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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081293
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】認知能力改善支援システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 7/08 20060101AFI20230602BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20230602BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20230602BHJP
【FI】
G09B7/08
G09B19/00 Z
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163789
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2021194267の分割
【原出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】515140196
【氏名又は名称】株式会社スタートライン
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】小倉 玄
(72)【発明者】
【氏名】刎田 文記
【テーマコード(参考)】
2C028
5L049
【Fターム(参考)】
2C028AA12
2C028BC01
2C028BD01
5L049CC34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】社会生活の中で生じる認知的問題に対処し、当該問題点を解決する支援を与え、システム面から担保する認知能力改善支援システムを提供する。
【解決手段】人間の認知に係るアセスメントの構成が少なくともアセスメントフェーズ及び訓練フェーズとに分類して定義されるアセスメント構成部と、関係フレーム理論に基づく設問を被訓練者に提示する設問生成・提示部と、提示された設問に対する回答を被訓練者から得る回答処理部と、回答受領部にて得られた回答に対して関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断を行う認知状態解析・判断・分類部とを具備し、単数あるいは複数のクライアントが用いるクライアント端末、単数あるいは複数のセラピストが用いるセラピスト端末、クライアントを支援する単数あるいは複数の支援者が用いる支援者端末、のうちの少なくともいずれかが含まれる端末と、端末と通信回線で接続されて全体を制御するサーバとを備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の認知に係るアセスメントの構成が少なくともアセスメントフェーズ及び訓練フェーズとに分類して定義されるアセスメント構成部と、
関係フレーム理論に基づく設問を被訓練者に提示する設問生成・提示部と、
前記提示された設問に対する回答を前記被訓練者から得る回答処理部と、
前記回答受領部にて得られた前記回答に対して前記関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断を行う認知状態解析・判断・分類部と
を具備することを特徴とする認知能力改善支援システム。
【請求項2】
前記アセスメントフェーズと前記訓練フェーズとで提示される前記設問には、前記関係フレーム理論により体系化された、等位関係、反対関係、区別関係、比較関係、階層関係、時間関係、空間関係、因果関係、視点・直示の関係、相互的内包関係、複合的相互的内包関係、のうちの少なくともいずれかである関係を問う質問、および/または、一般化を問う設問、が少なくとも含まれることを特徴とする請求項1記載の認知能力改善支援システム。
【請求項3】
前記アセスメントフェーズと前記訓練フェーズとが繰り返されることを特徴とする、請求項1もしくは2記載の認知能力改善支援システム。
【請求項4】
前記アセスメントフェーズと前記訓練フェーズとで提示される前記設問は、前記関係フレーム理論により体系化された、等位関係、反対関係、区別関係、比較関係、階層関係、時間関係、空間関係、因果関係、視点・直示の関係、相互的内包関係、複合的相互的内包関係、のうちの少なくともいずれかである関係に基づいて難易度がレベル分けされることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか1項記載の認知能力改善支援システム。
【請求項5】
単数あるいは複数のクライアントが用いるクライアント端末、単数あるいは複数のセラピストが用いるセラピスト端末、前記クライアントを支援する単数あるいは複数の支援者が用いる支援者端末、のうちの少なくともいずれかが含まれる端末と、
前記端末と通信回線で接続されて全体を制御するサーバと
を備えて構成され、
前記端末と前記サーバとはコンピュータシステムで構成されることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか1項記載の認知能力改善支援システム。
【請求項6】
前記サーバに係るサーバプログラムが、前記アセスメント構成部、および/または前記設問生成・提示部、および/または前記回答処理部、および/または前記認知状態解析・判断・分類部を具備することを特徴とする請求項5記載の認知能力改善支援システム。
【請求項7】
前記サーバプログラムが参照するデータベースとして、クライアントデータベース、および/または支援者データベース,および/またはセラピストデータベース、および/またはアセスメントテンプレートデータベース、および/またはアセスメント実施データベース、および/または訓練テンプレートデータベース、および/または訓練実施データベース、および/またはクライアントの認知状態データベース、およびこれらと実質的に同じ機能を有するデータベースが含まれることを特徴とする請求項6記載の認知能力改善支援システム。
【請求項8】
前記クライアントデータベースにはアセスメントや訓練を受けるクライアントの情報が、前記支援者データベースにはクライアントが所属する、家族及び/もしくは上司を含んでよいコミュニティ関係者の情報が、前記セラピストデータベースにはアセスメントおよび訓練を実施するセラピストの情報が、前記アセスメントテンプレートデータベースにはクライアントの状態を知るための設問の基本形に係る情報が、前記アセスメント実施データベースにはこれまで行ったアセスメントの内容に係る情報が、前記訓練テンプレートデータベースにはクライアントを訓練するための設問の基本形に係る情報が、前記訓練実施データベースにはこれまで行った訓練の内容に係る情報が、前記クライアント精神状態データベースには現在及び過去のクライアントの精神状態が、それぞれ保存されることを特徴とする請求項7記載の認知能力改善支援システム。
【請求項9】
前記認知状態解析・判断・分類部においては、支援者及び/もしくはセラピストによる判断が処理され、および/または設問提示から回答までの時間、回答内容、つぶやき、しぐさ、動作、表情のうちの少なくともいずれかに係る情報から特徴量、および/または言語解析による単語を抽出し、深層学習を含む人工知能技術によって認知状態が判断されることを特徴とする請求項1~8のうちのいずれか1項記載の認知能力改善支援システム。
【請求項10】
クライアントがアセスメントや訓練を行っている状況を観察した前記支援者及び/もしくは前記セラピストが必要に応じて介入することを受け付ける介入受付部をさらに具備することを特徴とする請求項1~9のうちのいずれか1項記載の認知能力改善支援システム。
【請求項11】
クライアントに対するアセスメント及び/もしくは訓練についての継続・中断/中止の起動が、支援者、セラピスト、人工知能技術の少なくともいずれかからの入力動作を受け付けることによって行われることを特徴とする請求項1~10のうちのいずれか1項記載の認知能力改善支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえば認知能力改善支援システムに係り、特に、関係フレーム理論に基づき、社会の様々な場面で生じる認知的問題により良く対応することを支援する、認知能力の訓練とその問題解決の支援をシステム的に担保する認知能力改善支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
社会生活の中で生じる認知的問題により良く対処したいという不断の要求が存在する。たとえば、組織内や地域内でのストレスから解放されたい、人間関係を良くしたい、相手を理解したい、自分を理解してもらいたい、いじめから解放されたい、学校や学習塾における学習者の理解促進を図りたい、精神疾患者として社会参加を果たしたい・より高度な社会参加をしたいなど、社会のあらゆる場面において認知的諸問題の解決に対する要求が存在する。実際、これらの問題を対象にした発明が開示されている(特許文献1~3)。
【0003】
しかし、これらの要求は決して最近始まったものではなく、過去から継続的に存在していた。それにもかかわらず、依然としてこの問題の新たな解決手法が要求され続けている理由は、認知的問題に対する対処が満足できる程度には上手く行っていないという事実にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-212687号公報
【特許文献2】特開2009-110490号公報
【特許文献3】特開2015-153413号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ニコラス・トールネケ、「関係フレーム理論をまなぶ」、山本淳一監修、星和書店、2020年、初版第2刷
【非特許文献2】刎田文記、「こころがふわっと軽くなるACT」、星和書店、2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題が十分に解決されなかった根本的原因は、社会生活を営む人間の認知的、言語的、行動的な理解の不十分さと、それらを記述する理論的枠組が不十分なままであったことにある。その結果、前記問題へ対処する技術の根拠が十分には示されず、対処療法的なものに留まっていった。たとえば、特許文献1~3でも問題に対処する技術は開示されているものの、その背景としての理論的枠組や根拠は示されていない。理論的枠組みが不十分なままでは、上記問題への対処に限界があることは当然である。
【0007】
本発明は、社会生活の中で生じる認知的問題に対処し、当該問題点を解決する支援を与え、その解決をシステム面から担保する認知能力改善支援システムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記根本原因を解決するためには、人間の言語認知機能と行動に関する理論的枠組みが必要である。その理論的枠組みとして、本発明者らは関係フレーム理論(Relational Frame Theory, RFT)に着目した。RFTはスキナーによる言語行動の研究を発展させたものであり、言語行動を分析するための枠組みである。RFTは以下の思想、すなわち、行動は全て文脈の中で生じること、気持ち・記憶・身体感覚・思考などを共有することは社会的共同体にとって価値を持つこと、個人の私的世界は社会的相互作用に有用であること(たとえば、投げかけられた問いによって自分自身に気付かされた人は自らの行動を予測し、コントロールする上でより良い立場に立つことができる)、人間は物事によって動かされるのではなく物事の見方を通して動かされること、これらの体系化は臨床的に重要であること、などの下に発展してきたものである。本発明者は、さらに、RFTを単なる理論に留まらせるのではなく、実際の応用を視野に入れてたシステムとして実現することを着想した。
【0009】
ここで、本発明の技術的思想の基礎を成すRFTを概説する。
【0010】
人間は、様々な関係(例えば、AはBより重いなどの比較関係、ボールに当たったから痛いなどの時間的関係や因果関係、実体としての「クッキー」‐言葉の「クッキー」‐味覚としての「甘い」などの間の意味的かつ等位関係など)の中で物事を位置付ける。RFTは比較関係、時間的関係、因果関係、等位関係にとどまらず、ヒトが扱うすべての関係を言語という視点から体系化し、それらが等位関係、反対関係、区別関係、比較関係、階層関係、時間関係、空間関係、因果関係、視点・直視の関係で構成されることを示した(非特許文献1)。
【0011】
すなわち、RFTによれば、言語行動とは刺激や出来事を、自分の認知的構造に関係付け、その結果としてアクション/リアクションすることである(非特許文献1)。
【0012】
さらにRFTを説明する。人間の場合には前述のA はBより重いなどの一方向的な二項関係に留まらない。たとえば、無意味刺激Aが提示されたとき複数の無意味選択肢の中からBが選択されたらそれを強化するような教示を与える(たとえば褒めるなど)。すると、Aの提示によってBが選択される確率が上昇するという予想通りの結果を得る。すなわちA→Bの確立である。これは古典的なオペラント学習(結果による学習)である。ところが、提示の順番を逆にしてBをまず提示する。すると、Aを選択する確率が上昇するのである。ここで注意すべきはB→Aは学習していないのに、A→Bを学習した後には、あたかもB→Aを学習したかのようにB→Aも構築されるのである。RFTではこれを、相互的内包と呼ぶ。
【0013】
派生的刺激関係は更に複雑な関係を生む。上記のA→Bの関係とは別に、B→Cの関係を学習したとする。もちろんC→Bの関係が構築されるのは前述のとおりであるが、これに加えてA→CやC→Aの関係も構築されるのである。RFTではこれを複合的相互的内包と呼ぶ。これはいわば、甘くて美味しい饅頭を売るX和菓子店から購入した饅頭が傷んでいて腹痛を起こしたとき(すなわちA:「X和菓子店」→B:「甘くて美味しい饅頭」→C:「腹痛」というA→B→C関係の構築)、「腹痛を起こすからX和菓子店の饅頭を食べない」(C→A)という関係が自動的に形成されるようなものである。相互的内包も複合的相互的内包も人間固有のものであり、他の霊長類には存在しないとされる。
【0014】
ここで重要なのは、上記のA→CやC→Aのような派生的刺激関係は、如何なるオペラント学習もレスポンデント学習(無条件刺激による学習)も不要であり、Aが提示されるとCを選択することが獲得されることである。これはBを選択するための刺激Aが、派生的刺激関係によってCを選択するように刺激の変容が生じたと解釈することが可能である。このようにしてRFTは、派生的刺激関係が確立されると刺激機能が変容することを体系化した。
【0015】
さらにRFTでは、このように構築された関係は消去できないこと、般化が生じること、自己ルールの自己形成が生じること(ルールに従う行動は環境中の人間から学ぶが、次第に自分で自分の為のルールを特定・構築すること)、ルールに支配された行動であるルール支配行動が生じること(この場合のルールは広く解釈され、例えば「外で待っていてください。すぐに行きますから」と言われて外に出る行動をとった場合のルールは、「外で待っていてください」である)などを論じている。RFTでは、これらはいずれも量的関係、時間的関係や因果関係、意味的関係などの複雑な関係を基盤にした行動であると捉える。
【0016】
そのうえ、上記のような関係の構築は、ある時点での文脈手がかりに依存することを主張する。すなわち、現下に話された言葉だけでなくその背景となっている文脈を手がかりとして、異なる刺激間の関係が確立され、こうして確率された関係に基づいて行動が選択されるが、どの行動が選択されるのかも文脈手がかりに支配されることを主張する。
【0017】
RFTに依れば、ルール支配行動にはプライアンスやトラッキングが存在する。プライアンスは、行動と先行言語刺激の一致に対して強化されるルール支配行動である。例えば、上司の指示に従って仕事を行うような行動である。一方トラッキングは、ルールとそのルールとは独立した環境との間の一致に対して強化される支配行動である。例えば、目的地への行き方を聞いてそれに従って行動するような場合である。教えてもらった目印が正しければ、次の目印を期待して教えてもらった通りに移動するであろう。
【0018】
このように人間は様々な関係を構築し、言語に依拠して行動(言語行動)を行う。RFTではスキナーに準じ、言語行動をタクト(先行刺激によって制御される行動:「椅子」があると「イス」と言うなど)、マンド(様々なタイプの命令や要求などに対する行動)、エコーイック(例えば、幼児が親の言葉をオウム返しする行動)、イントラバーバル(社会的な任意性の中で構築された関係によって生じる行動:ある人が「イチ」、「ニ」、「サン」と言うと、別の人が「ヨン」と言う行動)、オートクリティック(話者の立場を表明する言語行動であり、たとえば「地球外生命体は存在するかも知れない」という場合のアンダーライン部分に相当)などに分類する。
【0019】
さらにRFTに依れば、自己の視点と他者の視点を説明することが可能であると主張される。
【0020】
ここで留意すべきは、前記関係のすべてを、すべての対象が同等に有してはいないことである。前記関係にはその構築と理解に難易があり、健常人であっても複雑な関係になればなるほど個人差が現れる。知的障害児・者や認知機能が十分に機能しない対象においては、複雑な関係が処理できないことが知られる。
【0021】
一方、適応の増大が常に良い結果を生むとは限らない。例えばAという刺激に対してBという行動が正解であったが、明示的、暗黙的に関わらず、途中で正解がBからCへとルールが変更されてもすぐにルールを変更できず、依然としてBを選択してしまうことが生じる。これは心理学ではよく知られる古典的な現象であるが、RFTでは随伴性として議論される。随伴性が日常にもたらす悪影響が大きい場合をRFTでは特にダークサイドと呼び、ダークサイドに陥ると社会的適応に困難が生じるとして、これからの回避が議論される。
【0022】
このように、RFTでは言語を中心とした認知的問題について包括的な体系を構築してきた。次に、なぜRFTを基礎にすることによって認知的問題を支援するシステムが実現できるのかを示す。
【0023】
第1に、上記までの説明で理解されるように、RFTは言語行動の現象を体系化し、言語行動に影響を与える様々な要因を列挙することによってプラグマティックに説明することを可能としたことが挙げられる。すなわち、1)受ける刺激や出来事としての言語を、それを受けた人間が有する固有の関係の中に置き、新しい刺激の結果として生じた関係に基づいて行動が発せられること、2)上記関係には等位関係、反対関係、区別関係、比較関係、階層関係、時間関係、空間関係、因果関係、視点・直示の関係が存在すること、3)それらの関係から相互的内包、複合的相互的内包が追加的な学習を行うことなく自己生成され、刺激機能の変容が生じること、4)これらの関係が文脈的な流れの中で形成されること、5)刺激として与えられる言語によってエコーイック、イントラバーバル、オートクリティックなどの言語行動が生じること、6)形成された固有の関係によって独自のルールが形成されてルール支配行動が生じること、7)言語行動に影響する要因には、プラスにもマイナスにも働き得ることなどをRFTは明らかにした。
【0024】
第2に、前述のとおり、RFTは単なる理論に留まらず、実際の応用を視野に入れてきたことが挙げられる。RFTに基づくアセスメントおよび訓練では、対象と質問形式でやりとりすることによって上記1)~7)に関する状態を推定し、認知的状態の改善を行う。質問形式で対象の状態を推定する手法は古典的なものである。しかしそこに理論的裏付けがなければ、質問形式で得た回答の取り扱いが場当たり的で不十分なものになることは想像に難くない。本発明者らは、RFTに基づいて推定すれば、推定を根拠のある確かなものとすることができ、確実な改善に導くことが可能になることを着眼した。
【0025】
以上より明確であるのは、様々な認知的問題が生じて比較関係、時間的関係、因果関係、等位関係が適切に機能しなくなると、刺激に対するアクションが適切に行われなくなる、ということである。したがって、RFTに基づくアセスメントを行って認知的状態を知り、問題があった場合にはRFTに基づく訓練を行うことで、より適切な認知的状態に移行することを支援する技術を提供することがはじめて可能となる。
【0026】
以上より、本発明者らは、RFTの理論と手法に基づいて言語行動を分析し、対象に介入して影響を与えるコンピュータシステムによる技術を構築することにより、社会生活の中で生じる様々な認知的問題により良く対応する支援システムを提供できることを着想し、本発明を完成させるに至った。
【0027】
本発明の根本は、認知能力の訓練とその問題を解決するためシステムであって、アセスメントフェーズと訓練フェーズとで構成され、関係フレーム理論に基づく説問を被訓練者に提示して回答を得、関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断を行い、認知能力の改善を支援することにある。
【0028】
そこで、本発明の第1の態様に係る認知能力改善支援システムは、人間の認知に係るアセスメントの構成が少なくともアセスメントフェーズ及び訓練フェーズとに分類して定義されるアセスメント構成部と、関係フレーム理論に基づく設問を被訓練者に提示する設問生成・提示部と、前記提示された設問に対する回答を前記被訓練者から得る回答処理部と、前記回答受領部にて得られた前記回答に対して前記関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断を行う認知状態解析・判断・分類部とを具備して構成される。
【0029】
本発明の第2の態様として、第1の態様において、前記アセスメントフェーズと前記訓練フェーズとで提示される前記設問には、前記関係フレーム理論により体系化された、等位関係、反対関係、区別関係、比較関係、階層関係、時間関係、空間関係、因果関係、視点・直示の関係、相互的内包関係、複合的相互的内包関係、のうちの少なくともいずれかである関係を問う質問、および/または、一般化を問う設問、が少なくとも含まれるようにしてもよい。
【0030】
本発明の第3の態様として、第1もしくは第2の態様において、前記アセスメントフェーズと前記訓練フェーズとが繰り返されるようにしてもよい。
【0031】
本発明の第4の態様として、第1~第3の態様のうちのいずれか一の態様において、前記アセスメントフェーズと前記訓練フェーズとで提示される前記設問は、前記関係フレーム理論により体系化された、等位関係、反対関係、区別関係、比較関係、階層関係、時間関係、空間関係、因果関係、視点・直示の関係、相互的内包関係、複合的相互的内包関係、のうちの少なくともいずれかである関係に基づいて難易度がレベル分けされるようにしてもよい。
【0032】
本発明の第5の態様として、第1~第4の態様のうちのいずれか一の態様において、単数あるいは複数のクライアントが用いるクライアント端末、単数あるいは複数のセラピストが用いるセラピスト端末、前記クライアントを支援する単数あるいは複数の支援者が用いる支援者端末、のうちの少なくともいずれかが含まれる端末と、前記端末と通信回線で接続されて全体を制御するサーバとを備えて構成され、前記端末と前記サーバとはコンピュータシステムで構成されるようにしてもよい。
【0033】
本発明の第6の態様として、第5の態様において、前記サーバに係るサーバプログラムが、前記アセスメント構成部、および/または前記設問生成・提示部、および/または前記回答処理部、および/または前記認知状態解析・判断・分類部を具備するようにしてもよい。
【0034】
本発明の第7の態様として、第6の態様において、前記サーバプログラムが参照するデータベースとして、クライアントデータベース、および/または支援者データベース,および/またはセラピストデータベース、および/またはアセスメントテンプレートデータベース、および/またはアセスメント実施データベース、および/または訓練テンプレートデータベース、および/または訓練実施データベース、および/またはクライアントの認知状態データベース、およびこれらと実質的に同じ機能を有するデータベースが含まれるようにしてもよい。
【0035】
本発明の第8の態様として、第7の態様において、前記クライアントデータベースにはアセスメントや訓練を受けるクライアントの情報が、前記支援者データベースにはクライアントが所属する、家族及び/もしくは上司を含んでよいコミュニティ関係者の情報が、前記セラピストデータベースにはアセスメントおよび訓練を実施するセラピストの情報が、前記アセスメントテンプレートデータベースにはクライアントの状態を知るための設問の基本形に係る情報が、前記アセスメント実施データベースにはこれまで行ったアセスメントの内容に係る情報が、前記訓練テンプレートデータベースにはクライアントを訓練するための設問の基本形に係る情報が、前記訓練実施データベースにはこれまで行った訓練の内容に係る情報が、前記クライアント精神状態データベースには現在及び過去のクライアントの精神状態が、それぞれ保存されるようにしてもよい。
【0036】
本発明の第9の態様として、第1~第8の態様のうちのいずれか一の態様において、前記認知状態解析・判断・分類部においては、支援者及び/もしくはセラピストによる判断が処理され、および/または設問提示から回答までの時間、回答内容、つぶやき、しぐさ、動作、表情のうちの少なくともいずれかに係る情報から特徴量、および/または言語解析による単語を抽出し、深層学習を含む人工知能技術によって認知状態が判断されるようにしてもよい。
【0037】
本発明の第10の態様として、第1~第9の態様のうちのいずれか一の態様において、クライアントがアセスメントや訓練を行っている状況を観察した前記支援者及び/もしくは前記セラピストが必要に応じて介入することを受け付ける介入受付部をさらに具備するようにしてもよい。
【0038】
本発明の第11の態様として、第1~第10の態様のうちのいずれか一の態様において、クライアントに対するアセスメント及び/もしくは訓練についての継続・中断/中止の起動が、支援者、セラピスト、人工知能技術の少なくともいずれかからの入力動作を受け付けることによって行われるようにしてもよい。
【0039】
本発明のハードウエアは、サーバとクライアント端末で構成される。サーバは当業者が周知のコンピュータで構成され、クライアント端末も当業者が周知のPC、タブレット、スマートフォンなどで構成してもよい。
【0040】
上記とは別の態様として、クライアント端末のみで構成することも可能である。この場合には、すべての機能がクライアント端末に備わっており、新たなデータが必要になった場合や、クライアントに関する新たなデータを通知する必要が生じた場合のみ、外部と通信することが考えられる。
【0041】
上記ハードウエアにおいて、例えばサーバではサーバ側プログラム群が、クライアント端末ではクライアント側プログラム群によって本発明が実行される。サーバ側プログラム群とクライアント側プログラム群が有機的に動作することにより、対象の認知的問題の解決と発展が図られる。
【0042】
本発明の目的は対象の認知的問題を解決し、より良く対処できるように訓練をすることであるが、これを効果的に行うためには、まず対象の認知的状態を知り、次にそれに基づいて訓練を行う必要がある。そのために本発明では、初めに対象の認知レベルのアセスメントを行う。次にこのアセスメントに基づいて訓練のレベルと内容を選択して訓練を行う。すなわち、本発明ではアセスメントとそれに基づく訓練の繰り返し、すなわちアセスメント→訓練→アセスメント→訓練・・・の繰り返しにより、対象の認知レベルの改善が図られる。
【0043】
本発明のアセスメントは、RFTが体系化した等位関係、反対関係、区別関係、比較関係、階層関係、時間関係、空間関係、因果関係、視点・直示の関係、派生的刺激関係、複合的相互的内包、般化と、それらの難易に従って実行される。
【0044】
難易のレベル分けは、これに限られないが、4レベルに階層化することが考えられる。例えばレベル1には複雑な心的構造を必要としない言葉の一致(例えば、「おはようと言ったら何と応えますか」と問う)や画像の一致(例えば、1枚の画像を示してそれと同じものを複数の画像から選択させる)を問う設問、レベル2には等価性を問う設問(例えば、「ジャケットを選んでください」と言語で指示してジャケット、帽子、Tシャツの3つの画像から選択させる)、レベル3には派生的刺激関係を問う設問(例えば、正立の家の画像を示して、複数枚の家の画像から同じ家(しかし横倒しになっている)を選択させる)、レベル4には複数の感覚モーダルを課題に採り入れ、刺激等価性や派生的刺激関係を含めた設問、すなわちRFTが体系化した関係全体を問う設問(例えば、無意味つづりAと無意味図形aの対応関係と、別の無意つづりBと無意味図形bの対応関係まず形成させ、その後無意味図形aを提示して、無意味つづりA,M,NからAを選択させる)のように、難易度に応じて階層化する。
【0045】
アセスメントフェーズでは、対象の認知レベルのアセスメントを行うが、アセスメントは基本的には最も簡単な設問(レベル1)から始められる。当該レベルには複数の設問が設問群として登録されており、その中から1つが選択され、設問を開始して対象からの回答が評価される。引き続いて合否の判定が行われ、合格ならば設問がレベルアップされ、不合格ならば同レベルの設問群から別の設問が選択される。あるいはレベルを下げて繰り返されてもよい。状況により、合否判定は1問づつ行われたり、数問に渡って行われたり、全問回答後に行われたりがあり得、クライアントの状態に応じて決定してもよい。以上を繰り返すことにより、レベルが判定され、訓練フェーズに移る。
【0046】
訓練フェーズにおいても、設問はレベル分けされており、各レベルには複数の設問が設問群として登録されている。その中から対象のレベルに応じて1つが選択され、設問を開始して対象からの回答が評価される。引き続いて合否の判定が行われ、合格ならば設問がレベルアップされ、不合格ならば同レベルの設問群から別の設問が選択される。あるいはレベルを下げて繰り返されてもよい。以上を繰り返すことにより、レベルが判定され、訓練フェーズに移る。
【0047】
訓練フェーズにおいて、認知状態のアセスメントをやり直す必要が生じた場合にはアセスメントフェーズに戻り、再びアセスメントを行って認知レベルを確認してもよい。
【0048】
上記では、アセスメントと訓練を完全にソフトウエアのみで実施することを前提にしたが、支援者やセラピストなどの支援者が適宜介入しても良い。
【0049】
例えば、認知レベルが十分ではない子供においては、相手を見極めることが重要であり、飽きっぽい場合や逆に過集中が生じる場合を見極めて適宜対応したり、対象者が好むキャラクターや回答結果の提示に工夫が必要になったりする場合がある(子供の中には「ブーッ」のような音に過剰反応する場合がある)。このような状況に完全にソフトウエア的に対処することは現時点では不可能である。さらに、支援者やセラピストの存在がクライアントに安心感を与える場合もある。このように、現時点でヒトでしか対処できない場合もあるので、これを実現する目的で、支援者端末やセラピスト端末を通じて支援を行うことも本発明の範囲である。
【0050】
このように本発明は、RFTに基づくアセスメントと訓練を対象に対して行うことにより、明確な根拠に基づく認知の諸問題に対処する技術を開示する。
【0051】
本システムは通常の社会生活をおくる健常人に対してだけでなく、知的障害児・者の認知レベルの向上による社会活動の支援や、精神障害者の社会復帰と活動を支援することも目的である。
【発明の効果】
【0052】
本発明により、理論的根拠に基づく認知の諸問題の診断と訓練を行うことができる。これにより、社会生活においてより良い認知状態を得ることができるだけでなく、認知状態に問題が生じた対象を効果的かつ迅速に支援することが可能となる。これにより家庭、学校、企業、社会などの集団の活性化が促される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るハードウエア構成図である。
図1A】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る機能構成を表したソフトウェア構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るアセスメント及び訓練の動作に係る全体像を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。
図4】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。
図5】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。
図6】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。
図7】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。
図8】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。
図9】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。
図10】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。
図11】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るシステム利用開始時の動作を説明するためのフローチャートである。
図12】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るアセスメントフェーズの動作(1問づつ評価する場合)を説明するためのフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るアセスメントフェーズの動作(全問回答後に評価する場合)を説明するためのフローチャートである。
図14】本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る訓練フェーズの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を使用して本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムを詳細に説明する。
【0055】
図1は本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るハードウェア構成図である。同図に示されるように、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システム10は、ハードウェア面においては、サーバ105、クライアント端末101、支援者端末102、セラピスト端末103を有し、これらが通信回線(たとえばインターネット104などのネットワークでもよい)を介して互いに接続されて構成される。サーバ105は当業者が周知のコンピュータで構成され、クライアント端末101、支援者端末102、セラピスト端末103も当業者に周知のPC、タブレット、スマートフォンなどで構成されることができるが、これらに限られるものではない。以下では、サーバとクライアント端末、支援者端末、セラピスト端末を有して構成される場合を説明するが、クライアント端末のみで構成される場合、あるいは上記構成からクライアント端末以外の端末を有しない構成であってもよい。いずれも本発明の一態様によって包摂される範囲内のものである。
【0056】
サーバ105とクライアント端末101とは通信回線(たとえばインターネット104)を介して情報の送受信を行う。ここで送受信される情報としては、文字、画像、音声の少なくともいずれかというだけでなく、通信回線によって送受信可能であり、サーバとクライアント端末で処理可能なものであればいかなる形式の情報であってもよい(例えば、動画、触覚に係る情報や嗅覚に係る情報などを含んでもよい)。
【0057】
サーバ105では、図示しないCPU(中央演算ユニット)によって、データベース(DB)107を参照しながらサーバ側プログラム群106が実行される。認知の諸問題のアセスメントと訓練を受ける対象(以下、「クライアント」とも呼ぶ。)はクライアント端末101を用いる。サーバ105に係る動作を司るプログラムはアセスメントと訓練をサーバプログラム群106に基づいて自動的に実行されるものの選択が行われてもよいが、支援者端末102やセラピスト端末103から必要に応じて介入が行われ、クライアント端末101を支援するような形式としてもよい。支援者端末102は好適には、対象を組織内において支援する、例えば上司によって用いられ、セラピスト端末は好適には、RFTに基づくアセスメントおよび訓練に精通した専門家によって用いられる。
【0058】
次に、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムを、ソフトウェアとハードウェアとが協働して実現する機能構成の側面から説明する。図1Aは、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るソフトウェア構成を詳細に示す図である。本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るプログラムは、アセスメントと訓練に関する情報を格納する1つ以上のデータベース(DB)とそれらを処理してクライアント端末101とやりとりを行う1つ以上のサーバ105側のプログラム、およびサーバ105からの情報を処理してクライアント端末(クライアント側コンピュータ)101に表示したり対象の応答などを処理してサーバ105側に送信する1つ以上のクライアント側プログラムによって論理的に構成される。
【0059】
図1においてはDB107として総称的に表示したが、厳密にはたとえば、DB107には、クライアントDB115、支援者DB116、セラピストDB117、アセスメントテンプレートDB118、アセスメント実施DB119、訓練テンプレートDB120、訓練実施DB1221、クライアントの認知状態DB122が好適には含まれ得る。ただし、DB107としてはこれらに限定されるものではない。またこれらのデータベースは相互に関連する特定のデータポイントを持つリレーショナルデータベースを形成することができる。
【0060】
クライアントDB115にはアセスメントや訓練を受けるクライアントに係る情報が、支援者DB116にはクライアントが所属するコミュニティ関係者(家族や上司など)に係る情報が、セラピストDB117にはアセスメントや訓練を実施するセラピストに係る情報が、アセスメントテンプレートDB118にはアセスメントのための定型的設問あるいは設問の骨格に係る情報が、アセスメント実施DB119には実施したクライアント識別子、アセスメントの日時、種類、成績など、これまで行ったアセスメントの履歴に係る情報が、訓練テンプレートDB120にはクライアントを訓練するための定型的設問ある伊賀設問の骨格に係る情報が、訓練実施DB121には実施したクライアント識別子、訓練の日時、訓練の種類、訓練の成績など、これまで行った訓練の履歴に係る情報が、クライアントの認知状態DB122には過去と現在のクライアント認知状態に係る情報が、それぞれ読込/書き換え可能な形式で保存される。
【0061】
サーバ側プログラム群106は、アセスメント構成部108、設問生成・提示部109、回答処理部110、認知状態解析・判断・分類部111、訓練構成部112、訓練生成・提示部113、訓練解析部114を含んで構成されるが、これらに限られない。なお、厳密には、サーバ側プログラム群106はプログラムの集合体であるのに対して、サーバ側プログラム群106…は、サーバ側プログラム群106に含まれる各種サブプログラム(ルーチン)と当該各種サブプログラムがそれぞれ該当するハードウェア資源と協働することで招来・実現される機能とが混然一体として表現されるものであるが、以下では便宜的に、各種サブプログラムの意味でも、或いは当該招来・実現される機能の意味でも、または、この両者の混合の意味でも用いられる。サーバ側プログラム群106は、必要に応じて通信インタフェース(I/F)107を介してクライアント端末101、支援者端末102、セラピスト端末103と通信を行う。
【0062】
アセスメント構成部108とは、人間の認知に係るアセスメントの構成を定義づける機能を実現するためのソフトウェア及びこれと協働するハードウェアの関与の仕方が規定される役割を担うものであって、好適には、少なくともアセスメントフェーズ及び訓練フェーズとに分類して定義されるものとすることができる。
【0063】
設問生成・提示部109とは、関係フレーム理論に基づく設問を被訓練者に提示する機能を実現するためのソフトウェア及びこれと協働するハードウェアの関与の仕方が規定される役割を担うものである。
【0064】
回答処理部110とは、設問生成・提示部109において提示された設問に対する回答を被訓練者から受け取りこれを保持する機能を実現するためのソフトウェア及びこれと協働するハードウェアの関与の仕方が規定される役割を担うものである。
【0065】
認知状態解析・判断・分類部111とは、回答処理部110にて得られた被訓練者からの回答に対して上述の関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断(もしくは判断のための支援)を行う機能を実現するためのソフトウェア及びこれと協働するハードウェアの関与の仕方が規定される役割を担うものである。
【0066】
訓練構成部112とは、認知状態解析・判断・分類部111にて得られた関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断をもととして、上記被訓練者に個別的に訓練を施すための構成作業を行う機能を実現するためのソフトウェア及びこれと協働するハードウェアの関与の仕方が規定される役割を担うものである。
【0067】
訓練生成・提示部113とは、訓練構成部112にて得られた訓練構成をもととして、訓練項目/プログラム等を生成し、これを提示する機能を実現するためのソフトウェア及びこれと協働するハードウェアの関与の仕方が規定される役割を担うものである。
【0068】
訓練解析部114とは、訓練生成・提示部113にて得られた項目/プログラム等をもととして実行される訓練を施した結果を分析する機能を実現するためのソフトウェア及びこれと協働するハードウェアの関与の仕方が規定される役割を担うものである。
【0069】
次に、上記のように構成される本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る動作を、図2図1514を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るアセスメント及び訓練の動作に係る全体像を説明するためのフローチャートである。同図に示されるように、アセスメントフェーズ(201)では、対象の認知レベルのアセスメントを行う。アセスメントは基本的には最も簡単な設問(レベル1)から始められる。当該レベルには複数の設問が設問群として登録されており、その中から1つが選択され、設問を開始して対象からの回答が評価される。引き続いて合否の判定が行われ、合格ならば設問がレベルアップされ、不合格ならば同レベルの設問群から別の設問が選択される。あるいはレベルを下げて繰り返されてもよい。以上を繰り返すことにより、レベルが判定される。
【0070】
図3図10は、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る設問例を示す概念図である。これらの図において示されるのは、関係フレームに基づく設問の具体的な一例であり、特に、関係フレームの「等位」に関するレベルの異なる設問例である。レベル1は、単純な一致を問う設問であり、猫の画像を示してそれと同じものを複数の画像から選択させるものである(図3)。レベル2は、等価性を問う設問として「シャツを選んでください」と言語で指示してシャツ、ズボン、帽子の3つの画像から選択させるものである(図4)。レベル3は、派生的刺激関係を問う設問として正立の家の画像を示して複数枚の家の画像から同じ家(しかし横倒しになっている)を選択させるものである(図5)。レベル4は、複数の感覚モーダルを課題に採り入れて刺激等価性や派生的刺激関係を含めた設問として、無意味つづり“URD”と無意味図形“>>>”の対応関係をまず形成させ、その後無意味図形“>>>”を示して無意味つづり“URD”,“NYT”,“OCX”から選択させるものである(図6)。正解は“URD”である。レベル5は、更なる設問として、図形や記号だけでなく、文章で無意味つづり(「ペッコ」、「カポン」)と具体的な物を示す単語(アヒル、ヒコウキ)の関係を示し、派生的刺激関係を問うものである(図7)。
【0071】
関係フレームには、上述の「等位」だけでなく9つのファミリーが存在する。図8に、関係フレームの「反対」の概念を問う設問例を示す。図8左は、空間的に反転している画像が正解であり、図8右は、形が同じで色が反転している画像が正解となる。反対の概念における更に難易度の高い設問を図9に示す。この例では文で無意味つづりによる反対の関係を問う設問を示し、反対、同じ、違うから正解を選ばせる(正解は「同じ」)。
【0072】
別の関係フレームファミリーとして、「視点」を問う設問例を示す。図10左は「犬が見えるのは誰ですか」と言語で指示して3つの画像から選択させる。「かな」が正解である。図10右は視点を反転させる設問として、「もし、かながひろこで、ひろこがかなだったら、犬が見えるのはだれですか」と問う。「ひろこ」が正解である。
【0073】
図3~10に例として示した設問がどのようにクライアントに提示され、アセスメントおよび訓練がどのように進むのかを次に説明する。図2に戻る。同図において、アセスメントは設問の提示と回答、評価が1問ずつ進む方法(ステップ203)と、全問あるいはあるまとまり単位で連続して設問の提示と回答が行われる方法(ステップ204)とがある。どちらの方法を採用するかは、クライアントの状況に応じて、適宜変更してもよい。
【0074】
まず、アセスメントが開始される(ステップ2011)と、アセスメント構成部108によって、設問の提示と回答、評価が1問ずつ進む方法(ステップ203)と、全問あるいはあるまとまり単位で連続して設問の提示と回答が行われる方法(ステップ204)とのいずれを採用するのかが、たとえば質問とそれに対する回答の受領等のプロセスを経ることによって決定される(ステップ2012)。
【0075】
設問の提示と回答、評価が1問ずつ進む方法による場合(ステップ2012の「Y」、ステップ203)、設問生成・提示部109によって問題がクライアントに提示される(ステップ2013)と、クライアントはこれに対して回答を与え、かかる与えられた回答は回答処理部110によって受領され、必要に応じて関連するDBに保管され、認知状態解析・判断・分類部111により、かかる回答について、関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断(もしくは判断のための支援)が行われる(ステップ2014)。
【0076】
認知状態解析・判断・分類部111がかかる回答を合格と判定する(ステップ2015の「Y」)と、認知状態解析・判断・分類部111は全問題が終了したか否かを判断する(ステップ2016)。全問題が終了していないと認知状態解析・判断・分類部111が判断すると(ステップ2016の「N」)、ステップ203に移り、上記のステップ2013~ステップ2016までが繰り返される。
【0077】
設問が一通りあるいは全部終了したら(ステップ2016の「Y」)、認知状態解析・判断・分類部111がクライアントの認知レベルの判定を行う(ステップ2017)。具体的には、たとえば、上記の各回答についての関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断(もしくは判断のための支援)を数値化したものを加算して合計値について特定の閾値との間での比較を行う、という方法をとることでもよい。この判定に従って、次の訓練フェーズでの設問レベルが決定される。なお、アセスメント構成部108によって、全問あるいはあるまとまり単位で連続して設問の提示と回答が行われる方法による場合(ステップ2012の「N」、ステップ204)、設問生成・提示部109によって全問あるいはあるまとまり単位で連続して問題がクライアントに提示され、クライアントはこれに対して回答を与えると、認知状態解析・判断・分類部111がクライアントの認知レベルの判定を行う(ステップ2017)。判定については上記と同様であるので記載を省略する。
【0078】
訓練フェーズ(202)では、訓練構成部112にて、アセスメントフェーズ(201)で判定されたレベルに応じた訓練に係るレベルが決定され、訓練が開始される(ステップ2021、ステップ2022)。訓練フェーズでの設問は、アセスメントフェーズにおける設問(図3~10など)と同じものを用いてもよいし異なるものであってもよい。以降、アセスメントフェーズと同様に訓練が進み、レベル判定とその表示が行われる。すなわち、設問生成・提示部109によって問題がクライアントに提示される(ステップ2023)と、クライアントはこれに対して回答を与え、かかる与えられた回答は回答処理部110によって受領され、必要に応じて関連するDBに保管され、認知状態解析・判断・分類部111により、かかる回答について、関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断(もしくは判断のための支援)が行われる(ステップ2024)。認知状態解析・判断・分類部111がかかる回答を合格と判定しない場合(ステップ2025の「N」)にはステップ2022に戻り、訓練構成部112にて、訓練に係るレベルが再度決定されて再度決定されたレベルでの訓練が開始される(ステップ2022)一方、ステップ2024において認知状態解析・判断・分類部111が回答を合格と判定する(ステップ2025の「Y」)と、認知状態解析・判断・分類部111は再度アセスメントの要否を質問する(ステップ205)。ここで「Y」の場合には、後述する再度のアセスメントの開始(ステップ206)に進む。ステップ205で「N」の場合(すなわち、認知状態解析・判断・分類部111からのアセスメントの要否についての質問に対してアセスメントが不要とした場合)、認知状態解析・判断・分類部111はフィードバックの要否を質問する(ステップ2026)。ここで「Y」の場合には、別途フィードバック(ステップ2027)の処理に進む。ステップ2026で「N」の場合(すなわち、認知状態解析・判断・分類部111からのフィードバックの要否についての質問に対してフィードバックが不要とした場合)、認知状態解析・判断・分類部111は全問題が終了したか否かを判断する(ステップ2028)。全問題が終了していないと認知状態解析・判断・分類部111が判断すると(ステップ2028の「N」)、ステップ2022に移り、上記のステップ2022~ステップ2028までが繰り返される。設問が一通りあるいは全部終了したら(ステップ2028の「Y」)、認知状態解析・判断・分類部111がクライアントの認知レベルの判定を行い(ステップ2029)、訓練フェーズを終了する(ステップ2030)。認知状態解析・判断・分類部111がクライアントの認知レベルの判定を行う処理は、具体的には、たとえば、上記の各回答についての関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断(もしくは判断のための支援)を数値化したものを加算して合計値について特定の閾値との間での比較を行う、という方法をとることでもよい。
【0079】
訓練中にクライアントの認知レベルを再度アセスメントする必要が生じたら(ステップ205の「Y」)、アセスメントフェーズ201と同じアセスメントが開始されてもよい(ステップ206)。ここから後述する終了判定(ステップ207)までのプロセスは上記のステップ2022~ステップ2025、ステップ2028)と同様である。すなわち、訓練構成部112にて、訓練に係るレベルが決定され、訓練が開始される(ステップ2031、ステップ2032)。訓練フェーズでの設問は、アセスメントフェーズにおける設問(図3~10など)と同じものを用いてもよいし異なるものであってもよい。以降、アセスメントフェーズと同様に訓練が進み、レベル判定とその表示が行われる。すなわち、設問生成・提示部109によって問題がクライアントに提示される(ステップ2032)と、クライアントはこれに対して回答を与え、かかる与えられた回答は回答処理部110によって受領され、必要に応じて関連するDBに保管され、認知状態解析・判断・分類部111により、かかる回答について、関係フレーム理論に基づく評価・解析・判断(もしくは判断のための支援)が行われる(ステップ2033)。認知状態解析・判断・分類部111がかかる回答を合格と判定しない場合(ステップ2034の「N」)にはステップ2031に戻り、訓練構成部112にて、訓練に係るレベルが再度決定されて再度決定されたレベルでの訓練が開始される(ステップ2032)一方、ステップ2033において認知状態解析・判断・分類部111が回答を合格と判定する(ステップ2034の「Y」)と、認知状態解析・判断・分類部111は全問題が終了したか否かを判断する(ステップ2035)。全問題が終了していないと認知状態解析・判断・分類部111が判断すると(ステップ2035の「N」)、ステップ2031に移り、上記のステップ2031~ステップ2035までが繰り返される。設問が一通りあるいは全部終了したら(ステップ2035の「Y」)、一通りのアセスメントが完了タイミングとなり、訓練を継続するか終了するかの判定が行われる(ステップ207)。
【0080】
このようにして訓練が終了したら(ステップ207の「N」)、訓練以前のレベルと比較が行われて訓練の効果を知るために認知レベルの判定が行われる(ステップ2029)クライアントが複数回訓練を受けていた場合には、過去のレベルとその時間的推移が表示されてもよい。一連のものが完了すると終了される(ステップ2030)。一方、訓練が継続される場合(ステップ207の「Y」)には、ステップ2022~ステップ2028が繰り返される。
【0081】
認知の問題においては、一挙に望むレベルにまで高めることは困難である。そこで上記のアセスメントフェーズと訓練フェーズとを繰り返し行い、それによって徐々に高めることが有効である。本発明の一態様は、このような繰り返しを通じた認知能力向上をもシステム的に担保するものである。
【0082】
次に、アセスメントフェーズ及び訓練フェーズの動作について説明する。図11は、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るシステム利用開始時の動作を説明するためのフローチャートであり、図12は、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るアセスメントフェーズの動作(1問づつ評価する場合)を説明するためのフローチャートであり、図13は、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係るアセスメントフェーズの動作(全問回答後に評価する場合)を説明するためのフローチャートであり、図14は、本発明の一実施形態に係る認知訓練及び問題の解決支援システムに係る訓練フェーズの動作を説明するためのフローチャートである。図11に示されるように、システムの開始前にクライアント、支援者、セラピスト氏名、所属などの基本情報の登録が行われる。具体的には、たとえば、サーバ105と支援者端末102との間でメンバー基本情報のやり取りが行われて、得られたメンバー基本情報はサーバ105によってクライアントDB115に書き込まれ、サーバ105とセラピスト端末103との間でセラピスト基本情報のやり取りが行われて、得られたセラピスト基本情報はサーバ105によってセラピストDB117に書き込まれ、サーバ105と支援者端末102との間で支援者基本情報のやり取りが行われて、得られた支援者基本情報はサーバ105によって支援者DB116に書き込まれ、サーバ105とクライアント端末101との間でメンバアクセス情報のやり取りが行われて、得られたメンバアクセス情報はサーバ105によってクライアントDB115に書き込まれる。このように、登録によりクライアント、支援者、セラピストに係る各情報が、それぞれクライアントDB、支援者DB、セラピストDBに保存される。
【0083】
アセスメントはクライアント、支援者、あるいはセラピストが開始のキックを与える。開始のキックにより、サーバ側プログラムのアセスメント構成部108の動作(すなわち、ソフトウェアとハードウェアとの協働)が開始される(図12)。ここでは、1問ずつ設問が提示され、それに対する評価とアセスメント継続の判断が行われる場合を示す。一連の処理についての説明は図2において行ったものを適宜援用する。
【0084】
もしクライアントにとって初めてのアセスメントならばレベル1のアセスメント設問が、過去の一定期間内にアセスメントを行っていたならばその続きのレベルの設問が、すでに過去に訓練を行っていてその結果としてのレベル判定が終わっていたならば成績とレベル判定とに応じたレベルの設問が、それぞれ提示されるように、アセスメント構成部108によって判断と選択が行なわれる。この判断と選択において、アセスメント構成部108によってクライアントDB115、アセスメント実施DB119が適宜参照される。
【0085】
次に、設問生成・提示部109によってアセスメントテンプレートDB118、クライアントDB115、クライアントの認知状態DB122、およびアセスメント実施DB119の情報が適宜参照されながら提示すべき具体的な設問が選択・構成され(ステップ601)、クライアント端末101に提示される。
【0086】
クライアントがクライアント端末101に提示された設問に答えると、すなわち、クライアント端末101に当該設問への回答が入力されると、この「回答」情報がサーバ105に送信され、サーバ側プログラム群106の回答処理部110に受け渡される。回答処理部110では回答の正誤が判断され、同時に設問提示から回答までの時間、回答までの迷いの測定値等が計算され(ステップ602)、回答処理部110は回答の評価をアセスメント実施DB119に保存する。
【0087】
上記測定値は認知状態解析・判断・分類部111に受け渡され、他の情報を合わせてクライアントの認知状態が解析/判断され(ステップ603)、かかるクライアントの認知状態についての解析/判断結果に係る情報は、認知状態解析・判断・分類部111によってクライアントの認知状態DB122に保存される。
【0088】
次に回答の正誤の判定の結果、合格ならば(ステップ604の「Y」)次の設問に進み、不合格ならば(ステップ604の「N」)、アセスメントを続けるかどうかの判断が行われる(ステップ605)。例えば、数問続けて不正解であったり、クライアントが飽きている、消極的である、などの判断が行われた場合にはアセスメントの中断や中止が行われ得る。
【0089】
アセスメントの終了、中断、中止により回答処理部110によって認知レベルの評価が行われ、その結果がアセスメント実施DB119に保存される(ステップ606)。
【0090】
図13には、すべての設問が初めから提示され、最後にまとめて認知レベルの評価が行われる場合についての動作が示される。動作は一問ずつ設問と正誤判定が行われる場合と同等である。一連の処理についての説明は図2及び図11において行ったものを適宜援用する。
【0091】
図14には、訓練フェーズについての動作が示される。訓練フェーズの動作もアセスメントフェーズの動作と同様であり、それぞれ対応するDB(訓練テンプレートDB、訓練実施DB、クライアントの認知状態DB)が参照される。一連の処理についての説明は図2及び図11において行ったものを適宜援用する。なお、訓練設問の解析は訓練解析部114によって行われ、これはアセスメントフェーズにおける回答処理部110に対応する。
【0092】
しかし訓練フェーズでは、訓練途中でクライアントの認知レベルを再度確認する必要が生じることがある(ステップ701)。この場合には、アセスメントフェーズに戻り、再度クライアントの認知レベルの確認が行われる。
【0093】
一方、訓練結果がクライアントにフィードバックされても良い(ステップ702)。訓練の成績をクライアントに知らせることで、クライアントの前向きな気持ちや積極性が埋められることが期待される。
【0094】
上記はRFTに基づくコンピュータシステムによって認知の諸問題に対処する例であるが、ここにセラピストなどの支援者が適宜介在してもよい。支援者は対象の回答状況を見ながら、および/または聴きながら対象の精神状態を的確に把握し、たとえば対象が回答に困っている場合を捉えたら、それを支援するような呼びかけを音声や文字、動画を含む画像によって行ってもよい。本発明に係る一態様は、こうした支援者の各種の所望操作をシステム的に支援することができる。
【0095】
上記では、アセスメント→訓練をそれぞれ1回ずつ示したが、本発明の実施形態でこれが1回以上繰り返される。すなわち、図12図14に詳述された動作が1回以上繰り返されることにより、クライアントの認知能力が訓練される。
【0096】
認知状態解析・判断・分類部111は、支援者やセラピストによる判断を処理し保存する機能を具備していてもよい。
【0097】
前述のシステムに人工知能技術を用いることも可能である。人工知能は機械学習、特に深層学習などで代表される技術は、境界がはっきりしない問題や、論理的に記述することが困難な問題に対してその能力が発揮される。本発明の実施形態においても、クライアントの認知的状況の判断を深層学習技術によって行うことが考えられる。例えば、設問提示から回答までの時間、回答内容、しぐさ、動作、表情などから特徴量を抽出したり、つぶやきなどから言語解析によって単語を抽出したりして深層学習装置に入力し、深層学習装置の出力として、クライアントの認知的および/または感情的状態(集中-飽き、関心-無関心、積極的-消極的、前向き-後向きなど)を抽出してもよい。
【0098】
前述のように抽出したクライアントの認知的状態結果を、履歴を含むクライアントの過去の認知状態を次の深層学習装置に入力してアセスメントや訓練の継続/中断・中止が判定されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の実施形態は、社会で生じる様々な認知の諸問題の解決を支援するシステムを提供するものであり、関係フレーム理論に基づき、この理論を具現化したシステムを提供するところに最大の特徴がある。関係フレーム理論はスキナーによる言語行動の研究を発展させた言語行動を分析するための枠組みである。これを基盤にすることで、これまで対症療法に陥りがちであった認知の問題の訓練を理論に基づいて実施することが可能となり、より効果的、確実に、根拠を持って行うことができる。従って、知的障害児・者だけでなく、健常者を含めおおよそ人間の認知能力を必要とする社会のあらゆる局面における認知的問題の解決に適用可能であり、それによって個人の活力、ひいては組織の活力を高め、その結果として産業競争力の増進に寄与することができる。
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