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特開2023-81300スタンディングパウチ及び液体組成物製品
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  • 特開-スタンディングパウチ及び液体組成物製品 図1
  • 特開-スタンディングパウチ及び液体組成物製品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081300
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】スタンディングパウチ及び液体組成物製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172379
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021194440
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】松下 明理
(72)【発明者】
【氏名】大貫 毅
(72)【発明者】
【氏名】山田 研
(72)【発明者】
【氏名】原 浩喜
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064AB23
3E064BA17
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA54
3E064BA55
3E064BA60
3E064BB03
3E064BC08
3E064EA07
3E064EA23
3E064EA30
3E064FA04
3E064GA04
3E064HD06
3E064HF09
3E064HG07
3E064HM01
3E064HN05
3E064HS04
(57)【要約】
【課題】大容量にもかかわらず、詰め替え操作を容易にし、正立状態での上端縁の撓みを抑制できるスタンディングパウチ。
【解決手段】パウチ本体10と、パウチ本体10から突出する注出体20とを有し、700~1200mLの液体組成物を収容するのに用いられ、パウチ本体10は、正面視で略四角形であり、かつ底部16aがガセット部16とされ、パウチ本体10の幅Wに対する高さHの比(高さ/幅)は、1.0~1.5であり、パウチ本体10には、上端縁13に隣接する1つの角部に、上方に傾斜する隅切部18が形成され、隅切部18には、注出体20が設けられ、隅切部18は、隅切部18に隣接する側縁15に対して25~40°で傾斜し、正面視において、パウチ本体10の下端縁19には、中央寄りから両側縁15、17に向かうに従い上端縁13に近づく傾斜部19b、19cが形成されていることよりなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの可撓性フィルムの周縁がシールされ、内部が収容室とされたパウチ本体と、前記パウチ本体から突出する注出体とを有し、700~1200mLの液体組成物を収容するのに用いられる、スタンディングパウチであって、
前記パウチ本体は、正面視で略四角形であり、かつ底部がガセット部とされ、
前記パウチ本体の幅に対する高さの比(高さ/幅)は、1.0~1.5であり、
前記パウチ本体には、上端縁に隣接する1つの角部に、上方に傾斜する隅切部が形成され、
前記隅切部には、前記注出体が設けられ、
前記隅切部は、前記隅切部に隣接する側縁に対して25~40°で傾斜し、
正面視において、前記パウチ本体の下端縁には、前記下端縁の中央寄りから両側縁に向かうに従い上端縁に近づく傾斜部が形成されている、スタンディングパウチ。
【請求項2】
前記注出体は、前記隅切部に隣接する前記側縁の接線と、前記上端縁の接線とで囲われる領域内に収まる大きさである、請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項3】
正面視において、前記パウチ本体の幅は160~200mm、前記パウチ本体の高さは180~300mmである、請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のスタンディングパウチと、前記パウチ本体内に収容された液体組成物とを有する、液体組成物製品。
【請求項5】
前記液体組成物の25℃における粘度は、1~10mPa・sである、請求項4に記載の液体組成物製品。
【請求項6】
前記収容室内の空隙率は、14~40体積%である、請求項4に記載の液体組成物製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンディングパウチ及び液体組成物製品に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗浄剤、液体石鹸、シャンプー、液体調味料等の液状物を収容する包装材として、スタンディングパウチがある。スタンディングパウチとしては、可撓性を有するシートで形成されたパウチ本体と、パウチ本体から突出する注出体とを有するものが挙げられる。パウチ本体の底部は、内方に折り込まれたガセット部とされている。このため、スタンディングパウチに内容物を収容した製品は、底部が広がり、自立できる。
スタンディングパウチは、詰め替え用製品の容器として汎用されている。詰め替え時には、スタンディングパウチから内容物を注出して、ボトル等の正規容器に内容物を充填する。
例えば、特許文献1には、最初の詰替前に、内容液の液面が筒口部の内部側開口の下端部と接するまで詰替パウチを筒口部側へ傾けたとき、筒口部の外部側開口の下端部が内部側開口の下端部よりも低くなるように、筒口部が取り付けられている詰替パウチが提案されている。特許文献1の発明によれば、注出開始時における内容物のこぼれの抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-175930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、詰め替え用製品は、内容量の大きなもの(大容量製品)が求められている。しかし、内容量を増やすために、スタンディングパウチの容量を大きくするために、高さを単に高くすると、詰め替え用製品を商品棚に陳列できない場合がある。
大容量製品の高さを低くすると、詰め替え時に内容物が勢いよく吐出され、詰め替え操作が煩雑となる。加えて、大容量製品の高さを低くすると、正立状態(底部を下にして自立させた状態)でスタンディングパウチの上端縁が撓んで、外観を損ねる。スタンディングパウチの上端縁が撓むと屈曲点が形成され、この屈曲点を起点としてピンホールを生じる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、大容量であるのにもかかわらず、詰め替え操作を容易にし、正立状態での上端縁の撓みを抑制できるスタンディングパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
<1>
対向する2つの可撓性フィルムの周縁がシールされ、内部が収容室とされたパウチ本体と、前記パウチ本体から突出する注出体とを有し、700~1200mLの液体組成物を収容するのに用いられる、スタンディングパウチであって、
前記パウチ本体は、正面視で略四角形であり、かつ底部がガセット部とされ、
前記パウチ本体の幅に対する高さの比(高さ/幅)は、1.0~1.5であり、
前記パウチ本体には、上端縁に隣接する1つの角部に、上方に傾斜する隅切部が形成され、
前記隅切部には、前記注出体が設けられ、
前記隅切部は、前記隅切部に隣接する側縁に対して25~40°で傾斜し、
正面視において、前記パウチ本体の下端縁には、前記下端縁の中央寄りから両側縁に向かうに従い上端縁に近づく傾斜部が形成されている、スタンディングパウチ。
<2>
前記注出体は、前記隅切部に隣接する前記側縁の接線と、前記上端縁の接線とで囲われる領域内に収まる大きさである、<1>に記載のスタンディングパウチ。
<3>
正面視において、前記パウチ本体の幅は160~200mm、前記パウチ本体の高さは180~300mmである、<1>又は<2>に記載のスタンディングパウチ。
【0007】
<4>
<1>~<3>のいずれかに記載のスタンディングパウチと、前記パウチ本体内に収容された液体組成物とを有する、液体組成物製品。
<5>
前記液体組成物の25℃における粘度は、1~10mPa・sである、<4>に記載の液体組成物製品。
<6>
前記収容室内の空隙率は、14~40体積%である、<4>又は<5>に記載の液体組成物製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスタンディングパウチによれば、大容量であるのにもかかわらず、詰め替え操作を容易にし、正立状態での上端縁の撓みを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のスタンディングパウチの一実施形態を示す正面図である。
図2】空気の充填方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(液体組成物製品)
本発明の液体組成物製品は、スタンディングパウチと、スタンディングパウチ内に収容された液体組成物とを有する。
【0011】
<スタンディングパウチ>
本発明のスタンディングパウチは、底部にガセット部が形成されたパウチ本体と、パウチ本体から突出する注出体とを有する。
以下、本発明のスタンディングパウチの一例について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1のスタンディングパウチ1は、正面視略四角形のパウチ本体10と、注出体20とを有する。
パウチ本体10は、対向する2枚の可撓性フィルム(正面フィルム12、背面フィルム14)の周縁がシールされ、周縁に上端縁13、第一の側縁15、第二の側縁17及び下端縁19が形成されている。即ち、パウチ本体10の周縁には、シール部10aが形成さている。パウチ本体10の内部には、液体組成物等を収容する収容室11が形成されている。パウチ本体10には、底部16aが収容室11内に折り込まれて、ガセット部16が形成されている。底部16aには、上端縁13側に折曲縁16bが形成されている。底部16aの側縁は、正面フィルム12と背面フィルム14とで挟み込まれ、シールされている。底部16aの下端縁は、正面フィルム12と背面フィルム14とのそれぞれにシールされている。なお、ガセット部16の態様は、これに限定されない。
なお、内容物(液体組成物)の充填前のスタンディングパウチ1の上端縁13は、シールされておらず、開口している。
【0013】
正面視において、パウチ本体10の下端縁19には、下端縁19の中央を含む領域に水平部19aと、水平部19aの一端から第一の側縁15に向かう第一の傾斜部19bと、水平部19aの他端から第二の側縁17に向かう第二の傾斜部19cと、が形成されている。第一の傾斜部19bは、水平部19aから第一の側縁15に向かうに従い上端縁13に近づく。第二の傾斜部19cは、水平部19aから第二の側縁17に向かうに従い上端縁13に近づく。即ち、下端縁19は、中央寄りから両端縁に向かい、上端縁13方向に傾斜している。
正面視において、パウチ本体10の上端には、直線の隅切部18が形成されている。隅切部18は、上端縁13と、上端縁13に隣接する第一の側縁15とで形成される角部に形成されている。隅切部18は、上方(即ち、上端縁13の方向)に傾斜している。
パウチ本体10の角部は、隅切部18が形成された角部を除く3つの角部に円弧で隅切が形成されている。
【0014】
注出体20は、隅切部18に設けられている。注出体20の基端22は、隅切部18に位置するシール部10aで、正面フィルム12と背面フィルム14とに挟まれて、固定されている。注出体20は、パウチ本体10から突出している。
【0015】
正面フィルム12は、可撓性を有し、かつ背面フィルム14及び底部16aのフィルムとシールできるものであればよい。
正面フィルム12としては、例えば、少なくとも外層と内層とを有する多層ラミネートフィルムが挙げられる。
外層としては、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム又は延伸ナイロン(ONY)等が挙げられる。内層としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン又はメタロセン系ポリエチレン等の熱融着性樹脂からなるフィルムが挙げられる。多層ラミネートフィルムは、エチレンビニルアルコール共重合体のフィルム、アルミニウム箔、酸化ケイ素等の無機物を蒸着したフィルム(例えばアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート:アルミ蒸着PETと以下略す)等のガスバリア性フィルム等を含んでもよい。多層ラミネートフィルムの各構成は、環境素材を含む。
多層ラミネートフィルムの層構成としては、ONY/アルミ蒸着PET/LLDPE、PET/ONY/LLDPE、ONY/LLDPE、ONY/アルミ/LLDPEが好ましく、ONY/アルミ蒸着PET/LLDPE、ONY/アルミ/LLDPE、ONY/LLDPEがより好ましい。なお、層構成の標記は、外層から順に記載されている。即ち、「ONY/アルミ蒸着PET/LLDPE」であれば、外層がONY、内層がLLDPE、外層と内層との間の中間層がアルミ蒸着PETである。
【0016】
多層ラミネートフィルムの各層の厚さは、パウチ本体10の内容量、収容する液体組成物の組成等を勘案して決定される。多層ラミネートフィルムの各層の厚さは、外層10~30μm、中間層10~30μm、内層80~200μmが好ましい。
正面フィルム12の厚さ(全体の厚さ)は、90~260μmが好ましく、150~200μmがより好ましい。
【0017】
背面フィルム14の層構成、各層の厚さ、全体の厚さは、正面フィルム12と同様である。背面フィルム14の層構成、各層の厚さ、全体の厚さは、各々、正面フィルム12と同じでもよいし、異なってもよい。
【0018】
底部16aの層構成、各層の厚さ、全体の厚さは、正面フィルム12と同様である。底部16aの層構成、各層の厚さ、全体の厚さは、各々、正面フィルム12と同じでもよいし、異なってもよい。
【0019】
パウチ本体10の幅W(第一の側縁15から第二の側縁17までの距離)は、160~200mmが好ましく、180~200mmがより好ましい。幅Wが上記下限値以上であれば、パウチ本体10の高さHを低くしつつ、内容量をより大きくできる。幅Wが上記上限値以下であれば、液体組成物製品を正立状態としたときに、上端縁13が撓むのをより良好に抑制できる。
【0020】
パウチ本体10の高さH(下端縁19から上端縁13までの距離)は、180~300mmが好ましく、パウチ本体10の幅Wが180mmの場合には、高さHは180~243mmが好ましい。また、パウチ本体10の幅Wが200mmの場合には、高さHは200~270mmがより好ましい。高さHが上記下限値以上であれば、パウチ本体10の内容量をより大きくできる。高さHが上記上限値以下であれば、商品棚に、より容易に陳列できる。
【0021】
パウチ本体10において、幅Wに対する高さHの比率(H/W比)は、1.0~1.5であり、1.0超1.5以下が好ましく、1.1~1.3がより好ましい。H/W比が上記下限値以上であれば、液体組成物製品を正立状態としたときに、上端縁13が撓むのをより良好に抑制できる。H/W比が上記上限値以下であれば、高さHをより低くできる。
【0022】
底部16aの折込幅Dは、30~70mmが好ましく、40~65mmがより好ましい。折込幅Dは、下端縁19から、底部16aの折曲縁bまでの距離である。
【0023】
パウチ本体10の周縁に形成されるシール部10aの幅は、特に限定されない。
例えば、上端縁13のシール部10aの幅は、3~15mmが好ましく、5~12mmがより好ましい。
第一の側縁15のシール部10aの幅は、3~12mmが好ましく、5~10mmがより好ましい。
第二の側縁17のシール部10aの幅は、第一の側縁15のシール部10aの幅と同様である。第二の側縁17のシール部10aの幅は、第一の側縁15のシール部10aの幅と同じでもよいし、異なってもよい。
【0024】
第一の傾斜部19bは、直線でもよいし、曲線でもよい。
第一の傾斜部19bの接線P19bと第一の側縁15の接線P15との交点Q1aと、接線P15と水平部19aの接線P19との交点Q1bとの距離(傾斜部高さ)H19bは、3~7mmが好ましく、4~5mmがより好ましい。距離H19bが上記下限値以上であれば、液体組成物製品を正立状態とした時に、上端縁13が撓むのをより良好に抑制できる。距離H19bが上記上限値以下であれば、液体組成物製品を正立状態とした時に、載置面と第一の傾斜部19bとの隙間が軽減され、見栄えがより良好になる。
【0025】
第一の傾斜部19bの接線P19bと、水平部19aの接線P19aとのなす角度θ2は、2~12°が好ましく、3~8°がより好ましい。角度θ2が上記下限値以上であれば、液体組成物製品を正立状態とした時に、上端縁13が撓むのをより良好に抑制できる。角度θ2が上記上限値以下であれば、液体組成物製品を正立状態とした時に、載置面と第一の傾斜部19bとの隙間が軽減され、見栄えがより良好になる。
【0026】
第一の傾斜部19bの長さLbは、幅Wの20~40%が好ましく、25~35%がより好ましい。長さLbが上記下限値以上であれば、液体組成物製品を正立状態とした時に、上端縁13が撓むのをより良好に抑制できる。長さLbが上記上限値以下であれば、液体組成物製品を正立状態とした時に、載置面と下端縁19との接触範囲が広くなり、より安定に正立状態にできる。
【0027】
第二の傾斜部19cは、第一の傾斜部19bと同様に、直線でもよいし、曲線でもよい。第二の傾斜部19cは、第一の傾斜部19bと同じでもよいし、異なってもよい。
第二の傾斜部19cの接線P19cと第二の側縁17の接線P17との交点Q2aと、接線P17と水平部19aの接線P19との交点Q2bとの距離(傾斜部高さ)H19cは、距離H19bと同様である。距離H19cは、距離H19bと同じでもよいし、異なってもよい。
第二の傾斜部19cの接線P19cと、水平部19aの接線P19aとのなす角度θ3は、角度θ2と同様である。角度θ3は、角度θ2と同じでもよく異なってもよい。
第二の傾斜部19cの長さLcは、長さLbと同様である。長さLcは、長さLbと同じでもよく、異なってもよい。
【0028】
隅切部18の端縁の接線P18と、第一の側縁15とのなす角度θ1(即ち、傾斜角度)は、25~40°であり、30~35°が好ましい。通常、液体組成物を収容室11に充填する場合、パウチ本体10の両側縁を把持し、上端の開口部から液体組成物を充填し、上端をシールして上端縁13を塞ぐ。液体組成物を充填した直後には、パウチ本体10の両側縁を互いに離れる方向に引っ張って、パウチ本体10内の空気を減らし、上端をシールする。この際、パウチ本体10内の液体組成物の液面が上昇し、液体組成物がパウチ本体10の上端縁13のシール部10aに付着すると、シール不良を生じるおそれがある。シール不良を防止するために、収容する液体組成物の液面は、隅切部18の下端18aよりも低い位置とされる。
このため、隅切部18の傾斜角度が上記下限値以上であれば、隅切部18の下端18aの位置が低くなりすぎず、パウチ本体10の内容量をより高められる。隅切部18の傾斜角度が上記上限値以下であれば、液体組成物を注出する際に、吐出される液体組成物の勢いを良好に抑えて、液体組成物をこぼすのをより良好に防げる。
【0029】
注出体20は、収容室11の内外を連通し、収容室11内の液体組成物を注出できる部材であればよい。
注出体20としては、円筒状又は多角筒状の注出筒と、注出筒の先端を塞ぐ蓋体とを有するものが挙げられる。
【0030】
注出体20としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂の成形体が挙げられる。
【0031】
注出体20の開口径は、収容する液体組成物の物性(例えば、粘度)に応じて適宜決定され、例えば、8.5~21mmとされる。
【0032】
注出体20の長さ(基端から先端までの距離)H20は、例えば、18~30mmが好ましい。
【0033】
隅切部18に隣接する第一の側縁15の接線P15と、上端縁13の接線P13とで囲われる領域を領域21とした場合、注出体20の大きさは、領域21内に収まる大きさが好ましい。即ち、注出体20の先端の好ましい位置は、第一の側縁15よりも第二の側縁17寄りで、かつ上端縁13よりも下端縁19寄りである。スタンディングパウチ1を充填機に供給する際には、スタンディングパウチ1の側縁をガイドに当てて整列させる。注出体20の大きさが、領域21内に収まる大きさであれば、注出体20がガイドに当接しないため、スタンディングパウチ1をより容易に整列できる。
【0034】
本実施形態において、注出体20の軸線O1は、接線P18と略垂直とされている。これにより、軸線O1と接線P15とのなす角度θ4は、好ましくは50~65°とされ、より好ましくは55~60°とされる。軸線O1が接線P15に対して、角度θ4で傾斜することで、パウチ本体10の内容量をより高め、注出時に液体組成物をこぼすのをより良好に防げる。
【0035】
≪スタンディングパウチの製造方法≫
スタンディングパウチ1は、従来公知のスタンディングパウチの製造方法に準じて製造される。例えば、正面フィルム12と背面フィルム14とを重ね、両フィルムの間に、底部16aを形成するフィルムを折り込み、かつ、隅切部18において注出体20を両フィルムの間に挟み、重ねたフィルムの周縁をシールすることで、スタンディングパウチ1を得る。
【0036】
<液体組成物>
パウチ本体10に収容される液体組成物としては、例えば、液体洗浄剤組成物、液体柔軟剤組成物、液体漂白剤組成物、液体歯磨組成物、洗口液組成物、液体殺菌剤組成物、液体調味料等が挙げられる。液体洗浄剤組成物としては、衣料用液体洗浄剤組成物、浴室用液体洗浄剤組成物、トイレ用液体洗浄剤組成物、食器用液体洗浄剤組成物等が挙げられる。これらの中でも、液体歯磨組成物、洗口液組成物、浴室用液体洗浄剤組成物が好ましい。
【0037】
液体組成物の25℃における粘度は、例えば、1~10mPa・sが好ましく、1~5mPa・sがより好ましい。液体組成物の粘度は、TVB-10形粘度計(東機産業社製)のM1ローターを使用し、60回転で1分後の粘度を測定した値である。測定時の試料(液体組成物)の温度は、25℃である。試料の温度の調整方法としては、例えば、恒温循環水槽(アズワン社製)を用いて、25℃で3時間、調整する方法が挙げられる。
【0038】
スタンディングパウチ1は、700~1200mLの液体組成物を収容するのに用いられる容器である。即ち、スタンディングパウチ1は、内容量(即ち、充填量)700~1200mLの容器である。スタンディングパウチ1の内容量は、700~1200mLであり、パウチ本体10の幅Wが180mmである場合には、内容量は700~800mLが好ましく、幅Wが200mmの場合には、850~1000mLが好ましい。
【0039】
収容室11内の空隙率は、14~40体積%が好ましく、15~30体積%がより好ましい。空隙率が上記下限値以上であれば、上端縁13の撓みをより良好に抑制できる。空隙率が上記上限値以下であれば、スタンディングパウチ1の大きさに対する液体組成物の量が、より適正に感じられる。
空隙率は、下記(s1)式により求められる値である。
【0040】
空隙率(体積%)=(空気量÷(収容室の満注量-液体組成物の充填量))×100・・・(s1)
【0041】
(s1)式中、満注量は、収容室11の最大容積である。本実施形態の収容室11の満注量は、例えば、1240~2340mLとされる。
(s1)式中、空気量は、収容室11内の空気量であり、以下の方法で求められる。
【0042】
≪空気の充填方法≫
図2は、空気の充填方法を示す工程図である。
図2(a)に示すように、容量2Lのボトル110の口部111と、ボトル112の口部113同士とをパイプ120で気密に接続する。パイプ120の周面に、チューブ122の一端を接続する。チューブ122一端は、パイプ120の内部に至っている。
ボトル110を鉛直上方向、ボトル112を鉛直下方向に位置させる。
液体組成物製品2のパウチ本体10内(即ち、収容室内)の空気を注出体20から抜く。次いで、チューブ122の他端を注出体20に接続する。
ボトル110に水130を入れる。
図2(b)に示すように、ボトル110内の水130をボトル112内に落下させて、ボトル112内からパウチ本体10内に空気140を送り込む。この時、ボトル110からボトル112へ落下した水130の量を空気量(mL)とする。
ボトル110内の水130の量は、ボトル112内からパウチ本体10内に十分量の空気140を送り得る量である。
【0043】
<液体組成物製品の製造方法>
液体組成物製品は、従来公知のスタディングパウチ入り製品の製造方法に準じて製造される。例えば、パウチ充填包装機等の装置を用い、液体組成物をスタンディングパウチ1のパウチ本体10に充填し、上端をシールして、液体組成物製品とする方法が挙げられる。
パウチ充填包装機等においては、パウチ本体10の両側縁を把持具で把持して、スタンディングパウチ1を吊るし、上端の開口部から液体組成物を充填する。この際、隅切部18の傾斜角度θ1が25°以上であると、パウチ本体10を把持する位置が上端縁13に近くなる。これにより、パウチ本体10内に充填した液体組成物の液面よりも高い位置でスタンディングパウチ1を把持できるため、液体組成物の液位の高まりを抑制して、上端縁13のシール不良を抑制できる。
【0044】
こうして得られた液体組成物製品は、底部16aが下方に押し下げられ、ガセット部16が広がって、正立状態で自立できる。
【0045】
(作用効果)
本実施形態のスタンディングパウチによれば、下端縁に傾斜部が形成されている。本実施形態のスタンディングパウチを用いた液体組成物製品は、下端縁に傾斜を有するため、正立状態において、パウチ本体の両側縁の下端に対する下方(即ち、載置面)からの反力が小さくなる。パウチ本体の両側縁の下端に対する反力が小さくなると、パウチ本体の両側縁を上方に押し上げる力が小さくなる。パウチ本体の両側縁を上方に押し上げる力が小さくなると、パウチ本体の両側縁の上端が互いに近づくように作用するのを抑制する。パウチ本体の両側縁の上端が互いに近づくように作用するのを抑制することで、パウチ本体の上端縁が撓むのを防止して、正立状態での見栄えを良好にできる。
【0046】
本実施形態のスタンディングパウチによれば、隅切部の傾斜角度が特定の範囲であるため、パウチ本体の内容量をより高め、液体組成物を注出する際に、吐出される液体組成物の勢いを良好に抑えて、液体組成物がこぼれるのをより良好に防げる。
【実施例0047】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0048】
(使用材料)
<スタンディングパウチ>
各例のスタンディングパウチの各部材の材質を以下に示す。
・注出体:内径8.7mm、長さ22mm、材質:高密度ポリエチレン(HDPE)。・正面フィルム及び背面フィルム:ONY15μm/アルミ蒸着PET12μm/LLDPE150μm。
・底部:ONY25μm/LLDPE150μm。
【0049】
<液体組成物>
・液体組成物A:洗口液組成物(NONIO マウスウォッシュ クリアハーブミント(商品名)、粘度(25℃)=3.0mPa・s、ライオン社製)。
【0050】
(実施例1~15、比較例1~9)
表1~3の仕様に従い、スタディングパウチを作製した。ただし、比較例4~6,6-1は、下端縁に傾斜部を有しない。
作製したスタンディングパウチに、表中の仕様に従って液体組成物Aを充填して、各例の液体組成物製品とした。得られた液体組成物製品について、撓みの有無、使用性、店頭陳列性、充填量適性、生産適性を評価し、その結果を表中に示す。
【0051】
(評価方法)
<撓み具合>
各例の液体組成物製品について、正立状態で自立させ、スタンディングパウチの上端縁の撓み量を測定した。得られた撓み量を下記評価基準に分類し、撓み具合を評価した。 撓み量は、液体組成物製品の正立状態におけるパウチ本体の上端縁において、最も高い位置と最も低い位置との差とした。
【0052】
≪評価基準≫
〇:撓み量が10mm以下。
△:撓み量が10mm超20mm以下。
×:撓み量が20mm超。
【0053】
<使用性>
被験者が、各例の液体組成物製品から内容物の液体組成物Aをボトルに注ぎ入れた(詰め替え)。詰め替え時における取り扱いの程度を下記評価基準に従って評価した。実施例1~5及び比較例1~2については、各例につき48人の被験者が詰め替えた。実施例5-1~5-3,6~10,10-1,10-2,11~14,14-1,14-2,15及び比較例2-1,2-2,3~6,6-1,7,8,8-1,9については、各例につき10人の被験者が詰め替えた。
各例について、各被験者の評価点の平均値を求めた。また、各例について、1~2点と採点した被験者の割合(%)を求め、これをbottom2とした。平均値が4.5以上、bottom2が10%以下の例は、使用性が良好と判断できる。
【0054】
≪評価基準≫
7点:非常に良い。
6点:かなり良い。
5点:やや良い。
4点:どちらともいえない。
3点:やや良くない。
2点:かなり良くない。
1点:非常に良くない。
【0055】
<店頭陳列性>
液体組成物製品を正立状態で自立させ、第二の側縁の上端までの高さを測定した。得られた高さを下記評価基準に従って評価した。
【0056】
≪評価基準≫
〇:高さが270mm以下。
△:高さが270mm超300mm以下。
×:高さが300mm超。
【0057】
<充填量適性>
充填量/満注量で表される充填率を求め、得られた充填率を下記評価基準に従って、評価した。表中、上段に充填率を記載し、下段に評価を記載した。
【0058】
≪評価基準≫
〇:充填率0.50以上。
△:充填率0.40以上0.50未満。
×:充填率0.40未満。
【0059】
<生産適性>
各例の液体組成物製品を製造する際、液体組成物(洗口液組成物)の充填時における液面の上昇の程度を観察し、液体組成物製品のパウチ本体の上端縁のシール強度を確認し、下記評価基準に従って評価した。
【0060】
≪評価基準≫
〇:充填時にパウチ本体を把持した時に、充填した洗口液組成物の液面は隅切部の下端よりも低い位置であり、液体組成物製品のシール強度は十分である。
△:充填時にパウチ本体を把持した時に、充填した洗口液組成物の液面は隅切部の下端以上となるが、上端縁のシール部の下端まで上昇せず、液体組成物製品のシール強度は十分である。
×:充填時にパウチ本体を把持した時に、充填した洗口液組成物の液面は上端縁のシール部の下端以上に上昇し、液体組成物製品のシール強度は不十分である。
【0061】
<評価基準について>
上記の撓み具合、店頭陳列性、充填量適性、及び生産適性の各々の評価基準に関し、「△」が2つ以上の評価結果となった例については不良と判断した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表1~3に示すように、本願発明を適用した実施例1~5,5-1~5-3,6~10,10-1,10-2,11~14,14-1,14-2,15は、撓み具合が「△」又は「〇」、使用性平均値が4.7以上、使用性bottom2が4.2%以下、店頭陳列性が「△」又は「○」、充填量適性が「△」又は「〇」、生産適性が「△」又は「〇」であった。
隅切部の傾斜角度が20°である比較例1,2-1は、生産適性が「×」であった。
隅切部の傾斜角度が45°である比較例2,2-2は、使用性平均値が4.2又は4.4、使用性bottom2が12.5%又は0%であり、使用性の評価が低かった。
液体組成物の充填量(内容量)が600mLである比較例3は、充填量適性が「×」であった。
下端縁が傾斜部を有しない比較例4~6,6-1は、撓み具合が「×」であり、比較例4~5は充填量適性が「△」であった。
H/W比が0.90である比較例7は、撓み具合が「×」であった。充填量(内容量)が1500mLである比較例9は、撓み具合が「×」であり、店頭陳列性が「△」であった。
H/W比が1.60である比較例8,8-1は、店頭陳列性が「×」又は「△」であり、充填量適性が「△」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、本発明の効果を発揮できることを確認できた。
なお、液体組成物B(浴室用液体洗浄剤組成物、ルックプラスバスタブクレンジング(商品名)、粘度(25℃)=3.8mPa・s、ライオン社製)を液体組成物Aに代えて充填して液体組成物製品としたところ、上述の実施例1~5,5-1~5-3,6~10,10-1,10-2,11~14,14-1,14-2,15、比較例1,2,2-1,2-2,3~6,6-1,7,8,8-1,9と同様の結果となった。
【符号の説明】
【0066】
1 スタンディングパウチ
2 液体組成物製品
10 パウチ本体
11 収容室
12 正面フィルム
14 背面フィルム
13 上端縁
15、17 側縁
16 ガセット部
16a 底部
18 隅切部
19 下端縁
19b、19c 傾斜部
20 注出体
P13、P15、P17、P18、P19、P19b、P19c 接線
図1
図2