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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081141
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】ウォータアウトレット
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/04 20060101AFI20230602BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F01P11/04 D
F01P7/16 502A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194867
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲弥
(57)【要約】
【課題】各種装置へ冷却液を分配するよう導くウォータアウトレットにおいて、パイプと、このパイプが接続されるウォータアウトレットの接続口との間をシールするシール部材によるシール性の低下を防止する。
【解決手段】内燃機関20の冷却液出口に設けられ、前記内燃機関の外へ冷却液を導出するパイプ32が接続されるウォータアウトレット100であって、前記内燃機関に固定される皿状の本体部1と、前記本体部から外側へ立ち上がるように設けられ、前記パイプの内側に差し込まれる筒状の接続口3と、前記接続口の外周側に、前記本体部から外側へ立ち上がるように設けられる凸部9と、を備え、前記接続口と前記パイプとの間には、環状のシール部材11が設けられ、前記パイプの少なくとも周方向の一部は、前記凸部と前記接続口との間に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却液出口に設けられ、前記内燃機関の外へ冷却液を導出するパイプが接続されるウォータアウトレットであって、
前記内燃機関に固定される皿状の本体部と、
前記本体部から外側へ立ち上がるように設けられ、前記パイプの内側に挿し込まれる筒状の接続口と、
前記接続口の外周側に、前記本体部から外側へ立ち上がるように設けられる凸部と、を備え、
前記接続口と前記パイプとの間には、環状のシール部材が設けられ、
前記パイプの少なくとも周方向の一部は、前記凸部と前記接続口との間に配置されることを特徴とするウォータアウトレット。
【請求項2】
前記接続口と前記パイプとの間には、周方向に沿って隙間が形成され、
前記凸部は、前記接続口と前記パイプが径方向へ相対移動した際、前記接続口と前記パイプとが接触するよりも先に、前記パイプと接触する位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載されたウォータアウトレット。
【請求項3】
前記凸部は、前記接続口の軸方向からみた平面視で円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたウォータアウトレット。
【請求項4】
前記凸部は、前記接続口の同心円に沿って、前記接続口の半周分を覆うように形成されていることを特徴とする請求項3に記載されたウォータアウトレット。
【請求項5】
前記本体部と前記内燃機関との間には、前記内燃機関の冷却液出口を取り囲むように環状のガスケットが設けられ、
前記凸部の周方向の両端が前記ガスケットの外周側に位置することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載されたウォータアウトレット。
【請求項6】
前記凸部の高さ方向先端は、前記シール部材と同じ高さに位置することを特徴とする 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載されたウォータアウトレット。
【請求項7】
前記本体部には、温度センサが取り付けられており、
前記温度センサの感温部を挟んで両側に位置する一対の壁部は、前記本体部の底側へ向かうに従って接近することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載されたウォータアウトレット。
【請求項8】
前記パイプは、前記内燃機関へ冷却液を送るウォータポンプに固定されたサーモスタットへ冷却液を導くことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載されたウォータアウトレット。
【請求項9】
車両に搭載された状態で、前記凸部は、前記接続口の上側又は下側に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載されたウォータアウトレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジン(内燃機関)の冷却液出口に設けられ、ラジエータやサーモスタット等の各種装置へ冷却液を分配するよう導くウォータアウトレットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のエンジンの冷却液出口には、特許文献1に示されるようにラジエータ等の各種装置へ冷却液を分配するよう導くウォータアウトレットが取り付けられている。このウォータアウトレットにおいては、各種装置に通じるパイプの一端部に挿し込まれる筒状の接続口が設けられる。ウォータアウトレットと各種装置は、パイプ等の管路で接続される。
【0003】
ところで、パイプの一端が接続されるウォータアウトレットと、パイプの他端が接続される装置の位置には、車両によって取付誤差が生じる。このため、パイプが変形し難い合成樹脂等で形成される場合、取付誤差を許容できるよう、パイプとウォータアウトレットの接続口とが軸方向の相対移動、及び周方向の相対回転が許容された状態で接続されることがある。
【0004】
具体的には、図8に示すように、ウォータアウトレットには、筒状の接続口70が外方へ起立した状態で設けられる。この接続口70の外径r1は、パイプ60の先端部の内径r2よりも小さい(r1<r2)。そして、接続口70の外周に、シール部材80を装着した状態でパイプ60の内側に挿し込むことで、パイプ60が接続口70に接続される。これにより、パイプ60とウォータアウトレットの接続口70との軸方向の相対移動、及び周方向の相対回転が許容され、取付誤差を吸収できる。また、シール部材80が接続口70とパイプ60との間で圧縮されて、これらの間を液密にシールするとともに、パイプ60が接続口70から容易に外れるのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57-102511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記構成によれば、ウォータアウトレットの接続口70の外径r1は、パイプ60の内径r2よりも小さいので、これらの間に隙間sができる。このように隙間sが設けられていると、車両走行中においては、図9(a)、図9(b)の矢印に示すように、前記接続口70とパイプ60とがそれぞれ振動して径方向に相対移動する。
しかしながら、接続口70とパイプ60の径方向の相対移動が大きくなると、シール部材80の周方向の一部80aの圧縮量が極端に大きくなり、これと反対側の部分80bの圧縮量(締め代)が極端に小さくなって、その部分のシール性が著しく低下する虞があるという課題があった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、パイプと、このパイプが接続されるウォータアウトレットの接続口との間をシールするシール部材によるシール性の著しい低下を防止できるウォータアウトレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため本発明に係るウォータアウトレットは、内燃機関の冷却液出口に設けられ、前記内燃機関の外へ冷却液を導出するパイプが接続されるウォータアウトレットであって、前記内燃機関に固定される皿状の本体部と、前記本体部から外側へ立ち上がるように設けられ、前記パイプの内側に挿し込まれる筒状の接続口と、前記接続口の外周側に、前記本体部から外側へ立ち上がるように設けられる凸部と、を備え、前記接続口と前記パイプとの間には、環状のシール部材が設けられ、前記パイプの少なくとも周方向の一部は、前記凸部と前記接続口との間に配置される。
【0009】
前記構成によれば、接続口とパイプとの径方向の相対移動が大きくなると、パイプが凸部に当接してそれ以上の相対移動を抑制する。このため、シール部材の周方向の一部の圧縮量が極端に大きくなり、これと反対側の部分の圧縮量(締め代)が極端に小さくなって、その部分のシール性が著しく低下するのを防止できる。
【0010】
尚、前記接続口と前記パイプとの間には、周方向に沿って隙間が形成され、前記凸部は、前記接続口と前記パイプが径方向へ相対移動した際、前記接続口と前記パイプとが接触するよりも先に、前記パイプと接触する位置に配置されるとしてもよい。
このようにすると、接続口とパイプとの径方向の相対移動量が大きくなった場合には、パイプが接続口に接触するよりも先に、パイプが凸部に接触する。このため、接続口とパイプとの径方向の相対移動量が大きくなるのを確実に抑制できて、シール部材のシール性が著しく低下するのを確実に防止できる。
【0011】
また、前記凸部は、前記接続口の軸方向からみた平面視で円弧状に形成されていてもよい。
このようにすると、ウォータアウトレットにパイプを接続する際に、凸部を案内用のガイドとすることができる。さらには、凸部を環状にする場合と比較して、接続口をパイプの内側に挿し込む際に、凸部が邪魔にならず、パイプの接続作業を容易にできる。
【0012】
また、前記凸部は、前記接続口の同心円に沿って、前記接続口の半周分を覆うように形成されていてもよい。
このようにすると、車両走行中の振動方向が多少変化しても、シール部材のシール性が著しく低下するのを抑制できる。
【0013】
また、前記本体部と前記内燃機関との間には、前記内燃機関の冷却液出口を取り囲むように環状のガスケットが設けられ、前記凸部の周方向の両端が前記ガスケットの外周側に位置してもよい。
このようにすると、ガスケットの反力で本体部の外周部が内燃機関から離れる方向へ反るのを抑制する効果が向上し、ガスケットのシール性が低下するのを抑制できる。
【0014】
また、前記凸部の高さ方向先端は、前記シール部材と同じ高さに位置してもよい。
このようにすると、接続口とパイプとの間にシール部材があっても、接続口をパイプの挿し込み易い。よって、パイプの接続作業を一層容易にできる。
また、前記本体部に温度センサが取り付けられていて、前記温度センサの感温部を挟んで両側に位置する一対の壁部は、前記本体部の底側へ向かうに従って接近する構成としてもよい。
このようにすると、温度センサの感温性を向上できる。
【0015】
また、前記パイプは、前記内燃機関へ冷却液を送るウォータポンプに固定されたサーモスタットへ冷却液を導くとしてもよい。
この場合、車両走行時の振動で接続口とパイプが径方向に相対移動して、シール部材のシール性が著しく低下する虞がある。このため、前記ウォータアウトレットにおいては、本発明に係る凸部を設けるのが特に有効である。
【0016】
また、車両に搭載された状態で、前記凸部は、前記接続口の上側又は下側に位置するとしてもよい。
車両走行時においては、パイプと、このパイプが接続される接続口とが主に上下方向に相対移動する。前記構成によれば、この上下方向の相対移動を凸部で抑制できるので、シール部材のシール性が著しく低下するのを効率的に抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るウォータアウトレットによれば、パイプと、このパイプが接続されるウォータアウトレットの接続口との間をシールするシール部材によるシール性の著しい低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施の形態に係るウォータアウトレットが適用されるエンジン冷却システムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、一実施の形態に係るウォータアウトレットを表側からみた斜視図である。
図3図3は、図1のウォータアウトレットを裏側からみた斜視図である。
図4図4は、図1のウォータアウトレットの接続口と、該接続口に接続するパイプとの接続状態を示す断面図である。
図5図5は、図4のA-A矢視断面図である。
図6図6は、図4の状態からウォータアウトレットの接続口と、パイプとが径方向に相対移動した状態を示す断面図である。
図7図7は、図6のA-A矢視断面図である。
図8図8は、従来のウォータアウトレットの接続口と、該接続口に接続するパイプとの接続状態を示す断面図である。
図9図9(a)は、図8の状態からウォータアウトレットの接続口と、該接続口に接続するパイプとが径方向に相対移動した状態を示す断面図であり、図9(b)は、図9(a)のB-B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係るウォータアウトレットを図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係るウォータアウトレットが適用されるエンジン冷却システムの一例を示すブロック図である。また、図2は、本実施の形態に係るウォータアウトレットを表側からみた斜視図であり、図3は、図1のウォータアウトレットを裏側からみた斜視図である。
【0020】
図1に示すように、ウォータアウトレット100は、エンジン(内燃機関)20の冷却液出口21を覆うように取り付けられる。このウォータアウトレット100には、ラジエータ30へ冷却液を導くためのパイプ31と、サーモスタット40へラジエータ30をバイパスして冷却液を導くためのパイプ32とが接続されている。
エンジン20において、冷却液を導入するための冷却液入口22には、ウォータポンプ50が取り付けられる。このウォータポンプ50には、サーモスタット40が取り付けられる。
【0021】
サーモスタット40は、ウォータポンプ50の入口に例えばボルト等で固定され、ラジエータ30からの冷却液が導入される第1の入口41と、バイパス流路であるパイプ32から冷却液が導入される第2の入口42と、ウォータポンプ50へ冷却液を導出する出口43とを有する。
【0022】
サーモスタット40は、エンジン20からパイプ32を介して導出される冷却液の温度が低い場合、第1の入口41を閉じ、第2の入口42と出口43とが連通するように動作する。一方、エンジン20からパイプ32を介して導出される冷却液の温度が高くなると、第2の入口42を閉じ、第1の入口41と出口43とが連通するように動作する。
【0023】
ウォータアウトレット100は、例えば合成樹脂により形成され、エンジン20の冷却液出口21を覆うようにエンジン20本体に対しボルト固定される。
図2図3に示すようにウォータアウトレット100は、皿状の本体部1と、この本体部1から外側へ立ち上がるように設けられる第1の接続口2及び第2の接続口3と、第2の接続口3の外周側に、本体部5から外側へ立ち上がるように設けられる凸部9とを備える。
図2中に示す上下は、ウォータアウトレット100が車両に搭載された状態で、上下となる方向である。
【0024】
第1の接続口2には、パイプ31の一端が接続される。エンジン20の冷却液出口21から導出される冷却液は、そのパイプ31を通ってラジエータ30へ向かう。第2の接続口3には、パイプ32の一端が接続される。エンジン20の冷却液出口21から導出される冷却液は、そのパイプ32を通ってサーモスタット40へ向かう。
このように、冷却液出口21から導出される冷却液は、ウォータアウトレット100で分岐して、ラジエータ30又はサーモスタット40へ向かう。
【0025】
図3に示すように本体部1は、エンジン20から離れるように凹形状となる皿部5と、この皿部5の外周縁から外側へ張り出すフランジ4とを有する。皿部5とエンジン20との間にできる空間が冷却液の流通路となる。フランジ4には、複数のボルト孔4aが設けられている。これらボルト孔4aにボルト(図示せず)が挿通されてエンジン20本体に対しボルト締めされるようになっている。
フランジ4がエンジン20にボルトで固定された状態で、皿部5の開口がエンジン20の冷却液出口21と向かい合う。前記第1の接続口2と第2の接続口3とは、それぞれ前記皿部5から外側へ立ち上がるように突出して設けられている。
【0026】
また、図3に示すようにフランジ4には、環状の溝4bが形成される。この溝4bに、環状のガスケット6が嵌る。ガスケット6は、皿部5の開口と冷却液出口21を取り囲むように配置され、エンジン20とフランジ4との間から冷却液が漏れるのを防止する。
【0027】
また、図2図3に示すように、ウォータアウトレット100には、温度センサ7が取り付けられる。温度センサ7の感温部7aは、皿部5の内側へ挿入されて、冷却液の温度を検出できるようになっている。
【0028】
また、図3に示すように皿部5において、感温部7aが挿入される部分の形状は、谷状となっている。より詳しくは、皿部5のエンジン20側を開口側、その反対側を底側とすると、皿部5は、温度センサ7の感温部7aの軸を挟んで両側に位置する一対の壁部5a,5bを有する。一対の壁部5a,5bは、底側へ向かうに従って接近し、テーパ形状となっている。これにより、感温部7aに冷却水が集まりやすく、感温性能を良好にできる。
【0029】
図2に示すようにウォータアウトレット100が車両に搭載された状態で、凸部9は、第2の接続口3の上側に位置する。また、凸部9の形状は、表側から見て(平面視で)円弧状である。凸部9は、第2の接続口3との間に隙間S1を開けて、第2の接続口3の上側略半周を取り囲むように配置される。図4に示すように第2の接続口3をパイプ32の先端部内側に挿し込むと、パイプ32の先端部の周方向の一部が凸部9と第2の接続口3との間に隙間を存して挟まれた状態となる。
【0030】
第2の接続口3とパイプ32との間には、シール部材としてのOリング11が締め代をもった状態で介装される。第2の接続口3の先端部の外径は、他の部分よりも小さく、外径が変わる境界部分に環状の段差3aが形成されている。Oリング11は、その段差3aで支えられる。パイプ32の先端部の内径は、他の部分よりも大径で、内径が変わる境界部分に環状の段差32aが形成されている。Oリング11は、その段差32aで抜止される。
【0031】
図4中、第2の接続口3の段差3aよりも下側部分の外径は、パイプ32の段差32aの下側部分の内径よりも小さく、第2の接続口3の段差3aよりも上側部分の外径は、パイプ32の段差32aの上側部分の内径よりも小さい。本実施の形態では、図4中、第2の接続口3の段差3aよりも下側部分の外径と、パイプ32の段差32aよりも下側部分の内径との差は、第2の接続口3の段差3aよりも上側部分の外径と、パイプ32の段差32aよりも上側部分の内径との差と等しい。
尚、第2の接続口3をパイプ32の内側へ挿し込むことができれば、これらの外径と内径の寸法差は適宜変更できる。
【0032】
図4に示すように、第2の接続口3と凸部9との間の隙間をX、第2の接続口3の外径r1とパイプ32の内径r2の差分をY(Y=r2-r1)、パイプ32の肉厚をTとする。すると、第2の接続口と凸部9との間の隙間Xは、第2の接続口の外径r1とパイプ32の内径r2の差分Yと、パイプ32の肉厚Tの和よりも小さい(X<Y+T)。
これにより、第2の接続口3とパイプ32がOリング11によって調心されて、同軸に配置された状態で、凸部9とパイプ32との間の隙間S2が、パイプ32と第2の接続口3との間の隙間S1よりも小さくなる。このため、車両走行時にエンジン20とウォータポンプ50がそれぞれ振動し、パイプ32が第2の接続口に対して径方向の一方向に移動した場合、パイプ32が第2の接続口3に接触するよりも先に凸部9に接触し、それ以上の相対移動が規制される。
【0033】
凸部9の厚さは、特に限定されないが、パイプ32と接触した際の強度を確保する必要がある。そのため、本実施の形態においては、図2のように凸部9の厚さを大きく形成した上で、軽量化等のため、中抜きした中空構造としているが、中実構造であってもよい。
【0034】
以上に説明したように、本実施の形態のウォータアウトレット100は、エンジン20(内燃機関)の冷却液出口21に設けられ、エンジン20の外へ冷却液を導出するパイプ32が接続されている。ウォータアウトレット100は、皿状の本体部1と、筒状の第2の接続口3と、凸部9とを備える。本体部1は、エンジン20に固定される。第2の接続口3は、本体部1から外側へ立ち上がるように設けられ、パイプ32の内側に挿し込まれる。凸部9は、第2の接続口3の外周側に、本体部1から外側へ立ち上がるように設けられる。第2の接続口3とパイプ32との間には、環状のOリング11(シール部材)が設けられる。パイプ32の少なくとも周方向の一部は、凸部9と接続口3との間に配置される。
【0035】
前記構成によれば、凸部9と接続口3との径方向の相対移動を凸部9で抑制できる。このため、前記ウォータアウトレット100によれば、パイプ32と、このパイプ32が接続される接続口3との間をシールするOリング(シール部材)11によるシール性の著しい低下を防止できる。
【0036】
より詳しくは、前記したようにサーモスタット40は、ウォータポンプ50に対しボルト固定され、ウォータアウトレット100は、エンジン20本体に対しボルト固定される。即ち、パイプ32の一端が接続されるウォータアウトレット100と、パイプ32の他端が接続されるサーモスタット40の位置には、車両に応じて相対位置がずれる、即ち、取付誤差が生じる。
【0037】
そこで、本実施の形態に係るウォータアウトレット100にあっては、前記取付誤差を吸収するため、パイプ32と、このパイプ32が接続される第2の接続口3との軸方向の相対移動、及び周方向の相対回転を許容できるよう、図4に示すように第2の接続口3の外径とパイプ32の内径とに差分(Y)を設け、第2の接続口3とパイプ32との間に環状の隙間S1を設けている。また、前記第2の接続口3と前記パイプ32との間には、前記隙間S1からの冷却液の漏れを防止するため、Oリング11(環状のシール部材)が設けられている。
【0038】
また、図2に示すように、第2の接続口3の外周側には、本体部1から外側(第2の接続口3の突出側)へ立ち上がるように設けられる凸部9が設けられている。
図4に示すように前記凸部9は、前記パイプ32の少なくとも周方向の一部に対向して配置される(パイプ32に接続されない状態では、第2の接続口3の一部に対向している)。そのため、前記パイプ32の少なくとも周方向の一部は、前記凸部9と前記第2の接続口3との間に配置される。
【0039】
パイプ32は、変形し難い合成樹脂等で形成されていて、その一端の内側にウォータアウトレット100の第2の接続口3が挿し込まれ、他端がサーモスタット40に圧入固定される。車両走行中においては、ウォータアウトレット100が固定されるエンジン20と、サーモスタット40が固定されるウォータポンプ50とがそれぞれ固有の振動数で上下に振動する。すると、ウォータアウトレット100の第2の接続口3とパイプ32とが径方向に相対的に移動する。
【0040】
この第2の接続口3とパイプ32との径方向の相対移動が大きくなると、パイプ32が凸部9に当接してそれ以上の相対移動を抑制する。このため、Oリング11(シール部材)の周方向の一部の圧縮量が極端に大きくなり、これと反対側の部分の圧縮量(締め代)が極端に小さくなって、その部分のシール性が著しく低下するのを防止できる。
さらには、パイプ32を接続する際、パイプ32先端部の周方向の一部を第2の接続口と凸部9とで挟むように接続すればよい。このように、凸部9がパイプ32を接続する際の目印となるので、パイプ32の接続作業を容易にできる。
【0041】
また、本実施の形態に係るウォータアウトレット100では、第2の接続口3とパイプ32との間に、周方向に沿って隙間S1が形成される。そして、凸部9は、第2の接続口3とパイプ32が径方向へ相対移動した際、パイプ32が第2の接続口3に接触するよりも先に、パイプ32と接触する位置に配置される。
【0042】
このように、第2の接続口3とパイプ32との間に、周方向に沿って隙間S1を形成すると、第2の接続口3とパイプ32との軸方向の移動、及び周方向の相対回転を許容して、パイプ32の一端が接続される部材と、他端が接続される部材の取付誤差を吸収できる。
また、隙間S1によって第2の接続口3とパイプ32の径方向の相対移動も許容される。このため、パイプ32の一端が接続される部材と、他端が接続される部材が別々に振動したとき、第2の接続口3とパイプ32との径方向の相対移動も許容され、パイプ32の接合部に負荷がかかって耐久性が低下するのを抑制できる。
さらには、第2の接続口3とパイプ32との径方向の相対移動量が大きくなった場合には、パイプ32が第2の接続口3に接触するよりも先に、パイプ32が凸部9に接触する。このため、第2の接続口3とパイプ32との径方向の相対移動量が大きくなるのを確実に抑制できて、Oリング11のシール性が著しく低下するのを確実に防止できる。
【0043】
より具体的には、前記凸部9の内周面と前記第2の接続口3の外周面との距離Xは、前記パイプ32の内径r2と前記第2の接続口3の外径r1との差分Yと、前記パイプ32の厚さTとの和よりも小さく形成されている(X<Y+T)。これにより、第2の接続口3とパイプ32が径方向の相対移動量が大きくなった場合には、パイプ32が第2の接続口3に接触するよりも先に、パイプ32が凸部9に接触できる。
【0044】
また、図2図4に示すように前記凸部9は、第2の接続口3の軸方向からみた平面視で円弧状に形成されている。
これにより、ガスケット6の反力でフランジ4がエンジン20本体から離れる方向へ反るのを凸部9で抑制できる。また、ウォータアウトレット100にパイプ32を接続する際に、凸部9を案内用のガイドとすることができる。さらには、凸部9を環状にする場合と比較して、第2の接続口3をパイプ32の内側に挿し込む際に、凸部9が邪魔にならない。このため、パイプ32の接続作業を容易にできる。
【0045】
また、前記凸部9は、図5に示すように前記第2の接続口3の同心円に沿って、該第2の接続口3の半周分を覆うように配置される。
これにより、ガスケット6の反力でフランジ4がエンジン20本体から離れる方向へ反って、ガスケット6のシール性が低下するのを抑制できる。また、車両走行時の振動方向が多少変化しても、第2の接続口3とパイプ32が径方向の相対移動量が大きくなるのを抑制できる。このため、車両走行時の振動方向が多少変化しても、Oリング11のシール性が著しく低下するのを抑制できる。
尚、凸部9の周方向長さ、及び形状は適宜変更できる。例えば、凸部9が複数の突起からなり、第2の接続口と間隔をあけて配置されていてもよく、凸部9が一つの突起又は環状の突条からなるとしてもよい。
【0046】
また、本実施の形態のウォータアウトレット100では、本体部1とエンジン20との間には、エンジン20の冷却液出口を取り囲むように環状のガスケット6が設けられている。前記凸部9の周方向の両端がガスケット6の外周側に位置する。
これによりフランジ4の反りを抑制する効果がより向上し、ウォータアウトレット100とエンジン20本体との間のシール性を保持することができる。
さらに、本実施の形態では、凸部9の周方向の両端は、本体部1の外周縁に達しているので、フランジ4の反りを抑制する効果が高いが、凸部9の周方向長さ、形状は適宜変更できる。
【0047】
また、前記凸部9の厚さは、特に限定されないが、パイプ32と接触した際の強度を確保する必要がある。そのため、本実施の形態においては、図2のように凸部9の厚さを大きく形成した上で、軽量化等のため、中抜きした中空構造としている。
【0048】
また、図4に示すように前記凸部9の高さ方向先端は、Oリング11と同じ高さに位置するように形成されている。これにより、第2の接続口3とパイプ32との間にOリング11があっても、第2の接続口3をパイプ32に挿し込み易い。さらには、第2の接続口3をパイプ32内へ凸部9で案内し易い。よって、パイプ32の接続作業を一層容易にできる。
【0049】
尚、凸部9の高さは、適宜変更できる。また、前記実施の形態においては、前記凸部9は、フランジ4の面に対して垂直に立設されているものとしたが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではない。例えば、凸部9を平面視円弧状に形成した場合、上部ほど拡径するように形成してもよい。その場合には、ウォータアウトレット100の接続口3とパイプ32とを接続する際に、凸部9が邪魔にならず容易に接続することができる。
【0050】
また、図2図3に図示していないが、凸部9の内周面に、軸方向または周方向にリブを形成してもよく、その場合は、凸部9の強度をより向上することができる。
さらに、本実施の形態のウォータアウトレット100において、本体部1には、温度センサ7が取り付けられており、この温度センサ7の感温部7aを挟んで両側に位置する一対の壁部5a,5bは、本体部1の底側へ向かうに従って接近する。このため、温度センサ7の感温性を向上できる。尚、壁部5a,5bはストレート形状であってもよく、温度センサ7を省略してもよい。
【0051】
また、本実施の形態のウォータアウトレット100において、パイプ32は、エンジン20へ冷却液を送るウォータポンプ50に固定されたサーモスタット40へ冷却液を導く。前述のように、ウォータアウトレット100は、エンジン20に固定される。
このように、パイプ32の一端がエンジン20に固定されたウォータアウトレット100に接続され、他端がウォータポンプ50に固定されたサーモスタット40に接続される場合であって、パイプ32が変形し難い合成樹脂製である場合、取付誤差を吸収できるように、パイプ32と第2の接続口3との間に環状の隙間S1を形成するのが好ましい。
そして、このような場合には、車両走行時の振動で第2の接続口3とパイプ32が径方向に相対移動して、Oリング11のシール性が著しく低下する虞がある。このため、前記ウォータアウトレット100においては、凸部9を設けるのが特に有効である。
【0052】
また、本実施の形態に係るウォータアウトレット100が車両に搭載された状態で、凸部9は、第2の接続口3の上側に位置する。
前記のように、エンジン20に固定されるウォータアウトレット100に一端が接続されるパイプ32の他端がウォータポンプに固定されるサーモスタット40に接続される場合、車両走行時にパイプ32と、このパイプ32が接続される第2の接続口3とが主に上下方向に相対移動する。そして、この上下方向の相対移動を凸部9で抑制できるので、Oリング11のシール性が著しく低下するのを効率的に抑制できる。同様の効果は、凸部9が第2の接続口3の下側に位置する場合にも得られる。
【0053】
尚、凸部9を設ける位置は、第2の接続口3の上下に限らず、適宜変更できる。さらに、凸部9は、車両走行時の振動が加わる前の状態で、パイプ32に接触してもよい。
本実施の形態において、凸部9は、第2の接続口3に対応して設けられている。この第2の接続口には、パイプ32が接続される。このパイプ32は、エンジン20から導出されて、ラジエータ30を経由しない冷却液をサーモスタット40へ導くバイパス路となる。しかし、冷却液をラジエータ30へ導くパイプ31が接続される第1の接続口2に対応して凸部9を設けてもよい。また、冷却液をヒータコア等の他の装置へ導くパイプが接続される接続口等に対応して凸部9を設けてもよい。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 本体部
2 第1の接続口
3 第2の接続口(接続口)
3a 段差
4 フランジ(取付部)
5 皿部
5a 壁部
5b 壁部
7 温度センサ
7a 感温部
9 凸部
11 Oリング(シール部材)
20 エンジン(内燃機関)
21 冷却液出口
30 ラジエータ
31 パイプ
32 パイプ
32a 段差
40 サーモスタット
41 第1の入口
42 第2の入口
43 出口
50 ウォータポンプ
100 ウォータアウトレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9