(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081254
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】皮膚用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20230602BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230602BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230602BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230602BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
A61K8/35
A61K8/49
A61K8/44
A61Q19/08
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021206509
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 悠生
(72)【発明者】
【氏名】藤田 奈津子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC491
4C083AC492
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD432
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD631
4C083AD632
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】簡便な手段で塗布後のベタつき感を著しく低減させることができ、良好な潤いの持続性に優れた効果を発揮する皮膚用組成物の提供。
【解決手段】下記成分Aと、下記成分Bとを含有してなる皮膚用組成物とする。
成分A:補酵素Q10
成分B:エクトイン
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分Aと、下記成分Bとを含有してなる皮膚用組成物。
成分A:補酵素Q10
成分B:エクトイン
【請求項2】
前記成分Aの含有量が、0.3質量%より多く1質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚用組成物。
【請求項3】
前記成分Bの含有量が、0.1質量%以上1質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚用組成物。
【請求項4】
さらに下記成分Cを含有してなる請求項1~3の何れか一項に記載の皮膚用組成物。
成分C:セリン
【請求項5】
さらに下記成分Dを含有してなる請求項1~4の何れか一項に記載の皮膚用組成物。
成分D:加水分解ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩およびヒアルロン酸誘導体の群から選ばれる少なくとも1種
【請求項6】
さらに下記成分Eを含有してなる請求項1~5の何れか一項に記載の皮膚用組成物。
成分E:ナイアシンアミド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア製剤に求められる機能の一つに「保湿」がある。保湿とは、肌へ潤いを付与することや、その潤いを持続させることを言う。従来から、肌を保湿するため、肌へ水分を補ったり、皮膚中の水分の蒸発を防ぎ、潤いを保つなどの様々な試みがなされている。
【0003】
より具体的には、セラミド、スフィンゴ脂質、レシチンなどの角質細胞間脂質を構成する成分;天然保湿因子(NMF)などの角質細胞内に存在する成分;ヒアルロン酸、コラーゲンなどの真皮にもともと存在する成分;多価アルコール、油剤、糖類、植物エキスなどの種々の保湿効果を発揮する成分などが製剤中に配合されている。このような成分の中でも、格段に優れた保湿能力を有する成分として補酵素Q10が注目を浴び続けている。
【0004】
しかしながら、補酵素Q10は、格段に優れた保湿能力を発揮させることができる反面、製剤中に高配合しようとすると、使用感が著しく悪化し、塗布後、ベタつき感が続くといった問題がある。そのため、補酵素Q10を高配合することができず、望む保湿効果を十分に付与することができないことから、良好な潤い効果を持続させることができないといった課題がある。
【0005】
これまでにも補酵素Q10を配合した製剤において、ベタつきを抑制する様々な試みがなされている(例えば、特許文献1~2を参照)。これら試みにより、塗布後のベタつきをある程度低減させることができるものの、従来の試みでは、製剤化に工夫を要し、調製に手間がかかるといった欠点がある。そのため、簡便な手段で補酵素Q10を配合した製剤のベタつきを抑制する技術と、望む保湿効果を持続させる技術の双方を開発することが当業者に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-077084号公報
【特許文献2】特開2013-136545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、簡便な手段で塗布後のベタつき感を著しく低減させることができ、良好な潤いの持続性に優れた効果を発揮する皮膚用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、下記成分Aと、下記成分Bとを含有してなる皮膚用組成物を提供する。
成分A:補酵素Q10
成分B:エクトイン
【0009】
上記成分Aの含有量が、0.3質量%より多く1質量%以下であることが好ましい。
【0010】
上記成分Bの含有量が、0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
【0011】
上記皮膚用組成物は、さらに下記成分Cを含有することが好ましい。
成分C:セリン
【0012】
上記皮膚用組成物は、さらに下記成分Dを含有することが好ましい。
成分D:加水分解ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩およびヒアルロン酸誘導体の群から選ばれる少なくとも1種
【0013】
上記皮膚用組成物は、さらに下記成分Eを含有することが好ましい。
成分E:ナイアシンアミド
【発明の効果】
【0014】
本発明の皮膚用組成物は、上記構成要件を満たすことにより、塗布後のベタつき感を著しく低減させることができるという効果を奏する。また、本発明の皮膚用組成物は、ベタつきがないにもかかわらず、しっとりとした良好な潤いが続くという、潤いの持続性に格段に優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の皮膚用組成物は、成分A:補酵素Q10と、成分B:エクトインとを含有することを特徴とする。
【0016】
以下、本発明の皮膚用組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0017】
[成分A]
上記成分Aは、補酵素Q10である。補酵素Q10とは、別名、コエンザイムQ10、CoQ10、ユビキノン、ユビデカレノンと称される化合物である。本発明では、成分Aを用いることにより、塗布後の肌に格段に優れた潤い、所謂、保湿効果を付与することができる。
【0018】
なお、上記成分Aは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記成分Aは市販品を用いることができる。補酵素Q10の市販品としては、例えば、Solfonte Q10、Phytopresome Q10、Phytopresome Lipo-Q、Presome Q10(商品名,何れも日本精化社製)などが挙げられる。
【0019】
本発明の皮膚用組成物中の成分Aの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、潤いを付与する観点から、組成物100質量%中、0.1質量%以上であるが好ましく、0.3質量%よりも多く含むことがより好ましい。また、過度なベタつき感を抑える観点から、組成物100質量%中、1.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。なお、上記成分Aの含有量は、純分に換算した量である。
【0020】
[成分B]
上記成分Bは、エクトインである。エクトインとは、アミノ酸の中でも側鎖が環をまいている構造を有するアミノ酸であり、複素環アミノ酸(環状アミノ酸とも言う)に分類される化合物である。また、エクトインは皮膚用組成物中に主にエモリエント剤として配合される成分でもある。
【0021】
本発明においては、驚くべきことに、上記成分Bと上記成分Aとを併用することにより、成分Aに起因する塗布後の過度なベタつき感を低減させることができるという、従来には全く知られていない格別顕著な効果を発揮する。それゆえに、例え上記成分Aの皮膚用組成物中の含有量が0.3質量%よりも多い場合であっても、ベタつき感を低減させることが可能となる。
【0022】
なお、上記成分Bは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記成分Bは市販品を用いることができる。エクトインの市販品としては、例えば、RonaCare Ection、RonaCare Cyclopeptide-5(商品名,何れもメルク社製)、Ectoin natural(商品名、Bitop AG社製)などが挙げられる。
【0023】
本発明の皮膚用組成物中の成分Bの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、上記成分Aによる過度なベタつき感を低減させる観点、並びに持続ある潤いを付与する観点から、組成物100質量%中、0.01質量%以上であるが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は、純分に換算した量である。
【0024】
本発明においては、上記成分Aに起因する塗布後の過度なベタつき感を著しく低減させる観点から、上記成分Aに対する上記成分Bの含有量の比(成分B/成分A)は0.01~20.0の範囲を満たすことが好ましく、0.02~10.0の範囲を満たすことがより好ましく、0.1~5.0の範囲を満たすことがさらに好ましく、0.3~2.0の範囲を満たすことが最も好ましい。
【0025】
本発明の皮膚用組成物には、上記した成分Aおよび成分Bに加えて、成分Aに起因する塗布後の過度なベタつき感を著しく低減させる観点から、成分Cを更に含有させることが好ましい。
【0026】
[成分C]
上記成分Cは、セリンである。セリンとは、アミノ酸の中でも側鎖にアルコールを持つ構造を有するアミノ酸の一種である。本発明においては、驚くべきことに、上記成分Aと上記成分Bとの併用系に成分Cを更に組み合わせることにより、成分Aに起因する塗布後の過度なベタつき感を著しく低減させることができるという、従来には全く知られていない格別顕著な効果を発揮する。
【0027】
なお、上記成分Cは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記成分Cは市販品を用いることができる。セリンの市販品としては、例えば、L-セリン(商品名,日本理化学薬品社製)、L-セリン(商品名,純正化学社製)、P.P.A.A.-C(商品名,成和化成社製)、PRODEW400、PRODEW500、PRODEW600(何れも商品名,Ajinomoto do Brasil Ind.e.com.de Alimentos Ltda.)などが挙げられる。
【0028】
本発明の皮膚用組成物中の成分Cの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、上記成分Aによる過度なベタつき感を著しく低減させる観点、並びに持続ある潤いを高める観点から、組成物100質量%中、0.001質量%以上であるが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は、純分に換算した量である。
【0029】
本発明の皮膚用組成物は、上記した成分Aと成分Bとを組み合わせることにより、若しくは、上記した成分Aと成分Bと成分Cとを組み合わせることにより、成分Aに起因する塗布後の過度なベタつき感を低減させることができ、しかも、しっとりとした潤いが持続するという格段に優れた効果を発揮させることができることから、優れた潤いを付与する成分Dを更に配合させることが可能となる。
【0030】
[成分D]
上記成分Dは、加水分解ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩およびヒアルロン酸誘導体の群から選ばれる少なくとも1種である。ヒアルロン酸とは、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸のグルコシド結合からなる二糖を繰り返し単位とする高分子多糖化合物である。
【0031】
本発明において、加水分解ヒアルロン酸とは、上記ヒアルロン酸を低分子化したものである。ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。ヒアルロン酸誘導体としては、例えば、ヒアルロン酸をアセチル化したアセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸のD-グルクロン酸の6位のカルボキシル基をプロピレングリコールでエステル化したヒアルロン酸プロピレングリコールエステル、並びに、これらヒアルロン酸誘導体の塩などが挙げられる。これら成分Dは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0032】
なお、上記成分Dは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記成分Dは市販品を用いることができる。加水分解ヒアルロン酸の市販品としては、例えば、ヒアロオリゴ(商品名,キューピー社製)などが挙げられる。ヒアルロン酸ナトリウムの市販品としては、例えば、ヒアルロン酸HA-LQ(商品名,キューピー社製)、ヒアルロン酸FCH-60,80,120,150,200(商品名,何れもキッコーマンバイオケミファ社製)などが挙げられる。アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムの市販品としては、例えば、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム(商品名,資生堂社製)などが挙げられる。
【0033】
本発明の皮膚用組成物中の成分Dの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、持続ある潤いを更に高める観点から、組成物100質量%中、0.0001質量%以上であるが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましい。また、ベタつきの観点から、組成物100質量%中、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Dの含有量は、純分に換算した量である。
【0034】
本発明の皮膚用組成物は、潤いを維持しながらも、成分Aに起因する塗布後の過度なベタつき感を低減させることができることから、使用感に影響されることなく機能性成分である成分Eを更に配合させることができるようになる。
【0035】
[成分E]
上記成分Eは、ナイアシンアミドである。ナイアシンアミドとは、ビタミンB3と称されるニコチン酸アミドのことであり、シワ形成抑制効果を発揮する成分である。
【0036】
なお、上記成分Eは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記成分Eは市販品を用いることができる。ナイアシンアミドの市販品としては、例えば、ニコチン酸アミド、Niacinamide PC(商品名,何れもDSM社製)などが挙げられる。
【0037】
本発明の皮膚用組成物中の成分Eの含有量は、ベタつき感に影響を及ぼさない量であれば特に限定されないが、組成物100質量%中、0.01質量%以上であるが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Eの含有量は、純分に換算した量である。
【0038】
本発明の皮膚用組成物の剤型は、特に限定されないが、ベタつき感を抑え、持続性に優れる潤い効果を発揮させる観点から、乳化剤型とすることが好ましい。本発明において乳化剤とするためには、非イオン性界面活性剤が用いられる。なお、本明細書において、非イオン性界面活性剤を成分Fと称することがある。
【0039】
上記成分Fとしては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、およびこれらのアルキレンオキシド付加物;ヒマシ油又は硬化ヒマシ油のアルキレンオキシド付加物;ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(ポリエチレングリコール脂肪酸エステル)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロールおよびその誘導体、ポリオキシエチレンラノリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類などが挙げられる。これら成分Fは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明においては、上記した成分Fの中でも、本発明の効果を発揮させる上で重要な優れた製剤の保存安定性(乳化安定性)を付与する観点から、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、およびこれらのアルキレンオキシド付加物、並びにポリグリセリン脂肪酸エステルの群から選ばれる非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0041】
具体的なソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ミリスチン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなどが挙げられる。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記ソルビタン脂肪酸エステルの中でも、本発明の効果を発揮させる上で重要な優れた製剤の保存安定性(乳化安定性)を付与する観点から、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンを用いることが好ましい。
【0043】
なお、上記ソルビタン脂肪酸エステルは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記ソルビタン脂肪酸エステルは市販品を用いることができる。ステアリン酸ソルビタンの市販品としては、例えば、レオドールSP-S10V(商品名,花王社製)、イソステアリン酸ソルビタンの市販品としては、例えば、NIKKOL SI-10RV(商品名,日本サーファクタント工業社製)、モノオレイン酸ソルビタンの市販品としては、レオドールSP-O10V(商品名,花王社製)などが挙げられる。
【0044】
具体的なグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、ヤシ油脂肪酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、モノヒドロキシステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、リシノレイン酸グリセリル、エルカ酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、小麦胚芽油脂肪酸グリセリド、サフラワー油脂肪酸グリセリル、水素添加大豆脂肪酸グリセリル、飽和脂肪酸グリセリド、綿実油脂肪酸グリセリド、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、モノ牛脂肪酸グリセライド、モノラノリン脂肪酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリングリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどが挙げられる。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0045】
上記グリセリン脂肪酸エステルの中でも、本発明の効果を発揮させる上で重要な優れた製剤の保存安定性(乳化安定性)を付与する観点から、ステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリルを用いることが好ましい。
【0046】
なお、上記グリセリン脂肪酸エステルは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記グリセリン脂肪酸エステルは市販品を用いることができる。ステアリン酸グリセリルの市販品としては、例えば、NIKKOL MGS-BV2(商品名,日本サーファクタント工業社製)、ラウリン酸グリセリルの市販品としては、例えば、サンソフトNo.750-C(商品名,太陽化学社製)、カプリル酸グリセリルの市販品としては、サンソフトNo.700P-2-C(商品名,太陽化学社製)などが挙げられる。
【0047】
具体的なソルビタン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン、モノステアリン酸POE(6)ソルビタン、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン、トリオレイン酸POE(20)ソルビタン、モノラウリン酸POE(6)ソルビタンなどが挙げられる。なお、「POE」とは、ポリオキシエチレンの略であり、括弧内の数値は、酸化エチレンの付加モル数を表す。酸化エチレンの付加モル数は、特に限定されないが、保存安定性(乳化安定性)の観点から、2~100であることが好ましく、より好ましくは、4~90である。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0048】
上記ソルビタン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物の中でも、本発明の効果を発揮させる上で重要な優れた製剤の保存安定性(乳化安定性)を付与する観点から、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタンを用いることが好ましい。
【0049】
なお、上記ソルビタン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記ソルビタン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物は市販品を用いることができる。モノステアリン酸POE(20)ソルビタンの市販品としては、例えば、レオドールTW-S120V(商品名,花王社製)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタンの市販品としては、例えば、レオドールTW-O120V(商品名,花王社製)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタンの市販品としては、NIKKOL TP-10(商品名,日本サーファクタント工業社製)などが挙げられる。
【0050】
具体的なグリセリン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、モノステアリン酸POE(40)グリセリル、トリイソステアリン酸POE(5)グリセリル、イソステアリン酸POE(10)グリセリル、ヤシ油脂肪酸POE(7)グリセリル、POE(8)(カプリル/カプリン酸)グリセリル、オレイン酸POE(30)グリセリルなどが挙げられる。なお、「POE」とは、ポリオキシエチレンの略であり、括弧内の数値は、酸化エチレンの付加モル数を表す。酸化エチレンの付加モル数は、特に限定されないが、保存安定性(乳化安定性)の観点から、2~100であることが好ましく、より好ましくは、4~90である。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記グリセリン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物の中でも、本発明の効果を発揮させる上で重要な優れた製剤の保存安定性(乳化安定性)を付与する観点から、モノステアリン酸POE(40)グリセリル、トリイソステアリン酸POE(5)グリセリル、イソステアリン酸POE(10)グリセリルを用いることが好ましい。
【0052】
なお、上記グリセリン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記グリセリン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物は市販品を用いることができる。モノステアリン酸POE(40)グリセリルの市販品としては、例えば、NIKKOL MYS-40V(商品名,日本サーファクタント工業社製)、トリイソステアリン酸POE(5)グリセリルの市販品としては、例えば、EMALEX GWIS-305(商品名,日本エマルジョン社製)、イソステアリン酸POE(10)グリセリルの市販品としては、GWIS-110(商品名,日本エマルジョン社製)などが挙げられる。
【0053】
具体的なポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリン酸ポリグリセリル-2、カプリン酸ポリグリセリル-3、カプリン酸ポリグリセリル-4、カプリン酸ポリグリセリル-10などのカプリン酸ポリグリセリル;ラウリン酸ポリグリセリル-2、ラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10などのラウリン酸ポリグリセリル;ミリスチン酸ポリグリセリル-5、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-10などのミリスチン酸ポリグリセリル;パルミチン酸ポリグリセリル-3、パルミチン酸ポリグリセリル-10などのパルミチン酸ポリグリセリル;ステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-3、ステアリン酸ポリグリセリル-4、ステアリン酸ポリグリセリル-5、ステアリン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸ポリグリセリル-10などのステアリン酸ポリグリセリル;イソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、イソステアリン酸ポリグリセリル-6、イソステアリン酸ポリグリセリル-10などのイソステアリン酸ポリグリセリル;オレイン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-3、オレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-10などのオレイン酸ポリグリセリル;リノール酸ポリグリセリル-10などが挙げられる。なお、上記成分の後に記載の整数はポリグリセリンの平均重合度を表す。これら成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0054】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの中でも、本発明の効果を発揮させる上で重要な優れた製剤の保存安定性(乳化安定性)を付与する観点から、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10を用いることが好ましい。
【0055】
なお、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。本発明において、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは市販品を用いることができる。ラウリン酸ポリグリセリル-10の市販品としては、例えば、SYグリスター ML-750(商品名,阪本薬品工業社製)、ミリスチン酸ポリグリセリル-10の市販品としては、Decaglyn 1-M(商品名,日本サーファクタント工業社製)、ステアリン酸ポリグリセリル-10の市販品としては、例えば、サンソフトQ-18Y-C(商品名,太陽化学社製)などが挙げられる。
【0056】
本発明の皮膚用組成物中の成分Fの含有量は、特に限定されないが、優れた保存安定性(乳化安定性)を付与する観点から、組成物100質量%中、0.05質量%以上であるが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Fの含有量は、純分に換算した量である。
【0057】
本発明の皮膚用組成物は、保存安定性(乳化安定性)を高める観点から、増粘性高分子を更に含有させることができる。増粘性高分子としては、水溶性を有する天然高分子、半合成高分子、合成高分子などが挙げられる。なお、本明細書において、増粘性高分子を成分Gと称することがある。
【0058】
上記成分Gとしては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼインなどの天然高分子;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロースなどの半合成高分子;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体)、ポリビニルメチルセルロース、ポリアミド樹脂などの合成高分子などが挙げられる。これら成分Gは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本発明の皮膚用組成物中の成分Gの含有量は、特に限定されないが、保存安定性(乳化安定性)を高める観点から、組成物100質量%中、0.01質量%以上であるが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、使用感の観点から、組成物100質量%中、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分Gの含有量は、純分に換算した量である。
【0060】
[その他成分]
本発明の皮膚用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル油、シリコーン油などの油剤;陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの成分F以外の界面活性剤;二価又は三価の多価アルコール;保湿剤、皮膜形成剤、糖アルコール、紫外線吸収剤、美白剤、抗炎症剤、清涼剤、pH調整剤、中和剤、香料、防腐剤などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0061】
本発明の皮膚用組成物の残部には精製水が用いられる。精製水の含有量は、特に限定されないが、保存安定性の観点から、30~95質量%であることが好ましく、より好ましくは50~90質量%である。
【0062】
本発明の皮膚用組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えば、ディスパーミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法、若しくは、ホモミキサーなどを用いた転相乳化法により乳化させる方法などが挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0063】
本発明の一実施形態に係る皮膚用組成物の用途は、特に限定されないが、皮膚化粧料として用いることが好ましく、より具体的には、例えば、保湿化粧料、美白化粧料、アクネケア化粧料、シワ抑制やたるみ抑制などを目的としたアンチエージング化粧料として用いることが好ましい。また、本発明の皮膚用組成物は、化粧品、医薬部外品、指定医薬部外品、雑貨などの形態をとり得る。
【0064】
また、本発明の一実施形態に係る皮膚用組成物を適用する部位は、特に限定されないが、一例として、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、デコルテ、脇、背中などに用いることができる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0066】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1~10および比較例1~7の皮膚用組成物を常法に準じて乳化剤型に調製し、下記評価に供した。結果を表1および表2に併記する。なお、表中の配合量は、全て純分に換算した値である。
【0067】
(試験例1:塗布後の評価)
実施例および比較例の各試料を約1g手の平に取り、両頬に馴染ませるように塗布した。塗布から30分後に塗布部分の「ベタつき抑制」、並びに「潤い感の持続」について官能評価を行い、下記評価基準に従ってスコア付けをした。なお、評価は25℃の条件下で、10名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0068】
「ベタつき抑制」については、評価時にべたつきがないものを「良好」として評価した。一方、「潤い感の持続」については、評価時にしっとりとした潤いを感じることができるものを「良好」として評価した。また、評価は、下記評価基準により算出された平均点から下記判定基準にしたがって判定を行った。
【0069】
<評価基準>
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
【0070】
<判定基準>
◎:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0071】
【0072】
【0073】
表1および表2に示された結果から、各実施例で得られた皮膚用組成物は、各比較例で得られたものと対比して、補酵素Q10が高配合されているにもかかわらず、補酵素Q10に起因するベタつきがないにもかかわらず、しっとりとした潤いが持続しており、使用感において格段に優れた効果を発揮していることが分かる。
【0074】
これら結果からも明らかな通り、本発明の皮膚用組成物は、従来の試みでは困難であった、補酵素Q10が高配合されているにもかかわらず、ベタつきがなく、しっとりとした良好な潤い感が持続するという双方の効果を十分に発揮させることができ、使用感において満足のいくものであることが分かる。