(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081243
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】柱受基礎金物
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20230602BHJP
E02D 27/42 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195029
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】520321535
【氏名又は名称】株式会社知財事業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100170449
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英彦
(72)【発明者】
【氏名】大賀 信幸
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA17
2D046DA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】木製の柱を地面より高い位置で基礎に強固に結合する。
【解決手段】本発明に係る柱受基礎金物Mは、L字断面で鉛直方向に延在し、断面四角の木製の柱を受ける柱受部1と、前記柱受部1を下方から支持する土台部2とを含み、前記柱受部1は、前記L字を構成する各側面部に前記柱を貫通するボルトを通す貫通孔12を備えることを特徴とする。この柱受基礎金物Mは、L字を構成する各側辺に断面四角の柱が密着し、ボルトを貫通されて柱受部と柱が結合される。特に、L字断面で鉛直方向に延在する柱受部に柱が結合されることで、柱の結合がラーメン構造を構成することになる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L字断面で鉛直方向に延在し、断面四角の木製の柱を受ける柱受部と、
前記柱受部を下方から支持する土台部とを含み、
前記柱受部は、前記L字を構成する各側面部に前記柱を貫通するボルトを通す貫通孔を備えることを特徴とする、柱受基礎金物
【請求項2】
前記土台部は、前記柱受部を下方から支持し、前記柱受部を中心とした円周上に少なくとも3点にボルトが通される貫通孔を備える、請求項1に記載の柱受基礎金物。
【請求項3】
少なくとも前記柱受部および前記土台部は金属材料で形成されている、請求項1または請求項2に記載の柱受基礎金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の柱を基礎に緊結するための柱受基礎金物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物は、建築基準法等の法令により基礎に緊結されなければならないとされている。これにともない、木造建築物は、構造躯体の一部を基礎に緊結することになる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の木造建築物の構造躯体の構築方法によれば、基礎の上に設けられ、構造躯体の一部をなす土台が基礎に緊結される構造となっている。この土台は、水平方向に延在する複数の角材を組み合わせて構築されている。
【0004】
特許文献1の木造建築物の構造躯体の構築方法では、土台の上に直方体の基礎構造体を組み上げていく建築方法で、建築が容易になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のような基礎構造体を組み立てていく方法のほかに、従来の在来軸組工法のように、柱と梁により建築物を建築する方法もある。そのような建築物の中には、柱を基礎に緊結する必要が生じる場合もある。
【0007】
しかし、柱を基礎に緊結する場合に、木造建築部においては、特段に優れた建築方法が確立されていない。
【0008】
(1)本発明に係る柱受基礎金物は、L字断面で鉛直方向に延在し、断面四角の木製の柱を受ける柱受部と、前記柱受部を下方から支持する土台部とを含み、前記柱受部は、前記L字を構成する各側面部に前記柱を貫通するボルトを通す貫通孔を備えることを特徴とする。この柱受基礎金物は、L字を構成する各側辺に断面四角の柱が密着し、ボルトを貫通されて柱受部と柱が結合される。これにより、柱が柱受基礎金物に直行する2方向から強固に結合される。柱受部を支持する土台部と共に柱受部の一部が基礎のコンクリートに埋め込まれることで柱受基礎金物が基礎に緊結されることになり、ひいては柱が基礎と強固に結合されることになる。特に、L字断面で鉛直方向に延在する柱受部に柱が結合されることで、柱の結合がラーメン構造を構成することになる。
【0009】
(2)前記した柱受基礎金物において、前記土台部は、前記柱受部を中央で支持し、前記柱受部を中心とした円周上に少なくとも3点にボルトが通される貫通孔を備える。この柱受基礎金物によれば、土台部に貫通されたボルトの先端が地面と接することになり、ボルトの位置調整をすることにより、土台のレベルを調整することが可能になる。ひいては、ボルトの位置調整をすることにより、柱の角度を調整することができる。
【0010】
(3)前記した柱受基礎金物において、少なくとも前記柱受部および前記土台部は金属材料で形成されている。そのようにすれば、柱受基礎金物が基礎に緊結された状態で地面に溜まる水などに接する部分が金属となり、木製の柱が腐食することを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、木製の柱を基礎に強固に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る柱受基礎金物を示す斜視図である。
【
図3】
図1の柱受基礎金物の土台部を示す斜視図である。
【
図4】
図1の柱受基礎金物の使用状態を示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る柱受基礎金物Mについて図面を参照して説明する。なお、本実施形態において、方向について柱受基礎金物Mを地面に設置した状態を想定して説明する。
【0014】
図1および
図2に示すように、柱受基礎金物Mは、木造の柱を受ける柱受部1と、柱受部1を下方から支持する土台部2とを備える。柱受部1は、直行する2つの平板状の側板部11を含み、各側板部11が平面視でL字の断面を構成する。これにより、柱受部1は、断面L字で鉛直方向に延在する。柱受部1の各側板部11は、水平方向に貫通する側面貫通孔12を有する。各側板部11の側面受貫通孔12は、鉛直方向の異なる位置に形成されている。
【0015】
本実施形態において、柱受部1は、断面L字で鉛直方向に延在するとともに、下端に設けられ水平面方向に広がる底板部13と、底板部13と略平行に柱受部1の延在方向の略中央に設けられ、水平面方向に広がる中板部14とを備える。底板部13と中板部14とは、四角形の平板状に形成され、柱受部1のL字を形成する各側板部11を渡るように柱受部1の下端と略中央に設けられている。底板部13は、四角形の略中央に底面貫通孔15を有する。なお、中板部14は、L字の側板部11と接する角に切欠孔16が設けられている。この切欠孔16から、雨水を逃がすことができる。
【0016】
図3に示すように、土台部2は、2つの矩形の板状部材21を鉛直方向に重ね、交差するように配置して十字になるように形成されている。各板状部材21は両端に鉛直方向に貫通する土台貫通孔22を備えるため、土台は、中央から円周上に4つの土台貫通孔22を有する。また、各板状部材21は、十字の中央となる位置に中央貫通孔23を有する。
【0017】
土台部2は、各板状部材21を十字に重ねた状態で各中央貫通孔23と柱受部1の底面貫通孔15とにボルトbを通され、他方からナットnをボルトbに螺合して柱受部1に結合される。これにより、土台部2は柱受部1を下方から支持することになる。このとき、螺合の強度を調整することにより、柱受部1に対して板状部材21は水平面上で回転可能となっている。
【0018】
図4に示すように、柱受基礎金物Mは、柱受部1の断面L字を構成する2つの側板部21に沿って、断面四角の木製の柱Pを受ける。また、柱受基礎金物Mが柱を受けた状態で柱受部1の各側板部11の反対側には側面板部材3が配置され、各側板部11と対向する側面板部材3とにより柱Pが挟持される形となる。なお、底板部13および中板部14は、柱Pと側面板部材3が水平方向に重ねられた状態の断面と略同等の寸法に形成されている。
【0019】
また、柱Pは、柱受部1の側板部11の側面貫通孔12に対応する位置に結合貫通孔P1を形成されている。さらに、側面板部材3は、柱の結合貫通孔P1に対応する位置に水平貫通孔(図示しない)を形成されている。これにより、柱受基礎金物Mが柱Pを受け、柱受部1の各側板部11の反対側には側面板部材3が配置された状態で、各側板部11の各側面貫通孔12を介して柱Pの結合貫通孔P1および各側面板部材3の水平貫通孔にボルトbを通し反対側からナットnで結合する。これにより、柱Pが柱受基礎金物Mに結合される。
【0020】
柱受基礎金物Mは、地面Zに配置され、土台部2に設けられた複数の底面貫通孔15にボルトbを通され、ボルトbの先端の鉛直方向の位置を調整することにより水平位置を調整される。柱受基礎金物Mの水平位置が所定の位置に調整された状態で穴の上方に及ぶコンクリートcで基礎に緊結されることになる。
【0021】
本実施形態において、柱受部1は、柱受部1のL字を形成する各側板部11を渡るように柱受部1の下端に設けられた底板部13と柱受部1の略中央に設けられた中板部14とを備える形態について説明した。しかし、柱受部1は、断面L字を形成し、断面四角の柱を受けることができれば、この形態に限定されない。
【0022】
本実施形態において、一対の板状部材21は、直交する十字となるように配置された形態について説明した。しかし、一対の板状部材21は、交差するように配置されていれば直行していなくともよい。そのようにすれば、柱受基礎金物Mを設置する際に土台貫通孔22に通したボルトbが地面に設けられた対象物に干渉する場合に、板状部材21の交差する角度を変更することで対象物を回避することができる。
【0023】
本実施形態において、土台部2は、一対の矩形の板状部材21を交差するように配置して形成しているが、一枚の板状部材に中央貫通孔と土台貫通孔を設けて形成してもよい。また、このとき、板状部材を水平面で回転可能とすることで土台貫通孔に通したボルトbが地面に設けられた対象物に干渉する場合に板状部材を回転させることで対象物を回避することができる。
【0024】
本実施形態において、結合手段についてボルトbとナットnにより結合する形態について説明した。しかし、結合手段は他の手段であってもよい。例えば、ナットに変えて貫通孔にねじ切りをすることで結合手段とすることができる。なお、各ボルトbとナットnの関係は逆転してもよい。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、基礎に柱を緊結するための金物として利用できる。
【符号の説明】
【0027】
M 基礎金物
P 柱
b ボルト
n ナット
1 柱受部
2 土台部
11 側板部
12 側面貫通孔
13 底板部
14 中板部
15 底面貫通孔
21 板状部材
22 土台貫通孔
23 中央貫通孔