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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081200
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】運指表表示具及び運指表表示方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 15/02 20060101AFI20230602BHJP
   G10G 1/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G09B15/02 A
G10G1/02
G09B15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194954
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】512291307
【氏名又は名称】野島 玲菜
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】野島 玲菜
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182AA06
(57)【要約】
【課題】 運指と音符の要素が一目で直感的に認識可能な運指表表示具を提供する。
【解決手段】運指表2は、一音の運指を表す運指図3が少なくとも一つ配置されており、運指図3は、指で押さえるポジションに対応するポジション記号p1~p6の配列を備え、ポジション記号p1~p6は、ポジションを押えることを示す押記号5,6、又は、ポジションを押えないことを示す非押記号7で表され、運指図3は運指図3が表す一音の符頭に対応する位置に一つの押記号が位置するように、五線8に配置されており、符頭に対応する位置の押記号は第一の押記号6で表され、符頭に対応する位置以外の押記号は第一の押記号6とは異なる第二の押記号5で表されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポジションを所定の規則に従って押えるか又は押えないことで音階を形成する管楽器の運指表が表示された運指表表示具であり、
前記運指表には、一音の運指を表す運指図が五線上に少なくとも一つ配置されており、
前記運指図は、前記各ポジションに対応するポジション記号の配列を備え、
前記ポジション記号は、当該ポジション記号に対応するポジションを押えることを示す押記号、又は、当該ポジションを押えないことを示す非押記号で表されており、
前記運指図は、当該運指図が表す一音の符頭に対応する位置に少なくとも一つの前記押記号が位置するように、前記五線上に配置されており、
前記符頭に対応する位置の前記押記号は第一の押記号で表され、前記符頭に対応する位置以外の前記押記号は前記第一の押記号とは異なる第二の押記号で表されていることを特徴とする運指表表示具。
【請求項2】
少なくとも前記第一の押記号は符頭に相当する形状で表されていることを特徴とする請求項1記載の運指表表示具。
【請求項3】
前記運指図には、音価を表す音価記号が付されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の運指表表示具。
【請求項4】
前記音価記号は前記第一の押記号に付されるラインであり、当該ラインは当該音価に対応する長さであることを特徴とする請求項3記載の運指表表示具。
【請求項5】
前記運指表をデジタル画像として表示する表示部を備え、
前記表示部に表示された前記運指表は、前記第一の押記号、前記第二の押記号、及び、前記非押記号のうち少なくとも一つが変化することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の運指表示具。
【請求項6】
前記表示部に表示された前記運指表の運指図が、
前記第一の押記号、前記第二の押記号、及び、前記非押記号を備える第一状態で表されるステップと、
前記第二の押記号と前記非押記号の色が前記第一状態よりも薄い第二状態で表されるステップと、
前記第二状態から前記第二の押記号と前記非押記号が削除された第三状態で表されるステップのうち少なくとも2つのステップを含むように変化することを特徴とする請求項5に記載の運指表表示具。
【請求項7】
複数のポジションを所定の規則に従って押えるか又は押えないことで音階を形成する管楽器の運指表の表示方法であり、
前記運指表には、一音の運指を表す運指図が五線上に少なくとも一つ配置されており、
前記運指図は、前記各ポジションに対応するポジション記号の配列を備え、
前記ポジション記号は、当該ポジション記号に対応するポジションを押えることを示す押記号、又は、当該ポジションを押えないことを示す非押記号で表されており、
前記運指図は、当該運指図が表す一音の符頭に対応する位置に少なくとも一つの前記押記号が位置するように、前記五線上に配置されており、
前記符頭に対応する位置の前記押記号は第一の押記号で表され、前記符頭に対応する位置以外の前記押記号は前記第一の押記号とは異なる第二の押記号で表されていることを特徴とする運指表表示方法。
【請求項8】
少なくとも前記第一の押記号は符頭に相当する形状で表されていることを特徴とする請求項7記載の運指表表示方法。
【請求項9】
前記運指図には、音価を表す音価記号が付されていることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の運指表表示方法。
【請求項10】
前記音価記号は前記第一の押記号に付されるラインであり、当該ラインは当該音価に対応する長さであることを特徴とする請求項9記載の運指表表示方法。
【請求項11】
前記運指表をデジタル画像として表示部に表示させ、
前記表示部に表示された前記運指表は、前記第一の押記号、前記第二の押記号、及び、前記非押記号のうち少なくとも一つが変化することを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の運指表表示方法。
【請求項12】
前記表示部に表示された前記運指表の運指図が、
前記第一の押記号、前記第二の押記号、及び、前記非押記号を備える第一状態で表されるステップと、
前記第二の押記号と前記非押記号の色が前記第一状態よりも薄い第二状態で表されるステップと、
前記第二の押記号と前記非押記号が削除された第三状態で表されるステップのうち少なくとも2つのステップを含むように変化することを特徴とする請求項11に記載の運指表表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サクソフォンやリコーダー等の管楽器の運指表が表示された運指表表示具及び運指表表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管楽器は、吹奏楽器、気鳴楽器とも呼ばれ、少なくとも1カ所の開口部を有する空洞に向かって吹き付けられた気体の流れによって生ずる振動を利用して音を出す楽器である。この管楽器は、大きく木管楽器と金管楽器に分けられるが、いずれも定められたポジションを指で押さるか又は押えないことで音階を形成する。例えば、サクソフォンは複数のキィを指で押さえて操作し、リコーダーやオカリナは複数の音孔を指で押さえて開閉し、トランペットは複数のバルブを指で押さえて操作することで演奏される。
【0003】
管楽器では、その指使いを示すために従来から運指表が用いられている。従来の一般的な運指表は五線譜と運指図が並べて配置され、一音を表す音符に対して一つの運指図が対応付けて表示されている。使用者が運指表を使用するときは、五線譜で音符を確認し、その音符に対応付けられている運指図で指使いを確認する。このため、使用者は五線譜と運指図との間で視線を移動させて各々を確認するという二段階の作業が必要となり、非常に煩雑であった。
【0004】
五線譜と運指図が併記された運指表としては、例えば、特許文献1に、操作すべき運指位置を示すマーク等が記載された線譜部と、音符が記載された五線譜部とを有する楽器演奏用楽譜表が開示されている。また、特許文献2には、五線上に音符の音階の位置とたて笛の指の位置を記入した運指音符が開示されている。この運指音符は、音符の符幹に相当する位置に運指図が配置された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平02-098372号公報
【特許文献2】実開昭57-178267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、音符は下段の五線譜部で確認し、運指は上段の線譜部で確認することとなるため、従来と同様に二段階の確認作業が必要となる。また、特許文献2では、五線譜上に音階と指の位置が記入されているが、運指は符幹に位置する運指図で確認し、音符の要素は運指図とは別に位置する符頭を確認するため、二段階の確認作業を行わなければならない点で、煩雑であることに変わりはない。
【0007】
そこで、本発明は、運指と音符の要素が一目で直感的に認識可能な運指表表示具及び運指表表示方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の運指表表示具は、複数のポジションを所定の規則に従って押えるか又は押えないことで音階を形成する管楽器の運指表が表示された運指表表示具であり、
前記運指表には、一音の運指を表す運指図が五線上に少なくとも一つ配置されており、
前記運指図は、前記各ポジションに対応するポジション記号の配列を備え、
前記ポジション記号は、当該ポジション記号に対応するポジションを押えることを示す押記号、又は、当該ポジションを押えないことを示す非押記号で表されており、
前記運指図は、当該運指図が表す一音の符頭に対応する位置に少なくとも一つの前記押記号が位置するように、前記五線上に配置されており、
前記符頭に対応する位置の前記押記号は第一の押記号で表され、前記符頭に対応する位置以外の前記押記号は前記第一の押記号とは異なる第二の押記号で表されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の運指表表示方法は、複数のポジションを所定の規則に従って押えるか又は押えないことで音階を形成する管楽器の運指表の表示方法であり、
前記運指表には、一音の運指を表す運指図が五線上に少なくとも一つ配置されており、
前記運指図は、前記各ポジションに対応するポジション記号の配列を備え、
前記ポジション記号は、当該ポジション記号に対応するポジションを押えることを示す押記号、又は、当該ポジションを押えないことを示す非押記号で表されており、
前記運指図は、当該運指図が表す一音の符頭に対応する位置に少なくとも一つの前記押記号が位置するように、前記五線上に配置されており、
前記符頭に対応する位置の前記押記号は第一の押記号で表され、前記符頭に対応する位置以外の前記押記号は前記第一の押記号とは異なる第二の押記号で表されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の運指表表示具及び運指表表示方法によれば、一音の運指を表す運指図が五線に配置されており、その運指図の中の第一の押記号が当該一音の符頭に対応する位置に配されているため、使用者は運指図だけで運指と音符の要素を確認することができる。
【0011】
好ましくは、少なくとも前記第一の押記号は符頭に相当する形状で表されていることを特徴とする。この発明によれば、少なくとも第一の押記号が符頭に相当する形状で表されるため、使用者は運指図から音符をイメージしやすくなる。
【0012】
好ましくは、前記運指図には、音価を表す音価記号が付されていることを特徴とする。この発明によれば、運指図には音価を表す記号が付されているため、音符の要素を更に備えることとなる。
【0013】
好ましくは、前記音価記号は前記第一の押記号に付されるラインであり、当該ラインは当該音価に対応する長さであることを特徴とする。この発明によれば、ラインの長さで音価が表されるため、使用者は音の長さを感覚的に認識可能となる。
【0014】
好ましくは、前記運指表をデジタル画像として表示する表示部を備え、前記表示部に表示された前記運指表は、前記第一の押記号、前記第二の押記号、及び、前記非押記号のうち少なくとも一つが変化することを特徴とする。この発明によれば、表示部に表示される第一の押記号、第二の押記号、及び、非押記号のうち少なくとも一つを必要に応じて変化させることで、運指を強調した状態としたり、音符の要素を強調した状態としたり、利用者のレベルに応じた運指表とすることができる。
【0015】
好ましくは、前記表示部に表示される前記運指表の運指図が、前記第一の押記号、前記第二の押記号、及び、前記非押記号が第一状態で表されるステップと、前記第二の押記号と前記非押記号の色が前記第一状態よりも薄く表されるステップと、前記第二の押記号と前記非押記号が削除された第三状態で表されるステップのうち少なくとも2つのステップを含むように変化することを特徴とする。この発明によれば、運指が強調された第一状態、第一状態よりも音符の要素が強調された第二状態、運指の要素が削除されて音符の要素のみとなる第三状態が適宜表示されることで、利用者は運指と音符との対応関係が意識付けられ、運指表から楽譜の使用への移行がスムーズとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の運指表表示具及び運指表表示方法によれば、運指図だけで運指と音符の要素が表されるため、運指と音符の要素を一目で直感的に認識可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一の実施の形態の運指表表示具の例を示す説明図である。
図2】上記実施の形態における指のホームポジションを説明する説明図である。
図3】上記実施の形態における一音「ラ」の運指を表す運指図を説明する説明図である。
図4】第二の実施の形態の運指表表示具を説明する説明図である。
図5】上記実施の形態における運指図のバリエーション1を説明する説明図である。
図6】上記実施の形態における運指図のバリエーション2を説明する説明図である。
図7】上記実施の形態における運指図のバリエーション3を説明する説明図である。
図8】上記実施の形態における運指図のバリエーション4を説明する説明図である。
図9】上記実施の形態における運指図のバリエーション5を説明する説明図である。
図10】第三の実施の形態の運指表表示具を説明する説明図である
図11】上記実施の形態における運指図に付されるラインLを説明する説明図である。
図12】上記実施の形態における運指図のバリエーション6を説明する説明図である。
図13】上記実施の形態における運指図のバリエーション7を説明する説明図である。
図14】上記実施の形態における運指図のバリエーション8を説明する説明図である。
図15】本発明の運指表表示具に表示される運指図の他の例を説明する説明図である。
図16】第四の実施の形態の運指表表示具を説明する説明図である。
図17】(a)は上記実施の形態におけるユーザIDと学習段階との対応付けをテーブル形式で説明する説明図であり、(b)は学習段階と運指表データとの対応付けをテーブル形式で説明する説明図である。
図18】上記実施の形態における、運指表データの一例を説明する説明図であり、(a)は第一状態、(b)は第二状態、(c)は第三状態を説明する説明図である。
図19】上記実施の形態における運指表データ提供装置について、制御部の機能構成の概要の一例を説明する説明図である。
図20】上記実施の形態における運指表表示具と運指表データ提供装置の処理を説明する説明図である。
図21】上記実施の形態における運指表データの他の例を説明する説明図であり、(a)は第一状態、(b)は第二状態、(c)は第三状態を説明する説明図である。
図22】上記実施の形態における運指表データの他の例を説明する説明図であり、(a)は第一状態A、(b)は第一状態B、(c)は第二状態A、(d)は第二状態Bを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第一の実施の形態]
以下、本発明の管楽器用の運指表表示具について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態の運指表表示具11の例を示す説明図である。運指表表示具11は、管楽器の一つであるサクソフォン用のものである。サクソフォンは、指で押さえるポジションがキィと呼ばれており、キィを規則に従って押えるか又は押えないことで音階を形成する。
【0019】
運指表表示具11は、基台1の表面に、運指表2(21,22)が表示されている。基台1は、紙製や樹脂製のシートや、パネル、携帯情報端末のディスプレイ等、運指表を表示可能なものであればどのようなものでも良い。また、運指表2は、印刷、手書き、デジタル画像等、どのような方法で基台1に表示されても良い。本実施の形態では、運指表表示具11は白色の用紙に運指表2が印刷されたものを例に説明する。
【0020】
2つの運指表2のうち上段の運指表21は、オクターブ・レバーを押す必要が無い音域の運指表であり、下段の運指表22はオクターブ・レバーを押す必要のある音域の運指表である。この運指表2(21,22)は初心者用であり、運指図3、音名4、五線8、及び音部記号から構成される。運指図3は一音の運指を表すものであり、レからドまでの幹音の音名4(レからド)に対応付けて配置されている。
【0021】
運指図3は、サクソフォンのキィに対応するポジション記号の配列で構成されている。サクソフォンは、主列のキィやその他複数のキィが配列しており、これらのキィを規則に従って指で押さえるか又は押えないことにより音階を形成する。ポジション(指を置く場所)は、白蝶貝又は指貝と呼ばれる。図2は、サクソフォンの全てのキィの配列図を使用して、指のポジションとポジション記号を説明する説明図である。左手のポジションは、第二指で押さえるキィ1に対応するポジション記号p1、第三指で押さえるキィ2に対応するポジション記号p2、第四指で押さえるキィ3に対応するポジション記号p3で表され、右手のポジションは、第二指で押さえるキィ4に対応するポジション記号p4、第三指で押さえるキィ5に対応するポジション記号p5、第四指で押さえるキィ6に対応するポジション記号p6で表される。なお、キィ1はBキィ、キィ2はAキィ、キィ3はGキィ、キィ4はFキィ、キィ5はEキィ、キィ6はDキィとも呼ばれる。また、図2は、一例として一音「ラ」の運指を表しており、黒色で表されるポジション記号p1とポジション記号p2に対応するキィ1とキィ2を押え、その他のポジションp3~p6に対応するキィ3~6は押えないことを意味している。
【0022】
運指図3は、図2に示すように全てのキィに対応するポジション記号が配列する構成としても良いが、本実施の形態では、キィ1~6に対応するポジション記号p1~p6のみが垂直方向に配列する構成となっている。運指表表示具11は、初心者用に幹音のみを示すものであることから、運指図3を幹音に関係するポジション記号p1~p6のみの配列として単純化することで、初心者でも認識しやすくなっている。
【0023】
図1に示すように、運指図3において、ポジション記号p1~p6は、キィを押えることを示す押記号5,6と、キィを押えないことを示す非押記号7で表されている。そして、運指図3は、その運指図3が表す一音の符頭に対応する位置に一つの押記号6が位置するように五線8に配置されている。符頭に対応する位置の押記号6は第一の押記号で表され、符頭に対応する位置以外の押記号5は第一の押記号6とは異なる第二の押記号で表されている。本実施の形態では、ポジション記号p1~p6は符頭に相当する形状で表されており、特に第一の押記号6は符頭をイメージしやすいように長軸が右上がりに傾斜した楕円で表されている。また、第一の押記号6は黒色、第二の押記号5は灰色で着色されており、非押記号7は灰色の枠で縁取られた白色で表されている。
【0024】
以下、一音「ラ」を例として、運指図3を詳細に説明する。図3は、一音「ラ」の運指を表す運指図3を説明する説明図である。サクソフォンで一音「ラ」を奏するときは、ポジション記号p1で表されるキィとポジション記号p2で表されるキィを押え、ポジション記号p3~p6で表されるキィは押えない状態とする。これを運指図3で表すと、ポジション記号p1、及び、ポジション記号p2が押記号5,6で表され、ポジション記号p3~p6が非押記号7で表される。この運指図3は、一音「ラ」を表す音符の符頭に対応する位置(すなわち、五線の第2線と第3線の間)に、押記号で表されるポジション記号p1,p2のうちの最も下位のポジション記号p2が位置するように、五線8に配置されている。そして、符頭に対応する位置のポジション記号p2は第一の押記号6で表され、それ以外の押記号であるポジション記号p1は第一の押記号6とは異なる第二の押記号5で表されている。ポジション記号p4~p6は押記号5,6とは異なる非押記号7で表されている。
【0025】
なお、本実施の形態では、押記号で表されるポジション記号p1,p2のうち最も下に位置するポジション記号p2を第一の押記号6としているが、例えば、最も上に位置する押記号や中間に位置する押記号を第一の押記号6としても良い。
【0026】
本実施の形態において、第一の押記号6は符頭に相当する形状であり、詳細には、長軸が右上がりに傾斜した楕円で表されている。これにより、音符をイメージしやすくなり、音符との関連付けにおいて非常に有効である。符頭に相当する形状としては、長軸が水平な楕円や正円でも良いが、音符の多くがそうであるように長軸が若干右上がりに傾斜した楕円が好ましい。第二の押記号5と非押記号7は、第一の押記号6とは異なり、長軸が水平な楕円で表されているが、その他の形状でも良い。
【0027】
また、運指図3の背景は白色であり、第一の押記号6は黒色で表され、第二の押記号5は第一の押記号6よりも明度が高い灰色で表され、非押記号7は白色で表されていることで、第一の押記号6と第二の押記号5は色彩的にグルーピングされ、指で押えるポジションとして一括して認識されるとともに、灰色で表される第二の押記号5に比較して、黒色で表される第一の押記号6が目立つ状態となり、音符の符頭の位置が即座に認識可能となる。更に、非押記号7は第一の押記号6とは対極の明度とすることで、操作においても反対の「押えない」ことをイメージしやすくなっている。
【0028】
上記と同様のルールに基づいて、幹音(レからド)の各音の運指図3を2オクターブ分表示したものが、図1に示す運指表表示具11である。運指表表示具11は、幹音の音階の練習に使用したり、楽曲の楽譜に並べて配置することで補助教材として使用したりする。例えば、幹音の音階の練習をするときは、使用者は、運指表表示具11を見ながら、一音ずつ吹奏する。使用者は、運指図3の押記号5,6と非押記号7の配列で運指を確認するとともに、運指図3に含まれる第一の押記号6で音符の符頭の位置を確認でき、運指と音符の要素を一目で直感的に認識することができる。また、楽譜の副教材として使用するときは、使用者は、楽譜と運指表表示具11とを照らし合わせながら、音符に対応する運指図3を探すが、運指図3は符頭に対応する位置に第一の押記号6が配置されていることから、音符に対応する運指図3を一目で直感的に特定することができる。
【0029】
また、運指表表示具11は運指図3の中の第一の押記号6が音符の符頭に該当するため、使用者は運指表表示具11を使用することで、運指と音符との対応付けが自然と意識付けられる。これにより、運指を学習しながら、音符を読む力も備わることとなり、運指表から音符の使用への移行がスムーズに行われる。
【0030】
[第二の実施の形態]
図4は、第二の実施の形態の運指表表示具12を説明する説明図である。運指表表示具12は、基台1に運指表2が表示されている点で上記第一の実施の形態の運指表表示具11と同様であるため、共通点については説明を省略する。運指表表示具12では、運指表2に含まれる運指図3に音価を表す音価記号91,92が付されている。ここでは、音価に応じて4分音符や8分音符、付点四8音符などの音符と同じ符尾91や付点92が音価記号として付されている。ここで符尾とは、符幹(通称で棒)、又は、符幹と符鉤(通称で旗)のセット、又は、符幹と連桁(通称で横棒)のセットを意味する。
【0031】
図5から図9は、運指表表示具12に表示される運指図3のバリエーション1~5を説明する説明図である。図5に示すバリエーション1は運指図N11,N12に対して4分音符、運指図N13に対して付点4分音符に相当する音価記号91,92が付され、図6に示すバリエーション2は運指図N21,N22に対して2分音符、運指図N23に対して付点2分音符に相当する音価記号91,92が付され、図7に示すバリエーション3は運指図N31の第一の押記号が全音符に相当する形状となっており、運指図N32に対して付点全音符に相当する音価記号92が付され、図8に示すバリエーション4は運指図N41,N42に対して8分音符、運指図N43に対して付点8部音符に相当する音価記号91,92が付され、図9に示すバリエーション5は運指図N51,N52に対して16分音符、運指図N53に対して付点16部音符に相当する音価記号91,92が付されている。このように、運指図は音価記号として符尾91や付点92を付することで一般的な音符に近い形態となるため、利用者は運指表から音符の学習も行うことができ、運指図から音符の使用への移行が更にスムーズになる。
【0032】
更に、図5から図9において、運指図N11,,,N51は符尾91(符幹)が全てのポジション記号p1~p6に接しているが、その他の運指図N12,,,N52及び運指図N13,,,N53については符尾91の符幹部分の端部が第一の押記号6に位置しており、より音符に近い構成となっているため効果的である。
【0033】
このように、運指表表示具12によれば、使用者は運指と符頭の位置のみならず、音価を表す符尾や付点も一目で認識可能となり、音符の学習にも非常に効果的である。
【0034】
[第三の実施の形態]
図10は、第三の実施の形態の運指表表示具13を説明する説明図である。運指表表示具13は、基台1に運指表2が表示されている点で上記第一の実施の形態の運指表表示具11と同様であるため、共通点については説明を省略する。運指表表示具13では、運指図3に音価記号としてラインL1,L2,L3が付されている。ラインL1,L2,L3は、相対的に音価を示す長さとなっている。なお、ここでは第一の押記号は長軸が水平な楕円で表されているが、上記実施の形態のように長軸が傾斜した楕円で表されても良い。
【0035】
図11は、4分音符と同じ音価を表す運指図3を例として、本実施の形態のラインLを説明する説明図である。例えば、音高が「ラ」の4分音符に相当する運指図3を表すときは、4分音符の音価に相当する長さのラインL1を運指図3に付加する。ここでは、ラインL1は第一の押記号6の幅Wの略4倍の長さとしている。すなわち、本実施の形態では16分音符の音価を幅Wの1倍の長さとし、図10に示すように、4分音符のラインL1は幅Wの4倍、8分音符のラインL2は幅Wの2倍、付点8分音符のラインL3は幅W3の3倍の長さとすることで、相対的に音価を表す長さとなっている。これにより、使用者はラインL1~L3の長さにより音の長さを直感的に認識することができる。
【0036】
なお、ラインL1は、第一の押記号6に重ねて配されており、第一の押記号6の左端から右側に向かって五線と並行となるように水平に配置されている。色彩や太さや線の種類により強調しても良く、本実施の形態では色彩を赤色とし、五線に比して太さが太く、線の種類はカスミ罫線に類する擦れた直線としている。
【0037】
また、ラインLは8分音符の音価を幅Wとして表すものに限定されず、いずれかの音符の音価を基準として相対的に比較できるものであれば良い。また、ラインL1~L3は、第一の押記号の中央や右端に先端を合わせて配置しても良いし、例えば五線に対して傾斜させても良いし、色彩や太さや種類も任意であり、波線や破線等でも良い。
【0038】
図12から図14は、運指表表示具13に表示される運指図3のバリエーション6~8を説明する説明図である。図12から図14の運指図3には音価記号としてラインLの他に、上記第二の実施の形態で示す符尾91や付点92が付されている。
【0039】
16分音符の音価を表すラインLの長さを第一の押記号の幅Wとしたときに、図12に示すバリエーション6おいては、4分音符の符尾91が付された運指図N61には4倍の長さのラインL4が付され、8分音符の符尾91が付された運指図N62には2倍の長さのラインL5が付され、付点8分音符の符尾91と付点92が付された運指図N63には3倍の長さのラインL6が付され、図13に示すバリエーション7においては、16分音符の符尾91が付された運指図N71には1倍の長さのラインL7が付され、付点8分音符の符尾91と付点92が付された運指図N72には3倍の長さのラインL8が付され、16分音符の符尾91が付された運指図N73には1倍の長さのラインL9が付され、図14に示すバリエーション8おいては、16分音符の符尾91が付された運指図N81には1倍の長さのラインL10が付され、4分音符の符尾91が付された運指図N82には4倍の長さのラインL11が付されている。
【0040】
また、バリエーション8では、連桁で繋がれた最後尾の運指図N81と右隣の運指図N82の第一の押記号が音楽記号タイ93で繋げられている。このように、楽譜で使用される様々な音楽記号を付加することで、音楽記号に慣れ親しむことができ、運指表から楽譜の使用への移行をスムーズに進める上で有効である。
【0041】
以上のように、使用者は音価記号として符尾91や付点92、ラインL1~L11が付された運指図を使用することで、音符の要素として音高だけでなく音価についても一目で認識することができる。
【0042】
[運指図の他の例]
図15は、本発明の運指表表示具に表示される運指図の他の例を説明する説明図である。運指図31は、押記号は黒色楕円、非押記号は外枠が黒色の白色楕円で表され、第一の押記号6が第二の押記号5よりも大きく表されている。このように、非押記号7、第一の押記号6、及び、第二の押記号5は使用者が認識可能なように異なる記号で表されていれば良く、その他、色彩、形状等が異なる形態としても良い。音符の要素を素早く認識可能とする観点から、第一の押記号6が第二の押記号5及び非押記号7よりも目立つように視認性が高いことが好ましく、例えば、第二の押記号5及び非押記号7と比較して、第一の押記号6の大きさを大きく表したり、基台1の表面との明度差を大きく(コントラストを高く)したりしても良い。
【0043】
[第四の実施の形態]
以下、本実施の形態の運指表表示具100について説明する。運指表表示具100は、運指表をデジタル画像として表示する表示部を備えるものであり、タブレットやスマートフォン、パーソナルコンピュータ等の情報端末に本発明を適用した例である。図16は、運指表表示具100を説明する説明図である。運指表表示具100は運指表データ提供装置200とネットワークNETを介して接続されている。
【0044】
[運指表表示具100のシステム構成]
運指表表示具100は、記憶部110、表示部120、操作部130、通信部140、制御部150、各部110~150を接続する内部バス等を備えるコンピュータシステムである。
【0045】
記憶部110は、例えばフラッシュメモリやEEPROM、HDDやSSD等の不揮発性メモリ等により構成される。記憶部110には、OS(Operating System)、動画像や静止画像を表示する画像表示プログラム、その他コンピュータプログラム等が記憶されている。表示部120はコンピュータと一体型又は別体型のディスプレイであり、例えばタッチパネル式ディスプレイや外付け液晶ディスプレイ等である。操作部130はキーボードやマウス、表示部120と一体のタッチパネル等であり、通信部140はインターネット等のネットワークNETに接続するためのインターフェイスである。制御部150は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0046】
[運指表データ提供装置のシステム構成]
運指表データ提供装置200は、記憶部210、表示部220、操作部230、通信部240、制御部250、各部210~250を接続する内部バス等を備えるコンピュータシステムである。具体的には、運指表データ提供装置200は、例えばサーバコンピュータ等である。
【0047】
記憶部210は、例えばフラッシュメモリやEEPROM、HDDやSSD等の不揮発性メモリ等により構成される。記憶部210には、OS(Operating System)、及び運指表データ提供プログラム、その他のコンピュータプログラム等が記憶されている。
【0048】
また、記憶部210には、ユーザIDと学習段階とを対応付けるテーブルT1(図17(a)参照)、学習段階と運指表データとを対応付けるテーブルT2(図17(b)参照)が記憶されている。本実施の形態では、ユーザIDで特定されるユーザからアクセスがあった日の数で学習段階を表しており、アクセスがあった日の第1日目が「1day」、第2日目が「2day」となっている。
【0049】
また、記憶部210には複数の運指表データが記憶されている。各運指表データはテーブルT2に基づいて学習段階と対応付けられている。運指表データは、上記実施の形態で示す運指表をデジタル画像化したものであり、第一の押記号、第二の押記号、及び、非押記号のうち少なくとも一つが変化する構成となっている。図18は、本実施の形態の運指表データ1の一例を説明する説明図であり、(a)は第一状態、(b)は第二状態、(c)は第三状態を説明する説明図である。ここでは、一音「ラ」の運指を表すとともに四分音符の符尾を付した運指図が配置された運指表を第一状態として説明する。運指表データ1は、図18(a)に示すように第一の押記号、第二の押記号、及び、非押記号が表された第一状態、図18(b)に示すように第二の押記号と非押記号の色が第一状態よりも薄く表された第二状態、図18(c)に示すように運指図から第二の押記号と非押記号が削除されて表された第三状態の3状態で運指表が変化する。本実施の形態では、運指表データ1は、先ず運指表を第一状態、第二状態、第三状態の順序で変化し、続いて、第三状態、第二状態、第一状態の順序で変化する6つのステップで構成されている。運指表データ1は、各状態の運指表を静止画像として時系列に並べ、各状態の静止画像が一定時間表示されるように設定した静止画像データセットでも良いし、各状態の運指表をフレーム画像として、各状態のフレーム画像が一定時間連続して表示される動画像データでも良い。また、第二状態において色を薄く表示する方法は、背景とのコントラストを下げる、又は、透明度を高めることが挙げられる。例えば、本実施の形態のように運指図3の背景が白色であり、第一の状態において第二の押記号が灰色で塗り潰され、非押記号が灰色の枠に白色で塗り潰されて表される場合、第二の状態においては、第二の押記号の塗り潰しの色と非押記号の枠を第一の状態よりも明度の高い灰色で表したり、第一の状態と比較して第二の押記号と非押記号の透明度を高めたりする。
【0050】
運指表データ提供プログラムは、サーバコンピュータを運指表データ提供装置200として機能させるために、運指表表示具100からの要求に応じて運指表データを提供する処理を制御部250に実行させるプログラムである。運指表データ提供プログラムは、例えば、ネットワークを介してプログラム提供サーバ装置(図示せず)からダウンロードしてもよいし、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録され、当該記録媒体からドライブを介して記憶部210に読み込まれるものであってもよい。
【0051】
表示部220はコンピュータと一体型又は別体型のディスプレイであり、例えば液晶ディスプレイ等である。操作部230はキーボードやマウス等であり、通信部240はインターネット等のネットワークNETに接続するためのインターフェイスである。
【0052】
制御部250は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。コンピュータとしての制御部250は、記憶部210に記憶された運指表データ提供プログラムに従って各種処理を実行する。
【0053】
図19は、制御部250の機能構成の概要の一例を説明する説明図である。ログイン受付部251は、運指表表示具100からログイン情報を受け付けると、ログイン情報に含まれるユーザID及びパスワードの認証を行う。運指表データ選択部252は、ログイン受付部251の認証が成功すると、テーブルT1を参照してそのユーザIDに対応する学習段階を特定し、テーブルT2を参照してその学習段階に対応する運指表データを特定する。運指表データ提供部253は、運指表データ選択部252で特定された運指表データを記憶部210から読み出し、ネットワークNETを介して運指表表示具100に提供する。ログアウト受付部254は、運指表表示具100からログアウト情報を受け付けると、ログアウト処理を行うとともに、テーブルT1を参照してログアウト情報に含まれるユーザIDに対応する学習段階を一段階上に更新する処理を行う。なお、学習段階の更新処理は、ログアウト時点においては更新の予約が行われ、日付が変更となる0時になるとテーブルT1の書き換え処理が実行されて更新される。
【0054】
[使用態様]
以下、本実施の形態の運指表表示具100と運指表データ提供装置200の処理について、ユーザIDが「001」の使用者の使用態様を例に挙げながら説明する。図20は運指表表示具100と運指表データ提供装置200の処理を説明する説明図である。利用者は運指表表示具100のログイン画面からログイン情報を送信する(S11)。運指表データ提供装置200のログイン受付部251は、ログイン情報を受信すると認証処理を行い(S21)、認証が成功すると、運指表データ選択部252がテーブルT1を参照してログイン情報に含まれるユーザID「001」に対応する学習段階「1day」を特定し(S22)、その学習段階「1day」に対応する運指表データ「運指表データ1」をテーブルT2から特定し(S23)、運指表データ提供部253が「運指表データ1」を記憶部210から読み出して運指表表示具100に送信する(S24)。運指表表示具100の表示部120には、「運指表データ1」がデジタル画像として表示される(S12)。
【0055】
表示部120に表示される運指表データは、第一の押記号、第二の押記号、及び、非押記号のうち少なくとも一つが変化する画像データである。例えば、図18に示す運指表データ1の場合は、先ず第一状態(図18(a))で表されるステップ、第二状態(図18(b))で表されるステップ、第三状態(図18(c))で表されるステップの順序で変化し、その後に、第三状態(図18(c))で表されるステップ、第二状態(図18(b))で表されるステップ、第一状態(図18(a))で表されるステップの順序で変化する。前半の第一状態から第三状態への変化では音符から運指への意識付けが行われ、後半の第三状態から第一状態への変化では音符から運指への意識付けが行われることとなり、運指と音符との対応関係の意識付けが効果的に行われる。
【0056】
使用者は、学習が終わると運指表表示具100からログアウト情報を送信する(S13)。運指表データ提供装置200は、ログアウト情報を受信するとログアウト処理S25を行うとともに、テーブルT1のユーザID「001」の学習段階を一段階上「2day」に更新する処理を行う(S26)。学習段階更新の処理S26では、ログアウト時点においては更新の予約が行われ、日付が変更となる0時になるとテーブルT1の更新が実行されることで、翌日に学習段階が「2day」に更新された状態となる。すなわち、当日は複数回ログインしても同じ運指表データが繰り返し提供され、次の学習段階の運指表データは翌日以降に提供されることとなる。
【0057】
運指表データは、学習段階に応じて適切なものが提供されるように、記憶部210に複数のバリエーションが記憶されている。図21及び図22は、本実施の形態の運指表データの他の例を説明する説明図である。これらの運指表データは、例えば学習段階「1day」よりも上位の学習段階で提供される運指表データ2,3として用いられる。図21に示す運指表データ2では、第一状態(図21(a))は、4分音符の音価を表すラインL1が付された運指図と、付点8分音符の音価を表すラインL3が付された運指図が配置されている。第二状態(図21(b))は、各運指図について、第二の押記号と非押記号の色が第一状態よりも薄く表され、音符の要素である音価記号(符尾、付点)が付されている。第三状態(図21(c))は、第二状態の各運指図から第二の押記号、非押記号、及び、音価を表すラインが削除され、音符の要素(第一の押記号、符尾、付点)のみで構成されている。運指表データ2は、先ず第一状態(図21(a))で表されるステップ、第二状態(図21(b))で表されるステップ、第三状態(図21(c))で表されるステップの順序で変化し、その後に、第三状態(図21(c))で表されるステップ、第二状態(図21(b))で表されるステップ、第一状態(図21(a))で表されるステップの順序で変化する。この運指表の変化によって、音価の要素についても意識付けが効果的に行われる。
【0058】
図22に示す運指表データ3は、一音「ラ」に対応する運指図が配置された運指表と、一音「シ」に対応する運指図が配置された運指表を交互に表示するものである。第一状態A(図22(a))は、4分音符「ラ」に対応する運指図が2つ配置されている。各運指図はポジション記号p1~p6から構成され4分音符の音価を表す符尾とラインが付されている。第一状態B(図22(b))は、2分音符「シ」に対応する運指図が1つ配置されている。運指図はポジション記号p1~p6から構成され、2分音符の音価を表す符尾とラインが付されている。音価を表すラインは、4分音符の音価を表すラインが間隔を設けて2本配置された構成となっている。第三状態A(図22(c))は、第一状態Aから第二の押記号と非押記号を削除した構成、第三状態B(図22(d))は第一状態Bから第二の押記号と非押記号を削除した構成となっている。運指表データ3は、第一状態A(図22(a))で表されるステップ、第一状態B(図22(b))で表されるステップ、第三状態A(図22(c))で表されるステップ、第三状態B(図22(d))で表されるステップの順序で変化する。運指表データ3は運指表データ2よりも上の学習段階で利用されるものであり、第二の押記号と非押記号の色が第一状態よりも薄く表示されるステップや、符尾無しのステップは省略され、第一状態から第三状態への変化となっており、最初のステップから符尾が付された運指図となっている。また、2分音符の音価が4分音符の音価の2倍であることを感覚的に学習できるように、4分音符の要素を含む2つの運指図と2分音符の要素を含む1つの運指図が交互に表示される構成となっている。以上のように、運指表表示具100には、学習段階に応じた運指表が表示されるため、学習が効果的に行われる。
【0059】
運指表データは上記に限定されるものではなく、学習段階に応じた構成とすれば良い。例えば、ステップの追加又は省略又は順番の変更、音価を表すラインの追加又は削除、符尾や付点の追加又は削除、第二の押記号や非押記号の色を変更又は削除、又は、これらを組み合わせる等により、難易度を調整した運指表データとしても良い。
【0060】
また、各ステップを利用者によりカスタマイズ可能に構成しても良い。たとえば、運指表データ提供装置200には上記第一状態から第三状態までの各状態の運指表デジタル画像が記憶されており、運指表表示具100には当該運指表デジタル画像の表示順の指定を入力する入力部が設けられている。運指データ提供装置200は、運指表表示具100の入力部に入力された表示順を受け付けると、当該表示順に基づいて運指表デジタル画像を時系列に並べて運指表表示具100に提供する。これにより、使用者が所望する順序で表示状態を変化させることができ、使用者に応じたカスタマイズが可能となる。
【0061】
また、上記実施の形態では、運指表表示具100が運指表データ提供装置200から運指表データをネットワークを介してダウンロードする場合を例に挙げて説明したが、運指表データはDVD等の記憶媒体から読み込まれても良し、運指表表示具100の記憶部110に予め記憶されていても良い。
【0062】
以上のように、本発明の運指表表示具によれば、運指図により運指を確認できるとともに、音符の要素も確認できるため、運指と音符の要素を一目で直感的に認識可能となる。
【0063】
以上、本発明を適用した実施形態について説明してきたが、本発明がこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0064】
例えば、上記実施形態では管楽器としてサクソフォン(ソプラノ・サクソフォン、アルト・サクソフォン、テナー・サクソフォン、バリトン・サクソフォン等)を例に説明したが、リコーダー、トランペット、ホルン、ユーフォニアム、テューバ、クラリネット、オカリナ、尺八などにも適用可能であり、特定の木管楽器や金管楽器に限定されるものではない。たとえば、リコーダーやオカリナであればポジションを音孔に対応させ、トランペットであればポジションをバルブに対応させればよい。
【0065】
また、上記実施の形態の運指図3は、サクソフォンが縦笛の分類に属し、指で押さえるポジションが縦方向(垂直方向)に配列しており、各ポジションに対応するポジション記号p1~p6も縦方向(垂直方向)に配列させている。ポジションに対応する記号の配列方向は限定されることはないが、垂直方向であることが好ましく、サクソフォンやクラリネット、尺八等の縦笛に分類される楽器の運指表への適用が好ましい。ただし、例えば、トランペットやホルン、ユーフォニアム、テューバ、オカリナ等のように非垂直方向に指で押さえるポジションが配列している管楽器に対しても、各ポジションに対応する記号を縦方向(垂直方向)に配列させれば適用可能であり、特に、トランペット、ホルン、ユーフォニアム、テューバのようにポジションの数が少ない管楽器に好適である。
【0066】
また、ポジション記号(運指図の第一の押記号、第二の押記号、非押記号)の形状は楕円や正円であることで音符との関連付けがなされやすいが、例えば、矩形、三角形等、他の形状でも良し、楕円形で表されるときは、楕円形の長軸が水平であっても傾斜していてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態の運指表は楽曲を表すものではないが、楽曲の音階に基づいて運指図が配列することで楽譜としての機能を発揮するもでも良い。
【符号の説明】
【0068】
10,11,12,13 運指表表示具
1 基台
2 運指表
3,31,N11~N82 運指図
4 音名
5 第二の押記号
6 第一の押記号
7 非押記号
8 五線
9 音価記号
91 音価記号(符尾)
92 音価記号(付点)
93 タイ
p1~p6 ポジション記号
L1~L11 音価を表すライン
100 表示部を備える運指表示具
200 運指表データ提供装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22