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特開2023-81437工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081437
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】工程管理装置、工程管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/06 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B65H63/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195118
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】高椋 章太
(72)【発明者】
【氏名】福田 真樹
【テーマコード(参考)】
3F115
【Fターム(参考)】
3F115AA01
3F115CA23
3F115CA53
3F115CA58
3F115CB06
3F115CC17
3F115CD05
(57)【要約】
【課題】製造工程におけるトラブルの発生を容易に予測することが可能な工程管理装置、工程管理方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】複数の支持部材に支持されて張力がかかった状態で搬送されている被製造物の製造工程において、前記複数の支持部材のうち少なくとも2つの支持部材ごとに設けられたセンサ装置によって測定された前記支持部材の力学的な変動を示す変動情報を、少なくとも2つの前記センサ装置から取得する取得部と、取得された複数の前記変動情報に基づき、前記被製造物にかかっている前記張力の異常度を算出する演算部と、算出された前記異常度に基づく情報を出力する出力処理部と、を備える工程管理装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持部材に支持されて張力がかかった状態で搬送されている被製造物の製造工程において、前記複数の支持部材のうち少なくとも2つの支持部材ごとに設けられたセンサ装置によって測定された前記支持部材の力学的な変動を示す変動情報を、少なくとも2つの前記センサ装置から取得する取得部と、
取得された複数の前記変動情報に基づき、前記被製造物にかかっている前記張力の異常度を算出する演算部と、
算出された前記異常度に基づく情報を出力する出力処理部と、
を備える工程管理装置。
【請求項2】
前記演算部は、取得された複数の前記変動情報に対して主成分分析を行い、前記主成分分析の分析結果から前記異常度を算出する、
請求項1に記載の工程管理装置。
【請求項3】
前記演算部は、取得された複数の前記変動情報の各々に対して第1の主成分分析を行い、前記第1の主成分分析によって得られる複数の分析結果に対して第2の主成分分析を行う、
請求項2に記載の工程管理装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第1の主成分分析によって得られる複数の分析結果の各々から少なくとも第一主成分を抽出し、抽出した複数の主成分に対して前記第2の主成分分析を行う、
請求項3に記載の工程管理装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記第2の主成分分析における寄与率が前記製造工程の正常な状態の割合となるよう次元削減を行う、
請求項3又は請求項4に記載の工程管理装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記第1の主成分分析において抽出された複数の主成分に対して算出されたノルムと前記第2の主成分分析による次元削減後の複数の主成分に対して算出されたノルムとの差分を前記異常度として算出する、
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記製造工程における製造条件が加味された前記変動情報に基づき、前記異常度を算出する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項8】
前記出力処理部は、算出された前記異常度の時系列変化を示す情報を出力する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項9】
前記出力処理部は、算出された前記異常度が上昇傾向にあるか否かに応じて、前記製造工程におけるトラブルが発生するか否かを示す情報を出力する、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項10】
前記出力処理部は、算出された前記異常度が上昇傾向にあるか否かに応じて、前記被製造物の状態が適切であるか否かを示す情報を出力する、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項11】
前記出力処理部は、算出された前記異常度が上昇傾向にあるか否かに応じて、製造環境の改善が必要であるか否かを示す情報を出力する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項12】
前記出力処理部は、算出された前記異常度の変化への寄与度が高い工程箇所を示す情報を出力する、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項13】
前記支持部材の力学的な変動は、前記支持部材の加速度である、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項14】
前記センサ装置は、加速度センサであり、
前記変動情報は、前記加速度センサによって測定される前記支持部材の加速度である、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項15】
前記被製造物は、合成繊維である、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項16】
前記被製造物は、繊維状である、
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項17】
前記製造工程は、紡糸工程である、
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の工程管理装置。
【請求項18】
取得部が、複数の支持部材に支持されて張力がかかった状態で搬送されている被製造物の製造工程において、前記複数の支持部材のうち少なくとも2つの支持部材ごとに設けられたセンサ装置によって測定された前記支持部材の力学的な変動を示す変動情報を、少なくとも2つの前記センサ装置から取得する取得過程と、
演算部が、取得された複数の前記変動情報に基づき、前記被製造物にかかっている前記張力の異常度を算出する演算過程と、
出力処理部が、算出された前記異常度に基づく情報を出力する出力処理過程と、
を含む工程管理方法。
【請求項19】
コンピュータを、
複数の支持部材に支持されて張力がかかった状態で搬送されている被製造物の製造工程において、前記複数の支持部材のうち少なくとも2つの支持部材ごとに設けられたセンサ装置によって測定された前記支持部材の力学的な変動を示す変動情報を、少なくとも2つの前記センサ装置から取得する取得手段と、
取得された複数の前記変動情報に基づき、前記被製造物にかかっている前記張力の異常度を算出する演算手段と、
算出された前記異常度に基づく情報を出力する出力処理手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程管理装置、工程管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂からシート、フィルムや繊維が製造されている。その製造工程では、様々なセンサ装置を利用して、工程が一定(安定)しているか否かの評価や工程が正常か否かの評価など、工程状況の確認が行われている。製造工程には、ロールを用いた樹脂の大きな変形を伴う成形加工の工程があり、例えば、樹脂を薄い膜状に成型するフィルム化や、紡糸ノズルから吐出された樹脂を紡ぐ紡糸等の工程が知られている。
このような工程において、加えられた変形の履歴は、残留ひずみとして樹脂に記憶され、製品品質や加工安定性に強く影響を与えることが知られているものの、物理的制約や経済的制約により、センシング技術導入が見送られることも多い。当工程内では、残留ひずみの緩和に伴う収縮応力が発生し、被製造物の張力として検出することができる。特に、合成樹脂繊維の紡糸工程において、強すぎる張力は、製品糸の物理的特性に悪影響を与え、工程における糸切れ・工程ロールへの巻き付きなどのトラブルに繋がる。逆に、低すぎる張力も、製品糸の物理的特性に悪影響を与え、工程糸のたるみに繋がり、糸条の走行が不安定になり、糸が傷つき易く糸切れなどのトラブルの原因となる。
【0003】
このようにロールを用いた成型加工工程では、被製造物の張力は重要な工程管理指標であり、被製造物の張力に基づき、加工される樹脂の品質や工程の管理を行うための技術が各種提案されている。
例えば、下記特許文献1には、圧縮センサを用いて被製造物に作用している張力を検出し、検出した張力が予め決められた範囲内の値でない場合には、張力異常が発生していると特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-83220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、張力に異常があるからといって製造工程においてトラブルが生じているとは限らず、張力に異常がないからといって製造工程においてトラブルが発生していないとも限らない場合があり、被製造物にかかる張力に基づき製造工程におけるトラブルの発生の予測は、張力とトラブルとの関係性について、ある程度の経験や知見を有する人でないと困難である場合があった。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、製造工程におけるトラブルの発生を容易に予測することが可能な工程管理装置、工程管理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る工程管理装置は、複数の支持部材に支持されて張力がかかった状態で搬送されている被製造物の製造工程において、前記複数の支持部材のうち少なくとも2つの支持部材ごとに設けられたセンサ装置によって測定された前記支持部材の力学的な変動を示す変動情報を、少なくとも2つの前記センサ装置から取得する取得部と、取得された複数の前記変動情報に基づき、前記被製造物にかかっている前記張力の異常度を算出する演算部と、算出された前記異常度に基づく情報を出力する出力処理部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る工程管理方法は、取得部が、複数の支持部材に支持されて張力がかかった状態で搬送されている被製造物の製造工程において、前記複数の支持部材のうち少なくとも2つの支持部材ごとに設けられたセンサ装置によって測定された前記支持部材の力学的な変動を示す変動情報を、少なくとも2つの前記センサ装置から取得する取得過程と、演算部が、取得された複数の前記変動情報に基づき、前記被製造物にかかっている前記張力の異常度を算出する演算過程と、出力処理部が、算出された前記異常度に基づく情報を出力する出力処理過程と、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、複数の支持部材に支持されて張力がかかった状態で搬送されている被製造物の製造工程において、前記複数の支持部材のうち少なくとも2つの支持部材ごとに設けられたセンサ装置によって測定された前記支持部材の力学的な変動を示す変動情報を、少なくとも2つの前記センサ装置から取得する取得手段と、取得された複数の前記変動情報に基づき、前記被製造物にかかっている前記張力の異常度を算出する演算手段と、算出された前記異常度に基づく情報を出力する出力処理手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造工程におけるトラブルの発生を容易に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る製造工程の概要を示す図である。
図2】本実施形態に係る工程管理システムのシステム構成及び機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係るロール装置の構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る異常度の時系列変化の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る工程管理装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。図面には、必要に応じて相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。各軸において、矢印が延びる方向を「正方向」、正方向と逆の方向を「負方向」と称する。
【0013】
<1.製造工程概要>
図1を参照して、本実施形態に係る製造工程の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る製造工程の概要を示す図である。
製造工程は、例えば、原材料が成形加工されて被製造物が製造される成形加工工程である。原材料は、例えば、合成樹脂である。当該合成樹脂は、熱可塑性を有する熱可塑性樹脂である。成形加工工程では、合成樹脂が加工され、フィルム、シート、繊維等の樹脂加工品が被製造物として製造される。
以下では、一例として、成形加工工程が紡糸工程であり、被製造物が繊維状の合成繊維である例について説明する。繊維状の合成繊維は、例えば、トウ(繊維束)である。
【0014】
図1には、紡糸工程1にてトウ2が搬送されている様子が示されている。図1に示すように、紡糸工程1には、複数のロール3が設けられている。ロール3は、本実施形態に係る支持部材の一例である。紡糸工程1において、トウ2は、複数のロール3に支持されて張力がかかった状態で搬送されている。なお、紡糸工程1に設けられるロール3の数と配置は、図1に示す例に限定されない。
【0015】
ロール3は、ロール軸4を軸に回転する。トウ2は、ロール3と接触するように配置される。トウ2は、ロール3が回転することによって成形(例えば伸長)されながら、Y軸の正方向又は負方向やZ軸の正方向へと搬送される。これにより、トウ2は、上流工程から下流工程へ搬送される。
【0016】
図1では、一例として、X軸方向から見た際のトウ2の形状がU字となるように、トウ2とロール3が接触させられている。なお、トウ2とロール3との接触のさせ方は、図1に示す例に限定されない。トウ2とロール3との接触のさせ方は、ロール3の配置に応じて変化し得る。
【0017】
<2.工程管理システムのシステム構成>
以上、本実施形態に係る製造工程の概要について説明した。続いて、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る工程管理システムのシステム構成について説明する。図2は、本実施形態に係る工程管理システムのシステム構成及び機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、工程管理システム1000は、ロール装置10と、工程管理装置20と、ユーザ端末30とを備える。
【0018】
(1)ロール装置10
ロール装置10は、紡糸工程1においてトウ2を搬送するための装置である。
図3を参照して、本実施形態に係るロール装置10の構成について説明する。図3は、本実施形態に係るロール装置10の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、ロール装置10は、ロール3と、ロール軸4と、ロール軸受け5と、加速度センサ6とで構成される。ロール3は、ロール軸4を介して、ロール軸受け5と接続されている。
【0019】
加速度センサ6は、ロール3の力学的な変動を測定するためのセンサ装置の一例である。加速度センサ6には、例えば、3軸方向の加速度を検出可能なセンサが用いられる。加速度センサ6は、既存の設備への導入が容易であるだけでなく、工程温度が高い等の制約から張力センサの導入が困難であった箇所への導入も可能である。
【0020】
加速度センサ6は、例えば、ロール軸受け5の上部(図3に示す領域7)に取り付けられる。これにより、加速度センサ6は、ロール3の回転動力に応じた加速度を測定する。以下では、一例として、紡糸工程1が有する複数のロール3のうち、13個のロール3のロール軸受け5の上部に、それぞれ加速度センサ6(即ち全部で13個の加速度センサ6)が設けられる例について説明する。
なお、加速度センサ6は、ロール軸受け5の他の位置に取り付けられてもよいし、その他、ロール3又はロール軸4の振動を検出可能な位置であれば任意の位置に取り付けられてよい。また、1つのロール軸受け5に対して、複数の加速度センサ6が取り付けられてもよい。
【0021】
加速度センサ6が測定するロール3の加速度は、ロール3の力学的な変動の一例である。なお、力学的な変動は、張力と相関関係があれば加速度に限定されず、例えば、速度や位置であってもよい。力学的な変動は、これら加速度、速度又は位置など、トウ2に張力がかかっていない場合の測定値を基準として正負の値を繰り返すものである。
本実施形態では、トウ2の紡糸工程1には複数のロール3が設けられており、加速度センサ6は複数のロール3のうち少なくとも2つのロール3ごとに設けられる。これにより、各加速度センサ6によって、少なくとも2つのロール3の力学的な変動が加速度として測定される。
【0022】
加速度センサ6は、工程管理装置20と通信可能に接続される。加速度センサ6は、変動情報を工程管理装置20へ送信する。変動情報は、ロール3の力学的な変動を示す情報であり、例えば加速度センサ6によって測定されるロール3の加速度である。
【0023】
(2)工程管理装置20
工程管理装置20は、製造工程の管理を行う装置である。工程管理装置20には、例えば、サーバ装置が用いられる。当該サーバ装置は、工程管理システム1000の提供者又はユーザが有するサーバであってもよいし、クラウドサーバであってもよい。工程管理装置20は、入力装置(マウス、キーボード、タッチパネル等)、表示装置(ディスプレイ等)、出力装置(スピーカ、データ出力機能)、中央処理装置、記憶装置等を備える。
工程管理装置20は、加速度センサ6及びユーザ端末30と通信可能に接続される。工程管理装置20は、加速度センサ6から受信する情報に基づき処理を行い、処理の結果を示す情報をユーザ端末30へ送信する。
【0024】
(3)ユーザ端末30
ユーザ端末30は、ユーザによって利用される端末である。ユーザ端末30は、例えば、コンピュータ、スマートフォン、タブレット等のような端末であればいずれを用いるようにしてもよい。ユーザ端末30は、入力装置(マウス、キーボード、タッチパネル等)、表示装置(ディスプレイ等)、出力装置(スピーカ、データ出力機能)、中央処理装置、記憶装置等を備える。
【0025】
ユーザ端末30は、工程管理装置20と通信可能に接続される。ユーザ端末30は、工程管理装置20から受信する情報を表示装置に表示する。
【0026】
<3.ロール装置の機能構成>
以上、本実施形態に係る工程管理システム1000のシステム構成について説明した。続いて、図2を参照して、本実施形態に係るロール装置10の機能構成について説明する。
図2に示すように、ロール装置10は、センサ部110と、駆動部120とを備える。
【0027】
(1)センサ部110
センサ部110は、ロール3における測定値を検出する機能を有する。センサ部110の機能は、例えば、加速度センサ6によって実現される。センサ部110は、加速度センサ6によって検出されたロール3の回転動力に応じた加速度を工程管理装置20へ送信する。
【0028】
(2)駆動部120
駆動部120は、ロール装置10を駆動させる機能を有する。駆動部120の機能は、例えば、モータによって実現される。駆動部120の動作は、工程管理装置20によって制御される。
【0029】
<4.工程管理装置の機能構成>
以上、本実施形態に係るロール装置10の機能構成について説明した。続いて、図2及び図4を参照して、本実施形態に係る工程管理装置20の機能構成について説明する。
図2に示すように、工程管理装置20は、通信部210と、記憶部220と、制御部230とを備える。
【0030】
(1)通信部210
通信部210は、各種情報の送受信を行う機能を有する。例えば、通信部210は、有線通信又は無線通信によって、複数の加速度センサ6の各々と通信を行う。通信部210は、複数の加速度センサ6の各々との通信において、各加速度センサ6が測定した加速度を示す変動情報を、各々のセンサから受信する。また、通信部210は、有線通信又は無線通信によって、ユーザ端末30と通信を行う。通信部210は、ユーザ端末30との通信において、変動情報に基づき生成された情報などを送信する。
【0031】
(2)記憶部220
記憶部220は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部220は、工程管理装置20がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
記憶部220は、例えば、通信部210が加速度センサ6から受信した変動情報や、当該変動情報に基づき生成された情報などを記憶する。
【0032】
(3)制御部230
制御部230は、工程管理装置20の動作全般を制御する機能を有する。制御部230は、例えば、工程管理装置20がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部230は、取得部231と、演算部232と、出力処理部233とを備える。
【0033】
(3-1)取得部231
取得部231は、各種情報を取得する機能を有する。例えば、取得部231は、複数の加速度センサ6の各々が測定した加速度を示す変動情報を取得する。具体的に、取得部231は、通信部210が複数の加速度センサ6の各々から受信した変動情報を、通信部210から取得する。取得部231は、取得した変動情報を演算部232へ出力する。
本実施形態では、取得部231は、13個の加速度センサ6からそれぞれ変動情報を取得し、合計で13個の変動情報を取得する。また、本実施形態では、加速度センサ6は、3軸の加速度センサである。そのため、取得部231が取得する変動情報は、3つの軸方向の加速度を示すデータである。
【0034】
(3-2)演算部232
演算部232は、各種の演算処理を行う機能を有する。例えば、演算部232は、取得部213によって取得された複数の変動情報に基づき、トウ2にかかっている張力の異常度を算出する。具体的に、演算部232は、取得部231によって取得された変動情報に対して統計的処理を行い、トウ2にかかっている張力の異常度を算出する。例えば、演算部232は、複数の変動情報に対して主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)を統計的処理として行う。そして、演算部232は、主成分分析の分析結果から異常度を算出する。
【0035】
なお、本実施形態において、演算部232は、取得された複数の変動情報の各々に対して第1の主成分分析を行い、第1の主成分分析によって得られる複数の分析結果に対して第2の主成分分析を行う。これにより、演算部232は、第1の主成分分析によって各ロール3における加速度から各ロール3における張力特性を取得できる。さらに、演算部232は、第2の主成分分析によって複数のロール3を1つの単位とした張力特性、即ち、紡糸工程1全体における張力特性を取得できる。
【0036】
まず、演算部232は、取得部231によって取得された変動情報ごとに第1の主成分分析を行う。即ち、演算部232は、複数の加速度センサ6から取得された変動情報を、1つの加速度センサ6から得られた変動情報ごとに第1の主成分分析を行う。変動情報は、3つの軸方向の加速度を示すデータである。そのため、演算部232は、3つの軸方向の加速度に対する第1の主成分分析によって、3つの軸の主成分とそれに対応するデータを生成することができる。
本実施形態では、一例として、演算部232は、13個の変動情報に対してそれぞれ第1の主成分分析を行い、13個の分析結果を得る。
【0037】
なお、演算部232は、取得部231によって取得された複数の軸方向の加速度から、所定の範囲外の加速度を除外してから第1の主成分分析を行ってもよい。例えば、演算部232は、外れ値処理によって、複数の軸方向の加速度の中から所定の範囲に含まれる複数の軸方向の加速度を抽出し、複数の軸方向の加速度の中から所定の範囲外の加速度を除外する。所定の範囲は、用いるセンサや観測系等に応じて、より最適な算出結果を得られるように設定されることが好ましい。例えば、所定の範囲を広くしすぎると、データの再現性やばらつきを損ない、異常度の算出結果に影響し得る場合がある。一方、所定の範囲を狭くしすぎても、外れ値を除外しきれず、異常度の算出結果に影響し得る場合がある。このように、外れ値処理は、第1の主成分分析に用いる複数の軸方向の加速度の中から、外れ値である加速度を除外するための処理である。外れ値は、例えば、加速度センサ6の故障や外乱によって生じ得る、他の加速度から大きく外れた値である。演算部232は、外れ値処理によって、他の加速度から大きく外れた値を除外することができる。即ち、演算部232は、外れ値処理後の複数の軸方向の加速度を用いることで、第1の主成分分析の分析結果に対する外乱の影響を抑制することができる。よって、演算部232は、外れ値処理によって第1の主成分分析の精度を向上することができる。
【0038】
次いで、演算部232は、第1の主成分分析によって得られた複数の分析結果に対して第2の主成分分析を行う。例えば、演算部232は、第1の主成分分析による複数の分析結果の各々から少なくとも第一主成分を抽出し、抽出した複数の主成分に対して第2の主成分分析を行う。なお、演算部232は、第2の主成分分析を行う際に、得られた主成分分析の結果から算出するノルムの大きさを一定とするために正規化を行う。
各加速度センサ6の変動情報ごとに行った第1の主成分分析の分析結果では、第一主成分には主に張力の情報が反映され、第二主成分と第三主成分には張力以外の情報が反映されている。そこで、演算部232は、第1の主成分分析による複数の分析結果の各々から、少なくとも第一主成分を抽出する。これにより、演算部232は、各ロール3における張力特性を取得できる。
以下では、一例として、演算部232が第1の主成分分析の分析結果から第一主成分と第二主成分を抽出する例について説明する。具体的に、演算部232は、13個の分析結果の各々から第一主成分と第二主成分の2個の主成分を抽出し、合計で26個の主成分を抽出する。この26個の主成分は、1つの時刻インデックスに対して26個の数値が対応付く26次元のデータである。
【0039】
演算部232は、抽出した複数の主成分に対して第2の主成分分析を行うことで、軸の再構成を行う。演算部232による第2の主成分分析は、紡糸工程1に散らばった加速度変動のパターンを抽出することを目的として行われる。加速度変動のパターンは、例えば、複数のロール3のうちある2つのロール3では同じタイミングで張力が増加するなどである。なお、主成分分析を行う変動情報に紡糸工程1以外の工程で取得された変動情報が含まれる場合、演算部232による第2の主成分分析によって、各工程に散らばった加速度変動のパターンを抽出できる。
本実施形態では、一例として、演算部232は、抽出した26次元のデータに対して第2の主成分分析を行う。
【0040】
演算部232は、第2の主成分分析において、寄与率が一定以上となるような成分抽出を行い、次元削減を行う。寄与率は、第一主成分から順番にどれだけ元の変動パターンを再現できるかのパラメータである。例えば、演算部232は、第2の主成分分析における寄与率が紡糸工程1の正常な状態の割合(例えば99%以上)となるように成分抽出を行い、次元数が5次元となるよう次元削減を行う。本実施形態の例の場合、演算部232は、第2の主成分分析によって26次元のデータが5次元のデータとなるように次元削減を行う。
【0041】
演算部232は、第1の主成分分析において抽出された複数の主成分に対して算出されたノルム(以下、「元のノルム」とも称される)と主成分分析による次元削減後の複数の主成分に対して算出されたノルム(以下、「次元削減後のノルム」とも称される)との差分を異常度として算出する。主成分分析による削減後の次元で表現された空間は、センサ値の典型的な挙動を学習したものとなる。即ち、典型的な挙動である場合は、削減後の次元で元のデータを十分に表現することができる。一方、典型的な挙動でない(異常である)場合は、削減後の次元で元のデータを十分に表現することができない。
したがって、削減後の次元で表現したデータがどの程度元のデータを表現できているかを、定量的に見積もることができれば、それを異常の度合い(即ち異常度)と考えることができる。
【0042】
異常度を定量的に見積もるための指標の1つがノルムである。ノルムは、それぞれの次元におけるデータの情報量とみることができる。次元削減後のデータが元のデータと同等の情報量を持つ場合、元のノルムと次元削減後のノルムとの差分は小さくなる。一方、次元削減後のデータが元のデータから欠落した情報量となる場合、元のノルムと次元削減後のノルムとの差分は大きくなる。したがって、元のノルムと次元削減後のノルムとの差分を異常度と定義することができる。
【0043】
上述したように、演算部232は、取得部213によって取得された複数の変動情報に基づき、トウ2にかかっている張力の異常度を算出する。これにより、演算部232は、トウ2にかかっている張力の異常の度合いを定量化することができる。
【0044】
(3-3)出力処理部233
出力処理部233は、各種の出力を制御する機能を有する。例えば、出力処理部233は、演算部232によって算出された異常度に基づく情報を出力する。以下、出力処理部233が出力する情報は、「出力情報」とも称される。出力処理部233によって出力される出力情報は、通信部210を介してユーザ端末30へ送信され、ユーザ端末30の表示装置に表示される。
【0045】
一例として、出力処理部233は、演算部232によって算出された異常度の時系列変化を示す情報を出力情報として出力する。これにより、ユーザは、出力された異常度の時系列的なふるまいを見ることで、知見がなくてもトウ2にかかっている張力に異常があるか否かを容易に判定することができる。また、ユーザは、張力に異常があるか否かに応じて、知見がなくて紡糸工程1においてトラブルが発生するか否かを予測することができる。例えば、異常度が上昇傾向にある場合、ユーザは、紡糸工程1においてトラブルが発生する可能性があると予測することができる。そして、トラブルが発生する可能性がある場合には、トラブルが発生する前にユーザが対策を実施することも可能となる。
【0046】
ここで、図4を参照して、出力処理部233によって出力される出力情報について説明する。図4は、本実施形態に係る異常度の時系列変化の一例を示す図である。図4に示すグラフは、異常度の時系列変化を示している。当該グラフの横軸は時刻を示し、縦軸は異常度の値を示している。
【0047】
図4に示す異常度のグラフは、実際に紡糸工程1において複数の加速度センサ6によって実測された変動情報に基づき算出された異常度の時系列変化をグラフ化したものである。具体的に、当該グラフが示す異常度は、紡糸工程1に設けられた複数のロール3のうち、13個のロール3の各々に設けられた13個の加速度センサによって実測された変動情報に基づき算出されている。
図4に示すグラフにおいて、例えば、時刻t1と時刻t2の間、時刻t3と時刻t4の間、時刻t5と時刻t6の間、時刻t7と時刻t8の間などでは、異常度が上昇傾向にあることが分かる。そのため、ユーザは、これら4つの時刻間において、トラブルが発生する可能性があると予測できる。実際に、これら4つの時刻間では、トラブルが発生したことが確認されている。
【0048】
<5.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る工程管理装置20の機能構成について説明した。続いて、図5を参照して、本実施形態に係る処理の流れについて説明する。図5は、本実施形態に係る工程管理装置20における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
図5に示すように、まず、工程管理装置20の取得部231は、複数の加速度センサ6から変動情報を取得する(ステップS101)。具体的に、取得部231は、通信部210が紡糸工程1に設けられた複数の加速度センサ6の各々から受信した変動情報(加速度)を取得する。
【0050】
次いで、工程管理装置20の演算部232は、変動情報ごとに外れ値処理を行う(ステップS102)。具体的に、演算部232は、取得部231によって取得された複数の変動情報に対して、1つの加速度センサ6から得られた変動情報ごとに外れ値処理を行う。これにより、演算部232は、変動情報のノイズが異常度の算出に与える影響を低減することができる。
【0051】
次いで、演算部232は、変動情報ごとに第1の主成分分析を行う(ステップS103)。具体的に、演算部232は、外れ値処理後の複数の変動情報に対して、1つの加速度センサ6から得られた変動情報ごとに第1の主成分分析を行う。
さらに、演算部232は、第1の主成分分析による分析結果ごとに第一主成分と第二主成分を抽出する(ステップS104)。これにより、演算部232は、加速度センサ6が設けられた各ロール3における張力特性を取得できる。
【0052】
次いで、演算部232は、抽出した第一主成分と第二主成分に対して、第2の主成分分析を行う(ステップS105)。具体的に、演算部232は、抽出した複数の主成分に対する第2の主成分分析において、寄与率が一定以上となるような成分抽出を行い、次元削減を行う。これにより、演算部232は、紡糸工程1全体における張力特性を取得できる。
【0053】
次いで、演算部232は、異常度を算出する(ステップS106)。具体的に、演算部232は、元のノルムと第2の主成分分析による次元削減後のノルムとの差分を異常度として算出する。これにより、演算部232は、トウ2にかかっている張力の異常の度合いを定量化することができる。
【0054】
次いで、工程管理装置20の出力処理部233は、異常度に基づく出力情報を出力する(ステップS107)。具体的に、出力処理部233は、演算部232によって算出された異常度の時系列変化を示す情報を出力情報として出力する。例えば、出力処理部233は、通信部210を介してユーザ端末30へ出力情報を送信し、ユーザ端末30に出力情報を表示させる。これにより、ユーザは、張力の異常の度合いが定量化された出力情報を見て、張力の異常に起因するトラブルの発生を予測することができる。
出力後、工程管理装置20は、ステップS101から処理を繰り返す。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る工程管理装置20は、取得部231と、演算部232と、出力処理部233とを備える。取得部231は、複数の支持部材に支持されて張力がかかった状態で搬送されている被製造物の製造工程において、複数の支持部材のうち少なくとも2つの支持部材ごとに設けられたセンサ装置によって測定された支持部材の力学的な変動を示す変動情報を、少なくとも2つのセンサ装置から取得する。演算部232は、取得された複数の変動情報に基づき、被製造物にかかっている張力の異常度を算出する。出力処理部233は、算出された異常度に基づく情報を出力する。
【0056】
かかる構成により、トウ2にかかる張力の異常の度合いが定量化された異常度が工程管理装置20から出力される。これにより、ユーザは、トウ2にかかる張力の異常度を見ることで、張力の異常に起因するトラブルの発生を予測することができる。例えば、ユーザは、張力の異常度の時系列変化より、異常度が上昇傾向にあるか否かを見るだけでトラブルが発生するか否かを判定することができる。そのため、ユーザは、経験や知見がなくても、紡糸工程1においてトラブルが発生するか否かを容易に予測することができる。
【0057】
よって、本実施形態に係る工程管理装置20は、知見がないユーザでも製造工程におけるトラブルの発生を容易に予測することを可能とする。
【0058】
<6.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明した。続いて、本発明の実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0059】
上述の実施形態では、工程管理装置20とユーザ端末30がそれぞれ独立した構成である例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、工程管理装置20にユーザ端末30の機能が含まれてもよいし、ユーザ端末30に工程管理装置20の機能が含まれてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、演算部232が加速度センサ6によって測定された変動情報をそのまま異常度の算出に用いる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、演算部232は、製造工程における製造条件が加味された変動情報に基づき、異常度を算出してもよい。製造条件は、例えば、製品品種(例えばカテゴリ値)、生産速度(例えば紡糸速度)、各ロール3の回転速度、工程温度、凝固浴濃度などである。製造条件は、トウ2における残留ひずみや収縮応力に大きく影響する。残留ひずみや収縮応力は、トウ2にかかる張力に影響を与える。よって、演算部232は、製造条件が加味された変動情報を用いることで、トウ2にかかる張力の異常度をより精度高く算出することができる。また、純粋な樹脂に関する物性情報を得るために、製造条件が加味された変動情報を得る場合もある。
【0061】
また、上述の実施形態では、出力処理部233が、異常度の時系列変化を示す情報を出力情報として出力する例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、出力処理部233は、演算部232によって算出された異常度に基づき、紡糸工程1におけるトラブルが発生するか否かを示す情報を出力情報として出力してもよい。
具体的に、出力処理部233は、異常度が上昇傾向にあるか否かに応じて紡糸工程1におけるトラブルが発生するか否かを判定し、判定結果を示す情報を出力する。
一例として、異常度が上昇傾向にある場合、出力処理部233は、紡糸工程1におけるトラブルが発生すると判定し、紡糸工程1におけるトラブルが発生することを示す情報を出力する。一方、異常度が上昇傾向にない場合、出力処理部233は、紡糸工程1におけるトラブルが発生しないと判定し、紡糸工程1におけるトラブルが発生しないことを示す情報を出力する。
これにより、ユーザは、出力された情報を見るだけで、紡糸工程1におけるトラブルが発生するか否かを判定することができる。そのため、ユーザは、知見がなくても、紡糸工程1においてトラブルが発生するか否かを容易に判定することができる。そして、トラブルが発生する可能性がある場合には、トラブルが発生する前にユーザが対策を実施することも可能となる。
なお、出力処理部233は、異常度が上昇傾向になく、紡糸工程1におけるトラブルが発生しないと判定した場合、紡糸工程1におけるトラブルが発生しないことを示す情報を出力しなくてもよい。
【0062】
また、出力処理部233は、演算部232によって算出された異常度に基づき、紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切であるか否かを示す情報を出力情報として出力してもよい。
具体的に、出力処理部233は、異常度が上昇傾向にあるか否かに応じて紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切であるか否かを判定し、判定結果を示す情報を出力する。
一例として、異常度が上昇傾向にある場合、出力処理部233は、紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切でないと判定し、紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切でないことを示す情報を出力する。一方、異常度が上昇傾向にない場合、出力処理部233は、紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切であると判定し、紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切であることを示す情報を出力する。
これにより、ユーザは、出力された情報を見るだけで、紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切であるか否かを判定することができる。そのため、ユーザは、知見がなくても、トウ2の状態が適切であるか否かを容易に判定することができる。そして、トウ2の状態が適切でない場合には、トラブルが発生する前にユーザが対策を実施することも可能となる。
なお、出力処理部233は、異常度が上昇傾向になく、紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切であると判定した場合、紡糸工程1におけるトウ2の状態が適切であることを示す情報を出力しなくてもよい。
【0063】
また、出力処理部233は、演算部232によって算出された異常度に基づき、紡糸工程1における製造環境の改善が必要であるか否かを示す情報を出力情報として出力してもよい。
具体的に、出力処理部233は、異常度が上昇傾向にあるか否かに応じて紡糸工程1における製造環境の改善が必要であるか否かを判定し、判定結果を示す情報を出力する。
一例として、異常度が上昇傾向にある場合、出力処理部233は、紡糸工程1における製造環境の改善が必要であると判定し、紡糸工程1における製造環境の改善が必要であることを示す情報を出力する。一方、異常度が上昇傾向にない場合、出力処理部233は、紡糸工程1における製造環境の改善が必要でないと判定し、紡糸工程1における製造環境の改善が必要でないことを示す情報を出力する。
これにより、ユーザは、出力された情報を見るだけで、紡糸工程1における製造環境の改善が必要であるか否かを判定することができる。そのため、ユーザは、知見がなくても、製造環境の改善が必要であるか否かを容易に判定することができる。そして、製造環境の改善が必要である場合には、トラブルが発生する前にユーザが対策を実施することも可能となる。
なお、出力処理部233は、異常度が上昇傾向になく、紡糸工程1における製造環境の改善が必要でないと判定した場合、紡糸工程1における製造環境の改善が必要でないことを示す情報を出力しなくてもよい。
【0064】
また、出力処理部233は、算出された異常度の変化への寄与度が高い工程箇所を示す情報を出力してもよい。出力処理部233は、例えば、過去の蓄積情報と対応付けて分類の推論を行うことで、異常度の変化への寄与度が高い工程箇所を求めることができる。ユーザは、出力された情報を見るだけで、紡糸工程1における異常度の変化への寄与度が高い工程箇所を特定することができる。そのため、ユーザは、知見がなくても、製造環境の改善が必要な箇所を容易に特定し、対策を実施することが可能となる。
【0065】
また、上述の実施形態では、演算部232が第2の主成分分析において次元数を5次元まで削減する例について説明したが、かかる例に限定されない。第2の主成分分析による削減後の次元数は、演算部232によって算出される異常度の精度に応じて、適宜増減されてもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態の変形例について説明した。
なお、上述した実施形態における工程管理装置20の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0067】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…紡糸工程、2…トウ、3…ロール、4…ロール軸、5…ロール軸受け、6…加速度センサ、7…領域、10…ロール装置、20…工程管理装置、30…ユーザ端末、210…通信部、220…記憶部、230…制御部、231…取得部、232…演算部、233…出力処理部、1000…工程管理システム
図1
図2
図3
図4
図5