スイッチSW1と、温度検出部23と、制御部3と、を備える。
【0024】
蓄電部20は、例えば電気二重層コンデンサ(EDLC: Electrical Double Layer Capacitor)である。蓄電部20は、スイッチSW1及び充電回路21を介して主電源4と電気的に接続されている。スイッチSW1は、例えば、車両9のイグニションスイッチである。蓄電部20は、放電回路22及び第2ダイオードD2を介して電気機器5と電気的に接続されている。蓄電部20は、充電回路21を介して主電源4から供給される電力によって充電される。また、蓄電部20は、主電源4に失陥が発生した場合、放電回路22及び第2ダイオードD2を介して電気機器5に電力を供給する。
【0025】
充電回路21は、例えば降圧回路である。より詳細には、充電回路21は、例えば、半導体スイッチング素子を用いたバックコンバータである。充電回路21は、主電源4と電気的に接続されている。充電回路21は、主電源4の出力電圧Vsを降圧して蓄電部20に出力することで、蓄電部20を充電する。充電回路21は、制御部3の充放電制御部30によって動作が制御される。より詳細には、充電回路21は、後述のように、充放電制御部30によって設定される充電電流及び目標電圧に従って蓄電部20を充電する。つまり、充電回路21は充電回路21から蓄電部20に上記充電電流を供給する。そして、充電回路21は、上記のように充電電流を蓄電部20に入力することで、蓄電部20の内部電圧(出力電圧)が上記目標電圧に達するまで、蓄電部20を充電する。
【0026】
放電回路22は、例えば昇圧回路である。より詳細には、放電回路22は、例えば、半導体スイッチング素子を用いたブーストコンバータである。放電回路22は、第2ダイオードD2を介して電気機器5と電気的に接続されている。第2ダイオードD2は、アノードが放電回路22と電気的に接続され、カソードが電気機器5の駆動制御部51及びアクチュエータ52に電気的に接続されている。放電回路22は、蓄電部20の内部電圧を昇圧して電気機器5に出力する。これにより、蓄電部20から電気機器5に電力が供給される。放電回路22は、制御部3の充放電制御部30によって動作が制御される。
【0027】
第1ダイオードD1は、主電源4と電気機器5との間に電気的に接続されている。第1ダイオードD1は、アノードが主電源4と電気的に接続され、カソードが電気機器5の駆動制御部51及びアクチュエータ52と電気的に接続されている。第1ダイオードD1は、充電回路21、蓄電部20及び放電回路22と並列接続されている。
【0028】
温度検出部23は、蓄電部20の周囲に配置されており、蓄電部20の温度を検出する。温度検出部23は、例えばサーミスタである。
【0029】
制御部3は、蓄電部20の内部電圧を監視し、かつ温度検出部23の検出温度に基づいて蓄電部20の温度を監視する。そして、制御部3は、蓄電部20の内部電圧及び温度に基づいて、充電回路21及び放電回路22を制御する。制御部3は、充放電制御部30と、劣化状態検出部31と、設定部32と、温度変化検出部33と、を備える。
【0030】
充放電制御部30は、充電回路21及び放電回路22を制御することで蓄電部20の充放電を制御する。より詳細には、充放電制御部30は、充電回路21及び放電回路22の各々の半導体スイッチング素子を例えばPWM制御することで、蓄電部20の充電電流及び充電電圧を制御する。更に詳細には、充放電制御部30は、蓄電部20の内部電圧を監視する。充放電制御部30は、蓄電部20の内部電圧が充電閾値電圧未満である場合、設定部32によって設定される後述の充電電流、充電電圧及び目標電圧に従って蓄電部20を充電するように、充電回路21を制御する。充放電制御部30は、蓄電部20の内部電圧が充電閾値電圧以上である場合は、蓄電部20を充電しないように充電回路21を制御する。充電閾値電圧とは、蓄電部20を充電する必要がある蓄電部20の内部電圧の閾値である。
【0031】
また、充放電制御部30は、主電源4の出力電圧Vsを監視する。充放電制御部30は、主電源4の出力電圧Vsが失陥閾値電圧未満である場合は、主電源4に失陥が発生したと判定して、蓄電部20の内部電圧を所定電圧に昇圧して電気機器5に出力する(すなわち蓄電部20の蓄電電力を電気機器5に供給する)ように、放電回路22を制御する。充放電制御部30は、主電源4の出力電圧Vsが失陥閾値電圧未満である場合、主電源4には失陥が発生していないと判定して、蓄電部20の蓄電電力を電気機器5に供給しないように放電回路22を制御する。
【0032】
劣化状態検出部31は、蓄電部20の劣化状態を検出する。より詳細には、劣化状態検出部31は、充電回路21から蓄電部20に入力される検出用電流及び検出用電圧に基づいて、蓄電部20の内部抵抗及び静電容量を測定する。上記の検出用電流及び検出用電圧は、蓄電部20の劣化状態を検出するために充電回路21から蓄電部20に入力される電流及び電圧である。そして、劣化状態検出部31は、測定した内部抵抗の測定値及び静電容量の測定値に基づいて、蓄電部20の劣化状態を検出する。劣化状態検出部31は、蓄電部20の内部抵抗が大きいほど蓄電部20の劣化が少なくない(すなわち劣化が進んでいる)と判定する。また、劣化状態検出部31は、蓄電部20の静電容量が減少するほど蓄電部20の劣化が少なくない(すなわち劣化が進んでいる)と判定する。
【0033】
このように、蓄電部20の内部抵抗及び静電容量に基づいて蓄電部20の劣化状態を検出するため、正確に蓄電部20の劣化状態を検出できる。劣化状態検出部31は、抵抗測定部311と、容量測定部312とを含む。抵抗測定部311は、上記検出用電流及び上記検出用電圧に基づいて、蓄電部20の上記内部抵抗を測定する。容量測定部312は、上記検出用電流及び上記検出用電圧の単位時間当たりの上昇率に基づいて、蓄電部20の上記静電容量を演算により検出あるいは推定する。
【0034】
設定部32は、劣化状態検出部31の検出結果及び温度検出部23の検出温度に基づいて、充電電流及び目標電圧を設定する。充電電流は、充電回路21が蓄電部20を充電するときに、充電回路21から蓄電部20に供給する電流である。目標電圧は、充電回路21が蓄電部20を充電するときの目標電圧である。
【0035】
設定部32は、充電電流設定部321と、充電電圧設定部322と、目標電圧設定部323とを含む。充電電流設定部321は、劣化状態検出部31の検出結果及び温度検出部23の検出温度に基づいて、あるいは上記目標電圧に対応して、上記充電電流を設定する。充電電圧設定部322は、充電電流設定部321によって設定された上記充電電流を充電回路21から蓄電部20に入力するために必要な電圧として、上記充電電圧を設定する。目標電圧設定部323は、劣化状態検出部31の検出結果及び温度検出部23の検出温度に基づいて、上記目標電圧を設定する。
【0036】
温度変化検出部33は、設定部32による上記の充電電流の設定後において、蓄電部20の温度変化を検出する。より詳細には、温度変化検出部33は、設定部32による上記の充電電流の設定後において、温度検出部23の現在の検出温度が上記の充電電流の設定時の温度検出部23の検出温度と異なるか否かを判定する。
【0037】
温度変化検出部33が蓄電部20の上記の温度変化を検出すると、設定部32は、温度検出部23の現在の検出温度に基づいて、充電電流及び目標電圧を再設定する。そして、充放電制御部30は、再設定された充電電流及び目標電圧に従って蓄電部20を充電するように、充電回路21を制御する。これにより、充電電流の設定後において温度検出部23の現在の検出温度が充電電流の設定時の検出温度と異なっても、充電電流及び目標電圧を最適範囲内の値に設定できる。ここで再設定される目標電圧は、設定部32に記憶されている先で用いたデータに基づいて静電容量と検出温度との関係から決定されてよい。
【0038】
また、設定部32は、下記のように、充電電流及び目標電圧を設定(又は再設定)する。なお、上記「設定」とは、充電電流及び目標電圧の各値を決めることである。上記「再設定」とは、例えば、スイッチSW1のオン期間中に、一度、上記「設定」が行われた後に再び「設定」をし直すことである。すなわち、設定部32は、温度検出部23での検出温度と、先に測定、検出、演算によって得られた静電容量の値と、先に測定、検出、演算によって得られた内部抵抗の値とによって充電電流と目標電圧とを再設定する。これにより、目標電圧として適切な充電電圧の設定が可能となり、かつ、過充電などに伴う蓄電部20の劣化を抑制できる。また、蓄電部20に対する充電期間も削減可能となる。
【0039】
なお、上記の充電電流及び目標電圧は、蓄電部20の内部抵抗の測定値、静電容量の測定値及び温度検出部23の検出温度を変数とする関数式で与えられてもよい。また、上記の充電電流、充電電圧及び目標電圧は、蓄電部20の内部抵抗の測定値、静電容量の測定値及び温度検出部23の検出温度に対するテーブル(変換表)として与えられてもよい。
【0040】
制御部3は、プロセッサ及びメモリを主構成とするコンピュータシステム(例えばマイクロコントローラ)である。制御部3は、メモリに格納されているプログラムをプロセッサで実行することで、制御部3の各部の機能を実現する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0041】
(3)蓄電部の充電電圧と蓄電部の温度との相関
図3を参照して、蓄電部20の充電電圧(すなわち充電に必要な電圧)と蓄電部20の温度との相関を説明する。図3は、蓄電部20が電気二重層コンデンサで構成されている場合における蓄電部20の充電電圧の温度変化を示す。図3に示すように、蓄電部20が電気二重層コンデンサで構成されている場合は、蓄電部20の充電電圧は、蓄電部20の温度が高温(例えば70℃)になるほど低くなり、蓄電部20の温度が低温(例えば-40℃)になるほど高くなる。なお、蓄電部20の充電電圧は、温度に依存するだけでなく、蓄電部20の劣化状態にも依存する。例えば、蓄電部20の充電電圧は、蓄電部20の劣化が少ないほど低くなり、蓄電部20の劣化が少なくない(すなわち劣化が進んでいる)ほど高くなる。
【0042】
(4)動作例
図4を参照して、バックアップ電源システム1の動作の一例を説明する。図4の上段のグラフは、蓄電部20の内部電圧(出力電圧)Vの時間変化の一例を示し、図4の下段のグラフは、充電回路21から蓄電部20に入力される充電電流Iの時間変化の一例を示す。
【0043】
時点t0では、車両9は停止しており、車両9のイグニションスイッチ(スイッチSW1)はオフである。この停止状態では、蓄電部20の内部電圧Vは、蓄電部20が完全放電状態であるため、充電閾値電圧Vp未満の電圧である。なお、充電閾値電圧Vpは、蓄電部20を充電する必要がある蓄電部20の内部電圧Vの閾値である。なお、時点t0からスイッチSW1がオンにされる時点t1まで、蓄電部20の完全放電状態は継続する。
【0044】
時点t1で、スイッチSW1がオンにされると、主電源4から蓄電部20への充電が可能になり、かつ、制御部3が起動する。制御部3が起動すると、制御部3の充放電制御部30が蓄電部20の内部電圧Vが充電閾値電圧Vp未満であることを検出し、この検出により、充放電制御部30が充電回路21を介して蓄電部20の充電を開始する。これにより、蓄電部20の内部電圧Vは、充電開始時(時点t1)で一定量立ち上がり、その後、時間経過に伴って増加する。
【0045】
より詳細には、制御部3は、時点t1から時点t2までの一定期間(検出期間Δt1)で、蓄電部20の劣化状態を検出するための検出用充電を行い、その検出結果と蓄電部20の温度とに基づいて、蓄電部20の充電電流I及び目標電圧を設定する。そして、制御部3は、検出期間Δt1に続く充電期間Δt2(時点t2~t3)で、設定した充電電流I及び目標電圧に基づいて、蓄電部20を充電するように充電回路21を制御する。これにより、充電回路21から蓄電部20に充電電圧が印加されて充電回路21から蓄電部20に充電電流Iが入力され、そして蓄電部20が目標電圧まで充電される。
【0046】
より詳細には、検出期間Δt1では、制御部3の充放電制御部30は、充電電流Iとして検出用電流I1を充電回路21から蓄電部20に入力するように、充電回路21を制御する。これにより、蓄電部20が、検出用電流I1で充電される。この充電により蓄電部20の内部電圧Vが時点t1から上昇開始する。この検出期間Δt1で、制御部3は、検出用電流I1及び蓄電部20の内部電圧Vの電圧変化に基づいて蓄電部20の静電容量を検出し、かつ、温度検出部23の検出温度から蓄電部20の温度を検出する。静電容量の検出は、検出期間Δt1内において検出期間Δt1の開始時t1から所定時間経過後に、任意の2つの時点での蓄電部20の内部電圧Vの電位差ΔVaと、上記2つの時点間の時間Δtaとによる単位時間当たりの電圧の変化率に基づいて実行されてもよい。
【0047】
更に詳細には、図4の例では、検出期間Δt1の開始時(時点t1)では、車両9のスイッチSW1が切り替わる時点でもあり、バックアップ電源システム1及び制御部3は完全な起動状態となっていない場合がある。言い換えると、完全な動作状態でない制御部3は、蓄電部20の劣化状態の検出に必要な蓄電部20の内部抵抗を正確に測定できない場合がある。このため、制御部3は、検出期間Δt1の開始時t1に蓄電部20の内部抵抗を検出せずに、検出期間Δt1内において一定時間Δta経過後の後述の一定時間Δtbで蓄電部20の内部抵抗を検出する。なお、車両9のスイッチSW1がオンとなり、かつ、制御部3が動作できていない時点で、蓄電部20に対する充電が始められるように、バックアップ電源システム1が設定されていてよい。そして、劣化状態検出部31は、検出用電流I1を一定時間Δtb停止するように充電回路21を制御する。検出用電流I1の停止により検出期間Δt1が終了する。検出用電流I1には、所定の値として予め制御部3に記憶された標準電流値などを適用してよい。
【0048】
また、検出用電流I1の上記の停止により、蓄電部20の内部電圧Vは、電圧V3から電圧V2に低下する。劣化状態検出部31は、この電位差(V3―V2)とこの電位差を発生させた電流(検出用電流I1)とから、蓄電部20の内部抵抗(=(V3-V2)/I1)を求める。そして、制御部3の設定部32は、静電容量及び内部抵抗の検出結果と、検出期間Δt1で検出した蓄電部20の温度(温度検出部23の検出温度)とに基づいて、充電電流I及び目標電圧を設定する。
【0049】
ここで、時点t2から時点t3までの第1期間(Δt2)に、充電回路21によって供給される第1充電電流(I2、I3)は、目標電圧(V4、V5)と時点t2における蓄電部20の内部電圧Vとの電位差と、検出された蓄電部20の静電容量と、時点t2から時点t3までの時間Δt2とによって得られる値となる。具体的には、第1充電電流(I2、I3)は、(静電容量×電位差)/Δt2、あるいは所定定数×(静電容量×電位差)/Δt2によって得られる。
【0050】
これにより、例えば蓄電部20の劣化が進行している場合には高い目標電圧V4となるため、このときの第1充電電流I2は、時点t3までの比較で大きな電流値で供給される。この一方で、蓄電部20の劣化が進行していない場合には低い目標電圧V5となるため、このときの第1充電電流I3は、時点t3までの比較で小さな電流値で供給される。
【0051】
以上のようにバックアップ電源システム1は、目標電圧として適切な充電電圧の設定が可能となり、かつ、過充電などに伴う蓄電部20の劣化を抑制できるという効果を有する。さらにバックアップ電源システム1は、動作は第1期間(時点t2~t3)として限られた期間内に対応して適切な充電動作を実行することが可能となり、車両9が起動した後の短時間でバックアップ動作が可能な状態となる。
【0052】
以下の説明では、充電電流Iとして充電電流I2(目標電圧V4)が設定された場合で説明を進める。
【0053】
そして、制御部3の温度変化検出部33は、蓄電部20の目標電圧V4を維持しつつ、温度検出部23の検出温度に基づいて蓄電部20の温度を監視する。
【0054】
そして、時点t5で、温度変化検出部33が蓄電部20の温度に対応した充電電圧である目標電圧を再設定して、充電回路21によって蓄電部20を再充電する。
【0055】
より詳細には、制御部3は、時点t5から時点t6までの一定期間(検出期間Δt3)で、蓄電部20の内部抵抗及び静電容量を再検出するための検出用充電を行う。そして、制御部3は、その再検出の検出結果と、検出期間Δt3で検出された蓄電部20の温度とに基づいて、蓄電部20の充電電流I及び目標電圧を再設定する。そして、制御部3は、検出期間Δt3に続く充電期間Δt4(時点t6~t7)で、再設定した充電電流I及び目標電圧に基づいて、蓄電部20を再充電する。
【0056】
より詳細には、検出期間Δt3では、制御部3の劣化状態検出部31は、蓄電部20の劣化状態を再検出するとき、蓄電部20の静電容量は再測定せず、蓄電部20の内部抵抗のみを再測定する。そして、劣化状態検出部31は、再測定した内部抵抗の再測定値と、蓄電部20の劣化状態の前回の検出で用いた静電容量の測定値(すなわち検出期間Δt1で測定した静電容量の測定値)とに基づいて、蓄電部20の劣化状態を再検出する。
【0057】
更に詳細には、図4の例では、検出期間Δt3の開始時t5では、時点t1とは異なり制御部3が動作中となっているので、制御部3は、蓄電部20の劣化状態の再検出に必要な蓄電部20の内部抵抗を正確に測定可能である。このため、制御部3は、検出期間Δt3の開始時t5に蓄電部20の内部抵抗を検出する。すなわち、制御部3の劣化状態検出部31は、時点t5に、検出用電流I4を充電回路21から蓄電部20に入力するように、充電回路21を制御する。これにより、時点t5では、検出用電流I4の入力によって蓄電部20の内部電圧Vが電圧V4から電圧V7に増加する。劣化状態検出部31は、この電位差(V7―V4)とこの電位差を発生させた電流(検出用電流I4)とから、蓄電部20の内部抵抗(=(V7-V4)/I4)を再測定する。そして、上述のように、劣化状態検出部31は、内部抵抗の再測定値と、蓄電部20の劣化状態の前回の検出で用いた静電容量の測定値(すなわち検出期間Δt1で測定した静電容量の測定値)とに基づいて、蓄電部20の劣化状態を再検出する。
【0058】
そして、制御部3の設定部32は、劣化状態検出部31の再検出の検出結果と、検出期間Δt3で検出した蓄電部20の温度(温度検出部23の検出温度)とに基づいて、充電電流I及び目標電圧を再設定する。
【0059】
ここでも、時点t2から時点t3までの充電期間Δt2と同じように、時点t6から時点t7までの充電期間Δt4での充電電流Iは、再設定した目標電圧と時点t6における蓄電部20の内部電圧Vとの電位差と、再検出された蓄電部20の静電容量と、充電のための時間Δt4とによって得られる値となる。具体的には、充電電流Iは、(静電容量×電位差)/時間、あるいは所定定数×(静電容量×電位差)/時間によって得られる。これにより、例えば蓄電部20の劣化が進行している場合には高い目標電圧V8となるため、このときの第1充電電流I5は、時点t7までの比較で大きな電流値で供給される。この一方で、蓄電部20の劣化が進行していない場合には低い目標電圧V9となるため、このときの第1充電電流I6は、時点t7までの比較で小さな電流値で供給される。
【0060】
以下の説明では、充電電流Iとして充電電流I5(目標電圧V8)が再設定された場合で説明を進める。
【0061】
そして、制御部3の温度変化検出部33は、蓄電部20の目標電圧V8を維持しつつ、温度検出部23の検出温度に基づいて蓄電部20の温度を監視する。そして、以降は、所定の放置時間の経過後に蓄電部20の温度が変化していた場合に、上述のように蓄電部20の再充電を繰り返す。図4では蓄電部20の温度が先に検出した時よりも低下していた場合に再充電を実行する動作を示しているが、蓄電部20の温度が先に検出したときよりも上昇していた場合に放電を実行する。
【0062】
そして、時点t9で、イグニションスイッチ(スイッチSW1)がオフされると、制御部3の充放電制御部30がスイッチSW1が切り替えられたことを検出し、この検出により、充放電制御部30が、蓄電部20の蓄電電力が放電回路22あるいは内部放電回路(図示せず)を介して放電されるように、放電回路22あるいは内部放電回路(図示せず)を制御する。これにより、蓄電部20の内部電圧Vが上記の供給に伴って低下する。
【0063】
そして、車両9の再起動時である時点t11でスイッチSW1がオンされると、主電源4から蓄電部20への充電が可能になり、かつ、制御部3が起動する。制御部3が起動すると、制御部3の充放電制御部30が蓄電部20の内部電圧Vが充電閾値電圧Vp未満であることを検出し、この検出により、充放電制御部30が蓄電部20の充電を開始する。
【0064】
より詳細には、制御部3は、時点t11から時点t12までの一定期間(検出期間Δt5)で、蓄電部20の劣化状態を検出するための検出用充電を行い、その検出結果と蓄電部20の温度とに基づいて、蓄電部20の充電電流I及び目標電圧を設定する。そして、制御部3は、検出期間Δt5に続く充電期間Δt6で、設定した充電電流I及び目標電圧に基づいて、蓄電部20を充電する。
【0065】
更に詳細には、図4の例では、検出期間Δt5の開始時t11で、制御部3は、蓄電部20の劣化状態の検出に必要な蓄電部20の内部抵抗を正確に測定する。このため、制御部3は、検出期間Δt5の開始時t11に蓄電部20の内部抵抗を測定し、かつ、検出期間Δt5で蓄電部20の静電容量を測定する。すなわち、制御部3の劣化状態検出部31は、検出期間Δt5の開始時t11に、検出用電流I7を充電回路21から蓄電部20に入力するように、充電回路21を制御する。この入力により蓄電部20の内部電圧Vが電圧V10から電圧V11に増加する。劣化状態検出部31は、この電位差(V11―V10)とこの電位差を発生させた電流(検出用電流I7)とに基づいて、蓄電部20の内部抵抗(=(V11-V10)/I7)を求める。また、劣化状態検出部31は、検出期間Δt5の開始時t11と終了時t12との2つの時点での蓄電部20の内部電圧Vの電位差ΔVc(=V12-V11)と、上記2つの時点間の時間Δtcとに基づいて、蓄電部20の静電容量を求める。
【0066】
そして、劣化状態検出部31は、求めた内部抵抗及び静電容量に基づいて蓄電部20の劣化状態を検出する。そして、制御部3の設定部32は、劣化状態検出部31の検出結果と、検出期間Δt5で検出した蓄電部20の温度(温度検出部23の検出温度)とに基づいて、充電電流I及び目標電圧を設定する。そして、充放電制御部30は、充電期間Δt2のときと同様に、設定された充電電流I及び目標電圧に従って蓄電部20を充電するように、充電回路21を制御する。以降は、上述同様、蓄電部20の温度が変化する毎に、蓄電部20が再充電される。
【0067】
(5)主要な効果
以上で説明した本実施形態のバックアップ電源システム1は、充電回路21と、温度検出部23と、制御部3と、を備える。充電回路21は、設定された充電電流Iに従って蓄電部20を充電する。温度検出部23は、蓄電部20の温度を検出する。制御部3は、充電回路21を制御する。制御部3は、劣化状態検出部31と、設定部32と、を備える。劣化状態検出部31は、蓄電部20の劣化状態を検出する。設定部32は、劣化状態検出部31の検出結果及び温度検出部23の検出温度に基づいて、充電電流I及び充電電圧を設定する。
【0068】
この構成によれば、蓄電部20の温度だけでなく蓄電部20の劣化状態にも基づいて充電電流I及び充電電圧(目標電圧)を設定する。このため、充電電流I及び充電電圧を最適範囲内の値に設定でき(例えば充電電流I及び充電電圧が高くなり過ぎることを抑制でき)、この結果、目標電圧として適切な充電電圧の設定が可能となり、かつ、過充電などに伴う蓄電部20の劣化を抑制できる。
【0069】
(6)バックアップ電源の充電方法、及びプログラム
上記の実施形態に係るバックアップ電源システム1と同様の機能は、バックアップ電源の充電方法、コンピュータプログラム(プログラム)、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0070】
一態様に係るバックアップ電源の充電方法は、充電工程と、温度検出工程と、制御工程と、を有する。充電工程では、設定された充電電流Iに従って蓄電部20を充電する。温度検出工程では、蓄電部20の温度を検出する。制御工程では、充電回路21を制御する。制御工程は、劣化状態検出工程と、設定工程と、を有する。劣化状態検出工程では、蓄電部20の劣化状態を検出する。設定工程では、劣化状態検出工程の検出結果及び温度検出工程の検出温度に基づいて、充電電流I及び充電電圧を設定する。
【0071】
一態様に係るプログラムは、上記のバックアップ電源の充電方法を1以上のプロセッサに実行させる。
【0072】
一態様に係る非一時的記録媒体は、上記のバックアップ電源の充電方法を1以上のプロセッサに実行させるプログラムを一時的に記録する。
【0073】
(7)変形例
上記の実施形態では、充電回路21と放電回路22とが別構成であるが、図5に示すように、充電回路21と放電回路22とは、充放電回路24として一体に構成されてもよい。本変形例は、上記の実施形態と比べて、例えば、充電回路21が充放電回路24に置換される点、放電回路22が省略される点、SW1の一端部がダイオードD1のカソードに接続される点が異なる。また、充放電回路24は、充電回路21及び放電回路22の両方の機能を兼ね備える。本変形例では、主電源4に失陥が発生しておらずかつスイッチSW1がオンである場合は、充放電回路24は、主電源4の出力電圧を変圧(例えば降圧)して蓄電部20を充電する。主電源4に失陥が発生した場合は、充放電回路24は、蓄電部20の出力電圧を変圧(例えば昇圧)してスイッチSW1を介して電気機器5に供給する。本変形例でも、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
(8)態様
上記の実施形態及び変形例から本開示は下記の態様を取り得る。
【0075】
第1の態様のバックアップ電源システム(1)は、充電回路(21)と、温度検出部(23)と、制御部(3)と、を備える。充電回路(21)は、設定された充電電流(I)に従って蓄電部(20)を充電する。温度検出部(23)は、蓄電部(20)の温度を検出する。制御部(3)は、充電回路(21)を制御する。制御部(3)は、劣化状態検出部(31)と、設定部(32)と、を備える。劣化状態検出部(31)は、蓄電部(20)の劣化状態を検出する。設定部(32)は、劣化状態検出部(31)の検出結果及び温度検出部(23)の検出温度に基づいて、充電電流(I)及び充電電圧を設定する。
【0076】
この構成によれば、蓄電部(20)の温度だけでなく蓄電部(20)の劣化状態にも基づいて充電電流(I)及び充電電圧を設定する。このため、充電電流(I)及び充電電圧を最適範囲内の値に設定でき(例えば充電電圧及び充電電圧が高くなり過ぎることを抑制でき)、この結果、目標電圧として適切な充電電圧の設定が可能となり、かつ、過充電などに伴う蓄電部(20)の劣化を抑制できる。
【0077】
第2の態様のバックアップ電源システム(1)では、第1の態様において、制御部(3)は、劣化状態検出部(31)で劣化状態を検出するときに充電回路(21)から充電電流(I)として検出用電流(I1)を供給させ、劣化状態検出部(31)の検出結果及び温度検出部(23)の検出温度に基づいて充電電圧の目標電圧(V4,V5)を設定し、充電回路(21)から充電電流(I)として第1充電電流(I2,I3)を供給させ、蓄電部(20)を目標電圧まで充電させる。
【0078】
この構成によれば、蓄電部の劣化状態及び温度に応じて適切な目標電圧を設定でき、蓄電部を適切な目標電圧まで充電できる。これにより、過充電などに伴う蓄電部の劣化を防止できる。
【0079】
第3の態様のバックアップ電源システム(1)は、第2の態様において、目標電圧(V4,V5)までの充電後において温度検出部(23)の現在の検出温度が第1充電電流(I)の設定時の検出温度と異なる場合は、劣化状態検出部(31)は、蓄電部(20)の劣化状態を再検出し、設定部(32)は、劣化状態検出部(31)の再検出の検出結果及び温度検出部(23)の現在の検出温度に基づいて、目標電圧(V4,V5)及び第1充電電流(I2,I3)を再設定する。
【0080】
この構成によれば、充電電流(I)の設定後において温度検出部(23)の現在の検出温度が充電電流(I)の設定時の検出温度と異なっても、第1充電電流(I2,I3)及び目標電圧(V4,V5)を最適範囲内の値に設定できる。
【0081】
第4の態様のバックアップ電源システム(1)では、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、劣化状態検出部(31)は、蓄電部(20)の内部抵抗及び静電容量を測定し、測定した内部抵抗の測定値及び静電容量の測定値に基づいて蓄電部(20)の劣化状態を検出する。
【0082】
この構成によれば、蓄電部(20)の内部抵抗及び静電容量に基づいて蓄電部(20)の劣化状態を検出するため、正確に蓄電部(20)の劣化状態を検出できる。
【0083】
第5の態様のバックアップ電源システム(1)では、第4の態様において、劣化状態検出部(31)は、蓄電部(20)の劣化状態を再検出するとき、蓄電部(20)の内部抵抗を再測定する。劣化状態検出部(31)は、再測定した内部抵抗の再測定値と、蓄電部(20)の劣化状態の前回の検出で用いた静電容量の測定値とに基づいて、蓄電部(20)の劣化状態を再検出する。
【0084】
この構成によれば、蓄電部(20)の劣化状態の再検出の処理負担を軽減して、正確に蓄電部(20)の劣化状態を再検出できる。
【0085】
第6の態様のバックアップ電源システム(1)では、第4又は第5の態様において、蓄電部(20)は、検出期間(Δt1,Δt3,Δt5)と、充電期間(Δt2,Δt4,Δt6)と、を有する。検出期間(Δt1,Δt3,Δt5)は、蓄電部(20)の劣化状態を検出するための検出用電圧及び検出用電流(I1,I4,I7)が蓄電部(20)に入力される。充電期間(Δt2,Δt4,Δt6)は、検出期間(Δt1,Δt3,Δt5)に続く期間であって設定又は再設定された充電電流(I)及び充電電圧に従って蓄電部(20)が充電される。検出期間(Δt1)の開始時(t1)の蓄電部(20)が完全放電状態である場合、劣化状態検出部(31)は、検出期間(Δt1)において検出期間(Δt1)の開始時(t1)から所定時間経過後に検出用電圧及び検出用電流(I1)に基づいて、蓄電部(20)の劣化状態を検出又は再検出する。
【0086】
この構成によれば、検出期間(Δt1)の開始時(t1)の蓄電部(20)が完全放電状態である場合に、正確に、蓄電部(20)の劣化状態を検出又は再検出できる。つまり、検出期間(Δt1)の開始時(t1)の蓄電部(20)が完全放電状態である場合、検出期間(Δt1)の開始時(t1)では、蓄電部(20)の劣化状態を正確に検出できない可能性がある。このため、検出期間(Δt1)の開始時(t1)の蓄電部(20)が完全放電状態である場合は、充電期間(Δt2)の開始時(t1)から所定時間経過後に蓄電部(20)の劣化状態を検出又は再検出する。
【0087】
第7の態様のバックアップ電源システム(1)は、第4又は第5の態様のいずれか1つにおいて、蓄電部(20)は、検出期間(Δt1,Δt3,Δt5)と、充電期間(Δt2,Δt4,Δt6)と、を有する。検出期間(Δt1,Δt3,Δt5)は、蓄電部(20)の劣化状態を検出するための検出用電圧及び検出用電流(I1,I4,I7)が蓄電部(20)に入力される。充電期間(Δt2,Δt4,Δt6)は、検出期間(Δt1,Δt3,Δt5)に続く期間であって設定又は再設定された充電電流(I)及び充電電圧に従って蓄電部(20)が充電される。検出期間(Δt3,Δt5)の開始時(t5,t11)の蓄電部(20)が完全放電状態でない場合、劣化状態検出部(31)は、検出期間(Δt3,Δt5)の開始時(t5,t11)の検出用電圧及び検出用電流(I4,I7)に基づいて蓄電部(20)の劣化状態を検出する。
【0088】
この構成によれば、検出期間(Δt3,Δt5)の開始時(t5,t11)の蓄電部(20)が完全放電状態でない場合に、正確かつ速やかに、蓄電部(20)の劣化状態を検出又は再検出できる。つまり、検出期間(Δt3,Δt5)の開始時(t5,t11)の蓄電部(20)が完全放電状態でない場合、検出期間(Δt3,Δt5)の開始時(t5,t11)において蓄電部(20)の劣化状態を正確に検出又は再検出できる。このため、検出期間(Δt3,Δt5)の開始時(t5,t11)の蓄電部(20)が完全放電状態でない場合、充電期間(Δt4,Δt6)の開始時(t6,t12)において蓄電部(20)の劣化状態を検出又は再検出する。
【0089】
第8の態様のバックアップ電源システム(1)は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、蓄電部(20)を備える。
【0090】
この構成によれば、バックアップ電源システム(1)を蓄電部(20)を含む形態で提供できる。
【0091】
第9の態様の車両(9)は、第1~第8の態様のいずれか1つのバックアップ電源システム(1)と、1つ以上の電気機器(5)と、車両本体(91)と、を備える。1つ以上の電気機器(5)は、蓄電部(20)の出力電力(V)によって動作する。車両本体(91)は、バックアップ電源システム(1)及び1つ以上の電気機器(5)を搭載する。
【0092】
この構成によれば、上記のバックアップ電源システム(1)を備えた車両(9)を提供できる。
【0093】
第10の態様のバックアップ電源の充電方法は、充電工程と、温度検出工程と、制御工程と、を有する。充電工程は、設定された充電電流(I)に従って蓄電部(20)を充電回路(21)で充電する。温度検出工程は、蓄電部(20)の温度を検出する。制御工程は、充電回路(21)を制御する。制御工程は、劣化状態検出工程と、設定工程と、を有する。劣化状態検出工程は、蓄電部(20)の劣化状態を検出する。設定工程は、劣化状態検出工程の検出結果及び温度検出工程の検出温度に基づいて、充電電流(I)及び充電電圧を設定する。
【0094】
この構成によれば、蓄電部(20)の温度だけでなく蓄電部(20)の劣化状態にも基づいて充電電流(I)及び充電電圧を設定するため、充電電流(I)及び充電電圧を最適範囲内の値に設定でき(すなわち充電電流(I)及び充電電圧が高くなり過ぎることを抑制でき)、この結果、蓄電部(20)の劣化を抑制できる。また、充電電流(I)及び充電電圧を最適範囲内の値に設定することで、蓄電部(20)の充電時の目標電圧が比較的低く設定され、この結果、蓄電部(20)の劣化を抑制できる。また、充電電流(I)を最適範囲内で大きく設定することで、充電期間(Δt2,Δt4,Δt6)を削減でき、この結果、蓄電部(20)の劣化を更に抑制できる。
【0095】
第11の態様のプログラムは、第10の態様のバックアップ電源の充電方法を1以上のプロセッサに実行させる。
【0096】
この構成によれば、バックアップ電源の充電方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムを提供できる。
【符号の説明】
【0097】
1 バックアップ電源システム
20 蓄電部
21 充電回路
23 温度検出部
31 劣化状態検出部
32 設定部
I 充電電流
I1,I4,I7 検出用電流
Δt1,Δt3,Δt5 検出期間
Δt2,Δt4,Δt6 充電期間
図1
図2
図3
図4
図5