(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081360
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】自転車前カゴ装着用底具
(51)【国際特許分類】
B62J 9/27 20200101AFI20230602BHJP
B62J 9/21 20200101ALI20230602BHJP
【FI】
B62J9/27
B62J9/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190581
(22)【出願日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2021194444
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502109371
【氏名又は名称】株式会社あさひ
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】梁 眞榮
(57)【要約】
【課題】 前カゴをワンタッチでカゴ用ステーに取り付けることができ、作業効率を大幅に向上することができる前カゴ装着用の底具及び装着方法。
【解決手段】 自転車の前カゴの底部に取り付けられた底具を用いて、被係止部を有するカゴ用ステーに装着する前カゴ装着用底具及び装着方法を提供する。底具は前記被係止部を係止位置で係止する各々対向する方向に突出する2つの係止部と、被係止部を仮置きするための前記2つの係止部間に配され、係止方向と交差する方向を仮置き方向とする仮置き部とを有するものである。装着方法は前カゴを捻って仮置き部に被係止部を載置し、捻り返して係止部で被係止部を係止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の前カゴの底部に取り付けられ、幅方向に向かう棒状の被係止部を有するカゴ用ステーに装着する前カゴ装着用底具であって、
前記棒状の被係止部を係止位置で係止するために各々対向する方向に突出する2つの係止部と、被係止部を仮置きするための前記2つの係止部間に配される仮置き部とからなり、
前記仮置き部は、前記2つの係止部による係止位置における前記カゴ用ステーの係止方向と交差する方向を仮置き方向とすることを特徴とする自転車前カゴ装着用底具。
【請求項2】
2つの係止部は、底板本体から下方に膨出して被係止部を挿入可能にする係止溝を形成しつつ下面が後方から前方にかけて突出する係止爪を有する第1係止部と、前記底板本体から下方に膨出して被係止部を挿入可能にする係止溝を形成しつつ前方から後方にかけて突出する係止爪を有する第2係止部とを有し、
前記底板本体に2つの係止部間に係止位置で係止する係止方向から斜め方向を向く仮置き面が形成されることを特徴とする請求項1に記載の自転車前カゴ装着用底具。
【請求項3】
2つの係止部は係止爪の先端縁に沿って上方に向けた突起が形成され、
前記突起は仮置き面側に切り欠き部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の自転車前カゴ装着用底具。
【請求項4】
第1の係止部の前方と第2の係止部の後方を開放した開放部を有し、仮置き面の両側に傾斜壁が形成されることを特徴とする請求項3に記載の自転車前カゴ装着用底具。
【請求項5】
被係止部を有するカゴ用ステーは、両端から垂下して下端で自転車前輪の車軸にボルト止めする2つの脚部を有し、
2つの係止部は、後方から前方にかけて突出する係止爪を有する第1係止部が自転車カゴの左側、前方から後方にかけて突出する係止爪を有する第2係止部が自転車カゴの右側となるよう配されることを特徴とする4に記載の自転車前カゴ装着用底具。
【請求項6】
底板本体には、仮置き面と2つの係止部の係止位置との間に、前記底板本体から突没可能とする係止バネ部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の自転車前カゴ装着用底具。
【請求項7】
第1係止部と第2係止部の縁部分を切り欠いた係止開放部を有し、仮置き面の両側に傾斜壁が形成されることを特徴とする請求項6に記載の自転車前カゴ装着用底具。
【請求項8】
被係止部を有するカゴ用ステーは、両端から垂下して下端で自転車前輪の車軸にボルト止めする2つの脚部を有し、
2つの係止部は、後方から前方にかけて突出する係止爪を有する第1係止部が自転車カゴの左側、前方から後方にかけて突出する係止爪を有する第2係止部が自転車カゴの右側となるよう配されることを特徴とする請求項7に記載の自転車前カゴ装着用底具。
【請求項9】
自転車の前カゴの底部に取り付けられた前カゴ装着用底具を用いて、幅方向に向かう棒状の被係止部を有するカゴ用ステーに取り付ける前カゴの装着方法であって、
前記前カゴ装着用底具は、前記棒状の被係止部を係止位置で係止するために各々対向する方向に突出する2つの係止部と、被係止部を仮置きするための前記2つの係止部間に配される仮置き部を有し、
前記仮置き部は、前記2つの係止部による係止位置における前記カゴステーの係止方向と交差する方向を仮置き方向とするものであって、
自転車の前カゴを水平方向に捻って前記仮置き部の仮置き方向と前記棒状の被係止部の長手方向を沿わせて載置する仮置きステップと、
前記仮置きステップの状態から自転車の前カゴを捻り戻して、前記2つの係止部に前記棒状の被係止部を係止させる係止ステップとからなることを特徴とする前カゴの装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用の前カゴを自転車のカゴ用ステーに装着するための底具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自転車用前カゴの装着金具は、特許文献1に記載のとおり、カゴ用ステーに前カゴ支持プレートを配して前カゴを下方から支持するものが多かった。これらの自転車用前カゴの装着は、着脱を容易にしたり、別用途のバスケットやケースに転用できるものが多く、装着の容易性を追求したものは乏しかった。特に、前カゴの底部材はプレートにボルト止めすることが一般的であり、装着には所定の作業が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
すなわち、近年の自転車製造は主に海外でなされており、コンテナで大量に輸入されるところ、自転車を一定スペースに可能な限り収納するため、自転車と前カゴとを外した状態で輸入される。そのため、輸入後に大量の自転車に一つ一つ前カゴの底部材にボルト止めを行って、装着しており、極めて作業効率が悪かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、前カゴをワンタッチでカゴ用ステーに取り付けることができ、作業効率を大幅に向上することができる前カゴ装着用の底具及び装着方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自転車前カゴ装着用底具は、自転車の前カゴの底部に取り付けられ、幅方向に向かう棒状の被係止部を有するカゴ用ステーに装着する前カゴ装着用底具であって、前記棒状の被係止部を係止位置で係止するために各々対向する方向に突出する2つの係止部と、被係止部を仮置きするための前記2つの係止部間に配される仮置き部とからなり、前記仮置き部は、前記2つの係止部による係止位置における前記カゴ用ステーの係止方向と交差する方向を仮置き方向とすることを特徴とする。
【0007】
また、2つの係止部は、底板本体から下方に膨出して被係止部を挿入可能にする係止溝を形成しつつ下面が後方から前方にかけて突出する係止爪を有する第1係止部と、前記底板本体から下方に膨出して被係止部を挿入可能にする係止溝を形成しつつ前方から後方にかけて突出する係止爪を有する第2係止部とを有し、前記底板本体に2つの係止部間に係止位置で係止する係止方向から斜め方向を向く仮置き面が形成されることが好ましい。
【0008】
また、2つの係止部は係止爪の先端縁に沿って上方に向けた突起が形成され、前記突起は仮置き面側に切り欠き部が形成されることが好ましい。
【0009】
また、第1の係止部の前方と第2の係止部の後方を開放した開放部を有し、仮置き面の両側に傾斜壁が形成されることが好ましい。
【0010】
また、被係止部を有するカゴ用ステーは、両端から垂下して下端で自転車前輪の車軸にボルト止めする2つの脚部を有し、2つの係止部は、後方から前方にかけて突出する係止爪を有する第1係止部が自転車カゴの左側、前方から後方にかけて突出する係止爪を有する第2係止部が自転車カゴの右側となるよう配されることが好ましい。
【0011】
また、底板本体には、仮置き面と2つの係止部の係止位置との間に、前記底板本体から突没可能とする係止バネ部が形成されることが好ましい。
【0012】
また、第1係止部と第2係止部の縁部分を切り欠いた係止開放部を有し、仮置き面の両側に傾斜壁が形成されることが好ましい。
【0013】
被係止部を有するカゴ用ステーは、両端から垂下して下端で自転車前輪の車軸にボルト止めする2つの脚部を有し、2つの係止部は、後方から前方にかけて突出する係止爪を有する第1係止部が自転車カゴの左側、前方から後方にかけて突出する係止爪を有する第2係止部が自転車カゴの右側となるよう配されることが好ましい。
【0014】
また、自転車の前カゴの底部に取り付けられた前カゴ装着用底具を用いて、幅方向に向かう棒状の被係止部を有するカゴ用ステーに取り付ける前カゴの装着方法であって、前記前カゴ装着用底具は、前記棒状の被係止部を係止位置で係止するために各々対向する方向に突出する2つの係止部と、被係止部を仮置きするための前記2つの係止部間に配される仮置き部を有し、前記仮置き部は、前記2つの係止部による係止位置における前記カゴステーの係止方向と交差する方向を仮置き方向とするものであって、自転車の前カゴを水平方向に捻って前記仮置き部の仮置き方向と前記棒状の被係止部の長手方向を沿わせて載置する仮置きステップと、前記仮置きステップの状態から自転車の前カゴを捻り戻して、前記2つの係止部に前記棒状の被係止部を係止させる係止ステップとからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明により、従来ではネジ等により自転車の前カゴを固定していたが、カゴ用ステーを仮置き部に置き、カゴを捻ることでカゴをステーに装着することができ、ワンタッチでの装着が可能になる。また、大量に自転車や前カゴを輸入、搬送する場合にスペース上の問題から前カゴに底具を取り付けた状態のものと自転車とを別個に輸入、搬送することが多いが、本件底具を用いることで大量の装着を迅速に行うことが可能になる。
【0016】
請求項2に記載の発明により、水平方向を同じくして前後に対向する係止爪を有する2つの係止部からなるものであり、コンパクトな底具であり、輸入、搬送時に邪魔にならず省スペース化を図ることが可能になる。
【0017】
請求項3に記載の発明により、係止爪の先端のみに突起が形成されるため、いったん係止位置に挿入された被係止部が外れ難くなるだけでなく、仮置き部から捻り入れられる被係止部は突起の斜め方向から挿入されることとなり、挿入時の突起による引っ掛かりを抑えることが可能になる。
【0018】
請求項4に記載の発明により、第1係止部の前方と第2係止部の後方に開放部が形成され、底板本体すら形成されていないことで、仮置き面に被係止部を載置する場合に視認が容易になる。さらに仮置き面の両側に傾斜壁が形成されることにより仮置き面に被係止部を載置するときにガイドの役割を果たし、載置が容易となり、ひいては作業効率を大幅に上げることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明により、自転車の前カゴ用ステーを前輪の車軸に嵌めてボルト等で固定する場合にボルトを右回りで締め付けるため、カゴ用ステーは左側では後方へ、右側では前方へ力がかかった状態となる。そこで右側の係止爪を前方から後方に向かうようにし、左側の係止爪を後方から前方に向かうようにすることで、被係止部が自転車の使用時に不意に外れ難い配置としている。
【0020】
請求項6に記載の発明により、仮置き面と2つの係止位置との間にバネ部が形成されるため、いったん係止位置に挿入された被係止部が外れ難くなるだけでなく、仮置き面の仮置き状態をバネ部が阻害しないようにして仮置き状態から係止状態に向かうときにバネ部が作動して仮置きステップと係止ステップとを明確にして、より明確な係止作業を実現することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明により、第1係止部の前方と第2係止部の縁部分に係止開放部が形成されることで、仮置き面に被係止部を載置する場合に視認が容易になる。さらに仮置き面の両側に傾斜壁が形成されることにより仮置き面に被係止部を載置するときにガイドの役割を果たし、載置が容易となり、ひいては作業効率を大幅に上げることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明により、自転車の前カゴ用ステーを前輪の車軸に嵌めてボルト等で固定する場合にボルトを右回りで締め付けるため、カゴ用ステーは左側では後方へ、右側では前方へ力がかかった状態となる。そこで右側の係止爪を前方から後方に向かうようにし、左側の係止爪を後方から前方に向かうようにすることで、被係止部が自転車の使用時に不意に外れ難い配置としている。
【0023】
請求項9に記載の発明により、前カゴに取り付けられた底部の仮置き方向に被係止部を添わせるように前カゴを捻った状態で置き、更に捻り返すことで簡易な方法で前カゴを自転車用ステーに装着することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の底具について正面側を上方に向けた状態の分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態の底具について正面側を上方に向け、被係止部を係止した係止状態の一例を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態のカバーを取り外した底具の正面図である。
【
図4】第1実施形態のカバーを取り外した底具の側面図であって、(a)が右側面図、(b)が左側面図である。
【
図5】第1実施形態のカバーを取り外した底具であって、(a)が平面図、(b)が底面図である。
【
図6】第1実施形態の底具を用い、被係止部を仮置き部に載置した状態を示す下方からの斜視図である。
【
図7】
図6の状態からカゴを捻り返して被係止部を係止部で係止した係止状態の一例を示す斜視図である。
【
図8】第1実施形態の底具を備えた自転車の一部右側面図である。
【
図9】第1実施形態の底具を備えた自転車の一部左側面図である。
【
図10】第2実施形態の底具について正面側を上方に向けた状態の斜視図である。
【
図11】第2実施形態の底具であって、(a)が正面図、(b)が底面図、(c)が右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面に沿って説明する。本説明において、前後は自転車の前後方向を示すものであって
図3、
図8における矢印線A方向を前方向、矢印線B方向を後方向として説明する。また、幅方向とは左右方向であって自転車の左右を示すものであって、
図3における矢印線C方向として説明する。なお、本実施形態の底具は、
図3で図示する正面を前カゴから下方に向けて取り付けるものであるが、説明のため
図1乃至
図5、
図10では正面(実施状態においては下側面)を上方に向けて図示している。
【0026】
図8、
図9に示すように、本実施形態の底具1は、自転車のハンドル2側となる前カゴ3を装着するためのものであり、前カゴ3を下方から支持する。前カゴ3は、本実施形態の底具1により前カゴ用ステー5に取り付けられる。なお、前カゴ3は、本実施形態の底具1とハンドル2から延出されたカゴブラケット6に取付具50で取り付けることにより、前カゴが完全に固定される。
【0027】
自転車1の前輪4の車軸に取り付ける前カゴ用ステー5は、車軸にボルト止めされ上方に向けて起立する脚部5a、5aと、両脚部の上部分間を前輪4の上方で幅方向に向けて掛け渡す断面円形の棒体の被係止部5bとからなり、全体としてコの字状形状を有するものである。但し、本発明の実施にあたり、自転車の前カゴの下方における幅方向の棒体であれば被係止部として利用することも可能である。
【0028】
図1に示すように、第1実施形態の底具1は、カバー10と底板本体20とからなる。カバー10は、底板本体20の外縁と共通した外縁を有する蓋状物であり、前側縁と後側縁から下方に垂下する壁部11、11が形成されている。自転車の前カゴ3は、適宜間隔の空いた状態で複数の鋼線からなり、前カゴ装着部分に金属板が配されるものが一般的であり、カバー10と底板本体20とを合わせた底具1を前カゴ3の金属板に取り付けることで、底具1を前カゴ3に取り付けることができる(
図6、7参照)。なお、実際には、製造時点で底具1を前カゴ3に取り付けた状態で輸入、搬送される。具体的には、底板本体20に配置されたネジ部29、29と、カバー10に形成されたネジ穴12、12とにネジを通し、前カゴ3の金属板3aのネジ穴に通すことで、取付けが可能になる。このように底板本体20のネジ部29、29とカバー10に形成されたネジ穴12、12と図示しないネジが底具1のカゴ取付手段となる。
【0029】
第1実施形態に係る底具1の底板本体20について説明する。
図1、2に加え、
図3、
図4、
図5に示すように、底板本体20は単一の板状物であり当該板状物から下方(
図3に示す正面側)に膨出する第1係止部21と第2係止部22とを有し、第1係止部21と第2係止部22との間に斜め方向を長手方向とする仮置き部23を有する形態である。第1係止部21が後方から前方に向かう係止爪21aを有し、第2係止部22が前方から後方に向かう係止爪22aを有し、2つの係止爪は水平方向に突出して向かうものの前後方向に異なる向きとなり、対向する方向としている。
【0030】
本発明における第1係止部21と第2係止部22との対向する方向とは、厳密に相向き合っていることを示すものではなく、同程度の水平位置(高さ位置)として一方からの視点(例えば側面視)において向かい合うことを前提としており、後述のように幅方向に係止部がずれている場合を含むものである。
【0031】
第1係止部21と、第2係止部22とは幅方向にずれて配置されている。
図3に示すように、底板本体20の幅方向中央には仮置き部23が、正面視で右上から左下にかけて斜め方向に傾斜して通っており、仮置き部23の面が載置面である仮置き面となる。仮置き部23がある部位を中央部分として、この中央部分から図面上右下側に第1係止部21を有し、中央部分から図面上左上側に第2係止部22を有する。このように第1係止部21と第2係止部22とは幅方向に係止位置をずらして配置している。
【0032】
第1係止部21は、底板本体20から下方に向けて膨出し、最も膨出した下面が後方から前方に向けて突出するように係止爪21aが形成される。係止爪21aと底板本体20との間には側方に向けて底を円形状にする係止溝21bが形成され、係止爪21aの前方側縁となる先端縁には上方に向けた突起21cが形成される。第1係止部21の仮置き部23側は、仮置き部23の斜め方向に沿って切り欠くように傾斜壁23aが形成される。
【0033】
第2係止部22は、第1係止部21と同じく、底板本体20から下方に向けて膨出し、最も膨出した下面が前方から後方に向けて突出するように係止爪22aが形成される。係止爪22aと底板本体20との間には側方に向けて底を円形状にする係止溝22bが形成され、係止爪22aの後方側縁となる先端縁には上方に向けた突起22cが形成される。第2係止部22の仮置き部23側は、仮置き部23の斜め方向に沿って切り欠くように傾斜壁23aが形成される。
【0034】
第1係止部21の係止溝21bと第2係止部22の係止溝22bは、両者とも棒状の被係止部5bと略同径を凹ませた溝体であり、間に仮置き部23が存在するものの幅方向に向けて連通する直線状の1つの係止部分となる。係止溝21bと係止溝22bとの間の斜め方向に横断する仮置き部23は下方が開放されており、いったん仮置き部23にカゴを捻って被係止部5bを配置して、カゴを更に捻り返して被係止部5bを第1と第2の係止溝21b、22bに挿入することができる。
【0035】
被係止部5bを第1の係止溝21b、第2の係止溝22bに係止した状態を係止状態とし、その位置を係止位置としている。本実施形態では係止位置における被係止部5bの長手方向が自転車の幅方向に沿うようにしているが、この方向を係止方向とし、具体的には
図3における矢印線Cの方向である。仮置き部23は2つの係止部21、22の間に位置し、係止方向と交差する方向であって、本実施形態では矢印線Cの幅方向から正面視で斜めに傾けた方向に仮置き面の長手方向が向くようにして、係止部間の中央位置で交差する
ことでコンパクトな構成を実現している。この長手方向の向きを仮置き方向とするものであって、具体的には
図3における矢印線Dの方向である。この仮置き部23にいったん被係止部5bを仮置きでき、前カゴ3を捻る・捻り返すという動作により前カゴを装着することを実現している。なお、仮置き方向、仮置き面の長手方向の向き・方向は、係止方向といずれかの位置で交差しておればよく、係止方向にほぼ直交するような方向であってもよい。
【0036】
第1係止部21の係止爪21aと第2係止部22の係止爪22aとは、互いに対向する方向に突出している。係止爪21aが後方から前方に向けて、係止爪22aが前方から後方に向けて突出することで、被係止部5bを係止爪21aと係止爪22aとで互いに対向する方向となる前後方向から、互いに係止することができ、安定的な係止状態の維持が可能になる。
【0037】
2つの係止爪21a、22aの先端縁には上方に向けた突起21c、22cが形成される。この突起21c、22cは湾曲した形状であり、幅方向に渡って所定の長さを有する係止爪21a、22aに形成されている。この突起21c、22cにより係止溝21b、22bに挿入された被係止部5bが容易に係止状態から解除されないようにしている。その一方で突起21c、22cは、幅方向の仮置き部側において突起を徐々に切り欠いた切り欠き部21d、22dが形成されている(
図5参照)。この切り欠き部21d、22dが形成されていることで、仮置き部23に載置された被係止部5bを捻り返して挿入するときに突起21c、22cが挿入を阻害せず、スムーズな挿入が可能になる。
【0038】
第1係止部21の係止爪21aのさらに前方、及び、第2係止部22の係止爪22aのさらに後方は、いずれも中央の仮置き部23もなく切り欠いた開放部24、24が形成されている。この開放部24、24により底板本体20は平面視で略Z字状の形態となる。また、第1係止部21の後方や第2係止部22の前方は適宜位置にリブ25、25が形成されている。仮置き部23に被係止部5bを載置するに際し、装着者が仮置き部23への載置状態(仮置き状態)を覗き込んで視認することが多いが、この開放部24、24により第1係止部21、第2係止部22に仮置き部23が隠れることなく良好な視認状態とすることができ、より装着を容易にしている。さらに仮置き部23の仮置き面の両側に傾斜壁23a、23aがあることで、被係止部5bを載置する場合のガイドの役割を果たしており、見え難い仮置き部23への載置を容易にしている。
【0039】
次に、本実施形態の底具1を用いた前カゴ3の装着方法について説明する。上述のとおり底具1の底板部材20は予め前カゴ3の底面鋼線を挟み込んでカバー10を取り付けることで、前カゴ3の底位置に配置されている。このとき、底具1は、前カゴ3の幅方向中央位置に取り付けることが好適である。
【0040】
また、前カゴ用ステー5も、上述のとおり、脚部5a、5aの先端部分を自転車前輪4の車軸4aにネジ止め、ボルト止めしている。
図3、
図8、
図9に示すように、ネジやボルトは一般的に右回り(時計回り)に回し込んで固定するため(矢印線Z1,Y1)、ステー5の右側脚部5aは前方に向かう力がかかり(矢印線Z2)、左側脚部5aは後方に向かう力がかかる(矢印線Y2)。そのため、2つの脚部5a、5aの上端を接続して掛け渡す被係止部5bも自転車のハンドル側から見て左側(
図7の図面上右側)が後方に(矢印線Z3)、右側(
図7の図面上左側)が前方に向かう力(矢印線Y3)がかかった状態となる。
【0041】
この前カゴ用ステー5の被係止部5bの幅方向(左右方向)の中央位置で、前カゴ3の底位置に取り付けられた底具1で装着する。まずは、前カゴ3を若干水平方向に捻り、被係止部5bの長手方向と、仮置き部23の傾斜する方向を一致させ、仮置き部23の平面に沿わせて載置する(仮置きステップ)。上述のとおり、第1係止部21、第2係止部22が膨出することで本来であれば見え難い仮置き部23の位置を開放部24、24と傾斜壁23a、23aにより容易な仮置きを実現している。
【0042】
被係止部5bを仮置き部23に沿わした状態で、捻った状態の前カゴ3を元の位置に戻すように捻り返すと、仮置き部23の斜め方向を被係止部5bの軸方向(長手方向)とした状態から第1係止部21の係止溝21b、第2係止部22の係止溝22bの係止位置に挿入され、係止爪21a、22aにより係止される(係止ステップ)。
【0043】
このとき、係止爪21a、22aの先端にある突起21c、22cは係止位置で被係止部5bを係止するように作用するが、挿入時には仮置き部23側から徐々に挿入されていくため、切り欠き部21d、22dの存在から挿入時には突起21c、22cによる抵抗を少なくすることができスムーズな挿入が可能になる。
【0044】
被係止部5bが係止溝21b、22bに挿入された係止位置において、係止爪21a、22aにより係止することで、前カゴ3をカゴ用ステー5に装着することができる。このとき、上述したようにカゴ用ステー5は、自転車のハンドル側から進行方向に向いて見た方向から左側が後方に、右側が前方に向いた力が作用している(
図7参照)。このカゴ用ステー5の中央位置において、底具1の左側となる第1係止部21は後方から前方に向けて係止爪21aがあり、係止溝21bが後方を溝の底として形成されていることから、カゴ用ステー5の左側の後方に向けた力を受けて、安定的に保持が可能になる。また、同様に、底具1の右側となる第2係止部22は前方から後方に向けて係止爪22aがあり、係止溝22bが前方を溝の底として形成されていることから、カゴ用ステー5の右側の前方に向けた力を受けて、安定的に保持が可能になる。
【0045】
第1実施形態の底具1によりカゴ用ステー5に前カゴ3を装着すると、カゴ用ステー5が前後に遊動するため、前カゴ3の背面側の取付具50によりカゴブラケット6に取り付けることで前カゴ3を自転車に完全に取り付けることが可能になる。
【0046】
次に第2実施形態について説明する。
図10,11に示すように、第2実施形態の底具101は、底板本体120から下方に向けて隆起する第1係止部121と第2係止部122とからなる。第2実施形態の底具101による被係止部の係止の基本的形態や機能のうち後述するものの他は第1実施形態と共通するものであり、以下の説明において第1実施形態と共通する部分は省略する。
【0047】
底具101の第1係止部121は、底板本体120から下方に向けて膨出し、最も膨出した下面が後方から前方に向けて突出するように係止爪121aが形成される。係止爪121aと底板本体120との間には側方に向けて底を円形状にする係止溝121bが形成され、底板本体120には、係止爪121aがある係止位置と後述の仮置き位置との間の位置に突没可能に弾性変形する係止バネ部121cが形成される。第1係止部121の仮置き部123側は、仮置き部123の斜め方向に沿って切り欠くように傾斜壁123aが形成される。
【0048】
第2係止部122は、第1係止部121と同じく、底板本体120から下方に向けて膨出し、最も膨出した下面が前方から後方に向けて突出するように係止爪122aが形成される。係止爪122aと底板本体120との間には側方に向けて底を円形状にする係止溝122bが形成され、係止爪122aがある係止位置と後述の仮置き位置との間の位置に突没可能に弾性変形する係止バネ部122cが形成される。第2係止部122の仮置き部123側は、仮置き部123の斜め方向に沿って切り欠くように傾斜壁123aが形成される。
【0049】
2つの係止部121、122(係止爪121a、122a)により形成される係止位置と、仮置き部123により形成される仮置き位置との間には、弾性変形により突没可能な係止バネ部121c、122cが形成される。この係止バネ部121c、122cは、下方(
図10では上方)への突出部分を有しつつ、基端部分を除いてその周囲を切り欠いている。基端部分から突出部分までアーム部分を有することから、バネ状に作用することで、突出部分が上方(
図10では下方)に没入、弾性による復帰により突没自在となるバネ部材である。この突没自在な係止バネ部121c、122cのうち先端が立設する突出部分により係止溝121b、122bに挿入された被係止部5bが容易に係止状態から解除されないようにしている。また、係止バネ部121c、122cは、被係止部5bの仮置き状態では干渉しない位置にあって仮置き状態を安定的にし、捻り返した係止状態に移行する際に係止バネ部121c、122cを没入させながら移行し、係止状態で復帰するようにしている。これにより、仮置きステップと係止ステップとを明確にして、より明確な係止作業を実現することができる。
【0050】
第2実施形態は、第1実施形態の開放部24、24(
図1参照)が形成されていないが、第1係止部121及び第2係止部122の縁部分を切り欠いた係止開放部124、124が形成されている。この縁部分は仮置き部123と、2つの係止溝121b、122bとが交差する交差位置を中央としたときに、当該中央と反対側の縁である。係止開放部124、124は、略U字状となる係止爪121a、122aの隆起部分から先端部分までを切り欠いて、切り欠き幅も係止バネ部121c、122cの近傍まで至る。係止開放部124、124により第1係止部121、第2係止部122に仮置き部123が隠れることなく良好な視認状態とすることができ、さらに係止バネ部121c、122cによる係止を容易にしている。さらに仮置き部123の仮置き面の両側に傾斜壁123a、123aがあることで、被係止部5bを載置する場合のガイドの役割を果たしており、見え難い仮置き部123への載置を容易にしている。
【符号の説明】
【0051】
1…底具、3…前カゴ、5…カゴ用ステー、5a…脚部、5b…被係止部、20…底板本体、21…第1係止部、21a…係止爪、21b…係止溝、21c…突起、21d…切り欠き部、22…第2係止部、22a…係止爪、22b…係止溝、22c…突起、22d…切り欠き部、23…仮置き部(仮置き面)、23a…傾斜壁、24…開放部、120…底板本体、121…第1係止部、121a…係止爪、121b…係止溝、121c…係止バネ部、122…第2係止部、122a…係止爪、122b…係止溝、122c…係止バネ部、123…仮置き部(仮置き面)、123a…傾斜壁、124…開放部。