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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081284
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】脱離用プライマー組成物及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 109/00 20060101AFI20230602BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20230602BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230602BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230602BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230602BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C09D109/00
B32B7/06
B32B7/12
C08L9/00
C09D5/00 D
C09D5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146374
(22)【出願日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2021194574
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】冨浦 伊武樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 京平
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK29B
4F100AK29G
4F100AT00
4F100BA03
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46G
4F100EJ422
4F100EJ42B
4F100EJ42G
4F100GB15
4F100HB31C
4F100JK06B
4F100JL14B
4F100JL14G
4J002AC021
4J002AC031
4J002AC101
4J002BL011
4J002GF00
4J002GH00
4J002GJ00
4J002GT00
4J038CA021
4J038NA10
4J038PB04
(57)【要約】
【課題】使用時に確実に基材と印刷層を結合させることができ、かつ使用後に基材から印刷層をより簡単に、かつその後に印刷層を脱離液から分離脱離しやすくすること。
【解決手段】樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層の順に形成される印刷物の該脱離用プライマー層を形成するための、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層の順に形成される印刷物の該脱離用プライマー層を形成するための、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物。
【請求項2】
ポリブタジエン系化合物が、水酸基含有ポリブタジエン化合物及び/又はカルボキシル基含有ポリブタジエン化合物である請求項1に記載の脱離用プライマー組成物。
【請求項3】
樹脂基材上に、請求項1又は2に記載の脱離用プライマー組成物から形成された脱離用プライマー層を形成し、脱離用プライマー層上に印刷層が形成されてなる印刷物。
【請求項4】
樹脂基材上に、請求項1又は2に記載の脱離用プライマー組成物から形成された脱離用プライマー層を形成し、脱離用プライマー層に接着剤層を介して紙層を形成し、紙層上に印刷層が形成されてなる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱離用プライマー組成物及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、菓子、生活雑貨、ペットフード等には意匠性、経済性、内容物保護性、輸送性等の点から、各種プラスチックフィルムを使用した包装材料が使用されている。また、多くの包装材料には、消費者へアピールする意匠性、メッセージ性の付与を意図してグラビア印刷やフレキソ印刷が施されている。
そしてこれらの包装材料を得るために、包装材料の基材フィルムの表面に印刷される刷りっぱなし印刷、あるいは包装材料の基材フィルムの表面に印刷した印刷面に必要に応じて接着剤やアンカー剤を塗布し、フィルムにラミネート加工を施すための印刷が行われる。
フィルムにラミネート加工を施すための印刷では、ポリエステル、ナイロン、アルミニウム箔等の各種フィルム上に色インキ組成物、白インキ組成物を順次印刷後、該白インキ組成物の印刷層上に、接着剤を用いたドライラミネート加工や、アンカーコート剤を用いたエクストルージョンラミネート加工等によりヒートシールを目的としたポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等が積層されている(特許文献1参照)。
【0003】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品は海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類等の海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮される。そうすれば当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念される。
【0004】
このような問題を改善するためにマイクロプラスチックを減らす様々な取り組みの1つして、印刷インキ組成物を積層した積層体から、積層体のプラスチック基材を脱離するリサイクル方法が提案されている。積層体プラスチック基材を脱離する方法としては、脱離用インキ組成物(例えば、特許文献2参照)、脱離用接着剤(例えば、特許文献3参照)、脱離用アンカーコート剤等(例えば、特許文献4~6参照)、脱離液(例えば、特許文献7参照)が提案されている。
しかし、これらの方法では、脱離液として、温水で脱離させることは十分ではなく、ラミネート印刷インキ組成物で使用する場合は、ラミネート適性が不十分である問題を有していた。
また、基材フィルムに、接着剤を塗布し、紙基材を結合させたラミネート紙の紙基材側に印刷が施される積層体もあるが、紙基材の脱離処理後も基材フィルムに接着剤が残存する問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-97959号公報
【特許文献2】特許第6631964号公報
【特許文献3】特許第6642688号公報
【特許文献4】特許第6388131号公報
【特許文献5】特開2020-175620号公報
【特許文献6】国際公開2021-090690号公報
【特許文献7】特許第6690806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、使用時に確実に基材と印刷層を結合させることができ、かつ使用後に基材から印刷層をより簡単に、かつその後に印刷層を脱離液から分離脱離しやすくすることを課題とする。また、本発明は、基材フィルムに接着層を介し紙基材を積層した積層体の基材フィルムから接着層を分離脱離しやすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、下記の脱離用プライマー組成物及び印刷物とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、以下の本発明とするに至った。
1.樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層の順に形成される印刷物の該脱離用プライマー層を形成するための、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物。
2.ポリブタジエン系化合物が、水酸基含有ポリブタジエン化合物及び/又はカルボキシル基含有ポリブタジエン化合物である1に記載の脱離用プライマー組成物。
3.樹脂基材上に、1又は2に記載の脱離用プライマー組成物から形成された脱離用プライマー層を形成し、脱離用プライマー層上に印刷層が形成されてなる印刷物。
4.樹脂基材上に、1又は2に記載の脱離用プライマー組成物から形成された脱離用プライマー層を形成し、脱離用プライマー層に接着剤層を介して紙層を形成し、紙層上に印刷層が形成されてなる印刷物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用時に確実に基材と印刷層を結合させることができ、かつ使用後に基材から印刷層をより簡単に、かつその後に印刷層を脱離液から分離脱離しやすくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、以下の事項を基礎とする発明であり、各種の印刷方式や、各種用途の印刷物に使用できる。なお、本願明細書において、本発明の脱離用プライマー組成物を、単に「プライマー組成物」と記載するときがある。
本発明は、脱離用プライマー層として、特定の組成のものを採用することに意義を有するものである。
【0010】
[脱離用プライマー組成物]
本発明の脱離用プライマー組成物は、樹脂基材表面と印刷層の間に位置するように設けられるプライマー層形成用組成物である。そして印刷物を使用した後に再利用を行うにあたり、印刷物用の樹脂基材である樹脂フィルム等とその上に形成された印刷層とを分離し、印刷層を樹脂基材から脱離させるための脱離用プライマー組成物である。
本発明は脱離用プライマー組成物であるため、例えば、樹脂基材上に形成した印刷面に、更にアンカーコート層を形成し、その上に樹脂フィルム等をラミネートする際の、アンカーコート剤とはその用途及び求める性質において異なる。
本発明の脱離用プライマー組成物は、印刷基材に対して、印刷インキ組成物を印刷する前に、予めプライマー層を形成させておくための組成物である。
脱離用プライマー組成物はポリブタジエン系化合物を含有する。脱離用プライマー組成物は、水性の組成物であることが好ましい。水性とするため、かつ密着性を向上させるために、ポリブタジエン化合物に、水酸基やカルボキシル基を導入したものが好ましい。なお、ポリブタジエン化合物は架橋されていないことが脱離性を発揮する上で好ましい。
また、本発明の脱離用プライマー組成物は、水と、アルコールとして、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールの1種以上を混合してなる溶剤を基礎とすることが好ましい。
本発明の脱離用プライマー組成物としては、EL-451(東洋モートン社)、チタボンドT-180E、(日本曹達社)等が挙げられる。これらはアンカーコート剤として使用されるときがある。アンカーコート剤とするときには基材に対して、別の組成のものを積極的に接着等させて一体化することのみを目的とする。しかしながら、本発明はポリブタジエン系化合物が単にアンカーコート剤として機能するのではなく、相反する性質である、脱離性とプライマー組成物としての接着性を共に備えたものである。
印刷基材上のポリブタジエン系化合物の固形分の塗布量としては、0.010g/m以上が好ましく、0.015g/m以上がより好ましく、0.020g/m以上が更に好ましい。また0.400g/m以下が好ましく、0.300g/m以下がより好ましく、0.200g/m以下が更に好ましく、0.100g/m以下が最も好ましい。
なお、脱離用プライマー組成物はポリオレフィン樹脂粒子、無機金属塩や有機金属塩を含有しても良く、含有しなくても良い。
【0011】
<脱離用プライマー組成物の製造法)
脱離用プライマー組成物は、ポリブタジエン系化合物に溶剤を加え撹拌することにより得ることができる。上記溶剤としては、水に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールの等のアルコールを1種以上加えた混合物を利用できる。
【0012】
[樹脂基材]
本発明における樹脂基材として、表面に印刷を行うことができる公知の樹脂からなる基材を採用できる。そのような樹脂基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド等の樹脂フィルム、アルミニウム等の金属層を有する上記樹脂フィルム、透明蒸着層を有する上記樹脂フィルム、収縮性ポリプロピレンフィルム(特に収縮性未処理ポリプロピレンフィルム)、収縮性ポリ塩化ビニルフィルム、収縮性ポリエチレンフタレートフィルム等の収縮性プラスチックフィルム等を採用できる。
ただし、樹脂基材として、熱可塑性樹脂層とエチレン系樹脂層を有する積層体を採用しても良く、採用しなくても良い。
このような樹脂基材としては、下記における公知のラミネート用の基材となる樹脂フィルム、表刷り用やシュリンク印刷用樹脂フィルム、紙基材にラミネートされた樹脂フィルム等を採用できる。
さらに、基材に脱離用プライマー組成物層を介して印刷インキ組成物層を形成した後、その印刷層上に本発明中の脱離用プライマー組成物を塗布し、ドライラミネート法又は押出しラミネート法によりシーラント層を形成させても良い。
【0013】
[印刷形式]
本発明の脱離用プライマー組成物は、樹脂基材を対象にして印刷を行う方式において、樹脂基材表面と印刷層の間に脱離用プライマー層が位置するように形成される。そして、裏刷り印刷、表刷り印刷、シュリンク印刷等において使用される。また、樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層の順に形成される印刷物においては、任意のそれらの層の間、又は印刷物の表面に、更に公知の任意の層を形成しても良い。樹脂基材、脱離用プライマー層、接着剤層及び紙層を形成する際にも、任意のこれらの層の間、又は得られた積層体の表面に、更に公知の任意の層を形成しても良い。
また、基材フィルムに、接着剤を塗布し、紙基材を結合させたラミネート紙の紙基材側表面に印刷を行う方式において、基材フィルムと接着層の間に脱離用プライマー層が位置するように形成される。
以下、本発明の脱離用プライマー組成物が使用される印刷形式を、裏刷り印刷、表刷り印刷、シュリンク印刷、基材フィルムに接着剤を塗布し、紙基材を結合させたラミネート紙の紙基材側への印刷(以下「ラミネート紙の紙基材側への印刷」というときがある)の順に説明する。
【0014】
(顔料)(裏刷り印刷インキ組成物、表刷り印刷インキ組成物及びシュリンク印刷インキ組成物に共通して含有できる成分)
本発明のプライマー組成物が使用される印刷にて、印刷インキ組成物が含有する顔料としては、従来から使用されている無機及び有機顔料のうちの1種以上を使用できる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、体質顔料としては、シリカ粒子、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等を挙げることができる。なかでも白色顔料として酸化チタンを使用することが好ましい。
有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環系顔料等を挙げることができる。
これら顔料の印刷インキ組成物中での含有量は、通常1~50質量%程度である。
【0015】
(基材フィルムに、接着剤を塗布し、紙基材を結合させたラミネート紙の紙基材側に印刷するインキ組成物に使用する顔料)
紙基材側に印刷するインキ組成物に使用する顔料としては、従来からフレキソ印刷インキ組成物に使用している顔料が使用できる。
具体的には、無機顔料として、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミニウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料を挙げることができる。また、有機顔料として、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。上記顔料は、1種でも2種以上でも用いることができる。
上記顔料のフレキソ印刷インキ組成物中での濃度は5~60質量%であり、通常有機顔料の場合は、6~35質量%、無機顔料の場合は、30~60質量%である。
【0016】
[印刷層]
<<裏刷り印刷>>
裏刷り用の印刷インキ組成物は、上記顔料に加えて、バインダー樹脂及び各種の添加剤を含有する。
<バインダー樹脂>
裏刷り印刷インキ組成物に含有されるバインダー樹脂としては、ポリウレタン樹脂を含む。好ましくは、印刷インキ組成物の安定性、接着性及びラミネート適性の点からアミン価を有するポリウレタン樹脂を含む。
【0017】
(ポリウレタン樹脂)
上記ポリウレタン樹脂としては、酸変性されていないポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されているポリウレタン樹脂を含有してもよい。酸変性されていないポリウレタン樹脂とは、分子末端及び/又は分子内のその他の箇所にカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基を有しないポリウレタン樹脂である。酸変性されているポリウレタン樹脂としては、分子末端及び/又は分子内のその他の箇所にカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基を有するポリウレタン樹脂である。
酸変性されたポリウレタン樹脂をビヒクルとしたインキ組成物で形成されたとしても、酸変性されていないポリウレタン樹脂等の本来脱離が困難な樹脂をビヒクルとしたインキ組成物で形成されたとしても、印刷層は樹脂基材から円滑に脱離できる。
【0018】
このようなポリウレタン樹脂として、印刷インキ組成物で一般的に用いられているポリウレタン樹脂を使用できる。
中でも、印刷インキ組成物の経時安定性、接着性及びラミネート適性の点からみて、アミノ基を有する(アミン価を有する)ポリウレタン樹脂が好ましい。アミノ基を有するポリウレタン樹脂の中でも、分子の末端に第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基から選ばれる1種以上、特に分子の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上を有するポリウレタン樹脂がより好ましい。
更に好ましくは、水酸基を有し、及び分子の末端に第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基から選ばれる1種以上を有するポリウレタン樹脂である。
ポリウレタン樹脂は、上記アミノ基のような特定の官能基を有することで、裏刷り用印刷インキ組成物が優れた印刷適性及び接着性を有することになる。
上記ポリウレタン樹脂のアミン価は、1.0~15.0mgKOH/gであることが好ましく、2.0~8.0mgKOH/gであることがより好ましい。上記アミン価が1.0mgKOH/g未満であると、本発明のフィルム用印刷インキ組成物のフィルムに対する接着性が低下し、更に、ラミネート適性が低下する可能性があり、上記アミン価が15.0mgKOH/gを超えると、耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
なお、本発明において、上記アミン価は固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(例えば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM-900、BURET B-900、TITSTATION K-900)、平沼産業社)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
また、ポリウレタン樹脂は、再溶解性の点から分子末端及び分子末端以外の部位に水酸基を有することが好ましい。
【0019】
(酸変性されていないポリウレタン樹脂)
酸変性されていないポリウレタン樹脂としては、ポリウレタンポリウレア樹脂、及び/又はポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られるポリウレタンポリウレア樹脂が好ましい。
ポリウレタンポリウレア樹脂は、有機ジイソシアネート成分と高分子ジオール成分から得たウレタンプレポリマーを、鎖伸長及び/又は末端停止させてポリウレタンポリウレア樹脂としたものである。
そして、ケチミン化された化合物を使用して得られるポリウレタンポリウレア樹脂は、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤として、a.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を、ウレタンプレポリマーと反応させて得られたポリウレタンポリウレア樹脂、b.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を、ウレタンプレポリマーに加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂、のa及び/又はbを使用することにより裏刷り印刷インキ組成物のアミン臭気が低下し、経時安定性が優れる。
ポリウレタンポリウレア樹脂は、環境面を考慮するとバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を含有していてもよい。
【0020】
(酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂)
酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂は、分子の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上を有する。
更に好ましくは、水酸基を有し、及び分子の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上を有する酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂である。
これらのポリウレタンポリウレア樹脂としては、有機ジイソシアネート化合物と、高分子ジオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、これに下記の鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を好適に使用できる。
【0021】
(ウレタンプレポリマーの合成)
上記の各ウレタンプレポリマーは、以下の有機ジイソシアネート化合物と、高分子ジオール化合物を反応して得る。
【0022】
(有機ジイソシアネート化合物)
上記有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート(水添MDI)等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられる。これらの有機ジイソシアネート化合物は、1種又は2種以上を混合して使用できる。中でも脂環族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物及び芳香脂肪族ジイソシアネート化合物がより好ましい。
【0023】
また、その他の有機ジイソシアネート化合物として、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4-ジイソシアナトビフェニル、3,3-ジメチル-4,4-ジイソシアナトビフェニル等の芳香族ジイソシアネート化合物、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)等の脂環族ジイソシアネート化合物、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物も利用できる。
その他の有機ジイソシアネート化合物を併用する場合には、全有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基数の合計に対して、その他の有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基の数が50%以下となるように併用できるが、より好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である。
又は全有機ジイソシアネート化合物100質量部中、その他の有機ジイソシアネート化合物を50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0024】
(高分子ジオール化合物)
上記高分子ジオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上を縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等が挙げられる。これらの高分子ジオール化合物は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
更に上記高分子ジオール化合物に加えて、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を1種又は2種以上混合して併用することもできる。
【0025】
また、上記高分子ジオール化合物としては、数平均分子量が1,000~8,000のものが好ましく、1,000~5,500のものがより好ましく、1,000~4,000のものが更に好ましい。
また、上記高分子ジオール化合物としては、3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールを含有するものを選択できる。
このとき、その他の高分子ジオール化合物として、下記のものを併用することができる。
3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール以外の高分子ジオール化合物としては、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上とを縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物、更に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物等が挙げられる。これらの高分子ジオール化合物を、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0026】
上記の中でも、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールを縮合反応させて得られた数平均分子量が1,000~8,000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールが好ましく、更に数平均分子量1,000~4,000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールが好ましい。
その他の高分子ジオール化合物を併用する場合には、全高分子ジオール化合物の水酸基数の合計に対する、その他の高分子ジオール化合物の水酸基の数が70%以下となるように併用できるが、より好ましくは55%以下、更に好ましくは40%以下である。
又は全高分子ジオール化合物100質量部中、その他の高分子ジオール化合物を50質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
なお、裏刷り用印刷インキ組成物の有機溶剤が、後述するエステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤系(以下場合により「混合液」という。)を用いる場合には、高分子ジオール化合物としてポリエーテルジオール化合物、好ましくはポリプロピレングリコールを使用すると、得られるポリウレタン樹脂の溶解性が高くなる傾向があり、また、階調再現性、かぶり防止性等の印刷適性が良好となる傾向があり、必要とする性能に合わせて幅広く印刷インキ組成物の設計が可能となる点で好ましい。
【0027】
(酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、環境面を考慮すると酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を含有していてもよい。酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂について以下に説明する。なお、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂の説明のうち、上記した酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂と共通する説明は適宜省略する。
酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂は、バイオマス由来(植物由来)の成分を含むポリウレタン樹脂である。酸変性されていないバイオマスポリウレタン樹脂は、他の枯渇性資源を用いる場合と比較して地球温暖化防止や環境負荷低減の点で貢献できる。そして、バイオポリエステルポリオール化合物と有機ジイソシアネート化合物との反応によりバイオマスウレタンプレポリマーを合成し、これに必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂であることが好ましく、イソシアネート化合物が植物由来のバイオイソシアネートであることがより好ましい。
【0028】
(イソシアネート化合物)
上記酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂で説明した有機ジイソシアネート以外に植物油由来のジイソシアネートを使用できる。植物油由来の有機ジイソシアネート化合物としては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化、還元することで末端アミノ基に変換し、更に、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。植物由来のバイオポリイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のイソシアネート化合物を得ることができる。例えば、リジンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0029】
(バイオポリエステルポリオール化合物)
以下、バイオポリエステルポリオール化合物(バイオマスポリエステルポリオール)について説明する。
環境面を考慮して、バイオポリエステルポリオール化合物の中でも、上記のその他の高分子ジオール化合物として、植物由来の成分を含む材料から合成して得たバイオポリエステルポリオール化合物を併用しても良い。
また、バイオポリエステルポリオール化合物を含むポリエステルポリオール化合物と、上記の特定のイソシアネート化合物との反応により得た酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂を、本発明中の酸変性していないポリウレタンポリウレア樹脂に混合して使用することもできる。
このため、上記のバイオポリエステルポリオール化合物として、炭素数が2~4の短鎖ジオール化合物と、カルボン酸化合物とを反応させたバイオポリエステルポリオールを採用できる。バイオポリエステルポリオール成分は、短鎖ジオール化合物及びカルボン酸化合物のうち、少なくともいずれか一方が植物由来であることがより好ましく、両方が植物由来であることが更に好ましい。
植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール化合物は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール化合物は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等であってもよい。これらは併用されてもよい。
1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造され得る。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール成分は、EO製造法の1,3-プロパンジオール成分と比較して、安全性の面で優れており、乳酸等有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによってコハク酸を得て、これを水添することにより製造され得る。また、エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造され得る。
【0030】
植物由来のカルボン酸化合物は特に限定されない。一例を挙げると、カルボン酸化合物は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸等である。これらは併用され
てもよい。これらの中でも、カルボン酸化合物は、セバシン酸、コハク酸及びダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。またセバシン酸100質量部に対して、リンゴ酸を0.05~0.5質量部含有しても良い。
バイオポリエステルポリオール化合物は、植物由来の短鎖ジオール化合物と植物由来のカルボン酸とを、適宜縮合反応させて、100%植物由来のバイオポリエステルポリオールとして生成される。具体的には、植物由来のセバシン酸と、植物由来の1,3-プロパンジオールとを直接脱水縮合させて、ポリトリメチレンセバケートポリオールが得られる。また、植物由来のコハク酸と、植物由来の1,4-ブタンジオールとを直接脱水縮合して、ポリブチレンサクシネートポリオールが得られる。
これらの各バイオポリエステルポリオール化合物を1種以上使用してもよい。
これらの植物由来の成分を使用して得られたウレタンプレポリマーは、全ウレタンプレポリマー中、固形分換算で、10質量%以上含まれても良く、40質量%以上含まれても良い。
【0031】
(鎖伸長剤及び反応停止剤)
次に、上記酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、上記酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂で使用する鎖伸長剤及び反応停止剤について説明する。
上記鎖伸長剤としては、印刷インキ組成物用バインダーとしてのポリウレタンポリウレア樹脂で利用される既知の鎖伸長剤が利用可能であり、例えば、ポリアミン化合物の中でも、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(アミノエチルエタノールアミン)、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物が挙げられる。
更に、ポリウレタンポリウレア樹脂がゲル化しない範囲で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン化合物を併用することができる。
ポリウレタンポリウレア樹脂の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基を導入する反応停止剤としては、ポリアミン化合物として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(アミノエチルエタノールアミン)、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等を例示できる。この中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等の第1級アミノ基を有するポリアミンが好ましい。
ポリウレタンポリウレア樹脂に水酸基を導入する反応停止剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類が例示できる。また、既知の反応停止剤であるモノアミン化合物、モノアルコール化合物が利用可能であり、具体的には、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、エタノール等のモノアルコール類を例示することができる。
【0032】
上記酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂の製造方法としては、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法がそのまま使用できる。また、それぞれの成分の質量平均分子量や化学構造、また当量比が異なると、得られるポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜組み合わせることによって、印刷適性やラミネート適性を調節することが可能である。
上記酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂の質量平均分子量としては、10,000~70,000であることが好ましく、更に20,000~60,000であることがより好ましい。
更に、適度な柔軟性とラミネート強度を高めるため、上記ポリウレタン樹脂として、ウレア結合を有しない質量平均分子量は1,000~70,000のポリウレタン樹脂を配合することもできる。
【0033】
(有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応)
また、上記有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物を反応させる際の、それぞれの使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、通常、1.2:1.0~3.0:1.0、より好ましくは1.3:1.0~2.0:1.0となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟な酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂になる傾向があり、印刷インキ組成物を印刷した時に耐ブロッキング性等が低い可能性があり、この場合、他の硬質の樹脂と併用することが必要となる場合がある。
【0034】
本発明にて使用される酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を得るための有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応時において、触媒を使用することができる。
中でも有機金属系化合物を使用することが好ましく、このような有機金属系化合物として、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、及びブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン化合物、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫アセテート、トリブチル錫クロライド、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2-エチルヘキサン酸錫等の錫化合物、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛化合物、更に、2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム等がある。そして、これらの中でもテトラブチルチタネート等のチタン化合物が好ましい。
また3級アミン化合物を使用でき、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、及び1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)を使用することができる。
【0035】
(ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂)
ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂は、上記の鎖伸長剤及び/又は反応停止剤のうち、ポリアミン化合物を予め過剰量のケトン化合物によりケチミン化してなるケチミン化合物を使用し、c.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を採用して、ウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーと反応させることにより、d.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を採用して、ウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーに加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行うことにより酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を製造して得る。特に、上記の鎖伸長剤及び反応停止剤のなかから、イソホロンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及びエチレンジアミンから選ばれる1種以上を採用することが好ましい。
ケトン化合物によりケチミン化されたポリアミン化合物は、ケトン化合物の酸素原子が、ポリアミン化合物のアミノ基の窒素原子によって置換された構造を有する。
また、使用するケトン化合物としては、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトンが好ましい。
このケチミン化反応においてはケトン化合物以外の溶媒を使用しないことが好ましい。
但し、ケトン化合物以外の溶媒として、アルコール化合物を使用できる。なかでもイソプロピルアルコールを使用できる。
この、ケトン化合物以外の溶媒を使用しないことは、無溶剤条件下でケチミン化すると定義する。なお、その後の鎖伸長反応や、酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂及び酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂が臭気を有しないという点を阻害しない範囲で、無溶剤条件下ではなく、極性有機溶媒を配合しても良い。
本発明は、ケチミン化された、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤を使用して上記c又はdの方法で鎖伸長や反応停止をさせる工程を経て得た酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂及び酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を含有する印刷インキ組成物であってもよく、その印刷インキ組成物及び印刷された印刷物はアミン臭を発生させない。また、印刷面に対して、押出ラミネート等の手段によりラミネートしたときの剥離強度を高くする効果を奏する。
なお、ケチミン化されたアミン等は鎖伸長剤として使用してもよく、反応停止剤として使用してもよく、鎖伸長剤と反応停止剤の双方として使用してもよい。
【0036】
<ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂の合成>
有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応により得られたウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーに対して、ポリアミン化合物を予め過剰量のケトン化合物によりケチミン化してなるケチミン化合物を使用し、e.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を採用し、ウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーと反応させることにより、f.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を採用し、ウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーに加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行うことにより、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を得ることができる。
反応の際に溶媒を使用するときには、エステル系溶媒及び/又はアルコール系溶媒が好ましく、エステル系溶媒とアルコール系溶媒の混合物がより好ましく、酢酸プロピルとイソプロピルアルコールが更に好ましく、質量比で、酢酸プロピル:イソプロピルアルコール=1:1~5:1の範囲が最も好ましい。
【0037】
(酸変性されたポリウレタン樹脂、酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂)
本発明におけるポリウレタン樹脂として、酸変性されたポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂も採用できる。上記の酸変性されていないポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されていないバイオマスポリウレタン樹脂と共に使用してもよく、酸変性されたポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂のみ、又は酸変性されていないポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されていないバイオマスポリウレタン樹脂のみを使用しても良い。
酸変性されたポリウレタン樹脂、酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂を構成する高分子ジオール化合物として、前記高分子ジオール成分と無水ピロメリット酸などの四塩基酸無水物を反応させるか、あるいは、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸等を開始剤として、ラクトン類を開環重合して得られる遊離のカルボキシル基を有する高分子ジオール化合物を使用するか、ポリウレタン樹脂を構成する高分子ジオール化合物とともにジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸等のヒドロキシカルボン酸を使用することにより、従来公知の方法で得られるものを使用する事ができる。酸変性されたポリウレタン樹脂、酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂の酸価70mgKOH/g以下が好ましい。
【0038】
(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体)
裏刷り用印刷インキ組成物に配合しても良い塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体としては、従来、グラビア印刷インキ組成物に使用されている塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーを必須成分とし、必要に応じて、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等の脂肪酸ビニルモノマー、水酸基等の官能基を有するモノマーを共重合成分として、公知の方法で製造したものが使用できる。
水酸基を有する塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体は、酢酸エステル部分の一部をケン化すること、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを導入することにより得られる。
酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られた水酸基を有する塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体の場合では、分子中の塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式1)、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式2)、及び酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位(下記式3)の比率により樹脂の皮膜物性や溶解挙動が決定される。すなわち、塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位は樹脂皮膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位は接着性や柔軟性を付与し、酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位は環境に配慮した印刷インキ組成物の有機溶剤系への良好な溶解性を付与する。
式1 -CH2-CHCl-
式2 -CH2-CH(OCOCH3)-
式3 -CH2-CH(OH)-
【0039】
なお、裏刷り用印刷インキ組成物で使用する、後記の有機溶剤に対する溶解性や印刷適性の点から、上記塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体は、分子内に各種官能基を有していても良い。
また、上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤が使用されるときは、上記塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体は、50~200mgKOH/gの水酸基を有していることが好ましい。このような塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体の市販品としては、例えば、ソルバインA、AL、TA5R、TA2、TA3、TAO、TAOL等を使用することが好ましい。
【0040】
(塩化ビニル・アクリル系共重合体)
裏刷り用印刷インキ組成物に配合できる塩化ビニル・アクリル系共重合体は、塩化ビニルとアクリルモノマーの共重合体を主成分とするものであり、共重合体の形態は特に限定されない。例えば、アクリルモノマーはポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト共重合されていても良い。
【0041】
アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有するアクリルモノマー等を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
【0042】
水酸基を有するアクリルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。
また、アクリルモノマーとして、水酸基以外の官能基を有するアクリルモノマーを用いることもできる。水酸基以外の官能基の例としてはカルボキシル基、アミド結合基、アミノ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
上記塩化ビニル・アクリル系共重合体は、質量平均分子量が10,000~70,000であることが好ましい。
また、上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤への溶解性、基材に対する接着性の点から、上記塩化ビニル・アクリル系共重合体は、50~200mgKOH/gとなるように水酸基を有していることが好ましい。
【0043】
裏刷り用印刷インキ組成物は、ポリウレタン樹脂と(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)とを、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)=95/5~45/55(質量比)で含有することができ、好ましくは92/8~70/30である。
なお、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体)では90/10~75/25の範囲としても良く、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・アクリル系共重合体)では95/5~85/15の範囲としても良い。
そして、95/5~45/55の割合で、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体とを含有することで、裏刷り用印刷インキ組成物は、フィルムに対する更に優れた印刷適性及び接着性を有することとなる。更に、ラミネート加工が行われる場合、より優れたラミネート適性を有することとなる。
上記ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)が95/5を超える場合、(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)の割合が少なくなる可能性があり、また、上記フィルムに対する接着性が不十分となる。
一方、上記ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)が45/55を下回る場合、(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)の割合が多くなり、印刷インキ組成物を用いて形成する印刷物が硬くなり、やはり上記フィルムに対する接着性が不十分となる可能性がある。
【0044】
また、裏刷り用印刷インキ組成物中の、上記ポリウレタン樹脂及び塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体を合わせた含有量は、5~30質量%が好適である。
また、裏刷り用印刷インキ組成物には、本発明の目的とする性能を低下させない範囲で、密着性向上剤及びブロッキング防止剤から選ばれる1種以上を含有でき、好ましくは、密着性向上剤とブロッキング防止剤を併用することが好ましい。
【0045】
(密着性向上剤)
裏刷り用印刷インキ組成物に配合できる密着性向上剤としては、ロジン及びその誘導体、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂等が例示でき、ロジン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上、より好ましくは2種以上を含有させることが望ましい。
【0046】
(ロジン及びその誘導体)
ロジンとしては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。一般的にロジンは松から得られる琥珀色、無定形の樹脂であり、天然から得られるため混合物であるが、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸という構成成分ごとに単離して用いても良く、本発明ではこれらもロジンと定義する。
ロジン誘導体は、上記のロジンを変性してなる化合物であり、具体的に以下に列挙する。
(1)水素化ロジン:共役二重結合に水素を付加(水素添加)させて、耐候性を向上させたロジンである。
(2)不均化ロジン:不均化とは、二分子のロジンが反応し、共役二重結合を持った二分子のアビエチン酸が、一方は芳香族へ、もう一方は単独二重結合の分子へとなる変性である。一般に水添ロジンよりは耐候性が劣るが、未処理のものよりは耐候性が向上する。
(3)ロジン変性フェノール樹脂:メインバインダーとしてロジン変性フェノール樹脂が使われることがある。ロジン変性フェノール樹脂は公知の製造法で得ることができる。
(4)ロジンエステル:ロジンから誘導されるエステル樹脂であり、古くから粘着・接着剤の粘着付与剤(タッキファイヤー)として用いられる。
(5)ロジン変性マレイン酸樹脂:ロジンに無水マレイン酸を付加反応させたもので、必要に応じてグリセリン等の水酸基含有化合物を、無水酸基とエステル化させグラフトさせたものも含まれる。
(6)重合ロジン:天然樹脂のロジンから誘導される二量化された樹脂酸を含む誘導体である。
その他、公知のロジン、ロジン誘導体も用いることが可能であり、これらは単独だけでなく併用することができる。
更に、ロジン及びそのロジン誘導体の酸価は120mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が120mgKOH/g以上であると、ラミネート強度が向上する。更に好ましくは酸価が160mgKOH/g以上である。また、ロジン及びその誘導体を配合する際の合計使用量は、裏刷り用印刷インキ組成物の固形分質量%で、0.1~3.0質量%が好ましい。
【0047】
(塩素化ポリプロピレン)
塩素化ポリプロピレンとしては、塩素化度が20~50のものが使用できる。塩素化度が20未満の塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤との相溶性が低下する傾向がある。一方、塩素化度が50を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、フィルムに対する接着性が低下する傾向がある。なお、本発明において、塩素化度は、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%で定義される。また、塩素化ポリプロピレンは、質量平均分子量が5,000~200,000の変性された又は未変性の塩素化ポリプロピレンであることが好ましい。質量平均分子量が5,000未満の場合、塩素化ポリプロピレンは、接着性が低下する傾向がある。一方、質量平均分子量が200,000を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤への溶解性が低下する傾向がある。また、塩素化ポリプロピレンを配合する際の使用量は、裏刷り用印刷インキ組成物の固形分質量%で、0.1~3.0質量%が好ましい。
【0048】
(ダンマル樹脂)
ダンマル樹脂は、ダマール、ダンマーとも表記され、植物由来の天然樹脂の一種である。詳細には、マレーシア、インドネシア等東南アジアに生育するフタバガキ科又はカンラン科植物から得られる天然樹脂の一種である。使用する際には適当な有機溶剤に溶解させてワニスとする。ダンマル樹脂は塩素を含有しないため、印刷インキ組成物に塩素化ポリプロピレンを使用する場合に比べ、塩素を排除・低減することができる。また、ダンマル樹脂を配合する際の使用量は、裏刷り用印刷インキ組成物の固形分質量%で、3.0質量%以下が好ましい。
【0049】
(ブロッキング防止剤)
ブロッキング防止剤としては、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、硝化綿等が例示でき、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドの1種以上、好ましくは2種以上を含有させることが好ましく、顔料の種類によって、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、硝化綿を更に含有させることが好ましい。
【0050】
<シリカ粒子>
シリカ粒子は天然産、合成品、あるいは結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のもの等が挙げられる。シリカ粒子は、平均粒子径が1.0~5.0μmのものが好ましい(なおシリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる)。シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでも良いし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでも良いが、親水性のものが好ましく、親水性シリカ粒子を含む印刷インキ組成物は重ね印刷時の印刷インキ組成物の濡れ・広がりを促し、重ね印刷効果(以下「トラッピング性」と記載する場合がある)を向上させる効果も有する。シリカ粒子使用量は、裏刷り用印刷インキ組成物中に0.0~3.0質量%が好ましく、更に好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0051】
(ポリエチレンワックス)
ポリエチレンワックスとしては平均粒子径が1.0~3.0μmの範囲のもの(なお、平均粒子径は、Honeywell社 Microtrac UPAにて測定した粒径を意味する)を使用することが好ましい。ポリエチレンワックスの粒子径が1.0μmより小さいと、すべり性、ブロッキング性が低下し、粒子径が3.0μmより大きいとトラッピング性が低下する可能性がある。また、ポリエチレンワックスの裏刷り用印刷インキ組成物中の含有量は、0.1~1.5質量%の範囲が好ましい。含有量が0.1質量%より少ないと目的とする効果が得られず、含有量が1.5質量%より多いと、光沢が低下する可能性がある。
【0052】
(硝化綿)
硝化綿としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている硝化綿を使用できる。硝化綿としては、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものである。本発明に使用される硝化綿としては、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましく用いられる。具体例としては、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NCRS-2、(KOREA CNC LTD社)等を挙げることができる。硝化綿の使用量は、顔料の種類により、裏刷り用印刷インキ組成物中に、0.1~2.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0053】
(セルロースアセテートプロピオネート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている樹脂が使用できる。
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後に加水分解して得られる。一般的にはアセチル化が0.6~2.5重量%、プロピオニル化が42~46重量%、水酸基が1.8~5重量%である樹脂が市販されている。セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、顔料の種類により、裏刷り用印刷インキ組成物中に、0.1~3.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0054】
(セルロースアセテートブチレート樹脂)
セルロースアセテートブチレート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている樹脂が使用できる。
セルロースアセテートブチレート樹脂は、セルロースを酢酸及び酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般的にはアセチル化が2~30質量%、ブチリル化が17~53質量%、水酸基が1~5質量%の樹脂が市販されている。セルロースアセテートブチレート樹脂の使用量は、顔料の種類により、裏刷り用印刷インキ組成物中に、0.1~3.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0055】
(脂肪酸アミド)
脂肪酸アミドとしては、脂肪酸から酸基を除いた残基とアミド基を有するものであれば特に限定されない。脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、及びエステルアミド等が挙げられ、耐ブロッキング性が向上するため、モノアミド、置換アミド、及びビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。脂肪酸アミドの使用量は、裏刷り用印刷インキ組成物中に、0.01~1.0質量%の範囲であることが好ましい。
【0056】
・モノアミド:モノアミドは下記一般式(1)で表される。
一般式(1) R-CONH
(式中、Rは脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0057】
・置換アミド:置換アミドは下記一般式(2)で表される。
一般式(2) R-CONH-R
(式中、R及びRは脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。)
置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0058】
・ビスアミド:ビスアミドは下記一般式(3)あるいは一般式(4)で表される。
一般式(3) R-CONH-R-HNCO-R
一般式(4) R-NHCO-R-CONH-R
(式中、R、R、R、及びRは脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R及びRは炭素数1~10のアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0059】
・メチロールアミド:メチロールアミドは下記一般式(5)で表される。
一般式(5) R10-CONHCHOH
(式中、R10は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
メチロールアミドの具体例としては、メチロールパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールオレイン酸アミド、メチロールエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0060】
・エステルアミド:エステルアミドは、下記一般式(6)で表される。
一般式(6) R11-CONH-R12-OCO-R13
(式中、R11及びR13は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R12は炭素数1~10のアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
エステルアミドの具体例としては、ステアリルアミドエチルステアレート、オレイルアミドエチルステアレート等が挙げられる。
脂肪酸アミドの融点は、50~150℃であることが好ましい。
また、脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び/又は炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸として特に好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、不飽和脂肪酸として特に好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
【0061】
(有機溶剤)
印刷層を形成させる裏刷り用印刷インキ組成物は油性ものである。使用する有機溶剤としては、表刷り用及びシュリンク用のインキ組成物と共通して、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤及びこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
環境問題の面からは、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤の混合溶剤、又は、より環境問題への対応を進めたエステル系有機溶剤、及びアルコール系有機溶剤の混合溶剤を使用することが好ましい。
更に、裏刷り用印刷インキ組成物には、濡れ広がり性を向上させるために有機溶剤100質量%中、グリコールエーテル系有機溶剤を0.1~20質量%含有させることもできる。グリコールエーテル系有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が例示できる。
【0062】
裏刷り用印刷インキ組成物には、静電気による印刷不良の緩和、及び、版かぶりの防止やセル再現性の点より水を含有させることが好ましい。水の使用量は、裏刷り用印刷インキ組成物中に10質量%以下が好ましく、更に好ましくは、0.1~5.0質量%の範囲である。
【0063】
(その他の材料)
裏刷り用印刷インキ組成物には、更に顔料分散剤、帯電防止剤、可塑剤等の各種添加剤を添加することができる。
以上の構成材料を用いて印刷インキ組成物を製造する方法としては、公知の方法が使用できる。具体的には、例えば、バインダー樹脂、有機溶剤及び必要に応じて顔料分散剤等の混合物を、高速ミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター等を用いて練肉し、更にチオシアン酸塩、所定の添加剤等の材料の残りを添加、混合することにより得ることができる。
また、金属のテトラアルコキシド及び/又はヒドロキシ酸を含有させても良く、含有させなくても良い。
【0064】
(裏刷り用印刷インキ組成物の製造方法)
これらの材料を利用して裏刷り用印刷インキ組成物を製造する方法としては、まず、顔料、バインダー樹脂、有機溶媒、及び必要に応じて顔料分散剤、界面活性剤等を撹拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して練肉し、更に、脂肪酸アミド、キレート架橋剤及び残りの材料を添加混合する方法が利用される。
【0065】
(裏刷り用印刷インキ組成物を用いた印刷方法、及びそれにより得た積層体)
次に、裏刷り用印刷インキ組成物を用いてラミネート印刷物を得る方法について説明する。
なお、裏刷り用印刷インキ組成物は、ラミネート以外の用途にも使用できる。
ラミネート印刷物を得る方法には、少なくとも下記印刷方法を含む。
例えば、樹脂基材として、公知のラミネート用の基材となる樹脂フィルムに、本発明の脱離用プライマー組成物を塗布する。その後、インライン又はオフラインで、ラミネート用グラビア印刷インキ組成物をグラビア印刷方式で1回以上印刷を行う。次いで、これらの印刷により形成したグラビアラミネート用印刷インキ層の表面側(最終ラミネート後において、表層からみて下層側)の任意の個所に、他のラミネート用グラビア印刷インキ組成物をグラビア印刷方式で印刷を行い、ドライヤーにより乾燥させる。ラミネート用印刷インキ組成物による印刷速度及び乾燥温度は、公知の速度及び温度から適宜採用できる。
上記の方法で得られた印刷物のラミネート用グラビア印刷インキ組成物による層の側に、樹脂フィルム等を各種方法によるラミネート加工を施してシーラント層を形成し、包装袋等用のラミネート印刷物を得ることができる。このラミネート加工法としては、印刷物の表面にアンカーコート剤を塗工した後、又は塗工せずに、溶融ポリマーを積層させる押出ラミネート法、印刷物の表面に接着剤を塗工した後、フィルム状ポリマーを貼合させるドライラミネート法が利用できる。
そして、この押出ラミネートされてなる樹脂層やフィルム状ポリマーとして無延伸のポリプロピレンやアルミニウム蒸着CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム等の樹脂を採用できる。特に後者の場合、脱離工程において、下記記載の脱離液により、シーラント層であるアルミニウム蒸着CPPフィルム自体を脱離させることができる。
【0066】
上記押出ラミネート法は、印刷インキ組成物による層を含む印刷物の表面に、必要に応じて、チタン系、ウレタン系、イミン系、ポリブタジエン系等のアンカーコート剤を塗工した後、又は塗工せずに、既知の押出ラミネート機によって、溶融ポリマーを積層させる方法であり、更に溶融樹脂を中間層として、他の材料とサンドイッチ状に積層することもできる。なお、この場合には、ポリブタジエン系化合物系アンカーコート剤を使用しても良く、又は使用しなくても良い。
上記押出ラミネート法で使用する溶融ポリマーとしては、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等、従来使用されていた樹脂が使用できる。その中でも溶融の際に酸化によってカルボニル基が発生し易い低密度ポリエチレンとの構成において本発明の効果が高くなる。
【0067】
また、上記ドライラミネート法は、ラミネート用グラビア印刷インキ組成物による層の表面にウレタン系、イソシアネート系等の接着剤を塗工した後、既知のドライラミネート機によって樹脂フィルムを貼合する方法である。特にレトルト用途で使用される包装材料を得るために、基材と貼合される樹脂フィルムの間にアルミ箔をはさんでラミネートすることもできる。このようなラミネート加工物は、製袋して内容物を詰めた後、ボイル・レトルト用途に利用することもできる。
このとき使用される上記樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の延伸及び無延伸ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ビニロン等を挙げることができる。更にこれら樹脂フィルムについては、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込み等の加工をして得られるフィルムも使用することが可能である。
また、それら樹脂フィルムとして、各種印刷用プラスチックフィルムに金属蒸着、バリア性樹脂をコーティングしたバリア層を積層したフィルム等を使用することができる。
【0068】
<<表刷り印刷>>
表刷り印刷インキ組成物は、上記顔料に加えて、バインダー樹脂及び各種の添加剤を含有する。
<バインダー樹脂>
表刷り印刷インキ組成物に含有されるバインダー樹脂は、以下の樹脂から、例えば、セルロース樹脂とポリアミド樹脂の組み合わせ、セルロース樹脂とポリウレタン樹脂の組み合わせ、ポリウレタン樹脂と上記塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体の組み合わせ、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂の組み合わせ、セルロース樹脂とアクリル樹脂の組み合わせ、セルロース樹脂のみ、上記塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体のみ等を選択できる。
【0069】
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されているセルロース系樹脂が使用できる。このようなセルロース系樹脂としては、ニトロセルロース(ニトロ基置換体)、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート(CAB)等の低級アシル基置換体、メチルセルロース、エチルセルロース等の低級アルキル基置換体を挙げることができる。これらセルロース系樹脂の質量平均分子量や水酸基に対する置換度等は、通常の印刷インキ組成物や塗料で使用される範囲のものが、本発明でも支障なく利用できる。
【0070】
水酸基の置換度は、概ね、1.3~2.7程度のものが好ましい。また、耐熱性の面からはニトロ基置換体の使用が有利であり、接着性の面からは低級アシル基置換体及び低級アルキル基置換体が有利であるため、目的に応じて適宜選択して使用することが好ましい。
セルロース系樹脂を含有する場合には、ポリウレタン樹脂と、セルロース系樹脂との含有比率が、質量換算で、ポリウレタン樹脂:セルロース系樹脂=5:95~95:5となるようにすることが好ましい。ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂との含有比率が、ポリアミド樹脂: セルロース系樹脂=95:5~70:30で併用することが好ましい。アクリル樹脂とセルロース系樹脂との含有比率が、アクリル樹脂: セルロース系樹脂=95:5~30:70で併用することが好ましい。
【0071】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂として、ポリイソシアネート化合物、ジオール化合物、及び必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤等を反応させて得られるポリウレタン樹脂を採用できる。
ここで、該ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4-シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等を採用できる。
更にこのようなポリウレタン樹脂と共に、グラビア印刷用の公知のバインダー樹脂を併用することができる。
【0072】
次に、該ジオール化合物の好適なものとしては高分子ジオール化合物であり、数平均分子量が500より大きく3,000以下が好ましく、より好ましくは、500~2,000のものであり、1種のジオール化合物からなるものであってもよく、複数のジオール化合物を併用するものであってもよい。ジオール化合物の数平均分子量が500以下の場合は、接着性が低下する傾向があり、一方、数平均分子量が3,000を超えると、耐油性が低下する傾向がある。
ジオール化合物の具体例としては、数平均分子量が100以上のアルキレングリコール化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール化合物、及び低分子量アルキレングリコールやビスフェノール等のジオール化合物に酸化エチレン、酸化プロピレン等のオキシアルキレンやテトラヒドロフラン等を重付加させて得られるポリエーテルジオール化合物を挙げることができる。
また、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状グリコール類、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール等の分岐グリコール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエーテル系ジオール類等の低分子ジオール化合物と、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸等の飽和及び不飽和脂肪族ジカルボン酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸化合物を、重縮合させて得られるポリエステルジオール化合物、ラクトン等の環状エステル化合物を開環反応させて得られるポリエステルジオール化合物を挙げることができる。
【0073】
更に、直鎖状あるいは側鎖を有するポリカーボネート化合物、及びポリブタジエングリコール化合物等も併用することができる。
また、環境に配慮して芳香族炭化水素系有機溶剤(トルエン等)を含有せず、また、アルコールやエステル等の高極性の有機溶剤の含有割合が多い系で良好な印刷適性を得るためには、ポリオール化合物としてポリエーテルジオール化合物を利用することが好ましい。
またその他の溶剤を使用する場合にはポリエステルジオール化合物を利用することが好ましい場合がある。
【0074】
更に、鎖伸長剤や反応停止剤を用いて得られたポリウレタン樹脂を利用することも可能であり、鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物が例示できる。
【0075】
反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、1,4-ブタンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等、アミノエチルエタノールアミン等を挙げることができる。
【0076】
以上の合成成分を用いて本発明にて使用されるポリウレタン樹脂を得るためには、まず、ポリイソシアネート化合物のNCOとジオール化合物のOHのモル当量比(ポリイソシアネート化合物のNCOのモル当量/ジオール化合物のOHのモル当量)=0.5以上3.0以下、好ましくは1.2以上1.5以下となるように反応させ、次いで、必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させることにより得ることができる。
なお、ポリイソシアネート化合物のNCOのモル当量/ジオール化合物のOHのモル当量が0.5未満であると、耐熱性、耐油性が低下する傾向があり、一方、ポリイソシアネート化合物のNCOのモル当量/ジオール化合物のOHのモル当量が3を超えると、延伸性が低下する傾向がある。
【0077】
(バイオマスポリウレタン)
上記ポリウレタンを構成するジオール化合物のうちの一部又は全部を、環境面を考慮して、植物成分由来のバイオマス成分を使用して得たジオール化合物にすることができる。
このようなジオール化合物としては、ポリエステルポリオール化合物が好ましく、このポリエステルポリオール化合物は、炭素数が2~4の短鎖ジオール化合物と、カルボン酸化合物とを反応させたバイオポリエステルポリオールを採用できる。バイオポリオール成分は、短鎖ジオール化合物及びカルボン酸化合物のうち、少なくともいずれか一方が植物由来であることがより好ましく、両方が植物由来であることが更に好ましい。
植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール化合物は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール化合物は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等であってもよい。これらは併用されてもよい。
1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造され得る。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール成分は、EO製造法の1,3-プロパンジオール成分と比較して、安全性の面で優れており、乳酸等有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによってコハク酸を得て、これを水添することにより製造され得る。また、エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造され得る。
【0078】
植物由来のカルボン酸化合物は特に限定されない。一例を挙げると、カルボン酸化合物は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸等である。これらは併用されてもよい。これらの中でも、カルボン酸化合物は、セバシン酸、コハク酸及びダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。またセバシン酸100質量部に対して、リンゴ酸を0.05~0.5質量部含有しても良い。
バイオポリエステルポリオール化合物は、植物由来の短鎖ジオール化合物と植物由来のカルボン酸とを、適宜縮合反応させて、100%植物由来のバイオポリエステルポリオールとして生成される。具体的には、植物由来のセバシン酸と、植物由来の1,3-プロパンジオールとを直接脱水縮合させて、ポリトリメチレンセバケートポリオールが得られる。また、植物由来のコハク酸と、植物由来の1,4-ブタンジオールとを直接脱水縮合して、ポリブチレンサクシネートポリオールが得られる。
これらの各バイオポリエステルポリオール化合物を1種以上使用してもよい。
これらの植物由来の成分から得られたウレタンプレポリマーは、全ウレタンプレポリマー中、固形分換算で、10質量%以上含まれても良く、40質量%以上含まれても良い。
このように植物由来の成分を採用した場合であっても、上記と同様の鎖伸長剤や反応停止剤を使用することができる。
【0079】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂としては、主に重合脂肪酸、更に脂肪族、脂環族及び芳香族ジカルボン酸や脂肪族モノカルボン酸を一部含有してもよい酸成分と、主に脂肪族、脂環族、芳香脂肪族及び芳香族ポリアミンの単独又は混合物、更には一級及び二級モノアミンを一部含有してもよいアミン成分とを反応させたものである。
ここで、重合脂肪酸とは一般に炭素数が16から22の不飽和脂肪酸又はそのエステルの重合により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸、三量化重合脂肪酸等を含むものである。また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸等、脂環族ジカルボン酸としてはシクロヘキサンジカルボン酸等、芳香族のジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。更に、脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等を挙げることができる。
【0080】
一方、アミン成分の中の脂肪族ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミンを挙げることができ、脂環族ポリアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。また、芳香脂肪族ポリアミンとしてはキシリレンジアミン、芳香族ポリアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。更に一級及び二級モノアミンとしては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等を挙げることができる。
印刷インキ組成物の耐油性、耐熱性、耐塩ビブロッキング性の面から、ポリアミド樹脂の中でも一級又は二級モノアミン成分としてアルカノールアミンを用い、分子内に水酸基を有するポリアミド樹脂を使用することが好ましい。
以上の酸成分とアミン成分からポリアミド樹脂を合成する方法としては、好ましくは反応成分のカルボキシル基/アミノ基の比率を0.9/1.0~1.0/0.9、より好ましくは1.0/1.0とし、好ましくは反応温度を160~280℃、更に好ましくは180~230℃として、最終段階では100torr程度の減圧下で反応させることが望ましい。
【0081】
(植物油脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂)
上記ポリアミド樹脂のなかでも、植物油脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、植物油脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂は、トール油、米ぬか油、パーム油、ヤシ油、大豆油等の植物油脂肪酸を反応原料とするポリアミド樹脂等である。植物油脂肪酸を反応原料にすることにより、このような熱可塑性ポリアミド樹脂を使用した際の環境上への負荷を削減できる。
植物油脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂は、植物油脂肪酸を含むポリカルボン酸とポリアミンとの重縮合物である。ポリアミンは特に限定されない。一例を挙げると、ポリアミンは、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミンン等である。脂肪族ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサン、ピペラジン、N-アミノエチルピペラジン等である。脂環式ポリアミンは、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン等である。芳香族ポリアミンは、メタキシレンジアミン等である。熱可塑性ポリアミド樹脂は、併用されてもよい。
熱可塑性ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)は特に限定されない。一例を挙げると、熱可塑性ポリアミド樹脂のMnは、1,000以上であることが好ましい。また、Mnは、30,000以下であることが好ましい。熱可塑性ポリアミド樹脂のMnが1,000未満である場合、印刷インキ組成物は、耐ブロッキング性、耐熱性が低下する傾向がある。一方、Mnが30,000を超える場合、印刷インキ組成物は、耐揉み性が低下する傾向がある。
熱可塑性ポリアミド樹脂の酸価、アミン価は特に限定されない。一例を挙げると、熱可塑性ポリアミド樹脂の酸価は、10.0mgKOH/g以下、アミン価は5.0mgKOH/g以下であることが好ましい。
熱可塑性ポリアミド樹脂の軟化点は、90~150℃であることがより好ましい。
熱可塑性ポリアミド樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、熱可塑性ポリアミド樹脂の含有量は、印刷インキ組成物中の全固形分に対し、20.0質量%以上であることが好ましく、70.0質量%以下であることが好ましい。
【0082】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、従来からの既知の方法で製造でき、製造方法は特に制限されるものではない。アクリル樹脂は、一分子中に炭素-炭素不飽和二重結合を有する単量体を重合開始剤の存在下、溶媒中で重合させて得る。
ここで、一分子中に炭素-炭素不飽和二重結合を有する単量体としては、(i)(メタ)アクリル酸誘導体、(ii)芳香族ビニル、(iii)オレフィン系炭化水素、(iv)ビニルエステル、(v)ビニルハライド、(vi)ビニルエーテル等があげられる。
【0083】
(i)(メタ)アクリル酸誘導体として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸塩、及びメチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシ
ル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ii)芳香族ビニルとして、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、モノフルオロメチルスチレン、ジフルオロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレ等の一部の水素がフッ素置換されたスチレン類等が挙げられる。
(iii)オレフィン系炭化水素として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1、4-ペンタジエン等が挙げられる。
(iv)ビニルエステルとして、酢酸ビニル等が挙げられる。
(v)ビニルハライドとして、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
(vi)ビニルエーテルとして、ビニルメチルエーテル等が挙げられる。
また、一分子中に炭素-炭素不飽和二重結合を有する単量体として、架橋性の官能基を有する単量体を用いることができる。官能基を有する単量体としては、(vii)ヒドロキシル基を有する単量体、(viii)イソシアノ基を有する単量体、(ix)エポキシ基を有する単量体等が挙げられる。
【0084】
(vii)ヒドロキシル基を有する単量体としては、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
(viii)イソシアノ基を有する単量体としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート等の他、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートと反応させて得られるものが挙げられる。
(ix)エポキシ基を有する単量体としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイド、1、3-ブタジエンモノエポキサイド等が挙げられる。
必要に応じて、これらの内から一分子中に炭素-炭素不飽和二重結合を有する単量体を1種、又は2種以上を混合して用いることができ、酸価の値を100~200mgKOH/gにすることが好ましい。この範囲外であると、印刷インキの相分離、粘度上昇、ゲル化が起こり、保存安定性に問題がある。
アクリル樹脂を合成する際に使用する重合開始剤としては、通常の過酸化物又はアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシド等が用いられ、重合温度は、50~140℃、好ましくは70~140℃である。
得られる重合体の質量平均分子量は、5,000~100,000が好ましい。
上記製造方法に使用される非芳香族系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等の使用が可能である。溶剤は2種以上の混合物でもよい。
【0085】
(ロジン樹脂及びその誘導体)
ロジン系樹脂としては、上記裏刷り印刷にて使用できるロジン及びその誘導体から任意に選択して使用できる。
中でも、ロジン系樹脂としては、酸価10~350mgKOH/gが好ましく、より好ましくは、200~350mgKOH/g、更に好ましくは、250~350mgKOH/gである。また、ロジン系樹脂の中でも、ロジンマレイン酸樹脂及び/又は重合ロジン等が好ましい。
印刷インキ組成物中のロジン系樹脂の含有量は好ましくは0.1~5.0質量%である。
【0086】
(他の樹脂)
表刷り用インキ組成物に必要に応じて使用する他の樹脂としては、塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂、ダイマー酸系樹脂、ロジン系樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマル樹脂、コーパル樹脂、塩素化ポリプロピレン、酸化ポリプロピレン等が挙げられる。これらハードレジンを利用すると、特に表面処理の行なわれていない樹脂フィルムに対して、接着性の向上を期待できる。そして、グラビア印刷インキ組成物中にハードレジンを含有させる際の含有量は、5.0質量%未満が適量である。
但し、塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂を使用する際には、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂が固形分比率でポリウレタン樹脂/塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂=100/0~70/30であることが好ましく、100/0~90/10がより好ましい。
【0087】
(キレート架橋剤)
キレート架橋剤としては、金属キレート架橋剤である、チタンキレート、ジルコニウムキレート等が使用できる。
チタンキレートとしては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロポキシチタンと2-エチルヘキサン酸の反応物、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、チタンテトラアセチルアセトナート、n-ブチルリン酸エステルチタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)等のチタンキレートを挙げることができる。
ジルコニウムキレートとしては、ジルコニウムプロピオネート、ジルコニウムアセチルアセテート等が例示できる。
環境面の観点からは、キレート架橋剤のなかでも、架橋反応後にアセチルアセトンを発生しないように、配位子としてアセチルアセトナートを有しないキレート架橋剤が好ましい。
【0088】
(脂肪酸アミド)
耐ブロッキング性の点から、脂肪酸アミドを使用する。脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、変性脂肪酸アミド等が挙げられ、テーブルクロスに用いられる軟質ポリ塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性を向上させるためには、変性脂肪酸アミドを使用することが特に好ましい。脂肪酸アミドを含有させる際の含有量は、印刷インキ組成物中、好ましくは0.1~3.0質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%である。
含有量が0.1質量%未満であると耐ブロッキング性が低下する可能性があり、3.0質量%を超える場合は、耐油性が低下する可能性がある。
【0089】
(有機溶媒)
表刷り印刷層を形成させる表刷り用印刷インキ組成物に使用する溶剤成分としては、上記裏刷り用印刷インキ組成物にて使用できる溶媒を採用できる。更に、有機溶媒としては、環境に配慮して芳香族炭化水素系有機溶媒を含有しない有機溶媒とすることが好ましい。芳香族炭化水素系有機溶媒を含有しない有機溶媒としては、主に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶媒、及び、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素系有機溶媒を挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性等を考慮して、混合して利用することもできる。但し、環境上の面を考慮して、上記の有機溶媒の中でも可能な限りケトン系有機溶媒を抑制することが好ましい。
これら有機溶媒の使用量としては、印刷性を考慮して本発明の印刷インキ組成物においては好ましくは15.0質量%以上含有される。また、印刷適性の点から、酢酸プロピルを印刷インキ組成物中により好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上含有させることが好ましい。また、印刷適性を向上させるために、有機溶剤中に0.1~10質量%の水を含有させておくことが好ましい。
【0090】
<顔料>
表刷り用印刷インキ組成物には、上記顔料を含有できる。
【0091】
(その他の材料)
表刷り用印刷インキ組成物には、耐摩擦性の向上を目的として、性能が低下しない範囲で、ワックスを添加することができる。
ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等の既知の各種ワックスが利用できる。
更に、顔料分散剤、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤等の各種印刷インキ用添加剤を任意に添加できる。
【0092】
(表刷り用印刷インキ組成物の製造方法)
これらの材料を利用して表刷り用印刷インキ組成物を製造する方法としては、上記裏刷り用印刷インキ組成物の製造方法と同様の方法を採用できる。
【0093】
(表刷り用印刷インキ組成物を用いた印刷方法、及びそれにより得た積層体)
次に、表刷り用印刷インキ組成物を用いて表刷り印刷物を得る方法について説明する。
表刷り印刷用の樹脂基材に対して、本発明の脱離用プライマー組成物により脱離用プライマー層を形成する。次いで、インライン又はオフラインで、表刷り印刷インキ組成物により通常の表刷り印刷方式を利用して印刷する。このときの印刷速度及び乾燥温度は、公知の速度及び温度から適宜採用できる。
そしてこの樹脂基材としては、上記の裏刷り印刷用のものを採用できる。
【0094】
<<シュリンク包装用印刷>>
シュリンク包装用のインキ組成物は、上記顔料、バインダー樹脂及び各種の添加剤を含有する。
【0095】
<バインダー樹脂>
使用できるバインダー樹脂としては、例えば、下記条件1又は2を満足するカルボキシル基含有アクリル樹脂、セルロース樹脂、ロジン樹脂及びその誘導体を含むシュリンク包装用印刷インキ組成物である。
条件1:
カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量とセルロース樹脂の固形分質量の比が、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量/セルロース樹脂の固形分質量=80/20~60/40
条件2:
ロジン樹脂及びその誘導体の酸価が150mgKOH/g以下であり、樹脂固形分中に
1~6質量%の範囲で含有する。
以下、本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物について、具体的に説明する。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物のバイオマス度は、10以上が好ましい。
バイオマス度は、下記式で計算される。
バイオマス度=バイオマス成分量/シュリンク包装用印刷インキ組成物中の顔料を含む全固形分の量×100
バイオマス成分量・・・樹脂固形分、添加剤固形分に占めるバイオマス由来の重量の総量(樹脂重量×バイオマス重量比率+添加剤重量×バイオマス重量比率)
【0096】
(酸価)
本願明細書における酸価は、カルボキシル基含有アクリル樹脂、ロジン樹脂等を1g得るために理論上必要な各単量体の量に対して、水酸化カリウム(KOH)の理論上の中和量を求め、その中和量の総和のmg数を上記重合体の酸価とする。
【0097】
<質量平均分子量>
本願明細書における樹脂の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の質量平均分子量として求める。
【0098】
(カルボキシル基含有アクリル樹脂)
カルボキシル基含有アクリル樹脂としては、ラジカル重合性カルボン酸単量体とラジカル重合性アクリル系単量体との共重合体、及びラジカル重合性カルボン酸単量体、ラジカル重合性アクリル系単量体以外のラジカル重合性単量体も含む共重合体が挙げられる。
前記ラジカル重合性カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸のモノエステル、モノアミド;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸;ビニルアルコールと酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、ステアリン酸等の炭素原子数2~18の飽和カルボン酸のエステル等が挙げられる。
ラジカル重合性アクリル系単量体としては、アクリル酸やメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルアルコール等のアルコールエステル、エチレングリコール、ピロピレングリコール等のジエステルが挙げられる。また、ラジカル重合性カルボン酸単量体及びラジカル重合性アクリル系単量体以外のラジカル重合性単量体(c)としては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
これらのカルボキシル基含有アクリル樹脂のなかでも、カルボキシル基の由来がメタアクリル酸モノマーである共重合体が好ましく、更にメタアクリル酸(MAA)、メタアクリル酸メチル(MMA)及びメタアクリル酸ブチル(BMA)の共重合体が好ましい。
【0099】
前記の単量体を共重合して得られるカルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価は2~20mgKOH/gが好ましい。また3mgKOH/g以上がより好ましく、15mgKOH/g以下がより好ましく、10mgKOH/g以下が更に好ましい。2mgKOH/g未満では、セルロース樹脂との相溶性に問題が生じ易く、20mgKOH/gより高い場合は、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)が劣る傾向である。
また、カルボキシル基含有アクリル樹脂の質量平均分子量は、30,000~100,000が好ましい。中でも、35,000以上がより好ましく、40,000以上が更に好ましい。また90,000以下がより好ましく、80,000以下が更に好ましい。
質量平均分子量が30,000未満では、ブロッキング性、接着性等が低下する傾向となり、一方、100,000を超える場合は、溶解性及びセルロース樹脂との溶解性が低下する傾向となる。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中のカルボキシル基含有アクリル樹脂の含有量としては、10.0質量%以上が好ましく、13.0質量%以上がより好ましく、14.0質量%以上が更に好ましい。また、40.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましく、30.0質量%以下が更に好ましい。
【0100】
(セルロース樹脂)
セルロース樹脂としては、従来からグラビアインキ組成物に使用されているセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ニトロセルロース樹脂等が使用できる。耐界面活性剤性、耐アルカリ性等を向上させる点から、セルロースアセテートプロピオネート樹脂やセルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物中のセルロース樹脂の含有量は下記を満足する。
シュリンク包装用印刷インキ組成物中の、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量と、セルロース樹脂の固形分質量の比が、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量/セルロース樹脂の固形分質量=80/20~60/40である。そして、75/25~65/35が好ましい。セルロース樹脂の固形分質量の割合が40より多いと、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)が低下する傾向となり、一方、20より少ないと、ブロッキング性等が低下する傾向となる。
また、本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中の各セルロース樹脂の合計含有量としては、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上が更に好ましい。また、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下が更に好ましい。
【0101】
(セルロースアセテートプロピオネート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている公知のセルロースアセテートプロピオネート樹脂を使用できる。
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後に加水分解して得られる。一般的にはセルロースアセテートプロピオネート樹脂中のアセチル基含有量が0.6~2.5重量%、プロピオネート基含有量が42.0~46.0重量%、水酸基が1.8~5.0重量%である樹脂が市販されている。
これらの中でも、バイオマス度を向上させるために、低分子量の樹脂を使用することが好ましい。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中のセルロースアセテートプロピオネート樹脂の含有量としては、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上が更に好ましい。また、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下が更に好ましい。
【0102】
(セルロースアセテートブチレート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用される樹脂を使用できる。セルロースアセテートブチレート樹脂は、セルロースを酢酸及び酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般的にはアセチル化が2~30重量%、ブチリル化が17~53重量%、水酸基が1~5%の樹脂が市販されている。これらの中でも、バイオマス度を向上させるために、低分子量の樹脂を使用することが好ましい。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中のセルロースアセテートブチレート樹脂の含有量としては、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上が更に好ましい。また、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下が更に好ましい 。
【0103】
(ニトロセルロース樹脂)
ニトロセルロース樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されているニトロセルロース樹脂を使用できる。ニトロセルロース樹脂としては、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものである。本発明に使用されるニトロセルロース樹脂としては、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましく用いられる。具体例としては、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NCRS-2、(KOREA CNC LTD社)等を挙げることができる。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中のニトロセルロース樹脂の含有量としては、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上が更に好ましい。また、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下が更に好ましい。
【0104】
(ロジン樹脂及びその誘導体)
ロジン系樹脂及びその誘導体としては、上記裏刷り印刷にて使用できるロジン及びその誘導体から任意に選択して使用できる。
そして、ロジン樹脂及びその誘導体は、ロジン樹脂及びその誘導体の酸価は150mgKOH/g以下が好ましい。150mgKOH/gを超えると、インキ組成物の安定性及び耐内容物適性(耐アルカリ性及び耐界面活性剤性)が低下する可能性がある。更に優れた内容物適性の点から、100mgKOH/g以下がより好ましく、50mgKOH/g以下が更に好ましく、30mgKOH/g以下が更に好ましく、20mgKOH/g以下が極めて好ましく、10mgKOH/g以下が最も好ましい。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中の、ロジン樹脂及びその誘導体の含有量は、3.0~20.0質量%が好ましい。そして、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上が更に好ましい。また、15.0質量%以下がより好ましく、10.0質量%以下が更に好ましい。
【0105】
(その他の樹脂)
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物には、前記カルボキシル基含有アクリル樹脂、セルロース樹脂、ロジン樹脂及びその誘導体以外の樹脂成分として、本発明による効果を毀損しない範囲で、必要に応じて適宜、他の樹脂を併用してもよい。
他の樹脂としては、ポリウレタンウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化オレフィン樹脂、アルキッド樹脂、酢酸ビニル樹脂、ケトン樹脂、ポリブチラール樹脂、環化ゴム系樹脂、塩化ゴム系樹脂、石油樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。
なお、リン酸基を有するアクリル樹脂を含有しても良く、しなくても良い。
【0106】
<顔料>
シュリンク包装用印刷インキ組成物は、上記顔料を含有できる。
【0107】
(可塑剤)
可塑剤として、従来からグラビア印刷インキに使用されているセバチン酸ジオクチル、脂肪酸トリグリセリド、エチルトルエンスルホン酸アミド、アセチルクエン酸トリブチル、ステアリン酸2-エチルヘキシルエステル、パルミチン酸2-エチルヘキシルエステル等とエポキシ化植物油を使用できる。これらの中でも、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)及びバイオマス度の点から、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ化植物油が好ましい。
可塑剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、可塑剤の含有量は、シュリンク包装用印刷インキ組成物中、0.05質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、また、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られるシュリンク包装用印刷インキ組成物は、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)が向上する。
【0108】
(アマイド化合物)
更に、シュリンク包装用印刷インキ組成物には、耐スクラッチ性、基材への接着性、耐擦傷性、耐内容物適性(耐界面活性剤性及び耐アルカリ性)を更に向上させる点から、アマイド化合物を含有させることが好ましい。アマイド化合物としては、例えばパルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド等が挙げられ、これらを単独で使用しても良く、2種以上混合して使用してもよい。アマイド化合物を添加する場合は、シュリンク包装用印刷インキ組成物中に0.1~5.0質量%含有することが好ましい。中でも、耐スクラッチ性、基材への接着性、耐擦傷性、耐界面活性剤性及び耐アルカリ性が両立するために0.1~4.0質量%含有することが好ましく、0.3~2.5質量%で含有することが好ましい。
【0109】
(溶剤成分)
本発明中の印刷層を形成させるシュリンク包装用印刷インキ組成物に使用する溶剤成分としては、上記裏刷り用インキ組成物にて使用できる溶媒を採用できる。
これらの溶剤成分のなかでも、環境面からは、アルコール系溶剤及び/又はエステル系溶剤を使用することが好ましく、より好ましくは炭素数1~4のアルコール系溶剤及び/又はエステル系溶剤である。更に、炭素数1~4のアルコール系溶剤とエステル系溶剤を、質量比でアルコール系/エステル系溶剤=60/40~80/20となるようにすることが好ましく、63/37~75/25となるように使用することが好ましい。エステル系溶剤が40より多いと収縮OPS(収縮性未処理ポリスチレンフィルム)へアタックする可能性がある。また、エステル系溶剤が、20より少ないと樹脂成分の溶解性が低下する傾向にある。
【0110】
(その他成分)
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物には、その他に、必要に応じて、耐摩擦強化剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、静電防止剤、滑剤、架橋剤、消泡剤、乾燥調整剤、その他の可塑剤、粘着付与剤、密着向上剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することができる。なかでもバイオマス由来の添加剤であればなおよい。
滑剤としては、ポリエチレン(PE)ワックス、ポリプロピレンワックスや、PTFE系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、シェラックワックス、アマイドワックス、有機ポリマー、蜜蝋、これらの混合ワックス等が好ましく、なかでも、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスがより好ましい。
【0111】
(シュリンク用印刷インキ組成物の製造方法)
これらの材料を利用してシュリンク用印刷インキ組成物を製造する方法としては、上記裏刷り用印刷インキ組成物の製造方法と同様の方法を採用できる。
【0112】
(シュリンク用印刷インキ組成物を用いた印刷方法、及びそれにより得た積層体)
次に、シュリンク用印刷インキ組成物を用いてシュリンク印刷物を得る方法について説明する。
シュリンク印刷用の樹脂基材に対して、脱離用プライマー組成物を塗布して脱離用プライマー層を形成する。次いで、インライン又はオフラインで、通常の印刷方法を利用してシュリンク印刷インキ組成物によりシュリンク印刷を行う。このときの印刷速度及び乾燥温度は、公知の速度及び温度から適宜採用できる。
そしてこの樹脂基材としては、上記のシュリンク印刷用のものを採用できる。
【0113】
<<ラミネート紙の紙基材側への印刷>>
ラミネート紙の紙基材側への印刷に使用する印刷インキ組成物としては、例えば、水性フレキソ印刷用インキ組成物が使用できる。水性フレキソ用印刷インキ組成物は、上記顔料、下記バインダー樹脂及び必要に応じて下記の添加剤を含有する。
【0114】
<バインダー樹脂>
使用できるバインダーとしては、通常の水性フレキソ用印刷インキ組成物で使用される不飽和二重結合を有するモノマーを重合させて得られる樹脂や、官能基同士の反応によって得られる樹脂などであれば、とくに制限なく使用できる。具体的には、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそのアルキルエステル、あるいはスチレン等を主なモノマー成分として共重合した水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン-アクリル樹脂、水溶性スチレン-マレイン酸樹脂、水溶性スチレン-アクリル-マレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂などの各種バインダー樹脂が好適な例として例示できる。バインダー樹脂の含有量は水性フレキソ用印刷インキ組成物中1~20重量%が好ましい。
(溶剤成分)
本発明中の印刷層を形成させる水性フレキソ用印刷インキ組成物に使用する溶剤成分としては、水性媒体を採用できる。
水性媒体としては、水または水と水混和性溶剤との混合物があげられる。水混和性溶剤としては、例えば、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類等があげられ、具体的には、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等があげられる。
【0115】
(その他成分)
本発明の水性フレキソ用印刷インキ組成物には、上記に示した成分以外に、必要に応じて造膜剤、顔料分散剤または顔料分散樹脂、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤等種々の添加剤を適宜選択して使用することができる。
(水性フレキソ用印刷インキ組成物の製造方法)
これらの材料を利用して水性フレキソ用印刷インキ組成物を製造する方法としては、顔料、バインダー樹脂、水性媒体を混合して混練し、さらに添加剤、水性媒体、および所定の材料の残りを添加、混合する方法が一般的である。
【0116】
(水性フレキソ用印刷インキ組成物を用いた印刷方法、及びそれにより得た積層体)
次に、水性フレキソ用印刷インキ組成物を用いて印刷物を得る方法について説明する。
樹脂基材に対して、脱離用プライマー組成物を塗布して脱離用プライマー層を形成する。次いで、インライン又はオフラインで、接着剤を塗付後、紙基材を積層後、紙基材に通常の印刷方法を利用して水性フレキソ用印刷インキ組成物によりフレキソ印刷を行う。このときの印刷速度及び乾燥温度は、公知の速度及び温度から適宜採用できる。
そしてこの樹脂基材としては、上記のポリエチレン(PE)等を採用できる。
【実施例0117】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。実施例及び比較例にて使用した脱離用プライマー組成物は、溶媒の質量組成がエタノール8:水2の混合物である。なお、この混合物に限定されない。
【0118】
<裏刷り印刷の実施例>
<ポリウレタン樹脂ワニス1(バイオマスポリウレタン)の製造例>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=30/70(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる質量平均分子量2,000のポリエステルジオールの200質量部、イソホロンジイソシアネートの17.6質量部、水添MDIの21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチルの400質量部、イソプロピルアルコールの171質量部を加えた後、イソホロンジアミンの8.2質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミンの0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミンの1.3質量部、ジエチレントリアミンの0.6質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニス1(固形分30質量%、アミン価6.4mgKOH/g)を得た。
【0119】
<ポリウレタン樹脂ワニス2(バイオマスポリウレタンでないもの)の製造例>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール100質量部、質量平均分子量2,000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネートの17.6質量部、水添MDIの21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチルの400質量部、イソプロピルアルコールの171質量部を加えた後、イソホロンジアミンの8.2質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミンの0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミンの1.3質量部、ジエチレントリアミンの0.6質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニス2(固形分30質量%、アミン価6.4mgKOH/g)を得た。
【0120】
<ポリウレタン樹脂ワニス3(ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られるポリウレタン樹脂ワニス)>の製造例
(ケチミン溶液1の製造方法)
イソホロンジアミン51部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン31.2部、及びアセトン174部を混合し、室温で1時間撹拌してケチミン溶液1を得た。
(ポリウレタン樹脂の製造方法)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4,000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル812部、イソプロピルアルコール203部を加えた後、室温近くまで冷却し、上記ケチミン溶液1を32.29部加えて20分間撹拌し、更に水を3部加えて15分間撹拌し、質量平均分子量35,000、アミン価6.5mgKOH/gのポリウレタン樹脂ワニス3(固形分30%)を得た。
【0121】
<塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体>
ソルバインTA-3、日信化学工業社
<ロジン及びその誘導体>
重合ロジン:酸価160mgKOH/g
<塩素化ポリプロピレンワニス>
塩素化度40%、質量平均分子量100,000の塩素化ポリプロピレン(固形分50質量%)40質量部とメチルシクロヘキサン60質量部を混合撹拌し、固形分20質量%の塩素化ポリプロピレンワニスを得た。
<シリカ粒子>
平均粒子径:4.5μm
<ポリエチレンワックス>
平均粒子径:2.11μm
<脂肪酸アミド>
エチレンビスステアリン酸アミド
【0122】
<裏刷り用印刷インキ組成物の製造例>
顔料(C.I.PB15:4)の10質量部、ポリウレタン樹脂ワニス1を30質量部、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体(ソルバインTA-3)3質量部を、レッドデビル社のペイントコンディショナーを用いて混練し、更に、塩素化プロピレンワニス(固形分20%)2質量部、重合ロジン0.5質量部、シリカ粒子0.5質量部、ポリエチレンワックス0.2質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.2質量部、溶媒51質量部、水2質量部を加えて、裏刷り用印刷インキ組成物1を得た。
また、上記ポリウレタン樹脂ワニス1に代えて、さらにポリウレタン樹脂ワニス2及び3を使用した以外は同様にして、2種の裏刷り用印刷インキ組成物得て、合計で3種の裏刷り用印刷インキ組成物を得た。
【0123】
(印刷基材)
P-2161#25:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ25μm)(東洋紡社)
(脱離用プライマー)
ポリブタジエン系化合物(商品名:チタボンドT-180E、(固形分濃度10質量%)日本曹達社)
【0124】
(裏刷り印刷、及びラミネート印刷物作成、試験結果)
<ドライラミネート1(基材フィルム:通常フィルム)>
下記のラミネート構造1になるように、P-2161#25の片面(処理面)に、塗布量が下記の表1となるように、上記ポリブタジエン系化合物を希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥した。なお、表1及び2中の塗布量は、ポリブタジエン系化合物の量である。この脱離用プライマー層であるポリブタジエン層の表面に、各裏刷り用印刷インキ組成物に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈インキ組成物を、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷・乾燥させて印刷物を得た。
その上に接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5、固形分30質量%)を塗布し、更にドライラミネート機でアルミニウム蒸着CPPを接着させて、下記のラミネート構造1のラミネート印刷物を作成した。
<ドライラミネート2(基材フィルム:透明蒸着フィルム)>
下記のラミネート構造2になるように、透明蒸着PET又は透明蒸着NYの片面(処理面)に、塗布量が下記の表1となるように、上記ポリブタジエン系化合物を希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥した。なお、表1及び3中の塗布量は、ポリブタジエン系化合物の量である。この脱離用プライマー層であるポリブタジエン層の表面に、各裏刷り用印刷インキ組成物に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈インキ組成物を、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷・乾燥させて印刷物を得た。
その上に接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50、固形分30質量%)を塗布し、更にドライラミネート機で下記RXC-22#60を接着させて、下記のラミネート構造2のラミネート印刷物を作成した。
【0125】
<押出しラミネート1>
下記のラミネート構造3になるように、PET又はNY又は透明蒸着PET又は透明蒸着NYの片面(処理面)に、塗布量が下記の表1となるように、上記ポリブタジエン系化合物を希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥した。なお、表1及び4中の塗布量は、ポリブタジエン系化合物の量である。この脱離用プライマー層であるポリブタジエン層の表面に、各裏刷り用印刷インキ組成物に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈インキ組成物を、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷・乾燥させて印刷物を得た。
その上にAC剤(タケラックA-3210/タケラックA-3072、固形分7質量%)を塗布し、更に押出しラミネート機で溶融ポリエチレンを積層させて、下記のラミネート構造3のラミネート印刷物を作成した。
【0126】
<押出しラミネート2>
下記のラミネート構造4になるように、OPPフィルムの処理面に、下記の表1となるように、上記ポリブタジエン系化合物を希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥した。なお、表5中の塗布量は、ポリブタジエン系化合物の量である。この脱離用プライマー層であるポリブタジエン層の表面に、各裏刷り用印刷インキ組成物に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈インキ組成物を、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷・乾燥させて印刷物を得た。
その上にAC剤(エポミンP-1000,固形分0.7質量%)を塗布し、更に押出しラミネート機で溶融ポリエチレンを積層させて、下記のラミネート構造4のラミネート印刷物を作成した。
【0127】
(各脱離用プライマー組成物塗布条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版(wet塗布量は6g/m程度)
乾燥温度:70℃
【0128】
(裏刷り用印刷インキ組成物の印刷条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版
乾燥温度:70℃
【0129】
【表1】
【0130】
(ラミネート構造1)
:OPPフィルム/ポリブタジエン系化合物/裏刷り用印刷インキ組成物1/接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5 固形分30質量%)/アルミニウム蒸着CPPフィルム
OPPフィルム:コロナ放電した二軸延伸プロピレンフィルム P-2161#25(厚さ25μm)(東洋紡社)
接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5):芳香族エーテル系2液接着剤固形分30質量%(三井化学社)
アルミニウム蒸着CPPフィルム:商品名CP WS(三井化学東セロ社)
(ラミネート構造2)
:透明蒸着PETフィルム又は透明蒸着NYフィルム/ポリブタジエン/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50、固形分30質量%) 固形分30%)/RXC-22#60
蒸着PETフィルム:GL-ARH-F(凸版印刷社)
透明蒸着NYフィルム:GL-ARH-W(凸版印刷社)
接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50):2液接着剤 固形分30質量%(三井化学社)
RXC-22#60:無延伸プロピレンフィルム(三井化学東セロ社)
(ラミネート構造3)
:PETフィルム又はNYフィルム又は透明蒸着PETフィルム又は透明蒸着NYフィルム/ポリブタジエン/各裏刷り用印刷インキ組成物/AC剤(タケラックA-3210/タケラックA-3072、固形分7質量%)/溶融ポリエチレン
PETフィルム:ポリエステルフィルム E-5102#12(東洋紡社)
NYフィルム:ナイロンフィルム ON-15#12(ユニチカ社)
蒸着PETフィルム:GL-ARH-F(凸版印刷社)
透明蒸着NYフィルム:GL-ARH-W(凸版印刷社)
AC剤(タケラックA-3210/タケラックA-3072):固形分7質量%(三井化学社)
溶融ポリエチレン:スミカセンL705 樹脂温355℃(住友化学社)
(ラミネート構造4)
:OPPフィルム/ポリブタジエン/各裏刷り用印刷インキ組成物/AC剤(エポミンP-1000,固形分0.7 質量%)/溶融ポリエチレン
OPPフィルム:コロナ放電した二軸延伸プロピレンフィルム P-2161#25(東洋紡社)
AC剤(エポミンP-1000):ポリエチレンイミン 固形分0.7質量% (日本触媒社)
溶融ポリエチレン:スミカセンL705 樹脂温355℃(住友化学社)
【0131】
<インキ脱離性の評価>
(インキ脱離性試験用サンプル)
印刷後に十分乾燥させた上記の各印刷物1.5gを、MD15mm×TD25mm程度の小片に細断して、インキ脱離性試験用サンプルを得た。
(水からなる脱離液1の調製)
水のみからなる脱離液1
(アルカリ水溶液からなる脱離液2の調製)
98.0質量部の水に水酸化ナトリウム2.0質量部を添加し、撹拌・溶解してアルカリ水溶液からなる脱離液2を得た。
(脱離液1の予熱)
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)各製容器に水からなる脱離液1を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離液2の予熱)
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)各製容器にアルカリ水溶液からなる脱離液2を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離)
各脱離液が70℃に達した後、上記各インキ脱離試験用サンプルを、上記の水からなる脱離液1及びアルカリ水溶液からなる脱離液2それぞれの中に投入し、羽の直径が25mmのステンレススチール製撹拌羽を用いて、水からなる脱離液1の場合は60分間、アルカリ水溶液からなる脱離液2の場合は30分間、撹拌した。撹拌後、HDPE(高密度ポリエチレン)製容器を湯浴より取り出し、室温下で5分間静置した。脱離液と各種フィルム片を目開き約2mmのステンレススチール製網を用いて分離した。
(すすぎ)
脱離後の各種フィルムを200ccのHDPE製容器に移し、水100gを加えた。羽の直径が25mmのステンレススチール製撹拌羽を用いて5分間撹拌した。5分間静置後、ステンレススチール製網を用いて各種フィルム片と水を分離した。各種フィルム片を乾燥後、各種フィルムからのインキの剥離性を目視評価した。
【0132】
脱離(アルカリ)条件:70℃ 2%水酸化ナトリウム水溶液中で30分撹拌
(評価基準)
○:インキ被膜が被膜片としてフィルムから完全に剥離したもの
×:剥離しなかったもの
【0133】
脱離(熱水)条件:70℃ 熱水中で60分撹拌
(評価基準)
○:インキ被膜が被膜片としてフィルムから完全に剥離したもの
×:剥離しなかったもの
【0134】
テープ接着強度(印刷、乾燥させた直後の各印刷物)
各種フィルムの処理面にグラビア印刷機を利用して、所定の塗布量にするため、上記ポリブタジエン系化合物を上記の表1となるように適宜希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機を用い上記の条件で塗布・乾燥した。このポリブタジエン系化合物からなる各層の表面に、裏刷り用印刷インキ組成物1に対して、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した希釈インキ組成物1を、グラビア印刷機を用い上記条件で印刷、乾燥させて各印刷物を得た。
得られた各印刷物のそれぞれの印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷被膜の剥離する度合いから、以下の評価基準に沿って接着性を評価した。(評価基準)
〇:印刷被膜の面積比率として、フィルムからの剥離が5%未満であった。
△:印刷被膜の面積比率として、5%以上30未満がフィルムから剥離した。
×:印刷被膜の面積比率として、30%以上がフィルムから剥離した。
【0135】
ラミネート強度
各ラミネート印刷物を得た後に15mm幅に切断し、安田精機製作所社製剥離試験機を用いて、T型剥離強度を測定した。
(評価基準)
〇:剥離強度が1.2N/15mm以上のもの
△:剥離強度が0.7N/15mm以上、1.2N/15mm未満のもの
×:剥離強度が0.7N/15mm未満のもの
【0136】
耐ブロッキング性
各種フィルムの処理面にグラビア印刷機を利用して、所定の塗布量となるように上記ポリブタジエン系化合物を上記の表1となるように適宜希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機を用い上記の条件で塗布・乾燥した。このポリブタジエン系化合物からなる各層の表面に、裏刷り用印刷インキ組成物1に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した希釈インキ組成物1を、グラビア印刷機を用い下記条件で印刷、乾燥させて各印刷物の印刷面と、各フィルム未処理面とを合わせ、400g/cmの荷重をかけて40℃で12時間放置した後、各フィルムを剥がした時の様子から耐ブロッキング性を評価した。
(評価基準)
〇:抵抗なくはがれインキ被膜の移行が全くないもの
△:抵抗はあるがインキ被膜の移行が全くないもの
×:インキ被膜の移行が認められたもの
【0137】
裏刷り用印刷インキ組成物については、3種類のポリウレタン樹脂ワニス(ポリウレタン樹脂ワニス1(バイオマスポリウレタン)、ポリウレタン樹脂ワニス2(バイオマスポリウレタンでないもの)、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られるポリウレタン樹脂ワニス3)を使用した各裏刷り用印刷インキ組成物のどれを用いても下記評価は同じであった。そのため、ポリウレタン樹脂ワニス1(バイオマスポリウレタン)についての結果を下記に示す。
表2はラミネート構造1のときの結果であり、表3はラミネート構造2のときの結果であり、表4はラミネート構造3のときの結果であり、表5はラミネート構造4のときの結果である。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
【表5】
【0142】
<裏刷り印刷の比較例>
比較例として、ドライラミネート1及び2、押出しラミネート1及び2を作成した。比較例のドライラミネート1は、実施例のドライラミネート1に対して、使用するプライマー組成物を変更した他は同じ材料及び方法により得たものである。以下、同様に、比較例のドライラミネート2は実施例のドライラミネート2に、比較例のドライラミネート1は実施例の押出しラミネート1に、比較例のドライラミネート2は実施例の押出しラミネート2に対して、使用するプライマー組成物を変更した他は同じ材料及び方法により得たものである。
そして、比較例のドライラミネート1及び2、及び押出しラミネート1及び2では、各ラミネートにて、脱離用プライマー組成物として、下記PVAを使用したものと、下記汎用ポリウレタンを使用したものの2種を使用した。
【0143】
<比較例のドライラミネート1(基材フィルム:通常フィルム)>(なお、下記比較例のドライラミネート2、及び比較例の押出しラミネート1及び2も、比較例のドライラミネート1と同様に、それぞれのラミネート構造につき、下記の2種の比較例の脱離用プライマー組成物を個別に使用したサンプルを作成した。そのため、各比較例のラミネート構造には、下記PVAを使用したものと、下記汎用ポリウレタンを使用したものの2種を得た。)
下記のラミネート構造1になるように、P-2161#25の片面(処理面)にグラビア印刷機を利用して、所定の塗布量となるように適宜希釈した比較例の各脱離用プライマー組成物をグラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥した。この各脱離用プライマー組成物層の表面に、裏刷り用印刷インキ組成物1に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した希釈インキ組成物1を、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷、乾燥させて印刷物を得た。
その上に接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5、固形分30質量%)を塗布し、更にドライラミネート機でアルミニウム蒸着CPPフィルムを接着させて、下記の構造のラミネート印刷物を作成した。
【0144】
<比較例のドライラミネート2(基材フィルム:透明蒸着フィルム)>
下記のラミネート構造2になるように、透明蒸着PET又は透明蒸着NYの各種フィルムの処理面にグラビア印刷機を利用して、所定量の塗布量となるように希釈した、下記の比較例の各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥して印刷物を得た。更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈インキ組成物を、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷、乾燥させて印刷物を得た。
その上に接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50、固形分30質量%)を塗布し、更にドライラミネート機でRXC-22#60を接着させて、下記の構造2のラミネート印刷物を作成した。
【0145】
<比較例の押出しラミネート1>
下記のラミネート構造3になるように、PET又はNY又は透明蒸着PET又は透明蒸着NYの処理面にグラビア印刷機を利用して、所定量の塗布量となるように希釈した、下記の比較例の各脱離用プライマー組成物それぞれを、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥して2つの脱離用プライマー層形成済の樹脂基材を得た。更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈インキ組成物を、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷、乾燥させて印刷物を得た。
その上にAC剤(タケラックA-3210/タケラックA-3072、固形分7質量%)を塗布し、更に押出しラミネート機で溶融ポリエチレンを積層させて、下記の構造3のラミネート印刷物を作成した。
【0146】
<比較例の押出しラミネート2>
下記のラミネート構造4になるように、OPPフィルムの処理面にグラビア印刷機を利用して、所定量の塗布量となるように希釈した、下記の比較例の各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥して2つの脱離用プライマー層形成済の樹脂基材を得た。この各脱離用プライマー組成物の表面に、各裏刷り用印刷インキ組成物に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社製ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈インキ組成物を、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷、乾燥させて印刷物を得た。
その上にAC剤(エポミンP-1000,固形分0.7質量%)を塗布し、更に押出しラミネート機で溶融ポリエチレンを積層させて、下記の構造4のラミネート印刷物を作成した。
【0147】
(比較例の各脱離用プライマー組成物塗布方法・塗布条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版
乾燥温度:70℃
【0148】
(裏刷り用印刷インキ組成物の印刷方法・印刷条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版
乾燥温度:55℃
【0149】
比較例のラミネート構造1(なお、下記比較例のラミネート構造2~4も比較例のラミネート構造1同様に、それぞれのラミネート構造につき、下記の2種の比較例の脱離用プライマー組成物を個別に使用したサンプルを作成した。そのため、各比較例のラミネート構造には、下記PVAを使用したものと、下記汎用ポリウレタンを使用したものの2種を得た。)
:OPPフィルム/比較例の脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5 固形分30質量%)/アルミニウム蒸着CPPフィルム
OPPフィルム:コロナ放電した二軸延伸プロピレンフィルム P-2161#25(厚さ25μm)(東洋紡社)
接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5):芳香族エーテル系2液接着剤固形分30質量%(三井化学社)
アルミニウム蒸着CPPフィルム:商品名CP WS(三井化学東セロ社)
【0150】
比較例のラミネート構造2
:透明蒸着PETフィルム又は透明蒸着NYフィルム/比較例の下記脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50、固形分30質量%) 固形分30%)/RXC-22#60
透明蒸着PETフィルム:GL-ARH-F(凸版印刷社)
透明蒸着NYフィルム:GL-ARH-W(凸版印刷社)
接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50):2液接着剤 固形分30質量%(三井化学社)
RXC-22#60:無延伸プロピレンフィルム(三井化学東セロ社)
【0151】
比較例のラミネート構造3
:PETフィルム又はNYフィルム又は透明蒸着PETフィルム又は透明蒸着NYフィルム/比較例の各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/AC剤(タケラックA-3210/タケラックA-3072、固形分30質量%)/溶融ポリエチレン
PETフィルム:ポリエステルフィルム E-5102#12(東洋紡社)
NYフィルム:ナイロンフィルム ON-15#12(ユニチカ社)
透明蒸着PETフィルム:GL-ARH-F(凸版印刷社)
透明蒸着NYフィルム:GL-ARH-W(凸版印刷社)
AC剤(タケラックA-3210/タケラックA-3072):固形分30質量%(三井化学社)
溶融ポリエチレン:スミカセンL705 樹脂温355℃(住友化学社)
【0152】
比較例のラミネート構造4
:OPPフィルム/比較例の各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/AC剤(エポミンP-1000,固形分0.7質量%)/溶融ポリエチレン
OPPフィルム:コロナ放電した二軸延伸プロピレンフィルム P-2161#25(東洋紡社)
AC剤(エポミンP-1000):ポリエチレンイミン 固形分0.7質量% (三日本触媒社)
溶融ポリエチレン:スミカセンL705 樹脂温355℃(住友化学社)
【0153】
(比較例の脱離用プライマー組成物)
PVA:ポバール28-98(ケン化度が90%以上のポリビニルアルコール)(クラレ社)
汎用ポリウレタン:上記記載のポリウレタン樹脂2(バイオマスポリウレタンでないもの)
【0154】
裏刷り用印刷インキ組成物については、3種類のポリウレタン樹脂ワニス(ポリウレタン樹脂ワニス1(バイオマスポリウレタン)、ポリウレタン樹脂ワニス2(バイオマスポリウレタンでないもの)、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られるポリウレタン樹脂ワニス3)を使用した各裏刷り用印刷インキ組成物のどれを用いても下記評価は同じであった。そのため、ポリウレタン樹脂ワニス1(バイオマスポリウレタン)についての結果を下記に示す。
表6は比較例のラミネート構造1のときの結果であり、表7は比較例のラミネート構造2のときの結果であり、表8は比較例のラミネート構造3のときの結果であり、表9は比較例のラミネート構造4のときの結果である。
インキ脱離性、接着性、ラミネート強度は、上記と同様な方法及び評価基準で行った。
但し、インキ脱離性は、脱離液2のアルカリ水溶液で行った。脱離液2は、98.0質量部の水に水酸化ナトリウム2質量部を添加し、撹拌・溶解して得た。
【0155】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0156】
表2~5に示す結果によれば、本発明の脱離用プライマー組成物を塗布した場合には、水及びアルカリ水溶液のいずれによっても円滑に脱離できた。そして印刷直後の接着性、ラミネート強度及び耐ブロッキング性にも優れていた。
しかしながら、本発明の脱離用プライマー組成物を塗布しない場合、及び表6~9のPVA及び汎用ポリウレタンを塗布した場合には、脱離性と優れたラミネート強度を両立できなかった。
この比較例に関して、ポリウレタン樹脂ワニス1に代えてポリウレタン樹脂ワニス2及び3を採用しても同様の結果であった。
【0157】
<表刷り印刷の実施例>
(ポリウレタン樹脂ワニス)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールの100質量部、質量平均分子量2,000のポリプロピレングリコール100質量部、イソホロンジイソシアネートの17.6質量部、水添MDIの21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチルの523.3質量部、イソプロピルアルコールの223.8質量部を加えた後、イソホロンジアミンの8.2質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミンの0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミンの1.3質量部、ジエチレントリアミンの0.6質量部を加えて反応停止させてウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂ワニス(固形分25質量%))を得た。
【0158】
(CAB)
セルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカル社、数平均分子量70,000、ブチリル化(butyryl)度35~39%)
【0159】
(硝化綿)
ニトロセルロース(30重量%の水により水和物となったもの)(NOBEL NC CO.,Ltd.社 DLX5-8)35質量部を、酢酸エチル58部及びイソプロピルアルコール7部からなる混合溶媒に溶解させて固形分35質量%のニトロセルロース溶液を得た。
【0160】
(ポリアミド樹脂)
トール油脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(Mw8,000、酸価2、軟化点110℃)
(ポリ塩化ビニル)
ソルバインTA5R(日信化学工業社)
(アクリル樹脂)
ハイロス-X・RL-4032(固形分40質量%)(星光PMC社)
(ポリエチレンワックス)
PA-60(固形分25質量%)(ポリコン社)
(酸化チタン)
タイペークPFR209(石原産業社)
【0161】
<印刷インキ組成物の調製>
以下の表10の質量割合(質量%)にしたがって、それぞれの材料をペイントコンディショナーで混練し、印刷インキ組成物を調製した。また得られた印刷インキ組成物について、以下の条件にてグラビア印刷を行い、印刷物を得た。得られた印刷物について、以下の評価方法にしたがって、接着性、脱離性を評価した。
【0162】
<印刷物の作製>
コロナ放電処理した延伸ポリプロピレンフィルム(商品名OPP P-2161、25μm、東洋紡社)上に所定の塗布量となるように適宜希釈したポリブタジエン系化合物(チタボンドT-180E)をグラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥して、表11の塗布量のポリブタジエン系化合物からなる層を得た。また、下記表10の各表刷り用印刷インキ組成物に対して、それぞれの表刷り用印刷インキ組成物が含有する溶剤の種類及び各溶剤間の含有量の質量比が変化しないように溶剤を加えて、離合社ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈表刷り用インキ組成物を得た。次いで、上記ポリブタジエン系化合物からなる層の表面に、各希釈表刷り用インキ組成物をグラビア印刷機を用いて下記条件で印刷、乾燥させて各表刷り用印刷インキ組成物印刷物を得た。この各表刷り用印刷インキ組成物の印刷物1.5gをMD15mm×TD25mm程度の小片に細断して、印刷層剥離試験用サンプルを得た。
【0163】
(脱離用プライマー組成物塗布方法・塗布条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版
乾燥温度:70℃
(表刷り用印刷インキ組成物の印刷方法・印刷条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版
乾燥温度:55℃
インキ脱離性、接着性は、上記記載と同様な方法及び評価基準で行った。
【0164】
<基材への接着性の評価>
印刷物の作成で得られた各印刷物のそれぞれの印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷被膜の剥離する度合いから、以下の評価基準に沿って接着性を評価した。
【0165】
(評価基準)
〇:印刷被膜の面積比率として、フィルムからの剥離が5%未満であった。
△:印刷被膜の面積比率として、5%以上30未満がフィルムから剥離した。
×:印刷被膜の面積比率として、30%以上がフィルムから剥離した。
【0166】
<印刷層剥離試験方法>
(水からなる脱離液1の調製)
水のみからなる脱離液1
(アルカリ水溶液からなる脱離液2の調製)
98.0質量部の水に水酸化ナトリウム2.0質量部を添加し、撹拌・溶解してアルカリ水溶液からなる脱離液2を得た。
【0167】
(脱離液1の予熱)
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)各製容器に水からなる脱離液1を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離液2の予熱)
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)各製容器にアルカリ水溶液からなる脱離液2を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離)
各脱離液が70℃に達した後、上記各印刷層剥離試験用サンプルを脱離液中に投入し、羽の直径が25mmのステンレススチール製撹拌羽を用いて水からなる脱離液1の場合は60分間、アルカリ水溶液からなる脱離液2の場合は30分間撹拌した。撹拌後、HDPE(高密度ポリエチレン)製容器を湯浴より取り出し、室温下で5分間静置した。脱離液とフィルム片を目開き約2mmのステンレススチール製網を用いて分離した。
(すすぎ)
脱離後のフィルムを200ccのHDPE製容器に移し、水100gを加えた。羽の直径が25mmのステンレススチール製撹拌羽を用いて5分間撹拌した。5分間静置後、ステンレススチール製網を用いてフィルム片と水を分離した。フィルム片を乾燥後、フィルムからのインキの剥離性を目視評価した。
【0168】
脱離(アルカリ)条件:70℃ 2%水酸化ナトリウム水溶液中で30分撹拌
(評価基準)
○:インキ被膜が被膜片としてフィルムから完全に剥離したもの
×:剥離しなかったもの
【0169】
脱離(熱水)条件:70℃ 熱水中で60分撹拌
(評価基準)
○:インキ被膜が被膜片としてフィルムから完全に剥離したもの
×:剥離しなかったもの
【0170】
【表10】
【0171】
【表11】
【0172】
表11の脱離用プライマー組成物:ポリブタジエン系化合物を塗布した場合には、表刷り用印刷インキ組成物1~8のいずれの場合も、脱離液として、水、アルカリ水溶液を使用しても、脱離が可能であり、コロナ放電処理した延伸ポリプロピレンフィルム(商品名OPP P-2161、25μm、東洋紡社)に対する接着力も良好であった。
【0173】
<シュリンク印刷の実施例>
(アクリル樹脂合成)
モノマー組成[n-ブチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート=35/20/15/30(質量比)]で溶液重合により重合した後、溶剤を蒸発させたものを用いた。質量平均分子量:60,000、水酸基価:60mgKOH/gであった。
【0174】
(シュリンク包装用印刷インキ組成物1の製造)
顔料(C.I.PB15:4)10.0質量部、上記アクリル樹脂10.0質量部、ニトロセルロース(製品名:LIG 1/8、エスエヌピーイージャパン社)3.5質量部、メチルシクロヘキサン20.0質量部、イソプロピルアルコール35.5質量部、酢酸エチル21.0質量部、常法により練肉・分散してシュリンク包装用印刷インキ組成物1を製造した。
【0175】
(シュリンク包装用印刷インキ組成物2の製造)
顔料(C.I.PB15:4)の10.0質量部と、カルボキシル基含有アクリル樹脂(モノマー組成:MAA/MMA/BMA 理論酸価3mgKOH/g、質量平均分子量60,000)の9.0質量部、イソプロピルアルコール10.0質量部、酢酸エチル15.0質量部を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、上記カルボキシル基含有アクリル樹脂1.2質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB-381-0.5、Eastman社、数平均分子量30,000)5.0質量部、ロジンエステル(酸価7mgKOH/g)5.0質量部、エポキシ化大豆油1.0質量部、ステアリン酸アミド0.5質量部、Spray 30(Sasol社)2.2質量部、BYK-094(BYK社)0.3質量部、ノルマルプロピルアルコール4.5質量部、イソプロピルアルコール27.4質量部、酢酸エチル9.1質量部を添加混合し、シュリンク包装用印刷インキ組成物2を調製した。
【0176】
(印刷物の作製)
結晶化可能な収縮PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、所定の塗布量となるように適宜希釈した上記ポリブタジエン系化合物(チタボンドT-180E)をグラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥して表12に記載の塗布量であるポリブタジエン系化合物からなる層を得た。また上記各シュリンク包装用印刷インキ組成物に対して、それぞれのシュリンク包装用印刷インキ組成物が含有する溶剤の種類及び各溶剤間の含有量の質量比が変化しないように溶剤を加えて、離合社ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各希釈シュリンク包装用印刷インキ組成物を得た。次いで、上記ポリブタジエン系化合物からなる層の表面に、各希釈シュリンク包装用印刷インキ組成物をグラビア印刷機を用いて下記条件で印刷、乾燥させて各印刷物を得た。この各シュリンク包装用印刷インキ組成物の印刷物1.5gをMD15mm×TD25mm程度の小片に細断して、印刷層剥離試験用サンプルを得た。
(脱離用プライマー組成物塗布方法・塗布条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版
乾燥温度:70℃
(シュリンク包装用印刷インキ組成物の印刷方法・印刷条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版
乾燥温度:55℃
【0177】
<基材への接着性の評価>
印刷物の作製で得られた各印刷物のそれぞれの印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷被膜の剥離する度合いから、以下の評価基準に沿って接着性を評価した。
(評価基準)
〇:印刷被膜の面積比率として、フィルムからの剥離が5%未満であった。
△:印刷被膜の面積比率として、5%以上30未満がフィルムから剥離した。
×:印刷被膜の面積比率として、30%以上がフィルムから剥離した。
【0178】
<印刷層剥離試験方法>
(水からなる脱離液1の調製)
水のみからなる脱離液1
(アルカリ水溶液からなる脱離液2の調製)
98.0質量部の水に水酸化ナトリウム2.0質量部を添加し、撹拌・溶解してアルカリ水溶液からなる脱離液2を得た。
【0179】
(脱離液1の予熱)
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)各製容器に水からなる脱離液1を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離液2の予熱)
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)各製容器にアルカリ水溶液からなる脱離液2を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離)
脱離液の温度が70℃に達した後、上記印刷層剥離試験用サンプルを各脱離液中に投入し、羽の直径が25mmのステンレススチール製撹拌羽を用いて水からなる脱離液1の場合は60分間、アルカリ水溶液からなる脱離液2の場合は30分間撹拌した。撹拌後、HDPE製容器を湯浴より取り出し、室温下で5分間静置した。脱離液とPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム片を目開き約2mmのステンレススチール製網を用いて分離した。
脱離(アルカリ)条件:70℃ 2%水酸化ナトリウム水溶液中で30分撹拌
(評価基準)
○:インキ被膜が被膜片としてフィルムから完全に剥離したもの
×:剥離しなかったもの
脱離(熱水)条件:70℃ 熱水中で60分撹拌
(評価基準)
○:インキ被膜が被膜片としてフィルムから完全に剥離したもの
×:剥離しなかったもの
【0180】
【表12】
【0181】
表12によれば、ポリブタジエン系化合物を塗布した場合には、シュリンク包装用印刷インキ組成物1及び2のいずれの場合も、脱離液として、水、アルカリ水溶液を使用しても、脱離が可能であり、結晶化可能な収縮PETフィルムに対する接着力も良好であった。
【0182】
<ラミネート紙の紙基材側への印刷の実施例>
(水性フレキソ用印刷インキ組成物の製造)
<水性印刷インキの製造方法>
顔料(フタロシアニンブルー、C.I.ピグメントブルー15:3)の15質量部、アルカリ可溶型水溶性樹脂(ジョンクリルHPD-671、BASF社製、固形分25%)の15質量部、(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックポリマー((EO/PO)ブロックポリマー、HLB値14、Mw16000)の0.5質量部、ジブチルグリコールの0.03質量部、水の22.97質量の混合物をビーズミルで混練分散後、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン(酸価38mgKOH/g、ガラス転移温度9℃、固形分38.5%)の43.25質量部、ポリエチレンワックス(ケミパールW-100、固形分35質量%、三井化学社製)の2.5質量部、消泡剤(SNデフォーマー777♯C サンノプコ社)の0.75質量部を加え混合して、水性フレキソ印刷インキ組成物を得た。
【0183】
(印刷物の作製)
直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(TUX-HC#50、厚さ25μm、三井化学東セロ社)にグラビア印刷機を利用して、ポリブタジエン系化合物を下記の表13となるように希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥した。その上に接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5、固形分30質量%)を塗布し、更にドライラミネート機で厚物片艶晒クラフト紙(OKブリザード、770g/m、王子マテリア社)の艶が無い方の面を接着させて本発明のラミネート紙を得た。この紙の表面に,上記フレキソ用印刷インキ組成物を200線ハンドプルーファーにて展色し、乾燥させ印刷物を得た。この各印刷物1.5gをMD15mm×TD25mm程度の小片に細断して、印刷層剥離試験用サンプルを得た。
(脱離用プライマー組成物塗布方法・塗布条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch (130°)のベタ版
乾燥温度:70℃
ラミネート構造:
TUX-HC#50/ポリブタジエン系化合物/接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5 固形分30%)/OKブリザード(70g/m2)/フレキソ用印刷インキ組成物
【0184】
<印刷層剥離試験方法>
(水からなる脱離液1の調製)
水のみからなる脱離液1
(アルカリ水溶液からなる脱離液2の調製)
98.0質量部の水に水酸化ナトリウム2.0質量部を添加し、撹拌・溶解してアルカリ水溶液からなる脱離液2を得た。
(脱離液1の予熱)
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)各製容器に水からなる脱離液1を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離液2の予熱)
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)各製容器にアルカリ水溶液からなる脱離液2を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離)
脱離液の温度が70℃に達した後、上記印刷層剥離試験用サンプルを各脱離液中に投入し、羽の直径が25mmのステンレススチール製撹拌羽を用いて水からなる脱離液1の場合は60分間、アルカリ水溶液からなる脱離液2の場合は30分間撹拌した。撹拌後、HDPE製容器を湯浴より取り出し、室温下で5分間静置した。脱離液とPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム片を目開き約2mmのステンレススチール製網を用いて分離した。
脱離(アルカリ)条件:70℃ 2%水酸化ナトリウム水溶液中で30分撹拌
(評価基準)
○:紙がフィルムから完全に剥離したもの
×:剥離しなかったもの
脱離(熱水)条件:70℃ 熱水中で60分撹拌
(評価基準)
○:紙がフィルムから完全に剥離したもの
×:剥離しなかったもの
【0185】
ラミネート強度
上記各印刷物を15mm幅に切断し、安田精機製作所社製剥離試験機を用いて、T型剥離強度を測定した。
(評価基準)
〇:剥離強度が1.2N/15mm以上のもの
△:剥離強度が0.7N/15mm以上、1.2N/15mm未満のもの
×:剥離強度が0.7N/15mm未満のもの
【0186】
【表13】
【0187】
表13に示す結果によれば、本発明の脱離用プライマー組成物を塗布した場合には、水及びアルカリ水溶液のいずれによっても円滑に脱離できた。そしてラミネート強度にも優れていた。
しかしながら、本発明の脱離用プライマー組成物を塗布しない場合、及び表6のPVA及び汎用ポリウレタンを塗布した場合には、脱離性と優れたラミネート強度を両立できなかった。
この比較例に関して、ポリウレタン樹脂ワニス1に代えてポリウレタン樹脂ワニス2及び3を採用しても同様の結果であった。