(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081466
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】搾汁装置および方法
(51)【国際特許分類】
A23N 1/00 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
A23N1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195183
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】520148574
【氏名又は名称】株式会社伊藤農園
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 修
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA01
4B061BA12
4B061BB07
4B061BB13
4B061CC01
4B061CC04
4B061CC12
4B061CC13
(57)【要約】
【課題】みかんなどの搾汁装置において、苦み、灰汁、油分の混じらない果汁を得る。
【解決手段】柑橘類などの果実8を略半割れにして、その割れた面から、碗形の型に押し付けて搾汁を行うにあたって、その半割れ面が押当てられる型を内型21として、この内型21に被さり、嵌合することができる外側の型22も設け、駆動手段23でそれらの一対の型21,22を相互に近接/離反駆動することで、搾汁ならびに新しい果実8の装填および残渣の取出しを可能にする。したがって、内外の型21,22で、略半割れの果実8を、果肉だけを潰し、外果皮は勿論、中果皮、維管束および特にじょうのう膜の部分を、極力潰さずに搾汁することができる。これによって、それらの部位による苦み、灰汁、油分の混じらない果汁を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
碗形に形成されて、相互に嵌合可能な内外一対の型と、
前記内外一対の型を相互に近接/離反駆動する駆動手段とを含み、
略半割れの果実を、その半断面側を内側の型に、外表面側を外側の型に、それぞれ接触させて、前記一対の型間で該果実を挟圧することで、搾汁を行うことを特徴とする搾汁装置。
【請求項2】
前記一対の型は、その相互の対向面が平滑面であることを特徴とする請求項1記載の搾汁装置。
【請求項3】
前記一対の型は、外型が上方に、内型が下方に配置され、外型の頂部には、外気に連通する孔が形成されていることを特徴とする請求項2記載の搾汁装置。
【請求項4】
前記内型の頂部には、前記略半割れの果実の半断面側の中央部に突き刺さり、前記外型の孔に嵌り込む先細状の尖鋭部を有することを特徴とする請求項3記載の搾汁装置。
【請求項5】
前記尖鋭部は、前記内型から交換可能であることを特徴とする請求項4記載の搾汁装置。
【請求項6】
前記内型を搭載する無端環状のコンベアと、
前記コンベアを跨ぎ、前記駆動手段および外型を支持するフレームと、
前記コンベアを駆動する送り手段とを備えることを特徴とする請求項3~5の何れか1項に記載の搾汁装置。
【請求項7】
前記フレームの下流側に、前記内型の流路上で、流れて来る該内型の中心からオフセットした片側の位置に、前記果実を引掛ける引掛け部材をさらに備えることを特徴とする請求項6記載の搾汁装置。
【請求項8】
前記引掛け部材は、前記無端環状のコンベアが折返しを始める位置よりも下流側に設けられることを特徴とする請求項7記載の搾汁装置。
【請求項9】
前記引掛け部材の下流側に、前記内型の垂直断面における外形線から予め定める間隔を開けた形状に切抜かれて成る邪魔板が設けられることを特徴とする請求項7または8記載の搾汁装置。
【請求項10】
前記邪魔板は、前記無端環状のコンベアの折返しの中間点から折返しの終了点までの間に設けられ、前記内型と対向する部分とは反対側に板状で延長されることを特徴とする請求項9記載の搾汁装置。
【請求項11】
前記外型を内型に押さえ付ける力は、50~70kgf、押さえ付ける時間は4~6.5秒であることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の搾汁装置。
【請求項12】
碗形に形成されて、相互に嵌合可能な一対の型を用い、略半割れの果実を、その半断面側を内側の型に、外表面側を外側の型に、それぞれ接触させて、該一対の型間で前記果実を挟圧することで、搾汁を行うことを特徴とする搾汁方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、みかんやオレンジを筆頭に、ゆず、すだち、はっさく、グレープフルーツなどの柑橘類の果実に好適に実施され、略半割れにした果実を搾る搾汁装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、前記柑橘類などの果実を搾って搾汁する方法は、種々実施されている。代表的には、インライン方式とチョッパーパルパー方式とが挙げられる。インライン方式は、果実を洗い、外皮ごと細かくなるよう処理を行った後、遠心分離によって固形物を取り除くものである。そのため、サラっとした口当たりになるものの、皮ごと搾汁にかけるので、多少なりとも皮の油分が入り、雑味が混ざってしまうという問題がある。
【0003】
これに対して、チョッパーパルパー方式は、果実の皮を剥いてから、薄皮ごと裏ごしするように搾るものである。そのため、皮の油分は混入しないので、まろやかでコクのあるものの、多くの果実の皮を綺麗に剥くために、蒸気を当てて、柔らかくした上で、手作業で剥いてゆく必要がある。
【0004】
また、チョッパーパルパー方式は、パルパーフィニッシャーという裏ごし機に掛けられ、すり潰された果汁となるので、薄皮の部分の繊維質(パルパー)が多く含まれる。この点は、前記インライン方式も同様である。その繊維質(パルパー)の内、特にじょうのう膜が潰れると、苦みや灰汁が出てしまう。そうすると、そのじょうのう膜や、前記の維管束も合せて、それらのペクチン質や繊維質を分解する酵素を添加したり、酸を入れたりした後、中和したりする必要があり、果肉だけの旨さを得ることができない。
【0005】
そこで、外皮を剥く作業の必要が無く、皮や種も潰さずに、果汁だけを採集する典型的な従来技術が、特許文献1で示されている。その従来技術によれば、果実を半割れにして、その半割れにした面を、想定される果肉部より大き目で、お碗を伏せたような略円錐形の搾汁部に押し当てるものである。特許文献1は、ステンレス製で、前記搾汁部の縁に、果汁を貯めるためのフランジおよびその外周に立上がる壁が形成されている典型的な家庭用の果汁搾り器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来技術は、想定される果肉部より大き目の搾汁部とすることで、多種多様な柑橘類に対して、充分な搾汁効果が得られるとしている。しかしながら、手作業で果実を押付けるので、押付ける部位によって力が掛る部分と掛らない部分があったり、また場合によってはねじ回したりもされるので、果肉(じょうのう)の部分以外も潰してしまい上述と同様の問題が生じてしまう。
【0008】
本発明の目的は、苦み、灰汁、油分の混じらない果汁を得ることができる搾汁装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搾汁装置は、碗形に形成されて、相互に嵌合可能な内外一対の型と、前記内外一対の型を相互に近接/離反駆動する駆動手段とを含み、略半割れの果実を、その半断面側を内側の型に、外表面側を外側の型に、それぞれ接触させて、前記一対の型間で該果実を挟圧することで、搾汁を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の搾汁方法は、碗形に形成されて、相互に嵌合可能な一対の型を用い、略半割れの果実を、その半断面側を内側の型に、外表面側を外側の型に、それぞれ接触させて、該一対の型間で前記果実を挟圧することで、搾汁を行うことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、柑橘類などの果実を略半割れにして、その割れた面から、碗形、具体的には、半球体、或いはドーム形等を含み、腰から胴、口縁部までゆるやかな曲線で立ち上がる形の型に押し付けて搾汁を行うにあたって、その半割れ面が押当てられる型を内型として、本発明では、この内型に被さり、嵌合することができる外側の型も設け、駆動手段でそれらの一対の型を相互に近接/離反駆動することで、搾汁ならびに新しい果実の装填および残渣の取出しを可能にする。
【0012】
したがって、内外の型で、略半割れの果実を、果肉、具体的に砂じょうの部分だけを潰し、外果皮は勿論、中果皮、維管束および特に効果の大きいじょうのう膜の部分を、極力潰さずに搾汁することができる。これによって、それらの部位による苦み、灰汁、油分の混じらない果汁を得ることができる。また、そのような苦みなどの無い果汁を得るにあたって、従来のように、たとえば前記維管束やじょうのう膜のペクチン質や繊維質を分解する酵素を添加したり、酸を入れたりしたり、その後に、中和したりする必要もない。
【0013】
さらにまた、本発明の搾汁装置では、前記一対の型は、その相互の対向面が平滑面であることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、従来の果汁搾り器では、半割れの果実が押し当てられる突状の部分にリブを立て、果実をねじ回して搾っているが、本発明では、そのようなことはせず、内型だけでなく、外型も、それらの対向面を平滑に形成する。
【0015】
したがって、前記リブで維管束やじょうのう膜を剥ぎ取ってしまったり、外果皮中の油胞を潰してしまったりすることなく、果汁の成分だけを得ることができる。また、残渣は、飼料などに使用したり、前記油胞が残っているので、それからエッセンシャルオイルを抽出したりして、該残渣の利用価値を高めることもできる。
【0016】
また、本発明の搾汁装置では、前記一対の型は、外型が上方に、内型が下方に配置され、外型の頂部には、外気に連通する孔が形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、外型を上方に、内型を下方にすることで、搾った果汁は、半割れの果実の内側を伝って滴り落ちるので、果実の外表面に接触せず、衛生的に採集することができる。また、上下一対の型は、その対向面が平滑面であるので、上方の外型の頂部に孔を開けておくことで、型が離反した際、空気が通り、残った残渣は下方の内型に吸着するようになり、残渣を集め易くなる。また、掃除のし難い上方の外型の掃除の手間を省くことができる。
【0018】
さらにまた、本発明の搾汁装置では、前記内型の頂部には、前記略半割れの果実の半断面側の中央部に突き刺さり、前記外型の孔に嵌り込む先細状の尖鋭部を有することを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、内型の頂部に、前記略半割れの果実の半断面側の中央部に突き刺さる尖鋭部を設けることで、該内型の表面を、セットした果実が滑り落ちることを防止することができる。また、その尖鋭部は、型を離反する際、残渣を引っ掛けて、より外型から剥がし易くすることができるとともに、上下の型が相互に嵌合する際は、前記孔に逃げ、型合せに問題が生じることもない。
【0020】
また、本発明の搾汁装置では、前記尖鋭部は、前記内型から交換可能であることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、前記尖鋭部は、果皮などを挟んで、或いは直接に、孔の入口付近に、当ったりして曲がったり、擦れたりして摩耗したりする。そこで、尖鋭部の基端側に外捻子を形成し、内型の頂部の裏側にナットを設けるなどして、該尖鋭部を交換可能にすることで、搾汁装置のメンテナンス費用を軽減することができる。
【0022】
さらにまた、本発明の搾汁装置では、前記内型を搭載する無端環状のコンベアと、前記コンベアを跨ぎ、前記駆動手段および外型を支持するフレームと、前記コンベアを駆動する送り手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、内型は、送り手段によってコンベアで順次搬送され、そのコンベア上の所定位置に設置されたフレームに搭載された駆動手段で、外型が下降して搾汁され、コンベアは無端環状で内型を順次回転させる。こうして、果実からの搾汁を連続して効率的に行うことができる。
【0024】
また、本発明の搾汁装置では、前記フレームの下流側に、前記内型の流路上で、流れて来る該内型の中心からオフセットした片側の位置に、前記果実を引掛ける引掛け部材をさらに備えることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、前記フレーム、すなわち搾汁位置の下流側の流路上で、流れて来る内型の近接位置に、該内型に吸着した果実(残渣)を引掛け、引剥がす引掛け部材を設ける。その引掛け部材は、爪(ピン)や刃物で構成され、注目すべきは、該内型の中心からオフセットした片側位置のみに設けられることである。
【0026】
したがって、前記内型に吸着した果実(残渣)を、尖鋭部を中心にして回転させて内型から引剥がすことができ、効率良く確実に引剥がすことができる。
【0027】
さらにまた、本発明の搾汁装置では、前記引掛け部材は、前記無端環状のコンベアが折返しを始める位置よりも下流側に設けられることを特徴とする。
【0028】
上記の構成によれば、引掛け部材は内型に吸着した果実(残渣)を回転させて内型から引剥がすものの、コンベアが水平搬送している位置に設けられても、浮上がらせるだけになる可能性もあるのに対して、折返しを始める位置よりも下流側に設けることで、浮上がった果実(残渣)を、内型から外して、落下させることができる。こうして、果実(残渣)を、より効率良く確実に除去することができる。
【0029】
また、本発明の搾汁装置では、前記引掛け部材の下流側に、前記内型の垂直断面における外形線から予め定める間隔を開けた形状に切抜かれて成る邪魔板が設けられることを特徴とする。
【0030】
上記の構成によれば、内型に吸着した果実(残渣)を引掛け部材で回転させて内型から引剥がすものの、該引掛け部材で完全に内型から外れない可能性もある。そこで、該引掛け部材よりも下流側に、内型の外形線に近く切抜かれた邪魔板を設けることで、果実(残渣)を、2段階で、より確実に除去することができる。
【0031】
さらにまた、本発明の搾汁装置では、前記邪魔板は、前記無端環状のコンベアの折返しの中間点から折返しの終了点までの間に設けられ、前記内型と対向する部分とは反対側に板状で延長されることを特徴とする。
【0032】
上記の構成によれば、邪魔板をコンベアの折返しの中間点から折返しの終了点までの間に設けることで、引掛け部材と2段階で、確実に引き剥がした果実(残渣)を、落下させることができる。さらに、邪魔板を内型とは反対側に板状で延長しておくことで、その落下した果実(残渣)のシューター(案内部材)として機能させることができる。
【0033】
好ましくは、前記外型の内径は103mm、前記内型の外径は100mm、内型の頂部付近は外型の内周面にほぼ密着することである。そうすることで、たとえば大きな3Lサイズのみかんの残渣は、内型の頂部よりも下側の隙間に多く貯まり、小さなすだちでは、内型の頂部付近で全体が均等に挟圧される。こうして、1つの型で、大きな果実から小さな果実まで、幅広く搾ることができる。
【0034】
さらにまた、本発明の搾汁装置では、前記外型を内型に押さえ付ける力は、50~70kgf、押さえ付ける時間は4~6.5秒であることを特徴とする。
【0035】
上記の構成によれば、たとえばLサイズの熟れたみかんは軟らかく、そのような場合は押え付ける力も50kgf程度で小さく、また時間も4秒程度の短時間でも、充分搾汁できる。これに対して、比較的硬くて大きなグレープフルーツやあまなつなどは、押さえ付ける力は70kgf程度で大きく、また時間も6.5秒程度の長い時間が必要になる。こうして、前記苦み、灰汁、油分の混じらない果汁を、効率良く得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の搾汁装置および方法は、以上のように、柑橘類などの果実を略半割れにして、その割れた面から、碗形の型に押し付けて搾汁を行うにあたって、その半割れ面が押当てられる型を内型として、本発明では、この内型に被さり、嵌合することができる外側の型も設け、駆動手段でそれらの一対の型を相互に近接/離反駆動することで、搾汁ならびに新しい果実の装填および残渣の取出しを可能にする。
【0037】
それゆえ、内外の型で、略半割れの果実を、果肉だけを潰し、外果皮は勿論、中果皮、維管束および特にじょうのう膜の部分を、極力潰さずに搾汁することができる。これによって、それらの部位による苦み、灰汁、油分の混じらない果汁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る搾汁装置の使用方法を説明する斜視図である。
【
図2】前記搾汁装置における搬送装置を詳しく示す斜視図である。
【
図3】前記搾汁装置において、果汁を搾る上下の型を嵌合させた状態の断面図である。
【
図4】前記搾汁装置において、果汁を搾る下側の型の分解斜視図である。
【
図5】前記搾汁装置において、果汁を搾る上側の型の分解斜視図である。
【
図6】前記搾汁装置における渣取り装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明の実施の一形態に係る搾汁装置1の使用方法を説明する斜視図である。
図1は、搾汁装置1の1台分を示す。搾汁の作業場では、この搾汁装置1が複数台併設されることがある。搾汁装置1は、搾汁部2と、搬送装置3と、果汁受け4と、渣(カス)取り装置5と、貯留部6と、制御盤7とを備えて構成される。
【0040】
搾汁部2は、碗形に形成されて、相互に嵌合可能な内外一対の型21,22と、それら一対の型21,22を相互に近接/離反駆動する駆動手段23が、門型のフレーム24に搭載されて構成される。そして、搾汁部2は、略半割れの果実8を、その半断面側を内側の型21に、外表面側を外側の型22に、それぞれ接触させて、前記一対の型21,22間で該果実8を挟圧することで、搾汁を行う。本実施形態では、前記一対の型22,21は上下に配置され、内側の型21は所定位置で固定され、外側の型22が駆動手段23で昇降変位される。
【0041】
本実施形態では、型21,22は複数組設けられ、具体的に一実施例としては、4列×3行の計12組設けられ、12個の果実8が、1回に搾汁される。そのため、前記12個の外側の型22は、共通のプレート25に取付けられ、前記駆動手段23で一括して昇降変位される。本実施形態では、駆動手段23は、油圧シリンダーであり、プレート25は、その縁部に設けられたブラケット251が、フレーム24の天板242と搬送装置3のフレーム31の上梁311との間に立設された案内軸26で上下方向に案内される。少なくとも一部の案内軸26の下側には、プレート25およびそれに搭載された上側の型22が下がり過ぎて、下側の型21に衝突しないようにするストッパ(不図示)が設けられる。フレーム24の天板242には、前記油圧シリンダーの駆動手段23が載置される。前記油圧シリンダーの駆動手段23は、図示しない油圧ポンプおよびバルブからの油圧によって進退し、前記プレート25から外側の型22を昇降変位する。前記油圧ポンプおよびバルブは、制御盤7によって制御される。
【0042】
図2は、搬送装置3を詳しく示す斜視図である。前記の搾汁部2は、搬送装置3の所定位置に設けられ、前記門型のフレーム24が該搬送装置3を跨ぐように設けられる。搬送装置3は、チェーンコンベアを基本に構成される。具体的には、搬送方向の両側に敷設される一対の無端環状のチェーン33,34と、その両側のチェーン33,34間を連結する一対の棒状の基台35と、チェーン33,34を所定の張力で保持し、回転駆動する一対の駆動および従動のスプロケット36と、駆動のスプロケットを回転させる駆動機構(不図示)と、前記一対のチェーン33,34を案内して保持するフレーム31とを備えて構成される。
【0043】
駆動機構は、モータやギア、チェーンやベルトなどを適宜備えて構成される。前記スプロケット36や駆動機構は、送り手段を構成する。そして、駆動および従動のスプロケット36は、1回転分が、一対の基台35の3つ分の送り量となる径に構成されている。すなわち、スプロケットが1回転すると、前記の4列×3行の計12個分の果実8が、セットされることになる。スプロケットの一方には、その1回転分を検出する手段が設けられており、その検出結果に応答して、制御盤7によって、駆動のモータが制御される。たとえば、スプロケットに、周方向に1ケ所、磁性体の突起が設けられ、それを固定位置に設けた磁気センサで検出することで、1回転を検出することができる。このように搬送装置3をコンベアで実現することで、果実8からの搾汁を連続して効率的に行うことができる。
【0044】
本実施形態では、基台35は、果汁が流下し易いように一対の棒状体で構成されているが、板や網板で形成されてもよい。その基台35の対を成す棒状体には、1行4列分の型21が、溶接214などにより搭載される。型21の基台35への取付けは、
図2では、直接、溶接214で行われているが、それらの間に衝撃を吸収する機構が適宜介在されて行われてもよい。本実施形態では、果実8は作業者の手作業でセットするので、搬送装置3は、搾汁部2よりも手前(上流)側が長く、奥(下流)側が短くなっている。
【0045】
図3は型21,22を嵌合させた状態の断面図であり、
図4は型21の分解斜視図である。型21は、ステンレス鋼突合わせ溶接式管継手キャップから成る本体211の内側面にナット212が溶接215などで接合され、外側面から、前記本体211の頂部に形成された孔2111を通して、前記ナット212に尖鋭部213がネジ止めされて構成される。本体211には、所謂ステンレスホット材が使用され、材料としては、SUS304W、316LW、316Wなどである。尖鋭部213は、果実8を突き刺して保持する円錐部2131と、その基端から刻設されて、前記孔2111を通してナット212に螺合する捻子部2132とを備えて構成され、旋盤の削出しなどによって作成される。
【0046】
図5は、型22の分解斜視図である。型22も、型21の本体211と同様の材料から成るステンレス鋼突合わせ溶接式管継手キャップから成る本体221の頂部に形成された孔2211付近の外側面に、ナット222が溶接225などで接合され、そのナット222に、外周面に捻子が形成された筒体223が螺着され、溶接固定されて構成される。筒体223は、プレート25に形成された孔から差込まれ、ナットで固定される。
【0047】
一方、搬送装置3の奥(下流)側で、コンベアが折返しを始める位置から、渣取り装置5が設けられている。
図6は、渣取り装置5の斜視図である。渣取り装置5は、搬送装置3による型21の搬送に対して、その型21に吸着している果実8の残渣を2段階で剥ぎ取るものであり、1段目(上流側)の引掛け部材51と、2段目(下流側)の邪魔板52とを備えて構成される。後述するように、引掛け部材51によって、内型21に吸着した果実8(残渣)を引き剥がして落下させ、この引掛け部材51で取りこぼした果実8(残渣)を、さらに後続の邪魔板52に当てて、落下させる。落下した果実8(残渣)は、籠91などで回収される。該搾汁装置1が複数台併設される場合は、果実8(残渣)の落下位置付近を引き通されたコンベアやシューターによって、果実8(残渣)は1箇所に集められる。
【0048】
搾汁部2で搾り出された果汁は、内型21から、基台35の隙間を通して滴下し、少なくとも搾汁部2より広い面積を有し、往復の基台35(コンベア)の間に介在される果汁受け4によって受け止められる。果汁受け4は、傾斜板41と、その傾斜板41の底部に形成された樋42とによって構成され、集められた果汁は、粗ゴミや果実8(残渣)を除去する濾し網61を通って、タンク62に貯留される。濾し網61およびタンク62は、貯留部6を構成する。該搾汁装置1が複数台併設される場合は、樋42はその複数台に順次引き通され、1箇所のタンク62に集められる。
【0049】
タンク62に集められた果汁は、所定量貯まった時点で該タンク62が交換されたり、ポンプで汲み出されたりした後、フィルタ濾過される。濾過された果汁は、瓶充填されたり、冷凍保存される。最終的な出荷前には、果汁は、瓶詰め状態で過熱殺菌される。図示しないが、搾汁の作業場には、農家や農協などから搬入された果実8が、ブラシや流水によって洗浄され、サイズや傷みが選別された後、スライスする機械で2分割され、籠92などで搬入されて来る。本実施形態では、果実8の内型21へのセットは、作業者10によって行われているが、そのような洗浄、選別、分割、セットが、機械によって一括して行われても良い。
【0050】
上述のように構成される搾汁装置1において、先ず注目すべきは、本実施形態の搾汁部2および搾汁方法では、柑橘類などの果実8を略半割れにして、その割れた面から、特許文献1のような碗形の型21に押付けて搾汁するにあたって、
図3で示すように、その型21を内型とし、この内型に被さり、嵌合することができる外側の型22も設けることである。そして、略半割れの果実8を、その半断面側を内側の型21に、外表面側を外側の型22に、それぞれ接触させて、駆動手段23でそれらの一対の型21,22を相互に近接/離反駆動することで、搾汁ならびに新しい果実8の装填および残渣の取出しを可能にする。
【0051】
このように構成することで、内外の型21,22で、略半割れの果実8を、果肉、具体的に砂じょうの部分だけを潰し、外果皮は勿論、中果皮、維管束および特に効果の大きいじょうのう膜の部分を、極力潰さずに搾汁することができる。これによって、それらの部位による苦み、灰汁、油分の混じらない果汁を得ることができる。また、そのような苦みなどの無い果汁を得るにあたって、従来のように、たとえば前記維管束やじょうのう膜のペクチン質や繊維質を分解する酵素を添加したり、酸を入れたりしたり、その後に、中和したりする必要もない。
【0052】
また注目すべきは、前記一対の型21,22は、その相互の対向面が平滑面であることである。ここで、前記特許文献1の果汁搾り器は、果実が押し当てられる突状の部分には果汁を通す溝が形成されているが、多くの果汁搾り器では、その突状の部分にリブを立て、果実をねじ回して搾っている。これに対して、本実施形態の搾汁部2では、内型21だけでなく、新たに設ける外型22も、それらの対向面を平滑に形成する。
【0053】
このように構成することで、前記リブで維管束やじょうのう膜を剥ぎ取ってしまったり、外果皮中の油胞を潰してしまったりすることなく、果汁の成分だけを得ることができる。また、残渣は、粉砕して飼料などにするだけでなく、外果皮から内果皮が綺麗に残っているので、スライスしてマーマレードやピールに加工したり、特に前記油胞が残っているので、それからエッセンシャルオイルを抽出したりして、該残渣の利用価値を高めることもできる。
【0054】
具体的には、型21,22の対向面が平滑であるため、駆動手段23によって外型22を内型21に押さえ付ける力は、50~70kgf、押さえ付ける時間は4~6.5秒である。これは、前記油圧シリンダーの圧力としては、0.4~0.5MPaであり、0.4MPaとすると、シャフト径が6cmであるので、プレート25を押し下げる力は、1152.67kgfとなり、これを12で割ると、96kgfとなり、一般的な油圧機器の実際の出力が5~7割程度であることを考慮すると、前記の50~70kgfとなるからである。
【0055】
より具体的には、たとえばLサイズの熟れたみかんは軟らかく、そのような場合は押え付ける力も50kgf程度で小さく、また時間も4秒程度の短時間でも、充分搾汁できる。これに対して、比較的硬くて大きなグレープフルーツやあまなつなどは、押さえ付ける力は70kgf程度で大きく、また時間も6.5秒程度の長い時間が必要になる。こうして、前記苦み、灰汁、油分の混じらない果汁を、効率良く得ることができる。
【0056】
また、本実施形態の搾汁装置1では、前記型21,22の本体211,221の碗形は、半球体、或いはドーム形(ラグビーボールのような楕円を略半分にしたような形状も含む)等も含み、腰から胴、口縁部までゆるやかな曲線で立ち上がる形状である。たとえば、本実施形態では、外型22の内径は103mm、内型21の外径は100mmで、特に
図3で示すように、内型21の頂部付近が外型の内周面に密着するように、型21,22の本体211,221は、半球よりも頂部をややつぶした形状となっている。具体的には、それぞれの本体211,221は、前記ステンレス鋼突合わせ溶接式管継手キャップから成ることで、そのような形状を得ている。なお、下側の型21の本体211は、上述のような半球状に限らず、全球体でもよい。
【0057】
したがって、多くの果実8よりも内型21が大きい点は、特許文献1と同様であるが、たとえば大きな3Lサイズのみかんの残渣は、内型21の頂部よりも下側の隙間に多く貯まり、小さなすだちでは、内型21の頂部付近で全体が均等に挟圧されることになる。こうして、1つの型21,22で、大きな果実から小さな果実まで、幅広く搾ることができる。
【0058】
さらにまた、注目すべきは、本実施形態の搾汁部2では、前記一対の型21,22は、外型22が上方に、内型21が下方に配置され、外型22の頂部には、外気に連通する孔2211が形成され、さらにその孔2211は筒体223を通して外気に連通していることである。
【0059】
このように外型22を上方に、内型21を下方にすることで、搾った果汁は、半割れの果実8の内側を伝って滴り落ちるので、果実8の外表面に接触せず、衛生的に採集することができる。また、前述のように、上下一対の型22,21は、その対向面が平滑面であるので、上方の外型22の頂部に孔2211を開け、筒体223に連通しておくことで、型22が離反した際、空気が通り、残った残渣は下方の内型21に吸着するようになり、渣取り装置5で残渣を集め易くなる。
【0060】
そして、碗形の上下一対の型22,21を密着させて果汁を搾るにあたって、上述のように、外型22側には、孔2211から筒体223の内部に逃げの空間があるので、本実施形態では、内型21の頂部には、先細状の尖鋭部213を設けている。したがって、この先細状の尖鋭部213は、前記略半割れの果実8の半断面側の中央部に突き刺さり、該略半割れの果実8が内型21の表面を落ちることを防止することができる。また、その尖鋭部213は、型21,22を離反する際、残渣を引っ掛けて、外型22から、より剥がし易くすることができるとともに、上下の型22,21が相互に嵌合する際は、前記孔2211から筒体223の内部に逃げ、型合せに問題が生じることもない。
【0061】
しかも、前記尖鋭部213は、果実8を突き刺して保持する円錐部2131と、その基端側の捻子部2132とを備え、前記捻子部2132は、内型21の本体211の頂部に形成された孔2111を通して、裏面のナット212に螺着することで、該尖鋭部213は本体211から交換可能となっている。これは、該尖鋭部213は、果皮などを挟んで、或いは直接に、孔2211の入口付近や筒体の内周面に、当ったりして曲がったり、擦れたりして摩耗したりするためである。したがって、該尖鋭部213を交換可能にすることで、搾汁装置1のメンテナンス費用を軽減することができる。
【0062】
次に、
図6を参照して、渣取り装置5について詳述する。渣取り装置5は、上述のように、1段目(上流側)の引掛け部材51と、2段目(下流側)の邪魔板52とを備えて構成される。注目すべきは、引掛け部材51は、内型21の流路上で、流れて来る該内型21の近接位置で、かつ内型21の中心、すなわち尖鋭部213の円錐部2131の先端から、オフセットした片側の位置のみに設けられていることである。
図6では、引掛け部材51は、刃物のように形成されているが、爪(ピン)などでもよい。このように構成することで、内型21に吸着した果実8(残渣)を、尖鋭部213を中心にして回転させて内型21から引剥がすことができ、効率良く確実に引剥がして、落下させることができる。
【0063】
しかも、引掛け部材51は、無端環状のコンベア(33,34)が折返しを始める位置よりも下流側に設けられている。これは、該引掛け部材51は、上述のように内型21に吸着した果実8(残渣)を回転させて内型21から引剥がすものの、コンベア(33,34)が水平搬送している位置に設けられても、浮上がらせるだけになる可能性もあるのに対して、折返しを始める位置よりも下流側に設けることで、浮上がった果実8(残渣)を、内型21から外して、より確実に落下させることができるためである。こうして、果実(残渣)を、より効率良く確実に除去することができる。
【0064】
次に、邪魔板52について説明する。邪魔板52は、前記4列の内型21の幅に近い矩形の板が、前記4列の内型21の垂直断面における外形線から予め定める間隔を開けた形状、つまり内型21が前記コンベア(33,34)の搬送によっても楽に擦り切って通過することができるように、その内型21の通過部分が、切欠き521によって大き目に切抜かれて成るものである。これによって、前記の引掛け部材51で内型21から引剥がしても外れなかった果実8(残渣)を、より確実に除去することができるようになる。
【0065】
しかも、本実施形態の邪魔板52は、コンベア(33,34)の折返しの中間点(90°回った水平位置)から折返しの終了点(180°回った下端位置)までの間に設けている。これによって、邪魔板52は、引掛け部材51と2段階で、確実に、引き剥がした果実8(残渣)を、落下させることができる。また、本実施形態の邪魔板52は、内型21と対向する部分、つまり切欠き521とは反対側は、延長されて板状部522を形成している。これによって、落下した果実8(残渣)のシューター(案内部材)として機能させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 搾汁装置
2 搾汁部
21 内側の型
211 本体
213 尖鋭部
2131 円錐部
22 外側の型
221 本体
2211 孔
223 筒体
23 駆動手段
24 フレーム
25 プレート
26 案内軸
3 搬送装置
31 フレーム
33,34 チェーン
35 基台
36 スプロケット
4 果汁受け
41 傾斜板
42 樋
5 渣取り装置
51 引掛け部材
52 邪魔板
521 切欠き
522 板状部
6 貯留部
61 濾し網
62 タンク
7 制御盤
8 果実
91,92 籠
10 作業者