(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081321
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】荷重支持構造に組み付けられる密閉断熱タンクのための組立方法
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20230602BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20230602BHJP
【FI】
F17C3/04 E
F17C3/04 A
B65D90/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022187846
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】2112769
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ベノワ アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ルヴェイヤール ジャン-ルイ
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA09
3E170AB29
3E170NA01
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB03
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB02
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD01
3E172CA32
3E172DA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、荷重支持構造に組み付けられる密閉断熱タンクのための組立方法に関する。
【解決手段】荷重支持壁にエッジ線(18)を荷重支持構造のエッジ(99)からaに等しい一定の距離に引くと共に、互いに平行であり互いにbに等しい距離だけ離隔する複数の位置決め線(17)を引く。距離a及びbと、エッジ(99)に直交する方向におけるコルゲート状のメタルシートの寸法と、を含むタンク壁の幾何学的定義と、エッジ(99)に直交する方向におけるエッジ線(18)と上述のように引いた最後の位置決め線(17)との間の距離である少なくとも1つの実測寸法と、に基づき、コルゲート状のメタルシートにおける切断長を算出し、コルゲート状のメタルシートを切断する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重支持構造(1)に組み付けられる密閉断熱タンクのための組立方法(300)であって、
前記密閉断熱タンクは、第1の荷重支持壁(2)に固定される第1のタンク壁(20)と、前記荷重支持構造(1)のエッジ(99)において前記第1の荷重支持壁(2)と連結する第2の荷重支持壁(4)に固定される第2のタンク壁(140)と、を備えるものであり、
前記第1のタンク壁(20)及び前記第2のタンク壁(140)はそれぞれ、密閉メンブレンと、前記密閉メンブレンと前記荷重支持壁との間に配置される断熱バリアと、を備えるものであり、
前記第1のタンク壁(20)の前記断熱バリア(30)は、
前記エッジ(99)に沿って配される第1の断熱パネル(31)と、
前記第1の断熱パネル(31)における前記第2の荷重支持壁(4)とは反対側に並んで当該第1の断熱パネル(31)のエッジに沿って配される第2の断熱パネル(35)と、
を備え、
前記第1のタンク壁(20)の前記密閉メンブレン(80)は、前記第1の断熱パネル(31)と前記第2の断熱パネル(35)とを跨ぐコルゲート状のメタルシート(81)を備え、
前記組立方法(300)は、
前記エッジ(99)に直交する方向における前記第1の断熱パネル(31)の1つの寸法である寸法aと、前記エッジ(99)に直交する方向における前記第2の断熱パネル(35)の寸法bと、を含む前記第1のタンク壁(20)の幾何学的定義を取得するステップ(301)と、
前記第1の荷重支持壁(2)にエッジ線(18)を、前記エッジ(99)から前記寸法aに等しい一定の距離に引き、互いに平行であると共に前記寸法bに等しい距離だけ互いに離隔した複数の連続した位置決め線(17)を、前記第1の荷重支持壁(2)の中央線(14)から前記エッジ線(18)に向かって前記エッジ(99)に平行に引くステップ(302)と、ただし、前記複数の位置決め線(17)のうち最後の位置決め線(17)は、前記エッジ線(18)からの離隔距離が前記寸法bより小さく、
前記エッジ(99)に直交する方向における前記エッジ線(18)と前記最後の位置決め線(17)との間の距離を表す少なくとも1つの実測寸法を取得するステップ(303)と、
前記少なくとも1つの実測寸法に基づき前記コルゲート状のメタルシート(81)の寸法決定を行うステップと、
前記第1の断熱パネル(31)における前記エッジ(99)とは反対側の一辺が前記エッジ線(18)とアライメントするように前記エッジ(99)と前記エッジ線(18)との間に前記第1の断熱パネル(31)を設置し、前記第2の断熱パネル(35)における前記第1の断熱パネル(31)側の一辺が前記最後の位置決め線(17)とアライメントするように前記第2の断熱パネル(35)を設置するステップ(306)と、
前記第1の断熱パネル(31)と前記第2の断熱パネル(35)とを跨ぐように前記コルゲート状のメタルシート(81)を設置するステップ(308)と、
を有することを特徴とする組立方法(300)。
【請求項2】
前記コルゲート状のメタルシート(81)の寸法決定を行うステップは、
前記エッジ(99)に直交する方向における初期寸法を有するコルゲート状のメタルシートブランクを準備するステップ(304A)と、
前記少なくとも1つの実測寸法と前記初期寸法とに基づき前記コルゲート状のメタルシートブランクにおける切断長を算出するステップ(304B)と、
前記コルゲート状のメタルシート(81)を得るために前記コルゲート状のメタルシートブランクを前記切断長に切断するステップ(305)と、
を有する請求項1記載の組立方法(300)。
【請求項3】
前記コルゲート状のメタルシートブランクの前記初期寸法は、前記第1のタンク壁(20)における前記コルゲート状のメタルシート(81)の位置に依存して定められる、
請求項2記載の組立方法(300)。
【請求項4】
前記第1の断熱パネル(31)と前記第2の断熱パネル(35)との間の間隙に少なくとも1つの断熱要素(91,97)を充填するステップをさらに有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の組立方法(300)。
【請求項5】
前記コルゲート状のメタルシート(81)は、前記第1のタンク壁(20)の前記密閉メンブレン(80)の他のコルゲート状のメタルシートと重ね溶接するための少なくとも1つのせぎりエッジ(85)を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の組立方法(300)。
【請求項6】
前記寸法aは、前記エッジ(99)に直交する方向における前記第1の断熱パネル(31)の寸法である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の組立方法(300)。
【請求項7】
前記第2のタンク壁(140)の前記断熱バリア(130)は、前記第1の断熱パネル(31)側において前記エッジ(99)に沿って配置された第3の断熱パネル(131)と、前記第3の断熱パネル(131)と前記第2の荷重支持壁(4)との間に配置された少なくとも1つのスペーサ要素(195)と、を備え、
前記寸法aは、前記エッジ(99)に直交する方向における前記第1の断熱パネル(31)の寸法と前記エッジ(99)に直交する方向におけるスペーサ要素(195)の寸法との和である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の組立方法(300)。
【請求項8】
前記断熱バリア(30)は二次断熱バリアであり、前記第1のタンク壁(20)はさらに一次断熱バリア(60)を備え、
前記一次断熱バリア(60)は、
前記第1の断熱パネル(31)に配置され、鉄製メタルアングル(79)の面(71)を支持する第1の断熱ブロック(61)と、
前記第2の断熱パネル(35)に配置され、金属板(65P)を支持する第2の断熱ブロック(65)と、
前記第1の断熱ブロック(61)と前記第2の断熱ブロック(65)との間に配置されるブリッジ要素(68)と、
を備え、
前記第1の断熱パネル(31)と前記第2の断熱パネル(35)とを跨ぐように前記コルゲート状のメタルシート(81)を設置するステップ(308)は、前記コルゲート状のメタルシート(81)の第1のエッジが前記鉄製メタルアングル(79)の前記面(71)の一部と重なるように、かつ、前記コルゲート状のメタルシート(81)の第2のエッジが前記金属板(65P)の一部と重なるように、前記コルゲート状のメタルシート(81)を前記ブリッジ要素(68)に被せることを含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載の組立方法(300)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの実測寸法と前記第1のタンク壁(20)の前記幾何学的定義とに基づき前記ブリッジ要素(68)における切断長を算出するステップ(307A)と、
算出した前記切断長に前記ブリッジ要素(68)を切断するステップ(307B)と、
をさらに有する、請求項8記載の組立方法(300)。
【請求項10】
前記第1のタンク壁(20)はさらに、前記二次断熱バリア(30)と前記一次断熱バリア(60)との間に配される二次密閉メンブレン(50)を備え、
前記二次密閉メンブレン(50)は好適には、アルミニウムシートとガラス繊維とを含む複合材により作製され、前記二次断熱バリア(30)と前記一次断熱バリア(60)とに接着される、
請求項8又は9記載の組立方法(300)。
【請求項11】
荷重支持構造(1)に組み付けられる密閉断熱タンクのための組立方法(400)であって、
前記密閉断熱タンクは、第1の荷重支持壁(2)に固定される第1のタンク壁(20)と、前記荷重支持構造(1)のエッジ(99)において前記第1の荷重支持壁(2)と連結する第2の荷重支持壁(4)に固定される第2のタンク壁(140)と、を備えるものであり、
前記第1のタンク壁(20)及び前記第2のタンク壁(140)はそれぞれ、密閉メンブレンと、前記密閉メンブレンと前記荷重支持壁との間に配置される断熱バリアと、を備えるものであり、
前記第1のタンク壁(20)の前記断熱バリア(30)は、
前記エッジ(99)に沿って配される第1の断熱パネル(31)と、
前記第1の断熱パネル(31)における前記第2の荷重支持壁(4)とは反対側に並んで当該第1の断熱パネル(31)のエッジに沿って配される第2の断熱パネル(35)と、
を備え、
前記第1のタンク壁(20)の前記密閉メンブレン(80)は、前記第1の断熱パネル(31)と前記第2の断熱パネル(35)とを跨ぐコルゲート状のメタルシート(81)を備え、
前記第2のタンク壁(140)の前記断熱バリア(130)は、前記第1の断熱パネル(31)側において前記エッジ(99)に沿って配置された第3の断熱パネル(131)と、前記第3の断熱パネル(131)と前記第2の荷重支持壁(4)との間に配置された少なくとも1つのスペーサ要素(195)と、を備え、
前記組立方法は、
前記エッジ(99)に直交する方向における前記第2の断熱パネル(35)の寸法bを含む前記第1のタンク壁(20)の幾何学的定義を取得するステップ(401)と、
前記第2の荷重支持壁(4)について得られた前記第1の実測寸法に少なくとも依存して前記少なくとも1つのスペーサ要素(195)の寸法決定を行うステップ(402)と、
前記第1の荷重支持壁(2)に、互いに平行であると共に前記寸法bに等しい距離だけ互いに離隔した複数の連続した位置決め線(17)を、前記第1の荷重支持壁(2)の中央線(14)から前記エッジ(99)に向かって前記エッジ(99)に平行に引くステップ(403)と、ただし、前記複数の位置決め線(17)のうち最後の位置決め線(17)は、前記エッジ(99)からの離隔距離が、前記エッジ(99)に直交する方向における前記第1の断熱パネル(31)の寸法に少なくとも等しい距離と、当該寸法にbを足したものに少なくとも等しい距離であり、
前記第2の荷重支持壁(4)に前記少なくとも1つのスペーサ要素(195)を設置し、前記第3の断熱パネル(131)が前記少なくとも1つのスペーサ要素(195)に設けるように前記第2の荷重支持壁(4)に前記第3の断熱パネル(131)を前記エッジ(99)に沿って設置し、前記第1の荷重支持壁(2)における前記第3の断熱パネル(131)側に前記第1の断熱パネル(31)を前記エッジ(99)に沿って設置し、前記第2の断熱パネル(35)における前記第1の断熱パネル(31)側の一辺が前記最後の位置決め線(17)とアライメントするように、前記第1の荷重支持壁(2)に前記第2の断熱パネル(35)を設置するステップ(404)と、
前記エッジ(99)に直交する方向における第2の断熱パネル(35)の前記一辺と前記第1の断熱パネル(31)側のエッジとの間の距離を表す少なくとも1つの第2の実測寸法を取得するステップ(405)と、
前記少なくとも1つの第2の実測寸法に基づき前記コルゲート状のメタルシート(81)の寸法決定を行うステップと、
前記第1の断熱パネル(31)と前記第2の断熱パネル(35)とを跨ぐように前記コルゲート状のメタルシート(81)を設置するステップ(409)と、
を有することを特徴とする組立方法(400)。
【請求項12】
前記コルゲート状のメタルシート(81)の寸法決定を行うステップは、
前記エッジ(99)に直交する方向における初期寸法を有するコルゲート状のメタルシートブランクを準備するステップ(406A)と、
前記少なくとも1つの第2の実測寸法と前記初期寸法とに基づき前記コルゲート状のメタルシートブランクにおける切断長を算出するステップ(406B)と、
前記コルゲート状のメタルシート(81)を得るために前記コルゲート状のメタルシートブランクを前記切断長に切断するステップ(407)と、
を有する請求項11記載の組立方法。
【請求項13】
前記第1の断熱パネル(31)と前記第2の断熱パネル(35)との間の間隙に少なくとも1つの断熱要素(91,97)を充填するステップを有する、
請求項11又は12記載の組立方法。
【請求項14】
前記コルゲート状のメタルシートブランクの前記初期寸法は、前記第1のタンク壁(20)における前記コルゲート状のメタルシート(81)の位置に依存して定められる、
請求項12又は13記載の組立方法。
【請求項15】
前記コルゲート状のメタルシート(81)は、前記第1のタンク壁(20)の前記密閉メンブレン(80)の他のコルゲート状のメタルシートと重ね溶接するための少なくとも1つのせぎりエッジ(85)を有する、
請求項11から14までのいずれか1項記載の組立方法。
【請求項16】
前記第1のタンク壁(20)の前記断熱バリア(30)は二次断熱バリアであり、前記第1のタンク壁(20)はさらに一次断熱バリア(60)を備え、
前記一次断熱バリア(60)は、
前記第1の断熱パネル(31)に配置され、鉄製メタルアングル(79)の面(71)を支持する第1の断熱ブロック(61)と、
前記第2の断熱パネル(35)に配置され、金属板(65P)を支持する第2の断熱ブロック(65)と、
前記第1の断熱ブロック(61)と前記第2の断熱ブロック(65)との間に配置されるブリッジ要素(68)と、
を備え、
前記第1の断熱パネル(31)と前記第2の断熱パネル(35)とを跨ぐように前記コルゲート状のメタルシート(81)を設置するステップ(409)は、前記コルゲート状のメタルシート(81)の第1のエッジが前記鉄製メタルアングル(79)の前記面(71)の一部と重なるように、かつ、前記コルゲート状のメタルシート(81)の第2のエッジが前記金属板(65P)の一部と重なるように、前記コルゲート状のメタルシート(81)を前記ブリッジ要素(68)に被せることを含む、
請求項11から15までのいずれか1項記載の組立方法(300)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第2の実測寸法と前記第1のタンク壁(20)の前記幾何学的定義とに基づき前記ブリッジ要素(68)における切断長を算出するステップ(408A)と、
算出した前記切断長に前記ブリッジ要素(68)を切断するステップ(408B)と、
をさらに有する、請求項16記載の組立方法。
【請求項18】
前記第1のタンク壁(20)はさらに、前記二次断熱バリア(30)と前記一次断熱バリア(60)との間に配される二次密閉メンブレン(50)を備え、
前記二次密閉メンブレン(50)は好適には、アルミニウムシートとガラス繊維とを含む複合材により作製され、前記二次断熱バリア(30)と前記一次断熱バリア(60)とに接着される、
請求項16又は17記載の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス等の流体を貯蔵及び/又は輸送するための密閉断熱メンブレンタンクの分野に関するものである。密閉断熱メンブレンタンクは特に、大気圧かつ約-163℃で貯蔵される液化天然ガス(LNG)を貯蔵するために用いられる。かかるタンクは、陸上又は浮体構造物に設置することができる。浮体構造物では、上記のタンクは液化天然ガスを輸送するため、又は、当該浮体構造物を動かすための燃料として用いられる液化天然ガスを入れるために用いることができる。
【0002】
一実施形態では、液化ガスは、約-162℃の温度かつ大気圧で貯蔵される高メタン含有量の混合物であるLNGである。他の液化ガスを貯蔵することも可能であり、特にエタン、プロパン、ブタン又はエチレンを貯蔵することができ、また水素を貯蔵することもできる。液化ガスは、例えば2~20バールの相対圧、特に約2バールの相対圧等の加圧下で貯蔵することもできる。
【背景技術】
【0003】
荷重支持構造に配置される液化天然ガス用の密閉断熱貯蔵タンクは多層構造を有し、具体的には(当該タンクの外部から内部に向かって)、荷重支持構造に固定される二次断熱バリアと、二次断熱バリアに設けられる二次密閉メンブレンと、二次密閉メンブレンに設けられる一次断熱バリアと、一次断熱バリアに設けられる一次密閉メンブレンであって当該タンクに貯蔵される液化天然ガスと接触するように設計された一次密閉メンブレンと、を備える。
【0004】
荷重支持構造は典型的には多面体形状を有する。一次断熱バリア及び二次断熱バリアの少なくとも一部は、例えば仏国特許出願公開第2691520号明細書等に記載された原理に従い、タンクの内部スペースの外部で既製の標準寸法の断熱要素により作製することができる。一次密閉メンブレンは特に、複数のコルゲート状のメタルシートを重ね溶接したものにより作製することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の特定の側面の基礎となっている知見は、予め決まった寸法を有するコルゲート状のメタルシートのセットから選択されたコルゲート状のメタルシートから一次密閉メンブレンを作製するためには、荷重支持構造の設計上の理想的な多面体形状からの寸法偏差が生じると、シートの各コルゲーション間の十分な連続性を達成することができなくなる、というものであるが、かかる連続性は一次密閉メンブレンの良好な機械的強度を保証するために非常に重要である。
【0006】
本発明の軸となる一思想は、特定のコルゲート状のメタルシートの寸法を調整するために荷重支持壁において実測寸法(in situ dimensional measurement)をとり、この実測寸法を用いて荷重支持構造の設計上の理想的な多面体形状からのいかなる寸法偏差も補償するというものである。
【0007】
よって、本発明は荷重支持構造に組み付けられる密閉断熱タンクのための組立方法を提案するものであり、
前記密閉断熱タンクは、第1の荷重支持壁に固定される第1のタンク壁と、前記荷重支持構造のエッジにおいて前記第1の荷重支持壁と連結する第2の荷重支持壁に固定される第2のタンク壁と、を備えるものであり、
前記第1のタンク壁及び前記第2のタンク壁はそれぞれ、密閉メンブレンと、前記密閉メンブレンと前記荷重支持壁との間に配置される断熱バリアと、を備えるものであり、
前記第1のタンク壁の前記断熱バリアは、
-前記エッジに沿って配される第1の断熱パネルと、
-前記第1の断熱パネルにおける前記第2の荷重支持壁とは反対側に並んで当該第1の断熱パネルのエッジに沿って配される第2の断熱パネルと、
を備え、
前記第1のタンク壁の前記密閉メンブレンは、前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとを跨ぐコルゲート状のメタルシートを備え、
前記組立方法は、
-前記エッジに直交する方向における前記第1の断熱パネルの1つの寸法である寸法aと、前記エッジに直交する方向における前記第2の断熱パネルの寸法bと、を含む前記第1のタンク壁の幾何学的定義を取得するステップと、
-前記第1の荷重支持壁にエッジ線を、前記エッジから前記寸法aに等しい一定の距離に引き、互いに平行であると共に前記寸法bに等しい距離だけ互いに離隔した複数の連続した位置決め線を、前記第1の荷重支持壁の中央線から前記エッジ線に向かって前記エッジに平行に引くステップと、ただし、前記複数の位置決め線のうち最後の位置決め線は、前記エッジ線からの離隔距離が前記寸法bより小さく、
-前記エッジに直交する方向における前記エッジ線と前記最後の位置決め線との間の距離を表す少なくとも1つの実測寸法を取得するステップと、
-前記少なくとも1つの実測寸法に基づき前記コルゲート状のメタルシートの寸法決定を行うステップと、
-前記第1の断熱パネルにおける前記エッジとは反対側の一辺が前記エッジ線とアライメントするように前記エッジと前記エッジ線との間に前記第1の断熱パネルを設置し、前記第2の断熱パネルにおける前記第1の断熱パネル側の一辺が前記最後の位置決め線とアライメントするように前記第2の断熱パネルを設置するステップと、
-前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとを跨ぐように前記コルゲート状のメタルシートを設置するステップと、
を有する。
【0008】
「第1の断熱パネルと第2の断熱パネルとを跨ぐ」とは、コルゲート状のメタルシートのいずれかの側が第2の断熱パネルにおける第1の断熱パネル側から第1の断熱パネル及び第2の断熱側の上方に延在することを意味する。コルゲート状のメタルシートは第1の断熱パネルと第2の断熱パネルとに直接設けることができ、これに代えて、コルゲート状のメタルシートと第1の断熱パネル及び第2の断熱パネルとの間に第1のタンク壁の他の要素を挟むことも可能である。「中央」とは、中央線が第1の荷重支持壁を、表面積が等しい2つの壁に等分することを意味する。
【0009】
上述の少なくとも1つの実測寸法に基づきコルゲート状のメタルシートの寸法決定を行うことは、特にエッジに最も近いメタルシートにおいて、荷重支持構造の設計上の理想的な多面体形状からのいかなる寸法偏差も補償するための助けになる。これにより、エッジに直交する方向における寸法が予め決まったブランクのセットからコルゲート状のメタルシートブランクを選択することが可能になる。このことは、作製されるコルゲート状のメタルシートの寸法の数を抑えるための助けとなり、これによりタンクの製造コストが削減される。
【0010】
実施形態に応じて、上述の組立方法は以下の特徴のうち1つ又は複数を具備することができる。
【0011】
一実施形態では、前記コルゲート状のメタルシートの寸法決定を行うステップは、
-前記エッジに直交する方向における初期寸法を有するコルゲート状のメタルシートブランクを準備するステップと、
-前記少なくとも1つの実測寸法と前記初期寸法とに基づき前記コルゲート状のメタルシートブランクにおける切断長を算出するステップと、
-前記コルゲート状のメタルシートを得るために前記コルゲート状のメタルシートブランクを前記切断長に切断するステップと、
を有する。
【0012】
一実施形態では、前記コルゲート状のメタルシートブランクの前記初期寸法は、前記第1のタンク壁における前記コルゲート状のメタルシートの位置に依存して定められる。
【0013】
一実施形態では前記方法は、前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとの間の間隙に少なくとも1つの断熱要素を充填するステップをさらに有する。
【0014】
一実施形態では、前記コルゲート状のメタルシートは、前記第1のタンク壁の前記密閉メンブレンの他のコルゲート状のメタルシートと重ね溶接するための少なくとも1つのせぎりエッジを有する。
【0015】
一実施形態では、前記寸法aは、前記エッジに直交する方向における前記第1の断熱パネルの寸法である。
【0016】
一実施形態では、前記第2のタンク壁の前記断熱バリアは、前記第1の断熱パネル側において前記エッジに沿って配置された第3の断熱パネルと、前記第3の断熱パネルと前記第2の荷重支持壁との間に配置された少なくとも1つのスペーサ要素と、を備え、前記寸法aは、前記エッジに直交する方向における前記第1の断熱パネルの寸法と前記エッジに直交する方向におけるスペーサ要素の寸法との和である。
【0017】
一実施形態では、前記コルゲート状のメタルシートは前記エッジに直交する方向に互いに平行に延在する第1のコルゲーション列と、前記エッジに平行な方向に互いに平行に延在する第2のコルゲーション列と、を有する。
【0018】
一実施形態では、第1の一次断熱パネルは内部プレートと、外部プレートと、当該内部プレートと外部プレートとの間に挟まれたポリマー発泡体ブロックと、を備える。
【0019】
一実施形態では、前記断熱バリアは二次断熱バリアであり、前記第1のタンク壁はさらに一次断熱バリアを備え、
前記一次断熱バリアは、
前記第1の断熱パネルに配置され、鉄製メタルアングルの面を支持する第1の断熱ブロックと、
前記第2の断熱パネルに配置され、金属板を支持する第2の断熱ブロックと、
前記第1の断熱ブロックと前記第2の断熱ブロックとの間に配置されるブリッジ要素と、
を備え、
前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとを跨ぐように前記コルゲート状のメタルシートを設置するステップは、前記コルゲート状のメタルシートの第1のエッジが前記鉄製メタルアングルの前記面の一部と重なるように、かつ、前記コルゲート状のメタルシートの第2のエッジが前記金属板の一部と重なるように、前記コルゲート状のメタルシートを前記ブリッジ要素に被せることを含む。
【0020】
一実施形態では前記方法は、前記少なくとも1つの実測寸法と前記第1のタンク壁の前記幾何学的定義とに基づき前記ブリッジ要素における切断長を算出するステップと、算出した前記切断長に前記ブリッジ要素を切断するステップと、をさらに有する。
【0021】
一実施形態では、前記第1のタンク壁はさらに、前記二次断熱バリアと前記一次断熱バリアとの間に配される二次密閉メンブレンを備える。
【0022】
一実施形態では、前記二次密閉メンブレンはアルミニウムシートとガラス繊維とを含む複合材により作製され、前記二次断熱バリアと前記一次断熱バリアとに接着される。
【0023】
本発明はさらに、荷重支持構造に組み付けられる密閉断熱タンクのための組立方法を提供するものであり、
前記密閉断熱タンクは、第1の荷重支持壁に固定される第1のタンク壁と、前記荷重支持構造のエッジにおいて前記第1の荷重支持壁と連結する第2の荷重支持壁に固定される第2のタンク壁と、を備えるものであり、
前記第1のタンク壁及び前記第2のタンク壁はそれぞれ、密閉メンブレンと、前記密閉メンブレンと前記荷重支持壁との間に配置される断熱バリアと、を備えるものであり、
前記第1のタンク壁の前記断熱バリアは、
-前記エッジに沿って配される第1の断熱パネルと、
-前記第1の断熱パネルにおける前記第2の荷重支持壁とは反対側に並んで当該第1の断熱パネルのエッジに沿って配される第2の断熱パネルと、
を備え、
前記第1のタンク壁の前記密閉メンブレンは、前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとを跨ぐコルゲート状のメタルシートを備え、
前記第2のタンク壁の前記断熱バリアは、前記第1の断熱パネル側において前記エッジに沿って配置された第3の断熱パネルと、前記第3の断熱パネルと前記第2の荷重支持壁との間に配置された少なくとも1つのスペーサ要素と、を備え、
前記組立方法は、
-前記エッジに直交する方向における前記第2の断熱パネルの寸法bを含む前記第1のタンク壁の幾何学的定義を取得するステップと、
-前記第2の荷重支持壁について得られた前記第1の実測寸法に少なくとも依存して前記少なくとも1つのスペーサ要素の寸法決定を行うステップと、
-前記第1の荷重支持壁に、互いに平行であると共に前記寸法bに等しい距離だけ互いに離隔した複数の連続した位置決め線を、前記第1の荷重支持壁の中央線から前記エッジに向かって前記エッジに平行に引くステップと、ただし、前記複数の位置決め線のうち最後の位置決め線は、前記エッジからの離隔距離が、前記エッジに直交する方向における前記第1の断熱パネルの寸法に少なくとも等しい距離と、当該寸法にbを足したものに少なくとも等しい距離であり、
-前記第2の荷重支持壁に前記少なくとも1つのスペーサ要素を設置し、前記第3の断熱パネルが前記少なくとも1つのスペーサ要素に設けるように前記第2の荷重支持壁に前記第3の断熱パネルを前記エッジに沿って設置し、前記第1の荷重支持壁における前記第3の断熱パネル側に前記第1の断熱パネルを前記エッジに沿って設置し、前記第2の断熱パネルにおける前記第1の断熱パネル側の一辺が前記最後の位置決め線とアライメントするように、前記第1の荷重支持壁に前記第2の断熱パネルを設置するステップと、
-前記エッジに直交する方向における第2の断熱パネルの前記一辺と前記第1の断熱パネル側のエッジとの間の距離を表す少なくとも1つの第2の実測寸法を取得するステップと、
-前記少なくとも1つの第2の実測寸法に基づき前記コルゲート状のメタルシートの寸法決定を行うステップと、
-前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとを跨ぐように前記コルゲート状のメタルシートを設置するステップと、
を有する。
【0024】
「第1の断熱パネルと第2の断熱パネルとを跨ぐ」とは、コルゲート状のメタルシートのいずれかの側が第2の断熱パネルにおける第1の断熱パネル側から第1の断熱パネル及び第2の断熱側の上方に延在することを意味する。コルゲート状のメタルシートは第1の断熱パネルと第2の断熱パネルとに直接設けることができ、これに代えて、コルゲート状のメタルシートと第1の断熱パネル及び第2の断熱パネルとの間に第1のタンク壁の他の要素を挟むことも可能である。「中央」とは、中央線が第1の荷重支持壁を、表面積が等しい2つの壁に等分することを意味する。
【0025】
上述の少なくとも1つの第2の実測寸法に基づきコルゲート状のメタルシートの寸法決定を行うことは、特にエッジに最も近いメタルシートにおいて、荷重支持構造の設計上の理想的な多面体形状からのいかなる寸法偏差も補償するための助けになる。これにより、エッジに直交する方向における寸法が予め決まったブランクのセットからコルゲート状のメタルシートブランクを選択することが可能になる。このことは、作製されるコルゲート状のメタルシートの寸法の数を抑えるための助けとなり、これによりタンクの製造コストが削減される。
【0026】
一実施形態では、前記コルゲート状のメタルシートの寸法決定を行うステップは、
-前記エッジに直交する方向における初期寸法を有するコルゲート状のメタルシートブランクを準備するステップと、
-前記少なくとも1つの第2の実測寸法と前記初期寸法とに基づき前記コルゲート状のメタルシートブランクにおける切断長を算出するステップと、
-前記コルゲート状のメタルシートを得るために前記コルゲート状のメタルシートブランクを前記切断長に切断するステップと、
を有する。
【0027】
一実施形態では、前記コルゲート状のメタルシートブランクの前記初期寸法は、前記第1のタンク壁における前記コルゲート状のメタルシートの位置に依存して定められる。
【0028】
一実施形態では、前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとの間の間隙に少なくとも1つの断熱要素を充填するステップを有する。
【0029】
一実施形態では、前記コルゲート状のメタルシートは、前記第1のタンク壁の前記密閉メンブレンの他のコルゲート状のメタルシートと重ね溶接するための少なくとも1つのせぎりエッジを有する。
【0030】
一実施形態では、前記コルゲート状のメタルシートは前記エッジに直交する方向に互いに平行に延在する第1のコルゲーション列と、前記エッジに平行な方向に互いに平行に延在する第2のコルゲーション列と、を有する。
【0031】
一実施形態では、第1の一次断熱パネルは内部プレートと、外部プレートと、当該内部プレートと外部プレートとの間に挟まれたポリマー発泡体ブロックと、を備える。
【0032】
一実施形態では、前記第1のタンク壁の前記断熱バリアは二次断熱バリアであり、前記第1のタンク壁はさらに一次断熱バリアを備え、
前記一次断熱バリアは、
-前記第1の断熱パネルに配置され、鉄製メタルアングルの面を支持する第1の断熱ブロックと、
-前記第2の断熱パネルに配置され、金属板を支持する第2の断熱ブロックと、
-前記第1の断熱ブロックと前記第2の断熱ブロックとの間に配置されるブリッジ要素と、
を備え、
前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとを跨ぐように前記コルゲート状のメタルシートを設置するステップは、前記コルゲート状のメタルシートの第1のエッジが前記鉄製メタルアングルの前記面の一部と重なるように、かつ、前記コルゲート状のメタルシートの第2のエッジが前記金属板の一部と重なるように、前記コルゲート状のメタルシートを前記ブリッジ要素に被せることを含む。
【0033】
一実施形態では上記方法は、前記少なくとも1つの第2の実測寸法と前記第1のタンク壁の前記幾何学的定義とに基づき前記ブリッジ要素における切断長を算出するステップと、算出した前記切断長に前記ブリッジ要素を切断するステップと、をさらに有する。
【0034】
一実施形態では、前記第1のタンク壁はさらに、前記二次断熱バリアと前記一次断熱バリアとの間に配される二次密閉メンブレンを備える。
【0035】
一実施形態では、前記二次密閉メンブレンはアルミニウムシートとガラス繊維とを含む複合材により作製され、前記二次断熱バリアと前記一次断熱バリアとに接着される。
【0036】
添付の図面を参照して、本発明の複数の具体的な実施形態例についての以下の説明を読めば、本発明をより良好に理解することができ、また、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点がより分かりやすく記載されている。以下の説明の具体的な実施形態例はあくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】密閉断熱タンクを受けるように構成された荷重支持構造の抜粋図である。
【
図2】
図1の荷重支持構造に組み付けられた密閉断熱タンクの2つの壁の部分斜視図である。
【
図3A】
図1の荷重支持構造の横壁の概略図であり、
図1に示されている密閉断熱タンクの壁の断熱パネルを位置決めするために用いられる位置決め線及びエッジ線を示す。
【
図3B】
図3Aと同様の図であるが、位置決め線の補助セットを示す図である。
【
図4A】
図2の壁の断面図であり、
図3A又は
図3Bの位置決め線及びエッジ線を用いて
図2のタンク壁のうち1つを組み立てる様子を示す。
【
図5】
図2及び
図4Aに示されているタンクの組立方法の各ステップを示すフローチャートである。
【
図6】
図2及び
図4Aに示されているタンクの他の組立方法の各ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、密閉断熱タンクの壁を受けるように構成された荷重支持構造1を示す。荷重支持構造1は、船舶の二重船殻により構成される。荷重支持構造1の全体形状は多面体形となっている。荷重支持構造1は横壁2を備えており、これらの横壁2は典型的には前方及び後方に設けられ、本事例では八角形の形状となっている。
図1には、荷重支持構造1の内部スペース9が見えるように、前方の横壁2の一部のみが示されている。横壁2は船舶のコファダム壁であり、船舶の長手方向に交差する横方向に延在する。荷重支持構造1はまた、上壁3と下壁4と側壁5とを備えている。上壁3、下壁4及び側壁5は、船舶の長手方向に延在して前方の横壁2と後方の横壁2とを連結する。
【0039】
上壁3は、後方の横壁2の近傍に、上方に突出する平行六面体状のスペースを有し、これは液体ドーム6と称される。液体ドーム6は、荷重支持構造1にタンクを取り付けたときにタンクから又はタンクへの液体移送路を通過するための開口7を上壁3に画定する。
【0040】
荷重支持構造の荷重支持壁2、3、4、5は、内部スペース9を画定する内面10を有し、この内面にタンクが設置される。タンクは複数のタンク壁を備え、各タンク壁は、荷重支持構造1の各対応する荷重支持壁2,3,4,5に固定されている。
【0041】
図2は、一方の横壁2に固定された第1のタンク壁20と、下壁4に固定された第2のタンク壁140の部分斜視図である。符号99は、荷重支持構造1のエッジであって横壁2と下壁4とがぶつかるエッジを示している。
図1に示されている荷重支持構造1の幾何学的形態により、横壁2と下壁4とは
図2に示されているように90°の角度を成しているが、下記で説明する組立ての原理は、
図1に示されている荷重支持構造1の一対の荷重支持壁がエッジにおいてぶつかるものであれば任意の対の荷重支持壁に適用することができる。また、
図1に示した荷重支持構造1の幾何学的形態はあくまで一例であり、
図2に示されている角度を別の角度とすることができ、特に約135°とすることができる。
【0042】
まず、
図2を参照してタンク壁20及び140の構造を説明する。
【0043】
図2に示すように、タンク壁20は当該タンク壁20の厚さ方向においてタンクの外部から内部に向かって、二次断熱バリア30と、二次密閉メンブレン50と、一次断熱バリア60と、一次密閉メンブレン80とを備える。
【0044】
二次断熱バリア30は、エッジ99に沿って配置された一列のコーナ断熱パネル31と、平行な複数列の平坦な断熱パネル35と、を備えており、当該平坦な断熱パネル35の複数列のうち一列はコーナパネル31の列に沿って配置されている。図面が複雑にならないようにするため、
図2には1つのコーナパネル31と、このコーナパネル31に最も近い二列の平坦パネル35のうち2つの平坦パネル35のみを示す。もちろん、平坦パネル35の列の数と、一列あたりのパネル31又は35の数は、荷重支持壁2の寸法に依存して調整することができる。
【0045】
図4Aは
図2のエッジ99に直交する断面図であり、コーナパネル31と、コーナパネル31に沿って配置された平坦パネル35の構造をより見やすくしたものである。
図4Aには1つの平坦パネル35の一部のみが示されているが、全ての平坦パネルをこの平坦パネルと同じ構造とすることができる。
図4Bは、
図4Aの細部Bを拡大した図である。
【0046】
コーナパネル31は、互いに平行かつ離間した2つのプレート32及び33を有し、これらのプレート32,33は例えば合板製である。プレート32及び33は、例えばポリウレタン発泡体等の断熱発泡体のブロック34を間に挟み込んでおり、この断熱発泡体はオプションとしてガラス繊維により強化される。ブロック34は、例えばプレート32及び33に接着することができる。ブロック34は斜面34Aを有し、この斜面34Aは、タンク壁140の二次断熱バリア130のコーナパネル131の同様の斜面と接続できるようにするものであり、このコーナパネル131はコーナパネル31と同様である。コーナパネル31と横壁2との間には1つ以上のシム95が配置されている。シム95の厚さは公知のように、横壁2の理想的な形状と実際の形状との間のいかなる寸法差も補償するように決定することができる。コーナパネル31と横壁2との間には、マスチックビード(不図示)を塗布することも可能である。コーナパネル131と下壁4との間にも同様に、シム95と同様の1つ以上のシム195を配置することができ、また、コーナパネル13と下壁4との間にマスチックビード(不図示)を塗布することも可能である。
【0047】
平坦パネル35は例えば合板製の底部プレート36を備えており、この底部プレート36には例えばポリウレタン発泡体等の断熱発泡体のブロック37が配置されており、この断熱発泡体はオプションとしてガラス繊維により強化される。ブロック37は、例えば底部プレート36に接着することができる。ブロック37の上面に不透過性の複合材シート51(
図2に示されている)が接着されて、二次密閉メンブレン50の一要素を構成する。平坦パネル35と横壁2との間には1つ以上のシム93が配置されている。シム93の厚さは公知のように、横壁2の理想的な形状と実際の形状との間のいかなる寸法差も補償するように決定することができる。平坦パネル35と横壁2との間には、マスチックビード(不図示)を塗布することも可能である。さらに、横壁2とコーナパネル31と下記にて説明する断熱要素97との間であってコーナパネル31と断熱要素97との間の界面の下方に、シム93及び95と同一の機能を果たすシム94を配置することができる。
【0048】
二次密閉メンブレン50はその全部を、アルミニウムシートと、トリプレックス(Triplex)との呼称で知られるポリアミド樹脂を用いてアルミニウムシートに接合されたガラス繊維と、を有する三層複合材により作製することができる。
【0049】
一次断熱バリア60はコーナパネル31の上方に一次コーナブロック61を備えており、この一次コーナブロック61は鉄製メタルアングル79の面71を支持する。図示の例では、一次コーナブロック61は木製プレート62と、例えばポリウレタン発泡体又はガラスウール等により作製された断熱要素63とを備えており、木製プレート62には、上記面71が例えばねじ留め等により固定される。
【0050】
一次断熱バリア60は、平坦パネル35の上方に一次平坦ブロック65を備えている。一次平坦ブロック65は、不透過性の複合材シート51に配置された例えばポリウレタン発泡体等の断熱発泡体のブロック66と、ブロック66に配置された例えば合板製のカバープレート67と、を備えており、ブロック66の断熱発泡体は、オプションとしてガラス繊維により強化される。ブロック66は、例えばカバープレート67に接着することができる。公知の通り、一次平坦ブロック65はコルゲーション82の下方に応力除去スロット66Rを有することができる。
【0051】
一次コーナブロック61と一次平坦ブロック65との間には、ブリッジ要素68がコーナパネル31と平坦パネル35とを跨いでコーナパネル31と平坦パネル35とに載るように配置される。ブリッジ要素68は、例えばポリウレタン発泡体等の断熱発泡体のブロック68Aと、ブロック68Aに配置された例えば合板製のカバープレート68Bと、を備えており、ブロック68Aの断熱発泡体はオプションとしてガラス繊維により強化される。なお、ブリッジ要素68は
図2に示されているように、複数の部分要素68Dに分割することができる。
【0052】
2つの平坦パネル35の間には、接合ストリップ52が一次平坦ブロック65間かつブリッジ要素68の下方において二次密閉メンブレン50に追加されており、これは例えば不透過性の複合材シート51に接着されている。
【0053】
断熱バリア30及び60と二次密閉メンブレン50の組立てを簡素化するためには、各平坦パネル35を、例えば仏国特許出願公開第2691520号明細書等に記載された原理に従い、タンクの内部スペースの外部で既製の標準寸法の断熱要素の形態で一次平坦ブロック65と一体化することができる。不透過性の複合材シート51は、特にタンクの内部スペースの外部で、平坦パネル35のブロック37の上面に接着することができる。
【0054】
さらに、コーナパネル31の構成を簡素化するため、当該パネルを公知のように、既製の断熱要素の形態で一次コーナブロック61と一体化することができる。
【0055】
パネル31及び35は、当該パネル31及び35を横断する周知の固定手段(不図示)によって、荷重支持壁2に固定される。符号98は、かかる固定手段を覆う断熱栓部を示す。
【0056】
一次密閉メンブレン80はコルゲート状のメタルシート81を備えており、図面が複雑にならないように、
図2にはコルゲート状のメタルシート81のうち1つのみを示す。コルゲート状のメタルシート81は、例えばステンレス鋼等の金属合金により作製されている。コルゲート状のメタルシート81は、当該シートを互いに合わせて重ね溶接できるようにするための、公知技術のせぎりエッジ85を有する。コルゲート状のメタルシート81は、エッジ99に平行なコルゲーション列82と、エッジ99に直交するコルゲーション列83とを有し、これらのコルゲーションは、コルゲート状のメタルシート81が液化ガスとの接触に起因して生じる熱収縮現象に耐えられるようにするものである。符号84は、コルゲーション82,83の交差部に位置するノードを示している。
【0057】
一次密閉メンブレン80を断熱バリア60に固定するため、一次平坦ブロック65及びブリッジ要素68のそれぞれのカバープレート65及び68Bは、公知のようにそれぞれ金属板65P及び68Pを支持する。
【0058】
また、公知のように、コルゲーション83の端部は、鉄製メタルアングル79に支持されるスリーブ86に嵌合することができる。鉄製メタルアングル79はまたスリーブ186も支持することができ、このスリーブ186は、各コルゲーション83とこれに各対応する上下方向コルゲーション183とが連続的に接続するため、タンク壁140のコルゲート状の一次メンブレン180の上下方向コルゲーション183の端部を受けるスリーブ86とアライメントする。
【0059】
各コルゲート状のメタルシート81は原則的に、当該コルゲート状のメタルシート81をタンク壁20に正確に位置決めできる寸法で作製することができるが、一次密閉メンブレン80の組立てを容易にし、ひいてはタンク壁20の組立てを容易にするためには、予め決まった寸法のコルゲート状のメタルシートのセットから各コルゲート状のメタルシート81を選択できることが理想的である。実際には、荷重支持構造1はその設計上の理想的な多面体形状からある程度の寸法偏差を有し得るものであり、かかる寸法偏差によって、シートが予め決まった寸法である場合に達成されるシートの各コルゲーション間の十分な連続性が達成されなくなり得る。しかし、かかる連続性は一次密閉メンブレン80の良好な機械的強度を保証するために非常に重要である。
【0060】
以下、
図4A及び
図5を参照して、一次密閉メンブレン80を構成するシートが予め決まった寸法となっている場合でも当該メンブレンの優れた機械的強度を提供する組立方法300について説明する。
【0061】
方法300の第1のステップ301において、タンク壁20の幾何学的定義を取得する。この幾何学的定義は:
-エッジ99に直交する方向におけるコーナパネル31の寸法を表す寸法a(
図4A参照)と、
-エッジ99に直交する方向にける平坦パネル35の寸法b(
図2,3,4A参照)と、を含む。
【0062】
ステップ301の後、方法300はステップ302に進み、同ステップ302は、荷重支持壁2にエッジ線18及び位置決め線17を引くことを含む。このステップについて、
図3及び
図4Aを参照してより詳細に説明する。
【0063】
図3Aに示されているように、エッジ線18は本事例では、エッジ99から寸法aに等しい一定の距離に引かれる。エッジ線18は、以下に説明するように、コーナパネル31の位置決めに使用することができる。
【0064】
位置決め線17は下記のようにして引かれる。
【0065】
最初に、エッジ99に平行である荷重支持壁2の中央線14を引く。「中央」とは、中央線14が荷重支持壁2を、表面積が等しい2つの壁に等分することを意味する。図示の例では、中央線14はタンクの上下方向の中心軸である。よって、中央線14を含む荷重支持壁2に垂直な平面はタンクの内部容積を、容積が等しい2つの部分に分割する。
【0066】
タンクの上下方向の中心軸は、
図2に示されているように液体ドーム6を通過することができる。
【0067】
次に、中央線14からエッジ線18まで複数の位置決め線17を引く。これらの位置決め線17は互いに平行であると共にエッジ99に平行であり、また、位置決め線17相互間の離隔距離は寸法bに等しい。ここで留意すべき点は、最初の位置決め線17は必ずしも中央線14に一致するとは限らないということである。また、位置決め線17はエッジ線18の手前で終了する。すなわち、すなわち、エッジ線18とエッジ99との間には位置決め線17を引かない。最後の位置決め線17は、以下に説明するように、コーナパネル31に並ぶように平坦パネル35を位置決めするために使用することができる。他の位置決め線17は、他の列の平坦パネル35を位置決めするために使用することができる。
【0068】
オプションとして、ステップ302において、
図3Bに示されているように、互いに平行であると共にエッジ99に対して垂直な位置決め線16であって相互間の離隔距離が寸法b2に等しい位置決め線16を引くことも可能である。位置決め線16も、エッジ線18とエッジ99との間には引かれない。また、寸法b2はエッジ99に平行な方向における平坦パネル35の寸法である。その後、位置決め線16を用いて平坦パネル35の他の列を位置決めすることができる。なお、寸法b2は、必ずしも寸法bと等しい訳ではない点に留意すべきである。
【0069】
再度
図4Aを参照すると、エッジ線18と位置決め線17とを引いた後は、エッジ線18と最後の位置決め線17との間においてエッジ99と直交する方向に、xを付した余剰距離が残ることがある。「最後の位置決め線17」とは、エッジ線18に最も近い位置決め線17を意味する。エッジ線18とエッジ99との間には位置決め線17が引かれないことを考慮すると、最後の位置決め線17はエッジ線18から、寸法bよりも短い距離だけ離隔する。すなわち、x<bである。荷重支持壁2の寸法、並びに寸法a及びbの値は、荷重支持構造1の設計上の理想的な多面体形状からの寸法偏差を考慮することなく、寸法xがゼロにならないように随意に選択することができる。このようにして、この間隙に上述の断熱要素97,91を配置することができる。しかし、寸法xは荷重支持構造1の設計上の多面体形状からの寸法偏差によって変化し得る。
【0070】
このようにして、ステップ302の後、方法300はステップ303に進み、同ステップ303は、xを表す少なくとも1つの実測寸法を取得することを含む。一変形形態では、上記の実測寸法の取得は、エッジ線18と最後の位置決め線17との間におけるエッジ99に直交する方向の最短距離を単に測定することを含むことができる。しかし、他の測定手法も可能である。また、各コルゲート状のシート81ごとに、xを表す実測寸法を複数取得することもできる。特殊な一変形形態では、エッジ99に平行に離隔した複数の箇所、例えば3~5箇所において、エッジ99に直交する方向にエッジ線18と最後の位置決め線17との間の距離を測定する。
【0071】
ステップ303の後、方法300は、下記にて説明するステップ304A,304B,305及び306に進む。
【0072】
ステップ304Aにおいて、エッジ99に直交する方向における初期寸法を有するコルゲート状のメタルシートブランクを準備する。この初期寸法は、第1のタンク壁20においてコーナパネル31と平坦パネル35とを跨ぐコルゲート状のメタルシート81の位置に依存して定めることができる。
【0073】
ステップ304Aの後、方法300はステップ304Bに進み、同ステップ304Bは、ステップ303で得られた少なくとも1つの実測寸法とブランクの初期寸法とに基づいて、コルゲート状のメタルシートブランク内の切断長を算出することを含む。
【0074】
ステップ304Bの後、方法300はステップ305に進み、同ステップ305は、コーナパネル13と平坦パネル35とを跨ぐコルゲート状のメタルシート81を得るためにコルゲート状のメタルシートブランクを、ステップ304Bにて算出した長さに切断することを含む。
【0075】
ステップ306は、コーナパネル31におけるエッジ99とは反対側の一辺がエッジ線18とアライメントするようにエッジ99とエッジ線18との間にコーナパネル31を設置することと、コーナパネル31と並ぶ平坦パネル35におけるコーナパネル31側の一辺が最後の位置決め線17とアライメントするように、当該平坦パネル35を設置することと、を含む。
【0076】
なお、ステップ304A,304B及び305並びに306は、構造上の要求に応じて任意の順序で実施することができる。
【0077】
ステップ305及び306が完了すると、
図4Aに示されているコーナパネル31とその隣の平坦パネル35との位置決めが達成される。
【0078】
必要に応じて、上記位置決めの後に断熱要素91及び97をコーナパネル31とその隣の平坦パネル35との間の寸法xの間隙に設置する。断熱要素91及び97はそれぞれ、例えばガラス繊維若しくは他の態様で強化されたポリウレタン発泡体の別個のブロック、ガラスウール栓部、又はガラスウールの層を折り畳んで形成した層等とすることができる。有利な一変形形態では、断熱要素97をガラス繊維若しくは他の態様で強化されたポリウレタン発泡体のブロックとすると共に、断熱要素91をガラスウール栓部、又はガラスウールの層を折り畳んで形成した層とする。一変形形態では、1つで寸法xの間隙全部を埋める断熱要素91及び97を1つだけ、当該間隙に挿入することができる。
【0079】
その後、二次密閉メンブレン50とブリッジ要素68とを形成するストリップと、上記のように一次コーナブロック61及び一次平坦ブロック65がコーナパネル31及びその隣の平坦パネル35と一体に設けられていない場合には一次コーナブロック61及び一次平坦ブロック65とを、設置する。
【0080】
断熱要素91及び/若しくは97の寸法並びに/又はブリッジ要素68の寸法は、設置時にブラインドカットすることによって調整することができる。しかし、オプションのステップ307Aにおいて、ステップ303で得られた少なくとも1つの実測寸法とステップ301で得られた幾何学的定義とに基づき上記要素における切断長を算出することも可能である。その後、ステップ307Bにおいて、上記要素を上記で算出した切断長に切断する。
【0081】
オプションのステップ307A及びステップ307Bの後、方法300はステップ308に進み、同ステップ308は、コーナパネル31とその隣の平坦パネル35とを跨ぐようにコルゲート状のメタルシート81を設置することを含む。具体的には、一次断熱バリア60が存在するので、以下のようにコルゲート状のメタルシート81はブリッジ要素68に被せられる:
-コルゲート状のメタルシート81の1つのエッジが鉄製メタルアングル79の面71の一部と重なるように、かつ、
-コルゲート状のメタルシート81の他の1つのエッジが、隣の平坦パネル35によって支持される一次平坦ブロック65のカバープレート67によって支持される金属板65Pの一部(
図4Aには示されていないが、
図2に示されている)と重なるように、被せられる。
【0082】
上述のようにコルゲート状のメタルシート81を得るためにコルゲート状のメタルシートブランクを切断することは、特にエッジ99に最も近いメタルシート81において、荷重支持構造1の設計上の理想的な多面体形状からのいかなる寸法偏差も補償する際の助けになる。これにより、予め決まった寸法のブランクのセットからコルゲート状のメタルシートブランクを選択することが可能になる。
【0083】
しかし上記に代えて、第1のタンク壁20においてコーナパネル31と平坦パネル35とを跨ぐコルゲート状のメタルシート81の寸法を、ステップ303にて得られた少なくとも1つの実測寸法に基づく任意の他の適切な態様の寸法とすることもできる。
【0084】
また、ステップ301,304B及び307Aは、コンピュータ上で実行される適切なコンピュータプログラムを用いて実施することもできる。かかる場合には、ステップ301は、事前にメモリに記憶されたタンクの幾何学的定義を読み込むことを含むことができる。コンピュータプログラムのユーザは、ステップ303で得られた少なくとも1つの寸法実測の結果をコンピュータプログラムに入力し、その後、当該コンピュータプログラムによってステップ304B及び307Aの計算を実行することができる。
【0085】
また、特定のコルゲート状のメタルシート81についての少なくとも1つの実測寸法(ステップ303)について説明したが、上記のステップ303~308はタンク壁20の複数のコルゲート状のメタルシート81について実施することができ、また、タンクのタンク壁のうち幾つか又は全部の同様のコルゲート状のメタルシートについて実施することができる。
【0086】
上記の方法300は、特定のコルゲート状のメタルシート81に対し、エッジ線18と最後の位置決め線17との間の距離を表す1つ又は複数の実測寸法を使用する。これらの実測寸法は、コーナパネル31とその隣の平坦パネル35とを設置する前に測定される。
【0087】
上記の通り、タンク壁140の二次断熱パネル130のコーナパネル131とその下の荷重支持壁4との間に、1つ又は複数のシム195を配置することができる。再度
図4Aを参照すると、シム195の厚さを特定の長さだけ増大した場合、コーナパネル31の位置はその隣の平坦パネル35に向かう方向に、同じ長さだけオフセットする。パネル31の位置のこのような変化は、特にシム195の厚さがコルゲート状のメタルシート81の寸法の公差との関係において及び/又は当該コルゲート状のメタルシート81のせぎりエッジ85の寸法との関係において無視できる場合、無視することができる。そのようにしても、シム195の厚さを上記の寸法aに含めるには及ばない。
【0088】
しかし、コルゲート状のメタルシート81の寸法決定を行うために、シム195の厚さを考慮することが望ましい場合がある。こうするため、シム195の厚さを上述の寸法aに含めることができる。シム195の寸法決定は少なくとも、事前に下壁4で測定した実測寸法に依存して寸法決定することができる。上記の寸法決定は、他の実測寸法に依存して、及び/又は1つ若しくは複数の基準を充足するか否かに依存して、特にシム195の最小厚さに依存して行うこともできる。
【0089】
上記を可能にする他の組立方法400について、下記にて
図4A及び
図6を参照して説明する。
【0090】
方法400の第1のステップ401はステップ301と同じであり、ステップ401においてタンク壁20の幾何学的定義を取得する。この幾何学的定義は:
-エッジ99に直交する方向におけるコーナパネル31の寸法を表す寸法a(
図4A参照)と、
-エッジ99に直交する方向にける平坦パネル35の寸法b(
図2,3,4A参照)と、を含む。
【0091】
シム195の寸法決定は、方法400のステップ402において行われる。この寸法決定は少なくとも、事前に下壁4で測定した第1の実測寸法に依存して行われる。上記の寸法決定は、他の実測寸法に依存して、及び/又は1つ若しくは複数の基準を充足するか否かに依存して、特にシム195の最小厚さに依存して行うこともできる。
【0092】
方法400のステップ403において、荷重支持壁に位置決め線17を引く。位置決め線17は、上記にてステップ302について説明したのとちょうど同じように引かれるので、これについては再度詳細に説明しない。ステップ403において、位置決め線16及び/又はエッジ線18はオプションとして、上記にてステップ302を参照して説明した態様で引くことができる。
【0093】
ステップ402及び403は、必要に応じて任意の順序で実施することができる。
【0094】
ステップ402及び403の後、方法400はステップ404に進み、ステップ404においてシム195と、コーナパネル131と、コーナパネル31と、コーナパネル31と並ぶ平坦パネル35とを設置する。具体的には、下壁4にシム195を設置し、コーナパネル131がシム195上に載るように当該コーナパネル131を設置し、コーナパネル31をコーナパネル131に対向するように設置し、平坦パネル35におけるコーナパネル31側の一辺が最後の位置決め線17とアライメントするように当該平坦パネル35を横壁2においてコーナパネル31と並ぶように設置する。パネル131,31及び35は、必要に応じて任意の順序で設置することができるが、平坦パネル35がコーナパネル131及び31の設置を阻害するリスクを回避するため、平坦パネル35はコーナパネル131及び31を設置した後に設置することが好適である。シム95,94及び93を設ける場合には、もちろん、コーナパネル31と当該コーナパネル31の隣に設置される平坦パネル35とを設置する前に、上記のシムを横壁2に設置する。
【0095】
ステップ404が完了すると、
図4Aに示されているコーナパネル31とその隣の平坦パネル35との位置決めが達成される。上述したように、コーナパネル31の位置決めはシム195の厚さに依存する。さらに、上記にてステップ303を参照して言及した通り、平坦パネル35における最後の位置決め線17とアライメントする辺と、これと対向するコーナパネル31のエッジとの間には、余剰距離xが残る。
【0096】
このようにして、ステップ404の後、方法400はステップ405に進み、同ステップ405は、xを表す少なくとも1つの第2の実測寸法を取得することを含む。一変形形態では、上記の第2の実測寸法の取得は、平坦パネル35における最後の位置決め線17とアライメントする辺と、これと対向するコーナパネル31のエッジと、の間におけるエッジ99に直交する方向の最短距離を単に測定することを含むことができる。しかし、他の測定手法も可能である。また、各コルゲート状のシート81ごとに、xを表す第2の実測寸法を複数取得することもできる。特殊な一変形形態では、エッジ99に平行に離隔した複数の箇所、例えば3~5箇所において、エッジ99に直交する方向に、最後の位置決め線17とアライメントする平坦パネル35の辺とこれに対向するコーナパネル31のエッジとの間の距離を測定する。
【0097】
ステップ405の後、方法400は、下記にて説明するステップ406A,406B及び407に進む。
【0098】
ステップ406Aにおいて、エッジ99に直交する方向における初期寸法を有するコルゲート状のメタルシートブランクを準備する。この初期寸法は、第1のタンク壁20においてコーナパネル31と平坦パネル35とを跨ぐコルゲート状のメタルシート81の位置に依存して定めることができる。
【0099】
ステップ406Aの後、方法400は次にステップ406Bに進み、同ステップ406Bは、ステップ404で得られた少なくとも1つの第2の実測寸法とブランクの初期寸法とに基づいて、コルゲート状のメタルシートブランク内の切断長を算出することを含む。
【0100】
ステップ406Bの後、方法400はステップ407に進み、同ステップ407は、コーナパネル13と平坦パネル35とを跨ぐコルゲート状のメタルシート81を得るためにコルゲート状のメタルシートブランクを、ステップ406Bにて算出した長さに切断することを含む。
【0101】
必要に応じて、上記位置決めの後、上記にて既に説明した断熱要素91及び97を、コーナパネル31とその隣の平坦パネル35との間の寸法xの間隙に設置する。
【0102】
その後、二次密閉メンブレン50とブリッジ要素68とを形成するストリップと、上記のように一次コーナブロック61及び一次平坦ブロック65がコーナパネル31及びその隣の平坦パネル35と一体に設けられていない場合には一次コーナブロック61及び一次平坦ブロック65とを、設置する。
【0103】
断熱要素91及び/若しくは97の寸法並びに/又はブリッジ要素68の寸法は、設置時にブラインドカットすることによって調整することができる。しかし、オプションのステップ408Aにおいて、ステップ404で得られた少なくとも1つの第2の実測寸法とステップ401で得られた幾何学的定義とに基づき上記要素における切断長を算出することも可能である。その後、ステップ408Bにおいて、上記要素を上記で算出した切断長に切断する。
【0104】
オプションのステップ408A及びステップ408Bの後、方法400はステップ409に進み、同ステップ409は、コーナパネル31とその隣の平坦パネル35とを跨ぐようにコルゲート状のメタルシート81を設置することを含む。具体的には、一次断熱バリア60が存在するので、以下のようにコルゲート状のメタルシート81はブリッジ要素68に被せられる:
-コルゲート状のメタルシート81の1つのエッジが鉄製メタルアングル79の面71の一部と重なるように、かつ、
-コルゲート状のメタルシート81の他の1つのエッジが、隣の平坦パネル35によって支持される一次平坦ブロック65のカバープレート67によって支持される金属板65Pの一部(
図4Aには示されていないが、
図2に示されている)と重なるように、被せられる。
【0105】
上述のようにコルゲート状のメタルシート81を得るためにコルゲート状のメタルシートブランクを切断することは、特にエッジ99に最も近いメタルシート81において、荷重支持構造1の設計上の理想的な多面体形状からのいかなる寸法偏差も補償する際の助けになる。これにより、予め決まった寸法のブランクのセットからコルゲート状のメタルシートブランクを選択することが可能になる。
【0106】
しかし上記に代えて、第1のタンク壁20においてコーナパネル31と平坦パネル35とを跨ぐコルゲート状のメタルシート81の寸法を、ステップ404にて得られた少なくとも1つの第2の実測寸法に基づく任意の他の適切な態様の寸法とすることもできる。
【0107】
また、ステップ401,406B及び408Aは、コンピュータ上で実行される適切なコンピュータプログラムを用いて実施することもできる。かかる場合には、ステップ401は、事前にメモリに記憶されたタンクの幾何学的定義を読み込むことを含むことができる。コンピュータプログラムのユーザは、ステップ404で得られた少なくとも1つの第2の寸法実測の結果をコンピュータプログラムに入力し、その後、当該コンピュータプログラムによってステップ406B及び408Aの計算を実行することができる。
【0108】
さらに、ステップ402のシム195の寸法決定は、コンピュータ上で実行される適切なコンピュータプログラムを使用して実施することもできる。
【0109】
また、特定のコルゲート状のメタルシート81についての少なくとも1つの第2の実測寸法(ステップ404)について説明したが、上記のステップ404~409はタンク壁20の複数のコルゲート状のメタルシート81について実施することができ、また、タンクのタンク壁のうち幾つか又は全部の同様のコルゲート状のメタルシートについて実施することができる。
【0110】
一変形形態では、タンク壁20は単一メンブレン壁、すなわち、一次密閉メンブレン80を備えるが二次密閉メンブレン50を備えない壁とすることができる。他の一変形形態では、二次密閉メンブレン50は他の手法を用いて、例えば、一次密閉メンブレン80と同様に複数のコルゲート状のシートを互いに溶接接合したものを用いて作製することができる。かかる場合、タンク壁20の組立ては、上記にて二次断熱バリア30と一次密閉メンブレン80とに関して説明した組立てとちょうど同じように行われる。
【0111】
他の一変形形態では、タンク壁20は、上記の二次断熱バリア30及び一次密閉メンブレン80のみを備えた単一バリア単一メンブレン壁とすることができる。かかる場合、タンク壁20は、断熱ブロックを挟むことなくシート81がコーナパネル31とその隣の平坦パネル35とを跨ぐ点を除いて、上記の組立てとちょうど同じに行われる。
【0112】
複数の具体的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は決してこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲に属する場合には本願に記載の手段の技術的均等態様及びその組み合わせの全てを含むことが明らかである。
【0113】
「含む(comprise)」又は「備える(include)」との動詞を使用した場合、その活用形を用いた場合も含めて、請求項に記載されている要素又はステップの他にさらに、それ以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。
【0114】
特許請求の範囲において、括弧書きの符号は、特許請求の範囲の限定に該当すると理解されるべきものではない。
【外国語明細書】