IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特開2023-81424燃料電池用の触媒層およびその製造方法
<>
  • 特開-燃料電池用の触媒層およびその製造方法 図1
  • 特開-燃料電池用の触媒層およびその製造方法 図2
  • 特開-燃料電池用の触媒層およびその製造方法 図3
  • 特開-燃料電池用の触媒層およびその製造方法 図4
  • 特開-燃料電池用の触媒層およびその製造方法 図5
  • 特開-燃料電池用の触媒層およびその製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081424
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】燃料電池用の触媒層およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20230606BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20230606BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230606BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01M4/86 M
H01M4/88 K
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195093
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 拓也
(72)【発明者】
【氏名】玄番 美穂
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 功彬
(72)【発明者】
【氏名】山内 将樹
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS03
5H018BB12
5H018DD10
5H018EE03
5H018EE18
5H018HH04
5H018HH05
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】本開示は、アイオノマによる触媒の被毒を抑制し、高い触媒活性が得られる触媒層を提供する。
【解決手段】本開示における燃料電池用の触媒層は、細孔を有する導電性の触媒担体と、触媒担体の表面から内部へと連通する細孔における開口部よりも奥の部分に担持された触媒と、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマと、を備え、アイオノマの短辺長が、細孔の開口径の10~40倍の寸法である。本開示における燃料電池用の触媒層の製造方法は、表面から内部へと連通する細孔における開口部よりも奥の部分に触媒を担持した触媒担体を、アルコール/水の重量比が0.1以上1.5以下となる混合溶媒に分散させる分散工程と、分散工程で得られた分散液と、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマとを混合して触媒インクを作製する触媒インク作製工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を有する導電性の触媒担体と、
前記触媒担体の外表面から内部へと連通する前記細孔における開口部よりも奥の部分に担持された触媒と、
親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマと、を備え、
前記アイオノマの短辺長が、前記細孔の開口径の10~40倍の寸法である、燃料電池用の触媒層。
【請求項2】
前記触媒担体の前記触媒の担持密度が20質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載の触媒層。
【請求項3】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の主面に設けられたアノードと、前記電解質膜の他方の主面に設けられたカソードと、を備え、
前記カソードは、請求項1または2に記載の触媒層を含む、電解質膜-電極接合体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の前記触媒層の製造方法であって、
前記触媒を担持した前記触媒担体を、アルコール/水の重量比が0.1以上1.5以下となる混合溶媒に分散させる分散工程と、
前記分散工程で得られた分散液と前記アイオノマとを混合して触媒インクを作製する触媒インク作製工程と、を含む、前記触媒層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池用の触媒層、該触媒層を用いた電解質膜-電極接合体、および触媒層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、触媒担体の細孔内に担持された触媒がアイオノマによって被覆された触媒担持材料を開示する。触媒担持材料は、触媒担体と、触媒担体に担持された触媒と、触媒担体及び触媒を被覆することで触媒の利用率を高めるアイオノマと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-204700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、アイオノマによる触媒の被毒を抑制し、高い触媒活性が得られる燃料電池用の触媒層を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における燃料電池用の触媒層は、細孔を有する導電性の触媒担体と、触媒担体の表面から内部へと連通する細孔における開口部よりも奥の部分に担持された触媒と、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマと、を備える。
【0006】
そして、アイオノマの短辺長が、細孔の開口径の10~40倍の寸法であることを特徴とする。
【0007】
また、本開示における燃料電池用の触媒層の製造方法は、表面から内部へと連通する細孔における開口部よりも奥の部分に触媒を担持した触媒担体を、アルコール/水の重量比が0.1以上1.5以下となる混合溶媒に分散させる分散工程と、分散工程で得られた分散液と、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマとを混合して触媒インクを作製する触媒インク作製工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示における燃料電池用の触媒層は、アイオノマが触媒担体の細孔内へ入り込むのを防ぐことができるので、アイオノマによる触媒の被毒を抑制した、高効率な触媒層を提供することができる。
【0009】
また、本開示における燃料電池用の触媒層の製造方法は、アイオノマを、混合溶媒中で触媒担体の細孔内へ入り込むのが困難な形状(大きさ)にすることができるので、アイオノマが触媒担体の細孔内へ入り込むのを防ぐことができ、アイオノマによる触媒の被毒を抑制した、高効率な触媒層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1、2における燃料電池用の触媒層に用いた触媒担持材料の断面を示す概略図
図2】本発明の実施の形態1における燃料電池用の触媒層に用いたアイオノマの形状がアルコールと水を混合した混合溶媒のアルコール/水の重量比によって変化することを説明するための模式図
図3】本発明の実施の形態1、2における電解質膜-電極接合体を備えた電気化学デバイスの断面の概略構成を示す概略図
図4】本発明の実施の形態1における燃料電池用の触媒層に用いたアイオノマの構造を示す概略図
図5】本発明の実施の形態2における燃料電池用の触媒層の製造に用いた触媒インクの溶媒のエタノール/水の重量比に対するアイオノマ第一長さ及びカソード触媒層の質量活性を示す特性図
図6】本発明の実施の形態2における燃料電池用の触媒層の触媒担持率に対する質量活性を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、燃料電池の触媒層における三相界面の形成という技術は、プロトン供給の観点から触媒とアイオノマとを接触させることが性能向上につながると考えられてきたが、近年、アイオノマと触媒との接触により触媒がアイオノマに被毒され、むしろ性能を低下することが分かってきた。
【0012】
そのため、当該業界では、アイオノマによる触媒の被毒を抑制することを課題として、メソポーラス材料等の大容量の細孔を有する触媒担体の中に触媒を内包させることでアイオノマと触媒とを接触させないという製品設計をするのが一般的であった。
【0013】
しかし、一部のアイオノマは、細孔内に入り込む場合があるため、触媒担体の細孔内に触媒を内包した触媒担持材料を用いてもアイオノマによる触媒の被毒を抑制する手段としては十分でないという課題があった。
【0014】
そうした状況下において、発明者らは、触媒インク中の極性を増加することで、アイオノマの親水性の官能基(側鎖)がインク側へ配向するということをヒントにして、アイオノマの短辺長を拡大するという着想を得た。
【0015】
そして、発明者らは、その着想を実現するには、触媒担体の細孔の開口径よりもアイオノマの短辺長を拡大するように触媒インク中の極性を変化させるという課題があることを発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0016】
そこで、本開示は、アイオノマが触媒担体の細孔内へ入り込むのを防ぐことでアイオノマによる触媒の被毒を抑制する触媒層を提供する。
【0017】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0018】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0019】
(実施の形態1)
以下、図1図5を用いて、実施の形態を説明する。
【0020】
[1-1.構成]
(電気化学デバイス)
図3に示すように、電気化学デバイス40は、カソードセパレータ24とアノードセパレータ28との間に、電解質膜-電極接合体30を有する。
【0021】
(電解質膜-電極接合体)
電解質膜-電極接合体30は、図3に示すように、電解質膜21と、カソード触媒層22とカソードガス拡散層23とを含むカソード34および、アノード触媒層26とアノードガス拡散層27とを含むアノード35とを備え、電解質膜21をカソード34とアノード35とで挟む構成となっている。
【0022】
電解質膜21は、カソード34とアノード35との間のプロトン伝導を行う膜であり、プロトン伝導性とガスバリア性とを併せ持つ必要がある。本実施の形態では、電解質膜21として、パーフルオロスルホン酸樹脂膜を用いた。このパーフルオロスルホン酸樹脂膜は、プロトン伝導性が高く、例えば、燃料電池の発電環境下でも安定に存在できる。電解質膜21の膜厚は、10μmである。膜厚が10μmであれば、高いガスバリア性および高いプロトン伝導性を得られる。
【0023】
カソードガス拡散層23およびアノードガス拡散層27は、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つ層であり、基材とコーティング層を有する。本実施の形態では、基材として、導電性、ならびに気体・液体の透過性に優れた材料である、カーボンペーパーを使用する。
【0024】
コーティング層は、基材とカソード触媒層22及びアノード触媒層26との間に介在して、これらの接触抵抗を下げて、水の排水性を向上するための層である。本実施の形態では、コーティング層として、導電性材料であるカーボンブラックおよび撥水性樹脂であるポリテトラフルオロエチレンを用いる。
【0025】
カソード触媒層22は、電極の電気化学反応の速度を促進させる層である。カソード触媒層22は、図1に示す、多孔性で導電性の触媒担体1の少なくとも細孔内に触媒2を担持し触媒担体1の外表面の一部がアイオノマ3によって被覆された触媒担持材料5を含んでいる。触媒2は、触媒担体1の外表面に担持された触媒2aと、触媒担体1の細孔内に担持された触媒2bと、を有する。
【0026】
なお、本実施の形態では、触媒担持材料5に用いる触媒担体1として、メソポーラスカーボンを例に挙げて説明するが、触媒担体1は、このメソポーラスカーボンに限定されるものではない。細孔径や細孔容積がメソポーラスカーボンと同じで導電性であれば、他の材料であっても良い。他の材料としては、例えば、チタン、スズ、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、シリコン等の酸化物で構成される材料が挙げられる。
【0027】
(触媒担持材料)
触媒担持材料5は、図1に示すように、細孔4を有する導電性の触媒担体1と、触媒担体1に担持された触媒2と、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマ3と、を備えている。触媒2は、触媒担体1の外表面に担持された触媒2aと、触媒担体の外表面から内部へと連通する細孔4における開口部よりも奥の部分に担持された触媒2bと、を有する。アイオノマ3は、触媒2を担持した触媒担体1の外表面の一部を被覆している。
【0028】
本実施の形態において触媒担体1に用いたメソポーラスカーボンは、細孔4のモード径が6nmである。細孔4のモード径が6nm以上あれば、触媒担体1の内部に多くの触媒2を担持することができる。
【0029】
触媒担体1に用いたメソポーラスカーボンは、平均粒径が200nm以上1000nm
以下となるように構成されている。平均粒径が200nm以上であれば、アイオノマ3が細孔4内に入り込む領域が、細孔4の細孔容積に対して小さくなるので、アイオノマ3による被毒の影響を受ける触媒2の割合が小さくなる。
【0030】
触媒2の材料は、白金および白金と異なる金属を含む。白金と異なる金属としては、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、アルミニウム、クロム、鉄、モリブデン、タングステン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、銅、銀等が挙げられる。中でも、白金とコバルトとの合金は、酸素還元反応に対する触媒活性が高く、かつ燃料電池の発電環境下における耐久性が良好となるため適当である。
【0031】
本実施の形態に係る触媒2は、触媒2に含まれる全金属に対する、触媒2に含まれる白金および白金と異なる金属のモル比が0.25以上である。白金と異なる金属はコバルトである。このような触媒2は、高い活性を示す。
【0032】
コバルトは、例えば、燃料電池の発電環境下で溶出しやすく、長時間発電した場合、燃料電池の発電性能の低下を招く。そこで、触媒2に含まれる白金およびコバルトのモル比を1以下とすることで、このような発電性能の低下を抑制することができる。触媒2の組成は、PtxCo(xは1以上4以下)の組成で表される。
【0033】
アイオノマ3は、電解質膜21を通過してきたプロトンをカソード触媒層22中の触媒2まで伝達するもので、繰り返し構造を有するポリマーを主鎖として、酸性の官能基を有する。
【0034】
本実施の形態では、アイオノマ3として、パーフルオロ酸樹脂を用いる。このパーフルオロ酸樹脂は、イオン交換性樹脂の中でもプロトン伝導性が高く、燃料電池の発電環境下でも安定して存在するため好適である。
【0035】
アイオノマ3は、図4に示すように、スルホン酸基を備えた親水部と、疎水部のランダム共重合体からなる高分子鎖と、高分子鎖の末端に結合している親水部の凝集構造からなる親水性ブロックと、を備える。
【0036】
ここで、高分子鎖とは、親水部と疎水部のランダム共重合体を示し、高分子鎖の分子構造は特に限定されない。また、高分子鎖に含まれる親水部と疎水部の比率も特に限定されない。さらに、高分子鎖はC-F結合を含むフッ素系高分子である。
【0037】
アイオノマ3における親水部とは、図4に示すように、高分子鎖中において、スルホン酸基が結合している部分の最小の繰り返し単位をいう。親水部は、いずれかの部分にスルホン酸基を備えている。親水部の数は触媒2への被毒に影響を与える。親水部は触媒2と結合しやすく、親水部と結合した触媒2はガス中の酸素との酸素還元反応が阻害されるため、触媒2の触媒活性が低下する。
【0038】
アイオノマ3における疎水部とは、図4に示すように、高分子鎖において、酸基(スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基など)が結合していない部分の最小の繰り返し単位をいう。疎水部の構造は特に限定されない。
【0039】
アイオノマ3の重量比は、カソード触媒層22に含まれるカーボンの総重量に対して、0.8~1.5である。このカーボンは、メソポーラスカーボンである。
【0040】
アイオノマ3は、触媒担体1の外表面の少なくとも一部を被覆する。触媒担体1は、多数の細孔4を有するため、アイオノマ3による触媒2の被毒を抑制し、かつ触媒2を高担
持密度で担持した燃料電池用触媒を得るために有用である。
【0041】
アイオノマ3は、カソード触媒層22を形成する前の触媒インクにおいて、図2に示すように、溶媒組成によって存在形態が変化する。
【0042】
アイオノマの長さは、主に短辺長となる第一長さL1と、長辺長となる第二長さL2からなる。触媒インクに用いる溶媒は、水およびアルコールの混合溶媒である。混合溶媒のアルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、メタノール等が挙げられる。
【0043】
本実施の形態では、混合溶媒のアルコールとして、エタノールを用いている。溶媒は各物質(水、アルコール)に固有の値である極性パラメータを有している。アイオノマ3は疎水部と親水部を有するため、溶媒における極性パラメータの値を調整することで、アイオノマ3の形状を変化させることができる。第一長さL1および第二長さL2が極性パラメータの値によって変化する。
【0044】
(触媒層の製造方法)
上記の内容に基づいて、電気化学デバイス40におけるカソード触媒層22の製造方法について、実施例1、比較例1、2を示しながら説明する。
【0045】
(実施例1)
まず、図4に基づいて、電気化学デバイス40におけるカソード触媒層22の製造方法について説明する。
【0046】
設計細孔径が6nmで、触媒2の担持率が50wt%である触媒担持材料5(田中貴金属製、TECCо(PMPC-S2)52-PN)を、エタノール:水=0.1:1の割合で含む混合溶媒に投入して分散させた後に、さらにアイオノマ3(AGC株式会社製、IQ100B)の重量比が触媒担持材料5のカーボン重量に対して1.0となる量のアイオノマ3を投入し、固形分濃度7%のスラリーを調整する。
【0047】
この調整したスラリーは、湿式微粒化装置(スギノマシン製、スターバースト)を用いて、100MPaで粉砕処理を行った。その後、粉砕処理をしたスラリーを自公転可変式ミキサー(クラボウ製、マゼルスター)にて20分間撹拌処理を行った。撹拌処理をしたスラリーである触媒インクは、脱泡処理のため、常温にて12hのエージングを行った。
【0048】
以上のようにして作製した触媒インクを、スプレー法によって電解質膜21上に塗布することで、カソード触媒層22を作製した。なお、上記のカソード触媒層22の製造方法は一例であり、アイオノマ3の第一長さL1が細孔4の開口径よりも大きくなるのであれば、いずれの製法であってもよい。
【0049】
(比較例1)
触媒担持材料5をエタノール、水の混合溶媒に投入する際、混合溶媒の組成を、エタノール:水=0.3:1の割合にした以外は、実施例1の作製法と同様にして比較例1のカソード触媒層22を作製した。
【0050】
(比較例2)
触媒担持材料5をエタノール、水の混合溶媒に投入する際、混合溶媒の組成を、エタノール:水=0.43:1の割合にした以外は、実施例1の作製法と同様にして比較例2のカソード触媒層22を作製した。
【0051】
上記のように、実施例1および比較例1、比較例2のカソード触媒層22を作製した。
【0052】
続いて、カソード触媒層22が設けられた電解質膜21の反対面にアノード触媒層26を形成した。
【0053】
アノード触媒層26は以下のようにして作製される。まず、市販の白金担持カーボンブラック触媒(田中貴金属工業株式会社製、TEC10E50E)を、水とエタノールを同量含む混合溶媒に投入・撹拌した。
【0054】
得られたスラリーにアイオノマ(AGC株式会社製、IQ100B)の重量比が白金カーボンブラック触媒のカーボンに対して0.6となるように投入し、自公転可変式ミキサー(クラボウ製、マゼルスター)にて20分間撹拌処理を行った。このようにして作製した触媒インクは、スプレー法によってカソード触媒層22が設けられた電解質膜21の主面と反対の主面に塗布し、アノード触媒層26を作製した。
【0055】
このようにして作製された、カソード触媒層22、および、アノード触媒層26の各層上にカソードガス拡散層23、および、アノードガス拡散層27(SGLカーボンジャパン株式会社製、GDL25BC)を配置し、140℃の高温環境下において1MPaの圧力を5分間加えることにより、電解質膜-電極接合体30を作製した。
【0056】
得られた電解質膜-電極接合体30を、電解質膜-電極接合体30と接する面にサーペンタイン形状の流路が設けられているカソードセパレータ24およびアノードセパレータ28で挟持し、それを所定の治具に組み込むことで、燃料電池セルとなる、電気化学デバイス40を作製した。
【0057】
[1-2.動作]
以上のように構成された電気化学デバイス40について、以下その動作、作用を説明する。電気化学デバイス40の運転方法は、電気化学デバイス40の温度を65℃に保ち、アノード35には60℃の露点を持つ水素を、カソード34には65℃の露点を持つ酸素を、燃料電池の電気化学反応(酸化・還元反応)によって消費される量よりも十分に多い流量で流した。
【0058】
このとき、電子負荷装置(PLZ-664WA、菊水電子工業株式会社製)を用いて定電流動作中に電気化学デバイス40の各電圧を測定した。また、測定の間、セルの電気抵抗を1kHzの固定周波数を持つ低抵抗計でin-situ測定した。
【0059】
セルの電気抵抗分の補正を加えた電流―電圧曲線から、0.9Vにおける電流値を読み取り、カソード触媒層22に含まれる白金量で規格化することで触媒活性の指標とした。これは、0.9Vにおける質量活性と呼ばれ、燃料電池の触媒活性を示す指標として一般的に用いられる。
【0060】
このようにして、実施例1、比較例1、比較例2によって作製した電気化学デバイス40におけるエタノール/水比を変化した際のアイオノマ3の第一長さL1および0.9Vにおける質量活性を比較した結果を図5に示す。
【0061】
0.9Vにおける質量活性については、実施例1における質量活性の値を1として、比較例1および比較例2の値は規格化した。図5において、左軸(実線、●)はアイオノマ3の平均の第一長さL1、右軸(破線、○)は0.9Vにおける質量活性を規格化した値を示す。
【0062】
溶媒におけるエタノール/水の比が0.1付近においては、溶媒中の水の比率が非常に大きいため、図2に示すようにアイオノマ3の親水部が溶媒側へ配向する形状となる。そのため、第一長さL1はアイオノマの高分子形状が丸まった形状の短辺長を示す。
【0063】
溶媒におけるエタノール/水の比が0.3および、0.43付近においては、溶媒中のエタノールと水の比率が近くなるため、アイオノマ3の疎水部が伸びきった形状となる。そのため、第一長さL1はエタノール/水の比が0.1と比較すると小さくなる。
【0064】
以上から、第一長さL1はエタノール/水の比が0.1付近において最も大きい値を取ることが分かる。
【0065】
触媒担体1の内部に存在する触媒2であっても、アイオノマ3のサイズによって細孔4内へアイオノマ3が入り込むことで触媒2を被毒し、触媒2の触媒活性を低下させることがある。触媒インクにおいて、アイオノマ3の短辺長となる第一長さL1が大きいほど、細孔4に対して入り込み難くなり、アイオノマ3による触媒2の被毒を抑制し、高い質量活性を得ることができると考えられる。
【0066】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態のカソード触媒層22(触媒担持材料5)は、細孔4を有する導電性の触媒担体1と、触媒担体1の表面から内部へと連通する細孔4における開口部よりも奥の部分に担持された触媒2bと、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマ3と、を備える。そして、アイオノマ3の短辺長(第一長さL1)が、細孔4の開口径の10~40倍の寸法である。
【0067】
これにより、触媒担持材料5を被覆するアイオノマ3の第一長さL1が、触媒担持材料5(触媒担体1)の細孔4の開口径よりも大きいことで、アイオノマ3が細孔4に入り込まないので、触媒2bがアイオノマ3に被覆されない。そのため、触媒担持材料5(触媒担体1)の内部に担持された触媒2bはアイオノマ3による被毒の影響を受けなくなるので、高効率なカソード触媒層22を得ることができる。
【0068】
また、本実施の形態のカソード触媒層22(触媒担持材料5)の製造方法は、表面から内部へと連通する細孔4における開口部よりも奥の部分に触媒2bを担持した触媒担体1を、アルコール/水の重量比が0.1以上1.5以下となる混合溶媒に分散させる分散工程と、分散工程で得られた分散液と、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマ3とを混合して触媒インクを作製する触媒インク作製工程と、を含む。
【0069】
これにより、カソード触媒層22の原料となる触媒インク中の極性パラメータを変化させることができる。そのため、アイオノマ3の側鎖である親水部(官能基)が触媒インク側へ配向し、アイオノマ3の第一長さL1を拡大することで、アイオノマ3が触媒担持材料5(触媒担体1)の細孔4内へ入り込むのを抑制することができる。その結果、アイオノマ3による触媒2への被毒の影響が小さくなり、高効率なカソード触媒層22を得ることができる。
【0070】
また、本実施の形態の電解質膜-電極接合体30は、電解質膜21と、電解質膜21の一方の主面に設けられたアノード35と、電解質膜21の他方の主面に設けられたカソード34と、を備え、カソード34は、本実施の形態のカソード触媒層22を含む。
【0071】
これにより、電解質膜-電極接合体30におけるカソード触媒層22は、アイオノマ3によって被覆される触媒2を低減する。そのため、カソード34における触媒2はアイオノマ3による被毒の影響を低減するので、高効率なカソード触媒層22となり、電解質膜
-電極接合体30を高効率化することができる。
【0072】
(実施の形態2)
以下、図1図3図6を用いて、実施の形態2を説明するが、実施の形態1と同一構成には同一符号を付与し、その重複する説明は省略する場合がある。
【0073】
[2-1.構成]
(電気化学デバイス)
図3に示すように、電気化学デバイス40は、カソードセパレータ24とアノードセパレータ28との間に、電解質膜-電極接合体30を有する。
【0074】
(電解質膜-電極接合体)
電解質膜-電極接合体30は、図3に示すように、電解質膜21と、カソード触媒層22とカソードガス拡散層23とを含むカソード34および、アノード触媒層26とアノードガス拡散層27とを含むアノード35とを備え、電解質膜21をカソード34とアノード35とで挟む構成となっている。
【0075】
カソード触媒層22は、電極の電気化学反応の速度を促進させる層である。カソード触媒層22は、図1に示す、多孔性で導電性の触媒担体1の少なくとも細孔内に触媒2を担持し触媒担体1の外表面の少なくとも一部がアイオノマ3によって被覆された触媒担持材料5を含んでいる。触媒2は、触媒担体1の外表面に担持された触媒2aと、触媒担体1の細孔内に担持された触媒2bと、を有する。
【0076】
(触媒担持材料)
触媒担持材料5は、図1に示すように、細孔4を有する導電性の触媒担体1と、触媒担体1に担持された触媒2と、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマ3と、を備えている。触媒2は、触媒担体1の外表面に担持された触媒2aと、触媒担体の外表面から内部へと連通する細孔4における開口部よりも奥の部分に担持された触媒2bと、を有する。アイオノマ3は、触媒2を担持した触媒担体1の外表面の一部を被覆している。
【0077】
(触媒層の製造方法)
上記の内容に基づいて、電気化学デバイス40におけるカソード触媒層22の製造方法について、実施例2、3、比較例3を示しながら説明する。
【0078】
(実施例2)
まず、カソード触媒層22の製造方法について説明する。
【0079】
設計細孔径が6nmで、触媒2の担持率が50wt%で一様に担持されている触媒担持材料5(田中貴金属製、TECCо(PMPC-S2)52-PN)を、エタノール:水=0.1:1の割合で含む混合溶媒に投入し、さらにアイオノマ3(AGC株式会社製、IQ100B)の重量比が触媒担持材料5のカーボン重量に対して1.0となる量のアイオノマ3を投入し、固形分濃度7%のスラリーを調整する。
【0080】
この調整したスラリーは、湿式微粒化装置(スギノマシン製、スターバースト)を用いて、100MPaで粉砕処理を行った。その後、粉砕処理をしたスラリーを自公転可変式ミキサー(クラボウ製、マゼルスター)にて20分間撹拌処理を行った。撹拌処理をしたスラリーである触媒インクは、脱泡処理のため、常温にて12hのエージングを行った。
【0081】
以上のようにして作製した触媒インクを、スプレー法によって電解質膜21上に塗布することで、カソード触媒層22を作製した。なお、上記のカソード触媒層22の製造方法
は一例であり、アイオノマ3の第一長さL1が細孔4の開口径よりも大きくなるのであれば、いずれの製法であってもよい。
【0082】
(実施例3)
触媒担持材料5に担持する触媒2の担持率が40wt%で一様に担持されている設定であること以外は、実施例2の作製法と同様にして、実施例2のカソード触媒層22を作製した。
【0083】
(比較例3)
触媒担持材料5に担持する触媒2の担持率が30wt%で一様に担持されている設定であること以外は、実施例2の作製法と同様にして、比較例3のカソード触媒層22を作製した。
【0084】
上記のようにして、実施例2および実施例3、比較例3のカソード触媒層22を作製した。
【0085】
続いて、カソード触媒層22が設けられた電解質膜21の反対面にアノード触媒層26を形成した。アノード触媒層26は以下のようにして作製される。
【0086】
まず、市販の白金担持カーボンブラック触媒(田中貴金属工業株式会社製、TEC10E50E)を、水とエタノールを同量含む混合溶媒に投入・撹拌した。得られたスラリーにアイオノマ(AGC株式会社製、IQ100B)の重量比が白金カーボンブラック触媒のカーボンに対して0.6となるように投入し、自公転可変式ミキサー(クラボウ製、マゼルスター)にて20分間撹拌処理を行った。
【0087】
このようにして作製した触媒インクは、スプレー法によってカソード触媒層22が設けられた電解質膜21の主面と反対の主面に塗布し、アノード触媒層26を作製した。
【0088】
このようにして作製された、カソード触媒層22、および、アノード触媒層26の各層上にカソードガス拡散層23およびアノードガス拡散層27(SGLカーボンジャパン株式会社製、GDL25BC)を配置し、140℃の高温環境下において1MPaの圧力を5分間加えることにより、電解質膜-電極接合体30を作製した。
【0089】
得られた電解質膜-電極接合体30を、電解質膜-電極接合体30と接する面にサーペンタイン形状の流路が設けられているカソードセパレータ24およびアノードセパレータ28で挟持し、それを所定の治具に組み込むことで、燃料電池セルとなる、電気化学デバイス40を作製した。
【0090】
[2-2.動作]
以上のように構成された触媒担持材料5について、以下その動作、作用を説明する。電気化学デバイス40の運転方法は、電気化学デバイス40の温度を65℃に保ち、アノード35には60℃の露点を持つ水素を、カソード34には65℃の露点を持つ酸素を、燃料電池の電気化学反応(酸化・還元反応)によって消費される量よりも十分に多い流量で流した。
【0091】
このとき、電子負荷装置(PLZ-664WA、菊水電子工業株式会社製)を用いて定電流動作中に電気化学デバイス40の各電圧を測定した。また、測定の間、セルの電気抵抗を1kHzの固定周波数を持つ低抵抗計でin-situ測定した。
【0092】
セルの電気抵抗分の補正を加えた電流―電圧曲線から、0.9Vにおける電流値を読み
取り、カソード触媒層22に含まれる白金量で規格化することで触媒活性の指標とした。これは、0.9Vにおける質量活性と呼ばれ、燃料電池の触媒活性を示す指標として一般的に用いられる。
【0093】
このようにして、実施例2、実施例3、比較例3によって作製した電気化学デバイス40における触媒2の担持率(wt%)を変化した際の0.9Vにおける質量活性を比較した結果を図6に示す。
【0094】
0.9Vにおける質量活性については、実施例2における質量活性の値を1として、実施例3および比較例3の値は規格化した。図6の左軸(実線、●)は0.9Vにおける質量活性を規格化した値を示す。
【0095】
図6に示すように、実施例3は実施例2と比較して、約115%の質量活性を示した。両者の電気化学活性表面積はほぼ同等であり、電気化学活性表面積から質量活性の差を説明することができない。
【0096】
実施例2では、触媒担持率が50wt%と高く、触媒担持材料5における触媒担体1の表面に担持されている触媒2の割合が大きいことから、アイオノマ3によって被毒される触媒2の割合が大きくなり、実施例3は実施例2と比較して、質量活性の値が改善したと考えられる。
【0097】
また、比較例3は、実施例2と比較すると電気化学活性表面積は約88%となり、質量活性も約88%となることから、触媒2の数の低下に合わせて質量活性の値が低下したと考えられる。
【0098】
つまり、カソード触媒層22として質量活性の値を向上するには、触媒担持材料5において、三相界面の形成が十分となりながらも、アイオノマ3による触媒被毒の影響が小さい範囲において触媒2の担持率(wt%)を設定することが重要であると分かる。
【0099】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態のカソード触媒層22(触媒担持材料5)は、細孔4を有する導電性の触媒担体1と、触媒担体1の表面から内部へと連通する細孔4における開口部よりも奥の部分に担持された触媒2bと、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマ3と、を備える。そして、アイオノマ3の短辺長(第一長さL1)が、細孔4の開口径の10~40倍の寸法である。
【0100】
これにより、触媒担持材料5に被覆するアイオノマ3の第一長さL1が触媒担持材料5の細孔4の開口径よりも大きいことで、アイオノマ3が細孔4に入り込まないので、触媒2がアイオノマ3に被覆されない。そのため、触媒担持材料5の内部に担持された触媒2はアイオノマ3による被毒の影響を受けなくなるので、高効率なカソード触媒層22を得ることができる。
【0101】
また、本実施の形態のカソード触媒層22(触媒担持材料5)の製造方法は、表面から内部へと連通する細孔4における開口部よりも奥の部分に触媒2bを担持した触媒担体1を、アルコール/水の重量比が0.1以上1.5以下となる混合溶媒に分散させる分散工程と、分散工程で得られた分散液と、親水性の官能基と疎水性の主鎖を備えたアイオノマ3とを混合して触媒インクを作製する触媒インク作製工程と、を含む。
【0102】
これにより、カソード触媒層22の原料となる触媒インク中の極性パラメータを変化させることができる。そのため、アイオノマ3の側鎖である親水部(官能基)が触媒インク
側へ配向し、アイオノマ3の第一長さL1を拡大することで、アイオノマ3が触媒担持材料5(触媒担体1)の細孔4内へ入り込むのを抑制することができる。その結果、アイオノマ3による触媒2への被毒の影響が小さくなり、高効率なカソード触媒層22を得ることができる。
【0103】
本実施の形態のように、カソード触媒層22(触媒担持材料5)は、触媒担体1の触媒2の担持密度が、20質量%以上60質量%以下であってもよい。
【0104】
これにより、触媒2の大部分を触媒担持材料5(触媒担体1)の外表面から一定深さ以上の細孔4に担持させることができ、触媒担持材料5(触媒担体1)の外表面に担持される触媒2の比率が少ないため、アイオノマ3による被毒の影響が小さくなり、高効率なカソード触媒層22を得ることができる。
【0105】
また、本実施の形態の電解質膜-電極接合体30は、電解質膜21と、電解質膜21の一方の主面に設けられたアノード35と、電解質膜21の他方の主面に設けられたカソード34と、を備え、カソード34は、本実施の形態のカソード触媒層22を含む。
【0106】
これにより、電解質膜-電極接合体30におけるカソード触媒層22は、アイオノマ3によって被覆される触媒2を低減する。そのため、カソード34における触媒2はアイオノマ3による被毒の影響を低減するので、高効率なカソード触媒層22となり、電解質膜-電極接合体30を高効率化することができる。
【0107】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1および2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1および2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0108】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0109】
実施の形態1および2では、触媒担体1の細孔4のモード径は、6nmであったが、6nmに限定される必要はなく、触媒担体1の細孔4のモード径は、3nm以上10nm以下であればよい。
【0110】
触媒担体1の細孔4のモード径が、3nm以上であれば、細孔4内にガスである空気の分圧を向上することができる。また、触媒担体1の細孔4のモード径が、10nm以下であれば、細孔4内にアイオノマ3が入り込み難くなるので、高効率なカソード触媒層22を得ることができる。
【0111】
実施の形態1および2では、触媒2の材料として、白金およびコバルトを用いたが、触媒2は酸化還元反応が進行するのであれば、白金およびコバルトに限定されない。
【0112】
ただし、触媒2の材料として、白金およびコバルトを用いれば、優れた質量活性と耐久性に優れた触媒2を作製することができる。
【0113】
実施の形態1および2では、電解質膜21の膜厚が10μmであったが、電解質膜21の膜厚は5μm以上50μm以下であればよい。したがって、電解質膜21の膜厚は10μmに限定されない。
【0114】
ただし、電解質膜21の膜厚が5μm以上であれば、高いガスバリア性を得られる。ま
た、電解質膜21の膜厚が50μm以下であれば、電解質膜21を移動するプロトンの抵抗を低減できるので、高いプロトン伝導性を得られる。
【0115】
実施の形態1および2では、カソード触媒層22の作製方法として、スプレー法による手法を説明したが、カソード触媒層22の作製方法は電気化学デバイス40で一般的に用いられている手法を用いてもよい。したがって、カソード触媒層22の作製方法は、スプレー法に限定されない。
【0116】
ただし、カソード触媒層22の作製方法として、スプレー法を用いれば、スプレー時に溶媒を乾燥できるので、短時間で触媒層を作製することができる。また、カソード触媒層22の作製方法として塗布乾燥法を用いれば、カソード触媒層22におけるカソードガス拡散層23との境界面が平らになるので、カソード触媒層22とカソードガス拡散層23の接着が良好となるため、高効率なカソード触媒層22を得ることができる。
【0117】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本開示は、触媒を担持した触媒担体の外表面の少なくとも一部がアイオノマによって被覆された触媒層に適用できる。例えば、燃料電池のセルを構成する電解質膜-電極接合体に利用される電極触媒において有用である。具体的には、燃料電池スタックなどに本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 触媒担体
2 触媒
2a 触媒
2b 触媒
3 アイオノマ
4 細孔
5 触媒担持材料
21 電解質膜
22 カソード触媒層
23 カソードガス拡散層
24 カソードセパレータ
26 アノード触媒層
27 アノードガス拡散層
28 アノードセパレータ
30 電解質膜-電極接合体
34 カソード
35 アノード
40 電気化学デバイス
L1 第一長さ
L2 第二長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6