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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008113
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】CAN通信方法及び自動車両
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/40 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
H04L12/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111405
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】田山 由紀子
【テーマコード(参考)】
5K032
【Fターム(参考)】
5K032AA03
5K032BA06
5K032DA07
5K032DB28
5K032EA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハードウェアの負担や電子制御ユニットの動作負荷を増すことなく、一つの電子制御ユニットに割り当てられたCAN IDを用いて複数の電子制御ユニットと診断装置とのデータ授受を可能とする。
【解決手段】自動車両100には、第1乃至第3の電子制御ユニット51~53が搭載されており、第1の電子制御ユニット51には、外部接続される診断装置200とのCAN通信におけるCAN IDが設定され、第2及び第3の電子制御ユニット52,53には、各々別個のデータIDが設定されており、第2及び第3の電子制御ユニット52,53は、第1の電子制御ユニット51のCAN IDの下、第1の電子制御ユニット51を介して診断装置200と、それぞれのデータIDを用いてデータの授受が可能となっており、第1の電子制御ユニット51と共に、第2及び第3の電子制御ユニット53と診断装置200とのCAN通信が確保可能となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両に搭載された複数の電子制御ユニットの1つに、CAN通信を可能に構成されて外部接続される診断装置との前記CAN通信におけるCAN IDが設定されて特定電子制御ユニットとして前記診断装置とのデータの授受を可能としてなる自動車両において、前記特定電子制御ユニットを含む前記複数の電子制御ユニットと前記診断装置とのデータの授受を可能とするCAN通信方法であって、
前記特定電子制御ユニットを除く前記複数の電子制御ユニットの各々に、前記特定電子制御ユニットと前記診断装置間のCAN通信におけるメッセージを構成するデータIDを別々に設定し、前記特定電子制御ユニットを介して前記CAN IDの下、前記データID毎に所用データの授受を前記診断装置と行うことで、前記複数の電子制御ユニットと前記診断装置間のCAN通信を実質的に可能としたことを特徴とするCAN通信方法。
【請求項2】
前記データID毎の所用データは、前記データIDに対応した電子制御ユニットについての、前記診断装置からのリクエストメッセージを構成するサービスIDに対応したデータであることを特徴とする請求項1記載のCAN通信方法。
【請求項3】
複数の電子制御ユニットが搭載され、その1つの電子制御ユニットに、外部接続される診断装置とのCAN通信におけるCAN IDが設定されて前記診断装置とのCAN通信が可能な特定電子制御ユニットとされてなる自動車両であって、
前記特定電子制御ユニットを除く前記複数の電子制御ユニットの各々は、前記特定電子制御ユニットと前記診断装置間のCAN通信におけるメッセージを構成するデータIDが別々に設定され、前記特定電子制御ユニットを介して前記CAN IDの下、前記診断装置と、前記データID毎の所用データの授受が行われ、前記複数の電子制御ユニットと前記診断装置間のCAN通信が実質的に可能とされてなることを特徴とする自動車両。
【請求項4】
前記データID毎の所用データは、前記データIDに対応した電子制御ユニットについての、前記診断装置からのリクエストメッセージを構成するサービスIDに対応したデータであることを特徴とする請求項3記載の自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の動作診断を行う故障診断装置と自動車両間におけるCAN通信方法に係り、特に、ハードウェアの負担軽減やソフトウェアリソースの削減等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両の動作診断においては、車両内に搭載されている電子制御ユニットとCAN(Controller Area Network)を介して種々のデータの授受を行い、電子制御ユニットから取得されたデータに基づいて動作解析を可能とした診断装置が用いられていることは良く知られている通りである(例えば、特許文献1等参照)。
このような診断装置と一つの電子制御ユニットとの間におけるCAN通信には、相互に通信対象を特定するためのCAN IDと称される識別コードが必要とされる。通常、診断装置と一つの電子制御ユニットのCAN通信には、診断装置から電子制御ユニットに対する送信に必要な送信用IDと、電子制御ユニットから診断装置へ対する応答に必要な受信用IDからなる一組のIDを設定する必要がある。
したがって、このような診断装置を用いて自動車両に搭載された複数の電子制御ユニットとCAN通信を可能とするためには、電子制御ユニットの設置数に対応した送信用及び受信用IDが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-301997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CANの構成によっては、セキュリティ強化等の観点からID設定数に制限が設けられる場合や、診断装置の仕様等からIDの設定数に制限が設けられる場合などがあり、その場合、診断装置による診断対象外となる電子制御ユニットも生じてしまうことがある。
このような問題の解決方法の一つとして、次述するようにIDが割り当てられている一つの電子制御ユニットに、他の複数の電子制御ユニットと診断装置との通信を代替させる方法がある。
【0005】
すなわち、先ず、IDが設定されている電子制御ユニットは、他の複数の電子制御ユニットと診断装置間のデータ授受におけるデータ記憶、保持等に必要な記憶領域が確保された構成とする。
かかる構成の下、診断装置から他の複数の電子制御ユニットに対する送信データを、上述の記憶領域に一時的に記憶、保持し、適宜なタイミングで対応する電子制御ユニットへ送信する一方、他の複数の電子制御ユニットから診断装置へ対する送信データを上述の記憶領域に一時的に記憶、保持し、適宜なタイミングで診断装置へ送信する等の処理を行うこととなる。
【0006】
この方法は、確かに一つのIDで複数の電子制御ユニットと診断装置との通信を可能とするが、IDが割り当てられた電子制御ユニットは、他の複数の電子制御ユニットの数に応じた記憶領域が確保された構成が必要となるため、ハードウェアの負担が増えると共に、IDが割り当てられた電子制御ユニットにおける動作負荷が増え、動作効率の低下を招く等の問題がある。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、ハードウェアの負担や電子制御ユニットの動作負荷を増すことなく、一つの電子制御ユニットに割り当てられたCAN IDを用いて複数の電子制御ユニットと診断装置とのデータ授受を可能とするCAN通信方法及び自動車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るCAN通信方法は、
自動車両に搭載された複数の電子制御ユニットの1つに、CAN通信を可能に構成されて外部接続される診断装置との前記CAN通信におけるCAN IDが設定されて特定電子制御ユニットとして前記診断装置とのデータの授受を可能としてなる自動車両において、前記特定電子制御ユニットを含む前記複数の電子制御ユニットと前記診断装置とのデータの授受を可能とするCAN通信方法であって、
前記特定電子制御ユニットを除く前記複数の電子制御ユニットの各々に、前記特定電子制御ユニットと前記診断装置間のCAN通信におけるメッセージを構成するデータIDを別々に設定し、前記特定電子制御ユニットを介して前記CAN IDの下、前記データID毎に所用データの授受を前記診断装置と行うことで、前記複数の電子制御ユニットと前記診断装置間のCAN通信を実質的に可能としてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る自動車両は、
複数の電子制御ユニットが搭載され、その1つの電子制御ユニットに、外部接続される診断装置とのCAN通信におけるCAN IDが設定されて前記診断装置とのCAN通信が可能な特定電子制御ユニットとされてなる自動車両であって、
前記特定電子制御ユニットを除く前記複数の電子制御ユニットの各々は、前記特定電子制御ユニットと前記診断装置間のCAN通信におけるメッセージを構成するデータIDが別々に設定され、前記特定電子制御ユニットを介して前記CAN IDの下、前記診断装置と、前記データID毎の所用データの授受が行われ、前記複数の電子制御ユニットと前記診断装置間のCAN通信が実質的に可能とされてなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定電子制御ユニットのCAN IDを用いて、特定電子制御ユニットを介して他の電子制御ユニットと診断装置とのCAN通信が実質的に可能となるような構成としたので、ハードウェアの負担や特定の電子制御ユニットの動作負荷を増すことなく、1つのCAN IDを用いて診断装置による複数の電子制御ユニットの診断データの取得が可能となるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態におけるCAN通信が実行される診断装置と自動車両の電子制御ユニットとの接続状態を示す構成図である。
図2図1に示された構成における診断装置と複数電子制御ユニット間におけるCAN通信処理手順を説明するフローチャートである。
図3】診断装置と複数電子制御ユニットとの間で送受されるデータ例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図3を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における自動車両と診断装置の接続構成例について、図1を参照しつつ説明する。
最初に、診断装置(図1においては「DIA」と表記)200は、本発明特有のものではなく、CANを介して自動車両の動作に関する診断データの取得が可能に構成された良く知られた従来構成を有してなるものである。
したがって、診断装置200は、CAN通信におけるダイアグ通信が可能となっており、例えば、具体的には、ISO 15765に基づくダイアグ通信のネットワーク層や、ISO 14229-1に基づくアプリケーション層を充足した構成を有するものであることが前提である。
【0012】
この診断装置200は、図示されない接続ケーブルを用いて自動車両(以下「車両」と称する)100と外部接続されることで、以下に説明するように車両100に搭載された電子制御ユニットとCAN通信可能となっている。
まず、本発明の実施の形態における車両100は、複数の電子制御ユニットが搭載されることを前提としており、図1に示された構成例は、3台の第1乃至第3の電子制御ユニット(図1においては、それぞれ「ECU1」、「ECU2」、「ECU3」と表記)51~53が搭載された構成を示している。
【0013】
第1乃至第3の電子制御ユニット51~53は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)や、図示されない外部の電子回路とのインターフェイスのためのインターフェイス回路(図示せず)等を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0014】
これら第1乃至第3の電子制御ユニット51~53は、例えば、エンジン制御ユニット、トランスミッション制御ユニット、エアバック制御ユニット等に代表されるものであるが、特定の制御ユニットに限定される必要はなく、後述するようなCAN通信が実行可能なものであれば良い。
【0015】
本発明の実施の形態において、第1の電子制御ユニット(特定電子制御ユニット)51は、CANメインバス1を介して診断装置200と接続されて、相互にCAN通信が可能となっている。
すなわち、本発明の実施の形態において、診断装置200とCAN通信に必要とされるCAN IDは、第1の電子制御ユニット51に対してのみ設定されている構成であることを前提とする。
【0016】
第1乃至第3の電子制御ユニット51~53は、CANサブバス2によって相互に接続されてCAN通信が可能となっている。なお、第2及び第3の電子制御ユニット52,53は、CANサブバス2を介して第1の電子制御ユニット51とのみCAN通信が可能となっているが、第2及び第3の電子制御ユニット52,53に対するCAN IDは設定されていないため、診断装置200と直接CAN通信を行うことはできない構成となっている。
【0017】
次に、図2に示されたフローチャート及び図3に示されたメッセージ例を参照しつつ、診断装置200と第1乃至第3の電子制御ユニット51~53との間で行われるCAN通信に基づくダイアグ通信について説明する。
まず、図2のフローチャートは、診断装置200と第1乃至第3の電子制御ユニット51~53間におけるデータ授受の手順を示したもので、同図紙面中央より左側は、第1の電子制御ユニット51における処理手順を、また、同図紙面中央より右側は、第2及び第3の電子制御ユニット52,53における処理手順を、それぞれ示している。
なお、本発明の実施の形態における診断装置200と第1乃至第3の電子制御ユニット51~53は、前提として、当然の事ながら、それぞれCAN通信に基づくダイアグ通信のプロトコルが実行可能となっているものとする。
【0018】
また、図3は、診断装置200と第1の電子制御ユニット51間、第1の電子制御ユニット51と第2及び第3の電子制御ユニット52,53間のそれぞれのCAN通信において授受されるCANメッセージの例を説明する説明図である。
図3において、丸括弧に表記された数字は、昇順に診断装置200と第1乃至第3の電子制御ユニット51~53間で授受されるCANメッセージの発生順を示している。
先に述べたように、診断装置200及び第1乃至第3の電子制御ユニット51~53は、CAN通信に基づくダイアグ通信のプロトコルが実行されるよう構成されており、両者間に授受されるCANメッセージは、そのプロトコルに基づくものとなっている。
【0019】
このCANメッセージは、診断装置200から送信されるリクエストメッセージと、第1の電子制御ユニット51から診断装置200へ送信されるレスポンスメッセージに大別され、いずれの場合も、ひとつのメッセージは、基本的に従来同様、CAN ID、サービスID、データIDの順で構成される。
CAN IDは、従来同様、診断装置200から電子制御ユニットへ対してリクエストメッセージが送信される場合、電子制御ユニットを特定するためのID(以下、説明の便宜上「リクエストCAN ID」と称する)と、その特定された電子制御ユニットから診断装置200へ対してレスポンスメッセージが送信される場合に用いられるID(以下、説明の便宜上「レスポンスCAN ID」と称する)の2つで1組のCAN IDを構成している。
なお、図1においては、便宜上、リクエストCAN IDを「ID1-Tx」と、レスポンスCAN IDを「ID2-Rx」と、それそれ表記している。
【0020】
サービスIDは、従来同様、診断装置200によって電子制御ユニットへ要求する診断サービスの概要を表すIDである。
データIDは、サービスIDで特定された診断サービスの対象を特定するIDである。このデータID自体は、基本的に従来同様のものであるが、本発明の実施の形態においては、後述するように、その用い方によって一つのCAN IDの下、診断装置200と複数の電子制御ユニット間のダイアグ通信を実質的に可能としている。
【0021】
以下、図3に示されたダイアグ通信のメッセージ例における診断装置200と第1乃至第3の電子制御ユニット51~53の処理の流れについて、図2に示されたフローチャートを参照しつつ説明する。
なお、この例においては、診断装置200と第1の電子制御ユニット51間には、リクエストCAN IDとして$700が、レスポンスCAN IDとして$701が、それぞれ設定されているとする。
また、第1の電子制御ユニット51には、データIDとして$1000が、第2の電子制御ユニット52には、データIDとして$5000が、第3の電子制御ユニット53には、データIDとして$A000が、それぞれ設定されているとする。
また、図3において、”Tool”は診断装置200を、”ECU1”は第1の電子制御ユニット51を、”ECU2”は第2の電子制御ユニット52を、”ECU3”は第3の電子制御ユニット53を、それぞれ意味する。
さらに、SIDはサービスIDを、DIDはデータIDを、それぞれ意味する。
【0022】
図3の(1)は、診断装置200から第1の電子制御ユニット51に対して最初に送信されるリクエストメッセージの例である。
ここで、SID$22は、先に述べたように診断装置200が電子制御ユニットに対して要求する診断サービスの内容を指定するものであるが、個々のサービスIDに具体的に如何なる診断サービスを割り当てるかは、診断装置200の仕様等によって異なり、特定の内容に限定されるものではなく、任意に設定し得るものである。
DID$1000は、SID$22で特定された診断サービスの対象域が$1000であることを意味している。この例の場合、第1の電子制御ユニット51において、SID$22で特定された診断サービスの実行の結果取得される診断データが取得される領域を示すものとなっている。
【0023】
診断装置200からの上述のリクエストメッセージに対しては、第1の電子制御ユニット51から図3(2)に示されたようなレスポンスメッセージが診断装置200へ返信されることとなる。
ここで、まず、第1の電子制御ユニット51のレスポンスメッセージにおけるSID$62は、この第1の電子制御ユニット51から診断装置200へ対して送信される後述の診断データが、診断装置200から送信されたリクエストメッセージにおけるSID$22に対応するものであることを示している。
そして、SID$62に対応する診断データは、図3(2)に示されたようにデータIDの後に配置されて診断装置200へ送信されるものとなっている。
なお、図3(2)においては、診断データを便宜的に”xx”と表記している。
【0024】
一方、先の診断装置200からのリクエストメッセージは、上述のように第1の電子制御ユニット51へ対するものであるので、第2及び第3の電子制御ユニット52,53から診断装置200へのレスポンスメッセージの送信は行われない。
ここで、図3(1)に示された診断装置200からのリクエストメッセージに対する第1乃至第3の電子制御ユニット51~53における一連の処理の流れについて、図2を参照しつつ、以下に説明する。
【0025】
診断装置200から送信されたリクエスメッセージは、第1の電子制御ユニット51においてコマンド受信として適宜な記憶領域に保存されると共に、CANサブバス2を介して第2及び第3の電子制御ユニット52,53へ転送(コマンドサブバス転送)されることとなる(図2のステップS110参照)。
第1の電子制御ユニット51においては、受信されたサービスID及びデータIDが該当する他の電子制御ユニットが無いか否かが判定され(図2のステップS120参照)、該当する他の電子制御ユニットは無しと判定された場合(YESの場合)、受信されたサービスID及びデータIDが、第1の電子制御ユニット51に対応するものであるか否かが判定される(図2のステップS130参照)。
【0026】
一方、ステップS120において、NOの判定結果、すなわち、受信されたサービスID及びデータIDが該当する他の電子制御ユニットがあると判定された場合は、後述するように他の電子制御ユニットによる応答がなされることとなる。そして、この場合、第1の電子制御ユニット51による特段の処理は必要とされないため、後述するステップS160の処理を待つ待機状態となる。
【0027】
ステップS130においては、受信されたサービスID及びデータIDが、第1の電子制御ユニット51に設定されたIDに該当するものであると判定された場合(YESの場合)、所用の応答出力が行われることとなる(図2のステップS140参照)。すなわち、先に図3(2)に示されたようなレスポンスメッセージが第1の電子制御ユニット51から診断装置200へ送信されることとなる。
【0028】
一方、ステップS130において、受信されたサービスID及びデータIDが、第1の電子制御ユニット51に設定されたIDに該当するものではないと判定された場合(NOの場合)は、リクエストメッセージに対応する電子制御ユニットが無いとする所定のレスポンスメッセージ(否定応答)が診断装置200へ送信されることとなる(図2のステップS150参照)。
【0029】
一方、図3(1)に示されたリクエストメッセージを第1の電子制御ユニット51からCANサブバス2を介して転送された第2及び第3の電子制御ユニット52,53においては、次述するような処理が実行される。
すなわち、第2の電子制御ユニット52、及び、第3の電子制御ユニット53において、それぞれ転送されたリクエストメッセージが該当するものか否かが判定される(図2のステップS210及びステップS230参照)。
【0030】
図3(1)に示されたリクエストメッセージは、第1の電子制御ユニット51に対するものであるため、第2及び第3の電子制御ユニット52,53のいずれにおいても、転送されたサービスID及びデータIDは、それぞれの電子制御ユニットに設定されているIDに該当しないと判定される。
この場合、第2及び第3の電子制御ユニット52,53は、特段のレスポンスメッセージを送信しない非応答の状態が維持されることとなる(図2のステップS250参照)。なお、図3(2)においては、上述の非応答の状態を”No response”と記載している。
【0031】
一方、診断装置200は、第1の電子制御ユニット51からのレスポンスメッセージ(図3(2)参照)の受信後、第1の電子制御ユニット51のリクエストCAN IDの下で、図3(3)に示されたように第2の電子制御ユニット52に対するリクエストメッセージを送信する。
【0032】
図3(3)において、$700は、先に述べた通り第1の電子制御ユニット51に対するリクエストCAN IDである。
また、図3(3)において、SID$22は、先に述べた通りであるので、ここでの再度の説明は省略する。
さらに、図3(3)において、DID$5000は、第2の電子制御ユニット52に対して予め設定されたデータIDである。
【0033】
図3(3)に示されたリクエストメッセージは、まず、第1の電子制御ユニット51において受信され、次いで、第1の電子制御ユニット51によってCANサブバス2を介して第2及び第3の電子制御ユニット52,53へ転送されることとなる。
この場合、リクエストメッセージは、上述のように第2の電子制御ユニット52に対するものであるため、第1の電子制御ユニット51は、先に述べたように待機状態となる(図2のステップS120参照)。
【0034】
また、第3の電子制御ユニット53においては、データIDが予め設定されたものに該当しないと判定されて(図2のステップS230参照)、非応答状態となる(図2のステップS250参照)。
一方、第2の電子制御ユニット52においては、サービスID及びデータIDは該当すると判定され(図2のステップS210参照)、所用の応答出力が行われることとなる(図2のステップS220参照)。すなわち、図3(4)に示されたようなレスポンスメッセージが第2の電子制御ユニット52からCANサブバス2に送信され、第1の電子制御ユニット51において、CANメインバス1に転送されることで(図2のステップS160参照)、診断装置200においては、第1の電子制御ユニット51とのデータ授受と同様に受信処理されることとなる(図2のステップS170参照)。
【0035】
なお、図3(4)に示されたレスポンスメッセージにおいて、SID$62は、このレスポンスメッセージによって送信されるデータが、診断装置200から送信されたSID$22に対応するものであることを示している。
そして、SID$62に対応する診断データは、図3(4)に示されたようにデータIDの後に配置されて診断装置200へ送信されるものとなっている。
なお、図3(4)においては、診断データを便宜的に”yy”と表記している。
【0036】
次いで、診断装置200は、上述のように第1の電子制御ユニット51を介して第2の電子制御ユニット52のレスポンスメッセージ(図3(4)参照)を受信した後、第1の電子制御ユニット51のリクエストCAN IDの下で、図3(5)に示されたように第3の電子制御ユニット53に対するリクエストメッセージを送信する。
【0037】
図3(5)において、$700は、先に述べた通り第1の電子制御ユニット51に対するリクエストCAN IDである。
また、図3(5)において、SID$22は、先に述べた通りであるので、ここでの再度の説明は省略する。
さらに、図3(5)において、DID$A000は、第3の電子制御ユニット53に対して予め設定されたデータIDである。
図3(5)に示されたリクエストメッセージは、図3(3)の場合同様、第1の電子制御ユニット51において受信され、次いで、第1の電子制御ユニット51によってCANサブバス2を介して第2及び第3の電子制御ユニット52,53へ転送されることとなる。
【0038】
この場合、リクエストメッセージは、上述のように第3の電子制御ユニット53に対するものであるため、第1の電子制御ユニット51は、先に述べたように待機状態となる(図2のステップS120参照)。
また、第2の電子制御ユニット52においては、データIDが予め設定されたものに該当しないと判定されて(図2のステップS210参照)、非応答状態となる(図2のステップS250参照)。
【0039】
一方、第3の電子制御ユニット53においては、サービスID及びデータIDは該当すると判定され(図2のステップS230参照)、所用の応答出力が行われることとなる(図2のステップS240参照)。すなわち、図3(6)に示されたようなレスポンスメッセージが第3の電子制御ユニット53からCANサブバス2に送信され、第1の電子制御ユニット51において、CANメインバス1に転送されることで(図2のステップS160参照)、診断装置200においては、第1の電子制御ユニット51とのデータ授受と同様に受信が処理されることとなる(図2のステップS170参照)。
【0040】
なお、図3(6)に示されたレスポンスメッセージにおいて、SID$62は、このレスポンスメッセージによって送信されるデータが、診断装置200から送信されたSID$22に対応するものであることを示している。
そして、SID$62に対応する診断データは、図3(6)に示されたようにデータIDの後に配置されて診断装置200へ送信されるものとなっている。
なお、図3(6)においては、診断データを便宜的に”zz”と表記している。
【0041】
次に、診断装置200からのリクエストメッセージ中のデータIDがいずれの電子制御ユニットにも該当しない場合の第1乃至第3の電子制御ユニット51~53における処理手順について説明する。
図3(7)には、第1乃至第3の電子制御ユニット51~53に設定されたデータID以外のデータIDとして、DID$2000がリクエストメッセージに含まれた場合の例が示されている。なお、$700、SID$22は、図3(1)で説明した通りである。
【0042】
この場合、第1の電子制御ユニット51からは、図3(8)に示されたように、該当する電子制御ユニットが存在しないとする否定応答が出力されることとなる(図2のステップS150参照)。
なお、図3(8)において、”Negative response”の部分は、実際には、否定応答として予め定められた所定のコードなどが用いられる。
また、第2及び第3の電子制御ユニット52,53は、データIDが該当しないことから、それぞれ非応答状態となる(図2のステップS250参照)。
【0043】
上述した本発明の実施の形態においては、車両に3つの電子制御ユニットが搭載され、CAN IDが1つの場合の構成例について説明したが、電子制御ユニットの数は3つに限定される必要はなく、データIDを適宜割り当てることで所望の電子制御ユニット数の構成であっても、本発明の実施の形態同様に、1つのCAN IDの下、複数の電子制御ユニットの診断データの取得が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
ハードウェアの負担や電子制御ユニットの動作負荷を増すことなく、一つの電子制御ユニットに割り当てられたCAN IDを用いて複数の電子制御ユニットと診断装置とのデータ授受が所望される自動車両に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1…CANメインバス
2…CANサブバス
51…第1の電子制御ユニット
52…第2の電子制御ユニット
53…第3の電子制御ユニット
200…診断装置
図1
図2
図3