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特開2023-81281反応染料組成物及びそれを用いる染色法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081281
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】反応染料組成物及びそれを用いる染色法
(51)【国際特許分類】
   C09B 62/09 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
C09B62/09 A
C09B62/09 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144412
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】202111438361.0
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522361928
【氏名又は名称】上海化耀国際貿易有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【弁理士】
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】谷部 重光
(72)【発明者】
【氏名】徳山 博満
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を、再現性良く、均染性もよく染色できる反応染料組成物及びそれを用いた染色法を提供する。
【解決手段】本発明は、反応基としてトリアジン成分を有するアゾ染料からなる2種類の黄色用反応染料を含む反応染料組成物であって、2種類の反応染料の含有比率が、4:1である場合は除く、反応染料組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される反応染料及び下記式(2)で示される反応染料からなる黄色用反応染料(Y)を含む反応染料組成物であって、
【化1】
但し、式(1)で示される反応染料と式(2)で示される反応染料の含有比率が、4:1である場合は除く、反応染料組成物。
【請求項2】
下記式(3)で示される反応染料を含む赤色用反応染料(R)をさらに含む、
【化2】
請求項1に記載の反応染料組成物。
【請求項3】
下記式(4)で示される反応染料及び下記式(5)で示される反応染料を含む青色用反応染料(B)をさらに含む、
【化3】
請求項1に記載の反応染料組成物。
【請求項4】
下記式(3)で示される反応染料を含む赤色用反応染料(R)と前記青色用反応染料(B)をさらに含む反応染料組成物であって、
【化4】
但し、前記黄色用反応染料(Y)に含まれる前記式(1)で示される反応染料と前記赤色用反応染料(R)と前記式(4)で示される反応染料及び前記式(5)で示される反応染料の含有比率が、4:1:0.7:0.5、及び、1:0.35:0.16:0.11、である場合は除く、請求項3に記載の反応染料組成物。
【請求項5】
前記黄色用反応染料(Y)中、前記式(1)で示される反応染料の含有率が50質量%~99質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が50質量%~1質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項6】
前記黄色用反応染料(Y)中、前記式(1)で示される反応染料の含有率が60質量%~80質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が40質量%~20質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項7】
前記黄色用反応染料(Y)に、さらに下記式(3)で示される反応染料からなる前記赤色用反応染料(R)を含む、
【化5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項8】
前記青色用反応染料(B)中、前記式(4)で示される反応染料の含有率が40質量%~60質量%であり、前記式(5)で示される反応染料の含有率が60質量%~40質量%である、請求項3~4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応染料組成物を用いてセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を染色することを含む染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維の染色に適する反応染料組成物及びそれを用いる染色法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の反応性染料が知られており、セルロース系繊維の染色の分野に広く使用されている。例えば、モノクロロトリアジニル、モノフロロトリアジニル、フロロクロロピリミジニル、ジクロロキノキサリニル、ビニルスルホニル、スルファ-トエチルスルホニル等の反応基を有する染料であり、これらは酸結合剤、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどを用い、染浴のpHを10以上とし、100℃以下の温度にて染色されている。
この染色の際、不均染、加水分解によるカラーイールドの低下などを避ける為、通常、酸結合剤は、染色時に段階的に添加する方法が多く採用されている。一方、セルロース系繊維を含有する混合繊維として特にポリエステル繊維と木綿の混紡品は優れた衣料特性を有する事から多量に使用されている。ポリエステル繊維側を染色する分散染料は、自身の分解、変質を避ける為、通常、酸性~中性の染浴、概ね100~140℃の温度にて適用されることから、反応染料の適用条件とは合致しない場合が多く、そのためこの混紡品の染色においては、各々の繊維を別の染浴で処理する二浴法、又は、同一染浴で各繊維に対する染料の適用条件をスライドさせ、逐次的に染色する一浴二段法が多く採用されている。
【0003】
三原色に使用される反応染料に関しては、各染料のビルドアップ性や均染性が優れている事、三原色の染着速度が、ほぼ等しく温度依存性が揃っている事、三原色の諸堅牢度が優れていることが必要とされてきている。さらに、実工程に対応できることが必要とされる。つまり、一般的に製品に使用する染色には実験室スケール、中実験スケール、工場スケールのステップ段階を踏むが、このスケールに由来する又はセルロース含有材料のセルロース混率による染色浴比を一定にするのは極めて困難である。
【0004】
しかるに、従来の三原色用染料として使用する各染料のセルロース繊維に対する親和性は異なり、染着挙動が異なる為、染色浴比の変化に伴う濃度や色相の変化による色違いの問題が生じ、色修正・脱色修正が現場では頻繁に行われているのが現状である。その為、同一の染色浴比変化挙動を示す三原色が染色現場では強く望まれている。
又、染色浴比に伴う問題とは別に、アルカリ添加温度による色違いの問題があり実験室スケールと工場スケールでの再現性不良も起こっている。
しかしながら、前記の染色に対して、染色時間の短縮、省エネルギー、染色工程の処理操作の簡略化の目的により、染色途時での微妙且つ煩雑な薬剤添加の調整の無い合理的な染色法、また、ポリエステル繊維と木綿の混紡品においては、同一染浴で、同時に染色する効率的な一浴一段法が望まれている。この場合、反応染料に対しては、ポリエステル繊維への分散染料の染色条件下、染浴pH酸性~中性、温度100~140℃にて、分解を起こさない安定性、高い染着性を有することが求められている。この趣旨に沿った幾つかの染料が提案されており、例えば、特許文献1、特許文献2等を挙げることが出来るが、必ずしも十分な特性を有してはおらず、例えば他染料との配合染色時、色割れ、不均染の問題があるなど、配合相溶性、再現性に未だ満足のいくものではなく、安定的に高い染着性を示し再現性が良好な反応染料の開発が強く望まれている。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、下記の特許文献では様々な検討がなされているが未だ満足な結果は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-86168号公報
【特許文献2】特開平1-308460号公報
【特許文献3】特許第4130067号公報
【特許文献4】特許第4130074号公報
【特許文献5】特開2002-332423号公報
【特許文献6】特開昭55-78059号公報
【特許文献7】特開昭62-250059号公報
【特許文献8】特開平3-7769号公報
【特許文献9】特開昭60-90264号公報
【特許文献10】特開昭58-186682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の問題を解決し、セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を、再現性良く、均染性もよく、染色できる反応染料組成物及びそれを用いた染色法の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)で示される反応染料及び下記式(2)で示される反応染料からなる黄色用反応染料(Y)を含む反応染料組成物(但し、式(1)で示される反応染料と式(2)で示される反応染料の含有比率が、4:1である場合は除く。)及びそれを用いる染色方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下1)~9)に関する。
1)
下記式(1)で示される反応染料及び下記式(2)で示される反応染料からなる黄色用反応染料(Y)を含む反応染料組成物。但し、式(1)で示される反応染料と式(2)で示される反応染料の含有比率が、4:1である場合は除く。
【0010】
【化1】
【0011】
2)
下記式(3)で示される反応染料を含む赤色用反応染料(R)をさらに含む、1)に記載の反応染料組成物。
【0012】
【化2】
【0013】
3)
下記式(4)で示される反応染料及び下記式(5)で示される反応染料を含む青色用反応染料(B)をさらに含む、1)に記載の反応染料組成物。
【0014】
【化3】
【0015】
4)
前記赤色用反応染料(R)と前記青色用反応染料(B)をさらに含む、1)に記載の反応染料組成物。但し、前記黄色用反応染料(Y)に含まれる前記式(1)で示される反応染料と前記赤色用反応染料(R)と前記式(4)で示される反応染料及び前記式(5)で示される反応染料の含有比率が、4:1:0.7:0.5、及び、1:0.35:0.16:0.11、である場合は除く。
5)
前記黄色用反応染料(Y)中、前記式(1)で示される反応染料の含有率が50質量%~99質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が50質量%~1質量%である、1)~4)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
6)
前記黄色用反応染料(Y)中、前記式(1)で示される反応染料の含有率が60質量%~80質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が40質量%~20質量%である、1)~4)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
7)
前記黄色用反応染料(Y)に、さらに前記式(3)で示される反応染料からなる赤色反応染料(R)を含む、1)~6)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
8)
前記青色用反応染料(B)中、前記式(4)で示される反応染料の含有率が40質量%~60質量%であり、前記式(5)で示される反応染料の含有率が60質量%~40質量%である、3)~7)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
9)
1)~8)のいずれか一項に記載の反応染料組成物を用いてセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を染色することを含む染色方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の反応染料組成物及びそれを用いる染色方法により、染色浴比・温度の変化による色相の変化が極めて少なく、濃度、色相の再現性に優れた染色物を得ることが出来、特に、セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を再現性良く染色できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書においては実施例等を含めて、特に断りの無い限り「部」及び「%」は、いずれも質量基準である。
【0018】
前記反応染料組成物は、前記式(1)で示される反応染料及び前記式(2)で示される反応染料からなる黄色用反応染料(Y)を含む。但し、式(1)で示される反応染料と式(2)で示される反応染料の含有比率が、4:1である場合は除く。
【0019】
前記黄色用反応染料(Y)中、前記式(1)で示される反応染料の含有率が50質量%~99質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が50質量%~1質量%であることが好ましく、前記式(1)で示される反応染料の含有率が60質量%~80質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が40質量%~20質量%であることがさらに好ましく、前記式(1)で示される反応染料の含有率が60質量%を超え、かつ、75質量%以下であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が40質量%未満、かつ、25質量%以上であることが特に好ましい。
【0020】
前記反応染料組成物が、前記式(3)で示される反応染料を含む赤色用反応染料(R)をさらに含むことが好ましい様態の一つである。
【0021】
前記赤色用反応染料(R)としては、前記式(3)で示される反応染料以外に、前記式(1)で示される反応染料、前記式(2)で示される反応染料、前記式(3)で示される反応染料~前記式(5)で示される反応染料、以外の、その他の赤色用反応染料をさらに含むことが可能であり、前記赤色用反応染料(R)が前記式(3)で示される反応染料からなることが好ましい。
【0022】
前記反応染料組成物が、前記式(4)で示される反応染料及び前記式(5)で示される反応染料を含む青色用反応染料(B)をさらに含むことが好ましい様態の一つである。
【0023】
前記青色用反応染料(B)としては、前記式(4)で示される反応染料及び前記式(5)で示される反応染料以外に、前記式(1)で示される反応染料、前記式(2)で示される反応染料、前記式(3)で示される反応染料、以外の、その他の青色用反応染料をさらに含むことが可能であり、前記青色用反応染料(B)が、前記式(4)で示される反応染料及び前記式(5)で示される反応染料からなることが好ましい。
【0024】
前記青色用反応染料(B)中、前記式(4)で示される反応染料の含有率が40質量%~60質量%であり、前記式(5)で示される反応染料の含有率が60質量%~40質量%であることが好ましく、前記式(4)で示される反応染料の含有率が45質量%~60質量%であり、前記式(5)で示される反応染料の含有率が55質量%~40質量%であることがより好ましく、前記式(4)で示される反応染料の含有率が45質量%を超え、かつ、60質量%以下であり、前記式(5)で示される反応染料の含有率が55質量%未満、かつ、40質量%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
前記反応染料組成物が、前記赤色用反応染料(R)と前記青色用反応染料(B)をさらに含むことが好ましい様態の一つである。但し、前記黄色用反応染料(Y)に含まれる前記式(1)で示される反応染料と前記赤色用反応染料(R)と前記式(4)で示される反応染料及び前記式(5)で示される反応染料の含有比率が、4:1:0.7:0.5、及び、1:0.35:0.16:0.11、である場合は除く。
【0026】
前記式(1)~(5)でそれぞれ示される各反応染料が、水酸基、カルボキシル基、スルホ基を置換基として有する場合、これら置換基は、それぞれ独立に、遊離酸あるいは塩であってもよく、各反応染料分子内においてこれら置換基が複数存在するものについては、全ての置換基が遊離酸、あるいは、全ての置換基が塩、あるいは、一部置換基が遊離酸であり他の置換基が塩、のいずれであっても良い。また、全ての置換基が遊離酸、全ての置換基が塩、一部置換基が遊離酸であり他の置換基が塩、であるもののうち、2種以上が混合された状態で用いても良い。前記塩である場合、前記、水酸基、カルボキシル基、スルホ基が形成する塩の種類は特に限定されないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく、特に、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が好ましい。前記式(1)~(5)でそれぞれ示される各反応染料は、その製造過程において、塩析などによりこれらの塩の形で単離されることがある。
【0027】
本発明の反応染料組成物を含む染色液は、保存安定性、洗浄性等に優れ、また、該染色液を用いて染色した染色物は、耐光性、耐湿性、耐洗濯堅牢性、耐擦過性、耐塩素性、等に優れる。
【0028】
前記反応染料組成物を用いてセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を染色することを含む染色方法も本願発明に含まれる。
【0029】
前記染色方法において、前記式(1)~(5)で示される反応染料、及び、前記反応染料組成物中に任意に含みうる前記その他の赤色用反応染料、及び/又は前記その他の青色用反応染料、の総吸着量は、通常、繊維重量に対して0.0005~15重量%程度である。
【0030】
前記反応染料組成物は、セルロース系繊維の染色、例えば、侵染法、通常の方法によるパデイングによる連続染色法、捺染法にも適用する事が出来る。本発明の染色方法で染色しうる繊維材料としては、例えば、木綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、テンセルなどの単独または、これらの混合繊維、更にはこれらと他繊維、例えばポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、羊毛、絹、ナイロン等のポリアミド繊維等との混紡又は、交繊品を挙げることが出来る。
【0031】
前記反応染料組成物は、セルロース系繊維を含有する混合繊維として、特にポリエステル繊維と木綿の混紡品を分散染料の併用下、合理的な一浴一段染色法に極めて有用である。ポリエステル繊維と木綿の混紡品の一浴一段染色は、例えば次のように行われる。前記反応染料組成物、必要に応じ無機塩(例えば芒硝、食塩等)、pH5~9に保持する緩衝材、界面活性剤(分散剤、浸透剤等)、還元防止剤などを加え染浴を調製し、該染浴に該混紡品を浸漬し、100~140℃で20分~90分染色を行い、その後通常の方法でソーピングを実施する。
【0032】
前記反応染料組成物は、染色温度として比較的低温領域である100℃付近においても高い染着性を示すことから、通常、染浴酸性~中性、概ね100℃の温度で染色される塩基性染料によるポリアクリロニトリル繊維、酸性染料による羊毛、絹又は、ナイロンなどのポリアミド繊維とセルロース系繊維の混紡品の染色に対する一浴法の適用にも有用である。前記反応染料組成物は、前記の対象に限定されるものではなく、セルロース系繊維のみの繊維材料に対しても、同様に適用することができる。
この染色を行う際、当該繊維材料をまず、染浴にて概ね40~100℃の温度で処理した後、pH5~9に保持する程度の酸結合剤又は、緩衝材を予め一括添加し染色する、所謂オールインワン染色法を用いることが出来る。
【0033】
本発明の前記反応染料組成物を用いることにより、染色途中での微妙且つ煩雑な酸結合剤の添加に伴う、加水分解によるカラーイールドの低下、不均染、配合染色時の色割れなどの不都合を回避し、工程の効率化と共に再現性良く染色できる。
尚、染色を行う際、本発明の化合物は、単独または二種以上混合して用いることが出来る。また、前記反応染料組成物以外に所望により前記反応染料組成物以外の反応性染料、分散染料、酸性染料などを併用する事が出来る。
【0034】
前記染色方法において、使用しうる酸結合剤又は緩衝剤は特に限定されず、例えば、酸結合剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、燐酸三ナトリウム、燐酸三カリウム、ピロ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸カリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、等、緩衝剤としては、酢酸、酢酸ナトリウム、燐酸1水素ナトリウム、燐酸2水素ナトリウム、マレイン酸、ホウ砂、ホウ酸等があげられ、必要に応じ、これらを単独或いは適宜組み合わせて用いることが出来、燐酸1水素ナトリウム、燐酸2水素ナトリウムであることが好ましく、燐酸1水素ナトリウムと燐酸2水素ナトリウムを併用することが好ましい。
燐酸1ナトリウムと燐酸2ナトリウムを併用する場合、その配合割合としては、燐酸1ナトリウムの配合量をX、燐酸2ナトリウムの配合量をY、とした場合、Y/Xで表される値が、1以上6以下であることが好ましく、1を超えかつ6以下であることがより好ましく、2以上6以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の染色方法において、染色を行う際、必要に応じ公知の添加剤、例えば溶解助剤、分散剤、乳化剤、均染剤、緩染剤、キャリヤー剤、発色促進剤、沈殿防止剤、金属イオン封鎖剤、酸化又は還元防止剤などを用いることが出来る。また、本発明の化合物以外に所望により本発明の化合物以外の反応性染料、分散染料、酸性染料などを併用する事が出来る。
【0035】
前記反応染料組成物において、各反応染料の配合方法は特に限定されない。例えば、それぞれの反応染料を別々に製造しその後に配合する方法、製造時生成した各反応染料を含有した反応液を混合しその後に乾燥して組成物とする方法、染色浴にそれぞれの反応染料を溶解し染色浴中で各組成物と同じ組成とする方法などを採ることが出来る。その際に、各反応染料組成物の混合割合は所望の色調に応じて適宜調整される。また、必要に応じて、本発明の組成物中には公知の添加剤、例えば、濃度調整剤、分散剤、均染剤、沈殿防止剤、金属イオン封鎖剤、還元防止剤を含有させてもよい。
【0036】
染浴、パデイング浴、捺染糊に本発明の反応染料組成物を構成する各染料及び必要に応じて前記の添加剤などを加え、染浴などを調整して染色する場合に、各染料、添加剤などを溶解する順序は任意の順序で良い。使用する各構成成分の使用量も公知の方法を参考にして決めればよい。
【0037】
前記反応染料組成物は、セルロース繊維やそれを含有する繊維の染色に特に有用である。対象となる繊維としては、例えば、木綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等のセルロース繊維、又はこれら同士の混合繊維があげられる。更にはこれらの繊維又は混合繊維と他の繊維、例えば、ポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリアクリルニトリル繊維、羊毛、絹、ナイロンなどのポリアミド繊維等との混紡、又は交繊品等があげられる。
【0038】
前記染色方法は、例えば、それ自体は公知の下記のような方法に従って行うことが出来るが、これらに限定させるものではない。例えば、木綿等のセルロース繊維の染色においては所望の色相及び濃度に応じた本発明の反応染料組成物を染浴に加え、無機中性塩、例えば、無水芒硝、食塩等と、酸結合剤、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、苛性ソーダ、第三燐酸ナトリウム等をそれぞれ単独に又は、併用して行う。この時用いる無機中性塩や酸結合剤の使用量についても特に制限はない。また、無機中性塩や酸結合剤の染浴への投入は一度に行ってもよいし、分割して投入してもよい。染色工程終了後、水洗、湯洗の後、常法により、市販のソーピング剤を含むソーピング浴にて洗浄を行い、染色を終了する。
【実施例0039】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。実施例において特に断りがない限り、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ表す。
【0040】
実施例1~6及び比較例1~3の反応染料組成物を、下記表1~表3に記載の配合となるようそれぞれ調製した。表1~表3中の数値は、各反応染料の使用量(単位:部)を表す。なお、各表中、ハイフンは0部であることを、また、「St.」とは、浴比1:10において得られるD65視野角2°の評価における基準となる値であることをそれぞれ表わす。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
[浴比依存性試験]
(1)浴比1:10での染色
表1、表2に示す各配合組成の染料及び、無水芒硝 20部、リン酸1水素ナトリウム0.08部、リン酸2水素ナトリウム 0.42部に水を加えて全量500部の染浴を調製、染浴pH6.8~7.5に調整した。この染浴に木綿メリヤス 50部を投入し、40℃から、1℃/1分のペースで昇温、130℃に到達後、同温度で40分間染色した。次いで、水洗、湯洗の後、市販のソーピング剤(スコアロールC-1200 北広ケミカル株式会社製 1g/L)を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングの後、水洗、乾燥し染色物を得た。
(2)浴比1:40での染色
表1、表2に示す各配合組成の染料及び、無水芒硝 30部、リン酸1水素ナトリウム0.32部、リン酸2水素ナトリウム 1.68部に水を加えて全量2000部の染浴を調製、染浴pH6.8~7.5に調整した。この染浴に木綿メリヤス 50部を投入し、40℃から、1℃/1分のペースで昇温、130℃に到達後、同温度で40分間染色した。次いで、水洗、湯洗の後、市販のソーピング剤(スコアロールC-1200 北広ケミカル株式会社製 1g/L)を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングの後、水洗、乾燥し染色物を得た。
(3)判定方法
浴比1:10で得られた染色物を基準に浴比1:40で得られた染色物の色相差を測色機カラーアイ CE7100(マクベス社製)、D65光源下、視野角2°、色相a*b*を測定した。得られたL*a*b*の値から浴比1:10と1:40における色差△Eabを下記(式A)から求めた。その結果を表1に示した。△Eabの値は0に近いほど優れ、0.6以下であれば著しく優れた水準であり、染料の親和性が一致していることを示し、均一に染色することができるため極めて有用であることを示している。
式(A)
△Eab=[(△L*)+(△a*)+(△b*)1/2
【0045】
反応染料の配合組成
実施例7~9及び比較例4~6の反応染料組成物を、下記表4、表5に記載の配合となるようそれぞれ調製した。表4、表5中の数値は、各反応染料の使用量(単位:部)を表す。なお、各表中、ハイフンは0部であることを表わす。また、表4、表5中、固着率(%)は、式(1)の色素と式(2)の色素、式(3)の色素、式(4)の色素と式(5)の色素、の3つについてそれぞれ示した。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
[温度依存性、固着率試験]
(1)各温度における染色
表4、表5に示す各配合組成の染料及び、無水芒硝20部、リン酸1水素ナトリウム0.08部、リン酸2水素ナトリウム0.42部に水を加えて全量500部の染浴を調製、染浴pH6.8~7.5に調整したものを各配合組成につきそれぞれ8つの染浴を準備した。これらの染浴にそれぞれ木綿メリヤス50部を投入し、40℃から、1℃/1分のペースで昇温し、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃の各温度到達時、及び、130℃×10分経過時、130℃×40分経過時に、それぞれ染浴から木綿メリヤスを取り出し、各温度における染色を行った。次いで、水洗、湯洗の後、市販のソーピング剤(スコアロールC-1200北広ケミカル株式会社製1g/L)を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングの後、水洗、乾燥し各染色物を得た。
(2)判定方法
各温度で得られた染色物を130℃、40分間処理して得た染色物を基準に測色機カラーアイCE7100(マクベス社製)、D65光源下、視野角2°、波長420nm、540nm、620nmの反射率(%)を測定した。130℃で40分処理して得た染色物の各波長の反射率を固着率の基準100%として、その結果を表4及び5に示した。各温度での値が近似していれば著しく優れた水準であり、染料の反応性が一致していることを示し、均一に染色することができるため極めて有用であることを示している。「各温度での値の近似」は、各染色物について、各温度における前記固着率(%)間の標準偏差(STDEV.P)の値で示し、2.5未満であると均一な染色ができ、実用性に優れる。
【0049】
実施例7、8、9の組み合わせで染色を行った場合、赤色用反応染料、青色用反応染料、及び黄色用反応染料の親和性が一致しており、浴比が大きく変動した場合でも色相変化が極めて小さく、また反応性が一致しているため、温度による固着率が極めて一致しており、染色再現性が極めて優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願の反応染料組成物は、染色再現性と染色均一性を兼ね備えており、優れた印刷物の提供を可能とすることが分かる。