(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081314
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185204
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2021194860
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝 遥哲
(72)【発明者】
【氏名】増渕 広和
(72)【発明者】
【氏名】小原 忠与
(57)【要約】
【課題】異方性導電フィルムに含有させる導電粒子の平均粒子径が2.8μm未満であっても、異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を接続した接続構造体において圧痕を出やすくする。
【解決手段】導電粒子1が絶縁性樹脂層2に保持されている導電粒子含有層3を有する異方性導電フィルム10であって、導電粒子1の平均粒子径が2.8μm未満であり、導電粒子1の20%圧縮弾性率が6000N/mm
2以上であり、導電粒子含有層3の絶縁性樹脂層2の層厚が、導電粒子1の平均粒子径の110%以下であり、導電粒子1が絶縁性樹脂層2の表裏の一方の面側に偏在している。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子が絶縁性樹脂層に保持されている導電粒子含有層を有する異方性導電フィルムであって、
導電粒子の平均粒子径が2.8μm未満であり、
導電粒子の20%圧縮弾性率が6000N/mm2以上であり、
導電粒子含有層の絶縁性樹脂層の層厚が、導電粒子の平均粒子径の110%以下であり、
導電粒子が絶縁性樹脂層の表裏の一方の面側に偏在している
異方性導電フィルム。
【請求項2】
導電粒子が偏在している絶縁性樹脂層の表裏の一方の面において、導電粒子が絶縁性樹脂層から露出している請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
導電粒子の中心を通るフィルム厚方向の直線上において、絶縁性樹脂層から露出している導電粒子の端点への、導電粒子が露出している絶縁性樹脂層の面からの距離をLbとし、
前記直線上の導電粒子の反対側の端点から、絶縁性樹脂層の他方の面への距離をLtとした場合に、Lb<Ltである
請求項2記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
導電粒子が金属被覆樹脂粒子である請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の異方性導電フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品とを加圧硬化させることにより異方性導電接続する接続構造体の製造方法。
【請求項6】
異方性導電フィルムを介して重ね合わせた第1電子部品と第2電子部品とを、熱圧着する加熱硬化工程の前に、加熱硬化工程よりも低い圧力で加圧する仮圧着工程を設ける請求項5記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
異方性導電フィルムが、導電粒子含有層を構成する絶縁性樹脂層に接着層を積層したものである場合に、接着層が第1電子部品又は第2電子部品の電極間スペースを充填するように仮圧着工程の温度、圧力又は時間を定める請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
加熱硬化工程の後に圧痕検査を行う請求項6記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載の異方性導電フィルムで第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続されている接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルム、異方性導電フィルムを用いた接続方法及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性樹脂層に導電粒子を分散させた異方性導電フィルムが、ICチップ等の電子部品を配線基板等に実装する際に広く使用されている。
【0003】
ここで、異方性導電フィルムとは、異方性導電接続を形成し得るフィルムをいう。また、異方性導電接続とは、複数の端子を備えた電子部品同士の接続において、対向する端子同士は電気的に接続されているが、隣接する端子同士は電気的に接続されていない状態の接続をいう。
【0004】
異方性導電フィルムにおいては、電子部品の高密度実装に伴う端子のファインピッチ化により端子における導電粒子の捕捉性を高め、かつ隣り合う端子間のショートを回避することが強く求められる。このような要請に対し、異方性導電フィルムにおける導電粒子を特定の粒子配置にすることが提案されている(特許文献1)。
【0005】
一方、異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を接続した接続構造体の製品検査に圧痕が用いられている(特許文献2)。圧痕は、異方性導電フィルムに含まれる導電粒子がバンプと基板の電極とに挟まれて押圧されることで基板の電極表面に形成される導電粒子の跡である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-95922
【特許文献2】特開2005-227217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、異方性導電フィルムに含有させる導電粒子の平均粒子径としては1~30μmとすることが知られており(特許文献1)、ファインピッチ用途の異方性導電フィルムの実製品として、導電粒子の平均粒子径を3μmとしたものが市販されている。
【0008】
一層のファインピッチ化に対応できるようにするには、異方性導電フィルムの実製品においても導電粒子の平均粒子径を2.8μm未満に小さくすることで、端子における導電粒子の捕捉性を向上させ、ショートの発生を抑制することが考えられる。
【0009】
しかしながら、導電粒子の平均粒子径を小さくすると、量産などで連続して接続する時に導電粒子が電極を押し込む量が減り、圧痕が弱くなりやすくなる場合がある。特に導電粒子が金属被覆樹脂粒子の場合に圧痕の弱化が懸念される。圧痕が弱くなると、接続構造体の製品検査の難易度が上がり、製品の生産性の低下が懸念される。圧痕を強くするために、接続ツールの推力を大きくしようとしても、接続ツールの仕様の限界がある。また、接続ツールの推力を大きくすることで従前は良好であった接続状態を得られ無くなる場合もある。
【0010】
これに対し本発明は、異方性導電フィルムに含有させる導電粒子の平均粒子径を2.8μm未満とした場合においても製品の圧痕検査を容易に行え、圧痕検査の精度が向上するように、圧痕の出やすい異方性導電フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、異方性導電フィルムに含有される導電粒子の平均粒子径を2.8μm未満とした場合においても、導電粒子の硬度、異方性導電フィルムにおいて導電粒子を保持する樹脂層の厚さ、樹脂層への導電粒子の押込状態を規定することにより、異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を接続した接続構造体における圧痕検査が容易になることを想到し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、導電粒子が絶縁性樹脂層に保持されている導電粒子含有層を有する異方性導電フィルムであって、
導電粒子の平均粒子径が2.8μm未満であり、
導電粒子の20%圧縮弾性率が6000N/mm2以上であり、
導電粒子含有層の絶縁性樹脂層の層厚が、導電粒子の平均粒子径の110%以下であり、
導電粒子が絶縁性樹脂層の表裏の一方の面側に偏在している
異方性導電フィルムを提供する。
【0013】
また本発明は、上述の異方性導電フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品とを加
圧硬化させることにより異方性導電接続する接続構造体の製造方法を提供する。
【0014】
さらに本発明は、上述の異方性導電フィルムで第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続されている接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の異方性導電フィルムが含有する導電粒子は平均粒子径が2.8μm未満と小さいのでファインピッチの接続に適している。さらに、この異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を接続すると、それにより得られる接続構造体において圧痕の観察が容易となる。したがって、ファインピッチの製品の圧痕の検査時間が短縮され、検査精度が向上する。
【0016】
ここで、観察が容易になる圧痕とは、ICチップ等の電子部品のバンプや端子等の電極と基板の電極とを接続する場合に、基板の電極表面に直接観察される導電粒子の跡だけでなく、基板が透明である場合に基板を透して観察される電極における導電粒子の跡や、電子部品のバンプや端子等の電極に観察される導電粒子の跡等も含む。以下、特に断らないかぎり、本発明において圧痕とはこれらの圧痕の総称の意味である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例の異方性導電フィルムの平面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施例の異方性導電フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0019】
(異方性導電フィルムの基本構成)
図1は、本発明の一実施例の異方性導電フィルム10における導電粒子1の平面配置を表した平面図であり、
図2AはそのX-X断面図であり、
図2Bは
図2Aの領域Aの拡大図である。
【0020】
この異方性導電フィルム10は、導電粒子1が絶縁性樹脂層2に保持されている導電粒子含有層3と、絶縁性樹脂層2を形成する絶縁性樹脂よりも最低溶融粘度が低い絶縁性樹脂で形成された接着層4を有する。本発明において接着層4は必要に応じて設けられる。
【0021】
[導電粒子]
(導電粒子の平均粒子径)
本発明において導電粒子1の平均粒子径は、ファインピッチの異方性導電接続に対応するため2.8μm未満とし、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.3μm以下とする。
【0022】
一方、導電粒子1の電極への押し込み精度を上げる点や圧痕を可能な限り出易くさせる点から1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2.0μm以上がさらに好ましい。即ち、異方性導電フィルムを用いて第1電子部品と第2電子部品とを異方性導電接続するときの熱圧着により導電粒子の粒子径は20%程度圧縮され、この圧縮量は導電粒子の粒子径が小さいと相対的に小さくなる。このため、導電粒子の粒子径が過度に小さいと圧縮量も過度に小さくなり、導電粒子が電極表面に接触する面積が小さくなることで圧痕が出にくくなる場合がある。特に導電粒子が金属被覆樹脂粒子の場合には圧縮量が過度に小さくない方が圧痕は出易くなるので、導電粒子の平均粒子径は2.0μm以上が好ましい。
【0023】
ここで、異方性導電フィルム10における導電粒子1の平均粒子径は、平面画像又は断面画像から求めることができる。顕微鏡観察で200個以上の粒子径を測定することにより平均粒子径を求めても良い。また、異方性導電フィルムの原料粒子としての導電粒子の平均粒子径は湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることができる。なお、導電粒子に絶縁性微粒子等の微粒子が付着している場合には、微粒子を含めない径を粒子径とする。
【0024】
(導電粒子の圧縮弾性率)
本発明の異方性導電フィルムにおいて、導電粒子1の20%圧縮弾性率は6000N/mm2以上とし、好ましくは9000N/mm2以上12000N/mm2以下とする。このように高硬度の導電粒子を使用することにより、接続時に電極に対する導電粒子1の押込量が、導電粒子1の粒子径が小さいために少なくても電極に圧痕が残りやすくなる。
【0025】
20%圧縮弾性率は、微小圧縮試験機(例えば、フィッシャー社製、フィッシャースコープH-100)を用いて導電粒子に圧縮荷重を加えたときの導電粒子の圧縮変量を測定し、
20%圧縮弾性率(K)(N/mm2 )=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
により算出されるK値を使用することができる。
式中、
F:導電粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:導電粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:導電粒子の半径(mm)
である。
【0026】
(導電粒子の種類)
上述の20%圧縮弾性率と粒子径を有する導電粒子1としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子等から適宜選択して使用することができる。2種以上を併用することもできる。導電粒子1の表面には公知の技術によって、導通特性に支障をきたさない絶縁処理が施されていてもよい。
【0027】
中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、従来、金属被覆樹脂粒子は、粒子径が小さくなると圧痕が弱化する傾向が強いが、本発明によれば圧痕が観察しやすくなるので金属被覆樹脂粒子を用いた異方性導電フィルムにおいて本発明の意義が高まる。
【0028】
金属被覆樹脂粒子における金属層の厚みは50nm~250nmが好ましい。また、導電粒子は、表面に突起が設けられたものであってもよい。金属被覆樹脂粒子の場合は、特開2016-89153号公報に挙げられているものを使用してもよい。
【0029】
(導電粒子の平面配置)
第1電子部品と第2電子部品の接続時に、各電極で1個以上の導電粒子が確実に捕捉されるようにすると共に、圧痕の検査を容易にする点から、異方性導電フィルム10において導電粒子1は個々に独立していること(平面視で95%以上)が好ましく、さらに規則的に配列していること、即ち、x方向及びy方向の粒子配置が周期的に繰り返される配置が好ましい。例えば、6方格子、長方格子、斜方格子、正方格子、その他の矩形格子等の格子配列を挙げることができる。また、導電粒子が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させた配列としてもよい。
【0030】
(導電粒子の個数密度)
個数密度の上限および下限は、対象物により変更になるため特に制限はない。例えば、個数密度の下限については、30個/mm2以上、又は12000個/mm2以上、又は150000個/mm2以上とすることができ、個数密度の上限については、例えば、500000個/mm2以下、又は350000個/mm2以下、又は300000個/mm2以下とすることができる。
【0031】
[絶縁性樹脂層]
(絶縁性樹脂)
導電粒子含有層3を形成する絶縁性樹脂層2は、特許6187665号公報に記載の異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0032】
(絶縁性樹脂の最低溶融粘度)
導電粒子含有層3を形成する絶縁性樹脂層2は、最低溶融粘度が好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは5000~15000Pa・s、さらに好ましくは10000~15000Pa・sの高粘度の樹脂で形成する。これにより異方性導電接続時に対向する電極間で挟持されるべき導電粒子が樹脂流動により不用に流されてしまうことを防止できる。ここで、最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instruments社製)を用い、昇温速度が10℃/分、測定圧力を5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができる。
【0033】
(絶縁性樹脂層の層厚)
導電粒子含有層3を形成する絶縁性樹脂層2の層厚は、導電粒子1の平均粒子径の110%以下とする。即ち、導電粒子1として高硬度のものを使用するだけでは接続ツールの推力が導電粒子に効率よく伝わらず、圧痕が形成されにくい場合がある。これに対して、導電粒子含有層3を形成する絶縁性樹脂層2の層厚を導電粒子1の平均粒子径の110%以下とすることにより、圧痕が形成されやすくなる。圧痕が形成され易くするため、後述するように重ね合わせ工程(部品搭載工程)時又は重ね合わせ工程に続く仮圧着工程で、温度や圧力を比較的高くすることで、導電粒子を第1電子部品側に寄せた状態(本圧着の推力が伝わり易い状態)とし易くなるため実用上好ましい。
【0034】
一方、絶縁性樹脂層2の層厚が薄すぎると絶縁性樹脂層2で導電粒子1が保持されにくくなり、導電粒子1の位置ずれによりショートが発生する虞が生じる。そこで、絶縁性樹脂層2の層厚は、導電粒子の平均粒子径の好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上であり、100%以上であってもよい。
【0035】
[接着層]
接着層4を形成する樹脂は、絶縁性樹脂層2を形成する樹脂よりも低粘度の樹脂で形成する。より具体的には、30~200℃の範囲の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層2を形成する樹脂よりも低く、好ましくは100~2000Pa・s、より好ましくは200~1000Pa・sである。
【0036】
接着層4を形成する樹脂を、絶縁性樹脂層2を形成する樹脂よりも低粘度とすることで、第1電子部品と第2電子部品との異方性導電接続時に、導電粒子の不用な樹脂流動を抑制し、かつ第1電子部品と第2電子部品との接着を良好に行うことができる。
【0037】
このような最低溶融粘度の樹脂組成物は、前述の絶縁性樹脂層2を形成する樹脂組成物において粘度を調整することにより得ることができる。
【0038】
導電粒子1が導電粒子含有層3の表裏のいずれか一方に偏在している場合、接着層4を積層する導電粒子含有層3の面は、導電粒子1が偏在している面と反対側の面とすることが好ましい。したがって、導電粒子含有層3が、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより形成されたものである場合に、接着層4は、導電粒子1の押込面と反対側の絶縁性樹脂層2の表面に形成することが好ましい。
【0039】
[導電粒子含有層における導電粒子のフィルム厚方向の位置]
導電粒子1の平均粒子径が絶縁性樹脂層2の層厚よりも小さい場合、導電粒子1は、絶縁性樹脂層2の表裏のいずれか一方の面側に偏在していることが好ましい。その場合、導電粒子1が偏在している方の絶縁性樹脂層2の表面と導電粒子1とは面一になっていてもよく、その表面外へ導電粒子1が突出していてもよく、表面内に導電粒子が存在していてもよく、表面から導電粒子1が露出していてもよい。なお、導電粒子含有層3を、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより形成する場合、導電粒子1が偏在する方の絶縁性樹脂層2の表面が、導電粒子1の押込面となる。導電粒子1を押し込んだ絶縁性樹脂層2の表面には、導電粒子1の押込み痕が見られることがある。これは、特許6187665号に記載されているものと略同様のものになる。
【0040】
図2Aに示したように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2の一方の面2bの方に偏在している場合に、他方の面2tと導電粒子1とは面一であるか、またはこれらの間に絶縁性樹脂が存在することが好ましい。この場合に、
図2Bの拡大図に示すように、面2bで導電粒子1が露出しているとき、導電粒子1の中心1cを通るフィルム厚方向の直線z上において、導電粒子1の露出している端点1bへの面2bからの距離Lbは、導電粒子1の直線z上の反対側の端点1tから絶縁性樹脂層の他方の面2tへの距離Ltよりも小さいこと、即ち、Lb<Ltが好ましい。
【0041】
なお、対向する電極間で導電粒子を挟持する接続時に、一方(主に基板等の第2電子部品側)の電極に導電粒子が近い方が導電粒子を良好に挟持し、圧痕を見やすくすることができる。また、後述する表3に示すように仮圧着工程における温度や圧力を比較的高くすることでも、接続時に導電粒子の好ましい挟持状態を形成することができる。
【0042】
一方、導電粒子1の平均粒子径が絶縁性樹脂層2の層厚よりも小さい場合において、
図3に示すように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2の一方の面2bから突出し、露出しているとき、導電粒子1の中心1cを通るフィルム厚方向の直線z上において、導電粒子1の露出している端点1bへの面2bからの距離Lbは、導電粒子1の直線z上の反対側の端点1tから絶縁性樹脂層の他方の面2tへの距離Ltよりも小さく、Lb<Ltの関係が満たされる。
【0043】
導電粒子1の前記端点1tから絶縁性樹脂層の面2tへの距離Ltは、導電粒子1の平均粒子径の10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましい。0%であってもよい。また、後述する表3に示すように仮圧着工程における温度や圧力を比較的高くすることでも、接続時における導電粒子の平均粒子径に対する距離Ltの割合を0%に近づけることができる。
【0044】
[異方性導電フィルムの製造方法]
本発明の異方性導電フィルムの製造方法自体には特に限定はないが、例えば、導電粒子を所定の配列に配置するための転写型を製造し、転写型の凹部に導電粒子を充填し、その上に、剥離フィルム上に形成した絶縁性樹脂層を被せて圧力をかけ、絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込むことにより、絶縁性樹脂層に導電粒子を転着させ、あるいはさらにその導電粒子上に低粘度樹脂で形成された接着層を積層することで、異方性導電フィルムを製造する。
【0045】
また、転写型の凹部に導電粒子を充填した後、その上に絶縁性樹脂層を被せ、転写型から絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を転写させ、絶縁性樹脂層上の導電粒子を絶縁性樹脂層内に押し込むことにより異方性導電フィルムを製造してもよい。
【0046】
なお、転写型としては、凹部に導電粒子を充填するものの他、凸部の天面に微粘着剤を付与してその天面に導電粒子が付着するようにしたものを用いても良い。これらの転写型は機械加工、フォトリソグラフィ、印刷法等の公知の技術を用いて製造することができる。
【0047】
また、導電粒子を所定の配列に配置する方法としては、転写型を用いる方法に代えて、所定の配置で設けられた貫通孔に導電粒子を通過させる方法等を使用してもよい。
【0048】
[異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法]
本発明の異方性導電フィルムを用いて電子部品を接続する方法としては、例えば、ステージに一方の電子部品を載置し、その上に異方性導電フィルムを介してもう一方の電子部品を載置し、接続ツールで加熱押圧することにより接続構造体を製造する。この場合、ステージに載置する電子部品をICチップ、ICモジュール、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とし、接続ツールで加熱加圧する電子部品をFPC、ICチップ、ICモジュールなどの第1電子部品とする。第1電子部品と第2電子部品の組み合わせは、いずれかの電子部品から圧痕を確認できる組み合わせであればよい。
【0049】
(仮貼り工程~重ね合わせ工程~加圧硬化工程)
より詳細には、各種基板等の第2電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りし(仮貼り工程)、その異方性導電フィルムにFPCやICチップ等の第1電子部品を合わせ(重ね合わせ工程)、接続ツールを用いて熱圧着することにより接続構造体を製造する(熱圧着工程等の加圧硬化工程)。第2電子部品を仮貼りした異方性導電フィルムに第1電子部品を合わせるとは、所謂アライメントのことであり、第1電子部品を、異方性導電フィルムを介して第2電子部品に搭載する工程のことである。
【0050】
第1電子部品は接続ツールにより搬送されてもよい。搬送後、接続ツールでそのまま後述する仮圧着を行ってもよく、あるいは一度第1電子部品から接続ツールを離間させ(即ち、接続ツールによる第1電子部品の加圧と加熱を一旦止め)、改めてツールで仮圧着を行ってもよい。
【0051】
なお、第2電子部品ではなく、第1電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りして接続構造体を製造することもできる。また、接続方法における圧着は熱圧着に限定されるものではなく、光硬化を利用した圧着や、熱と光を併用した圧着などを行っても良い。本発明は、このように本発明の異方性導電フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続された接続構造体や、その製造方法を包含する。
【0052】
(仮圧着工程)
重ね合わせ工程と同時、もしくは重ね合わせ工程と加圧硬化工程との間には、必要に応じて、異方性導電フィルムを介して重ね合わせた第1電子部品と第2電子部品とを、加圧硬化工程における加圧力より小さい加圧力で加圧する仮圧着工程を設けても良い。即ち、第1電子部品を、異方性導電フィルムを介して第2電子部品に搭載する重ね合わせ工程(部品搭載工程ともいう)と仮圧着工程とを同時に行ってもよい。もしくは重ね合わせ工程(部品搭載工程)とは別に仮圧着工程を設けても良い。なお、仮圧着工程に対して、本来の硬化工程を本圧着工程ともいう。本圧着工程が熱圧着により行われる場合、仮圧着工程は、本圧着工程よりも低温かつ低圧で行うことができる。
【0053】
仮圧着工程により、比較的最低溶融粘度の低い樹脂(例えば、接着層の樹脂)は、隣接するバンプ等の電極間スペースを充填するように流動し、対向する電極間において導電粒子と電極との間の絶縁性樹脂が低減する。このように加圧硬化工程(本圧着工程)の前に予め電極間スペースへ樹脂を流動させておくと、接続ツールの押圧力が導電粒子に伝わり易くなることで、電極での圧痕の観察がさらに容易になり、圧痕の検査精度が向上する。本発明は、特に異方性導電フィルムにおいて導電粒子が規則配列をして個々に独立して存在する場合に、個別に検知されるべき圧痕が、粒子径が比較的小さくなることに起因した導電粒子の押込み不足や軽微な樹脂流動などの影響で、個別に検出され難くなる現象を回避できるという効果を発揮する。また、量産上問題がないレベルで圧痕が検出されるものを、量産にあたってより良好な条件とするための改良である、とも言い換えることができる。
【0054】
また、導電粒子を含有する絶縁性樹脂層の層厚が導電粒子に対して同等以上の場合に、仮圧着工程を設けると、対向する電極間にある導電粒子が、比較的溶融粘度の低い樹脂の流動に巻き込まれ難くなり、不用な導電粒子の移動が抑制される効果も期待できる。さらに、ファインピッチの接続において導電粒子の圧着時のズレのリスクが抑えられることでも、電極に圧痕が形成されやすくなり、圧痕の検査精度が向上するという本発明の効果を得られ易くなる。
【0055】
仮圧着工程は、通常、温度60~80℃、圧力0.5~2.0Mpa、加圧時間1~2秒で行われる。この条件は、接続対象物によって変動することもある。これに対し、本発明では異方性導電フィルムが、導電粒子含有層と接着層とが積層したものである場合、仮圧着工程において第1電子部品又は第2電子部品の電極間スペースを接着層の樹脂が充填するように仮圧着工程の温度、圧力又は時間の条件を定めることが好ましく、そのために上述の通常の仮圧着工程の条件以上の高温高圧で行うことが好ましい。特に接着層が溶融する程度の高温とし、接着層の樹脂を電極間スペースに充填することが好ましい。例えば、温度70~90℃、圧力0.5~6Mpa、加圧時間0.5~1秒で仮圧着工程を行うことが好ましい。一方、仮圧着工程において温度が高すぎたり、加圧時間が長すぎたりすると、かえって圧痕が弱くなるので好ましくない。
【0056】
また、本圧着工程において導電粒子含有層を構成する絶縁性樹脂層の樹脂流動をできる限り抑えるため、異方性導電フィルムが、導電粒子含有層と接着層とが積層したものである場合には、仮圧着工程における、導電粒子含有層を構成する絶縁性樹脂の最低溶融粘度と接着層を構成する樹脂の最低溶融粘度との差を大きくすることが好ましく、そのために、接着層の樹脂の最低溶融粘度を前述の数値のように低くすることが好ましい。
【0057】
本発明の電子部品の接続構造体の製造方法では、導電粒子の平均粒子径が2.8μm未満と小さくとも圧痕の視認性を良好にすることを目指している。圧痕検査は、得られた接続構造体の良否判定に影響を及ぼす。圧痕の視認性が良好になることは、接続構造体の製造過程における検査精度の向上や検査時間の短縮に寄与するので、産業上の利便性に大きく貢献できる。したがって、本発明は、本発明の異方性導電フィルムを用いた接続構造体を包含し、この接続構造体に対して圧痕検査をする接続構造体の製造方法も包含する。
【実施例0058】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0059】
実施例1~6、参考例1、2
(異方性導電フィルムの作製)
表1に示した配合で、絶縁性樹脂層を形成する絶縁性樹脂層形成用樹脂組成物、及び接着層を形成する接着層形成用樹脂組成物を調製した。絶縁性樹脂層の最低溶融粘度は3000Pa・s以上であり、この絶縁性樹脂層の最低溶融粘度と接着層の最低溶融粘度の比は2以上であった。
【0060】
【0061】
一方、導電粒子として、表2の20%圧縮弾性率と平均粒子径を有する金属被覆樹脂粒子(積水化学工業株式会社製、製品名:ミクロパール)を用意し、これと上述の絶縁性樹脂層形成用樹脂組成物及び接着層形成用樹脂組成物を用いて、特許第6187665号公報に記載の方法により、表2に示す層厚を有する絶縁性樹脂層に、上述の導電粒子を六方格子(個数密度12,000個/mm2)の配置で押し込んだ。そして、その押し込み面と反対側の絶縁性樹脂層に、予め形成した厚さ8μmの接着層を、温度60℃、圧力0.2MPaでラミネートすることにより積層した。
【0062】
導電粒子の押し込み面の状態を表2に示す。表2において、「露出」は絶縁性樹脂層から導電粒子が露出していたことを表し、「痕」は露出はしていないが、導電粒子の押し込み跡が観察されたことを表している。
【0063】
(接続構造体の作製)
各実施例及び参考例の異方性導電フィルムを用いて、評価用FPC(20μmピッチ、Cu8μm厚―Snめっき、38μm厚S’perflex基材)と、ガラス基板(Ti/Al配線)との接続を行なった。
【0064】
この場合、異方性導電フィルムを1mm幅にスリットして、導電粒子の押し込み面をガラス基板に貼り付けた。その上に評価用FPCをアライメントして載置し、ヒートツール(1mm幅)で温度70℃、圧力1Mpa、加圧時間1秒で仮圧着し、次にヒートツール(1mm幅)で緩衝材(厚み100μmのテフロン(登録商標))を用いて、圧着条件170℃、3.5MPa、6秒間(ツールスピード10mm/sec、ステージ温度40℃)で異方性導電接続を行い、接続構造体を作製した。
【0065】
(a)圧痕評価
圧痕を金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。結果を表2に示す。
評価A:良好に観察できる
評価B:実用上問題なく観察できる(圧痕検査にAよりも時間がかかるが、Aの1.5倍以内の時間で終了する)
評価C:圧痕が弱く、検査精度に懸念が生じる(圧痕検査にBの2倍以上の時間がかかる)
【0066】
【0067】
(b)その他の評価
(i)接続構造体の導通抵抗を測定する導通試験、(ii)温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を測定する信頼性試験、(iii)バンプ間100個におけるショート数を数えるショート確認試験を行った。実施例も参考例も全てにおいて、実用上問題はない結果が得られた。
【0068】
以上の結果から、導電粒子として20%圧縮弾性率が6000N/mm2以上であり、導電粒子含有層の絶縁性樹脂層の層厚が、導電粒子の平均粒子径の110%以下(実施例6)であると圧痕の観察が容易であるが、これを超えると(参考例2)圧痕が観察しづらくなることがわかる。参考例1、2は、実施例と比較して圧痕が良好な状態ではなかった。
【0069】
なお、導電粒子の粒子径に対して絶縁性樹脂層の層厚が薄すぎる場合(例えば、層厚1.1μm)、圧痕に問題はないが、仮貼り性が悪化するので、異方性導電フィルムとしては好ましくない。
【0070】
試験例1~10
表3に示すように仮圧着条件(温度、圧力、時間)を変化させる以外は実施例3を繰り返し、(a)圧痕評価、(b)導通抵抗、及び(c)接着強度を次のように評価した。結果を表3に示す。なお、表3には、実施例3の仮圧着条件を試験例3として記載した。
【0071】
(a)圧痕評価
上述の実施例と同様に金属顕微鏡により観察して評価すると共に、圧痕検出NG発生率を求め、次の基準で評価した。ここで、圧痕検出NG発生率とは、ACF接合検査装置 V Series圧痕(異物)検査/位置ずれ検査装置(株式会社昭和電気研究所)を使用すると圧痕を検出できないことが懸念される程度に圧痕が弱く、かつ接続状態は実用上問題ないが、評価用FPCの一つの配線における導電粒子の捕捉数が10個以下の配線を圧痕検出NG配線とした場合の、圧痕検出NG配線の全配線に対する発生率(%)をいう。なお、1枚の評価用FPCには1000配線が存在し、圧痕検出NG発生率は5枚の評価用FPCについて検査した。
A++:良好に観察でき、圧痕検出NG発生率が5%未満
A+ :良好に観察でき、圧痕検出NG発生率が5%以上10%未満
A :良好に観察でき、圧痕検出NG発生率が10%以上20%未満
A- :良好に観察でき、圧痕検出NG発生率が20%以上
B :実用上問題なく観察できる(圧痕検査にAよりも時間がかかるが、Aの1.5倍以内の時間で終了する)
C :圧痕が弱く、検査精度に懸念が生じる(圧痕検査にBの2倍以上の時間がかかる)
【0072】
(b)導通抵抗
デジタルマルチメータ(品番:デジタルマルチメータ7555、横河電機株式会社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの抵抗値を測定し、その抵抗値を次の基準で評価した。
A:2Ω未満
B:2Ω以上5Ω未満
C:5Ω以上
【0073】
(c)接着強度
評価用FPCを幅1cmに切り、引張試験機(RTC1201、エー・アンド・デイ社)を用いて、ガラス基板から50mm/秒の速度で90度方向に引き上げ、引き剥がしに要した力を接着強度とし、その接着強度を次の基準で評価した。
A:6N/cm以上
B:3N/cm以上6N/cm未満
C:3N/cm未満
【0074】
【0075】
表3から、仮圧着工程の温度、圧力、時間を変えることにより、電気的接続状態は問題のない接続構造体について、圧痕の見え方を改善できることがわかる。