(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081234
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】測量システムおよび測量システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195011
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
(72)【発明者】
【氏名】高野 祐次
(57)【要約】 (修正有)
【課題】煩雑な作業を行うことなく、測量機をプリズムに位置合わせすることができる技術を提供する。
【解決手段】測量システム100は、ターゲットユニット8と、測量機2と、ディスプレイ、相対位置検出センサ、および相対方向検出センサ46を備えるアイウェア表示装置4と;アイウェア表示装置4と、測量機2と、絶対座標系の座標空間とを一致させ、共通の基準点を原点とする空間で管理可能とするデータ処理部6とを備え、測定点を、測量現場の風景に重畳してディスプレイに表示させ、測量機2に、測距光をガイド測距光Lとして、測定点Pの3次元位置座標、ターゲット高さを考慮して算出した測定点に設置したターゲット位置Tpを照射させ、ガイド測距光Lの照射方向と現に測定点に設置しターゲットの中心Tとを合致させて、測量機に、前記ターゲットの中心を測定させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットおよび前記ターゲットを支持する支持部材を有するターゲットユニットと;
望遠鏡の視準光軸に沿って測距光を前記ターゲットに送光する測距光送光部、前記ターゲットからの反射測距光を受光する測距光受光部、前記望遠鏡を鉛直方向および水平方向に回転駆動する回転駆動部、および前記望遠鏡の視準方向を検出する測角部を有し、前記ターゲットの3次元位置座標を取得する測量機と;
ディスプレイ、位置を検出する相対位置センサ、および方向を検出する相対方向センサを備えるアイウェア表示装置と;
前記アイウェア表示装置の取得する位置及び方向に関する情報の座標空間と、前記測量機の座標空間と、絶対座標系の座標空間とを一致させ、共通の基準点を原点とする空間で管理可能とするデータ処理部とを備え、
前記データ処理部は、前記アイウェア表示装置に、前記絶対座標系の座標で設定された測定点を、測量現場の風景に重畳して前記ディスプレイに表示させる測定点データ表示部と、
前記測量機に、前記測距光をガイド測距光として、前記測定点の3次元位置座標、ターゲット高さを考慮して算出した前記測定点に設置したターゲット位置を照射させるターゲット位置照射部とを備え、
前記ガイド測距光の照射方向と現に前記測定点に設置した前記ターゲットの中心とを合致させて、前記測量機に、前記ターゲットの中心を測定するように構成したことを特徴とする測量システム。
【請求項2】
前記データ処理部は、前記ガイド測距光が、現に前記測定点に設置した前記ターゲットの中心からずれている場合に、前記データ処理部は、前記測量機の前記回転駆動部を駆動させ、前記ガイド測距光の前記照射方向が前記ターゲットの中心に合致するように前記照射方向を補正する照射方向補正部を備えることを特徴とする請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記アイウェア表示装置の正面画像を取得するステレオカメラをさらに備え、
前記照射方向補正部は、
前記ガイド測距光が、前記現に前記測定点に設置した前記ターゲットの中心からずれている場合に、
前記ステレオカメラにより前記ガイド測距光を含む画像を取得して、前記共通の基準点を原点とする空間における、前記測量機の器械中心を通るガイド測距光の直線の式を算出し、
前記ステレオカメラにより、現場風景におけるターゲットの中心の前記共通の基準点を原点とする空間における位置座標を算出し、前記空間における前記器械中心と前記ターゲットの中心とを通る直線の式を算出し、前記2つの直線の前記器械中心周りのずれを、水平角および鉛直角のずれとして算出し、前記水平角および前記鉛直角のずれに基いて、前記照射方向を補正することを特徴とする、請求項2に記載の測量システム。
【請求項4】
前記データ処理部は、前記ガイド測距光が前記現に前記測定点に設置した前記ターゲットの中心からのずれを予め推定するずれ推定部を備え、
前記ずれ推定部は推定した前記ずれを考慮して、前記測量機に、前記測距光をガイド測距光として、前記測定点の3次元位置座標、ターゲット高さを考慮して算出した前記測定点に設置した前記ターゲット位置を照射させることを特徴とする請求項1に記載の測量システム。
【請求項5】
前記アイウェア表示装置は、環境センサをさらに備え、
前記ずれ推定部は、前記環境センサが取得した環境データをずれ推定モデルに入力して、現場の環境条件における前記ガイド測距光の計算上の照射方向と、実際の照射方向の水平角および鉛直角のずれを推定し、
前記ずれ推定モデルは、環境データを説明変数、前記ガイド測距光の計算上の照射方向と、実際の照射方向の器械中心周りの水平角のずれおよび鉛直角のずれを目的変数とするデータセットを教師データとして、機械学習を行って生成されることを特徴とする請求項4に記載の測量システム。
【請求項6】
前記アイウェア表示装置は、環境センサをさらに備え、
前記ずれ推定部は、前記環境センサが取得した環境データおよび計算上のターゲット位置までの距離をずれ推定モデルに入力して、現場の環境条件にける前記ガイド測距光の計算上の照射位置と、実際の照射方向の高さ方向のずれを推定し、
前記ずれ推定モデルは、前記環境データおよび前記計算上のターゲット位置までの距離を説明変数、前記ターゲット位置とガイド測距光の高さ方向のずれを目的変数とするデータセットを教師データとして機械学習を行って生成されることを特徴とする請求項4に記載の測量システム。
【請求項7】
前記環境センサは、温度センサ、風速センサ、および風向センサを含むことを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の測量システム。
【請求項8】
前記ターゲットユニットは、前記支持部材が長さ可変タイプであり、
前記データ処理部は、測量機がターゲット中心を視準する場合に、視準方向が水平、あるいはなるべく水平に近くなる最適なターゲット高さとなるターゲット高さを算出し、前記ディスプレイに表示する最適ターゲット高さ提案部を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の測量システム。
【請求項9】
ターゲットおよび前記ターゲットを支持する支持部材を有するターゲットユニットと;
望遠鏡の視準光軸に沿って測距光を前記ターゲットに送光する測距光送光部、前記ターゲットからの反射測距光を受光する測距光受光部、前記望遠鏡を鉛直方向および水平方向に回転駆動する回転駆動部、および前記望遠鏡の視準方向を検出する測角部を有し、前記ターゲットの3次元位置座標を取得する測量機と;
ディスプレイ、位置を検出する相対位置センサ、および方向を検出する相対方向センサを備えるアイウェア表示装置と;
前記アイウェア表示装置の取得する位置及び方向に関する情報の座標空間と、前記測量機の座標空間と、絶対座標系の座標空間とを一致させ、共通の基準点を原点とする空間で管理可能とするデータ処理部を備える測量システムの制御方法であって、
前記データ処理部が、
前記アイウェア表示装置に、前記絶対座標系の座標で設定された測定点を、測量現場の風景に重畳して前記ディスプレイに表示させ、
前記測量機に、前記測距光をガイド測距光として、前記測定点の3次元位置座標、ターゲット高さを考慮して算出した前記測定点に設置したターゲット位置を照射させ、
前記ガイド測距光の照射方向と、現に前記測定点に設置した前記ターゲットの中心とを合致させて、前記測量機が前記ターゲットの中心を測定する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量システムおよび測量システムの制御方法に関し、より詳細には、アイウェア表示装置を用いた測量システムおよび測量システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動追尾機能を備える測量機を用いて、作業者が保持するターゲットを自動追尾して、ワンマン測量を可能とする測量システムが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、自動追尾機能でターゲットを追尾する測量システムであっても、第1点目の測定や、自動追尾が外れた場合には、ターゲットを備え鉛直方向に扇形のガイド光を走査するリモートコントローラを用い、測量機に備えたガイド光検出部で、ガイド光を検出して、測量機をプリズムの方向に向けるという作業が必要になり、作業が煩雑であった。
【0005】
一方、近年、測量機と通信可能として、測量機で取得される位置および方向の情報を、共通の原点を有する座標空間で管理可能としたアイウェア表示装置を用いた測量支援システムが提案されている。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、煩雑な作業を行うことなく、測量機をプリズムに位置合わせすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る測量システムは、ターゲットおよび前記ターゲットを支持する支持部材を有するターゲットユニットと;望遠鏡の視準光軸に沿って測距光を前記ターゲットに送光する測距光送光部、前記ターゲットからの反射測距光を受光する測距光受光部、前記望遠鏡を鉛直方向および水平方向に回転駆動する回転駆動部、および前記望遠鏡の視準方向を検出する測角部を有し、前記ターゲットの3次元位置座標を取得する測量機と;ディスプレイ、位置を検出する相対位置センサ、および方向を検出する相対方向センサを備えるアイウェア表示装置と;前記アイウェア表示装置の取得する位置及び方向に関する情報の座標空間と、前記測量機の座標空間と、絶対座標系の座標空間とを一致させ、共通の基準点を原点とする空間で管理可能とするデータ処理部とを備え、前記データ処理部は、前記アイウェア表示装置に、前記絶対座標系の座標で設定された測定点を、測量現場の風景に重畳して前記ディスプレイに表示させる測定点データ表示部と、前記測量機に、前記測距光をガイド測距光として、前記測定点の3次元位置座標、ターゲット高さを考慮して算出した前記測定点に設置したターゲット位置を照射させるターゲット位置照射部とを備え、前記ガイド測距光の照射方向と現に前記測定点に設置した前記ターゲットの中心とを合致させて、前記測量機に、前記ターゲットの中心を測定するように構成したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の態様に係る測量システムの制御方法は、ターゲットおよび前記ターゲットを支持する支持部材を有するターゲットユニットと;望遠鏡の視準光軸に沿って測距光を前記ターゲットに送光する測距光送光部、前記ターゲットからの反射測距光を受光する測距光受光部、前記望遠鏡を鉛直方向および水平方向に回転駆動する回転駆動部、および前記望遠鏡の視準方向を検出する測角部を有し、前記ターゲットの3次元位置座標を取得する測量機と;ディスプレイ、位置を検出する相対位置センサ、および方向を検出する相対方向センサを備えるアイウェア表示装置と;前記アイウェア表示装置の取得する位置及び方向に関する情報の座標空間と、前記測量機の座標空間と、絶対座標系の座標空間とを一致させ、共通の基準点を原点とする空間で管理可能とするデータ処理部を備える測量システムの制御方法であって、前記データ処理部が、前記アイウェア表示装置に、前記絶対座標系の座標で設定された測定点を、測量現場の風景に重畳して前記ディスプレイに表示させ、前記測量機に、前記測距光をガイド測距光として、前記測定点の3次元位置座標、ターゲット高さを考慮して算出した前記測定点に設置したターゲット位置を照射させ、前記ガイド測距光の照射方向と、現に前記測定点に設置した前記ターゲットの中心とを合致させて、前記測量機が前記ターゲットの中心を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成に係る測量システムおよび測量システムの制御方法によれば、煩雑な作業を行うことなく、測量機をターゲットに位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係る測量システムの概略を示す図である。
【
図3】同システムを構成測量機の構成ブロック図である。
【
図4】同システムを構成するアイウェア表示装置の外観斜視図である。
【
図5】同アイウェア表示装置およびデータ処理装置の構成ブロック図である。
【
図6】同システムの初期設定のフローチャートである。
【
図8】同システムを用いた測量方法のフローチャートである。
【
図9】同測量方法におけるアイウェア表示装置の表示例を示す図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る測量システムを構成するアイウェア表示装置およびデータ処理装置の構成ブロック図である。
【
図12】同システムを用いる測量方法のフローチャートである。
【
図13】同システムにおけるガイド測距光の補正方法を説明する図である。
【
図14】同システムにおけるガイド測距光の照射方向のずれを説明する図である。
【
図15】ガイド測距光の照射方向のずれを説明する図である。
【
図16】第3の実施の形態に係る測量システムを構成するアイウェア表示装置およびデータ処理装置の構成ブロック図である。
【
図17】上記システムのガイド測距光のずれを推定する学習モデル生成のための教師データの一例を示す図である。
【
図18】上記データを用いたずれ推定モデルの生成の概要を説明する図である。
【
図19】同システムを用いる測量方法のフローチャートである。
【
図20】上記第3の実施の形態に係る測量システムの1つの変形例おけるガイド測距光の照射方向のずれを説明する図である。
【
図21】上記変形例におけるガイド測距光のずれを推定する学習モデル生成のための教師データの一例を示す図である。
【
図22】上記データを用いたずれ推定モデルの生成の概要を説明する図である。
【
図23】第4の実施の形態に係る測量システムを構成するアイウェア表示装置およびデータ処理装置の構成ブロック図である。
【
図24】同システムを構成するターゲットユニットの外観模式図である。
【
図25】同システムにおける最適ターゲット高さの算出の一例を説明する図である。
【
図26】同システムを用いる測量方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態において、対応する構成要素には同一の名称を付し、また、同じ機械構成を有する構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0012】
I. 実施の形態
1. 測量システム100
図1は、本発明の実施の形態に係る測量システム(以下、単に「システム」ともいう。)100の概略を説明する図であり、
図2はシステム100の構成ブロック図である。システム100は、測量機2、アイウェア表示装置(以下、「アイウェア装置」という。)4、データ処理装置6およびターゲットユニット8を備える。
【0013】
2 測量機2
図3は、システム100を構成する測量機2の構成ブロック図である。本形態において、測量機2はモータドライブトータルステーションである。測量機2は、測距部21、鉛直回転駆動部22、鉛直角検出器23、水平回転駆動部24、水平角検出器25、表示部27、操作部28、記憶部29、外部記憶装置30、通信部31、および制御演算部26を備える。
【0014】
また、
図1に示すように、測量機2は、既知点Kに三脚を用いて設置されている。測量機2は、外観上、整準台3の上に設けられた基盤部2aと、基盤部2a上を水平回転する托架部2bと、托架部2bの中央で鉛直回転する望遠鏡2cを有する。なお、図中、Hは、望遠鏡2cが視準する視準光軸の高さ、すなわち器械中心の高さであり、地面から測量機2でのいわゆる器械高に、既知とされた測量機2内部の測量機2の底面から器械中心までの高さを加算して求められる。
【0015】
測距部21は、少なくとも可視レーザ光である測距光を発する発光素子および送光光学系を有する測距光送光部21aと、送光光学系と光学要素を一部共有する受光光学系、および、例えばアバランシェフォトダイオード等の受光素子を有する測距光受光部21bとを備える。測距部21は、制御演算部26の制御により、視準光軸に沿って、ターゲット80に向けて測距光を出射し、受光素子でターゲット80からの反射測距光を受光して、受光信号に基いてターゲット80までの距離を検出する。また、測距光送光部21aは、制御演算部26の制御により、測距光を、測量機2の視準方向を示すガイド測距光Lとして出射する。なお、ガイド測距光Lは、測定時に出射する測距光と同じ光線であるが、区別のために、ガイド測距光Lとしている。
【0016】
鉛直回転駆動部22および水平回転駆動部24はモータであり、制御演算部26に制御される。水平回転駆動部24は托架部2bを
図1の軸A-A周りの水平方向に回転させ、鉛直回転駆動部22は望遠鏡2cを
図1の軸B-B周りの鉛直方向に回転させる。鉛直回転駆動部22および水平回転駆動部24が、特許請求の範囲における回転駆動部に相当する。
【0017】
鉛直角検出器23と水平角検出器25は、ロータリエンコーダである。鉛直角検出器23は望遠鏡2cの鉛直方向の回転角を測定し、水平角検出器25は托架部2bの水平方向の回転角を測定する。鉛直角検出器23と水平角検出器25が、特許請求の範囲における測角部に相当する。
【0018】
表示部27は、例えば液晶ディスプレイである。操作部28は、電源キー、数字キー、小数点キー、プラス/マイナスキー、実行キー、スクロールキー等を有する。操作部28は、これにより作業者に、測量機2の操作、測量機2に対する情報の入力を可能とするように構成されている。
【0019】
記憶部29は、例えばHDD(Hard・Disc・Drive)であり、制御演算部26の機能を実行するための種々のデータおよびプログラムを格納している。具体的には、記憶部29は、測量を実行するための測量実行プログラムを格納している。また、記憶部29は、測定点データ91を格納する。
【0020】
測定点データ91は、測量作業で計画されている測定点Pの3次元位置座標データであり、既知点の座標系と同じ絶対座標系で作成された測量現場の3次元CAD(Computer・Aided・Design)設計データから作成された、絶対座標系の座標で設定されたデータである。測定点データ91には、複数の測定点Pが含まれていてもよく、またその測定順等の情報が含まれていてもよい。
【0021】
外部記憶装置30は例えばメモリカード等であり、測量結果データおよび測量機2が取得する種々のデータを記憶する。
【0022】
通信部31は、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード、LANカード、Bluetooth(登録商標)アダプタ等の通信制御装置であり、測量機2を、アイウェア装置4およびデータ処理装置6と有線または無線で接続する。制御演算部26は、通信部31を介して、アイウェア装置4およびデータ処理装置6と情報の送受信することができる。
【0023】
制御演算部26は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ(例えばCPU(Central・Processing・Unit))とメモリ(例えば、SRAM(Static・Random・Access・Memory),DRAM(Dynamic・Random・Access・Memory等))を含む制御演算ユニットである。プロセッサが、必要なデータおよびプログラムを記憶部29からメモリに読み出して、測量機2の機能を実現するための処理を実行する。
【0024】
制御演算部26は、測距部21による測距光の送光を制御して、測距光受光部21bの受光信号、具体的には、例えば、ターゲット80からの反射光と、測距光から一部分割され、望遠鏡2c内に設けられた参照光路を進んだ参照光との位相差からターゲット80までの距離を算出する。また、鉛直角検出器23および水平角検出器25の検出結果に基づいて、ターゲット80の角度を検出する。これにより、ターゲット80の3次元位置座標を算出する。
【0025】
また制御演算部26は、鉛直回転駆動部22および水平回転駆動部24を制御して、測量機2の望遠鏡2cの視準光軸を、測定点Pにターゲットユニット8を設置した場合のターゲット80の中心(以下、「ターゲット位置Tp」という。)に向ける。また、測距光送光部21aを制御して測距光をガイド測距光Lとしてターゲット80の方向に照射および消灯する。制御演算部26のガイド測距光Lの照射制御は、例えば、データ処理装置6のターゲット位置照射部643による遠隔操作により実行されるようになっている。
【0026】
3. アイウェア装置4
図4はアイウェア装置4の外観斜視図であり、
図5はアイウェア装置4およびデータ処理装置6の構成ブロック図である。アイウェア装置4は、作業者の頭部に装着されるウェアラブルデバイスであり、ディスプレイ41および制御部43を備える。また、制御部43は、通信部44,相対位置検出センサ(以下、「相対位置センサ」という。)45、相対方向検出センサ(以下、「相対方向センサ」という。)46、記憶部47、操作スイッチ48、および演算処理部49を備える。
【0027】
ディスプレイ41は、作業者が装着した時に作業者の両目を覆うゴーグルレンズ型の透過型ディスプレイである。一例として、ディスプレイ41はハーフミラーによる光学シースルーのディスプレイであり、現場風景に、制御部43がデータ処理装置6より受信した画像を重畳して表示するようになっている。あるいは、ディスプレイ41は、ビデオシースルーのディスプレイであり、カメラ(図示せず)でリアルタイムに取得した正面風景画像に制御部43の受信した画像を重畳した画像を表示するようになっていてもよい。また、投影方式としては、虚像投影方式でもよく、網膜投影方式であってもよい。
【0028】
ディスプレイ41がビデオシースルーの場合のカメラは、例えばCCD(Charge-Coupled・Device)やCMOS(Complementary・Metal・Oxide・Semiconductor)等のイメージセンサを備え、アイウェア装置4の正面風景画像をリアルタイムで撮影する。イメージセンサは、カメラ中心を原点とした直交座標系を有し、各画素のローカル座標は特定される。カメラの中心とアイウェア装置4の中心との位置関係は既知とされており、演算処理部49は、カメラで取得した画像を、アイウェア装置4の座標空間に変換して管理可能となっている。
【0029】
通信部44は、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード、LANカード、Bluetoothアダプタ等の通信制御装置である、アイウェア装置4は、通信部44を介して、測量機2およびデータ処理装置6と有線または無線で通信をし、情報の送受信することができる。
【0030】
相対位置センサ45は、観測現場に設置されたGNSS(Global・Navigation・Satellite・System)用アンテナ、Wi-Fi(登録商標)アクセスポイント、超音波発振器などから無線測位を行い、観測現場内でのアイウェア装置4の位置を検出する。
【0031】
相対方向センサ46は、三軸加速度センサまたはジャイロセンサと、傾斜センサとの組み合わせからなる。相対方向センサ46は、上下方向をZ軸方向、左右方向をY軸方向、前後方向をX軸方向として、アイウェア装置4の傾きを検出する。
【0032】
記憶部47は、例えばメモリカードである。記憶部47は、演算処理部49が機能を実行するためのプログラムを格納している。
【0033】
操作スイッチ48は、例えば、ディスプレイ41の外面に設けられた押しボタンである。操作スイッチ48は、例えば、アイウェア装置4の電源をON/OFFするための電源ボタン48aと、ディスプレイ41の表示と協働して、作業者の選択、指示等の入力を可能とする機能ボタン48bとを備える。本実施の形態では、後述するように、ディスプレイ41に表示される表示ボタンと対応する位置の機能ボタン48bを押すことで、作業者の選択、確認、指令等の入力を可能とする。
【0034】
演算処理部49は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ(CPU)とメモリ(SRAM,DRAM等)を備える制御演算ユニットである。演算処理部49は、相対位置センサ45および相対方向センサ46の検出したアイウェア装置4の位置および方向の情報をデータ処理装置6に出力する。また、データ処理装置6から受信した、同期された測定点データ91を、現場の風景に重畳してディスプレイ41に表示する。
【0035】
4. データ処理装置6
データ処理装置6は、情報処理装置であり、典型的にはパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等であるが、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。図示の例ではラップトップコンピュータとして示す。データ処理装置6は、1台のコンピュータであっても、複数台のコンピュータが分散的に処理を行うコンピュータシステムであっても良く、1以上のコンピュータの処理資源の一部を論理的に利用するものであっても良い。データ処理装置6は、特許請求の範囲におけるデータ処理部に相当する。また、データ処理装置6をアイウェア装置4の一部として構成してもよく、測量機2の一部として構成してもよい。データ処理装置6の一部の処理を、アイウェア装置4で行うように構成してもよく、一部の処理を測量機2で行うように構成してもよい。
【0036】
データ処理装置6は、少なくとも通信部61,表示部62,操作部63,制御演算部64および記憶部65を備える。
【0037】
通信部61は、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード、LANカード、Bluetoothアダプタ等の通信制御装置であり、データ処理装置6を、測量機2およびアイウェア装置4と有線または無線で通信可能とする。制御演算部64は、通信部61を介して、測量機2およびアイウェア装置4と情報を送受信することができる。データ処理装置6はローカル環境に設置されて測量機2およびアイウェア装置4と通信してもよく、いわゆるクラウド環境などとして実現されインターネット等の通信ネットワークを介して測量機2およびアイウェア装置4と通信してもよい。
【0038】
表示部62は、例えば液晶ディスプレイである。操作部63は、例えば、キーボード、マウス等であり、作業者からの、種々の指令・選択・決定等を入力可能とする。
【0039】
制御演算部64は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、CPU)とメモリ(DRAM,SRAM等)とを含む演算制御ユニットである。プロセッサが、記憶部65に記憶されたデータおよびプログラムをメモリに読み出して実行することにより、機能部の機能が実行可能となっている。機能部は、プログラムによりソフトウェア的に実装されていてもよく、少なくとも一部が、専用の回路によってハードウェア的に実装されていてもよい。
【0040】
制御演算部64は、機能部として、同期計測部641、および測定点データ表示部642、ターゲット位置照射部643、測定指示部644を備える。
【0041】
同期計測部641は、測量機2の位置および方向に関する情報と、アイウェア装置4の位置および方向に関する情報を受信し、測量機2の座標空間および絶対座標系で作成された3次元位置情報の座標空間を、共通の基準点を原点とするアイウェア装置4の座標空間と一致するように変換してアイウェア装置4に送信する。これにより、測量機2で取得した情報および絶対座標系で作成された3次元位置情報をアイウェア装置4の座標空間と同じ座標空間で管理することができる。
【0042】
なお、本明細書において「同期」とは、上記の通り座標空間の異なる装置、または測定点データ91における位置および方向に関する情報の座標空間を一致させ、共通の基準点を原点とする共通の座標空間で、それぞれの装置に関する相対位置・相対方向を管理することをいう。
【0043】
測定点データ表示部642は、同期計測部641で同期した測定点データ91に含まれる測定点Pを、ディスプレイ41に表示する。
【0044】
ターゲット位置照射部643は、測量機2に回転駆動部22、24および測距光送光部21aを駆動させ、測距光をガイド測距光Lとして、測定点Pの3次元位置座標、ターゲット高さhを考慮して算出した、ターゲット位置Tpに向けて、視準光軸に沿って照射させる。
【0045】
測定指示部644は、測量機2に、視準しているターゲット80の中心Tを測定させ、ターゲット80の位置座標を取得し、測定点Pの座標を算出する。また、測定指示部644は、測定により取得された測定点Pの座標と、設計データ上の測定点Pの座標とを比較して、測量結果の可否を判定する。具体的には、測定による測定点Pの作業と設計データ上の測定点Pの座標が合致しているか、あるいは差異が所定の誤差範囲内にある場合を可と判定する。測量結果が可の場合は、ガイド測距光Lを消灯して、該測定点Pでの測定の終了を報知する。不可の場合は、作業者にその旨を報知して再度の測定を促す。
【0046】
記憶部65は、例えば、HDD,SSD(Solid・State・Drive)である。記憶部65には、測量機2の記憶部29と同じ測定点データ91が格納されている。また、記憶部65には、制御演算部64の各機能部がソフトウェアとして実現されている場合に、各機能部の機能を実行するためのプログラムを記憶されている。なお、測定点データ91は、必ずしも記憶部65に記憶されている必要はなく、測量機2の記憶部29に格納された測定点データ91を、通信部61を介して読み出して使用してもよい。
【0047】
5.ターゲットユニット8
図1に戻り、ターゲットユニット8は、ターゲット80、ターゲット80を支持する支持部材81および気泡管82を備える。ターゲット80は、例えば、複数の三角錐状のプリズムを放射状に組み合わせて構成されたいわゆる全方位プリズムであり、全周(360°)から入射する光を、その入射方向と反対の方向に再帰反射する。
【0048】
支持部材81は、一定の長さで延在するポールであり、その中心軸が、ターゲット80と同心となるようにターゲット80が取り付けられている。支持部材81の先端81aを測定点に設置して、支持部材81の先端81aからターゲット80の中心Tまでの距離、すなわちターゲット高さhは既知とされている。
【0049】
気泡管82は、いわゆる円形気泡管である。気泡管82は、支持部材81またはターゲット80に取り付けられて、作業者が、気泡が円の中央に入るように支持部材81を保持することで、ターゲット80を鉛直に保持できるようになっている。
【0050】
6.測量方法
6-1 初期設定
次に、システム100を用いる測量方法について説明する。最初にシステム100の初期設定として、ステップS01~S04の作業を実行する。
図6はシステム100の初期設定のフローチャートであり、
図7は初期設定の作業の概要を示す図である。測定に先立ってターゲット高さhは既知とされている。
【0051】
まずステップS01で、作業者は、観測現場に基準点と基準方向を設定する。基準点は、現場内の任意の点を選択する。基準方向は、基準点とは別の特徴点を任意に選択し、基準点から特徴点の方向とする。あるいは、基準方向を北方向の方位としてもよい。
【0052】
次にステップS02で、作業者は、測量機2の同期を行う。具体的には、作業者は現場の任意の点Kに測量機2を設置し、ターゲット高さhおよび器械高を測定して、測量機2に登録する。あるいは、器械高は、望遠鏡2cを鉛直下向きを測定することにより自動で測定可能になっていてもよい。ステップS01で選択した基準点および特徴点を含む後方交会法等の測定により測量機2の器械中心Oの絶対座標を把握する。測量機2は、座標情報およびターゲット高さhをデータ処理装置6に送信する。
【0053】
同期計測部641は、基準点の絶対座標を(x,y,z)=(0,0,0)に変換し、かつ、基準方向を水平角0°と認識して、以後、測量機2からの情報に関して、基準点を原点とする空間で、測量機2の相対位置および相対方向を管理する。
【0054】
次にステップS03で、作業者は、アイウェア装置4の同期を行う。具体的には、作業者は、基準点にアイウェア装置4を設置し、ディスプレイ41の中心を基準方向に一致させ、相対位置センサ45の(x,y,z)を(0,0,0)、かつ、相対方向センサの(roll,pitch,yaw)を(0,0,0)とする。同期計測部641は、以後、アイウェア装置4から取得するデータについて、基準点を原点とする測量機2と共通の座標空間で、アイウェア装置4の相対位置・相対方向を管理する。
【0055】
アイウェア装置4の同期は、上記方法に限定されず、例えば、アイウェア装置4に、アイウェア装置4の中心および方向軸を示すためのレーザ装置を設け、レーザをガイドにして、基準点および基準方向を一致させることにより行ってもよい。
【0056】
次にステップS04で、同期計測部641は、測定点データ91を同期する。具体的には、測定点データ91を、基準点を原点とする座標空間の3次元位置座標データとして管理する。これにより、アイウェア装置4は、測定点Pを、現場の風景に重畳して表示することが可能になる。すなわち、アイウェア装置4を装着した作業者は、ディスプレイ41を介して観察する現場風景の対応する位置に、測定点Pを観察することが可能となる。
【0057】
6-2 測量方法
図8は、システム100を用いた測量方法における制御演算部64の処理のフローチャートである。上述の初期設定が完了した状態で開始する。また、測量の開始にあたっては、測定点Pを予め選択しているものとする。
【0058】
測量が開始すると、ステップS11では、測定点データ表示部642の指示により、アイウェア装置4がディスプレイ41に測定点Pを表示する。
図9(A)は、ディスプレイ41に測定点Pを表示した状態を示す図である。以下、ディスプレイ41の表示を示す図において、特に言及しない限り、破線は測量現場の風景を示し、実線はデータ処理装置6により作成された画像を示す。また、理解の便宜のため、視野を適宜拡縮して示し、なお、作業者は無視して描画している。
【0059】
次に、ステップS13では、ターゲット位置照射部643の指示により、測量機2に水平回転駆動部24および鉛直回転駆動部22を駆動させ、測定点P、すなわち、ターゲット位置Tpを視準する。
【0060】
具体的には、ターゲット位置照射部643が、測定点Pの座標およびターゲット高さhよりターゲット位置Tpの座標を算出し、測量機2の水平回転駆動部24および鉛直回転駆動部22を駆動して、測量機2の視準光軸をターゲット位置Tpに向かわせる。視準の指示は、例えば、ディスプレイ41に表示された視準実行ボタン93に対応する機能ボタン48bを押すことによりなされてもよい。
【0061】
次に、ステップS13で、ターゲット位置照射部643の指示に従って、測量機2が可視レーザ光であるガイド測距光Lを視準光軸に沿って照射する。具体的には、測量機2の制御演算部26が、測距光送光部21aを制御して、ガイド測距光Lを出射する。この時、
図9(B)に示すように、ディスプレイ41を介して、現場風景に照射されるガイド測距光Lが観察される。なおターゲット位置Tpは説明のために描画しているが、実際のディスプレイに41には表示される必要はない。
【0062】
次にステップS14で、作業者は、ディスプレイ41の表示を確認しながら、
図9(C)のように、測定点Pにターゲットユニット8の先端81aを合致させて設置し、鉛直に保持する。この時、現に設置したターゲット80の中心Tは、ターゲット位置Tpと一致する。
【0063】
次にステップS15で、測定指示部644の指示に従って、測量機2がターゲット80の中心Tを測距・測角し、測定点Pの位置座標を取得する。具体的には、例えば、作業者が表示された測定ボタン94に対応するアイウェア装置4の機能ボタン48bを押すことにより、測定実施の指令を測量機2に送信すると、測量機2は、ターゲット80の中心Tまでの距離および角度を測定し、ターゲット80の3次元位置座標を算出し、これより、測定点Pの3次元位置座標を算出する。
【0064】
次に、ステップS16で、測定指示部644は、測量結果の可否を判定する。測定による測定点Pの座標と設計データ上の測定点Pの座標とが合致しているか、あるいは差異が所定の誤差範囲内にある場合を可と判定する。
【0065】
測定結果が可の場合(OK)ステップS17に移行して、測量機2は、測定指示部644の指示により、取得した測定点Pの座標を測量機2の外部記憶装置30に保存させ、測距光送光部21aの駆動を制御してガイド測距光Lを消灯する。同時に、ディスプレイ41に「測定OK」等表示するようにしてもよい。そして、測定点Pにおける測定を終了する。
【0066】
ステップS16において、測定結果が不可の場合(NG)、ステップS18に移行して、
図9(D)に示すように、ガイド測距光Lは消灯せず、ディスプレイ41に「測定NG」である旨を表示して、作業者に、再度ターゲットユニット8の設置し、再測を指示する表示を行う。
【0067】
不可である原因としては、例えば、ターゲットユニット8が正しく測定点Pに設置されていない、ターゲットユニット8が鉛直でない等の原因が考えられる。このため、ディスプレイに、「ポールの鉛直を確認してターゲットユニットを設置し再測してください」などと、合わせて再測における注意点を表示するようになっていてもよい。その後、ステップS14に戻り、ステップS14~S16を繰り返す。
【0068】
なお、再度の測定においても、ステップS16で測定結果が不可の場合には、処理を終了するようにしてもよい。ターゲットユニット8の設置の問題ではないと考えられるからである。
【0069】
上記構成によれば、作業者は、ディスプレイ41を介して観察されるガイド測距光Lを観察しながら、ディスプレイ41に表示された測定点Pに、ターゲットユニット8の先端を合致させて設置するだけで、測定点Pに設置したターゲット80に測量機2の視準方向を向けさせることができる。測量機2をターゲット80に向けるために煩雑な作業を行う必要がない。
【0070】
また、測定による測定点の座標と、設計上の測定点の座標とを比較して、測定点の座標が設計上の測定点の座標と合致しないまたは差異が所定の範囲内である場合には、ターゲットユニット8を再設置して再測するように構成したので、ターゲットユニット8の設置の誤りによる測定誤差を防止することが可能である。
【0071】
II 第2の実施の形態
ところで、特に屋外での測量の場合、以下のような原因により、アイウェア装置4に表示される測定点Pに現に設置されたターゲットユニット8のターゲット80の中心Tと、ガイド測距光Lの照射方向にずれが生じる場合がある。
(1)測定点位置の地盤の沈下または隆起により、アイウェア装置4に表示される測定点Pの位置(特にz座標成分)と、実際の測定点の位置にずれが生じ、実際の測定点に設置したターゲットユニット8のターゲット80の位置が実際の位置よりも低くまたは高くなる。
(2)測量現場での風により、設置した測量機2が、三脚を支点として、前後左右に振り子のようにわずかに傾くことで、照射位置が水平平面に対して下方にずれる。
(3)測量現場での温度により、陽炎や揺らぎが生じ、その結果、照射位置が水平平面に対して上下方向にずれる。
【0072】
第2の実施の形態では、このような、ガイド測距光Lの照射方向のずれを補正できるようにしている。
【0073】
1.測量システム100Aの構成
図10は、第2の実施の形態に係る測量システム100Aのアイウェア装置4Aとデータ処理装置6Aの構成ブロック図であり、
図11はアイウェア装置4Aの外観斜視図である。システム100Aは、システム100と同様に、全体構成として、測量機2、アイウェア装置4A、データ処理装置6A、およびターゲットユニット8を備える。
【0074】
アイウェア装置4Aは、アイウェア装置4と概略同じ構成を有するが、アイウェア装置4Aの正面画像を取得するステレオカメラ42をさらに備える。
【0075】
ステレオカメラ42は、アイウェア装置4Aの前面左右上端部に配置される2つのカメラ42a,42bを備える。カメラ42a,42bはそれぞれCCDやCMOS等のイメージセンサおよびレンズを備える。各イメージセンサは、カメラ中心を原点とした縦横の直交座標系を有し、左右の視差に基いて、画面内のすべての特徴点に対し距離を算出することで、画面内の奥行情報と縦横の画素位置情報から3次元位置座標を取得可能となっている。ステレオカメラ42の中心と、アイウェア装置4Aの中心との位置関係は既知とされ、アイウェア装置4は、ステレオカメラ42で取得した画像を、アイウェア装置4Aの座標空間に変換して管理可能となっている。
【0076】
また、データ処理装置6Aは、データ処理装置6と概略同じ構成を備えるが、制御演算部64Aがさらに照射方向補正部645を備える点で異なる。
【0077】
照射方向補正部645は、ターゲット位置照射部643により測量機2が照射したガイド測距光Lが、現に測定点Pに設置したターゲット80の中心Tからずれている場合に、測量機2の回転駆動部22,24を駆動させて、ターゲット80の中心Tに合致するように照射方向を補正する。
【0078】
2. 測量方法
図12は、システム100Aを用いる測量方法の動作のフローチャートであり、
図13は、システム100Aを用いる測量作業におけるアイウェア装置4Aのディスプレイの表示の例を示す図である。
【0079】
処理を開始すると、ステップS21~S23では、ステップS11~S13と同様にして、ターゲット位置照射部643の指令により、測量機2がガイド測距光Lをターゲット位置Tpに向けて照射する。
【0080】
次に、ステップS24で、作業者がターゲットユニット8をディスプレイ41に表示された測定点Pに先端81aを合わせて鉛直に設置する。作業者は、この時、ディスプレイ41を介して、ガイド測距光Lの照射方向とターゲット80の中心Tにずれがあるかどうかを確認する。例えば、
図13(A)では、ガイド測距光Lは、ターゲット80の中心Tから下方にずれているのがわかる。水平方向についても同様である。
図13では投影された画像および現場風景を除く説明の図を一点鎖線で表示している。
【0081】
次に、ステップS25で、例えば、表示されたずれ確認ボタン96に対応する機能ボタン48bを押すことにより、ずれがあることが制御演算部64Aに入力されると(Yes)、ステップS26に移行して、照射方向補正部645の指示により、測量機2は、ガイド測距光Lの照射方向を補正する。ステップS25において、照射方向のずれがない場合(No)、処理はステップS27に移行する。
【0082】
図13を参照して、照射方向の補正の一例の詳細を説明する。すれ確認ボタン96(
図13(A),(B))に対応する機能ボタン48bが押されることにより、ずれがあることが入力されると、照射方向補正部645は、ディスプレイ41に補正実行ボタン97(
図13(C)、(D))を表示する。作業者が補正実行ボタン97に対応する機能ボタン48bを押すと、照射方向補正部645が、ステレオカメラ42によりガイド測距光Lを含む画像を取得可能とする。アイウェア装置4Aは作業者の指示によりステレオカメラ42でガイド測距光Lを含む画像を取得する。次に、照射方向補正部645は、画像から、パターンマッチングによりガイド測距光Lを抽出して、基準点を原点とする同期された座標空間における、器械中心Oを通るガイド測距光Lの直線m1の式を算出する。
【0083】
次に、照射方向補正部645は、
図13(C)に示すように、ディスプレイ41の中央にレチクルを表示する。ステレオカメラ42で、このレチクルをターゲット80の中心Tに合わせて撮像し、同期された座標空間におけるターゲット80の中心Tの位置座標を算出する。そして、照射方向補正部645は、基準点を原点とする同期された座標空間における、器械中心Oとターゲット80の中心Tを通る直線m2(
図13(D))の式を算出する。このように、直線m1と直線m2は器械中心Oで交差しており、器械中心O周りに水平方向および鉛直方向にずれているといえる。
【0084】
次に、直線m1と直線m2の、器械中心O周りのずれを、水平角のずれθ
Hおよび鉛直角のずれθ
vとして算出する。
図14(A)は水平角のずれθ
Hを、
図14(B)は鉛直角のずれθ
vを説明する図である。照射方向補正部645は算出した水平角および鉛直角のずれθ
H,θ
vを補正値として、測量機2の回転駆動部22,24を駆動して照射方向を補正し、ガイド測距光Lがターゲット80の中心Tを照射するようにする。
【0085】
あるいは、図示は省略するが、照射方向補正部645が、アイウェア装置4Aの機能ボタン48bから測量機2の回転駆動部22,24を遠隔操作可能に構成し、ガイド測距光Lがターゲット80の中心Tを照射するようにしてもよい。このようにすると、作業者がディスプレイ41を介してガイド測距光Lおよびターゲット80の中心Tを確認しながら、遠隔操作ボタンに対応する位置の機能ボタン48bを操作して、ガイド測距光Lがターゲット80の中心Tを照射するように調整することが可能である。
【0086】
次に、ステップS27では、測定指示部644の指示に従って、測量機2は、ターゲット80を測定し、測定点Pの位置座標を取得する。
【0087】
以降、ステップS28~S30では、ステップS16~S18と同様に、測定結果の可否を判定し、OKの場合には測定を終了する。NGの場合には、ステップS24に戻り、再度ターゲットユニット8の設置を行い、測定を繰り返す。
【0088】
上記構成によれば、設計上の測定点Pと実際の測定点Pの位置に変位が生じている場合また、温度、風等の環境要因により、ガイド測距光Lの照射方向にずれが生じる場合にも、ガイド測距光Lと計算上のターゲット位置Tpのずれを補正して、測量機2を現に測定点Pに設置したターゲット80の中心に向けることが可能となる。
【0089】
III.第3の実施の形態
上記第2の実施の形態の説明でも述べた通り、測量機2がガイド測距光Lを測定点Pの設計上の座標に基づくターゲット位置Tpに向けて照射する場合、温度と関連して起こる大気の揺らぎや陽炎等の影響により実際のガイド測距光Lの照射方向がターゲット位置Tpからずれる場合がある。また、風によっても照射方向のずれが起こる場合がある。
図15を用いて再度説明すると、直線m3で示される測量機2の器械中心Oから出射されるガイド測距光Lは、設計上の測定点Pの座標と、ターゲット高さhから算出される、ターゲット位置Tpに向けて出射されるが、実際の照射方向は直線m4で示すように、ターゲット位置Tpから、器械中心Oを中心として水平方向および鉛直方向にずれることになる。
【0090】
第2の実施の形態では、測量機2に、計算上のターゲット位置Tpを照射させ、実際のガイド測距光Lの照射方向と、ターゲット80の中心Tのずれをアイウェア装置4を用いて確認してから、そのずれを解消するように回転駆動部22,24を補正駆動させるようにした。これに対して本実施の形態では、予め生じるずれを算出し、ターゲット位置照射部643の指示により測量機2をターゲット位置Tpに向けさせる際に、ずれを補正値として組み込んで測量機2の回転駆動部22,24を駆動させるようにしたものである。
【0091】
1. システム100B
図16は第3の実施の形態に係るシステム100Bを構成するアイウェア装置4Bおよびデータ処理装置6Bの構成ブロック図である。システム100Bは、システム100,100Aと同様に、測量機2、アイウェア装置4B,データ処理装置6B、およびターゲットユニット8を備える。
【0092】
アイウェア装置4Bは、アイウェア装置4Aと同様の構成を有するが、環境センサ51をさらに備える点で異なる。環境センサ51は、温度センサ51a、風速センサ51bおよび風向センサ51cを含む。風向は、真北を基準として360°方位で計測され、基準点等と共通の絶対座標系と変換可能となっており、測量機2の姿勢に対する水平角としてデータ処理装置6に入力されるようになっている。環境センサ51で取得される環境データは、演算処理部49により通信部44を介してデータ処理装置6Bの制御演算部64Bに出力される。環境センサ51は、温度センサ51a、風速センサ51b、風向センサ51cのみに限らず、測距光の照射方向に影響及ぼすことが知られている環境要因を検出するセンサをさらに含んでいてもよい。
【0093】
また、データ処理装置6Bの制御演算部64Bは、制御演算部64に加えてずれ推定部646を備え、ターゲット位置照射部643に代えてターゲット位置照射部643Bを、測定指示部644に代えて測定指示部644Bを、記憶部65に代えて記憶部65Bを備える。
【0094】
ずれ推定部646は、環境要因に起因する、ガイド測距光Lの計算上の照射方向と、実際の照射方向のずれを推定する。
【0095】
ずれの推定は、例えば、以下のように作成したずれ推定モデル92を用いて行う。
ずれ推定モデル92は、例えば、システム100Bを用いて取得したデータを用いて、データ処理装置6と同じ機械構成を備えるコンピュータであるずれ推定モデル生成装置(図示せず)を用いて以下の様に生成される。具体的には、既知点にターゲット80を設置して(この場合、計算上のターゲット中心位置Tpが、ターゲット80の中心Tと合致するようにする。)、様々な温度・風速・風向条件で、ガイド測距光Lの計算上の照射方向と、アイウェア装置4Aを介して観察される実際のガイド測距光Lの照射方向とのずれを測定する。そこで、照射方向のずれは、第2の実施の形態での直線m1と直線m2とのずれと同様に、アイウェア装置4Aに同期された座標空間における、器械中心Oを通る計算上のガイド測距光の照射方向と、器械中心Oを通る実際の照射方向の直線m4のずれを、器械中心O周りの水平角のずれφ
Hおよび鉛直角のずれφ
Vとしてそれぞれ算出する。このようにして、得られるのが、
図17に示す教師データの一例である。
【0096】
そして、
図18に概要を示すように、環境データ(温度および風速の値)を説明変数、水平角のずれφ
Hおよび鉛直角のずれφ
Vを目的変数とするデータセットを教師データとして機械学習を行い、アイウェア装置4Bが取得する温度および風速の値を入力データとして、その時のガイド測距光Lの計算上の照射方向と、実際の照射方向の水平角および鉛直角のずれを出力データとして推定する学習済みモデル(ずれ推定モデル92)を生成する。
【0097】
機械学習は、例えば、入力に対する出力を予測するために非線形ユニットの1つまたは複数の層を使用するニューラルネットワークにより実現され、具体的には、DNN(Deep・NeuralNetwork)、CNN(Convolutional・Neural・Network)、RNN(Recurrent・Neural・Network)の手法を用いることができる。また、機械学習に、SVR(Support・Vector・Regression)、ランダムフォレスト、または、ベイズ線形回帰分析等の手法を用いてもよい。
【0098】
ずれ推定部646は、アイウェア装置4Bから、環境データを受信して、ずれ推定モデル92に入力することにより、現場の環境条件におけるガイド測距光Lの照射方向のずれを算出する。
【0099】
なお、ずれ推定モデル92は、必ずしも機械学習により生成する必要はなく、公知の統計学的手法により、ずれを推定するためのモデル式を生成してもよい。
【0100】
ターゲット位置照射部643Bは、測量機2の視準方向を計算上のターゲット位置Tpに向けるための水平角および鉛直角に上記ずれ推定部646で算出したずれ分(水平角のずれφH、鉛直角のずれφV)だけ反対方向に向かうように測量機2の回転駆動部22、24を駆動させ、視準光軸に沿ってガイド測距光Lを照射させる。具体的には、ずれが水平角-2″鉛直角+1″である場合には、測距光の照射方向は、水平角+2″、鉛直角-1″変位させてガイド測距光Lを照射される。
【0101】
測定指示部644Bは、測量機2に、ターゲット80の中心Tを測定させ、ターゲット80の位置座標を取得し、測定点Pの座標を算出させる際に、水平角および鉛直角のずれを考慮して測定点Pの座標を算出させる。具体的には、ずれが水平角-2″鉛直角に+1″である場合には、測角値より、水平角-2″、鉛直角+1″加算して、角度を算出し、測定点Pの位置座標を算出する。
【0102】
記憶部65Bは、記憶部65に加えて、ずれ推定モデル92を格納している。
【0103】
2. 測量方法
図19は、システム100Bを用いる測量方法のフローチャートである。
【0104】
測量を開始すると、ステップS41では、ステップS11と同様に、測定点データ表示部642の指示により、アイウェア装置4Bがディスプレイ41に測定点Pを表示する。
【0105】
次に、ステップS42で、ずれ推定部646が、アイウェア装置4Bから環境データを取得して、ずれ推定モデル92に入力し、環境要因に起因する、ガイド測距光Lの計算上の照射方向と、実際の照射方向のずれを算出する。
【0106】
次に、ステップS43で、ターゲット位置照射部643Bの指示により、測量機2に、計算上のターゲット位置Tpに向けるための水平角および鉛直角に上記ずれ推定部646で算出したずれを考慮したターゲット位置を視準させる。
【0107】
次に、ステップS44で、ターゲット位置照射部643Bの指示により、測量機2の回転駆動部22、24を駆動させ、視準光軸に沿ってガイド測距光Lを照射させる。
【0108】
次に、ステップS45では、作業者が、ディスプレイ41に表示された測定点Pを確認しながら、ターゲットユニット8を測定点Pに設置すると、ステップS46では、測定指示部644Bの指示により、測量機2に、ターゲット80の中心Tを測定させ、照射方向のずれを考慮して測定点Pの位置座標を算出させる。
【0109】
以降、ステップS47~S49では、ステップS16~S18と同様に、測定結果の可否を判定し、OKの場合には測定を終了する。NGの場合には、ステップS45に戻り、再度ターゲットユニット8の設置を行い、測定を繰り返す。
【0110】
上記構成では、測量システム100Bは、予め温度、風速等の環境要因によるガイド測距光Lの照射方向にずれを推定して、ずれを考慮した方向へガイド測距光Lを照射するようになっている。上記構成によれば、第1の実施の形態に係るシステム100と同等の効果に加えて、予め温度、風等の環境要因によるガイド測距光Lの照射方向にずれが生じる場合にも、測量機2により的確にターゲット位置Tpを視準させることができるというさらなる効果を奏することができる。
【0111】
3.変形例
本形態の変形例として、ずれ推定モデル92に代えてずれ推定モデル92Aを用いてもよい。ずれ推定モデル92Aでは、計算上の照射方向と実際の照射方向のずれを、
図20に示すように、ターゲット位置Tpと、同一鉛直線上のガイド測距光の照射位置との間の高さ方向のずれdとしてとらえる。
【0112】
従って、システム100Bと同様の構成の測量システムを用いて、様々な温度・風速・風向条件において、計算上のガイド測距光の照射方向と、実際の照射方向の高さ方向のずれを計測すると共に、ターゲット中心Tまでの距離(器械中心Oからターゲット位置Tpの距離。既知点に鉛直に設定したターゲット中心Tはターゲット位置Tpと等しい。)を算出して
図21に示すようなデータを収集する。高さ方向のずれは、アイウェア装置4Aを用いて、測定することができる。
【0113】
そして、
図22に概要を示すように、環境データ(温度および風速の値)およびターゲット中心までの距離を説明変数、高さ方向のずれを目的変数とするデータセットを教師データとして、ずれ推定モデル92の生成時と同様の機械学習を行い、アイウェア装置4が取得する温度および風速の値を入力データとして、その時のガイド測距光Lの照射位置高さのずれを出力データとして推定する学習済みモデル(ずれ推定モデル92)を生成する。 そして、ずれ推定部646B1(図示せず)は、器械中心Oからターゲット80の中心Tまでの距離を算出し、この距離と、アイウェア装置4Bの環境センサから受信した環境データをずれ推定モデル92Aに入力して、照射方向のずれを推定する。
このようにしても、上記第3の実施の形態に係るシステム100Bと同様の構成達成することが可能となる。
【0114】
IV 第4の実施の形態
ところで、トータルステーションでの測定において、望遠鏡の視準光軸が水平で用いると測定を行いやすく好ましい。そこで、第4の実施の形態に係るシステム100Cでは、長さ可変タイプのターゲットユニット8Cを用いた場合に、望遠鏡の視準光軸が水平またはなるべく水平に近くなるターゲット高さを提案するようにした。
【0115】
1. 測量システム100C
システム100Cは、システム100と同様に、全体構成として、測量機2、アイウェア装置4、データ処理装置6C、およびターゲットユニット8Cを備える。
図23は、アイウェア装置4とデータ処理装置6Cの構成ブロック図であり、
図24は、ターゲットユニット8Cの外観模式図である。
【0116】
ターゲットユニット8Cは、支持部材81Cが伸縮自在のポールとなっており、任意のターゲット高さhvで固定可能となっている。
【0117】
最適ターゲット高さ提案部647は、測量機2がターゲット中心Tを視準する場合に、視準方向が水平、あるいはなるべく水平に近くなる最適なターゲット高さhoとなるターゲット高さhvを算出し、アイウェア装置4のディスプレイに表示する。
【0118】
図25は、最適ターゲット高さhoを説明する図である。測定点Pにターゲットユニット8Cを設置した場合、測定点Pの座標をP(xp,yp,zp)としたとき、ターゲット中心Tの座標はT(xp,yp,zp+hv)で表せる。また、視準光軸の高さをHと
高さするとき、既知点Kの座標をK(xk,yk,zk)とすると、器械中心Oの座標はO(xk,yk,zk+H)と表せる。
【0119】
視準光軸が水平になるということは、
zy+hv=zk+H 式(1)
であるということである。したがって、最適ターゲット高さhoは、
ho(hv)=zk+H-hv 式(2)
で求めることができる。
なお、ここで、ターゲットユニット8Cの支持部材81Cの最長長さをhvmax,最短長さをhvminとすると、
hvmax<hvの場合は、ho=hvmax 式(3)
hv<hvminの場合は、ho=hvmin 式(4)
である。
【0120】
したがって、最適ターゲット高さhoは、上記より
hvmin≦hv≦hvmaxの場合、ho=zk+H-hv 式(5)
hvmax<hvの場合、ho=hvmax 式(6)
hv<hvminの場合、ho=hvmin 式(7)
で求めることができる。
【0121】
また、最適ターゲット高さ提案部647は、算出した最適ターゲット高さhoをアイウェア装置4のディスプレイ41に表示する。
【0122】
2.測量方法
図26は、システム100Cを用いる測量方法のフローチャートである。なお、本方法では、ターゲットユニット8Cの支持部材81Cの最長長さhv
maxおよび最短長さhv
minが予め制御演算部64Cに登録されているものとする。
【0123】
処理を開始すると、ステップS51では、最適ターゲット高さ提案部647が、式(5)~(7)を用いて、最適ターゲット高さhoを算出する。
次に、ステップS52で、最適ターゲット高さ提案部647が、最適ターゲット高さhoをディスプレイ41に表示する。これにより作業者は、ターゲットユニット8Cの長さを最適ターゲット長さhoに調整し、長さを固定する。そしてステップS53~S60では、ステップS11~ステップS18と同様に処理を実行する。
【0124】
上記構成によれば、可変長さタイプのターゲットユニット8Cを使った場合に、最適なターゲット高さhoがアイウェア装置4の表示上で提案されるので、作業者のターゲット高さhoの調節のための労力が著しく低減する。
【0125】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0126】
2 :測量機
2c :望遠鏡
4 4A 4B :アイウェア装置
6 6A 6B 6C :データ処理装置(データ処理部)
8 8C :ターゲットユニット
21a :測距光送光部
21b :測距光受光部
22 :鉛直回転駆動部(回転駆動部)
24 :水平回転駆動部(回転駆動部)
26 :制御演算部
41 :ディスプレイ
42 :ステレオカメラ
45 :相対位置センサ
46 :相対方向センサ
51 :環境センサ
64,64A,64B,64C :制御演算部
80 :ターゲット
81,81C :支持部材
92 :ずれ推定モデル
100,100A,100B,100C :測量システム
641 :同期計測部
L :ガイド測距光