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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081431
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】電力ケーブルシステム
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/00 20060101AFI20230606BHJP
   H02G 1/10 20060101ALI20230606BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20230606BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20230606BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230606BHJP
【FI】
H02G9/00
H02G1/10
F03D13/25
F03D80/00
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195110
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】高野 年広
(72)【発明者】
【氏名】沖井 優行
(72)【発明者】
【氏名】中村 光宏
(72)【発明者】
【氏名】下位 真一郎
【テーマコード(参考)】
3H178
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB71
3H178BB73
3H178CC21
3H178DD70X
5G352EA07
5G369AA01
5G369BA02
5G369BB02
5G369BB04
5G369CA09
(57)【要約】
【課題】導体の断面積をサイズダウンでき、高価な銅製の導体の断面積をできるだけ小さくすることでコストを抑制できる電力ケーブルシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】電力ケーブルシステム100は、海底SBに埋設して設けられる海底ケーブル部11、海底ケーブル部11から延長し、発電設備Wに接続される洋上接続ケーブル部12、及び、海底ケーブル部11から海岸部SNまで延長し、海岸部SNに設置された渚マンホール30の内側で、陸上ケーブル部14と接続される陸上接続ケーブル部13、を有する電力ケーブル10と、陸上接続ケーブル部13又は洋上接続ケーブル部12の熱を放散させて冷却する熱放散促進システム20と、を備えている。陸上接続ケーブル部13及び洋上接続ケーブル部12における単位長さ当たりの熱負荷は、海底ケーブル部11における単位長さ当たりの熱負荷より小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上の発電設備から電力が供給される電力ケーブルシステムであって、
前記電力ケーブルシステムは、
海底に埋設して設けられる海底ケーブル部、前記海底ケーブル部から延長し、前記発電設備に接続される洋上接続ケーブル部、及び、前記海底ケーブル部から海岸部まで延長し、前記海岸部に設置された渚マンホールの内側で、陸上ケーブル部と接続される陸上接続ケーブル部、を有する電力ケーブルと、
前記陸上接続ケーブル部又は前記洋上接続ケーブル部の熱を放散させて冷却する熱放散促進システムと、を備え、
前記陸上接続ケーブル部及び前記洋上接続ケーブル部における単位長さ当たりの熱負荷は、前記海底ケーブル部における単位長さ当たりの熱負荷より小さい
ことを特徴とする電力ケーブルシステム。
【請求項2】
前記熱放散促進システムは、前記洋上接続ケーブル部を囲む保護管を有し、
前記保護管は、冷却フィンを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルシステム。
【請求項3】
電源不要な前記熱放散促進システムを有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブルシステム。
【請求項4】
前記熱放散促進システムは、海面の上下動に応じて上下動するフロートと、
前記フロートの上下動により前記洋上接続ケーブル部の表面に冷媒を流すポンプと、を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力ケーブルシステム。
【請求項5】
前記熱放散促進システムは、前記海岸部に埋設され、取水管と放水管を有する海水循環路を有し、
前記海水循環路は、前記陸上接続ケーブル部に沿う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力ケーブルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上の発電設備から電力が供給される電力ケーブルシステムがあった(特許文献1及び特許文献2)。
従来の電力ケーブルシステムは、海底ケーブル部から海底より上方にある発電設備まで延長する洋上接続ケーブル部を有するものであるか、海底ケーブル部から陸上の海岸部まで延長し、陸上ケーブル部と接続される陸上接続ケーブル部を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-226194号公報
【特許文献2】特開2003-304629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電力ケーブルシステムでは、陸上接続ケーブル部又は洋上接続ケーブル部が、直射日光等の影響で、熱負荷が大きく、温度変化の影響を受けやすいため、システム設計上の制約となることから、いわゆるサーマルボトルネックとなっていた。したがって、従来の電力ケーブルシステムでは、陸上接続ケーブル部又は洋上接続ケーブル部における連続的な熱負荷によって上昇する温度に基づいて、電力ケーブルの導体の断面積が一律に設定されていた。このため、海底ケーブル部の熱時定数が週単位又は月単位に達するほど比較的大きいにも関わらず、海底ケーブル部における導体の断面積は、必要以上に大きくなる場合があった。そして、導体の断面積に応じて高価な銅の使用量も大きくなっていた。
【0005】
本発明は、導体の断面積をサイズダウンでき、高価な銅製の導体の断面積をできるだけ小さくすることでコストを抑制できる電力ケーブルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
(1)本発明に係る一態様の電力ケーブルシステムは、洋上の発電設備から電力が供給される電力ケーブルシステムであって、前記電力ケーブルシステムは、海底に埋設して設けられる海底ケーブル部、前記海底ケーブル部から延長し、前記発電設備に接続される洋上接続ケーブル部、及び、前記海底ケーブル部から海岸部まで延長し、前記海岸部に設置された渚マンホールの内側で、陸上ケーブル部と接続される陸上接続ケーブル部、を有する電力ケーブルと、前記陸上接続ケーブル部又は前記洋上接続ケーブル部の熱を放散させて冷却する熱放散促進システムと、を備え、前記陸上接続ケーブル部及び前記洋上接続ケーブル部における単位長さ当たりの熱負荷は、前記海底ケーブル部における単位長さ当たりの熱負荷より小さい。
(2)上記(1)において、前記熱放散促進システムは、前記洋上接続ケーブル部を囲む保護管を有し、前記保護管は、冷却フィンを有してよい。
(3)上記(1)又は(2)において、電源不要な前記熱放散促進システムを有してよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記熱放散促進システムは、海面の上下動に応じて上下動するフロートと、前記フロートの上下動により前記洋上接続ケーブル部の表面に冷媒を流すポンプと、を有してよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記熱放散促進システムは、前記海岸部に埋設され、取水管と放水管を有する海水循環路を有し、前記海水循環路は、前記陸上接続ケーブル部に沿ってよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導体の断面積をサイズダウンでき、高価な銅製の導体の断面積をできるだけ小さくすることでコストを抑制できる電力ケーブルシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力ケーブルシステムの概略図である。
図2】第1実施形態に係る電力ケーブルシステムにおける熱放散促進システムの説明図である。
図3】保護管に設けられた冷却フィンの説明図である。
図4】連絡管に設けられた冷却フィンの説明図である。
図5】第2実施形態に係る電力ケーブルシステムにおける熱放散促進システムの説明図である。
図6】フロート及びポンプの説明図である。
図7】フロート及びポンプによる冷媒吐出時の説明図である。
図8】フロート及びポンプによる冷媒吸込時の説明図である。
図9】第3実施形態に係る電力ケーブルシステムにおける熱放散促進システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、電力ケーブルシステムを説明する。図1は、電力ケーブルシステム100の概略図である。
【0010】
(電力ケーブルシステム)
図1に示すように、電力ケーブルシステム100は、洋上の発電設備Wから電力が供給されるシステムである。
電力ケーブルシステム100は、電力ケーブル10と、電力ケーブル10における陸上接続ケーブル部13又は洋上接続ケーブル部12の熱を放散させて冷却する熱放散促進システム20と、を備えている。
【0011】
(電力ケーブル)
電力ケーブル10は、海底SBに埋設して設けられる海底ケーブル部11、海底ケーブル部11から延長し、発電設備Wに接続される洋上接続ケーブル部12、及び、海底ケーブル部11から海岸部SNまで延長し、海岸部SNに設置された渚マンホール30の内側で、陸上ケーブル部14と接続される陸上接続ケーブル部13、を有している。
そして、発電設備Wから洋上接続ケーブル部12、海底ケーブル部11及び陸上接続ケーブル部13を経て、陸上ケーブル部14まで繋がった電力ケーブル10は、適宜、陸上に設置された陸上変電所において、連系保護装置、変圧器等に接続される。なお、適宜、別途の電力ケーブルにより、陸上変電所から電力系統に接続される。
【0012】
電力ケーブル10は、導体を絶縁体で被覆したものである。導体は、銅製である。電力ケーブル10は、例えば、複数の導体のそれぞれを、内部半導電層と、架橋ポリエチレン絶縁体層と、外部半導電層と、遮水層となる鉛被と、岩盤、投錨等による外傷からの保護層となる鉄線鎖装と、によって多層に被覆されている。電力ケーブル10は、適宜、導体に沿って、メタル通信線、光ケーブル等を備えている。
【0013】
発電設備Wは、洋上に設置される。発電設備Wは、例えば、風力発電機である。風力発電機は、海底SBに設けられた基礎と、基礎から鉛直に延び、海面より上方に突き出すタワーと、タワーの頂部に設けられ、風力によってロータ軸を中心に回転するブレードと、ロータ軸の回転エネルギーを電気エネルギー(電力)に変換する発電機と、を備えている。
そして、発電機で得られた電気エネルギーは、発電機に接続された洋上接続ケーブル部12を含む電力ケーブル10を介して、陸上に送られる。
【0014】
海底ケーブル部11は、電力ケーブル10における、洋上接続ケーブル部12と陸上接続ケーブル部13との間の部分である。海底ケーブル部11は、海底SBに埋設して設けられている。
【0015】
洋上接続ケーブル部12は、電力ケーブル10における、海底ケーブル部11と発電設備Wの発電機との間の部分である。発電設備Wの発電機は、通常、海面より上方にあるので、洋上接続ケーブル部12は、海底SBに沿って略水平な姿勢の海底ケーブル部11から発電設備Wの発電機に至るまでの区間において、アルファベットのJ形状のように、曲線的に曲がって向きを変え、発電設備Wのタワーに沿って鉛直に延びた状態となっている。
【0016】
渚マンホール30は、海岸部SNに設置されている。渚マンホール30は、例えば、鉄筋コンクリート製の箱状の構造物であり、海岸部SNに埋設されている。渚マンホール30は、水平方向における一端部に陸上接続ケーブル部13を貫通させ、他端部に陸上ケーブル部14を貫通させている。渚マンホール30の内側には、陸上接続ケーブル部13と陸上ケーブル部14とを接続するケーブル接続部15が設けられている。渚マンホール30は、適宜、上部に、点検用に人員が出入りできる大きさを有する、地表に繋がる出入口を有している。
【0017】
陸上接続ケーブル部13は、電力ケーブル10における、海底ケーブル部11と陸上ケーブル部14との間の部分である。陸上接続ケーブル部13は、海底SBから海岸部SNにかけて、地表より下方にあり、地表に沿って延びている。陸上接続ケーブル部13は、適宜、海岸部SNに設置された渚マンホール30の内側で、陸上ケーブル部14とケーブル接続部15を介して接続される
【0018】
陸上ケーブル部14は、電力ケーブル10における、陸上接続ケーブル部13に接続され、陸上接続ケーブル部13から離れる方向に延びる部分である。陸上ケーブル部14の一端は、適宜、海岸部SNに設置された渚マンホール30の内側で、陸上接続ケーブル部13とケーブル接続部15を介して接続される。
【0019】
ここで、後述する熱放散促進システム21のため、陸上接続ケーブル部13及び洋上接続ケーブル部12における単位長さ当たりの熱負荷12t,13tは、海底ケーブル部11における単位長さ当たりの熱負荷11tより小さい。なお、以下、特に説明のない限り、熱負荷は、電力ケーブル10の単位長さ当たりの熱負荷を意味する。
例えば、海底ケーブル部11は、海底に埋設されているので、週単位又は月単位に達するような長期の熱時定数(例えば、電力ケーブル10の導体に一定の電流が連続して流れた場合に、電力ケーブル10の海底ケーブル部11における導体が、周囲温度との温度差(初期温度と最終温度の差)の63.2%変化するまでに必要とする時間)を有し、連続的ではなく、変動して作用する熱負荷11tを受ける。これに対して、陸上接続ケーブル部13及び洋上接続ケーブル部12は、海面近傍又は海面より上方にあって、直射日光等に直接晒されるような場合、通常、高い熱負荷12t,13tを受ける。しかしながら、電力ケーブルシステム100は、陸上接続ケーブル部13及び洋上接続ケーブル部12の熱を放散させて冷却する熱放散促進システム20を備えているので、陸上接続ケーブル部13及び洋上接続ケーブル部12における熱負荷12t,13tが低減され、海底ケーブル部11における熱負荷11tより小さい熱負荷12t,13tを受ける。
したがって、電力ケーブル10において、海底ケーブル部11の熱負荷11tを、電力ケーブル10における熱負荷の中で最も高い、いわゆる、サーマルボトルネックにできる。そして、海底ケーブル部11の熱負荷11tに基づいて、電力ケーブル10の全体の導体断面積を設計できる。よって、電力ケーブル10の導体の断面積をサイズダウンでき、高価な銅製の導体の断面積をできるだけ小さくすることでコストを抑制できる。
【0020】
(熱放散促進システム)
電力ケーブルシステム100は、熱放散促進システム20を備えている。
熱放散促進システム20は、陸上接続ケーブル部13又は洋上接続ケーブル部12の熱を放散させて冷却するものである。
熱放散促進システム20は、陸上接続ケーブル部13の熱負荷13t又は洋上接続ケーブル部12の熱負荷12tを、海底ケーブル部11の熱負荷11tより小さくできるものであればよい。陸上接続ケーブル部13の熱負荷13t又は洋上接続ケーブル部12の熱負荷12tを、海底ケーブル部11の熱負荷11tより小さくできるものは、例えば、以下に示す第1実施形態の熱放散促進システム21における冷却フィン212であってよい。
【0021】
[熱放散促進システムの第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る電力ケーブルシステム100における熱放散促進システム21を説明する。
図2は、第1実施形態に係る電力ケーブルシステム100における熱放散促進システム21の説明図である。図3は、保護管に設けられた冷却フィンの説明図である。図4は、連絡管215に設けられた冷却フィン216の説明図である。
【0022】
図2に示すように、電力ケーブルシステム100の熱放散促進システム21は、洋上接続ケーブル部12を囲む保護管211を有している。そして、保護管211は、冷却フィン212を有している。なお、保護管211は、アルファベットのJ字状に曲がっていることから、J-tubeともいう。これにより、冷却フィン212が、冷却フィン212に触れた外気と保護管211との間の熱交換を促進させるので、保護管211に囲まれた洋上接続ケーブル部12の熱の放散を促進させることができ、洋上接続ケーブル部を効果的に冷却できる。なお、風速が早いほど、風力発電量が大きく、電流値が大きく、ケーブルの発熱量が多くなり、より大きな冷却を必要とする一方で、冷却フィン212による熱交換も促進されて冷却効果も高くなる。
また、熱放散促進システム21は、自然風によって、冷媒R(例えば、海水、空気等)の循環路を形成する管状体の一部から熱を奪うことで、循環路の内側にある冷媒Rに温度差を生じさせて、対流の作用により、冷媒Rを循環させることができる。このように、電力ケーブルシステム100は、電源不要な熱放散促進システム21を有している。よって、冷媒Rを循環させるためのエネルギーを供給する電源等を特別に用意することなく、洋上接続ケーブル部12を冷却できる。
【0023】
冷却フィン212は、耐候性が高く、熱伝導性の高い金属製であることが好ましい。冷却フィン212は、例えば、ステンレス鋼製である。
【0024】
冷却フィン212は、図3に示すような、一対の半割クランプ217の外表面に形成されていてよい。冷却フィン212は、半割クランプ217の外表面に、互いに間隔を空けて複数設けられている。冷却フィン212は、それぞれ、保護管211から離れる方向に向けて突出している。そして、冷却フィン212が形成された半割クランプ217は、保護管211を両側方から挟んだ状態で、ボルト及びナットの組み合わせのような不図示の締結具によって、保護管211に取り付けられる。
【0025】
冷媒Rは、少なくとも、保護管211と洋上接続ケーブル部12との間に形成される循環路を流れる流体である。冷媒Rは、外気(空気)であってよく、環境温度で凍結を起こさない不凍液であってよく、水道水であってよく、海水であってもよい。
【0026】
熱放散促進システム21は、保護管211と、保護管211の下端に接続される第1接続部213と、保護管211の上端に接続される第2接続部214と、を備えている。
また、熱放散促進システム21は、第1接続部213と第2接続部214とに連通する連絡管215を備えている。連絡管215の内側には、冷媒Rの流路となる空洞が形成されている。
熱放散促進システム21は、第1接続部213、保護管211、第2接続部214及び連絡管215により、これらの内側に連通する冷媒Rの循環路を形成している。よって、冷媒Rを、循環路の途中となる保護管211と洋上接続ケーブル部12との間の空隙に通し、循環させることができるので、冷媒Rと洋上接続ケーブル部12との熱交換を促進させることができる。よって、洋上接続ケーブル部12の熱を効果的に放散させることができ、洋上接続ケーブル部を効果的に冷却できる。
【0027】
保護管211は、内側の空洞に、洋上接続ケーブル部12を挿通している。保護管211は、洋上接続ケーブル部12に対して、冷媒Rの流路となるクリアランスが得られるように、洋上接続ケーブル部12の外径より、大きい内径を有している。
【0028】
電力ケーブル10は、洋上接続ケーブル部12と海底ケーブル部11との間に、適宜、ベンドスティフナ219を有している。ベンドスティフナ219は、洋上接続ケーブル部12の曲率を許容内にして過大な曲げモーメントを作用させないようにするため、洋上接続ケーブル部12の剛性を補っている。ベンドスティフナ219は、下端を、電力ケーブル10に接続させ、上端を、第1接続部213に接続させている。
【0029】
第1接続部213は、管状体である。第1接続部213の内側には、洋上接続ケーブル部12が、冷媒Rの循環路となる所定のクリアランスを介して貫通している。第1接続部213は、保護管211と連絡管215との間に冷媒Rを通すため、下端において、洋上接続ケーブル部12との間をシールされたベンドスティフナ219の上端に接続されており、上端において、冷媒Rの循環路を確保した状態で、保護管211の下端に接続されている。そして、第1接続部213は、側部に、冷媒Rの循環路を確保した状態で、連絡管215に接続される開口部を有している。
【0030】
第2接続部214は、管状体である。第2接続部214の内側には、洋上接続ケーブル部12が、冷媒Rの循環路となる所定のクリアランスを介して貫通している。第2接続部214は、保護管211と連絡管215との間に冷媒Rを通すため、上端において洋上接続ケーブル部12との間をシールされており、下端において、冷媒Rの循環路を確保した状態で、保護管211の上端に接続されている。そして、第2接続部214は、側部に、冷媒Rの循環路を確保した状態で、連絡管215に接続される開口部を有している。
【0031】
連絡管215は、第1接続部213と第2接続部214との間に渡される管状体である。連絡管215は、外気に露出しているので、外気と熱交換することで、連絡管215を通る冷媒を冷却する。連絡管215は、冷却フィン216を有していてもよい。冷却フィン216は、例えば、図4に示すような、リング状の板を、連絡管215の延在方向に沿って互いに間隔を空けて複数並べたものであってよい。このように、連絡管215は、冷却フィン216を有しているので、連絡管215と外気との間で効果的に熱交換でき、連絡管215の内側の循環路を流れる冷媒Rを冷却できる。よって、循環路を循環する冷媒Rにより、洋上接続ケーブル部12を冷却できる。
【0032】
このように、洋上接続ケーブル部12は、洋上接続ケーブル部12を囲む、冷却フィン212を有する保護管211を有する。このため、保護管211と第1接続部213と第2接続部214と連絡管215とで形成された循環路に、特別な電源等の動力を要することなく、図2の矢印で示すように、冷媒Rを循環させるとともに、冷媒Rを冷却することができる。よって、冷媒Rに触れる洋上接続ケーブル部12を冷却でき、洋上接続ケーブル部12の熱負荷12tを海底ケーブル部11の熱負荷11tより小さくできる。
【0033】
[熱放散促進システムの第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電力ケーブルシステム100における熱放散促進システム22を説明する。
図5は、第2実施形態に係る電力ケーブルシステム100における熱放散促進システム22の説明図である。図6は、フロート225及びポンプ226の説明図である。図7は、フロート225及びポンプ226による冷媒吐出時の説明図である。図8は、フロート225及びポンプ226による冷媒吸込時の説明図である。
【0034】
図5に示すように、電力ケーブルシステム100の熱放散促進システム22は、海面の上下動に応じて上下動するフロート225と、フロート225の上下動により洋上接続ケーブル部12の表面に冷媒R(例えば、海水)を流すポンプ226と、を有している。
【0035】
また、電力ケーブルシステム100の熱放散促進システム22は、洋上接続ケーブル部12を囲む保護管221を有している。なお、保護管221は、適宜、第1実施形態で説明された冷却フィン212を有していてもよい。
【0036】
冷媒Rは、少なくとも、保護管221と洋上接続ケーブル部12との間に形成される循環路を流れる流体である。冷媒Rは、環境温度で凍結を起こさない不凍液であってよく、水道水であってよく、海水であってもよい。
【0037】
熱放散促進システム22は、保護管221と、保護管221の下端に接続される第1接続部223と、保護管221の上端に接続される第2接続部224と、を備えている。
また、熱放散促進システム22は、第1接続部223に連通する吸込管222と、第2接続部224に連通する吐出管227と、吐出管227と吸込管222との間に設けられるポンプ226と、を備えている。
熱放散促進システム21は、保護管221、第1接続部223、吸込管222、ポンプ226、吐出管227及び第2接続部224により、これらの内側に連通する冷媒Rの循環路を形成している。そして、ポンプ226は、海面の上下動に応じて上下するフロートの作用により、吸込管222から冷媒Rを吸い込み、冷媒Rを吐出管227に吐出する。よって、冷媒Rを、循環路の途中となる保護管221と洋上接続ケーブル部12との間の空隙に通し、循環させることができるので、冷媒Rと洋上接続ケーブル部12との熱交換を促進させることができる。よって、洋上接続ケーブル部12の熱を効果的に放散させることができ、洋上接続ケーブル部を効果的に冷却できる。
また、熱放散促進システム22は、自然に生じる海面の上下動を利用してポンプ226を駆動することで、冷媒Rを循環させることができる。よって、冷媒Rを循環させるためのエネルギーを供給する電源等を特別に用意することなく、洋上接続ケーブル部12を冷却できる。
【0038】
保護管221は、内側の空洞に、洋上接続ケーブル部12を挿通している。保護管221は、洋上接続ケーブル部12に対して、冷媒Rの流路となるクリアランスが得られるように、洋上接続ケーブル部12の外径より、大きい内径を有している。
【0039】
電力ケーブル10は、洋上接続ケーブル部12と海底ケーブル部11との間に、適宜、ベンドスティフナ229を有している。ベンドスティフナ229は、洋上接続ケーブル部12の曲率を許容内にして過大な曲げモーメントを作用させないようにするため、洋上接続ケーブル部12の剛性を補っている。ベンドスティフナ229は、下端を、電力ケーブル10に接続させ、上端を、第1接続部223に接続させている。
【0040】
第1接続部223は、管状体である。第1接続部223の内側には、洋上接続ケーブル部12が、冷媒Rの循環路となる所定のクリアランスを介して貫通している。第1接続部223は、保護管221と吸込管222との間に冷媒Rを通すため、下端において、洋上接続ケーブル部12との間をシールされたベンドスティフナ219の上端に接続されており、上端において、冷媒Rの循環路を確保した状態で、保護管221の下端に接続されている。そして、第1接続部223は、側部に、冷媒Rの循環路を確保した状態で、吸込管222に接続される開口部を有している。
【0041】
第2接続部224は、管状体である。第2接続部224の内側には、洋上接続ケーブル部12が、冷媒Rの循環路となる所定のクリアランスを介して貫通している。第2接続部224は、保護管221と吐出管227との間に冷媒Rを通すため、上端において洋上接続ケーブル部12との間をシールされており、下端において、冷媒Rの循環路を確保した状態で、保護管221の上端に接続されている。そして、第2接続部224は、側部に、冷媒Rの循環路を確保した状態で、吐出管227に接続される開口部を有している。
【0042】
吸込管222は、第1接続部223とポンプ226の吸込ポート226i(図6参照)との間に渡される管状体である。吸込管222は、外気及び海水に露出しているので、外気と熱交換することで、吸込管222を通る冷媒を冷却する。なお、吸込管222は、適宜、冷却フィンを有していてもよい。
【0043】
吐出管227は、第2接続部224とポンプ226の吐出ポート226e(図6参照)との間に渡される管状体である。吐出管227は、外気に露出しているので、外気と熱交換することで、吐出管227を通る冷媒を冷却する。なお、吐出管227は、適宜、冷却フィンを有していてもよい。
【0044】
図6に示すように、ポンプ226は、フロート225に設けられたピストン225pが摺動する内壁で区画されたチャンバを有するシリンダ226cと、シリンダ226cのチャンバに一端を連通させ、他端を吸込管222に連通させた吸込ポート226iと、シリンダ226cのチャンバに一端を連通させ、他端を吐出管227に連通させた吐出ポート226eと、を備えている。
なお、ポンプ226は、フロート225に作用する上向きの浮力に対するカウンターウェイト226wを、適宜、備えていてもよい。
なお、シリンダ226cは、チャンバ内に、ピストン225pと循環路とを区画して冷媒の漏出を防ぐための隔膜を備えていてもよい。
【0045】
吸込ポート226iは、冷媒を、吸込管222からシリンダ226cに向けて通すが、その逆向きであるシリンダ226cから吸込管222に向けては通さない機能を有する吸込側逆止弁Biを備えている。
【0046】
吐出ポート226eは、冷媒を、シリンダ226cから吐出管227に向けて通すが、その逆向きである吐出管227からシリンダ226cに向けては通さない機能を有する吐出側逆止弁Beを備えている。
【0047】
フロート225は、海面に浮くように設定されたタンク225tと、ポンプ226のチャンバに摺動自在に嵌るピストン225pと、を有している。タンク225tは、空気を包んだ箱状の容器であってよく、複数の気孔を有する発泡体であってもよい。ピストン225pは、鉛直に沿って延びる柱状体であり、上端に、シリンダ226cのチャンバの内壁と接するガスケット225gを有していてもよい。
【0048】
次に、フロート225と協働するポンプ226の動作について説明する。
図7に示すように、海面が上昇すると、フロート225に作用する上向きの浮力が高まり、フロート225のピストン225pが、シリンダ226cの内壁に沿って、シリンダ226cに対して相対的に上方に摺動する。すると、吸込側逆止弁Biは閉じた状態になり、吐出側逆止弁Beは開いた状態になるので、シリンダ226cのチャンバ内にある冷媒は、ピストン225pに押されて、吐出管227に吐出される。
【0049】
また、図8に示すように、海面が下降すると、フロート225の自重により、フロート225のピストン225pが、シリンダ226cの内壁に沿って、シリンダ226cに対して相対的に下方に摺動する。すると、吸込側逆止弁Biは開いた状態になり、吐出側逆止弁Beは閉じた状態になるので、吸込管222から冷媒が吸い込まれて、シリンダ226cのチャンバ内に満たされる。
【0050】
そして、海面は、上昇及び下降を自然に繰り返すので、海面の上下動に応じて、ポンプ226とフロート225とが協働して、シリンダ226cのチャンバ内をピストン225pが進退することにより、冷媒を、吸込管222からポンプ226を介して、吐出管227に向けて流し、循環路を循環させることができる。
このように、電力ケーブルシステム100の熱放散促進システム22は、海面の上下動に応じて上下動するフロート225と、フロート225の上下動により洋上接続ケーブル部12の表面に冷媒Rを流すポンプ226と、を有している。そして、ポンプ226は、循環路の途中にあり、海面の上下動に応じて上下動するフロート225の作用によって駆動するので、循環路に、特別な電源等の動力を要することなく、図5の矢印で示すように、冷媒Rを循環させるとともに、冷媒Rを冷却することができる。よって、冷媒Rに触れる洋上接続ケーブル部12を冷却でき、洋上接続ケーブル部12の熱負荷12tを海底ケーブル部11の熱負荷11tより小さくできる。
【0051】
[熱放散促進システムの第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る電力ケーブルシステム100における熱放散促進システム24を説明する。
図9は、第3実施形態に係る電力ケーブルシステム100における熱放散促進システム24の説明図である。
【0052】
図9に示すように、熱放散促進システム24は、第2実施形態と同様に、海面の上下動に応じて上下動するフロート225と、フロート225の上下動により洋上接続ケーブル部12の表面に冷媒R(例えば、海水)を流すポンプ226と、を有している。
【0053】
ここで、電力ケーブルシステム100の熱放散促進システム24は、海岸部SNに埋設され、取水管241と放水管242と鞘管243とを有する海水循環路244を有している。そして、海水循環路244は、陸上接続ケーブル部13に沿っている。このため、フロート225及びポンプ226の作用により、取水管241と放水管242とを有する海水循環路244に、図9の矢印で示すように、海水を循環させることができる。よって、海水による熱交換により、陸上接続ケーブル部13を冷却でき、陸上接続ケーブル部13の熱負荷13tを海底ケーブル部11の熱負荷11tより小さくできる。
【0054】
詳細には、海水循環路244は、陸上接続ケーブル部13を収める鞘管243を有している。言い換えると、鞘管243は、陸上接続ケーブル部13を挿通させた状態で、海岸部SNに埋設されている。
鞘管243は、土圧に応じた変形によって挿通されている電力ケーブル10に圧力をかけない程度の剛性を有する管である。海水を流す流路を確保するため、鞘管243の内径は、電力ケーブル10の外径より大きい。
取水管241の一端は、ポンプ226の吐出ポート226eに接続されている。また、取水管241の他端は、鞘管243の陸上側端部に設けられた陸上接続部243Gに接続されている。鞘管243の陸上側端部は、海水循環路244を循環する海水を漏らさないように陸上接続部243Gによってシールされている。
放水管242の一端は、ポンプ226の吸込ポート226iに接続されている。また、放水管242の他端は、鞘管243の海底側端部に設けられた海底接続部243Sに接続されている。鞘管243の海底側端部は、海水循環路244を循環する海水を漏らさないように海底接続部243Sによってシールされている。
熱放散促進システム24は、このように構成されているので、特別な動力に依ることなく、自然な潮の満ち引きによる海面の上下動に応じたフロート225及びポンプ226の作用により、海水を、電力ケーブル10の陸上接続ケーブル部13に沿って海水循環路244を循環させることができる。また、熱放散促進システム24は、電力ケーブル10の陸上接続ケーブル部13を収めた鞘管243を有するので、ポンプ226から流れる海水を、海岸部SNに埋設された鞘管243と陸上接続ケーブル部13との間に流すことができる。よって、直射日光等からの温度影響を鞘管243で抑制しつつ海岸部SNと鞘管243とを熱交換させながら、海水を、陸上接続ケーブル部13に直接的に接触させた状態で、陸上接続ケーブル部13に沿う経路で、継続的に流すことができる。よって、海水による熱交換により、陸上接続ケーブル部13を冷却でき、陸上接続ケーブル部13の熱負荷13tを海底ケーブル部11の熱負荷11tより小さくできる。
【0055】
以上、図面を参照して第1実施形態から第3実施形態について説明したが、本発明は上述のものに限られない。実施形態として挙げられた複数の特徴を、自由に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 電力ケーブル
11 海底ケーブル部
11t (海底ケーブル部の)熱負荷
12 洋上接続ケーブル部
12t (洋上接続ケーブル部の)熱負荷
13 陸上接続ケーブル部
13t (陸上接続ケーブル部の)熱負荷
14 陸上ケーブル部
15 ケーブル接続部
20,21,22,24 熱放散促進システム
30 渚マンホール
100 電力ケーブルシステム
211,221 保護管
212,216 冷却フィン
213,223 第1接続部
214,224 第2接続部
215 連絡管
217 半割クランプ
219,229 ベンドスティフナ
222 吸込管
225 フロート
225p ピストン
225t タンク
226 ポンプ
226c シリンダ
226e 吐出ポート
225g ガスケット
226i 吸込ポート
226w カウンターウェイト
227 吐出管
241 取水管
242 放水管
243 鞘管
243G 陸上接続部
243S 海底接続部
Be 吐出側逆止弁
Bi 吸込側逆止弁
R 冷媒
SB 海底
SN 海岸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9