IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特開2023-81435工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム
<>
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図1
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図2
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図3
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図4
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図5
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図6
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図7
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図8
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図9
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図10
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図11
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図12
  • 特開-工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081435
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/06 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B65H63/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195116
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】高椋 章太
(72)【発明者】
【氏名】福田 真樹
【テーマコード(参考)】
3F115
【Fターム(参考)】
3F115AA00
3F115CA34
3F115CA53
3F115CB18
3F115CD05
(57)【要約】
【課題】被製造物における厚みのムラの発生の有無を容易に評価することが可能な工程管理装置、工程管理方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】製造工程において長手方向に搬送されている被製造物の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を取得する取得部と、前記取得された厚み分布に基づき、前記被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する定量化部と、前記定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する出力処理部と、を備える工程管理装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程において長手方向に搬送されている被製造物の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を取得する取得部と、
前記取得された厚み分布に基づき、前記被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する定量化部と、
前記定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する出力処理部と、
を備える工程管理装置。
【請求項2】
前記定量化部は、前記取得された厚み分布の平均周りのモーメントを算出し、前記被製造物の幅方向における厚みのムラを、前記算出した平均周りのモーメントとして定量化する、
請求項1に記載の工程管理装置。
【請求項3】
前記定量化部は、前記平均周りのモーメントとして、前記厚み分布の分散、歪度、又は尖度のうち少なくともいずれか1つを算出する、
請求項2に記載の工程管理装置。
【請求項4】
前記出力処理部は、前記算出された分散、歪度、又は尖度のうち少なくともいずれか1つの時系列変化を示す情報を出力する、
請求項3に記載の工程管理装置。
【請求項5】
前記定量化された厚みのムラに基づく情報と、過去の実績データに基づき設定される閾値とを比較し、前記被製造物の状態が適切であるか否かを判定する判定部、
をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項6】
前記出力処理部は、判定結果に応じて前記被製造物の状態が適切であるか否かを示す情報を出力する、
請求項5に記載の工程管理装置。
【請求項7】
前記出力処理部は、判定結果に応じて製造環境の改善が必要であるか否かを示す情報を出力する、
請求項5又は請求項6に記載の工程管理装置。
【請求項8】
前記定量化部は、前記取得された厚み分布の各点における数値の差分から算出される傾きに基づき、当該厚み分布における定量化の対象範囲を決定する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項9】
前記定量化部は、前記傾きが最大の点及び最小の点をそれぞれ前記被製造物の幅方向における端点とし、前記被製造物の幅方向における各端点から所定の距離だけ前記幅方向の内側にある点をそれぞれ前記対象範囲の端点とする、
請求項8に記載の工程管理装置。
【請求項10】
前記出力処理部は、前記対象範囲の距離を出力する、
請求項8又は請求項9に記載の工程管理装置。
【請求項11】
前記定量化部は、前記取得された厚み分布を平滑化してから前記被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項12】
前記被製造物は、合成繊維である、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項13】
前記被製造物は、繊維状である、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項14】
前記製造工程は、紡糸工程である、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項15】
取得部が、製造工程において長手方向に搬送されている被製造物の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を取得する取得過程と、
定量化部が、前記取得された厚み分布に基づき、前記被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する定量化過程と、
出力処理部が、前記定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する出力処理過程と、
を含む工程管理方法。
【請求項16】
コンピュータを、
製造工程において長手方向に搬送されている被製造物の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を取得する取得手段と、
前記取得された厚み分布に基づき、前記被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する定量化手段と、
前記定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する出力処理手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程管理装置、工程管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂からシート、フィルムや繊維が生産されている。その生産工程には、ロールを用いた樹脂の大きな変形を伴う成形加工の工程があり、例えば、樹脂を薄い膜状に成型するフィルム化や、紡糸ノズルから吐出された樹脂を紡ぐ紡糸等の工程が知られている。このような生産工程では、様々なセンサ装置を利用して、工程が一定(安定)しているか否かの評価や工程が正常か否かの評価など、工程状況の評価が行われている。
【0003】
一例として、厚みが製品品質に直結し、製品規格や納入規格として規定されることが多いフィルムの生産工程では、厚みセンサを利用した工程状況の評価が行われている。例えば、厚みセンサによってフィルムの厚み分布が測定され、当該厚み分布を見た人によって、フィルムの厚みにムラが生じているか否かの評価が行われる。フィルムの生産工程において、フィルムの厚みのムラはトラブルの原因となる。そのため、下記特許文献1のように、厚みセンサによって測定される樹脂フィルムの幅方向の厚み分布に基づき、樹脂フィルムの幅方向の厚みが均一となるように制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-152097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、糸条の製造において、糸条の厚みのムラは、乾燥工程における温度のムラに繋がり、乾燥緻密化の状態ムラや、工程中のロール間での糸条のたるみや干渉による単繊維の損傷、糸切れなどの工程異常につながる。そのため、紡糸工程における糸条の厚み分布は、管理指標の1つとして用いられている。しかしながら、糸条の厚み分布を定量的に把握することは難しいため、人間の目視人によって糸条に厚みのムラが生じているか否かの評価が行われていた。評価の精度は、個々人の経験の差にも左右される。そのため、個々人の経験の差に関わらず、厚みのムラを容易に評価できることが望まれている。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、被製造物における厚みのムラの発生の有無を容易に評価することが可能な工程管理装置、工程管理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る工程管理装置は、製造工程において長手方向に搬送されている被製造物の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を取得する取得部と、前記取得された厚み分布に基づき、前記被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する定量化部と、前記定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する出力処理部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る工程管理方法は、取得部が、製造工程において長手方向に搬送されている被製造物の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を取得する取得過程と、定量化部が、前記取得された厚み分布に基づき、前記被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する定量化過程と、出力処理部が、前記定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する出力処理過程と、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、製造工程において長手方向に搬送されている被製造物の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を取得する取得手段と、前記取得された厚み分布に基づき、前記被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する定量化手段と、前記定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する出力処理手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被製造物における厚みのムラの発生の有無を容易に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る製造工程の概要と工程管理システムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る工程管理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る厚み分布の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る時間軸方向の中央値処理前の時刻t5における厚み分布の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る時刻t5における厚み分布に対して時間軸方向に5レコード分さかのぼった場合における中央値処理を行った厚み分布の一例を示す図である。
図6】本実施形態に係る時刻t6t5における厚み分布に対して時間軸方向に10レコード分さかのぼった場合における中央値処理を行った厚み分布の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る厚み分布の分散の時系列変化の一例を示す図である。
図8】本実施形態に係る厚み分布の歪度の時系列変化の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係る厚み分布の尖度の時系列変化の一例を示す図である。
図10】本実施形態に係る時刻t1における厚み分布の一例を示す図である。
図11】本実施形態に係る時刻t3における厚み分布の一例を示す図である。
図12】本実施形態に係る工程管理装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13】本実施形態に係る変形例の工程管理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。図面には、必要に応じて相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。各軸において、矢印が延びる方向を「正方向」、正方向と逆の方向を「負方向」と称する。
【0013】
<1.製造工程概要>
図1を参照して、本実施形態に係る製造工程の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る製造工程の概要と工程管理システムの構成の一例を示す図である。
製造工程は、例えば、原材料が成形加工されて被製造物が製造される成形加工工程である。原材料は、例えば、合成樹脂である。当該合成樹脂は、熱可塑性を有する熱可塑性樹脂である。成形加工工程では、合成樹脂が加工され、フィルム、シート、繊維等の樹脂加工品が被製造物として製造される。
【0014】
以下では、一例として、成形加工工程が紡糸工程であり、被製造物が繊維状の合成繊維である例について説明する。繊維状の合成繊維は、例えば、トウ(繊維束)である。図1に示すように、紡糸工程は、凝固工程と、洗浄工程と、延伸工程と、油剤付与工程と、乾燥工程と、巻取工程とを含む。
【0015】
凝固工程では、原材料である紡糸原液が紡糸ノズル2の吐出孔から凝固液3へ吐出され、凝固液3中で糸状に凝固したトウ4はローラー5によって引き上げられる。引き上げられたトウ4は、洗浄工程へ搬送される。
洗浄工程では、トウ4が温水6によって洗浄され、トウ4から溶媒が取り除かれる。洗浄後のトウ4は、延伸工程へ搬送される。
延伸工程では、トウ4が熱水7の中で延伸される。延伸後のトウ4は、油剤付与工程へ搬送される。
油剤付与工程では、トウ4に油剤8が付与される。油剤付与後のトウ4は、乾燥工程へ搬送される。
乾燥工程では、熱を加えることでトウ4が乾燥される。乾燥後のトウ4は、巻取工程へ搬送される。
巻取工程では、トウ4の巻き取りが行われる。トウ4は、例えば、ボビンに巻き取られる。
【0016】
<2.工程管理システムの構成>
以上、本実施形態に係る製造工程の概要について説明した。続いて、図1を参照して、本実施形態に係る工程管理システムの構成について説明する。
図1に示すように、工程管理システム1は、工程管理装置10と、厚みセンサ20と、ユーザ端末30とを備える。
【0017】
(1)工程管理装置10
工程管理装置10は、製造工程の管理を行う装置である。工程管理装置10には、例えば、サーバ装置が用いられる。当該サーバ装置は、工程管理システム1の提供者又はユーザが有するサーバであってもよいし、クラウドサーバであってもよい。工程管理装置10は、入力装置(マウス、キーボード、タッチパネル等)、表示装置(ディスプレイ等)、出力装置(スピーカ、データ出力機能)、中央処理装置、記憶装置等を備える。
工程管理装置10は、厚みセンサ20及びユーザ端末30と通信可能に接続される。工程管理装置10は、厚みセンサ20から受信する情報に基づき処理を行い、処理の結果を示す情報をユーザ端末30へ送信する。
【0018】
(2)厚みセンサ20
厚みセンサ20は、トウ4の厚み分布を測定するセンサ装置である。厚みセンサ20は、例えば、紡糸工程にて長手方向に搬送されているトウ4の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を測定する。長手方向は、図1に示すZ軸方向であり、幅方向は、図1に示すX軸方向である。厚みセンサ20は、例えば、油剤付与工程と乾燥工程との間にある位置SP1の厚み分布を測定するよう設けられる。
なお、厚みセンサ20が設けられる位置は、かかる例に限定されず、紡糸工程における任意の位置に設けられてよい。また、紡糸工程全体に設けられる厚みセンサ20の数と、1つの位置に設けられる厚みセンサ20の数は、特に限定されず、任意の数の厚みセンサ20が設けられてよい。
厚みセンサ20は、工程管理装置10と通信可能に接続される。厚みセンサ20は、測定した厚み分布を工程管理装置10へ送信する。
【0019】
(3)ユーザ端末30
ユーザ端末30は、ユーザによって利用される端末である。ユーザ端末30は、例えば、コンピュータ、スマートフォン、タブレット等のような端末であればいずれを用いるようにしてもよい。ユーザ端末30は、入力装置(マウス、キーボード、タッチパネル等)、表示装置(ディスプレイ等)、出力装置(スピーカ、データ出力機能)、中央処理装置、記憶装置等を備える。
【0020】
ユーザ端末30は、工程管理装置10と通信可能に接続される。ユーザ端末30は、工程管理装置10から受信する情報を表示装置に表示する。
【0021】
<3.工程管理装置の機能構成>
以上、本実施形態に係る工程管理システム1の構成について説明した。続いて、図2図11を参照して、本実施形態に係る工程管理装置10の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る工程管理装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、工程管理装置10は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを備える。
【0022】
(1)通信部110
通信部110は、各種情報の送受信を行う機能を有する。例えば、通信部110は、有線通信又は無線通信によって、厚みセンサ20と通信を行う。通信部110は、厚みセンサ20との通信において、トウ4の幅方向における厚み分布を受信する。また、通信部110は、有線通信又は無線通信によって、ユーザ端末30と通信を行う。通信部110は、ユーザ端末30との通信において、厚み分布に基づき生成された情報などを送信する。
【0023】
(2)記憶部120
記憶部120は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部120は、工程管理装置10がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
記憶部120は、例えば、通信部110が厚みセンサ20から受信した厚み分布や、当該厚み分布に基づき生成された情報などを記憶する。
【0024】
(3)制御部130
制御部130は、工程管理装置10の動作全般を制御する機能を有する。制御部130は、例えば、工程管理装置10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部130は、取得部131と、定量化部132と、出力処理部133とを備える。
【0025】
(3-1)取得部131
取得部131は、各種情報を取得する機能を有する。例えば、取得部131は、紡糸工程において長手方向に搬送されているトウ4の幅方向における厚み分布を取得する。具体的に、取得部131は、通信部110が厚みセンサ20から受信した厚み分布を取得する。取得部131は、取得した厚み分布を定量化部132へ出力する。
【0026】
(3-2)定量化部132
定量化部132は、トウ4における厚みのムラを定量化する機能を有する。例えば、定量化部132は、取得部131によって取得された厚み分布に基づき、トウ4の幅方向における厚みのムラを定量化する。
具体的に、定量化部132は、取得部131によって取得された厚み分布の平均周りのモーメントを算出する。そして、定量化部132は、トウ4の幅方向における厚みのムラを、算出した平均周りのモーメントとして定量化する。平均周りのモーメントは、例えば、分散、歪度、及び尖度である。定量化部132は、平均周りのモーメントとして、厚み分布の分散、歪度、又は尖度のうち少なくともいずれか1つを算出する。
【0027】
ここで、図3を参照して、厚みセンサ20によって測定される厚み分布について説明する。図3は、本実施形態に係る厚み分布の一例を示す図である。図3に示すグラフは、厚み分布を示している。当該グラフの横軸はトウ4の幅方向における位置を示し、縦軸は厚みの値を示している。
図3に示すように、厚み分布の両端付近の厚みは、厚み分布の中央付近の厚みと比較しで小さい値が測定されている。トウ4の幅方向において、端点付近の点では厚みの変化が非常に大きく、端点付近の点における厚みがムラの指標へ与える影響も大きくなる。そのため、端点付近の点における厚みが厚み分布の定量化の対象に含まれると、厚みのムラに関する正確な判断が行いづらくなる。そのため、トウ4の幅方向における端点付近の点は、定量化の対象から除外されることが好ましい。
【0028】
そこで、定量化部132は、取得部131によって取得された厚み分布からノイズとなる厚みを予め除去して、厚み分布における定量化の対象範囲を決定する。例えば、定量化部132は、取得部131によって取得された厚み分布の各点における数値の差分から算出される傾きに基づき、当該厚み分布における定量化の対象範囲を決定する。
具体的に、定量化部132は、厚み分布において傾きが最大の点及び最小の点をそれぞれトウ4の幅方向における端点(以下、「トウ幅端点」とも称される)とし、トウ4の幅方向における各端点から所定の距離だけ幅方向の内側にある点をそれぞれ対象範囲の端点(以下、「対象範囲端点」とも称される)とする。即ち、定量化部132は、2つのトウ幅端点間の距離をトウ幅とし、2つの対象範囲端点間の範囲を定量化の対象範囲とする。
【0029】
まず、定量化部132は、厚み分布の各点における数値の差分から各点における傾きを算出する。定量化部132は、算出した各傾きに基づき、傾きが最大の点と最小の点をそれぞれトウ4の幅方向における端点と決定する。即ち、傾きが最大の点と最小の点との間の距離がトウ幅である。図3に示す例の場合、傾きが最大の点はTP1における点であり、傾きが最小の点はTP2における点である。
【0030】
次いで、定量化部132は、傾きが最大の点から所定の距離だけ厚み分布の幅方向の内側にある点(中央寄りの点)と、傾きが最小の点から所定の距離だけ厚み分布の幅方向の内側にある点(中央寄りの点)となる2点を決定する。所定の距離は、ユーザによって任意に決定された値でよく、例えばトウ幅において厚みの変化が非常に大きい端点付近の厚みを除外できるだけの距離である。定量化部132は、決定した2点をそれぞれ定量化の対象範囲の端点とする。図3に示す例の場合、傾きが最大の点であるTP1における点から所定の距離だけ厚み分布の内側にある点はEP1における点であり、傾きが最小の点であるTP2における点から所定の距離だけ厚み分布の内側にある点はEP2における点である。
定量化部132は、このようにして定量化の対象範囲の端点を決定することで、当該端点間の範囲を定量化の対象範囲と決定することができる。図3に示す例の場合、端点EP1と端点EP2の間の範囲が定量化の対象範囲である。
定量化部132は、上述したように定量化の対象範囲を決定することで、トウ幅において厚みの変化が非常に大きい端点付近の厚みを定量化の対象から除外することができる。これにより、定量化部132は、トウ幅の端点付近の厚みがムラの指標へ与える影響を低減することができ、厚みのムラに関する正確な判断を行いやすくすることができる。
【0031】
なお、定量化部132は、ノイズの影響をより小さくするために、取得部131によって取得された厚み分布を平滑化してからトウ4の幅方向における厚みのムラを定量化する。例えば、定量化部132は、時間軸方向(即ちトウ4の長手方向)の中央値処理によって厚み分布を平滑化する。
本実施形態では、厚み分布に対する傾きを算出し、傾きの最大最小に基づき定量化の対象範囲を決定している。厚み分布にノイズが存在すると、傾きが著しく大きく又は小さくなるため、実際の定量化の対象範囲が想定と大きくずれてしまう。そのため、定量化の対象範囲を決定する前に厚み分布を平滑化することで、厚み分布のノイズを減らし、定量化の対象範囲が想定よりも大きくずれることを防ぐことができる。
また、厚み分布の平滑化は、トウ幅方向の中央値処理によって行うことも可能である。しかしながら、トウ幅方向の中央値処理では、生データと処理後のデータとの誤差が大きく出てしまう。これに対し、時間軸方向の中央値処理ではこの誤差を小さくすることができる。
また、時間軸方向の中央値処理では、中央値処理の対象とする時間軸方向の時間が長ければ長いほどノイズの影響を小さくすることができるが、その分、工程の変動に対する応答性が低下してしまう。そのため、中央値処理の対象とする時間軸方向の時間は、工程の変動に対する応答性を考慮して決定することが好ましい。
【0032】
ここで、図4から図6を参照して、時間軸方向の中央値処理の実施結果について説明する。
図4は、本実施形態に係る時間軸方向の中央値処理前の時刻t5における厚み分布の一例を示す図である。図4に示す厚み分布では、端点EP1と端点EP2との間の対象範囲においてノイズによる外れ値が多く発生している。
図5は、本実施形態に係る時刻t5における厚み分布に対して時間軸方向に5レコード分さかのぼった場合における中央値処理を行った厚み分布の一例を示す図である。図5に示す厚み分布は、図4に示す厚み分布に対して時間軸方向の中央値処理が行われている。これにより、図5に示す厚み分布では、図4に示す厚み分布と比較して、端点EP1と端点EP2との間の対象範囲においてノイズによる外れ値が減少し、厚み分布が滑らかになっている。
図6は、本実施形態に係る時刻t6t5における厚み分布に対して時間軸方向に10レコード分さかのぼった場合における中央値処理を行った厚み分布の一例を示す図である。図6に示す厚み分布は、図5より長い時間の時間軸方向の中央値処理が行われている。これにより、図6に示す厚み分布では、図5に示す厚み分布と比較して、端点EP1と端点EP2との間の対象範囲においてノイズによる外れ値がさらに減少し、厚み分布がより滑らかになっている。
このように、定量化部132は、時間軸方向の中央値処理によって、厚み分布を平滑化し、ノイズが厚みのムラの定量化に与える影響を低減することができる。この時の中央値にかかわるレコード幅は、処理が長すぎる場合、厚み分布の経時的な変化に対する感度が低下する。一方で、処理が短すぎる場合、ノイズの影響を受けてしまう可能性が高い。このため、最低でも3レコード以上さかのぼった中央値処理を行うことが必要であり、望ましくは5レコード程度から10レコード程度であるとよい。
【0033】
(3-3)出力処理部133
出力処理部133は、各種の出力を制御する機能を有する。例えば、出力処理部133は、定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する。以下、出力処理部133が出力する情報は、「出力情報」とも称される。一例として、出力処理部133は、定量化部132によって算出された厚み分布の分散、歪度、又は尖度のうち少なくともいずれか1つの時系列変化を示す情報を出力する。
出力処理部133によって出力される出力情報は、通信部110を介してユーザ端末30へ送信され、ユーザ端末30の表示装置に表示される。
【0034】
ここで、図7から図11を参照して、出力処理部133によって出力される出力情報について説明する。
【0035】
図7は、本実施形態に係る厚み分布の分散の時系列変化の一例を示す図である。図7に示すグラフは、厚み分布の分散の時系列変化を示している。当該グラフの横軸は時刻を示し、縦軸は分散の値を示している。
図7は、厚みセンサ20によって実測された厚み分布から算出した分散をグラフ化したものである。図7に示す時刻t1は、紡糸工程におけるトラブルが発生していない時刻を示している。また、図7に示す時刻t2、t3、及びt4は、紡糸工程におけるトラブルが発生した時刻を示している。
【0036】
図8は、本実施形態に係る厚み分布の歪度の時系列変化の一例を示す図である。図8に示すグラフは、厚み分布の歪度の時系列変化を示している。当該グラフの横軸は時刻を示し、縦軸は歪度の値を示している。
図8は、厚みセンサ20によって実測された厚み分布から算出した歪度をグラフ化したものである。図8に示す時刻t1は、紡糸工程におけるトラブルが発生していない時刻を示している。また、図8に示す時刻t2、t3、及びt4は、紡糸工程におけるトラブルが発生した時刻を示している。
【0037】
図9は、本実施形態に係る厚み分布の尖度の時系列変化の一例を示す図である。図9に示すグラフは、厚み分布の尖度の時系列変化を示している。当該グラフの横軸は時刻を示し、縦軸は尖度の値を示している。
図9に示す厚み分布の尖度のグラフは、厚みセンサ20によって実測された厚み分布から算出した尖度をグラフ化したものである。図9に示す時刻t1は、紡糸工程におけるトラブルが発生していない時刻を示している。また、図9に示す時刻t2、t3、及びt4は、紡糸工程におけるトラブルが発生した時刻を示している。
【0038】
図10は、本実施形態に係る時刻t1における厚み分布の一例を示す図である。図7から図9に示したように、時刻t1では紡糸工程におけるトラブルが発生していない。即ち、図10に示す厚み分布は、紡糸工程におけるトラブルが発生していない場合の厚み分布である。
【0039】
図11は、本実施形態に係る時刻t3における厚み分布の一例を示す図である。図7から図9に示したように、時刻t3では紡糸工程におけるトラブルが発生している。即ち、図11に示す厚み分布は、紡糸工程におけるトラブルが発生している場合の厚み分布である。
【0040】
図7から図9に示したグラフより、時刻t1のように分散、歪度、及び尖度が安定している場合には紡糸工程におけるトラブルが発生していない。一方、時刻t2、t3、及び時刻t4のように分散、歪度、及び尖度が増加傾向にある場合には紡糸工程におけるトラブルが発生している。
ここで、トラブルは、厚みのムラに起因して生じるものであり、例えば、糸切れである。即ち、トラブルが発生していないということは厚みのムラが生じておらず、トラブルが発生しているということは厚みのムラが生じているといえる。
これより、ユーザは、厚みのムラが定量化された情報である厚み分布の分散、歪度、又は分散のグラフの少なくともいずれか1つを見ることで、それぞれの値が増加傾向にあるか否かによってトウ4の厚みにムラが生じているか否かを評価することができる。
【0041】
一方、紡糸工程におけるトラブルが発生していない時刻の厚み分布を示す図10のグラフと、紡糸工程におけるトラブルが発生した時刻の厚み分布を示す図11のグラフとを比較しても、両者の間に大きな違いはなく、トラブルが発生していない時のグラフの特徴とトラブルが発生していない時のグラフの特徴の違いを評価することは困難である。そのため、厚みのムラの定量化前の情報である厚み分布から、トウ4の厚みにムラが生じているか否かを評価することは困難である。
【0042】
よって、ユーザは、厚みのムラの定量化前の情報である厚み分布ではなく、厚みのムラの定量化後の情報である平均周りのモーメントにより、トウ4の幅方向における厚みのムラの発生の有無を容易に評価することができる。ユーザは、厚みのムラの中でも特に、トラブルに起因する厚みのムラの発生の有無を容易に評価することができる。
【0043】
なお、図7から図9に示したグラフより、分散、歪度、及び尖度のグラフのうち、尖度のグラフにおける値の変化が一番大きい。よって、ユーザは、分散、歪度、及び尖度のグラフのうち、尖度のグラフを見ることで、厚みのムラの発生の有無を一番容易に評価できる。そのため、出力処理部133は、評価の容易さの観点から、分散、歪度、及び尖度のグラフのうち、少なくとも尖度のグラフを出力することが好ましい。
【0044】
<4.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る工程管理装置10の機能構成について説明した。続いて、図12を参照して、本実施形態に係る処理の流れについて説明する。図12は、本実施形態に係る工程管理装置10における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0045】
図12に示すように、まず、工程管理装置10の取得部131は、厚み分布を取得する(ステップS101)。具体的に、取得部131は、通信部110が厚みセンサ20から受信した厚み分布を取得する。
【0046】
次いで、工程管理装置10の定量化部132は、中央値処理を行う(ステップS102)。具体的に、定量化部132は、取得部131によって取得された厚み分布に対して時間軸方向の中央値処理を行い、厚み分布を平滑化する。これにより、定量化部132は、厚み分布のノイズが定量化に与える影響を低減することができる。
【0047】
次いで、定量化部132は、定量化の対象範囲を決定する(ステップS103)。具体的に、定量化部132は、中央値処理後の厚み分布の各点における厚みの数値の差分から各点における傾きを算出し、傾きが最大の点と最小の点を端点とするトウ幅を決定し、傾きが最大の点と最小の点から所定の距離だけトウ幅の内側にあるそれぞれの点を端点とする範囲を、定量化の対象範囲として決定する。これにより、定量化部132は、厚み分布のノイズが定量化に与える影響をさらに低減することができる。
【0048】
次いで、定量化部132は、平均周りのモーメントを算出する(ステップS104)。具体的に、定量化部132は、定量化の対象範囲における厚み分布の分散、歪度、及び尖度を平均周りのモーメントとして算出する。これにより、定量化部132は、厚みのムラを定量化することができる。
【0049】
次いで、工程管理装置10の出力処理部133は、出力情報を出力する(ステップS105)。具体的に、出力処理部133は、定量化部132によって算出された平均周りのモーメントの時系列変化を示す情報を出力情報として出力する。例えば、出力処理部133は、通信部110を介してユーザ端末30へ出力情報を送信し、ユーザ端末30に出力情報を表示させる。これにより、ユーザは、出力情報を見て厚みのムラの発生の有無を評価することができる。
出力後、工程管理装置10は、ステップS101から処理を繰り返す。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る工程管理装置10は、取得部131と、定量化部132と、出力処理部133とを備える。取得部131は、製造工程において長手方向に搬送されている被製造物の幅方向の各点における厚みを示す厚み分布を取得する。定量化部132は、取得された厚み分布に基づき、被製造物の幅方向における厚みのムラを定量化する。出力処理部133は、定量化された厚みのムラに基づく情報を出力する。
【0051】
かかる構成により、ユーザは、厚みのムラが定性的に示される厚み分布ではなく、工程管理装置10から出力される厚みのムラが定量的に示される情報より、被製造物に厚みのムラが発生しているか否かを評価することができる。これにより、ユーザは、個々人の経験の差にも左右されることなく、厚みのムラの発生の有無を容易に評価することができるようになる。
【0052】
よって、本実施形態に係る工程管理装置10は、被製造物における厚みのムラの発生の有無を容易に評価することを可能とする。
【0053】
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明した。続いて、本発明の実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0054】
上述の実施形態では、工程管理装置10とユーザ端末30がそれぞれ独立した構成である例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、工程管理装置10にユーザ端末30の機能が含まれてもよいし、ユーザ端末30に工程管理装置10の機能が含まれてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、平均周りのモーメントの時系列変化を示す情報が出力情報として出力される例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、トウ4の状態が適切であるか否かが判定された結果に応じた情報が出力情報として出力されてもよい。
ここで、図13を参照して、トウ4の状態が適切であるか否かが判定された結果に応じた情報が出力情報として出力される場合の工程管理装置の機能構成について説明する。図13は、本実施形態に係る変形例の工程管理装置10aの機能構成の一例を示すブロック図である。図13に示すように、工程管理装置10aの制御部130aは、工程管理装置10の制御部130が備える構成に加えて判定部134をさらに備える。
判定部134は、定量化された厚みのムラに基づく情報と、過去の実績データに基づき設定される閾値とを比較し、トウ4の状態が適切であるか否かを判定する。
具体的に、判定部134は、定量化部132によって算出された平均周りのモーメントが所定の閾値以上であるか否かによってトウ4の状態が適切であるか否かを判定する。そして、出力処理部133aは、判定結果に応じたす情報を出力する。
一例として、出力処理部133aは、判定結果に応じてトウ4の状態が適切であるか否かを示す情報を出力する。平均周りのモーメントが所定の閾値以上である場合、判定部134はトウ4の状態が適切でないと判定し、出力処理部133aはトウ4の状態が適切でないことを示す情報を出力情報として出力する。例えば、判定部134は厚みのムラが発生していると判定し、出力処理部133aは厚みのムラが発生していることを示す情報を出力する。
一方、平均周りのモーメントが所定の閾値未満である場合、判定部134はトウ4の状態が適切であると判定し、出力処理部133aは適切であることを示す情報を出力情報として出力する。例えば、判定部134は厚みのムラが発生していないと判定し、出力処理部133aは厚みのムラが発生していないことを示す情報を出力する。
【0056】
また、出力処理部133aは、判定結果に応じて製造環境の改善が必要であるか否かを示す情報を出力してもよい。具体的に、判定部134は定量化部132によって算出された平均周りのモーメントが所定の閾値以上であるか否かによってトウ4の製造環境の改善が必要であるか否かを判定し、出力処理部133aは判定結果を示す情報を出力する。
一例として、平均周りのモーメントが所定の閾値以上である場合、判定部134はトウ4の製造環境の改善が必要であると判定し、出力処理部133aはトウ4の製造環境の改善が必要であることを示す情報を出力情報として出力する。例えば、判定部134は厚みのムラが発生している場合には紡糸工程の製造条件の変更が必要であると判定し、出力処理部133aは紡糸工程の製造条件の変更が必要であることを示す情報を出力する。
一方、平均周りのモーメントが所定の閾値未満である場合、判定部134はトウ4の製造環境の改善が不要であると判定し、出力処理部133aはトウ4の製造環境の改善が不要であることを示す情報を出力情報として出力する。例えば、判定部134は厚みのムラが発生していない場合には紡糸工程の製造条件の変更が不要であると判定し、出力処理部133aは紡糸工程の製造条件の変更が不要であることを示す情報を出力する。なお、判定部134がトウ4の製造環境の改善が不要であると判定した場合、出力処理部133aはトウ4の製造環境の改善が不要であることを示す情報を出力情報として出力しなくてもよい。
【0057】
また、出力処理部133及び133aは、定量化の対象範囲の距離を示す情報を出力情報として出力してもよい。凝固工程にて、紡糸ノズル2の吐出孔から凝固液3へ吐出されるトウ4の量は一定である。そのため、厚みのムラが発生していなかったり、製造条件が変化していない場合、定量化の対象範囲の距離は大きく変化しない。一方、厚みのムラが発生していたり、製造条件が変化している場合、定量化の対象範囲の距離は変化し得る。これより、ユーザは、定量化の対象範囲の距離から、厚みのムラが発生しているか否かや、製造条件が変化しているか否かなどを評価することもできる。
【0058】
また、出力処理部133及び133aは、厚みのムラやトラブルの発生を予測する情報を出力してもよい。平均周りのモーメントが増加傾向にある場合、厚みのムラが生じる可能性や、厚みのムラが起因して紡糸工程におけるトラブルが発生する可能性がある。そこで、出力処理部133及び133aは、平均周りのモーメントが増加傾向にある場合、厚みのムラやトラブルが発生する可能性があると予測し、予測結果を示す情報を出力する。これにより、ユーザは、出力された予測結果に基づき対策を取り、厚みのムラやトラブルの発生を防止することができる。
【0059】
以上が、本発明の実施形態の変形例について説明である。
なお、上述した実施形態における工程管理装置10及び工程管理装置10aの一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間に、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0060】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…工程管理システム、2…紡糸ノズル、3…凝固液、4…トウ、5…ローラー、6…温水、7…熱水、8…油剤、10,10a…工程管理装置、20…厚みセンサ、30…ユーザ端末、110…通信部、120…記憶部、130,130a…制御部、131…取得部、132…定量化部、133,133a…出力処理部、134…判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13