(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081366
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品、および、複合体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230602BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20230602BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/016
C08K7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190814
(22)【出願日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2021195022
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021195024
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022049153
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】庄司 英和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】小林 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】黒田 達也
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 有希
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD154
4J002CD123
4J002CF062
4J002CF071
4J002DA038
4J002DE127
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD060
4J002FD098
4J002FD133
4J002FD134
4J002FD137
4J002FD160
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物であって、難燃性に優れ、かつ、他部材との高い接着強度を有する樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物から形成された成形品、および、複合体の提供。
【解決手段】 ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物であって、離型性および耐加水分解性に優れた樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成された成形品の提供。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、
難燃剤を1~50質量部含み、
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部における、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の質量比が、10/90~90/10であり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂が鉄元素を1.0~100μg/g含む、樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるカルシウム元素の含有量が、1.0~30μg/gである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるマグネシウム元素の含有量が、0.1~40μg/gである、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるリン元素の含有量が、0.1~15μg/gである、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエチレンテレフタレート樹脂が、鉄元素、ナトリウム元素およびチタン元素を合計で1.5~30μg/g含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエチレンテレフタレート樹脂がイソフタル酸に由来する単位を含み、かつ、ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるジカルボン酸成分に由来する全単位中、イソフタル酸に由来する単位が0.5モル%以上15モル%以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度が0.60dL/g以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
ポリエチレンテレフタレート樹脂が、リサイクル品を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
ポリエチレンテレフタレート樹脂がリサイクル品を含み、ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる環状三量体の含有量が0.8質量%以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、無機充填剤を、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、1~150質量部含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機充填剤が、繊維状無機充填剤を含む、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記難燃剤が、臭素系難燃剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、難燃助剤を含む、請求項1または12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記樹脂組成物を1.6mm厚さの試験片に成形し、UL-94試験を行ったとき、V-0を満たす、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるカルシウム元素の含有量が、1.0~30μg/gであり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるマグネシウム元素の含有量が、0.1~40μg/gであり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるリン元素の含有量が、0.1~15μg/gであり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂が、鉄元素、ナトリウム元素およびチタン元素を合計で1.5~30μg/g含み、
ポリエチレンテレフタレート樹脂がイソフタル酸に由来する単位を含み、かつ、ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるジカルボン酸成分に由来する全単位中、イソフタル酸に由来する単位が0.5モル%以上15モル%以下であり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度が0.60dL/g以上であり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂が、リサイクル品を含み、
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる環状三量体の含有量が0.8質量%以下であり、
さらに、無機充填剤を、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、1~150質量部含み、
前記無機充填剤が、繊維状無機充填剤を含み、
前記難燃剤が、臭素系難燃剤を含み、
さらに、難燃助剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
車輌部品用または電気電子部品用である、請求項1、2または15に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
他の部材との接着用である、請求項1、2または15に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
他の部材との接着に用いられる接着剤は、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、および、ポリエステル系接着剤の少なくとも1種を含む、請求項17に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記他の部材が、樹脂、金属、および、ガラスの少なくとも1種を含む、請求項18に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
請求項1、2または15に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項21】
請求項1、2または15に記載の樹脂組成物から形成された成形品と、他の部材との間に接着剤層を有する、複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形品、および、複合体に関する。特に、ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、機械的性能、電気特性、加工特性等に優れるという特長を有し、各種用途に広く用いられている。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂が知られている。特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物が検討されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/217680号
【特許文献2】特開2018-203932号公報
【特許文献3】国際公開第2020/246335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物について、用途によっては、難燃性や他部材との高い接着強度が求められる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物であって、難燃性に優れ、かつ、他部材との高い接着強度を有する樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物から形成された成形品、および、複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリエチレンテレフタレート樹脂として、微量の鉄元素を含むものを用いることにより上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、
難燃剤を1~50質量部含み、
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部における、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の質量比が、10/90~90/10であり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂が鉄元素を1.0~100μg/g含む、樹脂組成物。
<2>ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるカルシウム元素の含有量が、1.0~30μg/gである、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるマグネシウム元素の含有量が、0.1~40μg/gである、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるリン元素の含有量が、0.1~15μg/gである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>ポリエチレンテレフタレート樹脂が、鉄元素、ナトリウム元素およびチタン元素を合計で1.5~30μg/g含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>ポリエチレンテレフタレート樹脂がイソフタル酸に由来する単位を含み、かつ、ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるジカルボン酸成分に由来する全単位中、イソフタル酸に由来する単位が0.5モル%以上15モル%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>ポリエチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度が0.60dL/g以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>ポリエチレンテレフタレート樹脂が、リサイクル品を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>ポリエチレンテレフタレート樹脂がリサイクル品を含み、ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる環状三量体の含有量が0.8質量%以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>さらに、無機充填剤を、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、1~150質量部含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>前記無機充填剤が、繊維状無機充填剤を含む、<10>に記載の樹脂組成物。
<12>前記難燃剤が、臭素系難燃剤を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13>さらに、難燃助剤を含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<14>前記樹脂組成物を1.6mm厚さの試験片に成形し、UL-94試験を行ったとき、V-0を満たす、<1>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<15>ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるカルシウム元素の含有量が、1.0~30μg/gであり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるマグネシウム元素の含有量が、0.1~40μg/gであり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるリン元素の含有量が、0.1~15μg/gであり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂が、鉄元素、ナトリウム元素およびチタン元素を合計で1.5~30μg/g含み、
ポリエチレンテレフタレート樹脂がイソフタル酸に由来する単位を含み、かつ、ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるジカルボン酸成分に由来する全単位中、イソフタル酸に由来する単位が0.5モル%以上15モル%以下であり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度が0.60dL/g以上であり、
ポリエチレンテレフタレート樹脂が、リサイクル品を含み、
ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる環状三量体の含有量が0.8質量%以下であり、
さらに、無機充填剤を、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、1~150質量部含み、
前記無機充填剤が、繊維状無機充填剤を含み、
前記難燃剤が、臭素系難燃剤を含み、
さらに、難燃助剤を含む、<1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<16>車輌部品用または電気電子部品用である、<1>~<15>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<17>他の部材との接着用である、<1>~<16>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<18>他の部材との接着に用いられる接着剤は、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、および、ポリエステル系接着剤の少なくとも1種を含む、<17>に記載の樹脂組成物。
<19>前記他の部材が、樹脂、金属、および、ガラスの少なくとも1種を含む、<18>に記載の樹脂組成物。
<20><1>~<17>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<21><1>~<19>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品と、他の部材との間に接着剤層を有する、複合体。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物であって、難燃性に優れ、かつ、他の部材との高い接着強度を有する樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成された成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、難燃剤を1~50質量部含み、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部における、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の質量比が、10/90~90/10であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂が鉄元素を1.0~100μg/g含むことを特徴とする。
このような構成とすることにより、難燃性に加え、他の部材との接着強度に優れた樹脂組成物が得られる。また、引張強さが高い成形品を提供可能な樹脂組成物が得られる。本実施形態においては、鉄元素を微量に含むポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることにより、鉄元素が接着剤の硬化阻害となる有機物化合と選択的に反応することにより、接着強度が向上すると推測される。また、結晶化を促進することにより、引張強さが高くなると推測される。
【0009】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む。
本実施形態の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーとポリブチレンテレフタレート共重合体との混合物を含む。
【0010】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を1種または2種以上含んでいてもよい。
他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位が全ジカルボン酸単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに一層好ましく、99モル%以上であってもよい。
【0011】
ジオール単位としては、1,4-ブタンジオールの外に1種または2種以上の他のジオール単位を含んでいてもよい。
他のジオール単位の具体例としては、炭素数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオール単位が全ジオール単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに一層好ましく、99モル%以上であってもよい。
【0012】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。また、カルボン酸単位として、前記テレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂が共重合体である場合、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全単位中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が、好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3~40モル%、さらに好ましくは5~20モル%である。このような共重合割合とすることにより、成形収縮率が小さくおよび耐衝撃性が高い成形品が得られるため好ましい。
【0013】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることにより、耐アルカリ性および耐加水分解性が向上する傾向にある。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、5eq/ton以上が好ましい。
【0014】
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lのベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0015】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5dL/g以上であることが好ましく、0.6dL/g以上であることがより好ましい。前記固有粘度は、2dL/g以下であることが好ましく、1.5dL/g以下であることがより好ましく、1.4dL/g以下であることがさらに好ましく、1.3dL/g以下であることがより一層好ましく、1.26dL/g以下であることがさらに一層好ましく、1.0dL/g以下、0.9dL/g以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がポリエステル樹脂を2種以上含む場合は、混合物の固有粘度とする。
固有粘度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式やバッチ式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
【0017】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0018】
<ポリエチレンテレフタレート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」ということがある)を含む。本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、ジカルボン酸とジオールを主たる構成単位とする樹脂である。
本実施形態においては、ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる鉄元素の量が、1.0~100μg/gである。前記下限値以上とすることにより、接着強度が向上する傾向にあり、成形品の燃焼時間が短くなる傾向にある。前記上限値以下とすることにより、電機絶縁性が保たれる傾向にある。
【0019】
ポリエチレンテレフタレート樹脂、特に、PETボトル由来のリサイクルPET等リサイクルPETは、不純物として金属元素を含むことがある。これは、反応釜や、リサイクルPETの場合は、カッター等にも由来する。金属元素、特に、鉄元素は、磁性物であることから含まない方がよいと考えられていたが、本実施形態の樹脂組成物では、あえて、少量の鉄元素を含むことにより、難燃性に優れ、かつ、他の部材との高い接着強度を有する樹脂組成物が得られることを見出したものである。
【0020】
本実施形態において、鉄元素は本実施形態の樹脂組成物中で結晶核剤として働き、特に鉄元素が前記樹脂組成物を成形して得られる成形品の離型性向上に寄与すると推定される。なお、本実施形態においては、リサイクルPETに限らず、バージンPETであって所定量の鉄元素を含むPETも好ましく用いられることは言うまでもない。
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂における鉄元素の量は、1.0μg/g以上であるが、1.2μg/g以上であることが好ましく、1.4μg/g以上であることがより好ましく、1.6μg/g以上であることがさらに好ましく、1.8μg/g以上であることが一層好ましく、2.4μg/g以上であることがより一層好ましい。前記ポリエチレンテレフタレート樹脂における鉄元素の量は、100μg/g以下であり、90μg/g以下であることが好ましく、80.0μg/g以下であることがより好ましく、50μg/g以下であることがさらに好ましく、20μg/g以下であることが一層好ましく、10μg/g以下であることがより一層好ましく、5.0μg/g以下であることがさらに一層好ましく、4.0μg/g以下であることが特に一層好ましい。
【0021】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、鉄元素に加え、カルシウム元素、ナトリウム元素、マグネシウム元素、リン元素、およびチタン元素の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。さらには、鉄元素に加え、ナトリウム元素およびチタン元素を含むことが好ましく、さらにカルシウム元素を含むことがより好ましい。
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂におけるカルシウム元素の量は、1.0μg/g以上であることが好ましく、1.1μg/g以上であることがより好ましく、1.2μg/g以上であることがさらに好ましく、1.3μg/g以上であることが一層好ましく、2.0μg/g以上であることがより一層好ましく、3.0μg/g以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、離型性がより向上する傾向にある。前記ポリエチレンテレフタレート樹脂におけるカルシウム元素の量は、30μg/g以下であることが好ましく、25μg/g以下であることがより好ましく、20μg/g以下であることがさらに好ましく、15μg/g以下であることが一層好ましく、10μg/g以下であることがより一層好ましく、8.0μg/g以下であることがさらに一層好ましく、6.0μg/g以下であることが特に一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形性や外観等がより向上する傾向にある。
【0022】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂(好ましくはリサイクルPET)におけるナトリウム元素の量は、0.1μg/g以上、0.4μg/g以上、0.5μg/g以上、0.6μg/g以上、0.8μg/g以上、1.0μg/以上、1.2μg/g以上、1.6μg/g以上、2.0μg/以上が挙げられる。上限値は、例えば、30μ/g以下、25μg/g以下、20μg/g以下、15μg/g以下、10μg/g以下、8μg/g以下、5μg/g以下であってもよい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0023】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂(好ましくはリサイクルPET)におけるマグネシウム元素の量は、0.1μg/g以上であることが好ましく、さらには、0.3μg/g以上、0.5μg/g以上、0.6μg/g以上、0.7μg/以上が挙げられる。上限値は、40μg/g以下であることが好ましく、さらには、30μg/g以下、20μg/g以下、15μg/g以下、10μg/g以下、8μg/g以下、5μg/g以下、3μg/g以下、2μg/以下であってもよい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0024】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂におけるリン元素の量は、0.1μg/g以上であることが好ましく、0.5μg/g以上であることがより好ましく、1.0μg/g以上であることがさらに好ましく、2.0μg/g以上であることが一層好ましく、3.0μg/g以上であることがより一層好ましく、4.0μg/g以上であることがさらに一層好ましく、5.0μg/g以上であることが特に一層好ましく、6.0μg/g以上であってもよく、7.0μg/g以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、離型性がより向上する傾向にある。前記ポリエチレンテレフタレート樹脂におけるリン元素の量は、15μg/g以下であることが好ましく、14μg/g以下であることがより好ましく、13μg/g以下であることがさらに好ましく、12μg/g以下であることが一層好ましく、11μg/g以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形性や外観等がより向上する傾向にあり、接着性がより向上する傾向にある。
【0025】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂におけるチタン元素の量は、0.4μg/g以上であることが好ましく、0.6μg/g以上であることがより好ましく、1.0μg/g以上であることがさらに好ましく、1.1μg/g以上であることが一層好ましく、1.2μg/g以上であることがより一層好ましく、1.3μg/g以上であることがさらに一層好ましく、1.4μg/g以上であることが特に一層好ましく、1.6μg/g/g以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、離型性がより向上する傾向にある。前記ポリエチレンテレフタレート樹脂におけるチタン元素の量は、30μg/g以下であることが好ましく、25μg/g以下であることがより好ましく、20μg/g以下であることがさらに好ましく、15μg/g以下であることが一層好ましく、10μg/g以下であることがより一層好ましく、8μg/gであることがさらに一層好ましく、6μg/gであることが特に一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形性や外観等がより向上する傾向にある。
【0026】
さらに、本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂における、鉄元素、ナトリウム元素およびチタン元素の合計量は、1.0μg/g以上であることが好ましく、1.5μg/g以上であることがより好ましく、4.0μg/g以上であることがさらに好ましく、5.0μg/g以上であることが一層好ましく、6.0μg/g以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、離型性がより向上する傾向にある。前記ポリエチレンテレフタレート樹脂における鉄元素、ナトリウム元素およびチタン元素の合計量は、30μg/g以下であることが好ましく、25μg/g以下であることがより好ましく、20μg/g以下であることがさらに好ましく、15.0μg/g以下であることが一層好ましく、10μg/g以下であることがより一層好ましく、8.0μg/g以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形性や外観等がより向上する傾向にある。
【0027】
なお、PET中の金属元素の定性/半定量分析(μg/g)は、ICP発光分析法によって行う。この場合、前処理として試料200mgを秤量し、ケルダール湿式分解(硫酸/硝酸、硫酸/過酸化水素)を行い、50mLに定容し、続いて、ICP発光分析を酸濃度マッチング一点検量法にて行う。ICP発光分析は、Thrmo Fisher Scientific社製「iCAP76000uo」を用い、axial/radial測光にて行うことができる。
【0028】
また、本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸に由来する単位を含み、かつ、ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるジカルボン酸成分に由来する全単位中、イソフタル酸に由来する単位(以下、「イソフタル酸単位」と記すことがある。)が0.5モル%以上15モル%以下であることが好ましい。このような特定のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることにより、全体としての結晶化を抑制でき、成形収縮率が小さくなり、耐衝撃性がより高い成形品が得られる傾向にある。
【0029】
前記イソフタル酸単位の割合は、ジカルボン酸成分に由来する全単位中、0.7モル%以上であることが好ましく、0.9モル%以上であることがより好ましく、1.1モル%以上であることがさらに好ましく、1.3モル%以上であることが一層好ましく、1.5モル%以上であることがより一層好ましい。また、前記イソフタル酸単位の割合は、ジカルボン酸成分に由来する全単位中、10モル%以下、8.0モル%以下、5.0モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下であることが好ましく、3.0モル%以下であることがより好ましく、2.5モル%以下であることがさらに好ましく、2.4モル%以下であることが一層好ましく、2.3モル%以下、2.0モル%以下であってもよい。
【0030】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.50dL/g以上であることが好ましく、0.60dL/g以上であることがより好ましく、0.70dL/g超であることがさらに好ましく、0.73dL/g以上であることが一層好ましく、0.76dL/g超であることがより一層好ましく、0.78dL/g以上であることがさらに一層好ましく、0.80dL/g以上が特に好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐衝撃性がより向上し、収縮率が小さくなる傾向にある。この理由は、分子量が大きくなることで分子の絡み合いが増加しやすくなるためと推測される。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、2.0dL/g以下であることが好ましく、1.5dL/g以下であることがより好ましく、1.2dL/g以下であることがさらに好ましく、0.95dL/g以下であることが一層好ましく、0.85dL/g以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、溶融混練時や成形時での溶融粘度が高すぎることなく、押出し機や成形機への負荷が低減される傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がポリエチレンテレフタレート樹脂を2種以上含む場合、固有粘度は、混合物の固有粘度とする。
【0031】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の、JIS K7210(温度265℃、荷重5kgf)に準拠して測定されるメルトボリュームレイト(MVR)は、10cm3/10分以上、20cm3/10分以上であることがより好ましく、また、100cm3/10分以下であることが好ましく、50cm3/10分以下であることがより好ましい。
【0032】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂におけるテレフタル酸およびイソフタル酸以外の酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸およびこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸およびその誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸またはその誘導体が挙げられる。
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位が全ジカルボン酸単位の80モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましく、98モル%以上を占めることがさらに好ましく、99モル%以上を占めることが一層好ましい。
【0033】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂におけるエチレングリコール以外のジオール成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、エチレングリコール単位が全ジオール単位の80モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましく、98モル%以上を占めることがさらに好ましく、99モル%以上を占めることが一層好ましい。
【0034】
さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメリシン酸、トリメリット酸等の如き三官能、もしくはピロメリット酸の如き四官能のエステル形成性能を有する酸、またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の如き三官能もしくは四官能のエステル形成能を有するアルコールを、例えば1.0モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.3モル%以下を共重合せしめたものであってもよい。
【0035】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位、および、エチレングリコール単位が末端基を除く全単位の90モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましく、98モル%以上を占めることがさらに好ましく、99モル%以上を占めることが一層好ましい。
【0036】
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求める値である。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0037】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂としては、リサイクルPET、特にPETボトル由来のリサイクルPETを使用することが好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂には、通常、線状オリゴマーや環状オリゴマーが含まれており、環状三量体、環状四量体、環状五量体が主成分であるが、リサイクルPETの場合は、通常、リサイクルの過程でこれらの線状オリゴマーや環状オリゴマーの量が減じている。また、特にボトル由来のリサイクルPETは、リサイクルの過程で結晶化工程や固相重合の工程の様な加熱工程を経るため、さらに環状オリゴマーの量が減じる傾向にある。
PETボトル由来のリサイクルPET等リサイクルPETとしては、環状オリゴマー(環状三量体、環状四量体、環状五量体)の合計量が1.1質量%以下のものが好ましく、0.9質量%以下のものがより好ましく、0.7質量%以下のものがさらに好ましく、0.6質量%以下であるものがより一層好ましく、0.5質量%以下であるものが特に好ましい。前記上限値以下にすることにより、耐フォギング性に優れる傾向にあり、金型表面のデポジット付着量が減少する傾向にあり、成形品の難燃時間が短くなる傾向にあり、成形品の接着性が向上する傾向にある。下限値は特に定められるものではないが、0.1質量%以上が現実的である。
さらに、リサイクルPET中の環状三量体量が、0.8質量%以下であるものが好ましく、0.6質量%以下であるものがより好ましく、0.5質量%以下であるものが特に好ましく、0.4質量%以下であるものがより一層好ましい。前記上限値以下にすることにより、耐フォギング性に優れる傾向にあり、金型表面のデポジット付着量が減少する傾向にあり、成形品の燃焼時間が短くなる傾向にあり、成形品の接着性が向上する傾向にある。下限値は特に定められるものではないが、0.1質量%以上が現実的である。
なお、環状オリゴマー量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂0.1gを溶解可能なクロロホルム等の溶媒に溶かし、溶解・再沈を行い、上澄み液を濾過後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した。また定量は、1点による絶対検量線法により実施し、DMT(テレフタル酸ジメチル)換算での値とした。
【0038】
このようなポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」と記すことがある。)としては、バージン品(以下、「バージンPET」と記すことがある。)、リサイクル品(以下、「リサイクルPET」と記すことがある。)、バイオ由来品(以下、「バイオPET」と記すことがある。)およびこれらの混合物を用いることが出来る。なお、バイオPETとは、原料の少なくとも一部が生物資源(バイオマス)由来であるポリエチレンテレフタレート樹脂を言う。
リサイクルPETとしては、回収された使用済PETボトルやフィルム等を粉砕、水洗浄やアルカリ洗浄して繊維等に再利用するマテリアルリサイクルにより得られたもの、ケミカルリサイクル(化学分解法)より得られたものおよびメカニカルリサイクルにより得られたもの等が挙げられる。
ケミカルリサイクルは、回収された使用済PETボトルやフィルム等を化学分解して、原料レベルに戻してポリエチレンテレフタレート樹脂を再合成するものである。一方、メカニカルリサイクルは、上述したマテリアルリサイクルにおけるアルカリ洗浄をより厳密に行うこと、あるいは高温で真空乾燥すること等によって、マテリアルリサイクルよりもポリエチレンテレフタレート樹脂の汚れを確実に取り除くことを可能にした手法である。
例えば、使用済PETボトルからは、異物が取り除かれた後に、粉砕・洗浄され、次に押出機によりペレット化された後に、約120~150℃環境下で結晶化され、さらにその後、窒素気流下または高減圧下において約210℃環境下で固相重合されて、リサイクルPETが得られる。
バイオPETとしてはPETの原料であるモノエチレングリコールをさとうきび由来のバイオ原料に替えて製造されたPETが挙げられる。
【0039】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、JIS K7121に基づき、DSC(示差走査熱量測定)により40℃から昇温速度20℃/分にて300℃まで昇温後、降温速度-20℃/分にて40℃まで降温する操作を1サイクルとして、前記操作を行った際の1サイクル目の昇温時の結晶化熱(以下、「ΔHTc1-1st」と記すことがある)の絶対値が3J/g未満であることが好ましい。すなわち、明確な昇温時結晶化温度(Tc1-1st)を示さないことが好ましい。このような樹脂を用いることにより、成形性が向上する傾向にある。この理由は、成形時における結晶化あるいは固化がしやすい方向になるためと推測される。
【0040】
また、本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、前記1サイクル目の降温時の結晶化熱(以下、「ΔHTc2-1st」と記すことがある。)の絶対値が3J/g以上であることが好ましい。すなわち、明確な降温時結晶化温度(Tc2-1st)を有することが好ましい。このような樹脂を用いることにより、結晶化がし易くなり、また離型性が良くなり、成形性がより良くなる傾向にある。また、前記Tc2-1stは、160℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましい。前記下限値以上であることにより、結晶化がし易くなり、また、離型性がより向上する傾向にある。また、前記Tc2-1stは、195℃以下であることが好ましく、186℃以下であることがより好ましく、183℃以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形収縮率がより小さくなる傾向にある。
【0041】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、前記1サイクル目の昇温時の結晶化熱(ΔHTc1-1st)の絶対値が3J/g未満であり、かつ、前記1サイクル目の降温時の結晶化熱(ΔHTc2-1st)の絶対値が3J/g以上であることが好ましい。すなわち、明確な昇温時結晶化温度(Tc1-1st)を示さない、かつ、明確な降温時結晶化温度(Tc2-1st)を有することが好ましい。このようなポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることによって、離型性が良くなり、表面外観が向上するという効果がより発揮できる。
【0042】
また、本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、前記1サイクル目の融点(Tm-1st)が254℃以下であることが好ましく、252℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましく、さらには、245℃以下、242℃以下であってもよい。前記上限値以下であることにより、より低い樹脂温度で成形できるため、成形性がより向上する傾向にある。また、樹脂組成物としての靭性が向上する傾向となる。下限値は、230℃以上が好ましく、235℃以上がより好ましい。前記下限値以上とすることにより、離型性がより向上する傾向になる。また、樹脂組成物として剛性が向上する傾向になる。なお、融解ピークが2つ以上見られた場合には、低い方の温度を融点(Tm-1st)とする。
【0043】
本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂のJIS K7121に基づき、DSC(示差走査熱量測定)により40℃から昇温速度20℃/分にて300℃まで昇温後、降温速度-20℃/分にて40℃まで降温する操作を1サイクルとして、前記操作を行った際の2サイクル目の昇温時の結晶化熱(ΔHTc1-2nd)の絶対値が3J/g未満であることが好ましい。すなわち、明確な昇温時結晶化温度(Tc1-2nd)を示さないことが好ましい。このような構成とすることにより、結晶化がし易くなり、また離型性が良くなり、成形性が向上する傾向にある。
【0044】
また、本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、前記2サイクル目の降温時の結晶化熱(以下、「ΔHTc2-2nd」と記すことがある。)の絶対値が3J/g以上であることが好ましい。すなわち、明確な降温時結晶化温度(Tc2-2nd)を有することが好ましい。このような構成とすることにより、結晶化がし易くなり、また離型性が良くなり、成形性がより良くなる傾向にある。また、前記2サイクル目の降温時結晶化温度(Tc2-2nd)は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより結晶化がし易くなり、また離型性が良くなる傾向にある。また、前記Tc2-2ndは190℃以下であることが好ましく、185℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましく、175℃以下であることが一層好ましく、さらには170℃以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形収縮率が小さくなる傾向にある。
このようなポリエチレンテレフタレート樹脂としてはリサイクルPET、特にPETボトル由来のリサイクルPETが好ましい。
【0045】
さらに、本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、前記2サイクル目の昇温時の結晶化熱(ΔHTc1-2nd)の絶対値が3J/g未満であり、かつ、前記2サイクル目の降温時の結晶化熱(ΔHTc2-2nd)の絶対値が3J/g以上であることが好ましい。すなわち、2サイクル目において明確な昇温時結晶化温度(Tc1-2nd)を示さない、かつ、2サイクル目において明確な降温時結晶化温度(Tc2-2nd)を有することが好ましい。このようなポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることによって、離型性が良くなり、表面外観が向上するという効果が発揮できる。
【0046】
また、本実施形態で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、前記2サイクル目の融点(Tm-2nd)が、254℃以下が好ましく、252℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、より低い樹脂温度で成形できるため、成形性がより向上する傾向にある。前記Tm-2ndの下限値は、230℃以上が好ましく、235℃以上がより好ましい。前記下限値以上とすることにより、離型性がより向上する傾向にある。なお、融解ピークが2つ以上見られた場合には、低い方の温度を融点(Tm-2nd)とする。
【0047】
上記のようなポリエチレンテレフタレート樹脂としてはリサイクルPET、特にPETボトル由来のリサイクルPETが好ましい。
一方、一般的なポリエチレンテレフタレート樹脂(例えば、バージンポリエチレンテレフタレート樹脂)は、1サイクル目において明確な昇温時の結晶化温度(Tc1-1st)を示し、結晶化熱(ΔHTc1-1st)の絶対値が3J/g以上である。また、一般的なポリエチレンテレフタレート樹脂は、2サイクル目において明確な昇温時の結晶化温度(Tc1-2nd)を示す傾向があるのに対し、リサイクル品のポリエチレンテレフタレートは示さない傾向である。
【0048】
さらに、一般的なポリエチレンテレフタレート樹脂は、明確な1サイクル目の降温時の結晶化温度(Tc2-1st)を示さない傾向があるのに対し、リサイクル品のポリエチレンテレフタレートは示す傾向である。また、一般的なポリエチレンテレフタレート樹脂は、明確な2サイクル目の降温時の結晶化温度(Tc2-2nd)を示さない傾向があるのに対し、リサイクル品のポリエチレンテレフタレートは示す傾向にある。
【0049】
<樹脂のブレンド比率>
本実施形態の樹脂組成物においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部における、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の質量比が、10/90~90/10である。本実施形態の樹脂組成物においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、ポリブチレンテレフタレート樹脂の割合が、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部超であることが一層好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、ポリブチレンテレフタレート樹脂の割合が、85質量部以下であることが好ましく、82質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であることが一層好ましく、65質量部以下であることがより一層好ましく、60質量部以下であることがさらに一層好ましい。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量は、樹脂組成物の30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが一層好ましく、49質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形加工性(離型性)に優れ、前記樹脂組成物を成形して得られる成形品の耐衝撃性と機械物性がより良好となるため好ましく、また、成形品の離型性が良好になることから表面外観がさらに向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量は、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。特に、無機充填剤を含む場合は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0051】
<難燃剤>
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を含む。難燃剤を含むことにより、難燃性を達成できる。難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン等)、窒素系難燃剤(シアヌル酸メラミン等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)等があるが、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤が好ましく、ハロゲン系難燃剤がより好ましい。リン系難燃剤としては、ホスフィン酸金属塩がより好ましい。ハロゲン系難燃剤としては、臭素系難燃剤がより好ましい。
【0052】
難燃剤として臭素系難燃剤を用いる場合、その種類は特に定めるものではないが、臭素化フタルイミド、臭素化ポリ(メタ)アクリレート、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ、および、臭素化ポリスチレンが好ましく、臭素化ポリ(メタ)アクリレート、臭素化ポリカーボネートおよび臭素化エポキシがより好ましく、臭素化エポキシがさらに好ましい。
【0053】
臭素化フタルイミドとしては、式(1)で表されるものが好ましい。
【化1】
(式(1)中、Dは、アルキレン基、アリーレン基、-S(=O)
2-、-C(=O)-、および、-O-の2つ以上の組み合わせからなる基を表す。iは1~4の整数である。)
【0054】
式(1)において、Dは、アルキレン基、アリーレン基、-S(=O)2-、-C(=O)-、および、-O-の2つ以上の組み合わせからなる基を表し、アルキレン基またはアリーレン基と、-S(=O)2-、-C(=O)-、および、-O-の少なくとも1つとの組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基またはアリーレン基と、-S(=O)2-、-C(=O)-、および、-O-の1つとの組み合わせからなる基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。
アルキレン基と-O-との組み合わせからなる基としては、例えば、2つのアルキレン基と1つの-O-といった組み合わせも含む趣旨である(他の組み合わせについても同じ。)。
Dとしてのアルキレン基は、炭素数1~6のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基がより好ましい。アリーレン基は、フェニレン基が好ましい。
iは1~4の整数であり、4であることが好ましい。
【0055】
式(1)で示される臭素化フタルイミドとしては、例えば、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)エタン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)プロパン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ブタン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジエチルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジプロピルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジブチルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルスルフォン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルケトン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0056】
臭素化フタルイミドとしては、式(1)は、式(2)で表される臭素化フタルイミドであることが好ましい。
【化2】
(式(2)中、iは1~4の整数である。)
iは1~4の整数であり、4であることが好ましい。
【0057】
臭素化ポリ(メタ)アクリレートとしては、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、または2種以上を共重合、あるいは、他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1~5個、中でも4~5個付加したものであることが好ましい。
【0058】
臭素原子を含有するベンジルアクリレートとしては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート、またはそれらの混合物等が挙げられる。また、臭素原子を含有するベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
【0059】
臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートと共重合させるために使用される他のビニル系モノマーとしては、具体的には、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸またはその無水物;酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
【0060】
これらは通常、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートに対して等モル量以下、中でも0.5倍モル量以下が用いることが好ましい。
【0061】
また、ビニル系モノマーとしては、キシレンジアクリレート、キシレンジメタクリレート、テトラブロムキシレンジアクリレート、テトラブロムキシレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン等を使用することもでき、これらは通常、臭素原子を含有するベンジルアクリレートまたはベンジルメタクリレートに対し、0.5倍モル量以下が使用できる。
【0062】
臭素化ポリ(メタ)アクリレートとしては、臭素原子を含有する(メタ)アクリレートモノマー、特にベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、または2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましい。また、臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1~5個、中でも4~5個付加したものであることが好ましい。
【0063】
臭素化ポリ(メタ)アクリレートとしては、ペンタブロモベンジルポリ(メタ)アクリレートが、高臭素含有量であることから好ましい。
【0064】
臭素化ポリ(メタ)アクリレートの分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、重量平均分子量(Mw)で、3,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることがさらに好ましく、20,000以上であることが一層好ましく、25,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、より高い機械的強度を有する成形品が得られる傾向にある。また、前記重量平均分子量(Mw)の上限は、100,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることがさらに好ましく、50,000以下であることが一層好ましく、35,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
【0065】
臭素化ポリカーボネートは、遊離臭素含有量が0.05質量%以上であることが好ましく、また、0.20質量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、樹脂組成物の耐熱安定性がより向上する傾向にある。臭素化ポリカーボネートは、また、塩素原子含有量が0.001質量%以上であることが好ましく、また、0.20質量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、成形の際の耐金型腐食性がより向上する傾向にある。
臭素化ポリカーボネートとしては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4-t-ブチルフェニル基や2,4,6-トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6-トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
【0066】
臭素化ポリカーボネートにおける、カーボネート構成単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、2~30であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましい。
【0067】
臭素化ポリカーボネートの分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1,000~20,000、中でも2,000~10,000であることがより好ましい。
【0068】
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネートは、例えば、臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲンまたは有機基で置換されていてもよい。
【0069】
臭素化エポキシとしては、具体的には、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物や、グリシジル臭素化ビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型ブロモ化エポキシ化合物が好ましく挙げられる。
【0070】
臭素化エポキシ化合物の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、重量平均分子量(Mw)で、3,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、13,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが一層好ましく、18,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、より高い機械的強度を有する成形品が得られる傾向にある。また、前記重量平均分子量(Mw)の上限は、100,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、78,000以下であることがさらに好ましく、75,000以下であることが一層好ましく、70,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が3,000~40,000g/eqであることが好ましく、中でも4,000~35,000g/eqが好ましく、特に10,000~30,000g/eqであることが好ましい。
【0071】
また、臭素化エポキシとして臭素化エポキシオリゴマーを併用することもできる。この際、例えばMwが5,000以下のオリゴマーを50質量%程度以下の割合で用いることで、難燃性、離型性および流動性を適宜調整することができる。臭素化エポキシ化合物における臭素原子含有量は任意だが、十分な難燃性を付与する上で、通常10質量%以上であり、中でも20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましく、その上限は60質量%、中でも55質量%以下であることが好ましい。
【0072】
臭素化ポリスチレンとしては、好ましくは、式(3)で示される構成単位を含有する臭素化ポリスチレンが挙げられる。
【化3】
(式(3)中、tは1~5の整数であり、nは構成単位の数である。)
【0073】
臭素化ポリスチレンとしては、ポリスチレンを臭素化するか、または、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。なお、式(3)において、臭素化ベンゼンが結合したCH基はメチル基で置換されていてもよい。また、臭素化ポリスチレンは、他のビニル系モノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニル系モノマーとしてはスチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。また、臭素化ポリスチレンは単一物あるいは構造の異なる2種以上の混合物として用いてもよく、単一分子鎖中に臭素数の異なるスチレンモノマー由来の単位を含有していてもよい。
【0074】
臭素化ポリスチレンの具体例としては、例えば、ポリ(4-ブロモスチレン)、ポリ(2-ブロモスチレン)、ポリ(3-ブロモスチレン)、ポリ(2,4-ジブロモスチレン)、ポリ(2,6-ジブロモスチレン)、ポリ(2,5-ジブロモスチレン)、ポリ(3,5-ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6-トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5-トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5-トリブロモスチレン)、ポリ(4-ブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,4-ジブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,5-ジブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,4,6-トリブロモ-α-メチルスチレン)およびポリ(2,4,5-トリブロモ-α-メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6-トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5-トリブロモスチレン)および平均2~3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
【0075】
臭素化ポリスチレンは、式(3)における構成単位の数n(平均重合度)が30~1,500であることが好ましく、より好ましくは150~1,000、特に300~800のものが好適である。平均重合度が30未満ではブルーミングが発生しやすく、一方、1,500を超えると、分散不良を生じやすく、機械的性質が低下しやすい。また、臭素化ポリスチレンの重量平均分子量(Mw)としては、5,000~500,000であることが好ましく、10,000~500,000であることがより好ましく、10,000~300,000であることがさらに好ましく、10,000~100,000であることが一層好ましく、10,000~70,000であることがより一層好ましい。特に、上記したポリスチレンの臭素化物の場合は、重量平均分子量(Mw)は50,000~70,000であることが好ましく、重合法による臭素化ポリスチレンの場合は、重量平均分子量(Mw)は10,000~30,000程度であることが好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は、GPC測定による標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0076】
臭素系難燃剤における臭素濃度は45質量%以上であることが好ましく、48質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の難燃性が効果的に向上する傾向にある。前記臭素濃度の上限値は、75質量%以下であることが好ましく、73質量%以下であることがより好ましく、71質量%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
難燃剤としてホスフィン酸金属塩を用いる場合、その種類は特に定めるものではないが、ホスフィン酸金属塩とは、アニオン部分が式(4)または(5)で表され、カチオン部分の金属イオンがカルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたは亜鉛のいずれかであることが好ましい。
【0078】
【化4】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
1同士は同一でも異なっていてもよく、R
3は炭素数1~10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、またはこれらの組み合わせからなる基を表し、R
3同士は同一でも異なっていてもよく、nは0~2の整数を表す。)
置換基を有していてもよいアリール基は、置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。置換基を有する場合、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。また、無置換であることも好ましい。
前記置換基を有していてもよいアリーレン基は、置換基を有していてもよいフェニレン基であることが好ましい。前記置換基を有していてもよいアリーレン基は、無置換であるか、置換基として炭素数1~3のアルキル基(好ましくはメチル基)を有することが好ましい。
本実施形態では、式(5)で表されるホスフィン酸金属塩が好ましい。また、本実施形態では、ホスフィン酸アルミニウムが好ましい。
【0079】
ホスフィン酸金属塩としての具体例は、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
ホスフィン酸金属塩の詳細は、国際公開第2010/010669号の段落0052~0058の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0080】
本実施形態の樹脂組成物における難燃剤(好ましくは臭素系難燃剤)の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、下限値が1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、7質量部以上であることが一層好ましく、10質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の難燃性がより向上する傾向にある。前記難燃剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましく、25質量部以下であることが一層好ましく、20質量部以下であることがより一層好ましく、18質量部以下であることがさらに一層好ましく、16質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の機械的強度の低下をより効果的に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0081】
<難燃助剤>
本実施形態の樹脂組成物は、難燃助剤を含んでいてもよい。難燃助剤を含むことにより、成形品の難燃性をより向上させることができる。難燃助剤は、ハロゲン系難燃剤を含む場合に特に好ましく用いられる。本実施形態で用いる難燃助剤は、アンチモン化合物が例示され、三酸化アンチモン(Sb2O3)、五酸化アンチモン(Sb2O5)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、耐衝撃性の点から酸化アンチモン、特に、三酸化アンチモンが好ましい。
難燃助剤を配合する場合、マスターバッチとして配合してもよい。マスターバッチ中のアンチモン化合物の含有量は、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは40~85質量%、さらに好ましくは50~85質量%である。マスターバッチに用いる樹脂は、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が、難燃助剤(例えば、アンチモン化合物)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上であることがさらに好ましく、3.0質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、難燃性がより効果的に発揮される傾向にある。また、前記アンチモン化合物の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、20.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以下であることがより好ましく、10.0質量部以下であることがさらに好ましく、8.0質量部以下であることが一層好ましく、7.0質量部以下であることがより一層好ましく、6.0質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の離型性や耐衝撃性が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃助剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0082】
<滴下防止剤>
本実施形態の樹脂組成物には、滴下防止剤を含有させることも可能である。滴下防止剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、フィブリル形成能を有し、樹脂組成物中に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものが好ましい。
滴下防止剤の含有割合は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.1~20質量部である。滴下防止剤を0.1質量部以上とすることにより、難燃性がより十分な効果を奏し、20質量部以下とすることにより、得られる成形品の外観が向上する傾向にある。滴下防止剤の含有割合は、より好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.5~10質量部である。
本実施形態の樹脂組成物は、滴下防止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0083】
<無機充填剤>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、樹脂組成物中に、無機充填剤を含んでいてもよい。無機充填剤を含むことにより、得られる成形品の機械的強度が向上する。
【0084】
無機充填剤は、繊維状無機充填剤であってもよいし、非繊維状無機充填剤であってもよいが、繊維状無機充填剤であることが好ましい。
【0085】
本実施形態の樹脂組成物の樹脂組成物における、無機充填剤の含有量(総量)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、30質量部以上であることが一層好ましく、40質量部以上であることがより一層好ましく、50質量部以上であることがさらに一層好ましく、55質量部以上であることが特に一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、剛性がより向上する傾向にある。また、前記無機充填剤の含有量(総量)の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、150質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面外観の良化する傾向にある。
【0086】
本実施形態の樹脂組成物における無機充填剤の含有量(総量)は、樹脂組成物の20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の耐衝撃性、強度がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物における無機充填剤(好ましくは繊維状無機充填剤)の含有量は、樹脂組成物の60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、45質量%以下であることが一層好ましく、40質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の伸度、収縮率の異方性がより向上する傾向にあり、成形性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、無機充填剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0087】
<<非繊維状無機充填剤>>
非繊維状無機充填剤としては、繊維以外の形状の無機充填剤を意味し、板状無機充填剤または粒子状無機充填剤が好ましく、粒子状無機充填剤がより好ましい。
非繊維状無機充填剤としては、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、カオリン、ワラストナイト、硫酸バリウム、ケイ酸ジルコニウム、クレー、ベントナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミナ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム等が挙げられるが、好ましくは、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、ケイ酸ジルコニウムであり、炭酸カルシウムが成形品の外観を向上する傾向にあるため特に好ましい。
また、本実施形態で用いる非繊維状無機充填剤は、表面が酸処理されていることが好ましく、表面が脂肪酸で処理されていることがより好ましい。
酸処理に用いられる酸としては、脂肪酸、ロジン酸、リグニン酸が例示され、炭素数が6~20の飽和もしくは不飽和の脂肪酸が好ましい。炭素数が6~20の飽和もしくは不飽和の脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸などを挙げることができる。
【0088】
本実施形態で用いる非繊維状無機充填剤は、体積基準の平均一次粒子径が5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、0.8μm以下であることが一層好ましく、0.5μm以下であることがより一層好ましく、0.3μm以下であることが特に好ましい。前記体積基準の平均一次粒子径下限値は、0.01μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることがより好ましい。本実施形態における体積基準の平均一次粒子径は、粒子形状を球として、ガス吸着等温線より解析される比表面積を基に算出される。
なお、非繊維状無機充填剤が粒子状以外の場合においても、同じ体積の粒子であると仮定した場合の粒子径を持って本実施形態における粒子径とする。
【0089】
本実施形態の樹脂組成物の樹脂組成物における、非繊維状無機充填剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、1.0質量部以上であり、1.5質量部以上であることが好ましく、2.0質量部以上であることがより好ましく、2.5質量部以上であることがさらに好ましく、3.0質量部以上であることが一層好ましく、3.5質量部以上であることがより一層好ましく、4.0質量部以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、剛性や耐熱性の向上および成形時収縮の低減と異方性の低減効果がより向上する傾向にある。また、前記非繊維状無機充填剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、100質量部以下であり、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが一層好ましく、15質量部以下であることがより一層好ましく、10質量部以下であることがさらに一層好ましく、8質量部以下であることが特に一層好ましく、5質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面外観の良化する傾向にある。
【0090】
本実施形態の樹脂組成物が非繊維状無機充填剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、剛性や耐熱性の向上および成形時収縮の低減と異方性の低減効果がより向上する傾向にある。また、樹脂組成物の15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、3質量%以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面外観がより良くなる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、非繊維状無機充填剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0091】
<<繊維状無機充填剤>>
繊維状無機充填剤は、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
繊維状無機充填剤の原料は、ガラス、炭素(炭素繊維等)、アルミナ、ボロン、セラミック、金属(スチール等)等の無機物、および、植物(ケナフ(Kenaf)、竹等を含む)、アラミド、ポリオキシメチレン、芳香族ポリアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、超高分子量ポリエチレン等の有機物などが挙げられ、ガラスが好ましい。
【0092】
本実施形態における樹脂組成物は、繊維状無機充填剤として、ガラス繊維を含むことが好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、Sガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料をいう。ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が通常1~25μm、好ましくは5~17μmである。数平均繊維径を1μm以上とすることにより、樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。数平均繊維径を25μm以下とすることにより、得られる構造体の外観が向上し、補強効果も向上する傾向にある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(すなわち、数平均繊維長1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(すなわち、数平均繊維長10~500μmのガラス繊維)などのいずれであってもよいが、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。
【0093】
ガラス繊維は、本実施形態における樹脂組成物の特性を大きく損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
【0094】
本実施形態の樹脂組成物の樹脂組成物における、繊維状無機充填剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、1質量部以上であり、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、40質量部以上であることが一層好ましく、50質量部以上であることがより一層好ましく、55質量部以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、剛性や耐熱性の向上および成形時収縮の低減と異方性の低減効果がより向上する傾向にある。また、前記非繊維状無機充填剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、150質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面外観の良化する傾向にある。
【0095】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他成分としては、スチレン系樹脂等の他の熱可塑性樹脂や各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
樹脂添加剤としては、具体的には、離型剤、安定剤(熱安定剤、光安定剤)、着色剤(顔料、染料)、反応性化合物、核剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、および、難燃剤、ならびに、必要に応じ配合される成分の合計が100質量%となる。
【0096】
<<スチレン系樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、スチレン系樹脂を含んでいてもよい。
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体、スチレン系単量体とスチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。スチレン系単量体とは、例えばスチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、メチルスチレン、tert-ブチルスチレンが挙げられる。本実施形態におけるスチレン系樹脂は、単量体単位のうち、50モル%以上がスチレン系単量体である。
スチレン系樹脂としては、より具体的には、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン-IPN型ゴム共重合体等の樹脂等が挙げられる。
本実施形態では、スチレン系樹脂が、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)であることが好ましく、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)であることがより好ましい。
【0097】
アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)中のスチレン単量体の含有率は、50~95質量%が好ましく、65~92質量%がより好ましい。
【0098】
スチレン系樹脂の重量平均分子量は、通常、50,000以上であり、好ましくは100,000以上であり、より好ましくは150,000以上であり、また、通常、500,000以下であり、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは300,000以下である。また、数平均分子量は、通常、10,000以上であり、好ましくは30,000以上であり、より好ましくは50,000以上であり、また、好ましくは500,000以下であり、より好ましくは300,000以下である。
【0099】
スチレン系樹脂の、JIS K7210(温度200℃、荷重5kgf)に準拠して測定されるメルトフローレイト(MFR)は、0.1~30g/10分であることが好ましく、0.5~25g/10分であることがより好ましい。MFRが0.1g/10分以上であると流動性が向上する傾向にあり、30g/10分以下であると耐衝撃性が向上する傾向にある。
【0100】
このようなスチレン系樹脂の製造方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいは塊状重合法等の公知の方法が挙げられる。
スチレン系樹脂の詳細は、特開2017-052925号公報の段落0061~0069の記載、特開2017-052262号公報の段落0021~0031の記載、段落0057~0064の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
本実施形態の樹脂組成物がスチレン系樹脂を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましく、2.0質量部以上であることが一層好ましく、3.0質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、収縮率の低減や外観不良の抑制という効果がより向上する傾向にある。また、前記スチレン系樹脂の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく10質量部以下であることがさらに好ましく、8.0質量部以下であることが一層好ましく、6.0質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ウェルド強度や衝撃強度の低下抑制という効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、スチレン系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0102】
<<離型剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、モンタン酸エステルワックス、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸、エステル化合物、エチレンビスステアロアマイドなどが例示され、モンタン酸エステルワックス、ポリオレフィンワックス、合成ワックスおよびエチレンビスステアロアマイドから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
離型剤としては、具体的には、特開2018-070722号公報の段落0063~0077の記載、特開2019-123809号公報の段落0090~0098の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0103】
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.08質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上にすることにより、成形時の離型性が向上する傾向にある。また、前記離型剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、5.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.7質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下にすることにより、耐加水分解性の低下を抑制し、射出成型時の金型汚染、アウトガス量を低減することができる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0104】
<<安定剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤(光安定剤および/または熱安定剤)を含んでいてもよい。
安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、硫黄系安定剤等が例示される。本実施形態では、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物および硫黄系安定剤を併用することも好ましい。このように3種の安定剤を併用することにより、熱安定性がより向上し、さらに熱安定性が長期に継続する傾向にある。
安定剤としては、具体的には、特開2021-063196号公報の段落0067~0075の記載、特開2018-070722号公報の段落0046~0057の記載、特開2019-056035号公報の段落0030~0037の記載、国際公開第2017/038949号の段落0066~0078の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0105】
本実施形態の樹脂組成物が安定剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、溶融混練時や成形時、さらに成形品としての使用中での、樹脂の熱劣化や酸化劣化の抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記安定剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、安定剤などの添加剤の凝集などによる外観や物性へ悪影響を効果的に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0106】
<<着色剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤(染料および/または顔料)を含んでいてもよい。着色剤としては、染料であっても、顔料であってもよいが、顔料が好ましい。
着色剤としては、有機着色剤および無機着色剤のいずれでもよい。また、有彩色着色剤および無彩色着色剤のいずれであってもよい。
着色剤としては、特開2021-101020号公報の段落0121~0123の記載、特開2019-188393号公報の段落0088~0090の記載が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。中でも、ファーネスブラックが好ましい。その数平均粒径には特に制限はないが、5~60nm程度であることが好ましい。
【0107】
カーボンブラックのDBP吸油量(単位:cm3/100g)は40~300cm3/100gであることが好ましい。上限値は、300cm3/100g以下であることが好ましく、200cm3/100g以下であることがより好ましく、150cm3/100g以下であることがさらに好ましく、100cm3/100g以下であってもよい。また、下限値は40cm3/100g以上が好ましく、50cm3/100g以上がより好ましく、60cm3/100g以上がさらに好ましい。前記上下限値以内とすることにより、成形品の外観が向上する傾向にある。なお、DBP吸油量(単位:cm3/100g)はJIS K6217に準拠して測定することができる。
カーボンブラックの数平均粒子径は、5~60nmであることが好ましい。上限値は、60nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、25nm以下であることがより一層好ましい。下限値は10nm以上であることが好ましく、13nm以上であることがより好ましく、16以上であることがさらに好ましく、19nm以上であることがより一層好ましい。前記上下限値以内とすることにより、成形品の外観が向上する傾向にある。数平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法-電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して求めることができる。
【0108】
カーボンブラックは、熱可塑性樹脂、好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂やポリスチレン系樹脂と予め混合したマスターバッチとして配合することにより、カーボンブラックの分散度が高まり、成形品の外観が向上する傾向にある。また、ポリスチレン系樹脂を用いた場合は漆黒性が向上する傾向にあるため好ましい。
【0109】
本実施形態の樹脂組成物が着色剤(好ましくはカーボンブラック)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、着色効果がより効果的に発揮される。また、前記着色剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、4質量部以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0110】
<<反応性化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、反応性化合物を含んでいてもよい。反応性化合物としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基(環)を有する化合物、オキサジン基(環)を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、および、アミド基を有する化合物からなる群から選ばれた1種以上であるのが好ましく、特にエポキシ化合物であることが耐加水分解性を向上する傾向にあり、アウトガスを抑制する傾向にあるため好ましい。
エポキシ化合物としては、単官能エポキシ化合物であっても、多官能エポキシ化合物であってもよいが、多官能エポキシ化合物が好ましい。多官能エポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環化合物型ジエポキシ化合物、グリシジルエーテル類、エポキシ化ポリブタジエン、さらに具体的には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシドなどの脂環化合物型エポキシ化合物をいずれも好ましく用いることができる。
また、エポキシ化合物は、グリシジル基含有化合物を構成成分とする共重合体であってもよい。例えばα,β-不飽和酸のグリシジルエステルと、α-オレフィン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレンからなる群より選ばれる1種または2種以上のモノマーとの共重合体が挙げられる。
また、エポキシ化合物は、エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体も好ましく、さらに他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体を構成するスチレン系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル等が挙げ られ、好ましくはグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートであり、特に好ましくはグリシジルメタクリレートである。スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビ ニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、トリブロモスチレンなどが挙げられ、スチレン、α-メチルスチレンがより好ましく、特にスチレンが好ましい。エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート-スチレン-メチル(メタ)アクリレート等がアウトガスを抑制する傾向にあるため特に好ましい。
【0111】
上記の他、反応性化合物としては、特開2020-199755号公報の段落0038~0050、特開2020-125468号公報の段落0043の記載を参酌でき、これの内容は本明細書に組み込まれる。
【0112】
本実施形態の樹脂組成物が反応性化合物を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、前記反応性化合物の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、7.0質量部以下であることがさらに好ましく、2.0質量部以下であることがさらにより好ましく1.0質量部以下であることが特に好ましく、0.5質量部以下、0.1質量部以下であってもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、反応性化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0113】
<<核剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、結晶化速度を調整するために、核剤を含んでいてもよい。核剤の種類は、特に限定されるものではないが、無機核剤であっても、有機核剤であってもよく、有機核剤がより好ましい。
無機核剤としては、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、リン酸ナトリウム、窒化珪素および二硫化モリブデン等が挙げられ、中でもタルク、硫酸バリウム、リン酸ナトリウムおよび窒化ホウ素が好ましく、さらにはタルクが樹脂組成物の剛性を高める傾向にあり、離型性を高める傾向にあるためより好ましい。
【0114】
有機核剤としては、有機アルカリ金属塩が好ましく、芳香族カルボン酸または脂肪酸のアルカリ金属塩がより好ましく、脂肪酸(好ましくは炭素数5~50の脂肪酸)のアルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、より好ましくはナトリウム塩)がさらに好ましい。有機核剤の具体例としては、アイオノマー、安息香酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウムが挙げられ、中でもステアリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウムがより好ましく、モンタン酸ナトリウムが樹脂組成物の剛性と靭性のバランスが良好な傾向にあるためさらに好ましい。
なお、本実施形態で用いる核剤の酸価は、10mg/1g-KOH以下であることが好ましく、また、0mg/1g-KOH以上であることが好ましい。
酸価は、JIS K 0070-1992に従って測定される。
【0115】
本実施形態の樹脂組成物が核剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、用途に応じて、例えば、特に離型性が求められる用途では、0.15質量部以上であることが一層好ましく、0.2質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形品の離型性、機械的強度が向上する傾向にある。
前記含有量の上限は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましく、4質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下にすることにより、組成物の分解が抑制されることで、機械的強度が向上する傾向にある。また、湿熱試験後の強度保持率が高くなる傾向にある。
【0116】
本実施形態の樹脂組成物は、難燃性に優れていることが好ましい。例えば、前記樹脂組成物を1.6mm厚さの試験片に成形し、UL-94試験を行ったとき、V-0を満たすことが好ましい。
難燃性は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0117】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の調製の常法によって製造できる。通常は各成分および所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸または二軸押出機で溶融混練する。また、各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本実施形態の樹脂組成物を調製することもできる。着色剤等の一部の成分を熱可塑性樹脂と溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、無機充填剤(特に、繊維状無機充填剤)を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220~300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0118】
<成形品の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、公知の方法に従って成形される。
成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形法、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。
射出成形法の詳細は、特許第6183822号公報の段落0113~0116の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、射出成形等、金型成形する際の金型温度は、40~150℃であることが好ましい。
【0119】
<複合体>
本実施形態の樹脂組成物を成形して得られた成形品は、同材または他の部材と接着剤を介して接合し、複合体とすることができる。すなわち、本実施形態の複合体は、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品と、他の部材との間に接着剤層を有するものである。従って、本実施形態の樹脂組成物および成形品は、他の部材との接着用に用いることができる。
他の部材としては、樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)、金属、および、ガラスの少なくとも1種を含む部材が挙げられる。
接着剤は、2つのものを貼り合わせる物質をいい、通常は、熱可塑性ではない物質である。前記接着剤としては、シリコーン系接着剤(未変性シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤)、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着等が例示され、シリコーン系接着剤(未変性シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤)、エポキシ系接着剤、および、ウレタン系接着剤が好ましく、シリコーン系接着剤がより好ましい。接着剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。接着剤層の厚さは、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、10000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましい。
【0120】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物から形成された成形品として用いられる。樹脂組成物ないし成形品の用途としては、特に定めるものでは無く、車輌部品用または電気電子部品用であることが好ましい。
また、車輛部品としては、ランプにおけるハウジング、リフレクター、ベゼル、エクステンションや、コネクタ、ECUケース、車載カメラやミリ波レーダー用の筐体、バッテリーケース、センサー筐体などが挙げられる。
電気電子部品としては、パソコン、ゲーム機、テレビなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等のハウジング、カバー、キーボード、ボタン、スイッチ部材、電力計用筐体、バッテリーケース、電池搬送用トレイ、リレー、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、グリル調理機器部品などが挙げられる。
【実施例0121】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0122】
【0123】
【0124】
上記成分について、ポリエチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性樹脂成分は、鉄元素量が検出限界未満であった。
PETの詳細は以下の通りである。
【0125】
【表3】
上記においてn.dは、検出限界未満であったことを示す。
検出限界値:Fe 0.3(μg/g)、Ca 0.2(μg/g)、Na 0.2(μg/g)、Ti 0.2(μg/g)、Ge 3(μg/g)
【0126】
<固有粘度の測定>
フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒中に、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを、濃度が1.00g/dLとなるように110℃で1時間撹拌して溶解させた。その後、30℃まで冷却した。全自動溶液粘度計にて、30℃で試料溶液の落下秒数、溶媒のみの落下秒数をそれぞれ測定し、下記式(A)により固有粘度を算出した。
固有粘度=((1+4KHηsp)0.5-1)/(2KHC) …(A)
ここで、ηsp=η/η0-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
全自動溶液粘度計は、柴山科学社製のものを用いた。
【0127】
<DSCによる測定>
ポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶化温度、結晶化熱、融点、融解熱を、JIS K7121に基づいて示差走査熱量測定機(DSC)を用いて測定した。窒素雰囲気下で40℃から300℃まで昇温速度20℃/分にて昇温し、300℃で3分保持した後、降温速度-20℃/分にて40℃まで降温した。これを1サイクルとした。昇温時の結晶化よる最大ピークの温度を結晶化温度Tc1とし、結晶化熱をΔHTc1として求めた。融解時のピークより融点Tmと融解熱ΔHTmを求めた。降温時の結晶化による最大ピーク温度を結晶化温度Tc2、結晶化熱ΔHTc2として求めた。昇温時と降温時の結晶化時のピークの結晶化熱ΔHの絶対値が3J/g未満の場合、または、ピークがない場合は、上記表において「ピークなし」とした。
なお、融解熱ΔHTmは、吸熱ピークとベースラインで囲まれる面積、結晶化熱ΔHTC1は、昇温の過程において融点未満に確認される結晶化の発熱ピークとベースラインで囲まれる面積、結晶化熱ΔHTC2は、降温の過程において発熱ピークとベースラインで囲まれる面積として求めた。
示差走査熱量測定機は、(株)日立ハイテクサイエンス社製「DSC7020」を用いた。
【0128】
<MVRの測定>
MVRは、メルトインデクサーを用いて、上記で得られたペレットを、265℃、荷重5kgfの条件にて、単位時間当たりの溶融流動体積MVR(単位:cm3/10分)を測定した。
メルトインデクサーは、タカラ工業社製を用いた。
【0129】
<イソフタル酸量、DEG量の測定>
ポリエチレンテレフタレート樹脂中のイソフタル酸量、DEG(ジエチレングリコール)量は、1H-NMRにて測定した。
1H-NMRの測定は、AVANCIII(ブルカー・バイオスピン社製)を用いて、測定した。
【0130】
<末端カルボキシル基量(AV)の測定>
ポリエチレンテレフタレート樹脂を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間、乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mLを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1~2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル試料を溶解させずに同様の操作を実施し、以下の式によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出した。
末端カルボキシル基量(当量/トン)=(a-b)×0.1×f/w
(ここで、aは、滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、bは、無試料で滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、wはポリエステルの試料の量(g)、fは、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。)
【0131】
<GPCによる測定>
ポリエチレンテレフタレート樹脂の分子量(Mw、Mn、Mz)は以下のように測定した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂を秤量し、所定量のHFIP(ヘキサフルオロ-2-プロパノール)、10mM-CF3COONa溶離液を加え、室温で一晩静置溶解させた。続いて、0.45μmのPTFEカートリッジフィルターでろ過を行った。溶解した試料(ろ液)について、GPCにより分子量を測定した。なお、検量線は標準PMMAを用いた3次近似曲線を用い、PMMA換算分子量とした。
GPCによる測定に際し、カラムはHLC-8420GPC(東ソー製)を用いた。
【0132】
2.実施例1~4、比較例1~3
<コンパウンド>
表1または表2に示すガラス繊維以外の各成分を表4に示す割合(質量部)にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)のホッパーに投入し、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給し、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0133】
<引張強さ>
上記で得られた樹脂ペレットを120℃で5時間乾燥したのちISO多目的試験片(厚さ4mm)を、射出成形機(日本製鋼所社製「J-85AD-60H」)を用いて、シリンダー温度265℃、金型温度80℃の条件で射出成形した。
成形した多目的ISO多目的試験片を用い、ISO527-1およびISO527-2に準拠し、引張強さ(単位:MPa)を測定した。
【0134】
<ノッチ無しシャルピー衝撃強さ>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J-85AD-60H」)にて、シリンダー温度265℃、金型温度80℃の条件下で、JIS K7139多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
前記多目的試験片(4mm厚)を使用し、JIS K7111-1規格に基づいて、ノッチ無しシャルピー衝撃強さ(単位:KJ/m2)を測定した。
【0135】
<難燃性>
<<試験片の製造>>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J -50AD」)にて、シリンダー温度265℃、金型温度80℃の条件下で、燃焼試験片(12.7mm幅×127mm長さ×1.6mm厚)を射出成形した。
【0136】
<<燃焼試験>>
得られた燃焼試験用試験片について、アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片を用いて垂直燃焼試験を行い、1回目接炎後の燃焼時間(t1)と2回目の接炎後の燃焼時間(t2)をそれぞれ計測し、最大燃焼時間と総燃焼時間(T1+T2)を求めた。最大燃焼時間は、5本試験した際のt1またはt2の最も大きい値である。総燃焼時間(T1+T2)は、1回目の接炎後の燃焼時間(t1)の燃焼試験片5本分の合計時間(T1)と、2回目の接炎後の燃焼時間(t2)の燃焼試験片5本分の合計時間(T2)の、合計(T1+T2)である。
【0137】
<接着強度>
上記で作製したISO多目的試験片(ダンベル片)のチャック部にNitto社製NITOFLON粘着テープ(10mm幅×0.18mm厚)を貼ることで20mm×20mm四方の接着剤塗布エリアを作製した。その後、このエリアに信越化学社製シリコーン接着剤KE-1875を1g程度塗布し、もう一本の同種材ISO多目的試験片のチャック部を張り合わせバインダークリップで固定した。
試験片を120℃×1時間熱風オーブン内に置き、接着剤を固化させ取り出し後、23℃×50%RHの雰囲気下で48時間放置した。その後、島津製作所製AUTOGRAPH AGS-X 10kNを使用して引張速度5mm/分で引張試験を行い、接着強度を測定した。
【0138】
【0139】
上記表から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、難燃性に加え、引張強さ、および、接着強度に優れていた。さらに、難燃剤の添加量を控えめにしても、高い難燃効果を達成できた。