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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081377
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】流動性改良剤および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/668 20060101AFI20230602BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20230602BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20230602BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C08G63/668
C08G81/00
C08L69/00
C08L67/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192313
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021194604
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】光永 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲朗
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J031
【Fターム(参考)】
4J002CF052
4J002CF062
4J002CF072
4J002CF102
4J002CG001
4J002FD022
4J029AA01
4J029AC02
4J029AC03
4J029AC05
4J029AD01
4J029AE01
4J029BA03
4J029BA05
4J029CB06A
4J029HA01
4J029HB01
4J029JF361
4J029KE02
4J029KE05
4J031AA49
4J031AB04
4J031AC03
4J031AD01
4J031AE15
4J031AF10
(57)【要約】
【課題】強度、色調および透明性に優れる成形体を提供できかつ流動性に優れるポリカーボネート系樹脂組成物を提供し得る、新規の流動性改良剤を提供すること。
【解決手段】芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有するポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を含み、前記ポリエーテルグリコール単位は、特定の構成単位を含み、かつ芳香族基を含まない、ポリカーボネート系樹脂用の流動性改良剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有するポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を含み、
前記ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含み、かつ芳香族基を含まない、ポリカーボネート系樹脂用の流動性改良剤。
【請求項2】
ゲルマニウム化合物をさらに含む、請求項1に記載の流動性改良剤。
【請求項3】
前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は0.20~1.00の範囲である、請求項1に記載の流動性改良剤。
【請求項4】
前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は0.30~0.60の範囲である、請求項1に記載の流動性改良剤。
【請求項5】
前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体において、前記芳香族ポリエステル単位および前記ポリエーテルグリコール単位の合計を100質量%としたとき、前記芳香族ポリエステル単位は50質量%~90質量%であり、前記ポリエーテルグリコール単位は10質量%~50質量%である、請求項1に記載の流動性改良剤。
【請求項6】
前記芳香族ポリエステル単位は、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリプロピレンテレフタレート単位およびポリブチレンテレフタレート単位からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の流動性改良剤。
【請求項7】
前記ポリエーテルグリコール単位は、前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれる前記ポリエーテルグリコール単位の合計100質量%中、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を50質量%以上含む、請求項1に記載の流動性改良剤。
【請求項8】
前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれる全構成単位100質量%中、前記芳香族ポリエステル単位および前記ポリエーテルグリコール単位を合計で、50質量%以上含む、請求項1に記載の流動性改良剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の流動性改良剤と、ポリカーボネート系樹脂と、を含む、樹脂組成物。
【請求項10】
ポリカーボネート系樹脂40.0質量部~99.5質量部、およびポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体0.5質量部~60.0質量部を基材樹脂として含む樹脂組成物であって、
前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有し、
前記ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含み、かつ芳香族基を含まない、樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【請求項12】
請求項10に記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性改良剤および樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系樹脂は、エンジニアリングプラスチックの中でも最高の耐衝撃性を有する樹脂として知られている。そのため、ポリカーボネート系樹脂は、これらの特徴を生かして種々の分野に使用されている。しかし、ポリカーボネート系樹脂は、成形加工性が悪いなどの欠点を有している。
【0003】
一方、熱可塑性ポリエステルは、成形加工性に優れているが、耐衝撃性に劣るという欠点を有している。
【0004】
このようなそれぞれの材料の特徴を生かし、欠点を補完することを目的として種々の樹脂組成物が提案されている。例えば、自動車部品等に要求される耐衝撃性および成形性等を同時に満足させる試みが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート系樹脂およびポリエステル-ポリエーテル共重合体を基材樹脂として含む樹脂組成物であって、前記ポリエステル-ポリエーテル共重合体が、芳香族ポリエステル単位、および、芳香族基を含む変性ポリエーテル単位からなる共重合体である、樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/162043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術は、ポリカーボネート系樹脂組成物の流動性、並びに、当該ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形体の強度、色調および透明性の観点からは、さらなる改善の余地があった。
【0008】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、強度、色調および透明性に優れる成形体を提供できかつ流動性に優れるポリカーボネート系樹脂組成物を提供し得る、新規の流動性改良剤、およびその関連技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の一実施形態に係る流動性改良剤は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有するポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を含み、前記ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含み、かつ芳香族基を含まない、ポリカーボネート系樹脂用の流動性改良剤である。
【0011】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有し、前記ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含み、かつ芳香族基を含まない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、強度、色調および透明性に優れる成形体を提供できかつ流動性に優れるポリカーボネート系樹脂組成物を提供し得る、新規の流動性改良剤、およびその関連技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0014】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
ポリカーボネート系樹脂は、粘度が高く流動性が低いため、成形加工するために高温での処理を必要とすることがある。そのため、ポリカーボネート系樹脂には、成形加工における取扱い性(成形加工性)を高める観点から、流動性の改善が求められる場合がある。さらに、ポリカーボネート系樹脂には、良好な強度および良好な外観(色調および透明性等)を有する成形体を実現できることもまた求められる。ポリカーボネート系樹脂の流動性を改善する方法として、ポリカーボネート系樹脂に対して、低分子化合物および/または高分子化合物などの種々の流動性改良剤を添加する方法が挙げられる。
【0015】
流動性改良剤の一例として、特許文献1に開示されるポリエステル-ポリエーテル共重合体が挙げられる。当該ポリエステル-ポリエーテル共重合体は、芳香族ポリエステル単位と、ビスフェノール骨格を有する変性ポリエーテル単位との共重合体であり、ポリカーボネート系樹脂に流動性を付与することができる。
【0016】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の樹脂組成物は、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体ポリカーボネート系樹脂の強度、色調および透明性の観点において、さらなる改善の余地があることが分かった。
【0017】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、強度、色調および透明性に優れる成形体を提供できかつ流動性に優れるポリカーボネート系樹脂組成物を提供し得る、新規の流動性改良剤、およびその関連技術を提供することである。
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の知見を新たに見出し、本発明を完成するに至った:芳香族ポリエステル単位と、芳香族基を含まないポリエーテルグリコール単位とを有するポリエステル-ポリエーテル共重合体を含む流動性改良剤は、流動性に優れるポリカーボネート系樹脂組成物であって、かつ、強度、色調および透明性に優れる成形体を提供し得るポリカーボネート系樹脂組成物を提供できること。
【0019】
〔2.流動性改良剤〕
本発明の一実施形態に係る流動性改良剤は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有するポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を含み、前記ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含み、かつ芳香族基を含まない、ポリカーボネート系樹脂用の流動性改良剤である。本明細書において、本発明の一実施形態に係る流動性改良剤を、以下「本流動性改良剤」と称する場合もある。
【0020】
本流動性改良剤は、上述した構成を有するため、流動性に優れるポリカーボネート系樹脂組成物であって、かつ、強度、色調および透明性に優れる成形体を提供し得るポリカーボネート系樹脂組成物を提供できるという利点を有する。
【0021】
(2-1.ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体)
本流動性改良剤は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を含む。当該ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有する。
【0022】
(芳香族ポリエステル単位)
本明細書において、「芳香族ポリエステル単位」とは、芳香族ポリエステルに由来する構成単位である。
【0023】
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体における芳香族ポリエステル単位は、流動性改良剤において、ポリカーボネート系樹脂との相溶性を改善するためのハードセグメントとして機能する。
【0024】
芳香族ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(a)芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体と、(b)ジオールおよびそのエステル形成性誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体と、の交互重縮合体が挙げられる。ここで、「芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体」とは、「エステル形成可能な官能基(例えばカルボキシ基)を有し、エステル形成可能な、芳香族ジカルボン酸の誘導体」を意図する。また、「ジオールのエステル形成性誘導体」とは、「エステル形成可能な官能基(例えばヒドロキシ基)を有し、エステル形成可能な、ジオールの誘導体」を意図する。それ故、芳香族ポリエステル単位とは、例えば、(a)芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体に由来する構成単位1つと、(b)からなる群から選択される1種以上の単量体に由来する構成単位1つと、が結合してなる構成単位であってもよい。
【0025】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸およびジフェノキシエタンジカルボン酸などが挙げられる。経済性の観点から、これらの中でも、芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸が好ましい。換言すれば、芳香族ポリエステル単位は、その構成単位中に、テレフタル酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0026】
芳香族ポリエステル単位は、その構成単位中に、上述の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位に加えて、上述の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位よりも少ない割合(例えば、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位の合計100質量部に対して、15質量部以下)で、芳香族ジカルボン酸以外の単量体(例えば、(a)オキシ安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸、(b)アジピン酸およびセバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ならびに(c)シクロへキサン-1,4-ジカルボン酸などの肪環族ジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の単量体)に由来する構成単位を含んでもよい。
【0027】
芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、芳香族ジカルボン酸ジアルキルが挙げられる。芳香族ジカルボン酸ジアルキルのアルキル基としては、エステル交換反応性の観点から、メチル基が好ましい。
【0028】
ジオールは、エステル単位を形成する低分子量グリコ一ル成分であり得る。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、へキサンジオール、デカンジオールおよびシクロへキサンジメタノールなどの、炭素数2~10の低分子量グリコールが挙げられる。これらの中でも、入手の容易さの観点から、ジオールとして、エチレングリコール、トリメチレングリコールおよびテトラメチレングリコールからなる群から選択される1種以上が好ましい。換言すれば、芳香族ポリエステル単位は、その構成単位中に、エチレングリコール単位、トリメチレングリコール単位およびテトラメチレングリコール単位からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0029】
芳香族ポリエステル単位の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリトリメチレンテレフタレート単位、ポリプロピレンテレフタレート単位、ポリテトラメチレンテレフタレート単位およびポリブチレンテレフタレート単位などが挙げられる。ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、上述した芳香族ポリエステル単位のうち、1種類を単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0030】
芳香族ポリエステル単位は、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリプロピレンテレフタレート単位およびポリブチレンテレフタレート単位からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、ポリエチレンテレフタレート単位およびポリプロピレンテレフタレート単位からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート単位を含むことが特に好ましい。当該構成により、(a)芳香族ポリエステル単位が構成するハードセグメントの融点が高くなるため、本流動性改良剤を含む成形体が高い耐熱性を発現できるという利点、および(b)当該成形体が耐薬品性を発現できるという利点を有する。
【0031】
芳香族ポリエステル単位は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれる芳香族ポリエステル単位の合計100質量%中、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリプロピレンテレフタレート単位およびポリブチレンテレフタレート単位からなる群より選択される1種以上を、50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。当該構成により、(a)芳香族ポリエステル単位が構成するハードセグメントの融点がより高くなるため、本流動性改良剤を含む成形体がより高い耐熱性を発現できるという利点、および(b)当該成形体が優れた耐薬品性を発現できるという利点を有する。芳香族ポリエステル単位は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれる芳香族ポリエステル単位の合計100質量%中、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリプロピレンテレフタレート単位およびポリブチレンテレフタレート単位からなる群より選択される1種以上を100質量%含んでいてもよい。すなわち、芳香族ポリエステル単位は、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリプロピレンテレフタレート単位およびポリブチレンテレフタレート単位からなる群より選択される1種以上のみから構成されていてもよい。
【0032】
(ポリエーテルグリコール単位)
本明細書において、「ポリエーテルグリコール単位」とは、ポリエーテルグリコールに由来する構成単位であり、その構成単位中に、「-(C2nO)-」の一般式で表されるオキシアルキレン単位を含む構成単位を意図する。一般式中、nは、オキシアルキレン単位の炭素数を表し、1以上の整数である。オキシアルキレン単位は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。換言すれば、「ポリエーテルグリコール単位」は、「ポリオキシアルキレン単位」である。
【0033】
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体におけるポリエーテルグリコール単位は、樹脂組成物の流動性を改善するためのソフトセグメントとして機能する。
【0034】
ポリエーテルグリコール単位としては、特に限定されず、例えば、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリトリメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位などが挙げられる。ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含む。当該構成により、入手が容易であるポリエーテルグリコール単位を含む化合物を原料として、ガラス転移温度が低いソフトセグメントを構成することができる、という利点を有する。
【0035】
ポリエーテルグリコール単位は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位およびポリエチレングリコール単位からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位およびポリプロピレングリコール単位からなる群より選択される1種以上を含むことがさらに好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位を含むことが特に好ましい。当該構成により、入手がより容易であるポリエーテルグリコール単位を含む化合物を原料として、ガラス転移温度が特に低いソフトセグメントを構成することができる、という利点を有する。
【0036】
ポリエーテルグリコール単位は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれるポリエーテルグリコール単位の合計100質量%中、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。当該構成により、入手がより容易であるポリエーテルグリコール単位を原料として、ガラス転移温度がより低いソフトセグメントを構成することができる、という利点を有する。ポリエーテルグリコール単位は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれるポリエーテルグリコール単位の合計100質量%中、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を100質量%含んでいてもよい。すなわち、ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上のみから構成されていてもよい。
【0037】
ポリエーテルグリコール単位の由来(原料)となるポリエーテルグリコールまたはポリエーテルグリコールのエステルの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、300~5000が好ましく、350~4500がより好ましく、400~4000がより好ましく、450~3500がより好ましく、500~3000がより好ましく、550~2500がさらに好ましく、600~2000がよりさらに好ましく、600~1500が特に好ましい。当該構成により、入手がより容易であるポリエーテルグリコール単位を原料として、ガラス転移温度がより低いソフトセグメントを構成することができる、という利点を有する。換言すれば、ポリエーテルグリコール単位は、上述した範囲内の重量平均分子量(Mw)を有するポリエーテルグリコールまたはポリエーテルグリコールのエステルに由来する構成単位である。なお、ポリエーテルグリコールまたはポリエーテルグリコールのエステルの重量平均分子量(Mw)は、展開液LiBr0.02mol/lのジメチルアセトアミド溶液を用いたGPCで測定できる。
【0038】
本発明者は、鋭意検討の過程にて、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体中のオキシアルキレン単位の数が、Izod衝撃強度(kJ/m)、色調YI(-)および/またはヘイズ(%)に影響を与えうるという驚くべき新規知見を得た。ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体1g中のオキシアルキレン単位の数(オキシアルキレン単位数/g 共重合体)は、1.00~6.00が好ましく、1.25~5.75がより好ましく、1.25~5.50がさらに好ましく、1.50~5.25が特に好ましい。当該構成により、入手がより容易であるポリエーテルグリコール単位を原料として、ガラス転移温度がより低いソフトセグメントを構成することができる、という利点を有する。ここで、「ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体1g中のオキシアルキレン単位の数(オキシアルキレン単位数/g 共重合体)」は、以下の式で算出して得られる値である:
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体1g中のオキシアルキレン単位の数(オキシアルキレン単位数/g 共重合体)=[ポリエーテルグリコール単位の由来(原料)となるポリエーテルグリコールまたはポリエーテルグリコールのエステルの重量平均分子量(Mw)]×[ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体における、ポリエーテルグリコール単位の量(質量%)(ただし、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位の合計を100質量%とする)]/(100×オキシアルキレン単位の分子量)。
【0039】
ポリエーテルグリコール単位は、芳香族基を含まない。当該構成により、得られる流動性改良剤は、強度に優れる成形体を提供し得るポリカーボネート系樹脂組成物を提供できるという利点を有する。本明細書において、「芳香族基」とは、ベンゼン環に由来する芳香族環を有する官能基を意図する。
【0040】
芳香族基の具体例としては、(a)フェニル基、ベンジル基、トリル基、ベンジル基、ベンゾイル基およびフェニレン基などの単環式芳香族基、および(b)ビフェニリル基、ナフチル基およびナフチレン基などの多環式芳香族基、が挙げられる。
【0041】
(他の構成単位)
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、上述した芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位以外の構成単位を有してもよい。本明細書において、「ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体における、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位以外の構成単位」を、以下「他の構成単位」と称する場合がある。
【0042】
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体が含み得る他の構成単位としては、特に限定されないが、例えば(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸などの芳香族化合物(b)カプロラクタム類、カプロラクトン類、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、脂環族ジカルボン酸および脂環族ジオールなどの脂環族化合物、並びに(c)芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールなどの硫黄含有芳香族化合物、などの化合物に由来する構成単位が挙げられる。他の構成単位は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0043】
(構成単位の含有量)
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体において、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位の合計を100質量%としたとき、(a)芳香族ポリエステル単位が50質量%~90質量%であり、かつポリエーテルグリコール単位が10質量%~50質量%であることが好ましく、(b)芳香族ポリエステル単位が55質量%~85質量%であり、かつポリエーテルグリコール単位が15質量%~45質量%であることがより好ましく、(c)芳香族ポリエステル単位が60質量%~80質量%であり、かつポリエーテルグリコール単位が20質量%~40質量%であることがより好ましく、(d)芳香族ポリエステル単位が65質量%~75質量%であり、かつポリエーテルグリコール単位が25質量%~35質量%であることがさらに好ましい。当該構成によれば、本流動性改良剤は、強度、色調および透明性に加えて耐熱性にも優れる成形体を提供し得、かつ流動性により優れるポリカーボネート系樹脂組成物を提供することができる、という利点を有する。
【0044】
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれる全構成単位100質量%中、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を合計で、50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。当該構成により、本流動性改良剤を含む樹脂組成物は、より優れた流動性を発現できると共に、当該樹脂組成物を成形してなる成形体はより優れた強度を発現できるという利点を有する。ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれる全構成単位100質量%中、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を合計で100質量%含んでいてもよい。すなわち、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位の2つの構成単位のみから構成されていてもよい。
【0045】
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体が他の構成単位を有する場合、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位の合計100質量部に対して、他の構成単位を、0.1質量部~30質量部含むことが好ましく、0.1質量部~20質量部含むことがより好ましく、0.1質量部~15質量部含むことがより好ましく、0.1質量部~10質量部含むことがさらに好ましい。当該構成によれば、本流動性改良剤は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位による利点を十分に発現しつつ、他の構成単位による機能も発現することができる。
【0046】
(共重合の様式)
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体における、構成単位の結合様式(換言すれば原料となる単量体の共重合の様式)は、適宜に選択することができる。構成単位の結合様式(原料の単量体の共重合の様式)の具体例としては、ランダム結合(ランダム重合)、ブロック結合(ブロック重合)、グラフト結合(グラフト重合)および交互結合(交互重合)などが挙げられる。構成単位の結合様式は、ブロック結合(ブロック重合)であることが好ましい。当該構成により、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体において、芳香族ポリエステル単位がより好適にハードセグメントとして機能し、ポリエーテルグリコール単位がより好適にソフトセグメントとして機能することができる。
【0047】
(ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の含有量)
本流動性改良剤は、本流動性改良剤の合計100質量%中、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を、70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。当該構成によれば、本流動性改良剤は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の利点を十分に発現することができる。
【0048】
(ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の固有粘度(IV値))
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の固有粘度(IV値)は、0.20~1.00の範囲であることが好ましく、0.30~0.80の範囲であることがより好ましく、0.30~0.60の範囲であることがさらに好ましく、0.30~0.50の範囲であることが特に好ましい。当該構成によれば、本流動性改良剤は、強度により優れた成形体を提供し得、かつ流動性により優れたポリカーボネート系樹脂組成物を提供することができる。なお、本明細書において、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は、実施例に記載される方法によって測定される値を意図する。
【0049】
ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は、例えばポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の粘度平均分子量を適宜に調整することによって、上述の好ましい範囲内に調整してもよい。
【0050】
本明細書において、IV値は、単位を伴わない無次元数として記載されるが、当該IV値と同一の値を有しかつ単位dl/gを伴う固有粘度の値へと変換して、記載され得る。IV値Xと、固有粘度Xdl/gとは互いに同義であり、相互交換可能に記載され得る。ここで、Xは、0以上の実数である。
【0051】
(2-2.ゲルマニウム化合物)
本流動性改良剤は、ゲルマニウム化合物を含んでもよい。ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の製造工程にて、触媒としてゲルマニウム化合物を使用する場合、得られる流動性改良剤はゲルマニウム化合物を含む場合がある。換言すれば、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体はゲルマニウム化合物を触媒として製造されたものであってもよい。ゲルマニウム化合物は、ポリカーボネート系樹脂に対して加水分解等の悪影響を及ぼさない。そのため、ポリカーボネート系樹脂用の本流動性改良剤がゲルマニウム化合物を含んでいても、流動性改良剤としての効果に悪影響はない。
【0052】
ゲルマニウム化合物の具体例としては:二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム酸化物;ゲルマニウムテトラエトキシドおよびゲルマニウムテトライソプロポキシドなどのゲルマニウムアルコキシド;水酸化ゲルマニウム;ゲルマニウムダリコレート;塩化ゲルマニウム;ならびに酢酸ゲルマニウム;などが挙げられる。ゲルマニウム化合物は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本流動性改良剤におけるゲルマニウム化合物の含有量は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の製造時に使用される、触媒としてのゲルマニウム化合物の使用量に依存し、特に限定されない。本流動性改良剤におけるゲルマニウム化合物の含有量は、例えば、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の質量に対して、50ppm~2000ppmであってもよく、100ppm~1000ppmであってもよい。
【0054】
(2-3.他の流動性改良剤の成分)
本流動性改良剤は、上述したポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体およびゲルマニウム化合物以外の成分を含んでもよい。本明細書において、「本流動性改良剤における、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体以外の成分」を、以下「他の流動性改良剤の成分」と称することがある。
【0055】
他の流動性改良剤の成分の具体例としては、(a)上述のポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の製造工程において用いられる触媒および溶媒、(b)原料に含まれる不純物、(c)当該製造工程において生成する副生成物、および(d)安定剤などの添加剤、などが挙げられる。安定剤としては、例えば、(a)IRGANOX(登録商標)1010(BASF社製、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などのヒンダードフェノール系安定剤、および(b)アデカスタブ(登録商標)2112(ADEKA社製、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)などのホスファイト系安定剤が挙げられる。
【0056】
(2-4.流動性改良剤の製造方法)
本流動性改良剤は、芳香族ポリエステル単位または当該単位の一部を有する化合物と、ポリエーテルグリコール単位または当該単位の一部を有する化合物とを、当業者に公知の任意の方法を用いて共重合することにより、製造することができる。
【0057】
本流動性改良剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の(x1)~(x4)の方法などが挙げられる:(x1)芳香族ジカルボン酸、ジオールおよびポリエーテルグリコールの直接エステル化法;(x2)(a)芳香族ジカルボン酸ジアルキル、(b)ジオール、並びに(c)ポリエーテルグリコールおよび/またはポリエーテルグリコールのエステル、のエステル交換法;(x3)芳香族ジカルボン酸ジアルキルおよびジオールのエステル交換中、またはエステル交換後に、反応混合物にポリエーテルグリコールを加えて、重縮合反応させる方法;並びに(x4)芳香族ポリエステルとポリエーテルグリコールとを混合した後、溶融減圧下でエステル交換する方法。
【0058】
芳香族ジカルボン酸、ジオールおよび芳香族ジカルボン酸ジアルキルの具体例については、前記(2-1.ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体)の項で説明したものと同じであるため、当該記載を援用し、ここでは説明を省略する。
【0059】
上述した(x1)~(x4)の方法において、得られるポリエステル-ポリエーテル共重合体のIV値を、反応時間の調整、反応系の減圧度の調整、単官能低分子化合物の添加、またはこれらの組み合わせによって、調整することができる。単官能低分子化合物としては、一価フェノール、炭素数1~20のモノアミン、脂肪族モノカルボン酸、カルボジイミド、エポキシおよび/またはオキサゾリンなどを用いることができる。一価フェノールの具体例としては、(a)フェノール、p-クレゾール、p-t-ブチルフェノール、p-t-オクチルフェノール、p-クミルフェノール、p-ノニルフェノール、p-t-アミルフェノールおよび4-ヒドロキシビフェニル、ならびに(b)これらの任意の混合物、などが挙げられる。一価フェノールのなかでも、沸点が高く重合が容易である観点から、p-t-ブチルフェノールおよび/またはp-クミルフェノールが好ましい。脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、(a)酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸およびイソ酪酸などの脂肪族モノカルボン酸、ならびに(b)これらの任意の混合物、などが挙げられる。脂肪族モノカルボン酸のなかでも、沸点が高く重合が容易である観点から、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸からなる群から選択される1種以上が好ましい。モノアミンの具体例としては、(a)メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンおよびジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン、ならびに(b)これらの任意の混合物、などが挙げられる。カルボジイミドの具体例としては、(a)ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t-ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-t-ブチルカルボジイミド、ジ-β-ナフチルカルボジイミド、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ポリ(2,4,6-トリイソプロピルフェニレン-1,3-ジイソシアネート)、1,5-(ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、2,6,2’,6’-テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、および(b)これらの任意の混合物、などが挙げられる。エポキシの具体例としては、(a)エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリエチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA-グリシジルエーテル、4,4’-ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、メタクリル酸グルシジルエステル、メタクリル酸グルシジルエステルポリマー、メタクリル酸グルシジルエステルポリマー含有化合物、および(b)これらの任意の混合物、などが挙げられる。オキサゾリンの具体例としては、(a)スチレン・2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、および(b)これらの混合物など、が挙げられる。
【0060】
また、上述した(x4)の方法において、用いる芳香族ポリエステルのIV値を適宜に選択することによって、得られるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値を調整することができる。0.20~1.00の範囲のIV値を有するポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を容易に得ることができることから、本流動性改良剤の製造方法において使用される芳香族ポリエステルのIV値は、0.4~1.0であることが好ましく、0.5~0.8であることがより好ましい。
【0061】
ポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリペンタメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシメチレンおよびポリプロピレングリコールが挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレングリコールとして、ソフトセグメントのガラス転移温度の観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。
【0062】
本流動性改良剤の製造方法では、重合反応を効率的に進行させるために触媒を用いてもよい。本流動性改良剤の製造方法では、重合反応の触媒として、ゲルマニウム化合物を用いることが好ましい。当該構成により、重合反応の反応速度を高めることができる。さらに、重合反応の触媒としてゲルマニウム化合物を用いる場合、ゲルマニウム化合物以外の触媒(例えば、アンチモン化合物など)を用いる場合と比較して、(a)本流動性改良剤が添加されたポリカーボネート系樹脂の加水分解反応、および(b)ポリカーボネート系樹脂と本流動性改良剤とのエステル交換反応、を減じることができる。
【0063】
ゲルマニウム化合物の具体例については、前記(2-2.ゲルマニウム化合物)の項で説明したものと同じであるため、当該記載を援用し、ここでは説明を省略する。
【0064】
本流動性改良剤の製造におけるゲルマニウム化合物の使用量は、特に限定されないが、反応速度および経済的な観点から、得られるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の質量に対して、50ppm~2000ppmであることが好ましく、100ppm~1000ppmであることがより好ましい。
【0065】
〔3.樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂40.0質量部~99.5質量部、およびポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体0.5質量部~60.0質量部を基材樹脂として含む樹脂組成物であって、前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有し、前記ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含み、かつ芳香族基を含まない、樹脂組成物である。
【0066】
本明細書において、「基材樹脂」とは、樹脂組成物の合計100質量%中、50質量%以上を構成する樹脂(または樹脂混合物)を意図する。基材樹脂は、樹脂組成物の合計100質量%中、70質量%以上を構成することが好ましく、90質量%以上を構成することがより好ましく、95質量%以上を構成することがさらに好ましく、99質量%以上を構成することが特に好ましい。
【0067】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物について、以下に説明する。本明細書において、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を、以下「本樹脂組成物」と称する場合もある。
【0068】
本樹脂組成物は、上述した構成を有するため、流動性に優れ、かつ、強度、色調および透明性に優れる成形体を提供できるという利点を有する。
【0069】
以下、本樹脂組成物の各態様について詳説するが、以下に説明する以外の事項(例えば、各種成分およびその添加量など)は特に限定されず、上述の〔2.流動性改良剤〕の項の説明を適宜援用する。
【0070】
(3-1.ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体)
本樹脂組成物は、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を基材樹脂として含む。本樹脂組成物が含むポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体については、前記(2-1.ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体)の項で説明したものと同じであるため、当該記載を援用し、ここでは説明を省略する。
【0071】
本樹脂組成物において、ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の含有量は、0.5質量部~60.0質量部であり、1.0質量部~30.0質量部であることが好ましく、2.0質量部~10.0質量部であることがより好ましい。当該構成によれば、流動性の改善などのポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体による利点が好ましく発現される。
【0072】
(3-2.ポリカーボネート系樹脂)
本樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂を基材樹脂として含む。本明細書において、「ポリカーボネート系樹脂」とは、炭酸エステル結合を含む構成単位を有する重合体を意図する。
【0073】
ポリカーボネート系樹脂は、特に制限はないが、例えば、フェノール性水酸基を2つ有する化合物(以下、2価フェノールと称する場合がある)と、ホスゲンなどのハロゲン化カルボニル化合物とを界面重縮合することによって得られる重合体、および、2価フェノールと炭酸ジエステル化合物とを溶融重合法(エステル交換法)することによって得られる重合体が挙げられる。
【0074】
2価フェノールの具体例としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、レゾルシンおよびカテコールなどが挙げられる。2価フェノールとしては、なかでもビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を主原料とした2価フェノールがより好ましい。
【0075】
また、ポリカーボネート系樹脂の前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステルおよびハロホルメートなどが挙げられる。前駆体の具体例としては、(a)ホスゲン、(b)2価フェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm-クレジルカーボネートなどのジアリールカーボネート、並びに(c)ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネートおよびジオクチルカーボネートなどの脂肪族カーボネート化合物、などが挙げられる。
【0076】
ポリカーボネート系樹脂は、その高分子鎖の分子構造が直鎖構造からなる樹脂であってもよいし、直鎖構造上に側鎖構造を有する樹脂でもよい。このような分岐構造を導入するための分岐剤としては、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α’’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸およびイサチンビス(o-クレゾール)などが挙げられる。
【0077】
さらに、ポリカーボネート系樹脂は、(a)2価フェノールのみを用いて製造された単独重合体、(b)ポリカーボネート構成単位とポリオルガノシロキサン構成単位とを有する共重合体、または(c)これらの単独重合体と共重合体とからなる樹脂組成物、であってもよい。また、ポリカーボネート系樹脂は、テレフタル酸などの二官能性カルボン酸またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下で、2価フェノールの重縮合反応を行うことによって得られるポリエステル-ポリカーボネート系樹脂であってもよい。さらに、ポリカーボネート系樹脂は、種々の構成単位を有する種々のポリカーボネート系樹脂を溶融混練して得られる混合樹脂であってもよい。
【0078】
ポリカーボネート系樹脂の分子量は、本樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐衝撃性および耐薬品性をより改善する観点から、粘度平均分子量が10,000~60,000の範囲であることが好ましい。
【0079】
本樹脂組成物において、ポリカーボネート系樹脂の含有量は、40.0質量部~99.5質量部であり、70.0質量部~99.0質量部であることが好ましく、90.0質量部~98.0質量部であることがより好ましい。当該構成によれば、当該樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性などのポリカーボネート系樹脂による利点が好ましく発現される。
【0080】
(3-3.基材樹脂以外の成分)
本樹脂組成物は、基材樹脂以外の成分を含んでもよい。基材樹脂以外の成分の具体例としては、(a)耐衝撃改良剤、(b)ホスファイト系酸化防止剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤、(c)難燃剤、並びに(d)無機フィラー、などの添加剤が挙げられる。
【0081】
(耐衝撃改良剤)
本樹脂組成物は、基材樹脂以外の成分として、耐衝撃改良剤0.5質量部~40質量部を含んでもよい。当該構成により、本樹脂組成物は、耐衝撃性により優れる成形体を提供できる。
【0082】
耐衝撃改良剤の具体例としては、(a)ゴム状弾性体とビニル化合物とのコア/シェル型グラフト重合体、(b)ポリオレフィン系重合体、並びに(c)オレフィン-不飽和カルボン酸エステル共重合体、などが挙げられる。耐衝撃改良剤は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0083】
(コア/シェル型グラフト重合体)
本明細書において、「コア/シェル型グラフト重合体」とは、特定のゴム状弾性体に対して特定のビニル系化合物(単量体)をグラフト重合させて得られるグラフト重合体を意図する。
【0084】
ゴム状弾性体は、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。
【0085】
ゴム状弾性体の具体例としては:ポリブタジエン、ブタジエン-スチレン共重合体、ブタジエン-アクリル酸エステル共重合体およびブタジエン-アクリロニトリル共重合体などのジエン系ゴム;ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸2-エチルへキシル、ジメチルシロキサン-アクリル酸ブチルゴ厶およびシリコーン系/アクリル酸ブチル複合ゴムなどのアクリル系ゴム;エチレン-プロピレン共重合体およびエチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのオレフィン系ゴム;ならびに、ポリジメチルシロキサン系ゴムおよびジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン共重合体系ゴム;が挙げられる。ブタジエン-アクリル酸エステル共重合体の具体例としては、ブタジエン-アクリル酸ブチル共重合体およびブタジエン-アクリル酸2エチルへキシル共重合体などが挙げられる。耐衝撃性の観点から、ゴム状弾性体の具体例としては、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレン共重合体、ブタジエン-アクリル酸ブチル共重合体およびポリジメチルシロキサン系ゴムからなる群から選択される1種以上が好ましく使用される。
【0086】
ゴム状弾性体の平均粒子径は、特に限定されないが、0.05μm~2.00μmの範囲が好ましく、0.1μm~0.4μmの範囲がより好ましい。また、ゴム状弾性体のゲル含有量も、特に限定されないが、10質量%~99質量%の範囲であることが好ましく、80質量%~96質量%の範囲であることがより好ましい。
【0087】
コア/シェル型グラフト重合体は、ゴム状弾性体の表面上に、シェルを有する。シェルは、上述のゴム状弾性体の存在下で、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリル酸エステル化合物およびメタクリル酸エステル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル系化合物を重合して得られる重合体である。コア/シェル型グラフト重合体は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0088】
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレンおよびα-メチルスチレンなどが挙げられる。シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどが挙げられる。アクリル酸エステル化合物の具体例としては、ブチルアクリレートおよび2-エチルへキシルアクリレートなどが挙げられる。メタクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレートがとくに好ましい例として挙げられる。
【0089】
コア/シェル型グラフト重合体の製造におけるゴム状弾性体とビニル系化合物との使用割合は、コア/シェル型グラフト重合体の合計100質量%中、ゴム状弾性体が10質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~85質量%であることがより好ましく、ビニル系化合物が10質量%~90質量%であることが好ましく、15質量%~70質量%であることがより好ましい。ゴム状弾性体の使用割合が10質量%以上であると耐衝撃性がより改善され、90質量%以下であると耐熱性がより改善される傾向がある。また、コア/シェル型グラフト重合体は、熱安定性の観点から、有機リン系乳化剤を用いて製造されたものを用いることが特に好ましい。
【0090】
(ポリオレフィン系重合体)
ポリオレフィン系重合体の具体例としては、(a)ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのオレフィン単独重合体、(b)エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-(4-メチルペンテン)共重合体、エチレン-へキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体およびプロピレン-ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、などが挙げられる。ポリオレフィン系重合体の重合度は、特に限定されないが、メルトインデックスが0.05g/10分~50g/10分の範囲のものを任意に選択して、使用してもよい。ポリオレフィン系重合体としては、耐衝撃性をより向上させる観点から、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-へキセン共重合体およびエチレン-オクテン共重合体からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0091】
(オレフィン-不飽和カルボン酸エステル共重合体)
オレフィン-不飽和カルボン酸エステル共重合体を構成するオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセンおよび1-オクテンなどが挙げられる。オレフィンは、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。オレフィンとしては、エチレンが特に好ましい。
【0092】
オレフィン-不飽和カルボン酸エステル共重合体を構成する不飽和カルボン酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルへキシルアクリレート、アクリル酸グリシジル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルへキシルメタクリレートおよびメタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。不飽和カルボン酸エステルは、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。不飽和カルボン酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびメタクリル酸ダリシジルからなる群から選択される1種以上が特に好ましい。
【0093】
オレフィン-不飽和カルボン酸エステル共重合体における、オレフィンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合比は、質量比で、40/60~95/5であることが好ましく、50/50~90/10であることがより好ましい。オレフィン-不飽和カルボン酸エステル共重合体における不飽和カルボン酸エステルの質量比が、(a)5以上であると、耐薬品性がより改善される傾向があり、(b)60以下であると、溶融時(例えば、成形加工時)の熱安定性がより改善される傾向がある。
【0094】
オレフィン-不飽和カルボン酸エステル共重合体において、オレフィンおよび不飽和カルボン酸エステルに加えて、さらに酢酸ビニルおよびスチレンなどを共重合してもよい。
【0095】
オレフィン-不飽和カルボン酸エステル共重合体の具体例としては、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸プロピル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-アクリル酸へキシル共重合体、エチレン-アクリル酸2-エチルへキシル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メタクリル酸へキシル共重合体、エチレン-メタクリル酸2-エチルへキシル共重合体、エチレン-アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-アクリル酸グリシジル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸グリシジル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸グリシジル-アクリル酸メチル共重合体およびエチレン-メタクリル酸グリシジル-アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。中でも、耐衝撃性をより改善する観点から、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-メタクリル酸グリシジル-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-メタクリル酸グリシジル-アクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0096】
(難燃剤)
難燃剤としては、当技術分野で一般的に使用される難燃剤を使用することができ、特に限定されない。難燃剤としては(a)トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェートおよびビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェートなどの芳香族(縮合)リン酸エステル、(b)テトラブロモビスフェノールA、臭素化ポリカーボネートおよび臭素化ポリスチレンなどの臭素系難燃剤、(c)ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン-ポリカーボネート共重合体、およびポリジメチルシロキサン系ゴムを使用したゴムグラフト共重合体、などのシリコーン系難燃剤、ならびに(d)3-フェニルスルホン酸カリウム塩およびパーフルオロベンゼンスルホン酸金属塩などの無機系難燃剤、などが挙げられる。上述の難燃剤を使用することにより、ポリカーボネート系樹脂の難燃性を高めることができる。そのため、上述の難燃剤を使用することは、本樹脂組成物を家電および電気電子部品用途において用いる場合に、特に有用である。上述した難燃剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0097】
本樹脂組成物に配合し得る無機フィラーとしては、当技術分野で一般的に使用される無機フィラーを使用することができ、特に限定されない。
【0098】
(3-4.樹脂組成物の物性)
本樹脂組成物は、流動性に優れ、したがって成形加工性に優れる。本樹脂組成物の流動性は、本樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)およびスパイラルフローのうち少なくとも1つを測定することによって、評価することができる。
【0099】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物のMFRが15.0g/10min以上であれば、当該樹脂組成物は流動性に優れていると判断できる。本発明の別の一実施形態において、樹脂組成物を測定して得られたMFRの、当該樹脂組成物が基材樹脂として含むポリカーボネート系樹脂単独で測定して得られたMFRに対する比率(樹脂組成物のMFR/ポリカーボネート系樹脂単独のMFR)が、1.30以上であれば、当該樹脂組成物は流動性に優れていると判断できる。前記比率(樹脂組成物のMFR/ポリカーボネート系樹脂単独のMFR)は、1.40以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、1.60以上であることがより好ましく、1.70以上であることがさらに好ましく、1.80以上であることが特に好ましい。
【0100】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物のスパイラルフローが550mm以上であれば、当該樹脂組成物は流動性に優れていると判断できる。本発明の別の一実施形態において、樹脂組成物を測定して得られたスパイラルフローの、当該樹脂組成物が基材樹脂として含むポリカーボネート系樹脂単独で測定して得られたスパイラルフローに対する比率(樹脂組成物のスパイラルフロー/ポリカーボネート系樹脂単独のスパイラルフロー)が、1.05以上であれば、当該樹脂組成物は流動性に優れていると判断できる。前記比率(樹脂組成物のスパイラルフロー/ポリカーボネート系樹脂単独のスパイラルフロー)は、1.07以上であることが好ましく、1.10以上であることがより好ましく、1.12以上であることがさらに好ましく、1.15以上であることが特に好ましい。
【0101】
なお、本明細書において、本樹脂組成物のMFRおよびスパイラルフローは、それぞれ実施例に記載される方法によって測定される値を意図する。
【0102】
(3-5.別の一実施形態に係る樹脂組成物)
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上述の実施形態に限定されない。本発明の別の一実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の一実施形態に係る流動性改良剤と、ポリカーボネート系樹脂と、を樹脂基材として含む、樹脂組成物である。このような構成においても、本発明の別の一実施形態に係る樹脂組成物は、優れた強度、色調および透明性を有する。なお、本発明の別の一実施形態に係る樹脂組成物が含むポリカーボネート系樹脂の構成は、上述したポリカーボネート系樹脂(例えば、(3-2.ポリカーボネート系樹脂)の項に記載のポリカーボネート系樹脂)と同じであるため、当該記載を援用し、ここでは説明を省略する。
【0103】
本発明の別の一実施形態に係る樹脂組成物において、本流動性改良剤の含有量は、0.5質量部~60.0質量部であることが好ましく、1.0質量部~30.0質量部であることがより好ましく、2.0質量部~10.0質量部であることがさらに好ましい。また、樹脂組成物におけるポリカーボネート系樹脂の含有量は、40.0質量部~99.5質量部であることが好ましく、70.0質量部~99.0質量部であることがより好ましく、90.0質量部~98.0質量部であることがさらに好ましい。当該構成によれば、流動性などの本流動性改良剤による利点と、当該樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性などのポリカーボネート系樹脂による利点と、をより発現する樹脂組成物を実現することができる。
【0104】
〔4.樹脂組成物の製造方法〕
本樹脂組成物は、当業者に公知の任意の方法を用いて、製造することができる。本樹脂組成物の製造方法の具体例としては、以下(1)~(3)を順に実施して本樹脂組成物を得る方法を挙げることができるが、これに限定されるものではない:(1)基材樹脂として上述したポリカーボネート系樹脂およびポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体、ならびに、任意に基材樹脂以外の成分を、ブレンダーまたはスーパーミキサーなどの混合機を用いて混合する;(2)得られた混合物を単軸または多軸のスクリュー押出機などを用いて混練する;(3)得られた混練物をペレット状など任意の形状に成形する。また、本樹脂組成物の製造方法において、混練の際に加熱して、溶融混練を行ってもよい。この場合、温度条件などは、適宜に設定することができる。
【0105】
〔5.成形体〕
本発明の一実施形態に係る成形体は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を成形してなる、成形体である。本発明の一実施形態に係る成形体は、本発明の別の一実施形態に係る樹脂組成物を成形してなる、成形体であってもよい。本発明の一実施形態に係る成形体について、以下に説明する。本明細書において、本発明の一実施形態に係る成形体を、以下「本成形体」と称する場合もある。
【0106】
以下、本成形体の各態様について詳説するが、以下に説明する以外の事項(例えば、各種成分およびその添加量など)は特に限定されず、上述した説明を適宜援用する。
【0107】
(5-1.成形体の形状および外観)
本成形体は、成形加工性に優れる本樹脂組成物を材料とするため、種々の所望の形状を有することができる。例えば、一般的なポリカーボネート系樹脂では成形が困難である大型の薄肉成形体であっても、本樹脂組成物を用いれば良好に成形できる。そのため、本成形体は、好ましくは、大型の薄肉成形体である。ここで、「大型の薄肉成形体」とは、全体の寸法(例えば、投影面積)が大きく、かつ、厚さが薄い面を有するか、または面の一部に厚さが薄い部分がある面を有する成形体を意図する。
本成形体は、例えば、投影面積が10000mm~10000000mmである、大型の薄肉成形体であってもよい。本成形体の投影面積は、成形体の表面外観、耐熱性および強度(耐衝撃性)の観点から、30000mm~7000000mmであることが好ましく、50000mm~4000000mmであることがより好ましい。また、本成形体は、例えば、平均肉厚(薄肉部の平均厚さ)が0.1mm以上3.0mm未満である、大型の薄肉成形体であってもよい。本成形体の平均肉厚は、2.5mm未満であってもよく、2.0mm未満であってもよい。本成形体の平均肉厚の下限値は、成形体の表面外観、耐熱性および強度(例えば耐衝撃性)の観点から、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。さらに、本成形体は、金型ゲートの入口に対応する成形体の部分から成形体の端部までの長さ(樹脂組成物が金型のキャビティ内を流動するときの、流動距離のうちの実質的な最大長さ)が500mmを超える大型の薄肉成形体であってもよい。従来のポリカーボネート系樹脂組成物では、上述したような大型の薄肉成形体とした場合、成形体の強度(特に薄肉部の強度)が満足のいくものではなかった。本成形体は、上述したような大型の薄肉成形体の形状を有する場合であっても、成形体の強度(特に薄肉部の強度)に優れるという利点を有する。
【0108】
また、本成形体は、成形加工性に優れる本樹脂組成物を材料とするため、特に大型の薄肉成形体であっても、成形体表面全体の平滑性が良好であるという利点を有する。そのため、本成形体は、表面に塗装を行った場合に、塗装後の成形体の表面外観性、および塗膜の密着性が良好である。成形体の塗装に用いる塗料および塗装方法は、公知の物を適宜選択して採用できる。
【0109】
(5-2.成形体の物性)
本成形体は、強度に優れる。本成形体の強度は、本成形体のIzod衝撃強度を測定することによって、評価することができる。本発明の一実施形態において、成形体のIzod衝撃強度が70.0kJ/m以上であれば、当該成形体は、強度に優れていると判断できる。本発明の別の一実施形態において、成形体を測定して得られたIzod衝撃強度の、当該成形体に含まれるポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体で測定して得られたIzod衝撃強度に対する比率(成形体のIzod衝撃強度/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体のIzod衝撃強度)が、0.80以上であれば、当該成形体はポリカーボネート系樹脂が本来発現し得る強度を維持しており、したがって強度に優れていると判断できる。前記比率(成形体のIzod衝撃強度/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体のIzod衝撃強度)は、0.90以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましい。
【0110】
本成形体は、黄色度(Yellow Index)が低く、したがって色調に優れる。本成形体の色調は、本成形体の色調YIを測定することによって、評価することができる。本発明の一実施形態において、成形体の色調YIが4.00以下であれば、当該成形体は、色調に優れていると判断できる。本発明の別の一実施形態において、成形体を測定して得られた色調YIの、当該成形体に含まれるポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体で測定して得られた色調YIに対する比率(成形体の色調YI/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体の色調YI)が、1.20以下であれば、当該成形体はポリカーボネート系樹脂が本来発現し得る色調を維持しており、したがって色調に優れていると判断できる。前記比率(成形体の色調YI/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体の色調YI)は、1.10以下であることが好ましく、1.05以下であることがより好ましい。
【0111】
本成形体は、透明性に優れる。本成形体の透明性は、本成形体のヘイズを測定することによって、評価することができる。一般的に、成形体のヘイズは、成形体の厚さに依存して変化し得る。本発明の一実施形態において、成形体が2mmの厚さを有するとき、当該成形体のヘイズが20.00%以下であれば、当該成形体は、透明性に優れていると判断できる。前記ヘイズは、10.00%以下であることが好ましく、8.00%以下であることがより好ましい。本発明の別の一実施形態において、2mmの厚さを有する成形体を測定して得られたヘイズの、当該成形体に含まれるポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体(2mmの厚さを有する)で測定して得られたヘイズに対する比率(2mmの厚さを有する成形体のヘイズ/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体(2mmの厚さを有する)のヘイズ)が、3.0以下であれば、当該成形体はポリカーボネート系樹脂が本来発現し得る透明性を維持しており、したがって透明性に優れていると判断できる。前記比率(2mmの厚さを有する成形体のヘイズ/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体(2mmの厚さを有する)のヘイズ)は、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0112】
また、本成形体の透明性は、本成形体の全光線透過率T%を測定することによって、評価してもよい。一般的に、成形体の全光線透過率T%は、成形体の厚さに依存して変化し得る。本発明の一実施形態において、成形体が2mmの厚さを有するとき、当該成形体の全光線透過率T%が85.00%以上であれば、当該成形体は、透明性に優れていると判断できる。本発明の別の一実施形態において、2mmの厚さを有する成形体を測定して得られた全光線透過率T%の、当該成形体に含まれるポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体(2mmの厚さを有する)で測定して得られた全光線透過率T%に対する比率(2mmの厚さを有する成形体の全光線透過率T%/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体(2mmの厚さを有する)の全光線透過率T%)が、0.90以上であれば、当該成形体はポリカーボネート系樹脂が本来発現し得る透明性を維持しており、したがって透明性に優れていると判断できる。前記比率(2mmの厚さを有する成形体の全光線透過率T%/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体(2mmの厚さを有する)の全光線透過率T%)は、0.95以上であることが好ましい。なお、本成形体の厚さは2mmに限定されない。
【0113】
なお、本明細書において、本成形体のIzod衝撃強度、色調YI、ヘイズおよび全光線透過率T%は、それぞれ後の実施例に詳説される方法によって測定される値を意図する。
【0114】
(5-3.成形体の製造方法)
本成形体は、当業者に公知の任意の方法を用いて、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を成形することにより、製造することができる。
【0115】
本成形体の製造方法の具体例としては、特に限定されないが、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を、射出成形、押出成形、ブロー成形および圧縮成形などの成形方法を用いて成形する方法が挙げられる。成形方法は、射出成形であることが好ましい。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を、例えば、「Plastics Info World 11/2002 P20-35」に記載されているような、インラインコンパウンドプロセスまたは直接コンパウンドプロセスなどのコンパウンドにおいて使用して、成形体を成形してもよい。本成形体の製造方法においては、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物をそのまま成形してもよいし、希釈剤と混合したものを成形してもよい。
【0116】
〔6.用途〕
本発明の一実施形態に係る流動性改良剤は、ポリカーボネート系樹脂と好適に相溶でき、かつ当該ポリカーボネート系樹脂の流動性を改善することができる。そのため、本発明の一実施形態に係る流動性改良剤は、ポリカーボネート系樹脂の成形加工性を高めるための添加剤として、好適に用いることが可能である。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、流動性に優れ、成形加工が容易である。さらに、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を成形してなる、本発明の一実施形態に係る成形体は、強度、色調および透明性に優れる。以上のことから、本発明の一実施形態に係る流動性改良剤、樹脂組成物および成形体は、(a)家電製品用部品、(b)電気部品および電子部品、(c)雑貨、(d)自動車シート、自動車内装部品および自動車外装部品(特に、ヘッドアップディスプレー、ヘッド/テイルランプカバー、ガーニッシュ、ビラー、スポイラーなど)などの自動車部品、ならびに(e)樹脂ガラスなどの分野において(例えば原料として)、特に好適に利用できる。
【0117】
本発明の一実施形態は、以下のような構成であってもよい。
〔1〕芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有するポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を含み、前記ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含み、かつ芳香族基を含まない、ポリカーボネート系樹脂用の流動性改良剤。
〔2〕ゲルマニウム化合物をさらに含む、〔1〕に記載の流動性改良剤。
〔3〕前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は0.20~1.00の範囲である、〔1〕または〔2〕に記載の流動性改良剤。
〔4〕前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は0.30~0.60の範囲である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の流動性改良剤。
〔5〕前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体において、前記芳香族ポリエステル単位および前記ポリエーテルグリコール単位の合計を100質量%としたとき、前記芳香族ポリエステル単位は50質量%~90質量%であり、前記ポリエーテルグリコール単位は10質量%~50質量%である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の流動性改良剤。
〔6〕前記芳香族ポリエステル単位は、ポリエチレンテレフタレート単位、ポリプロピレンテレフタレート単位およびポリブチレンテレフタレート単位からなる群より選択される1種以上を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の流動性改良剤。
〔7〕前記ポリエーテルグリコール単位は、前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれる前記ポリエーテルグリコール単位の合計100質量%中、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を50質量%以上含む、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の流動性改良剤。
〔8〕前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体に含まれる全構成単位100質量%中、前記芳香族ポリエステル単位および前記ポリエーテルグリコール単位を合計で、50質量%以上含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の流動性改良剤。
〔9〕〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の流動性改良剤と、ポリカーボネート系樹脂と、を含む、樹脂組成物。
〔10〕ポリカーボネート系樹脂40.0質量部~99.5質量部、およびポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体0.5質量部~60.0質量部を基材樹脂として含む樹脂組成物であって、前記ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位およびポリエーテルグリコール単位を有し、前記ポリエーテルグリコール単位は、ポリペンタメチレンエーテルグリコール単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、ポリプロピレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位およびポリオキシメチレン単位からなる群より選択される1種以上を含み、かつ芳香族基を含まない、樹脂組成物。
〔11〕〔9〕または〔10〕に記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【実施例0118】
以下、実施例、比較例、製造例および比較製造例によって本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一実施形態は、前記または後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、本明細書において、実施例、比較例、製造例および比較製造例を、総称して、以下「実施例等」と称する場合もある。
【0119】
〔評価方法〕
まず、実施例等における、流動性改良剤、樹脂組成物および成形体の評価方法について、説明する。
【0120】
<ポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体の固有粘度(IV値)の測定>
流動性改良剤に含まれるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は、JIS K7367に準じ、流動性改良剤を濃度0.5g/dlとなるように下記の混合溶媒に溶解して得られた、流動性改良剤を含む溶液を試料として、25℃において、ウベローデ粘度計を用いて、測定して得られた値を採用した。ただし、流動性改良剤を溶解させる溶液としては、テトラクロロエタン/フェノール=50/50(質量比)の混合溶媒を使用した。
【0121】
<樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)の測定>
樹脂組成物のMFRは、以下のように測定した:(1)樹脂組成物を、バレル温度200~260℃に加熱した二軸押出機(日本製鋼所社製TEX44SS)を用いて、スクリュー回転数100rpmの条件で混錬し、得られた混練物を押出し、樹脂組成物のペレット(以下、押出ペレットとも称する。)を得た;(2)得られた押出ペレットを、JIS K7210 A法に準じ、熱風乾燥機にて120℃で5時間乾燥させた後、測定温度300℃および荷重1.2kgの条件にて、MFRを測定した。
【0122】
なお、実用上の観点から、樹脂組成物のMFRが15.0g/10min以上であれば、当該樹脂組成物は流動性に優れていると判断できる。また、比較の観点から、実施例または比較例の樹脂組成物を測定して得られたMFRの、当該樹脂組成物が基材樹脂として含むポリカーボネート系樹脂単独で測定して得られたMFRに対する比率(実施例または比較例の樹脂組成物のMFR/ポリカーボネート系樹脂単独のMFR)が、1.30以上であれば、当該樹脂組成物は流動性に優れていると判断できる。
【0123】
<樹脂組成物のスパイラルフローの測定>
樹脂組成物のスパイラルフローは、以下のように測定した:(1)樹脂組成物のMFRの測定に用いる押出ペレットと同一の方法で、押出ペレットを得た;(2)得られた押出ペレットを、射出成形機(ファナック社製FAS100B)を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度90℃および射出圧力1350kg/cmの条件で成形し、スパイラル状の成形体(幅10mm、厚さ2mm、ピッチ5mm)における流動長をスパイラルフローとして測定した。
【0124】
なお、実用上の観点から、樹脂組成物のスパイラルフローが550mm以上であれば、当該樹脂組成物は流動性に優れていると判断できる。また、比較の観点から、実施例または比較例の樹脂組成物を測定して得られたスパイラルフローの、当該樹脂組成物が基材樹脂として含むポリカーボネート系樹脂単独で測定して得られたスパイラルフローに対する比率(実施例または比較例の樹脂組成物のスパイラルフロー/ポリカーボネート系樹脂単独のスパイラルフロー)が、1.05以上であれば、当該樹脂組成物は流動性に優れていると判断できる。
【0125】
<成形体のIzod衝撃強度の測定>
成形体のIzod衝撃強度は、以下のように測定した:(1)樹脂組成物のMFRの測定に用いる押出ペレットと同一の方法で、押出ペレットを得た;(2)得られた押出ペレットを、熱風乾燥機を用いて120℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(三菱重工社製160MSP)を用いて、成形温度285℃および金型温度70℃の条件で、長さ63.5mm、幅12.7mm、厚さ3.2mm、vノッチ付きの試験片である成形体に成形した;(3)得られた成形体を用いて、ASTM D256規格に準拠する方法によって、23℃でのIzod衝撃強度を測定した。
【0126】
なお、実用上の観点から、成形体のIzod衝撃強度が70.0kJ/m以上であれば、当該成形体は強度に優れていると判断できる。また、比較の観点から、実施例または比較例の成形体を測定して得られたIzod衝撃強度の、当該成形体に含まれるポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体で測定して得られたIzod衝撃強度に対する比率(実施例または比較例の成形体のIzod衝撃強度/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体のIzod衝撃強度)が、0.80以上であれば、当該成形体はポリカーボネート系樹脂が本来発現し得る強度を維持しており、したがって強度に優れていると判断できる。
【0127】
<成形体の色調YIの測定>
成形体の色調YIは、以下のように測定した:(1)長さ63.5mm、幅12.7mm、厚さ3.2mm、vノッチ付きの試験片の代わりに、長さ85mm、幅50mmおよび厚さ2mmの試験片としたこと以外は、Izod衝撃強度の測定に用いる成形体と同一の方法で、成形体を成形した;(2)得られた成形体について、JIS K8722規格に準じ、日本電色工業社製の色差計(型式:SE-2000)を用いて、反射YI値を色調YIとして測定した。
【0128】
なお、実用上の観点から、成形体の色調YIが4.00以下であれば、当該成形体は色調に優れていると判断できる。また、比較の観点から、実施例または比較例の成形体を測定して得られた色調YIの、当該成形体に含まれるポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体で測定して得られた色調YIに対する比率(実施例または比較例の成形体の色調YI/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体の色調YI)が、1.20以下であれば、当該成形体はポリカーボネート系樹脂が本来発現し得る色調を維持しており、したがって色調に優れていると判断できる。
【0129】
<成形体の全光線透過率T%およびヘイズの測定>
成形体の全光線透過率T%およびヘイズは、以下のように測定した:(1)試験片として、色調YIの測定に用いる成形体と同一の方法で、成形体を成形した;(2)得られた成形体について、JIS K7375規格に準じ、日本電色工業社製の色差計(型式:SE-2000)を用いて、23℃にて全光線透過率T%およびヘイズを測定した。
【0130】
なお、実用上の観点から、成形体のヘイズが20.00%以下であれば、当該成形体は透明性に優れていると判断できる。また、比較の観点から、実施例または比較例の成形体を測定して得られたヘイズの、当該成形体に含まれるポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体で測定して得られたヘイズに対する比率(実施例または比較例の成形体のヘイズ/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体のヘイズ)が、3.0以下であれば、当該成形体はポリカーボネート系樹脂が本来発現し得る透明性を維持しており、したがって透明性に優れていると判断できる。
【0131】
また、実用上の観点から、成形体の全光線透過率T%が85.00%以上である場合にも、当該成形体は透明性に優れていると判断できる。また、比較の観点から、実施例または比較例の成形体の全光線透過率T%の、当該成形体に含まれるポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体で測定した全光線透過率T%に対する比率(実施例または比較例の成形体の全光線透過率T%/ポリカーボネート系樹脂のみからなる成形体の全光線透過率T%)が、0.90以上であれば、当該成形体はポリカーボネート系樹脂が本来発現し得る透明性を維持しており、したがって透明性に優れていると判断できる。
【0132】
〔製造例〕
(製造例1)流動性改良剤(A1)の製造
撹拌機およびガス排出出口を備えた反応器に、ゲルマニウム化合物を触媒として用いて製造されたポリエチレンテレフタレート(IV値0.75)70質量部、二酸化ゲルマニウム0.03質量部、安定剤(BASF社製IRGANOX(登録商標)1010)0.5質量部、およびポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル社製PTMG-1000、重量平均分子量1000)30質量部を加え、270℃で4時間保持した。次いで、反応系を、真空ポンプを用いて減圧しながら、1torr(33Pa)で重縮合反応させた。重縮合反応時間が1時間経過した時点で、減圧を終了することによって重縮合反応を停止させた。反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体を、反応器から取り出し、次いで水槽で冷却して、ストランドを得た。得られたストランドを、100℃に設定した熱風乾燥機中で、同時に後結晶化および乾燥させた後、粉砕器に投入してペレット化させ、ペレット形態の流動性改良剤(A1)を得た。なお、反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は0.45であった。また、反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位であるポリエチレンテレフタレート単位、および、ポリエーテルグリコール単位であるポリテトラメチレンエーテルグリコール単位の2種の構成単位のみから構成されていた。また、反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体において、ポリエチレンテレフタレート単位およびポリテトラメチレンエーテルグリコール単位の合計を100質量%としたとき、ポリエチレンテレフタレート単位は70質量%であり、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位は30質量%であった。
【0133】
(製造例2)流動性改良剤(A2)の製造
減圧後の、1torr(33Pa)における重縮合反応時間を45分(0.75時間)に変更したこと以外は、製造例1と同じ方法により、ペレット形態の流動性改良剤(A2)を得た。反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は0.35であった。
【0134】
(製造例3)流動性改良剤(A3)の製造
使用するポリエーテルグリコールを、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル社製PTMG-650、重量平均分子量650)30質量部に変更した以外は、製造例1と同じ方法により、ペレット形態の流動性改良剤(A3)を得た。反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は0.43であった。
【0135】
(製造例4)流動性改良剤(A4)の製造
ポリエチレンテレフタレート(IV値0.75)の使用量を90質量部に変更し、使用するポリエーテルグリコールをポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル社製PTMG-3000、重量平均分子量3000)10質量部に変更した以外は、製造例1と同じ方法により、ペレット形態の流動性改良剤(A4)を得た。反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体のIV値は0.41であった。
【0136】
製造例2~4において、反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、芳香族ポリエステル単位であるポリエチレンテレフタレート単位、および、ポリエーテルグリコール単位であるポリテトラメチレンエーテルグリコール単位の2種の構成単位のみから構成されていた。また、製造例2および3において、反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、ポリエチレンテレフタレート単位およびポリテトラメチレンエーテルグリコール単位の合計を100質量%としたとき、ポリエチレンテレフタレート単位は70質量%であり、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位は30質量%であった。また、製造例4において、反応生成物であるポリエステル-ポリエーテルグリコール共重合体は、ポリエチレンテレフタレート単位およびポリテトラメチレンエーテルグリコール単位の合計を100質量%としたとき、ポリエチレンテレフタレート単位は90質量%であり、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位は10質量%であった。
【0137】
(比較製造例1)流動性改良剤(B1)の製造
撹拌機およびガス排出出口を備えた反応器に、ゲルマニウム化合物を触媒として用いて製造されたポリエチレンテレフタレート(IV値0.65)70質量部、二酸化ゲルマニウム0.03質量部、安定剤(BASF社製IRGANOX(登録商標)1010)0.5質量部、および下記式1で表される変性ポリエーテル30質量部を加え、270℃で2時間保持した。次いで、反応系を、真空ポンプを用いて減圧しながら、1torr(33Pa)で重縮合反応させた。重縮合反応時間が0.6時間経過した時点で、減圧を終了することによって重縮合反応を停止させた。反応生成物である種々のポリエステル-ポリエーテル共重合体を、反応器から取り出し、次いで水槽で冷却して、ストランドを得た。得られたストランドを、100℃に設定した熱風乾燥機中で、同時に後結晶化および乾燥させた後、粉砕器に投入してペレット化させ、ペレット形態の流動性改良剤(B1)を得た。なお、反応生成物であるポリエステル-ポリエーテル共重合体のIV値は0.45であった。
【0138】
【化1】
【0139】
製造例1~4および比較製造例1において使用したポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエーテルグリコールの種類、それらの配合量(質量部)および重縮合時間(時間)を、表1に示す。また、製造例1~4および比較例製造例1にて得られたポリエステル-ポリエーテル共重合体のIV値、およびオキシアルキレン単位数/g 共重合体も、表1に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
(比較製造例2)流動性改良剤(B2)の製造
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および撹拌棒を備えた密閉型反応器に、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールAおよびセバシン酸を、モル比率にて30:20:50の割合で加えた。加えたモノマーが有するフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を密閉型反応器に加えた。さらに、生成するポリエステルの質量に対して0.2質量%のホスファイト系酸化防止剤(ADEKA社製PEP36)を密閉型反応器に加えた。常圧および窒素ガス雰囲気下で145℃にてモノマーを反応させて均一な溶液を得た後、生じた酢酸を留去しながら2℃/分で240℃まで昇温し、240℃で2時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約60分間かけて5Torrまで減圧した後、その減圧状態を維持した。減圧開始から2.5時間後、密閉型反応器内を窒素ガスを用いて常圧に戻し、密閉型反応器から流動性改良剤(B2)を取り出した。得られた流動性改良剤(B2)に含まれるポリエステルの数平均分子量は、3,900であった。
【0142】
(比較製造例3)流動性改良剤(B3)の製造
アクリル系耐衝撃改良剤M-570(カネカ社製)100質量部に対して、パルミチン酸カリウム0.45質量部をドライブレンドさせ、流動性改良剤(B3)を得た。
【0143】
〔実施例〕樹脂組成物および成形体の製造
<材料>
製造例および比較製造例において製造された流動性改良剤以外の、実施例および比較例において使用された材料について、列挙する。
・PC1:ポリカーボネート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック社製ユーピロン(登録商標)S-2000)
・PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂(ベルポリエステルプロダクツ社製EFG-70)
・O1:エステルオリゴマー(DIC社製ポリサイザーA-55)
(実施例1~4および比較例1~7)
表2に示す組成(質量部)にて、材料を混練し、実施例1~4および比較例1~7の樹脂組成物を製造した。
【0144】
次いで、実施例1~4および比較例1~7の樹脂組成物をそれぞれ用いて、評価方法に記載の試験片として、実施例1~4および比較例1~7の成形体を成形した。
【0145】
〔評価結果〕
実施例1~4および比較例1~7の樹脂組成物および成形体について、評価結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
表2に示すように、実施例1~4の樹脂組成物は、比較例1の樹脂組成物と比較して、高いMFRおよびスパイラルフローを示しており、したがって流動性が高い。しかしながら、実施例1~4の成形体は、比較例1の成形体と比較して、同程度のIzod衝撃強度、色調YI、全光線透過率T%およびヘイズを示しており、したがって同程度の強度、色調および透明性を有している。以上のことから、流動性改良剤(A1)~(A4)の何れか1つ以上をPC1に添加することにより、樹脂組成物の流動性は優れた水準まで改善されたと共に、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の強度、色調および透明性は依然として優れた水準で維持された、と判断できる。
【0148】
さらに、実施例1~4および比較例2~6の評価結果から、流動性改良剤(A1)~(A4)は、PET、O1および流動性改良剤(B1)~(B2)と比較して、樹脂組成物の流動性を改善する効果が大きいと共に、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の強度、色調および透明性を維持する効果は同程度または大きいと判断することができる。
【0149】
また、実施例1~4および比較例7の評価結果から、流動性改良剤(A1)~(A4)は、流動性改良剤(B3)と比較して、成形体の強度、色調および透明性を維持する効果は大きいと判断することができる。
【0150】
本発明の一実施形態によると、強度、色調および透明性に優れる成形体を提供できかつ流動性に優れるポリカーボネート系樹脂組成物を提供し得る、新規の流動性改良剤を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態に係る流動性改良剤は、ポリカーボネート系樹脂が本来有する優れた特性を維持しつつ、成形加工性を改善することができるポリカーボネート系樹脂用の添加剤として、好適に利用することができる。