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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081253
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】皮膚用乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230602BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230602BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230602BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/60
A61K8/34
A61K8/31
A61Q19/00
A61K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021206508
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 悠生
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC482
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB13
4C083BB36
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】優れた乳化安定性を発揮するだけでなく、塗布時の感触が軽く、肌上での延展性が良好で、べたつきのないサラっとした使用感が得られる皮膚用乳化組成物の提供。
【解決手段】成分A:ツボクサ葉エキス粉末、成分B:グリチルリチン酸ジカリウム、成分C:グリセリン、成分D:25℃で液状の油剤を含有する皮膚用乳化組成物とする。さらに、成分E:水溶性増粘剤を含有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、下記成分B、下記成分Cおよび下記成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物。
成分A:ツボクサ葉エキス粉末
成分B:グリチルリチン酸ジカリウム
成分C:グリセリン
成分D:25℃で液状の油剤
【請求項2】
前記成分Aの含有量が、0.1~3.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項3】
前記成分Aに対する前記成分Bの含有量の比(成分B/成分A)が、0.1~1.5の範囲を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項4】
前記成分Dが、炭化水素油であることを特徴とする請求項1~3何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項5】
さらに、下記成分Eを含有することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
成分E:水溶性増粘剤
【請求項6】
前記成分Eが、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマーおよびキサンタンガムから選ばれる2種又は3種であることを特徴とする請求項5に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項7】
実質的に界面活性剤を含有しないことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚用乳化組成物では、乳化剤として種々の界面活性剤が汎用されている。このような界面活性剤を用いて乳化した皮膚用乳化組成物は、水分と油分がよく混ざり合った状態となり、保存安定性のみならず、皮膚への馴染み、延展性、保湿性といった使用感に優れた効果を発揮する一方で、用いる界面活性剤の種類によってはべたつきを感じ易いという問題があった。使用感を良くするためには、乳化剤の配合量を少量にする、若しくは配合しないことが望ましいが、界面活性剤を用いずに乳化した皮膚用乳化組成物では、保存安定性が経時的に悪化する、使用感が悪くなるなど、様々な処方設計上の課題があった。
【0003】
これまでにも、界面活性剤を用いずに乳化組成物を作製する試みがなされている。具体的には、例えば、合成界面活性剤を含まず、少量の天然界面活性剤物質のみを使用し、安定かつ安全で、しかも使用性のよい乳化型化粧料が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、このような天然界面活性剤物質のみを用いて乳化した化粧料は、塗布時の感触に重たさを感じ易く、肌上での延展性が悪くなることから、よりべたつきを感じ易くなるという欠点があった。
【0004】
一方で、界面活性剤を含まず、水溶性増粘剤として汎用されているアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いて乳化させたジェル状水中油型乳化組成物も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、これら構成成分からなる乳化化粧料は、肌上での延展性が良い反面、界面活性剤を用いて乳化した皮膚用乳化組成物に比べて優れた潤いが得られ難いという欠点があった。
【0005】
さらに、界面活性剤を含まず、トリテルペンを利用した皮膚用乳化組成物も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。しかしながら、乳化を安定させるためには、トリテルペンを高配合する必要があるため、生産コストが非常に高くなり、実情のそぐわないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-004912号公報
【特許文献2】特開2012-111723号公報
【特許文献3】特表2004-519411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、優れた乳化安定性を発揮するだけでなく、塗布時の感触が軽く、肌上での延展性が良好で、べたつきのないサラっとした使用感が得られる皮膚用乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分A、下記成分B、下記成分Cおよび下記成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物を提供する。
成分A:ツボクサ葉エキス粉末
成分B:グリチルリチン酸ジカリウム
成分C:グリセリン
成分D:25℃で液状の油剤
【0009】
上記成分Aの含有量が、0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【0010】
上記成分Aに対する上記成分Bの含有量の比(成分B/成分A)が、0.1~1.5の範囲を満たすことが好ましい。
【0011】
上記成分Dが、炭化水素油であることが好ましい。
【0012】
さらに、下記成分Eを含有することが好ましい。
成分E:水溶性増粘剤
【0013】
上記成分Eが、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマーおよびキサンタンガムから選ばれる2種又は3種であることが好ましい。
【0014】
本発明の皮膚用乳化組成物は、実質的に界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の皮膚用乳化組成物は、必須構成要件を満たすことにより、界面活性剤を用いた従来の皮膚用乳化組成物や、界面活性剤を用いていない従来の皮膚用乳化組成物と比べて、優れた乳化安定性を発揮するとともに、塗布時の感触が軽く、肌上での延展性に優れ、べたつきのないサラっとした使用感が得られるという格別顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
本発明の皮膚用乳化組成物は、ツボクサ葉エキス粉末と、グリチルリチン酸ジカリウムと、グリセリンと、25℃で液状の油剤とを含有する。なお、本明細書において、上記ツボクサ葉エキス粉末を「成分A」、上記グリチルリチン酸ジカリウムを「成分B」、上記グリセリンを「成分C」、上記25℃で液状の油剤を「成分D」と夫々称する。
【0018】
以下に、本発明の皮膚用乳化組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0019】
[成分A]
上記成分Aは、ツボクサ葉エキス粉末である。ツボクサ葉エキス粉末とは、ツボクサ(学名:Centella asiatica)と呼ばれるセリ科の植物の葉から得られた抽出物を精製した白色個体粉末(パウダー状)のことを言う。
【0020】
上記抽出物を得る抽出方法は、特に限定されず、公知の各種抽出方法を用いることができる。また、抽出物を粉末にする精製方法も特に限定されず、公知の粉末にする方法を用いることができる。
【0021】
本発明においては、上記したツボクサ葉エキス粉末を用い、本発明の必須構成成分と組み合わせることで、乳化させることが可能となるだけでなく、格段に優れた乳化安定性を発揮させることができる。また、界面活性剤を用いた従来の皮膚用乳化組成物と比べて、塗布時の感触が軽い皮膚用乳化組成物を調製することができる。これら優れた乳化安定性と使用感は、上記成分Aを多量に用いなくとも十分に発揮させることが可能となる。なお、本発明における「塗布時の感触が軽い」とは、塗布時において濃厚クリームのような厚みのある感触ではなく、みずみずしいサラりとした感触のことを意味する。
【0022】
本発明において上記成分Aは、市販品を用いることもできる。上記成分Aの具体的な市販品としては、例えば、商品名「ヘテロサイド」(Serdex社製)、商品名「TECA」(Bayer HealthCare SAS社製)等が挙げられる。
【0023】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Aの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、通常、乳化安定性を発揮させる観点から、組成物100質量%中、0.1質量%~3.0質量%であることが好ましく、0.1質量%~1.5質量%であることがより好ましい。
【0024】
[成分B]
上記成分Bは、グリチルリチン酸ジカリウムである。本発明においては、上記成分Bを用いることにより、塗布時の使用感を損なわずに優れた乳化安定性をより高めることができる。
【0025】
本発明において上記成分Bは、市販品を用いることもできる。上記成分Bの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。具体的な市販品としては、例えば、商品名「グリチノンK2」(株式会社常磐植物化学研究所製)、商品名「外原規グリチルリチン酸ジカリウム」(丸善製薬株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Bの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、通常、乳化安定性をより高める観点から、組成物100質量%中、0.02質量%~0.8質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.5質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は、純分に換算した量である。
【0027】
なお、本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Aに対する上記成分Bの含有量の比(成分B/成分A)は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、乳化安定性をより高める観点から、0.1~1.5の範囲を満たすことが好ましく、0.2~1.0の範囲を満たすことがより好ましい。
【0028】
上記した如く、上記成分Aおよび上記成分Bを併用することで、上記成分Aを単独で用いた時と比較して塗布時の使用感を損なわずに乳化をより高めることが可能となる。さらに、後述する成分Cをさらに併用することで、乳化安定性をより一層高めることが可能となる。
【0029】
[成分C]
上記成分Cは、グリセリンである。本発明においては、上記成分Cを用いることにより、優れた乳化安定性をより一層高めることができる。本発明における「グリセリン」とは、「濃グリセリン」をも包含する。
【0030】
本発明において上記成分Cは、市販品を用いることもできる。上記成分Cの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。具体的な市販品としては、例えば、商品名「日本薬局方濃グリセリン」(花王株式会社製)、商品名「化粧品用濃グリセリン」(阪本薬品工業株式会社製)、商品名「濃グリセリン S」(新日本理化株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Cの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、通常、乳化安定性をより一層高める観点から、組成物100質量%中、1.0質量%~20.0質量%であることが好ましく、3.0質量%~10.0質量%であることがより好ましい。なお、上記成分C含有量は、純分に換算した量である。
【0032】
本発明の皮膚用乳化組成物は、上記成分A、上記成分Bおよび上記成分Cを併用することで、上記成分Aおよび上記成分Bを併用した時と比較して塗布時の使用感を損なわずに乳化安定性をさらに一層高めることが可能となる。
【0033】
上記した如く、本発明の皮膚用乳化組成物は、上記成分A、上記成分Bおよび上記成分Cを併用することで、乳化安定性の高い組成物を調製できるようになる。さらに、界面活性剤を用いた従来の皮膚用乳化組成物と比べて、塗布時の感触が軽い皮膚用乳化組成物を調製することができる。
【0034】
[成分D]
上記成分Dは、25℃で液状の油剤である。上記成分Dを用いることにより、肌上での延展性を良好にし、べたつきのないサラっとした使用感を発揮させることが可能となる。なお、本発明における「25℃で液状」とは、25℃において流動性がある性状を言う。
【0035】
上記成分Dとしては、例えば、25℃において液状である、油脂、炭化水素油および脂肪酸エステル油等が挙げられる。これら成分Dは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0036】
上記油脂の具体例としては、例えば、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、大豆油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油、ククイナッツ油、小麦胚芽油、月見草油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、ホホバ油等が挙げられる。
【0037】
上記炭化水素油の具体例としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0038】
上記脂肪酸エステル油の具体例としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸オクチル、オクタン酸セチル、オクタン酸ステアリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリオクタン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、上記成分Dの中でも、肌上での延展性をより良好にし、べたつきのないサラっとしたより良好な使用感を発揮させる観点から、炭化水素油を用いることが好ましく、炭化水素油の中でも、スクワラン、流動パラフィンを用いることがより好ましく、スクワランを用いることが最も好ましい。
【0040】
本発明において上記成分Dは、市販品を用いることもできる。上記成分Dの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。スクワランの市販品としては、例えば、商品名「NIKKOL シュガースクワラン」(日光ケミカルズ株式会社製)、商品名「オリザスクワラン」(オリザ油化株式会社製)等が挙げられる。
【0041】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Dの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、肌上での延展性を良好にし、べたつきのないサラっとした使用感に優れた効果を発揮させる観点から、組成物100質量%中、1.0質量%~15.0質量%であることが好ましく、5.0質量%~10.0質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Dの含有量は、純分に換算した量である。
【0042】
本発明の皮膚用乳化組成物には、水溶性増粘剤を更に含むことが好ましい。なお、本明細書において、水溶性増粘剤を「成分E」と称する。
【0043】
[成分E]
上記成分Eは水溶性増粘剤である。上記成分Eを用いることにより、乳化安定性を更に一層高めることができるとともに、塗布時の感触が軽く、肌上での延展性が優れ、べたつきのないさらっとした使用感をより一層良好にすることができようになる。
【0044】
上記成分Eとしては、例えば、半合成高分子、合成高分子、水溶性を有する天然高分子等が挙げられる。これら成分Eは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0045】
上記半合成高分子の具体例としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース等が挙げられる。
【0046】
上記合成高分子の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体)、ポリビニルメチルセルロース、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0047】
上記天然高分子の具体例としては、例えば、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガントガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、上記成分Eの中でも、乳化安定性、塗布時の感触、肌上での延展性、べたつきのないサラっとした使用感をより一層高める観点から、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマーおよびキサンタンガムから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これら好適な成分は、1種を含有しても所望の効果を十分に発揮させることができるが、本発明の効果を最大限に発揮させる観点から、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマーおよびキサンタンガムから選ばれる2種又は3種を用いることが最も好ましい。
【0049】
本発明において上記成分Eは、市販品を用いることもできる。上記成分Eの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。ヒドロキシエチルセルロースの市販品としては、例えば、商品名「SANHEC M」(三昌株式会社製)等が挙げられる。カルボキシビニルポリマーの市販品としては、例えば、商品名「CARBOPOL 980 POLYMER」(日本ルーブリゾール株式会社製)等が挙げられる。キサンタンガムの市販品としては、例えば、商品名「KELTROL CG-T」(三昌株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
本発明の皮膚用乳化組成物中の上記成分Eの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、通常、乳化安定性に優れ、塗布時の感触が軽く、肌上での延展性に優れ、べたつきのないサラっとした使用感をより一層高める観点から、組成物100質量%中、0.1質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~1.0質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Eの含有量は、純分に換算した量である。
【0051】
本発明の皮膚用乳化組成物は、べたつきを低減する観点、並びに界面活性剤が無くとも良好な乳化組成物を調製できる観点から、実質的に界面活性剤を含有しないことが好ましい。本発明における界面活性剤とは、一つの分子内に親水基と親油基を持つ物質であり、乳化力、可溶化力、分散力に優れた物質である天然には存在しない合成界面活性剤のことを意味する。
【0052】
なお、本発明における「実質的に界面活性剤を含有しない」とは、別途、界面活性剤を含有させることをしないという意味であり、各配合成分に含まれる少量の界面活性剤まで除外するものではない。
【0053】
[その他成分]
本発明の皮膚用乳化組成物には、上記した成分の他に、例えば、上記した成分A以外の植物抽出エキス;上記した成分B以外の抗炎症剤;上記した成分C以外の多価アルコール;上記した成分D以外の油剤;上記した成分E以外の増粘剤;保湿剤、香料、pH調整剤、皮膜形成剤、キレート剤、低級アルコール、アルカリ剤、ビタミン剤、収れん剤、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、着色料、植物発酵エキス、精製水等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0054】
本発明の皮膚用乳化組成物の性状は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、例えば、乳液状、クリーム状とすることが好ましい。
【0055】
本発明の皮膚用乳化組成物は、乳化剤型をとり得るのであれば、O/Wエマルション(水中油型)、W/Oエマルション(油中水型)、W/O/Wエマルション(水中油中水型)、O/W/Oエマルション(油中水中油型)の何れの形態であっても特に限定されないが、乳化安定性に優れ、塗布時の感触が軽く、格段に優れた使用感が得られる観点から、O/Wエマルション(水中油型)であることが好ましく、中でも、延展時の使用感を良好にする観点から、D相乳化法により調製したO/Wエマルション(水中油型)であることがより好ましい。なお、D相乳化法によるO/Wエマルション(水中油型)の調製方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて調製することができる。
【0056】
本発明の皮膚用乳化組成物の用途は、肌に適用することで効果を発揮することから、皮膚化粧料として用いることが好ましい。具体的には、保湿化粧料、美白化粧料、アクネケア化粧料、シワ抑制やたるみ抑制などを目的としたアンチエージング化粧料として用いることが好ましい。また、本発明の皮膚用乳化組成物は、化粧品、医薬部外品、指定医薬部外品、雑貨などの形態をとり得る。
【0057】
本発明の皮膚用乳化組成物を適用する部位は、特に限定されないが、一例として、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、デコルテ、脇、背中などに用いることができる。
【実施例0058】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0059】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1~5および比較例1~5の皮膚用乳化組成物を常法に準じて調製し、下記評価に供した。結果を表1および表2に記す。なお、表中の配合量は、全て純分換算した値である。
【0060】
(試験例1:乳化安定性の評価)
実施例および比較例の各試料を50mL容の透明ガラス容器に夫々封入し、50℃の恒温槽に3週間保管した。保管後の乳化系の状態を目視観察し、以下の評価基準に従って評価した。
【0061】
<乳化安定性の評価基準>
◎(非常に良好):製剤直後と全く変化が認められない
○(良好):僅かな減粘が認められるものの、ほとんど変化は認められない
△(不十分):明らかな減粘が認められる
×(不良):液状へと変化している、若しくは、分離している。
【0062】
上記試験例1の乳化安定性の評価において、「◎(非常に良好)」、「○(良好)」、「△(不十分)」の結果が得られた各試料について下記試験に供した。
【0063】
(試験例2:使用感の評価)
各実施例および各比較例で得られた皮膚用乳化組成物1gを手の甲へ塗布して使用試験を実施し、「塗布時の感触」、「延展性」、「延展後のべたつき」に関して官能評価を行い、下記1点~5点の評価点に従ってスコア付けをした。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合判断して決定した。
【0064】
「塗布時の感触」の評価は、塗布した際の感触が軽いほど高得点とした。「延展性」の評価は、塗布した際の延び広がりが良いほど高得点とした。「延展後のべたつき」の評価は、延展後のべたつきを感じず、サラっとしているほど高得点とした。
【0065】
下記5段階の評価基準に従って評価した。結果は、専門評価パネルの平均点を算出し、下記判定基準に従って判定を行った。
【0066】
<評価基準>
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0067】
<判定基準>
◎:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1の結果からも明らかなように、本発明の必須構成成分を充足する実施例1~5では、乳化安定性、塗布時の感触、塗布時の延展性および延展後のべたつきにおいて非常に良好であることが分かる。すなわち、本発明の皮膚用乳化組成物は、乳化安定性に優れ、塗布時の感触が軽く、格段に優れた使用感が得られるだけでなく、肌上での延展性に優れ、べたつきのないサラっとした使用感が得られるという、これまでには発揮させることができなかった格別顕著な効果を奏するものである。
【0071】
これに対して、本発明の必須構成成分を充足しない比較例1~4では、乳化安定性を十分に発揮できていないことが分かる。加えて、必須成分であるツボクサ葉エキス粉末をシラカバ樹皮エキスに置き換えた比較例5では、本発明特有の効果である、乳化安定性に優れた効果を発揮できないものであることが分かった。