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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081348
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】水素チューブ
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20230602BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20230602BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20230602BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230602BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B32B1/08 B
F16L11/12 Z
F02M21/02 G
B32B27/30 102
B32B27/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189859
(22)【出願日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】20 2021 106 514.1
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518073158
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ(フルダブリュック) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッケル アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ファーレンホルツ フランク
(72)【発明者】
【氏名】シュラモウスキ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】アルノルト ジークフリート
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB06
3H111CB07
3H111DA26
3H111DB12
3H111DB20
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK17
4F100AK17A
4F100AK17E
4F100AK18
4F100AK18A
4F100AK18E
4F100AK21
4F100AK21B
4F100AK21D
4F100AK46
4F100AK46C
4F100AK46E
4F100AK69
4F100AK69B
4F100AK69D
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100DA02
4F100DA02A
4F100DA02B
4F100DA02C
4F100DA02D
4F100DA02E
4F100GB32
4F100JK17
(57)【要約】
【課題】本発明は水素を案内するためのチューブの使用に関する。
【解決手段】
特に自動車において、水素を案内するためのチューブ1の使用であって、チューブ1は管路2を取り囲み、かつ複数の層を含み、チューブ1は、少なくとも2つのバリア層を有し、少なくとも2つのバリア層のうち内側バリア層4は、第1のプラスチックを含み、少なくとも2つのバリア層4,6のうち外側バリア層6は、第2のプラスチックを含み、第1のプラスチックはビニルアルコールプラスチックであり、バリア層4,6は、分離層5によって互いに分離されており、チューブ1は支持層3を有し、支持層3は内側バリア層4によって取り囲まれており、第2のプラスチックはビニルアルコールプラスチックである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車において、水素を案内するためのチューブ(1)の使用であって、
前記チューブ(1)は管路(2)を取り囲み、かつ複数の層を含み、
前記チューブ(1)は、少なくとも2つのバリア層(4,6)を有し、
前記少なくとも2つのバリア層(4,6)のうち内側バリア層(4)は、第1のプラスチックを含み、
前記少なくとも2つのバリア層(4,6)のうち外側バリア層(6)は、第2のプラスチックを含み、
前記第1のプラスチックはビニルアルコールプラスチックであり、
前記バリア層(4,6)は、分離層(5)によって互いに分離されており、
前記チューブ(1)は支持層(3)を有し、
前記支持層(3)は前記内側バリア層(4)によって取り囲まれており、
前記第2のプラスチックはビニルアルコールプラスチックである、ことを特徴とするチューブの使用。
【請求項2】
前記分離層(5)は、プラスチック、好ましくは、ポリアミド、特にPA6を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記支持層(3)は、前記内側バリア層(4)の材料よりも柔らかい材料を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記第1のプラスチック及び前記第2のプラスチックの少なくとも一方は、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(BVOH)又はポリビニルアルコール(PVOH)である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記内側バリア層(4)の層厚は、前記外側バリア層(6)の層厚以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記内側バリア層(4)の層厚及び前記外側バリア層(6)の層厚の合計は、少なくとも0.1mm、0.2mm又は0.3mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記チューブ(1)は、第3のバリア層及び第2の分離層を有し、
前記第3のバリア層は、前記外側バリア層(6)を取り囲み、
前記第2の分離層は、前記外側バリア層(6)と前記第3のバリア層との間に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項8】
境界層(7,8,9)は、前記外側バリア層(6)又は第3のバリア層を取り囲み、好ましくはプラスチック、さらに好ましくはポリアミド、特にPA6、PA11、PA12及び/又はPA612を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記チューブ(1)は、少なくとも1つの結合剤プライ(8)を有し、
境界層(7,8,9)は、好ましくは、前記結合剤プライ(8)及び境界プライ(9)を含み、
前記境界プライ(9)は、好ましくは、プラスチック、特にポリアミド、例えば、PA11、PA12及び/又はPA612を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記支持層(3)は、保護層(10)を取り囲み、
前記保護層(10)は、好ましくは前記チューブ(1)の最も内側の層を形成し、
前記保護層(10)は、好ましくは、フルオロポリマー、特にETFEを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項11】
最も内側の層(3,10)、特に前記支持層(3)又は保護層(10)は、導電性を高めるための添加剤、例えば導電性カーボンブラックを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載した水素を案内するためのチューブの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2004/0069361A1号明細書は、水素を案内するためのチューブを開示している。このチーブは、ポリウレタンからなる2層の結合層により囲まれた、エチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH、以下、EVALともいう)からなる外側バリア層を含む。最も内側の層は、フッ素樹脂、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンフルオロターポリマー(EFEP)又はエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)を含み、同時に優れたバリア効果にもたらす内層バリア層を形成する。このチューブの最も外側の層は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成され、外側バリア層の外側に接し、境界面を構成する。
【0003】
さらに、米国特許出願公開第2010/0035116A1号明細書は、水素を案内するためのチューブを開示している。このチューブは、ポリアミド(PA)からなる界面層により囲まれたEVOHからなるバリア層を有する。最も外側の層は、ポリフタルアミド(PPA)を含み、界面層の上に直接配設されている。EVOHからなるバリア層は、直接隣接するETFEを含む層を囲んでおり、その一部はPAからなる最も内側の層と隣接している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの既知の水素チューブの欠点は、透過性(浸透性)が依然として高すぎることであり、そのため、特に車両が長時間駐車されている場合に顕著であるように、多量の水素が常にチューブを通って拡散して失われる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、特に自動車において、水素を案内するためのチューブの使用であって、前記チューブは管路を取り囲み、かつ複数の層を含み、前記チューブは、少なくとも2つのバリア層を有し、前記少なくとも2つのバリア層のうち内側バリア層は、第1のプラスチックを含み、前記少なくとも2つのバリア層のうち外側バリア層は、第2のプラスチックを含み、前記第1のプラスチックはビニルアルコールプラスチックであり、前記バリア層は、分離層によって互いに分離されており、前記チューブは支持層を有し、前記支持層は内側バリア層によって取り囲まれており、前記第2のプラスチックはビニルアルコールプラスチックである、ことを特徴とするチューブの使用によって実現する。
【0006】
本発明は、ビニルアルコールプラスチックの使用中、水素に対するバリア層の透過性がわずかであるという知見に基づいている。バリア層の層厚を大きくすることによって、基本的に透過性を決定的に低下させる。しかし、ビニルアルコールプラスチックを使用したバリア層は非常に脆く、チューブを何度も曲げる必要がある場合、この点が重要となる。バリア層の層厚が厚すぎると、このようなバリア層では、曲げプロセス中に非常に頻繁に微小亀裂(マイクロクラック)が生じることが分かった。これらのマイクロクラックは非常に高い透過性をもたらすため、ビニルアルコール系のバリア層の層厚を厚くすることにより、バリア特性を向上させる手段が非常に限られたものとなる。
【0007】
特に、本発明は、ビニルアルコールプラスチックで第2のバリア層を形成し、2つのバリア層の間に分離層を介在させることにより、ビニルアルコールプラスチックを用いたバリア層の全体の層厚を著しく大きくすることができ、亀裂(クラック)が発生する可能性を常に低く維持することができるという知見に基づいている。2つ、3つ又はそれ以上のビニルアルコール製のバリア層に、これに対応した数の分離層を介在させることによって、単一のビニルアルコール製のバリア層と比べて、ビニルアルコール製のバリア層を加えた層厚を含む全体の層厚を増加させることができ、他方、亀裂(クラック)の発生確率、従って不良品率も一定の低いレベルに留めることができる。これにより、前述の目的を解決することができる。
【0008】
1つの「層」という用語は、好ましくは、一の層と他の層が異なる材料組成を有するため、一の層が他の層から区別され得ることを意味する。1つの層は、必ずしも単一の、一体化した又は均質に分布した材料組成からなる必要はない。層は、部分的な層又はプライを有してもよく、それらは互いに区別可能である。単一のプライは、有利には、単一の、均質に分布した材料組成物からなる。
【0009】
「ビニルアルコールプラスチック」との用語は、好ましくは、ビニルアルコールモノマーを含むポリマーを指し、特に、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレンビニルアルコールコポリマー:EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ブテンジオールビニルアルコール共重合体(ブテンジオールビニルアルコールコポリマー:BVOH)等を指す。また、ビニルアルコールプラスチックだけを内側バリア層及び/又は外側バリア層のプラスチックとしてもよい。一実施例では、内側バリア層及び/又は外側バリア層は、ビニルアルコールプラスチックと、第2の材料又は付加的な材料との混合物、特にプラスチック又は付加的なプラスチックとの混合物を含む。
【0010】
チューブがプラスチックチューブであることが特に好ましく、少なくとも50%w/w、70%w/w、90%w/w、95%w/w又は97%w/wのプラスチックを含むことが好ましい。保護層及び/又は支持層及び/又は内側バリア層及び/又は分離層及び/又は外側バリア層及び/又は境界層は、少なくとも50%w/w、70%w/w、90%w/w又は95%w/wのプラスチック、特に熱可塑性プラスチックを含むことが好ましい。チューブは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの屈曲部を有することが好ましい。チューブは、少なくとも2mm、3mm又は4mmの外径を有することが好ましい。
【0011】
分離層がプラスチック、好ましくはポリアミド、特にPA6を含むことが特に好ましい。分離層がポリアミドを含む場合、分離層は良好な粘り強さを提供し、その結果、より脆いバリア層が、非常に頑丈でやや柔らかい材料によって互いに分離される。分離層が、内側バリア層及び/又は外側バリア層よりも柔らかい材料を有することが特に好ましい。「柔らかい」という用語は、好ましくは、室温で測定されたショア硬さDに関し、特に規格DIN EN ISO868:2003-10に関する。分離層は、より薄い2つのバリア層を伴うため、内側バリア層、分離層及び外側バリア層からなる層複合体は、全体として脆さが減少する。分離層がPA6を含む場合、分離層は非常に堅牢(頑丈)であるだけでなく、内側バリア層及び外側バリア層に対する接着性が良好なものとなる。その結果、内側バリア層、分離層及び外側バリア層からなる層複合体は、ほとんど剥離しない。分離層は、有利には、内側バリア層及び/又は外側バリア層に接している。好ましくは、分離層の層厚は、少なくとも0.05mm、0.06mm又は0.08mmである。分離層の層厚は、最大で、0.3mm、0.4mm又は0.5mmであることが好ましい。分離層の層厚を厚くすることの利点は、バリア層が互いにさらに分離され易くなり、これにより、より強い曲げが可能になることである。他方、層を可能な限り薄くすることは、チューブの設計を可能な限り軽量又は小さくする場合に有利であり、材料の使用を節約することができる。
【0012】
支持層は、内側バリア層の材料よりも柔らかい材料を有することが非常に好ましい。支持層が内側バリア層に接すると有利である。支持層は、有利には、プラスチック、好ましくはポリアミド、特にPA6を含む。支持層が内側バリア層又はポリアミドより柔らかい材料を含む場合、支持層は内側バリア層の内側を安定させ、これにより、特に内側バリア層の内側における亀裂(クラック)の発生を減少させる。支持層がPA6を含む場合、ポリアミド材料の利点がもたらされるとともに、内側バリア層の内側に対する接着性が向上し、曲げ時の剥離の可能性が減少するという利点がもたらされる。支持層は最も内側の層であってもよく、導電性を高める添加剤を含んでいてもよい。例えば、添加剤は導電性カーボンブラックである。支持層の層厚は、少なくとも0.05mm、0.06mm又は0.07mmである。支持層の層厚は、最大で、0.5mm、0.4mm又は0.3mmである。支持層の層厚が分離層の層厚よりも小さいことが特に好ましい。これは、分離層と異なり、支持層がバリア層を互いに分離する必要がないためであり、したがって、基本的に、より薄い層厚でも十分である。支持層の層厚は、分離層の層厚よりも少なくとも5%、10%、20%、30%又は50%小さいことが好ましい。
【0013】
特に好ましい実施例によれば、第1のプラスチック及び/又は第2のプラスチックは、EVOH、BVOH又はPVOHであり、第1のプラスチック及び/又は第2のプラスチックは、EVOH又はPVOHであることが好ましい。これらの3種類のプラスチックは、それぞれ良好なバリア特性を有し、同時に加工が容易であり、全体的に製造コストが相対的に低いため、特に好ましい。BVOHは、EVOH及びPVOHより大幅に柔らかくすることができ、同時に生産固有の問題についてはEVOH及びPVOHよりも不利になるため、本発明はEVOH及びPVOHを中心に検討する。ビニルアルコールプラスチックであるEVOHが特に好ましい。EVOHのバリア特性は、特にそのエチレン含有量により制御される。エチレン含有量が少ないほどバリア効果は高く、EVOHが脆くなる。特にEVOH中のエチレンの含有量が少ないチューブは、本発明の利益を受ける。内側バリア層及び/又は外側バリア層のEVOHのエチレン含有量は、好ましくは、最大で、45%、40%、36%又は33%である。内側バリア層及び外側バリア層が同じ材料組成を有することが好ましい。内側バリア層及び外側バリア層が異なる材料組成を有するものであってもよい。
【0014】
特に好ましい実施例によれば、内側バリア層の層厚は、外側バリア層の層厚より小さいかこれと等しく、好ましくは、外側バリア層の層厚より小さい。2つのバリア層を合わせた層厚が一定であれば、亀裂(クラック)の発生確率を低減させることができる。強く曲げる際、外側バリア層よりも強い負荷が内側バリア層にかかるため、外側バリア層の層厚を内側バリア層の層厚よりも幾分大きくすることができるため、上記層厚の関係となる。内側バリア層の層厚は、外側バリア層の層厚よりも少なくとも5%、10%又は15%小さいことが好ましい。内側バリア層の層厚は、外側バリア層の層厚よりも、最大で、70%、60%又は50%小さいことが好ましい。内側バリア層の層厚は、好ましくは、少なくとも0.05mm、0.06mm又は0.08mmである。内側バリア層の層厚は、有利には、最大で、0.5mm、0.4mm又は0.3mmである。外側バリア層の層厚は、好ましくは、少なくとも0.06mm、0.07mm又は0.09mmである。外側バリア層の層厚は、好ましくは、最大で、0.6mm、0.5mm又は0.4mmである。
【0015】
内側バリア層と外側バリア層とを合わせた層厚は、少なくとも0.11mm、0.12mm又は0.13mmであることが好ましい。内側バリア層と外側バリア層とを合わせた層厚は、最大で、1.0mm、0.8mm、0.6mm又は0.4mmであることが好ましい。内側バリア層と外側バリア層とを合わせた層厚は、好ましくは、チューブの壁部全体の厚さの少なくとも7%、14%又は20%である。内側バリア層と外側バリア層とを合わせた層厚は、好ましくは、最大で、チューブの壁部全体の厚さの60%、50%又は40%である。チューブの壁部全体の厚さは、少なくとも0.5mm、0.8mm又は1.0mmである。チューブの壁部全体の厚さは、有利には、最大で、4.0mm、3.5mm又は3.0mmである。
【0016】
チューブが第3のバリア層及び第2の分離層を有してもよく、第3のバリア層は、外側のバリア層を取り囲み、第2の分離層は、外側バリア層と第3のバリア層との間に配置される。第3のバリア層は、プラスチックからなることが好ましく、プラスチックは、好ましくは、ビニルアルコールプラスチックである。第3のバリア層のビニルアルコールプラスチックは、EVOH、PVOH又はBVOHであり、EVOH又はPVOHであることが好ましい。第3のバリア層のプラスチックは、特に好ましくはEVOHである。第3のバリア層のEVOHは、好ましくは、少なくとも45%、40%、36%又は33%のエチレン含有量を有する。第3のバリア層は、好ましくは、内側バリア層及び/又は外側バリア層と同じ材料組成を有する。第3のバリア層の利点は、3つのバリア層の合計の層厚が一定であれば、亀裂(クラック)が生じる可能性を第2の分離層がさらに減少させるという点にある。
【0017】
第2の分離層は、プラスチック、特にポリアミド、好ましくはPA6を含むことが好ましい。第2の分離層の材料は、外側バリア層及び/又は第3のバリア層の材料よりも柔らかいことが有利である。この結果、第3のバリア層の内側だけでなく、外側バリア層の外側を安定化させることができる。分離層は、ポリアミドの場合、良好な機械的特性を有し、PA6の場合、良好な機械的特性が良好な接着性にサポートされる。第2の分離層は、好ましくは、外側バリア層及び/又は第3のバリア層に接する。
【0018】
第2の分離層の層厚は、有利には、境界層の層厚よりも小さい。第2の分離層の層厚は、支持層の層厚よりも大きいことが好ましい。分離層の層厚は、少なくとも0.05mm、0.06mm又は0.07mmである。第2の分離層の層厚は、有利には、最大で、0.5mm、0.4mm又は0.3mmである。
【0019】
第3のバリア層の層厚は、第1のバリア層及び/又は第2のバリア層の層厚より大きいことが好ましい。これは、チューブを曲げる際に、第3のバリア層に加わる負荷が内側バリア層及び外側バリア層よりも低いためである。第3のバリア層の層厚は、少なくとも0.07mm、0.08mm又は0.1mmである。第3のバリア層の層厚は、有利には、最大で、0.7mm、0.6mm又は0.5mmである。
【0020】
好ましい実施例によれば、境界層は、外側バリア層又は第3のバリア層を取り囲む。境界層は、好ましくは、外側バリア層又は第3のバリア層に接する。境界層は、有利には、プラスチック、好ましくはポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマー、特に好ましくはPA6、PA11、PA12及び/又はPA612を含む。境界層が支持層及び/又は分離層よりも厚いことが好ましい。境界層が厚いと、チューブを外方から保護する点で有利である。これには、化学的な負荷は別として、主に機械的な負荷も含まれ、脆く、保護されていない境界層の場合、前記負荷に対して敏感に反応する。境界層の層厚は、少なくとも0.07mm、0.08mm又は0.09mmである。好ましくは、境界層の層厚は、最大で、0.4mm、0.3mm又は0.2mmである。一実施例では、境界層は、1つだけプライを含み、この1つのプライは、好ましくは、プラスチック、さらに好ましくはポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマー、特にPA6、PA11、PA12及び/又はPA612を含む。プラスチックは添加剤を含んでもよい。添加剤は、境界層の前記1つのプライがビニルアルコールプラスチックに対してより良好に接着するために使用される。境界層の前記1つのプライの材料は、外側バリア層及び/又は第3のバリア層の材料よりも柔らかいことが特に好ましい。これにより、外側バリア層又は第3のバリア層の外側部分が安定する。
【0021】
チューブは、好ましくは、少なくとも1つの結合剤プライを含む。一実施例では、境界層は、接合剤プライ及び境界プライを含み、境界プライは、好ましくは接合剤プライを取り囲む。外側の境界プライが、プラスチック、好ましくはポリアミド及び/又は熱可塑性エラストマー、特にPA6、PA11、PA12及び/又はPA612を含むことが有利である。結合剤プライは、好ましくは、外側バリア層又は第3のバリア層と、境界プライとの間に配置される。結合層は、有利には、外側バリア層又は第3のバリア層に接する。結合剤プライは、好ましくは、境界プライに接する。この配置により、ビニルアルコールプラスチックに対する接着性が相対的に低い他のプラスチックを利用することが可能になり、剥離の可能性を低減することができる。接着性が相対的に低いプラスチックの例としては、PA11、PA12又はPA612があり、これらは、例えばポリオレフィン、特にポリプロピレン又はポリエチレンを含む接着剤を介して外側バリア層又は第3のバリア層上に配置され得る。
【0022】
支持層が保護層を取り囲んでもよい。保護層は、好ましくはチューブの最も内側の層を形成する。保護層は、好ましくは、プラスチック、特にフルオロポリマー又はポリアミドを含む。例えば、フルオロポリマーは、ETFEとすることができる。保護層の層厚は、少なくとも0.05mm又は0.07mm又は0.09mmである。保護層の層厚は、好ましくは、最大で、0.3mm、0.25mm又は0.2mmである。
【0023】
最も内側の層、特に支持層又は保護層は、有利には、導電性を高めるための添加剤を含む。例えば、添加剤は導電性カーボンブラックである。
【0024】
本発明の3つの例示的な実施例に基づく3つの図について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による第1のチューブの断面図である。
図2】本発明による第2のチューブの断面図である。
図3】本発明による第3のチューブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による第1の実施例に係るチューブ1の断面図である。本実施例におけるチューブ1は、管路2を囲う合計5つの層(3,4,5,6,7)を有する。本実施例におけるチューブ1は、内側から外側に向けて、支持層3、内側バリア層4、分離層5、外側バリア層6及び境界層7を有する。
【0027】
内側バリア層4及び外側バリア層6を含む実施例では、各々の層はビニルアルコールプラスチックを含む。本実施例では、双方のバリア層はEVOHを含み、好ましくは、内側バリア層4及び外側バリア層6の一方は、EVOHを含む。内側バリア層4及び外側バリア層6の少なくとも一方のビニルアルコールプラスチックのエチレン含有量は、好ましくは、最大35モル%、さらに好ましくは最大33モル%である。特定の実施例では、内側バリア層4及び外側バリア層6の少なくとも一方のエチレン含有量は、32モル%である。好ましくは、内側バリア層4及び外側バリア層6の少なくとも一方がビニルアルコールプラスチックを含む。有利には、内側バリア層4及び外側バリア層は同じ材料からなる。本実施例では、例えば、内側バリア層4の層厚は、0.12mmであり、外側バリア層6の層厚は、0.15mmである。
【0028】
分離層5が、ポリアミド、特に好ましくはPA6を含むプラスチックを有することが非常に好ましい。PA6はビニルアルコールプラスチック、特にエチレンビニルアルコールコポリマーに良好に接着するため、分離層5は2つのバリア層4,6と一緒に堅牢な層複合体4,5,6を形成する。さらに、ポリアミド又はPA6は、EVOHからなる2つのバリア層4,6より脆くなく、靱性が高いため、分離層は、この観点からも層複合体4,5,6を安定させる。本発明の基本的な考えは、層複合体4,5,6により明確になる。これは、層複合体4,5,6は、分離層5によって、0.27mm、従って、内側バリア層4の層厚及び外側バリア層6の層厚に対応する層厚を有する連続的なバリア層よりも著しく良好な屈曲を可能にするためである。本実施例では、分離層5の層厚は、0.1mmである。
【0029】
支持層3は、好ましくはプラスチックを含むか、好ましくはプラスチックからなる。特に、支持層3のプラスチックは、ポリアミド、好ましくはPA6を含み得る。一般的な支持層の層厚は、0.08mmである。本実施例では、支持層3がチューブ1の内側、つまり管路2側に接し、結果的に水素にも接する層である。このため、支持層は、例えば、決壊や流出から内側のバリア層4を保護する。特に、支持層3は、相対的に脆い内側バリア層4を内側から支持しており、これにより、内側バリア層4は屈曲時のクラックの発生が減少する。さらに、支持層3は、クイックコネクタにチューブ1を押し込んだときに内側にあるバリア層4を保護し、圧入を実現する。チューブ1の最も内側の層を形成するとき、支持層3が導電性を高める添加剤を有する場合に有利である。例えば、この添加剤は、導電性カーボンブラックであり、最も内側の層としての支持層3を、臨界電荷値を回避するように導電性にする。
【0030】
好ましくは、チューブ1は、図1におけるチューブ1の最も外側の層を形成する境界層7を有する。本実施例では、境界層7は、外側バリア層6に直接隣接している。有利には、境界層7は、プラスチック、ポリアミド又はPA6を含む。境界層7の層厚は、0.3mmである。
【0031】
図2に示す実施例に係るチューブ1は、層3~6に関し、第1の実施例と同様に構成される。一方、第1の実施例と異なり、境界層は、2つのプライを有するデザインとなっている。図2に示す第2の実施例に係る境界層7は、結合剤プライ8及び境界プライ9を有する。本実施例では、境界プライ9は、好ましくは、プラスチック、特に、ポリアミド、特に好ましくはPA11又はPA12を含む。ビニルアルコールプラスチックに対するPA11又はPA12の接着性が低い場合、例えば、ポリオレフィン、特にポリプロピレン又はポリエチレンを含む結合剤プライ8が配設される。しかし、結合剤プライは、接着性が改良されたポリアミド又はポリアミド6を含んでいてもよい。本実施例では、結合剤プライ8の層厚は、0.05mmである。例えば、境界プライ9の層厚は、0.25mmである。
【0032】
図3は、本発明の第3の実施例に係るチューブ1を示している。このチューブ1は、主に、支持層3ではなく、保護層10が支持層3の内側に隣接し、チューブ1の最も内側の層を形成している点において、図2の実施例と相違している。例えば、保護層10は、ポリアミド又はフルオロポリマーを含む。フルオロポリマーは、好ましくは、ETFEを含む。保護層10の層厚は0.15mmである。有利には、保護層10は、保護層10の導電率を高めるための添加剤を含む。特に、添加剤は、導電性カーボンブラックを含み得る。
【符号の説明】
【0033】
1 チューブ
2 管路
3 支持層
4 内側バリア層
5 分離層
6 外側バリア層
7 境界層
8 結合剤プライ
9 境界プライ
10 保護層
図1
図2
図3