(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081415
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】型締装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/06 20060101AFI20230606BHJP
B29C 33/22 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B29C45/06
B29C33/22
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195061
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】花岡 俊
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CL02
4F202CL38
4F202CL42
4F202CL48
4F202CR06
4F206AR07
4F206AR12
4F206JA07
4F206JC02
4F206JC08
4F206JL05
4F206JN36
4F206JQ06
4F206JQ82
(57)【要約】
【課題】可動盤のY軸及びZ軸回りの傾き調整が可能であるにも拘わらず、小型で単純で安価である型締装置を提供する。
【解決手段】
図9(b)において、ターンテーブル中央に位置する第1筒状ガイド68は、構造上の理由で傾き調整は行わない。第2筒状ガイド69及び第3筒状ガイド70の鉛直度を補正し、平行度を修正する。第3筒状ガイド70の角フランジ部の4つの辺のうち、一つの辺に、シム85Bを挿入することで、第3筒状ガイド70をZ軸回りに傾ける。別の一つの辺に、シム85Cを挿入することで、第3筒状ガイド70をY軸回りに傾ける。シムは極めて薄く軽量で安価である。このようなシムを付加しても型締装置は、大型にならず、複雑にならず且つ高価にならない。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床又は機台に固定されるベッドと、このベッドに固定される圧受盤と、この圧受盤に回転自在に載っているターンテーブルと、このターンテーブルより上に配置される可動盤と、前記圧受盤より下に配置される牽引盤と、前記可動盤から下げられ前記圧受盤及び前記牽引盤を貫通するタイバーと、前記圧受盤を基準にして前記牽引盤を下げることで、前記タイバー及び前記可動盤を下げる型締手段とを備え、
前記タイバーの下端部に係合部が設けられ、前記牽引盤の下に前記係合部に係合するハーフナットが設けられており、
前記ターンテーブルと前記可動盤との間に配置した金型を型締めする型締装置であって、
前記タイバーは、前記ターンテーブルの回転中心に配置される第1タイバーと、平面視で前記ターンテーブルの外側に配置される第2タイバー及び第3タイバーとからなり、
前記第1~第3タイバーは、各々が前記圧受盤に設けられる第1~第3筒状ガイドで昇降可能に支えられ、
前記第2筒状ガイド及び前記第3筒状ガイドは、前記圧受盤に固定する角フランジ部を有し、この角フランジ部の複数の辺の一つと前記圧受盤との間にシムを介在させることで、前記第2筒状ガイド及び前記第3筒状ガイドの取付け姿勢が調節可能になっていることを特徴とする型締装置。
【請求項2】
請求項1記載の型締装置であって、
前記角フランジ部は、前記圧受盤に載る中位フランジであり、
前記中位フランジに、前記シムの挿入や交換のときに使用するジャッキアップボルトを取外し可能に備え、このジャッキアップボルトにより前記圧受盤から前記中位フランジを浮かすことができるようにしたことを特徴とする型締装置。
【請求項3】
請求項2記載の型締装置であって、
前記第2筒状ガイド及び前記第3筒状ガイドは、固定ボルトで前記圧受盤に固定され、
前記ジャッキアップボルトは、前記固定ボルトが外されているときに前記中位フランジに設けた雌ねじ部にねじ込まれ、
この雌ねじ部は、前記固定ボルトのためのボルト穴を兼ねていることを特徴とする型締装置。
【請求項4】
請求項1記載の型締装置であって、
前記角フランジ部は、前記圧受盤の下面に当てる下位フランジであり、この下位フランジは前記圧受盤を上から下へ貫通するロングボルトで前記圧受盤に固定され、
前記ロングボルトを緩めることで前記圧受盤と前記下位フランジとの間に前記シムを挿入する隙間が形成できるようにしたことを特徴とする型締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を型締する型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形技術では、射出装置から溶融樹脂を金型内のキャビティへ射出する。溶融樹脂が固化したら金型を開いて製品を得る。
射出時に、充填圧で金型が開かないように、金型を締めておく必要がある。金型を締める装置が、型締装置である。
【0003】
型締装置は、固定盤と可動盤とを有し、固定盤に金型の一部である固定型が取付けられ、可動盤に金型の残部である可動型が取付けられる。
固定盤に対して可動盤が非平行であると、固定型に可動型が均一に当たらない。そこで、固定盤に可動盤が平行であることが必須となる。
【0004】
型締装置は複数の部品の集合体であり、部品に寸法のばらつきが不可避的に存在し、固定盤に対して可動盤は完全に平行にはならない。
各部品はごく僅かではあるが、外力を受けると変形する。そのため、非平行の程度が許容範囲内であれば、固定型に対して可動型が平行になる。
しかし、非平行の程度が許容範囲を超えると、型締装置の早期損耗や不良成形の一因となる。
【0005】
対策として、傾き調整機構を備えた型締装置が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、水平に延びるタイバーに、傾き調整装置を介して可動プラテンを取付けてなる型締装置を提供する。
【0006】
傾き調整装置は、左くさび(第2ウェッジ)と右くさび(第1ウェッジ)を有し、左くさびを押し込むことで可動プラテンを時計回りに回転させ、右くさびを押し込むことで可動プラテンを反時計回りに回転させる。
【0007】
左右方向をx軸、前後方向をy軸、高さ方向をz軸とすると、特許文献1は、y軸回りに可動プラテンの傾き調整を行う技術を提供する。なお、x軸は型締軸、y軸は型締軸に直交する軸、z軸は型締軸及びy軸に直交する軸と呼ぶこともできる。
【0008】
ところで、型締装置においては、z軸回りにも傾きの調整が必要となる。しかし、特許文献1の技術では、対応できない。
仮に、特許文献1の傾き調整装置にz軸回りの傾き調整機構を付加すると、傾き調整装置が全体として大型になり且つ複雑になる。大型で複雑であれば、高価になる。
【0009】
型締装置のコストダウンが求められる中、可動盤のy軸及びz軸回りの傾き調整が可能であるにも拘わらず、小型で単純で安価である型締装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、可動盤のy軸及びz軸回りの傾き調整が可能であるにも拘わらず、小型で単純で安価である型締装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、床又は機台に固定されるベッドと、このベッドに固定される圧受盤と、この圧受盤に回転自在に載っているターンテーブルと、このターンテーブルより上に配置される可動盤と、前記圧受盤より下に配置される牽引盤と、前記可動盤から下げられ前記圧受盤及び前記牽引盤を貫通するタイバーと、前記圧受盤を基準にして前記牽引盤を下げることで、前記タイバー及び前記可動盤を下げる型締手段とを備え、
前記タイバーの下端部に係合部が設けられ、前記牽引盤の下に前記係合部に係合するハーフナットが設けられており、
前記ターンテーブルと前記可動盤との間に配置した金型を型締めする型締装置であって、
前記タイバーは、前記ターンテーブルの回転中心に配置される第1タイバーと、平面視で前記ターンテーブルの外側に配置される第2タイバー及び第3タイバーとからなり、
前記第1~第3タイバーは、各々が前記圧受盤に設けられる第1~第3筒状ガイドで昇降可能に支えられ、
前記第2筒状ガイド及び前記第3筒状ガイドは、前記圧受盤に固定する角フランジ部を有し、この角フランジ部の複数の辺の一つと前記圧受盤との間にシムを介在させることで、前記第2筒状ガイド及び前記第3筒状ガイドの取付け姿勢が調節可能になっていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の型締装置であって、
前記角フランジ部は、前記圧受盤に載る中位フランジであり、
前記中位フランジに、前記シムの挿入や交換のときに使用するジャッキアップボルトを取外し可能に備え、このジャッキアップボルトにより前記圧受盤から前記中位フランジを浮かすことができるようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の型締装置であって、
前記第2筒状ガイド及び前記第3筒状ガイドは、固定ボルトで前記圧受盤に固定され、
前記ジャッキアップボルトは、前記固定ボルトが外されているときに前記中位フランジに設けた雌ねじ部にねじ込まれ、
この雌ねじ部は、前記固定ボルトのためのボルト穴を兼ねていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の型締装置であって、
前記角フランジ部は、前記圧受盤の下面に当てる下位フランジであり、この下位フランジは前記圧受盤を上から下へ貫通するロングボルトで前記圧受盤に固定され、
前記ロングボルトを緩めることで前記圧受盤と前記下位フランジとの間に前記シムを挿入する隙間が形成できるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、型締軸(X軸)が鉛直であり、鉛直に延びるタイバーは可動盤に固定されているが、下位の圧受盤及びその下位の牽引盤には固定されていない。その上で、タイバーは圧受盤に設けた筒状ガイドで昇降可能に支えられる。筒状ガイドを傾けるとタイバーは傾く。
筒状ガイドは角フランジ部を備え、角フランジ部の複数の辺の一つにシムを挿入すると、当該筒状ガイドは、型締軸に直交する軸(Y軸)及びこのY軸に直交する軸(Z軸)回りに傾く。シムは極めて薄く軽量で安価である。このようなシムを付加しても型締装置は、大型にならず、複雑にならず且つ高価にならない。
よって、本発明によれば、可動盤のY軸及びZ軸回りの傾き調整が可能であるにも拘わらず、小型で単純で安価である型締装置が提供される。
【0017】
請求項2に係る発明では、シム挿入時やシム交換時に、ジャッキアップボルトで圧受盤から中位フランジを浮かす。ジャッキアップボルトは軽量で安価である。このようなジャッキアップボルトを用いても型締装置は、大型にならず、複雑にならず且つ高価にならない。
【0018】
中位フランジに、固定ボルトを通すボルト穴と、ジャッキアップボルトをねじ込む雌ねじ部とを個別に設けると、中位フランジが大きくなる。
この点、請求項3に係る発明では、ボルト穴と雌ねじ部とを兼用にしたので、中位フランジの小型化を図ることができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、ロングボルトで圧受盤に筒状ガイドを吊るし、ロングボルトを緩めるだけでシムを挿入する隙間が形成できるようにした。ジャッキアップボルトが不要であるため、型締装置の簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る型締装置を含む射出成形装置の全体構成を示す図である。
【
図7】(a)~(d)はジャッキアップボルトの作用を説明する図である。
【
図8】(a)、(b)はシムの作用を説明する図である。
【
図9】(a)、(b)は可動盤の平行度を調整する手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、シリンダにおいて、「伸動」は、ピストンロッドを前進させてシリンダ全長が伸びることを意味し、「縮動」はピストンロッドを後退させてシリンダ全長が縮むことを意味する。
【実施例0022】
図1にX-Y方位を示した。X軸は鉛直軸であり、Y軸は水平軸である。なお、X軸は型締軸に相当し、Y軸は型締軸に直交する軸でもある。
【0023】
図1に示すように、射出成形装置10は、型締軸が鉛直であって、下型13と上型14とからなる金型12を型締めする型締装置20と、この型締装置20の上に且つ鉛直に配置される射出装置50とを、主要素とする装置である。
【0024】
型締装置20は、床(又は機台)16に固定されるベッド21と、このベッド21に固定される圧受盤22と、この圧受盤22に載せられるターンテーブル23と、圧受盤22より下に配置され圧受盤22に設けたハーフナット位置調整手段24で昇降される牽引盤29と、型締シリンダ33を含む牽引盤29の下に配置されるハーフナット26と、圧受盤22より上に配置され圧受盤22に設けた型開閉手段27で昇降される可動盤28と、この可動盤28から下げられ圧受盤22及び牽引盤29を貫通するタイバー31と、ハーフナット位置調整手段24や型締シリンダ33や型開閉手段27等へ圧油を供給するポンプモータユニット32を備えている。
【0025】
圧受盤22に、筒状ガイド69、70が設けられている。これらの筒状ガイド69、70は、タイバー31がY軸に沿って移動することを抑制し、X軸に沿って移動(昇降)することを許容する。筒状ガイド69、70の詳細な構造及び作用は後述する。
【0026】
ハーフナット位置調整手段24は、ハーフナット位置調整油圧シリンダ24Aが好適である。同様に、型締手段25は型締シリンダ33が好ましく、型開閉手段27は、型開閉油圧シリンダ27Aが好ましい。
【0027】
なお、圧受盤22は、ボルト等を緩めることでベッド21から外すことができる。よって、本発明における「固定」は、完全固定の他、分離可能に結合されている形態を含む。
また、ハーフナット位置調整手段24や型開閉手段27を、ベッド21に設けることは差し支えない。
【0028】
型締手段25は、例えば、上に開口する型締シリンダ33を有する。この型締シリンダ33に圧受盤22から下へ延びるピストン部34を収納する。型締シリンダ33とピストン部34との間に圧油室35が形成される。圧油室35に圧油が供給されると、牽引盤29が下がる。
【0029】
タイバー31は、下端部に係合部36が設けられている。この係合部36は、例えば、鋸歯部である。以下、係合部36を鋸歯部36と読み替える。
ハーフナット26は係合部としての鋸歯部36に係合する(噛み合う)半割ナットである。ハーフナット26は、牽引盤29に設けたハーフナット開閉手段37で開閉される。ハーフナット開閉手段37はハーフナット開閉油圧シリンダ37Aが好ましい。
【0030】
鋸歯部36は、歯が竹の節(ふし)のように、等ピッチで並んでいるものが好ましい。歯は、矩形断面、台形断面、三角断面の何れでもよい。ハーフナット26には対応する歯が設けられている。
【0031】
タイバー31及びハーフナット26は、丈夫で硬い鋼で造られる。鋼同士の接触を円滑にするため、鋸歯部36とハーフナット26との間にグリース潤滑を施す。鋸歯部36より高い位置にて、タイバー31の外周面に給脂する。グリースは流れ落ちて、鋸歯部36に達する。給脂は、自動、手動の何れでもよい。
【0032】
好ましくは、ハーフナット26の作動を監視するハーフナット作動監視機構38を、ハーフナット26の近傍に設ける。しかし、型開閉手段27及びハーフナット位置調整手段24の位置制御が精密に行えることを条件に、ハーフナット作動監視機構38を省くことは差し支えない。
【0033】
ハーフナット作動監視機構38は、近接スイッチ、リミットスイッチなど任意のセンサが使用できる。そのうちで、近接スイッチは、相手金属が一定距離内に接近したときに「物体あり」、相手金属が一定距離を超えて離れているときに「物体なし」と判別する非接触型センサである。ハーフナット26は廃グリースで濡れているが、非接触型センサであれば、誤検出の心配がない。その上、安価である。よって、近接スイッチが推奨される。
【0034】
好ましくは、ハーフナット26の下に且つ床16上に、廃グリースを受けるトレイ41を配置する。トレイ41は皿状の容器である。定期的又は随時、トレイ41を引き出し、溜まった廃グリースを処理することにより、床16上の汚れを防止する。
【0035】
好ましくは、ベッド21をカバー42で囲う。このカバー42は安全カバーの役割を果たす。ベッド21をカバー42で囲うことにより、型締装置20の外観性が高まる。ただし、安全柵等で代替できるため、カバー42は必須ではない。
【0036】
射出装置50は、可動盤28に立てられた射出装置移動手段51と、この射出装置移動手段51で支持される射出台52と、この射出台52で支持されつつ下へ延びる加熱筒53と、射出台52に設けられピストンロッドが上へ延びる射出手段54と、この射出手段54で支持されるスクリュー駆動台55と、このスクリュー駆動台55で支持されるスクリュー回転機構56と、このスクリュー回転機構56から下へ延ばされ加熱筒53へ進入するスクリュー57とからなる。スクリュー回転機構56は、例えば油圧モータである。
【0037】
射出装置移動手段51は射出装置移動油圧シリンダ51Aが好ましく、射出手段54は射出シリンダ54Aが好ましい。
【0038】
更に好ましくは、可動盤28上に加熱筒53を囲うパージングカバー64を設ける。また、可動盤28に上型エジェクタ60を設ける。この上型エジェクタ60は、上型14まで延びるエジェクタピン61と、このエジェクタピン61を移動するピン移動手段62とからなり、上型14に残るランナを突き落とす役割を果たす。ピン移動手段62はピン移動油圧シリンダ62Aが好ましい。
【0039】
図2は、
図1の2-2矢視図である。図中、Z軸は、Y軸に直交する軸であってX軸(
図1参照)にも直交する軸である。
図2に示すように、タイバー31は、三角形の頂点に各々配置されている。うち、1本のタイバー31が、ターンテーブル23の回転中心に配置される第1タイバー31Aである。
他の2本のタイバー31は、平面視で、ターンテーブル23の外に配置される第2タイバー31B及び第3タイバー31Cである。
【0040】
製品取り出し位置17にて、下型13から樹脂成形品を取り出す。空になった下型13はターンテーブル23を180°回転させることにより、型締め位置18に移される。
製品取り出し作業と型締め作業とが並行して行えるため、ターンテーブル23を採用することにより、生産性を高めることができる。
【0041】
図1の型締装置20において、ハーフナット26を開いて、鋸歯部36から分離する。次に、型開閉手段27を伸動して、可動盤28を上昇させる。可動盤28が上昇することに伴って、下型13から上型14が分離すると共にタイバー31が上昇する。
また、射出装置50において、射出装置移動手段51を伸動して、射出台52を上昇させる。射出台52が上昇することに伴って、加熱筒53が上型14から離れる。
【0042】
以上の結果を、
図3に示す。
最大型開状態が示される
図3に示すように、タイバー31の下端面31aが、牽引盤29内まで上昇した。結果、タイバー31を十分に短くすることができる。タイバー31が短ければ、タイバー31が軽くなると共に材料の節約が図れる。
すなわち、従来の技術では、常時、タイバー31の下端面31aが、牽引盤29の外に出るような構造が、好まれる。これに対して、
図3であれば、タイバー31を大幅に短くすることができた。
【0043】
また、加熱筒53を上げて、溜まった樹脂材料を排出するパージジング作業を行うことがある。このパージング作業は捨てショット工程とも呼ばれる。捨てショット工程では、ノズル53aから樹脂材料が飛び出るが、パージングカバー64で飛散を防止する。作業者は、随時又は適宜、パージングカバー64を開放して、溜まっている樹脂材料を取り出す。
本発明によれば、ノズル53aを囲うパージングカバー64を、可動盤28上に容易に配置することができる。
【0044】
射出成形装置10においては、型締装置20の作動と、射出装置50の作動が並行して実施される。
先ず、型締装置20の作動を説明する。
図3にて、型開閉手段27を縮動して、可動盤28、上型14及びタイバー31を下げる。上型14が下型13に当たった時点でタイバー31等の下降は終了する。
【0045】
鋸歯部36とハーフナット26との位相にずれがある。この位相がゼロになるように、ハーフナット位置調整手段24で牽引盤29を僅かに上げ下げする。調整が終わったら、ハーフナット開閉手段37を伸動して、鋸歯部36にハーフナット26を噛み合わせる。
万一、噛み合わせが不良であれば、そのことがハーフナット作動監視機構38で検出される。噛み合わせ不良であれば、射出成形作業を中断して、対策を講じる。
【0046】
噛み合わせ不良が検出されなければ、
図1にて、型締シリンダ33の圧油室35へ圧油を供給する。すると、牽引盤29が下がり、タイバー31が引き下げられ、可動盤28が下がる。以上により、金型12が型締めされる。
【0047】
図4に示すように、第2筒状ガイド69及び第3筒状ガイド70は、平面視でターンテーブル23の外に配置される。第3筒状ガイド70は、角フランジ部72を一体的に有し、この角フランジ部72が複数本(この例では、4本)の固定ボルト73で圧受盤22に固定される。うち1本の固定ボルト73B(固定ボルト73と同一物であるが、場所を特定するためにBを添える。)がターンテーブル23の下になる。
【0048】
第2筒状ガイド69は、第3筒状ガイド70と同構造であるため、符号を流用して詳細な説明は省略する。
【0049】
1本の固定ボルト73Bをターンテーブル23の下に配置したので、タイバー31B、31Cをターンテーブル23に接近させることができ、型締装置20が大型になることを防止できたとも言える。
【0050】
図5に示すように、第3筒状ガイド70は、上下に離れて配置されるすべり軸受74を内蔵した筒部71と、この筒部71に一体形成される角フランジ部72とからなる。
角フランジ部72は、圧受盤22に載せるように筒部71の高さ方向中間位置に設けた中位フランジ75である。
【0051】
すべり軸受74は無給油ブッシュが好適である。無給油ブッシュは、グラファイト(黒鉛)や二硫化モリブデンなどを含侵した材料で構成される。グラファイトや二硫化モリブデンは、固体潤滑剤であるため、長期間無給油で潤滑性能を発揮する。
【0052】
第3ダイバー31Cの外周面とすべり軸受74の内周面との間に、クリアランスを設ける。このクリアランスにより、すべり軸受74に対して第3ダイバー31Cが円滑に昇降する。
【0053】
ターンテーブル23にメンテナンス穴76が設けられ、このメンテナンス穴76に盲栓77がねじ込まれている。メンテナンス穴76が固定ボルト73Bの真上に来るように、ターンテーブル23を回す。次に、盲栓77を外す。
次に、六角レンチを上から挿入し、固定ボルト73Bを回し、中位フランジ75から外し、メンテナンス穴76を通して回収する。
よって、固定ボルト73をターンテーブル23の下に配置することができた。
【0054】
図6に示すように、圧受盤22に、固定ボルト73に対応するねじ穴径の雌ねじ78が設けられている。
また、中位フランジ75に、雌ねじ部79が設けられている。この雌ねじ部79は、固定ボルト73を通すボルト穴を兼ねている。
普通のボルト穴は固定ボルト73の軸径より若干大きくする。対して、本発明の雌ねじ部79は、ボルト穴より十分に大径にする。そのため、雌ねじ部79は下の雌ねじ78より十分に大径となる。
【0055】
雌ねじ部79が大径であるため、中位フランジ75に十分に大径の平座金81を載せ、この平座金81に固定ボルト73の頭を載せる。平座金81により、固定ボルト73の頭が雌ねじ部79に落ち込むことを防止する。
また、中位フランジ75に、平座金81の厚さと固定ボルト73の頭の厚さの和に対応する深さの座ぐり82を入れる。このことにより、固定ボルト73の頭が中位フランジ75から上へ突出することを防止する。
このことにより、ターンテーブル23に固定ボルト(
図5、符号73B)が当たる心配がなくなり、座ぐり82以外の中位フランジ75の厚さを十分に確保することができる。
【0056】
次に、ジャッキアップボルト84の作用を
図7に基づいて説明する。なお、ジャッキアップボルト84は、固定ボルト(
図6、符号73)とは別のボルトである。
図7(a)に示すように、雌ねじ部79に、ジャッキアップボルト84をねじ込む。ジャッキアップボルト84は、普通の六角ボルトで差し支えない。
図7(b)に示すように、ジャッキアップボルト84の先端(図では下面)が圧受盤22に当たる。さらに、ねじ込むと中位フランジ75が浮き上がり、結果、圧受盤22と中位フランジ75との間に、シム85を挿入するための隙間86が発生する。
【0057】
ジャッキアップボルト84の役割は、中位フランジ75を浮かせることにある。シム85を挿入した後は、ジャッキアップボルト84を逆方向に回転し、
図7(a)を経て回収し、保管する。
図7(b)において、下の雌ねじ78の穴径よりジャッキアップボルト84の外径が十分に大きいため、雌ねじ78にジャッキアップボルト84が落ちることはない。しかし、雌ねじ78が痛むことは皆無でないため、対策を講じることは好ましいことである。
【0058】
例えば、
図7(c)に示すように、雌ねじ78に丸棒87を挿入し、この丸棒87でジャッキアップボルト84の落ち込みを防ぐ。
または、
図7(d)に示すように、雌ねじ78に盲栓88をねじ込み、この盲栓88でジャッキアップボルト84の落ち込みを防いでもよい。
【0059】
次に、シム85の作用を
図8に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、シム85は、隣り合う固定ボルト73間に収まるような金属の薄い帯板である。シム85は1枚の薄板である他、厚さが異なる薄板を重ねたものであってもよい。
図8(b)に示すように、シム85を挿入すると、圧受盤22に対して中位フランジ75が角度θ1だけ傾く。結果、鉛直軸に対して第3筒状ガイド70が角度θ2だけ傾く。角度θ2は角度θ1に等しい。
【0060】
角度θ1は、シム85の厚さts/(中位フランジの辺の長さLb)=tanθ1の計算により、簡便に求まる。
【0061】
次に、可動盤28の平行度を修正する作業を、
図9に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、型開閉手段27により、可動盤28を上昇し、ターンテーブル23と可動盤28との間隔を、金型(
図1、符号12)の最大厚さに保つ。
この状態で、複数個所の測定点89において、ターンテーブル23と可動盤28との間隔(H1~H4)を測定する。この測定のための測定手段は任意であるが、ダイヤルゲージによる測定でも差し支えない。
【0062】
本発明では、第2筒状ガイド69及び/又は第3筒状ガイド70の傾き(鉛直度)を修正する。この修正により、第2ダイバー31B及び/又は第3タイバー31Cの傾き(鉛直度)が修正できる。この修正により、ターンテーブル23と可動盤28との間隔(H1~H4)を修正する。以上により、圧受盤22に可動盤28を平行にする。
【0063】
図9(b)において、ターンテーブル中央に位置する第1筒状ガイド68は、ターンテーブルとの取合があるため、ターンテーブル外に位置する第2・第3筒状ガイド69、70より、圧受盤22への取付け構造が複雑になる。
仮に、ターンテーブル中央に位置する第1筒状ガイド68にシム調整を施すと、第1筒状ガイド68の構造が更に複雑になる。
【0064】
そこで、本発明では、複雑な第1筒状ガイド68ではシム調整を行わずに、簡単な第2・第3筒状ガイド69、70でシム調整をすることにした。
すなわち、間隔(H1~H4)の測定後に、第2筒状ガイド69及び第3筒状ガイド70の鉛直度を補正し、平行度を修正する。タイバー31とすべり軸受74の間にクリアランスを設けてあるので、第1筒状ガイド68の鉛直度を補正しなくても平行度の修正は可能である。
【0065】
具体的には、測定点89は、想像線で示す金型12の四隅近傍の4箇所とする。
得られた測定値に基づいて、シム85の挿入計画を練る。
第3筒状ガイド70の角フランジ部の4つの辺のうち、一つの辺に、シム85Bを挿入することで、第3筒状ガイド70をZ軸回りに傾けることができる。
別の一つの辺に、シム85Cを挿入することで、第3筒状ガイド70をY軸回りに傾けることができる。
第2筒状ガイド69についても同様である。
【0066】
ジャッキアップボルトで隙間を形成する。→シム85B及び/又はシム85Cを挿入する。→ジャッキアップボルトを固定ボルト73に交換する。→固定ボルト73を締める。→
図9(a)に示すようにターンテーブル23と可動盤28との間隔(H1~H4)を測定する。→固定ボルト73をジャッキアップボルトに交換する。→ジャッキアップボルトで隙間を形成する。→シム85B及び/又はシム85Cを交換する。
以上を繰り返して、ターンテーブル23と可動盤28との間隔(H1~H4)の差が許容値に収まるようにする。
【0067】
以上の例ではジャッキアップボルト(
図7、符号84)が必須であった。しかし、ジャッキアップボルトは保管が面倒であり、紛失の心配もある。また、ジャッキアップボルトと固定ボルトとを交換することが煩わしい。これらの不具合を克服し得る例を、
図10に基づいて説明する。
【0068】
図10に示すように、第3筒状ガイド70は、上下にすべり軸受74を内蔵した筒部71と、この筒部71に一体形成される角フランジ部72とからなる。
角フランジ部72は、圧受盤22に下から当てるように筒部71の高さ方向下位位置に設けた下位フランジ91である。
この下位フランジ91は、圧受盤22を上から下へ貫通するロングボルト92で、圧受盤22に固定される。
【0069】
このロングボルト92は、ジャッキアップボルトを兼ねている。
すなわち、ロングボルト92を緩めると、圧受盤22に対して下位フランジ91が下がる。結果、圧受盤22と下位フランジ91との間にシム85を挿入する隙間が形成できる。
ジャッキアップボルトが不要であるため、ジャッキアップボルトを紛失するなどの不具合は解消される。加えて、固定ボルトとジャッキアップボルトとを交換するという煩わしさも解消される。
【0070】
尚、実施例では、角フランジ部72は、四角フランジとしたが、三角フランジ又は五角フランジ以上の多角フランジであってもよい。
【0071】
また、ハーフナット位置調整油圧シリンダ24A、型開閉油圧シリンダ27A、ハーフナット開閉油圧シリンダ37A、射出装置移動油圧シリンダ51A、射出シリンダ54A及びピン移動油圧シリンダ62Aを、電動シリンダに変更することは差し支えない。このときは、
図1に示すポンプモータユニット32は、制御部に変更する。
12…金型、16…床又は機台、20…型締装置、21…ベッド、22…圧受盤、23…ターンテーブル、25…型締手段、26…ハーフナット、28…可動盤、29…牽引盤、31…タイバー、31A…第1タイバー、31B…第2タイバー、31C…第3タイバー、36…係合部、68…第1筒状ガイド、69…第2筒状ガイド、70…第3筒状ガイド、71…筒部、72…角フランジ部、73…固定ボルト、75…中位フランジ、79…雌ねじ部、84…ジャッキアップボルト、85、85B、85C…シム、91…下位フランジ、92…ロングボルト。