(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081468
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】トリアジン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20230606BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230606BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230606BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20230606BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H01L27/32
C09K11/06 690
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195193
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】521180485
【氏名又は名称】エスケーマテリアルズジェイエヌシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川角 亮介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 靖宏
【テーマコード(参考)】
3K107
4C063
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC22
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD68
3K107DD69
3K107DD74
3K107DD78
4C063AA05
4C063BB02
4C063CC43
4C063DD08
4C063EE10
(57)【要約】
【解決手段】式(1)
(Xは、ヘテロアリーレン、Y
1は式(1-a)で表される基、Y
2は式(1-b)で表
される基であり、A
1、A
2、A
3およびA
4は、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、A
1およびA
2のいずれも、またはA
3およびA
4のいずれもの少なくとも一方がNを結合位置とする基であり、Z
1、Z
2およびZ
3はCHまたはNであり、少なくとも1つはNであり、*は結合位置を示し、式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置き換えられていてもよい。)で表される化合物は有機電解発光素子等の有機デバイス用材料として有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物;
【化1】
式(1)中、
Xは、置換または無置換のヘテロアリーレンであり、
Y
1は式(1-a)で表される基であり、
Y
2は式(1-b)で表される基であり、
【化2】
A
1およびA
2は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、
A
3およびA
4は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、または置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノであり、
A
1およびA
2のいずれも、またはA
3およびA
4のいずれもの少なくとも一方がNを結合位置とする基であり、
Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立してCHまたはNであるが、Z
1、Z
2およびZ
3のうち、少なくとも1つはNであり、
*は結合位置を示し、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置き換えられていてもよい。
【請求項2】
Nを結合位置とする基が、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のN-カルバゾリル、置換もしくは無置換のN-アザカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾイミダゾリル、置換もしくは無置換のN-イミダゾイミダゾリル、置換もしくは無置換のN-インドロインドリル、置換もしくは無置換のN-インドロカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾフロカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾチエノカルバゾリル、または置換もしくは無置換のN-インデノカルバゾリルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
A1およびA2がいずれもNを結合位置とする基である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Xにおけるヘテロアリーレンが、カルバゾール、アザカルバゾール、ベンゾイミダゾール、イミダゾイミダゾール、インドロインドール、インドロカルバゾール、ベンゾフロカルバゾール、ベンゾチエノカルバゾールまたはインデノカルバゾールの環原子に結合する水素を任意に2つ除去した2価の基である請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Z1、Z2およびZ3が、いずれもNである請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
A1およびA2がいずれも無置換のN-カルバゾリルであり、かつA3およびA4がいずれも無置換のN-カルバゾリルまたは無置換のフェニルである請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
下記式のいずれかで表される請求項1に記載の化合物。
【化3】
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物を含有する、有機デバイス用材料。
【請求項9】
陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置されされる有機層とを有し、前記有機層が請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物を含有する、有機電界発光素子。
【請求項10】
前記有機層が発光層である、請求項9に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記発光層が、前記化合物をホスト材料として含み、さらにドーパント材料を含む、請求項10に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記有機層が電子輸送層である、請求項9に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン化合物、これを用いた有機電界発光素子、ならびに、表示装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料から成る有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の1つである青色や緑色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
【0003】
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
【0004】
発光層用の発光材料としては、現在、蛍光材料、燐光材料、熱活性型遅延蛍光(TADF)材料の3種類が利用されている。例えば、蛍光材料ではアザボリン誘導体を改良した材料などが報告されており(特許文献1)、燐光材料では多座配位子を有する貴金属錯体などが開発されており(特許文献2)、熱活性型遅延蛍光(TADF)材料ではカルバゾニトリル化合物などが開発されている(非特許文献1)。
【0005】
いずれの材料を用いた素子も、効率の低下につながる発光層または周辺層からのエネルギーの漏れを防ぐため高い最低励起一重項エネルギー準位または最低励起三重項エネルギー準位を持つ材料が発光層の隣接層またはホストに用いられる。特許文献3には、少なくとも2つのドナー部位と少なくとも2つのアクセプター部位を有する化合物であって、ドナー部位とアクセプター部位が同一分子内に同数存在する化合物を発光層のホストに用いて良好なデバイス性能が得られたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/102118号
【特許文献2】特開2014-239225号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0020867号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nature Vol.492 13 December 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述するように、有機EL素子に用いられる材料としては種々のものが開発されているが、有機EL素子用材料の選択肢を増やすために、従来のものとは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。また、特許文献1では、ホウ素を含む多環芳香族化合物とそれを用いた有機EL素子が報告されているが、更に素子特性を向上させるべく、発光効率および素子寿命を向上させることができる発光層用材料および周辺層用材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、新規なトリアジン化合物が高い最低励起一重項エネルギー準位および高い電子輸送性を有することを見出した。そして、例えばこのようなトリアジン化合物をホスト材料または発光層に隣接する層の材料とし、それよりも小さな最低励起三重項エネルギーを有する化合物をドーパント材料とした発光層を一対の電極間に配置して有機EL素子を構成することにより、優れた有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のようなトリアジン化合物、さらには以下のようなトリアジン化合物を含む有機デバイス用材料等を提供する。
【0010】
<1> 式(1)で表される化合物;
【化1】
式(1)中、
Xは、置換または無置換のヘテロアリーレンであり、
Y
1は式(1-a)で表される基であり、
Y
2は式(1-b)で表される基であり、
【0011】
【0012】
A1およびA2は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、
A3およびA4は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、または置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノであり、
A1およびA2のいずれも、またはA3およびA4のいずれもの少なくとも一方がNを結合位置とする基であり、
Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立してCHまたはNであるが、Z1、Z2およびZ3のうち、少なくとも1つはNであり、
*は結合位置を示し、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置き換えられていてもよい。
【0013】
<2> Nを結合位置とする基が、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のN-カルバゾリル、置換もしくは無置換のN-アザカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾイミダゾリル、置換もしくは無置換のN-イミダゾイミダゾリル、置換もしくは無置換のN-インドロインドリル、置換もしくは無置換のN-インドロカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾフロカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾチエノカルバゾリル、または置換もしくは無置換のN-インデノカルバゾリルである<1>に記載の化合物。
【0014】
<3> A1およびA2がいずれもNを結合位置とする基である<1>または<2>に記載の化合物。
<4> Xにおけるヘテロアリーレンが、カルバゾール、アザカルバゾール、ベンゾイミダゾール、イミダゾイミダゾール、インドロインドール、インドロカルバゾール、ベンゾフロカルバゾール、ベンゾチエノカルバゾールまたはインデノカルバゾールの環原子に結合する水素を任意に2つ除去した2価の基である<1>~<3>のいずれか一項に記載の化合物。
【0015】
<5> Z1、Z2およびZ3が、いずれもNである<1>~<4>のいずれかに記載の化合物。
<6> A1およびA2がいずれも無置換のN-カルバゾリルであり、かつA3およびA4がいずれも無置換のN-カルバゾリルまたは無置換のフェニルである<1>~<5>のいずれかに記載の化合物。
【0016】
<7> 下記式のいずれかで表される<1>に記載の化合物。
【化3】
【0017】
<8> <1>~<7>のいずれかに記載の化合物を含有する、有機デバイス用材料。
<9> 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置されされる有機層とを有し、前記有機層が<1>~<7>のいずれかに記載の化合物を含有する、有機電界発光素子。
<10> 前記有機層が発光層である、<9>に記載の有機電界発光素子。
<11> 前記発光層が、前記化合物をホスト材料として含み、さらにドーパント材料を含む、<10>に記載の有機電界発光素子。
<12> 前記有機層が電子輸送層である、<9>に記載の有機電界発光素子。
<13> <9>~<12>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、新規なトリアジン化合物を例えば発光層におけるホスト材料、ホスト材料の一成分または発光層へ隣接する層の成分として用いた有機EL素子を作製することで、量子効率や素子寿命が優れた有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
【
図2】一般的な蛍光ドーパントを用いたTAF素子のホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントのエネルギー関係を示すエネルギー準位図である。
【
図3】本発明の一態様の有機電界発光素子における、ホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントのエネルギー関係の一例を示すエネルギー準位図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。同様に「炭素原子(C)」を「炭素」ということがある。
本明細書において、「隣接する基」というときは、構造式中で隣接する2つの原子(共有結合で直接結合する2つの原子)にそれぞれ結合している2つの基を意味する。
【0021】
本明細書において「Me」はメチル、「Et」はエチル、「nBu」はn-ブチル(ノルマルブチル)、「tBu」はt-ブチル(ターシャリーブチル)、「iBu」はイソブチル、「secBu」はセカンダリーブチル、「nPr」はn-プロピル(ノルマルプロピル)、「iPr」はイソプロピル、「tAm」はt-アミル、「2EH」は2-エチルヘキシル、「tOct」はt-オクチル、「Ad」は1-アダマンチル、「Ph」はフェニル、「Mes」はメシチル(2,4,6-トリメチルフェニル)、「Tf」はトリフルオロメタンスルホニル、「TMS」はトリメチルシリル、「D」は重水素を表す。
本明細書において、有機電界発光素子を有機EL素子ということがある。
【0022】
本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
【0023】
<環および置換基の説明>
まず、本明細書において使用する環および置換基の詳細について以下で説明する。
【0024】
本明細書における「アリール環」としては、例えば、炭素数6~30のアリール環があげられ、炭素数6~16のアリール環が好ましく、炭素数6~12のアリール環がより好ましく、炭素数6~10のアリール環が特に好ましい。
【0025】
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、インデン環、三環系であるテルフェニル環(m-テルフェニル、o-テルフェニル、p-テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、アントラセン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、クリセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。また、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、インデン環には、それぞれフルオレン環、ベンゾフルオレン環、シクロペンタン環などがスピロ結合した構造も含まれる。なお、フルオレン環、ベンゾフルオレン環およびインデン環には、その構造中のメチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置き換わって、ジメチルフルオレン環、ジメチルベンゾフルオレン環およびジメチルインデン環などとなっているものも含まれる。
【0026】
本明細書における「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2~25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2~20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、窒素、リンおよびセレンなどから選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
【0027】
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ジベンゾインドロカルバゾール環、ナフトベンゾフラン環、ジオキシン環、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環、ジベンゾジオキシン環、ベンゾセレノフェン環、ジベンゾセレノフェン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾチオフェン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾセレノフェン環、アザトリフェニレン環、イミダゾイミダゾール環、インドロインドール環、ベンゾフロカルバゾール環、ベンゾチエノカルバゾール環、インデノカルバゾール環およびセレノフェノカルバゾール環などがあげられる。また、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環、インデノカルバゾール環は、その構造中のメチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置き換わって、ジメチルジヒドロアクリジン環、ジメチルキサンテン環、ジメチルチオキサンテン環などとなっているものも好ましい。また二環系であるビピリジン環、フェニルピリジン環、ピリジルフェニル環、三環系であるテルピリジル環、ビスピリジルフェニル環、ピリジルビフェニル環も「ヘテロアリール環」としてあげられる。また、「ヘテロアリール環」にはピラン環も含まれるものとする。
【0028】
本明細書において、置換基は、さらなる置換基で置換されていることがある。例えば、特定の置換基に関して、「置換もしくは無置換の」と説明がされることがある。これはその特定の置換基が少なくとも1つのさらなる置換基で置換されているか、または置換されていないことを意味する。同様の意味で「置換されていてもよい」ということもある。本明細書において、このときの上記特定の置換基を「第1の置換基」、上記のさらなる置換基を「第2の置換基」ということがある。
【0029】
本明細書において、「置換基」という場合、特に別途の説明がないときは、置換基群Zから選択されるいずれかの基であればよい。例えば、「置換もしくは無置換の」とされる基が置換されているとき、当該基は置換基群Zから選択される少なくとも1つの基で置換されていればよい。
【0030】
本明細書において、置換基群Zは、
アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリール、
アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいヘテロアリール、
アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールとは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリールおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアルキル、
アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいシクロアルキル、
アリール、ヘテロアリールおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアルコキシ、
アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリールオキシ、ならびに
置換シリルからなる。
置換基群Zの各基における第2置換基であるアリールは、さらにアリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい、同様に、第2置換基であるヘテロアリールはアリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。
【0031】
本明細書において、「アリール」は、例えば炭素数6~30のアリールであり、好ましくは、炭素数6~20のアリール、炭素数6~16のアリール、炭素数6~12のアリール、または炭素数6~10のアリールなどである。
【0032】
具体的な「アリール」としては、上述した「アリール環」から1つの水素を除いた1価の基があげられる。例えば、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル(2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、もしくは4-ビフェニリル)、縮合二環系であるナフチル(1-ナフチルもしくは2-ナフチル)、三環系であるテルフェニリル(m-テルフェニル-2'-イル、m-テルフェニル-4'-イル、m-テルフェニル-5'-イル、o-テルフェニル-3'-イル、o-テルフェニル-4'-イル、p-テルフェニル-2'-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、もしくはp-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系である、アセナフチレン-(1-、3-、4-、もしくは5-)イル、フルオレン-(1-、2-、3-、4-、もしくは9-)イル、フェナレン-(1-もしくは2-)イル、フェナントレン-(1-、2-、3-、4-、もしくは9-)イル、もしくはアントラセン-(1-、2-、もしくは9-)イル、四環系であるクアテルフェニリル(5'-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5'-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5'-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、もしくはm-クアテルフェニル)、縮合四環系である、トリフェニレン-(1-もしくは2-)イル、ピレン-(1-、2-、もしくは4-)イル、もしくはナフタセン-(1-、2-、もしくは5-)イル、または、縮合五環系である、ペリレン-(1-、2-、もしくは3-)イル、もしくはペンタセン-(1-、2-、5-、もしくは6-)イルなどである。その他、スピロフルオレンの1価の基などがあげられる。
【0033】
なお、第2置換基としてのアリールには、当該アリールが、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)、およびシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換された構造も含まれる。
その一例としては、第2置換基としてのフルオレニルの9位が、フェニルなどのアリール、メチルなどのアルキル、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキルで置換された基があげられる。
【0034】
「アリーレン」は、例えば炭素数6~30のアリーレンであり、好ましくは、炭素数6~20のアリーレン、炭素数6~16のアリーレン、炭素数6~12のアリーレン、または炭素数6~10のアリーレンなどである。
具体的な「アリーレン」は、例えば、上述した「アリール」(1価の基)から1つの水素を除いた2価の基があげられる。
【0035】
「ヘテロアリール」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリールであり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリール、炭素数2~20のヘテロアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、または炭素数2~10のヘテロアリールなどである。「ヘテロアリール」は、環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素等から選ばれるヘテロ原子を、1個以上、好ましくは1~5個含有する。
【0036】
具体的な「ヘテロアリール」としては、上述した「ヘテロアリール環」から1つの水素を除いた1価の基があげられる。例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェナントロリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェナザシリニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、チエニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ナフトベンゾチエニル、ベンゾセレノフェニル、ジベンゾセレノフェニル、アザカルバゾリル、アザジベンゾチオフェニル、アザジベンゾフラニル、アザジベンゾセレノフェニル、アザトリフェニレニル、イミダゾイミダゾリル、インドロインドリル、ベンゾフロカルバゾリル、ベンゾチエノカルバゾリル、インデノカルバゾリルおよびセレノフェノカルバゾリル、ベンゾホスホリル、ジベンゾホスホリル、ベンゾホスホールオキシド環の1価の基、ジベンゾホスホールオキシド環の1価の基、フラザニル、チアントレニル、インドロカルバゾリル、ベンゾインドロカルバゾリル、ジベンゾインドロカルバゾリル、イミダゾリニル、またはオキサゾリニルなどである。その他、スピロ[フルオレン-9、9’-キサンテン]の1価の基、スピロビ[シラフルオレン]の1価の基があげられる。
【0037】
なお、第2置換基としてのヘテロアリールには、当該ヘテロアリールが、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)およびシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換された構造も含まれる。
その一例としては、第2置換基としてのカルバゾリルの9位が、フェニルなどのアリール、メチルなどのアルキル、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキルで置換された基があげられる。また、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、カルバゾリルなどの含窒素ヘテロアリールがさらにフェニルまたはビフェニリルなどで置換された基も第2置換基としてのヘテロアリールに含まれる。
【0038】
「ヘテロアリーレン」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリーレンであり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリーレン、炭素数2~20のヘテロアリーレン、炭素数2~15のヘテロアリーレン、または炭素数2~10のヘテロアリーレンなどである。また、「ヘテロアリーレン」は、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素から選ばれるヘテロ原子を1~5個含有する複素環などの二価の基である。
具体的な「ヘテロアリーレン」は、例えば、上述した「ヘテロアリール」(1価の基)から1つの水素を除いた2価の基があげられる。
【0039】
「ジアリールアミノ」は、2つのアリールが置換したアミノであり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「ジヘテロアリールアミノ」は、2つのヘテロアリールが置換したアミノ基であり、このヘテロアリールの詳細については上述した「ヘテロアリール」の説明を引用できる。
「アリールヘテロアリールアミノ」は、アリールおよびヘテロアリールが置換したアミノ基であり、このアリールおよびヘテロアリールの詳細については上述した「アリール」および「ヘテロアリール」の説明を引用できる。
【0040】
第1の置換基としてのジアリールアミノにおける2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、第1の置換基としてのジヘテロアリールアミノにおける2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、第1の置換基としてのアリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい。ここで、「連結基を介して結合」という記載は、下記に示すように例えばジフェニルアミノの2つのフェニルが連結基で結合を形成することを表す。またこの説明はアリールやヘテロアリールで形成された、ジヘテロアリールアミノおよびアリールヘテロアリールアミノについても適応される。
【0041】
【0042】
連結基としては具体的には、>O、>N-RX、>C(-RX)2、>Si(-RX)2、>S、>CO、>CS、>SO、>SO2、および>Seがあげられる。RXはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。また>C(-RX)2、>Si(-RX)2、におけるRXは、単結合または連結基XYを介して結合して環を形成してもよい。XYとしては>O、>N-RY、>C(-RY)2、>Si(-RY)2、>S、>CO、>CS、>SO、>SO2、および>Seがあげられ、RYはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。ただし、XYが>C(-RY)2および>Si(-RY)2の場合には、2つのRYは結合してさらに環を形成することはない。さらに連結基としては、アルケニレンもあげられる。該アルケニレンの任意の水素はそれぞれ独立してRXで置換されていてもよく、RXはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、置換シリル、アリールおよびヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、置換シリル、アリールで置換されていてもよい。
【0043】
なお、本明細書で単に「ジアリールアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」、または「アリールヘテロアリールアミノ」と記載されている場合は、特に断りがない限りは、それぞれ「ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」、「前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」および「前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」という説明が加わっているものであるとする。
【0044】
「ジアリールボリル」は、2つのアリールが置換したボリルであり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。また、この2つのアリールは、単結合または連結基(例えば、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、>N-R、>O、>S、>C(-R)2、>Si(-R)2、または>Se)を介して結合していてもよい。ここで、前記-CR=CR-のR、>N-RのR、>C(-R)2のR、および>Si(-R)のRは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、またはアリールオキシであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素は、さらにアリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、隣接する2つのR同士が結合して環を形成し、シクロアルキレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンを形成していてもよい。ここで列挙した置換基の詳細については、上述した「アリール」、「アリーレン」、「ヘテロアリール」、「ヘテロアリーレン」、および「ジアリールアミノ」の説明、ならびに、後述する「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、「シクロアルキレン」、「アルコキシ」、および「アリールオキシ」の説明を引用できる。また、本明細書で単に「ジアリールボリル」と記載されている場合は、特に断りがない限りは、「ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよい」という説明が加わっているものであるとする。
【0045】
「アルキル」は、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルであり、好ましくは、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)、炭素数1~5のアルキル(炭素数3~5の分岐鎖アルキル)、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)などである。
【0046】
具体的な「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-エチルブチル、1,1-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル(t-アミル)、1-メチルペンチル、2-プロピルペンチル、1,1-ジメチルペンチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1,4-トリメチルペンチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、2-エチルヘキシル、1,1-ジメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1,1,5-トリメチルヘキシル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-ヘプチル、1-メチルヘプチル、1-ヘキシルヘプチル、1,1-ジメチルヘプチル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、n-オクチル、t-オクチル(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、1,1-ジメチルオクチル、n-ノニル、n-デシル、1-メチルデシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、またはn-エイコシルなどである。
【0047】
「アルキレン」は、「アルキル」のいずれかの水素を除いて得られる2価の基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレンである。
【0048】
「アルケニル」については、上述した「アルキル」の説明を参考にすることができ、「アルキル」の構造中のC-C単結合をC=C二重結合に置換した基であり、1つだけでなく2つ以上の単結合が二重結合に置換された基(アルカジエン-イルやアルカントリエン-イルとも呼ばれる)も含める。
【0049】
「アルケニレン」は「アルケニル」のいずれかの水素を除いて得られる2価の基であり、例えばビニレンがあげられる。
【0050】
「アルキニル」については、上述した「アルキル」の説明を参考にすることができ、「アルキル」の構造中のC-C単結合をC≡C三重結合に置換した基であり、1つだけでなく2つ以上の単結合が三重結合に置換された基(アルカジイン-イルやアルカントリイン-イルとも呼ばれる)も含める。
【0051】
「シクロアルキル」は、例えば炭素数3~24のシクロアルキルであり、好ましくは、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数3~16のシクロアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、炭素数3~12のシクロアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、炭素数5~8のシクロアルキル、炭素数5~6のシクロアルキル、または炭素数5のシクロアルキルなどである。
【0052】
具体的な「シクロアルキル」は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、もしくはこれらの炭素数1~5や炭素数1~4のアルキル(特にメチル)置換体、ノルボルネニル、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、またはデカヒドロアズレニルなどである。
【0053】
「シクロアルキレン」は、例えば炭素数3~24のシクロアルキレンであり、好ましくは、炭素数3~20のシクロアルキレン、炭素数3~16のシクロアルキレン、炭素数3~14のシクロアルキレン、炭素数3~12のシクロアルキレン、炭素数5~10のシクロアルキレン、炭素数5~8のシクロアルキレン、炭素数5~6のシクロアルキレン、または炭素数5のシクロアルキレンなどである。
具体的な「シクロアルキレン」は、例えば、上述した「シクロアルキル」(1価の基)から1つの水素を除いて二価の基にした構造があげられる。
【0054】
「シクロアルケニル」は、上述した「シクロアルキル」における少なくとも1組の2つの炭素の間の単結合が二重結合となった構造を有する基(例えば、-CH2-CH2-が-CH=CH-に置き換わった基)であって、アリールに該当しない基があげられる。具体的には、1-シクロヘキセニル、1-シクロペンテニル等があげられる。
【0055】
「アルコキシ」は、「Alk-O-(Alkはアルキル)」で表される基であり、このアルキルの詳細については上述した「アルキル」の説明を引用できる。
【0056】
「アリールオキシ」は、「Ar-O-(Arはアリール)」で表される基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
【0057】
「置換シリル」は、例えば、アリール、アルキル、およびシクロアルキルの少なくとも1つで置換されたシリルであり、好ましくは、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルである。
【0058】
「トリアリールシリル」は、3つのアリールで置換されたシリル基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
具体的な「トリアリールシリル」は、例えば、トリフェニルシリル、ジフェニルモノナフチルシリル、モノフェニルジナフチルシリル、またはトリナフチルシリルなどである。
【0059】
「トリアルキルシリル」は、3つのアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルの詳細については上述した「アルキル」の説明を引用できる。
具体的な「トリアルキルシリル」は、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリn-プロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリn-ブチルシリル、トリイソブチルシリル、トリs-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、エチルジメチルシリル、n-プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、n-ブチルジメチルシリル、イソブチルジメチルシリル、s-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、n-プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、n-ブチルジエチルシリル、s-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、メチルジn-プロピルシリル、エチルジn-プロピルシリル、n-ブチルジn-プロピルシリル、s-ブチルジn-プロピルシリル、t-ブチルジn-プロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、n-ブチルジイソプロピルシリル、s-ブチルジイソプロピルシリル、またはt-ブチルジイソプロピルシリルなどである。
【0060】
「トリシクロアルキルシリル」は、3つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このシクロアルキルの詳細については上述した「シクロアルキル」の説明を引用できる。
具体的な「トリシクロアルキルシリル」は、例えば、トリシクロペンチルシリルまたはトリシクロヘキシルシリルなどである。
【0061】
「ジアルキルシクロアルキルシリル」は、2つのアルキルおよび1つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルおよびシクロアルキルの詳細については上述した「アルキル」および「シクロアルキル」の説明を引用できる。
【0062】
「アルキルジシクロアルキルシリル」は、1つのアルキルおよび2つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルおよびシクロアルキルの詳細については上述した「アルキル」および「シクロアルキル」の説明を引用できる。
【0063】
<同一の原子に結合する2つの基が互いに結合する場合>
本明細書において同一の原子に結合する2つの基について互いに結合して環を形成していてもよいという場合、単結合または連結基(これらをまとめて結合基ともいう)により結合していればよく、連結基としては、-CH2-CH2-、-CHR-CHR-、-CR2-CR2-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)2-、-Si(-R)2-、または-Se-があげられ、例えば以下の構造があげられる。なお、前記-CHR-CHR-のR、-CR2-CR2-のR、-CR=CR-のR、-N(-R)-のR、-C(-R)2-のR、および-Si(-R)2-のRは、それぞれ独立して、水素、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、シクロアルキルで置換されていてもよいアルキル、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアルケニル、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアルキニル、またはアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいシクロアルキルである。また、隣接する2つのR同士が結合して環を形成し、シクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンを形成していてもよい。
【0064】
【0065】
結合基としては、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)2-、-Si(-R)2-、および-Se-が好ましく、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)2-がより好ましく、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましく、単結合が最も好ましい。
【0066】
結合基により2つのRが結合する位置は、結合可能な位置であれば特に限定されないが、最も隣接する位置で結合することが好ましく、例えば2つの基がフェニルである場合、フェニルにおける「C」や「Si」の結合位置(1位)を基準としてオルト(2位)の位置同士で結合することが好ましい(上記構造式を参照)。
【0067】
1.本発明の化合物
本発明のトリアジン化合物は、式(1)で表される。
【0068】
【0069】
式(1)中、Y1は、式(1-a)で表される基であり、Y2は式(1-b)で表される基である。本発明のトリアジン化合物は、Y1および/またはY2として、Nを結合位置とするヘテロアリールなどの電子供与性の置換基(ドナー性の構造)が複数結合したトリアジニル等の電子受容性の置換基(アクセプター性の構造)を有する。具体的には、式(1)においては、A1およびA2のいずれも、またはA3およびA4のいずれもの少なくとも一方がNを結合位置とする基である。
【0070】
【0071】
式(1-a)中、A1およびA2は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールである。また、式(1-b)中、A3およびA4は、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、または置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノである。
【0072】
A1、A2、A3またはA4である置換もしくは無置換のアリールにおけるアリールとしては、フェニルが好ましい。また、A1、A2、A3またはA4である置換もしくは無置換のヘテロアリールにおけるヘテロアリールとしては、カルバゾリル(特に、N-カルバゾリル)、アザカルバゾリル(特に、N-アザカルバゾリル)、ベンゾイミダゾリル(特に、N-ベンゾイミダゾリル)、イミダゾイミダゾリル(特に、N-イミダゾイミダゾリル)、N-インドロインドリル(特に、N-インドロインドリル)、N-インドロカルバゾリル(特に、N-インドロカルバゾリル)、N-ベンゾフロカルバゾリル(特に、N-ベンゾフロカルバゾリル)、N-ベンゾチエノカルバゾリル(特に、N-ベンゾチエノカルバゾリル)、またはN-インデノカルバゾリル(特に、N-インデノカルバゾリル)が好ましく、N-カルバゾリルがより好ましい。
【0073】
A1、A2、A3またはA4におけるアリールまたはヘテロアリールが置換されている場合の置換基としては、アリールまたはヘテロアリールが好ましく、フェニル、カルバゾリル(特に、N-カルバゾリル)、アザカルバゾリル(特に、N-アザカルバゾリル)、ベンゾイミダゾリル(特に、N-ベンゾイミダゾリル)、イミダゾイミダゾリル(特に、N-イミダゾイミダゾリル)、N-インドロインドリル(特に、N-インドロインドリル)、N-インドロカルバゾリル(特に、N-インドロカルバゾリル)、N-ベンゾフロカルバゾリル(特に、N-ベンゾフロカルバゾリル)、N-ベンゾチエノカルバゾリル(特に、N-ベンゾチエノカルバゾリル)、またはN-インデノカルバゾリル(特に、N-インデノカルバゾリル)がより好ましく、フェニルまたはN-カルバゾリルがさらに好ましい。置換基の位置は特に限定されない。置換基の数は0~2個が好ましく、0~1個がより好ましい。A1、A2、A3またはA4はそれぞれ独立して無置換のフェニルまたは無置換のN-カルバゾリルであることが特に好ましい。
【0074】
A3またはA4である置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、または置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノにおいて、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、およびアリールヘテロアリールアミノが置換されているときの置換基としてはいずれも、フェニルが好ましい。置換基の数は0~2個が好ましく、0~1個がより好ましい。ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、およびアリールヘテロアリールアミノはいずれも無置換であることが好ましい。これらのうち好ましい例としては、無置換のジフェニルアミノがあげられる。
【0075】
式(1)においては、A1およびA2のいずれも、および/またはA3およびA4のいずれもが、Nを結合位置とする基である。このようにトリアジニルなどの電子受容性の置換基に対し、電子供与性の窒素で置換する基が複数置換した置換基を有する式(1)で表される化合物は、実施例に示すように、そのような置換基を有していない化合物に比較して極めて高い最低励起一重項エネルギー準位を有する。
【0076】
Nを結合位置とする基は、全体として電子供与性の構造からなる基が好ましく、例えば、置換もしくは無置換のN-カルバゾリル、置換もしくは無置換のN-アザカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾイミダゾリル、置換もしくは無置換のN-イミダゾイミダゾリル、置換もしくは無置換のN-インドロインドリル、置換もしくは無置換のN-インドロカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾフロカルバゾリル、置換もしくは無置換のN-ベンゾチエノカルバゾリル、または置換もしくは無置換のN-インデノカルバゾリルであることが好ましい。
【0077】
Nを結合位置とする基は、以下の基のいずれかであることがより好ましい。以下の基は無置換のフェニルおよび無置換のN-カルバゾリルからなる群より選択される1~2個の置換基を有していてもよい。
【0078】
【0079】
上記式(Aa-2)中、WはNH、NMe、NPh、O、S、またはC(Me)2である。式(Aa-2)における2つの点線は点線の末端が内部にある6員環の隣接する2つの環構成炭素原子に結合する。
【0080】
Nを結合位置とする基は、式(Aa-1)で表される基であることが特に好ましい。
【0081】
式(1)においては、少なくとも、A1およびA2がいずれもNを結合位置とする基であることが好ましい。すなわち、本発明の化合物は、Nを結合位置とする置換または無置換のヘテロアリール2つで置換されたトリアジニルを有することが好ましい。
A1、A2、A3およびA4がいずれもNを結合位置とする基であってもよい。
【0082】
式(1-b)において、Z1、Z2およびZ3は、互いに独立してCHまたはNであるが、Z1、Z2およびZ3のうち、少なくとも1つはNである。すなわち、式(1-b)で表される基は、A3およびA4を置換基として有するトリアジニル、A3およびA4を置換基として有するピリジル、またはA3およびA4を置換基として有するピリミジニルである。Z1、Z2およびZ3はいずれもNであることが好ましい。
【0083】
式(1)中、Xは、置換または無置換のヘテロアリーレンである。Xにおけるヘテロア
リーレンを構成するヘテロアリール環はインドール環、カルバゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾセレノフェン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾセレノフェン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾチオフェン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾセレノフェン環、アザトリフェニレン環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、イミダゾイミダゾール環、インドロインドール環、インドロカルバゾール環、ベンゾフロカルバゾール環、ベンゾチエノカルバゾール環、インデノカルバゾール環およびセレノフェノカルバゾール環からなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。このうち、電子供与性のヘテロアリール環が好ましく、具体的には、カルバゾール環、アザカルバゾール環、ベンズイミダゾール環、イミダゾイミダゾール環、インドロインドール環、インドロカルバゾール環、ベンゾフロカルバゾール環、ベンゾチエノカルバゾール環、またはインデノカルバゾール環であることがより好ましい。結合位置は特に限定されないが、例えば、カルバゾール環は3位および9位、または2位および9位を結合位置とする2価の基となっていることが好ましく、3位および9位を結合位置とする2価の基となっていることがより好ましい。また、インドロカルバゾール環は2つのNを結合位置とする2価の基となっていることが好ましい。Xにおけるヘテロアリーレンを構成するヘテロアリール環は特にカルバゾール環であ
ることが好ましい。
【0084】
Xにおけるヘテロアリーレンが置換されている場合の置換基としては、アリールまたは
ヘテロアリールが好ましく、フェニル、カルバゾリル(特に、N-カルバゾリル)、アザカルバゾリル(特に、N-アザカルバゾリル)、ベンゾイミダゾリル(特に、N-ベンゾイミダゾリル)、イミダゾイミダゾリル(特に、N-イミダゾイミダゾリル)、N-インドロインドリル(特に、N-インドロインドリル)、N-インドロカルバゾリル(特に、N-インドロカルバゾリル)、N-ベンゾフロカルバゾリル(特に、N-ベンゾフロカルバゾリル)、N-ベンゾチエノカルバゾリル(特に、N-ベンゾチエノカルバゾリル)、またはN-インデノカルバゾリル(特に、N-インデノカルバゾリル)がより好ましく、フェニルまたはN-カルバゾリルがさらに好ましい。
【0085】
Xにおけるヘテロアリーレンに置換する置換基の位置は特に限定されない。置換基の数
は0~2個が好ましく、0~1個がより好ましい。Xは無置換のヘテロアリーレンである
ことが特に好ましい。
【0086】
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置き換えられていてもよい。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、フッ素、塩素、または臭素が好ましく、フッ素または塩素がより好ましい。
【0087】
本発明の化合物の具体例として、下記構造式のいずれかで表される化合物があげられる。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
2.トリアジン化合物の製造方法
式(1)で表される化合物は、式(1)中の含窒素6員環の所望の位置に反応性基を有する化合物と、所望の位置に反応性基を有する化合物を出発原料として、鈴木カップリング、根岸カップリング他の公知の反応を応用して製造することができる。これらの化合物の反応性基としては、ハロゲンやボロン酸などがあげられる。
【0103】
3.有機デバイス
本発明に係るトリアジン化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。
【0104】
3-1.有機電界発光素子
以下に、本実施形態に係る有機EL素子について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
【0105】
<有機電界発光素子の構造>
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
【0106】
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
【0107】
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
【0108】
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
【0109】
有機EL素子はさらに電子阻止層(電子ブロッキング層)および正孔阻止層(正孔ブロッキング層)から選択されるいずれかまたは双方を有していてもよい。電子阻止層は発光層より浅いLUMOおよび発光層または正孔輸送層と近いHOMOとを有し、発光層と正孔輸送層の間に配置される。電子が発光層内に留まり正孔輸送層へ漏れ出ないために、正孔輸送層の劣化による短寿命化と再結合効率低下による効率の低下を防ぐことができる。正孔阻止層は発光層より深いHOMOおよび発光層または正孔輸送層と近いLUMOとを有し、発光層と電子輸送層の間に配置される。正孔が発光層内に留まり電子輸送層へ漏れ出ないために、電子輸送層の劣化による短寿命化と再結合効率低下による効率の低下を防ぐことができる。正孔注入・輸送層が電子阻止層を兼ねていてもよい。電子注入・輸送層が正孔阻止層を兼ねていてもよい。
【0110】
有機EL素子はさらに高T1層を有していてもよい。高T1層は、発光層に用いられるホスト化合物、アシスティングドーパント化合物またはエミッティングドーパント化合物より高いT1を有し、発光層と正孔輸送層の間および/または発光層と電子阻止層の間に配置される。T1エネルギーの値は素子の発光機構により異なるが、ホストに用いられる化合物より高いT1を有する。発光層の周囲に高T1層を有することで、三重項エネルギーを閉じ込め、通常蛍光分子では発光につながらない三重項エネルギーを一重項エネルギーへと変換し、高い効率を得ることができる。正孔注入・輸送層または電子阻止層が高T1層を兼ねていてもよい。電子注入・輸送層または正孔阻止層が高T1層を兼ねていてもよい。
【0111】
本発明のトリアジン化合物は、有機電界発光素子用材料として用いることが好ましい。一般に、ドナー構造を有する化合物は発光層における正孔輸送性ホスト材料および正孔輸送層に使用することができ、アクセプター構造を有する化合物は電子輸送層性ホスト材料および電子輸送層に使用することができ、ドナー構造およびアクセプター構造を共に有する化合物は正孔輸送層、発光層におけるホストおよび電子輸送層のいずれにも使用することができる。ドナー構造およびアクセプター構造は、例えば、Advanced Functional Materials 2020, 2008332などを参考にすることができる。より具体的には、ドナー構造は、トリアリールアミン構造およびカルバゾール構造があげられ、アクセプター構造は、トリアジン構造、ピリミジン構造およびピリジン構造があげられる。本発明に係るトリアジン化合物は、発光層におけるホスト材料、正孔輸送層材料、電子輸送層材料等として用いることができる。
【0112】
<有機電界発光素子における基板>
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよい。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
【0113】
<有機電界発光素子における陽極>
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および正孔輸送層104の少なくとも1つの層が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
【0114】
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3-メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
【0115】
<有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層または混合により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
【0116】
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。正孔輸送層用の材料として、本発明のトリアジン化合物を用いることも好ましい。
【0117】
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N-アリールカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(3-メチルフェニル)-4,4'-ジアミノビフェニル、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(3-メチルフェニル)-4,4'-ジフェニル-1,1'-ジアミン、N,N'-ジナフチル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジフェニル-1,1'-ジアミン、N4,N4'-ジフェニル-N4,N4'-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン、N4,N4,N4',N4'-テトラ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン、4,4',4"-トリス(3-メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
【0118】
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6-テトラフルオロテトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。
【0119】
上述した正孔注入層用材料および正孔輸送層用材料は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、正孔層用材料に用いることができる。
【0120】
<有機電界発光素子における発光層>
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であることが好ましい。本発明のトリアジン化合物は発光層用の材料として用いることも好ましい。
【0121】
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着したり、有機溶媒と共にホスト材料と予め混合してから湿式成膜法により製膜したりしてもよい。
【0122】
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全質量に対し50~99.999質量%であり、より好ましくは80~99.95質量%であり、さらに好ましくは90~99.9質量%である。
【0123】
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパント材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全質量に対し0.001~50質量%であり、より好ましくは0.05~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。また、耐久性の観点から、ドーパント材料の水素は一部または全部が重水素化されていることも好ましい。
【0124】
ドーパント材料としては、エミッティングドーパントとアシスティングドーパント材料とを用いてもよい。アシスティングドーパント材料としては熱活性型遅延蛍光材料を用いることが好ましい。アシスティングドーパント材料を用いた有機電界発光素子においては、エミッティングドーパント材料の使用量は低濃度である方が濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。アシスティングドーパント材料の使用量が高濃度である方が熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは好ましい。さらには、熱活性型遅延蛍光アシスティングドーパント材料を用いた有機電界発光素子においては、アシスティングドーパント材料の熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは、アシスティングドーパント材料の使用量に比べてエミッティングドーパント材料の使用量が低濃度である方が好ましい。
【0125】
アシスティングドーパント材料が使用される場合における、ホスト材料、アシスティングドーパント材料およびエミッティングドーパント材料の使用量の目安は、それぞれ、発光層用材料全質量に対し40~99質量%、59~1質量%および20~0.001質量%であり、好ましくは、それぞれ、60~95質量、39~5質量%および10~0.01質量%であり、より好ましくは、70~90質量、29~10質量%および5~0.05質量%である。
【0126】
<ホスト材料>
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、N-フェニルカルバゾール誘導体、カルバゾニトリル誘導体などがあげられる。
【0127】
ホスト材料の三重項エネルギーは、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高い三重項エネルギーを有するドーパントまたはアシスティングドーパントの三重項エネルギーに比べて高い方が好ましく、具体的には、ホスト材料の三重項エネルギーは、0.01eV以上が好ましく、0.03eV以上がより好ましく、0.1eV以上がさらに好ましい。また、ホスト材料にTADF活性な化合物を用いてもよい。
【0128】
ホスト材料は、一種類であっても、複数の組み合わせであってもよい。複数の組み合わせである場合、正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせであることが好ましい。
【0129】
本発明のトリアジン化合物はホスト材料として好ましく用いることができる。本発明のトリアジン化合物は単独のホスト材料として用いても、正孔輸送性ホスト材料として用いても、電子輸送性ホスト材料として用いてもよい。本発明のトリアジン化合物は単独のホスト材料として用いるか、または電子輸送性ホスト材料として用いることが好ましい。
【0130】
なお、発光層に隣接する正孔輸送層に正孔輸送性ホスト材料を用い、かつこの発光層に隣接する電子輸送層に電子輸送性ホスト材料を用いることも好ましい。発光層から隣接層へのキャリア漏れ・エネルギー漏れが起こりにくくなり、高い効率の有機EL素子が得られるからである。発光層中のホスト材料(正孔輸送性ホスト材料)と正孔輸送層材料とは同じであっても異なっていてもよい。また、発光層中のホスト材料(電子輸送性ホスト材料)と電子輸送層の材料とは同じであっても異なっていてもよい。
【0131】
[正孔輸送性ホスト材料(HH)]
好ましい正孔輸送性ホスト材料(HH)の例としては、本発明のトリアジン化合物のほか、式(HH-1)で表される化合物および式(HH-1)で表される部分構造を有する化合物をあげることができる。
【0132】
【0133】
式(HH-1)において、
Qは、>O、>S、または>N-Aであり、
式(HH-1)における2つのフェニルそれぞれにおけるQの結合する炭素原子の隣の1つの炭素原子は、互いに、Lで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(-A)2であり、
Aは、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、>C(-A)2における2つのAは互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成してよい。
【0134】
正孔輸送性ホスト材料が式(HH-1)で表される構造を部分構造として含むとき、この部分構造1を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。2つ以上の部分構造は互いに単結合で結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環を共有するようにして結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環同士が縮合するようにして結合していてもよい。部分構造はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、またはアリールオキシから選択される置換基を有していてもよい。
【0135】
正孔輸送性ホスト材料は、トリアリールアミン構造、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、およびジベンゾチオフェン環、およびフェノキサジンもしくはフェノチアジンを含む縮合多環からなる群より選択される1つ以上の部分構造を含む化合物であることが好ましい。正孔輸送性ホスト材料はこのような部分構造1を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0136】
正孔輸送性ホスト材料の具体例としては、以下の化合物をあげることができる。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
上記のうち、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-4~HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-20~HH-1-24、HH-1-82、HH-1-84~HH-1-89、HH-1-91、HH-1-92およびHH-1-106~HH-1-108が好ましい。
【0151】
[電子輸送性ホスト材料(EH)]
電子輸送性ホスト材料(EH)の例としては、本発明のトリアジン化合物のほか、式(EH-1)で表される化合物、および式(EH-1)で表される部分構造を有する化合物をあげることができる。
【化37】
【0152】
式(EH-1)において、
Jは、それぞれ独立して、=C(-A)-または=N-であり、少なくとも3つのJは=C(-A)-であり、
Zは、-O-、-S-、-C(=O)-、-P(=O)(-A)-、-P(=S)(-A)-、-N(-A)-、-B(-A)-または-S(=O)2-であり、
Zの結合する炭素原子の隣のJとZの結合するAとは、互いに、Lで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(-A)2であり、
Aは、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、トリアリールシリル、アルコキシまたはアリールオキシであり、>C(-A)2における2つのAは互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成してよく、
すべてのJが、=C(-A)-であるとき、AまたはZのいずれかひとつがヘテロ原子を有する。
【0153】
式(EH-1)におけるAで示される、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、トリアリールシリル、アルコキシまたはアリールオキシについては式(HH-1)におけるAの説明を参照することができる。式(EH-1)における2つのAが互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成するときのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルについても式(HH-1)における説明を参照することができる。
【0154】
電子輸送性ホスト材料が式(EH-1)で表される構造を部分構造として含むとき、この部分構造を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。2つ以上の部分構造は互いに単結合で結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環を共有するようにして結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環同士が縮合するようにして結合していてもよい。部分構造はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、またはアリールオキシから選択される置換基を有していてもよい。
【0155】
電子輸送性ホスト材料の具体例としては、以下の化合物をあげることができる。
【化38】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
電子輸送性ホスト材料(式(EH-1)で表される部分構造を有する化合物)の別の好ましい例として、下記式(EH-1b)で表される多環芳香族化合物、または下記式(EH-1b)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体をあげることができる。
【化47】
【0165】
式(EH-1b)において、
R1、R2、R3、R4およびR5(以降、「R1等」ともいう)は、それぞれ独立して、水素または置換基群Zより選択される置換基である。
式(EH-1b)において、X1およびX2は、それぞれ独立して、>N-R(アミン性窒素)、>O、>C(-R)2、>Sまたは>Seであり、X1およびX2が共に>C(-R)2になることはなく、
前記>N-Rおよび>C(-R)2におけるRは、それぞれ独立して、水素または置換基群Zより選択される置換基であり、前記>N-Rおよび>C(-R)2のRはそれぞれ独立して連結基または単結合により前記a環、b環およびc環の少なくとも1つの環と結合していてもよい。
Y1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6(以降、「Y1等」ともいう)は、それぞれ独立して、=C(-R)-または=N-(ピリジン性窒素)であり、少なくとも1つは=N-(ピリジン性窒素)であり、
前記=C(-R)-におけるRは、それぞれ独立して、水素または置換基群Zより選択される置換基である。
前記R1、R2、R3、R4およびR5、ならびに、前記Y1~Y6としての=C(-R)-のRのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環およびc環の少なくとも1つの環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環は置換基群Zより選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい。
式(EH-1b)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素は、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置き換えられていてもよい。
【0166】
式(EH-1b)において、R1、R2、R3、R4およびR5はいずれも水素であるか、または、R3およびR4がいずれも水素であり、かつR1、R2およびR5からなる群より選択されるいずれか1つ以上が水素以外の置換基であり、その他が水素であることが好ましい。置換基としては、アルキル、アルキルもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはアリールで置換されていてもよいヘテロアリール、またはアルキルもしくはアリールで置換されていてもよいジアリールアミノが好ましい。このとき、アルキルとしては、炭素数1~6のアルキル(メチル、t-ブチルなど)が好ましく、アリールとしてはフェニルまたはビフェニルが好ましく、ヘテロアリールとしては、トリアジニル、カルバゾリル(2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、9-カルバゾリルなど)、ピリミジニル、ピリジニル、ジベンゾフラニルまたはジベンゾチエニルが好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニル、ジフェニルトリアジニル、カルバゾリルトリアジニル、モノフェニルピリミジニル、ジフェニルピリミジニル、カルバゾリルトリアジニル、ピリジニル、ジベンゾフラニルおよびジベンゾチエニルがあげられる。
【0167】
Y1等は、それぞれ独立して、=C(-R)-または=N-であり、少なくとも1つは=N-である。Y1~Y6のいずれが=N-であってもよい。好ましくは、Y1およびY6が=N-(a環がピリミジン環)、Y1またはY6が=N-(a環がピリジン環)、Y2およびY5が=N-(b環およびc環がピリジン環)、Y3およびY4が=N-(b環およびc環がピリジン環)、Y2~Y5が=N-(b環およびc環がピリミジン環)、Y1、Y3、Y4およびY6が=N-(a環がピリミジン環、b環およびc環がピリジン環)、Y1、Y2、Y5およびY6が=N-(a環がピリミジン環、b環およびc環がピリジン環)、Y1~Y6が=N-(a環、b環およびc環がピリミジン環)、Y2またはY5が=N-(b環またはc環がピリジン環)である。
【0168】
また、以上の=N-の配置関係に加えて、X
1およびX
2が>Oであることが好ましく、下記式のいずれかで表される部分構造を含む多環芳香族化合物が好ましい。
【化48】
【0169】
特に、式(EH-1b-N1)で表される部分構造を含む多環芳香族化合物は、Nがない構造と比べ、高いES1、高いET1、小さいΔES1T1を有する。
式(EH-1b)で表される多環芳香族化合物の具体例を以下に示す。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
上記のうち、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-10、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-32、EH-1-33、EH-1-51~EH-1-59、EH-1-61、EH-1-66、EH-1-68、EH-1-71、EH-1-72、EH-1-90、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104,EH-1-115、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、EH-1-127~EH-1-130が好ましい。
【0177】
[正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせ]
正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせは、正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料およびドーパント材料のHOMO、LUMOおよび励起三重項エネルギーによって選択される。
HOMOおよびLUMOに関しては、正孔輸送性ホスト材料のHOMO(HH)が電子輸送性ホスト材料のHOMO(EH)より浅く、電子輸送性ホスト材料のLUMO(EH)が正孔輸送性ホスト材料のLUMO(HH)より深い組み合わせを選び、より具体的には、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.10eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.10eV以上深い組み合わせが好ましく、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.20eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.20eV以上深い組み合わせがより好ましく、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.25eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.25eV以上深い組み合わせがさらに好ましい。
【0178】
正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料はエキサイプレックス(exciplex)と呼ばれる会合体を形成する組み合わせであってもよい。エキサイプレックスは、比較的深いLUMO準位をもつ材料と、浅いHOMO準位をもつ材料間との間で形成しやすいことが一般に知られている。正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の相互作用、具体的にはエキサイプレックスを形成しているか否かは、正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料のみからなる単層膜を発光層の形成条件と同様にして形成して発光スペクトル(蛍光、りん光スペクトル)を測定し、得られた発光スペクトルを、正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料それぞれが単独で示す発光スペクトルとを比較することで判断できる。正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料を含む混合膜のスペクトルが、正孔輸送性ホスト材料の膜のスペクトル、および電子輸送性ホスト材料の膜のスペクトルのいずれとも異なる発光波長を示すことにより判断することができる。具体的には、スペクトルのピーク波長が10nm以上異なっていることを指標にすればよい。
【0179】
エキサイプレックスを形成しない正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせの具体例としては以下の組み合わせをあげることができる。前記のHOMO、LUMOおよび励起三重項エネルギーの物性値を満たすために、正孔輸送性ホスト材料においては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物が好ましく、カルバゾール、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェンを部分構造として有する化合物がより好ましく、カルバゾールを部分構造として有する化合物がさらに好ましい。同様に、電子輸送性ホスト材料においては、ピリジン、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物がより好ましく、トリアジンを有する化合物がさらに好ましい。
【0180】
より具体的には、正孔輸送性ホスト材料は、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-4~HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-20~HH-1-24、HH-1-82、HH-1-84~HH-1-89、HH-1-91、HH-1-92およびHH-1-106~HH-1-108からなる群より選択されることが好ましく、電子輸送性ホスト材料は、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-10、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-32、EH-1-33、EH-1-51~EH-1-59、EH-1-61、EH-1-71、EH-1-72、EH-1-90、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、およびEH-1-127~EH-1-130からなる群より選択されることが好ましい。組み合わせとして好ましい例としては、化合物HH-1-1および化合物EH-1-22、化合物HH-1-1および化合物EH-1-23、化合物HH-1-1および化合物EH-1-24、化合物HH-1-2および化合物EH-1-22、化合物HH-1-2および化合物EH-1-23、化合物HH-1-2および化合物EH-1-24、または化合物HH-1-1および化合物EH-1-128があげられる。
【0181】
エキサイプレックスを形成する正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせの具体例としては以下の組み合わせをあげることができる。前記、HOMO、LUMOおよび励起三重項エネルギーの物性値を満たすために、正孔輸送性ホスト材料においては、カルバゾール、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物がより好ましく、トリアリールアミンを部分構造として有する化合物がさらに好ましい。同様に、電子輸送性ホスト材料においては、ピリジン、トリアジン、ホスフィンオキシドおよびベンゾフロピリジンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物がより好ましく、ホスフィンオキシドおよびトリアジンを有する化合物がさらに好ましい。
【0182】
より具体的には、正孔輸送性ホスト材料は、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-11、HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-23およびHH-1-24からなる群より選択されることが好ましく、電子輸送性ホスト材料は、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-51~EH-1-57、EH-1-59、EH-1-66、EH-1-68、EH-1-90、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、およびEH-1-127~EH-1-130からなる群より選択されることが好ましい。組み合わせとして好ましい例としては、化合物HH-1-1および化合物EH-1-21、化合物HH-1-2および化合物EH-1-21、化合物HH-1-12および化合物EH-1-117、化合物HH-1-1および化合物EH-1-130、化合物HH-1-33および化合物EH-1-117、化合物HH-1-48および化合物EH-1-117または化合物HH-1-49および化合物EH-1-117があげられる。
【0183】
その他、具体的な正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせについては、Organic Electronics 66(2019)227-24、Advanced. Functional Materals 25(2015)361-366.、Advanced Materials 26(2014)4730-4734.、ACS Applied Materials and Interfaces 8(2016)32984-32991.、ACS Applied Materals and Interfaces 2016,8,9806-9810、ACS Applied Materials and Interfaces 2016,8,32984-32991、Journal of Materials Chemisty C,2018,6,8784-8792、Angewante Chemie International Edition.2018,57,12380-12384、Advanced Functional Materials,24,2014,3970,Advanced Materials,26,2014,5684,および、Synthetic Metals,201,2015,49などの記載を参照することができる。
【0184】
<ドーパント材料>
ドーパント材料としては、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1-245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2-247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2-メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2-トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7-ジアルキルアミノクマリン誘導体、7-ピペリジノクマリン誘導体、7-ヒドロキシクマリン誘導体、7-メトキシクマリン誘導体、7-アセトキシクマリン誘導体、3-ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアントラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5-チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
【0185】
エミッティングドーパント材料としては、国際公開第2015/102118号、国際公開第2020/162600号、特開2021-077890号公報の段落0097~0269等に記載のホウ素を含む多環芳香族化合物を用いることも好ましい。ホウ素原子を有する多環芳香族化合物は蛍光体であっても、TADF材料(熱活性型遅延蛍光体)であってもよい。ホウ素原子を有する多環芳香族化合物は青色発光化合物であることが好ましい。
【0186】
ホウ素を含む多環芳香族化合物の好ましい例として、下記式(12)、式(13)または式(14)で表される化合物をあげることができる。
【化55】
【0187】
A環、B環、C環およびD環は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、
YはB(ホウ素)であり、
X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>Sまたは>Seであり、前記>N-RのRは、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールまたは置換もしくは無置換のアルキルであり、また、前記>N-RのRは連結基または単結合により前記A環、B環、C環および/またはD環と結合していてもよく、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)であり、
Z1およびZ2は、それぞれ独立して、置換基群Zより選択されるいずれかの置換基であり、Z1は連結基または単結合で前記A環と結合してもよく、Z2は連結基または単結合で前記C環と結合してもよく、そして、
式(12)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置き換えられていてもよい。
【0188】
式(12)のA環、B環、C環およびD環における、アリール環またはヘテロアリール環が置換されているときの置換基およびZ1、Z2としては、置換基群Zより選択される置換基があげられる。
【0189】
式(12)におけるX1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>Sまたは>Seであり、前記>N-RのRは、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数3~12のシクロアルキルまたは炭素数1~6のアルキルである。
式(12)で表される化合物においては、高いTADF性の観点から、Z1およびZ2が置換基を有してもよいジフェニルアミノまたは置換基を有してもよいN-カルバゾリルであることが好ましく、置換基を有してもよいジフェニルアミノであることがより好ましい。置換基を有してもよいジフェニルアミノとしては、無置換のジフェニルアミノまたは少なくとも一つの炭素数1~4のアルキルを有するジフェニルアミノであることが好ましく、無置換のジフェニルアミノまたはNに対してm位またはo位に少なくとも一つメチルを有するジフェニルアミノがより好ましい。合成の容易さおよび発光波長の観点から、A環、B環、C環およびD環におけるアリール環またはヘテロアリール環はZ1およびZ2以外は置換を有していないか、炭素数1~6のアルキルのみをその他の置換基として有していることが好ましく、Z1およびZ2以外は置換を有していないことがより好ましい。
式(12)で表される化合物の例を以下に示す。
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
式(13)および式(14)中、
A11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、およびC31環は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、
Y11、Y21、Y31はB(ホウ素)であり、
X11、X12、X21、X22、X31、およびX32は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>Sまたは>Seであり、前記>N-RのRは、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールまたは置換もしくは無置換のアルキルであり、また、前記>N-RのRは連結基または単結合によりA11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、および/またはC31環と結合していてもよく、
式(13)および式(14)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置き換えられていてもよい。
【0195】
式(13)および式(14)のA11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、およびC31における、アリール環またはヘテロアリール環が置換されているときの置換基およびZ1、Z2としては、置換基群Zより選択される置換基があげられる。
【0196】
式(13)および式(14)におけるX11、X12、X21、X22、X31、およびX32は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>Sまたは>Seであり、前記>N-RのRは、それぞれ独立して、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数3~12のシクロアルキルまたは炭素数1~6のアルキルである。
【0197】
式(13)または式(14)で表される化合物の例を以下に示す。
【化60】
【0198】
【0199】
<熱活性型遅延蛍光体(アシスティングドーパント)>
「熱活性型遅延蛍光体」とは、熱エネルギーを吸収して励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を起こし、その励起一重項状態から放射失活して遅延蛍光を放射しうる化合物のことを意味する。ただし、「熱活性型遅延蛍光」とは、励起三重項状態から励起一重項状態への励起過程で高次三重項を経るものも含む。例えば、Durham大学 Monkmanらによる論文(NATURE COMMUNICATIONS,7:13680,DOI: 10.1038/ncomms13680)、産業技術総合研究所 細貝らによる論文(Hosokai et al., Sci. Adv. 2017;3: e1603282)、京都大学 佐藤らによる論文(Scientific Reports,7:4820, DOI:10.1038/s41598-017-05007-7)および、同じく京都大学 佐藤らによる学会発表(日本化学会第98春季年会、発表番号:2I4-15、DABNAを発光分子として用いた有機電界発光における高効率発光の機構、京都大学大学院工学研究科)などがあげられる。本発明では、対象化合物を含むサンプルについて、300Kで蛍光寿命を測定したとき、遅い蛍光成分が観測されたことをもって該対象化合物が「熱活性型遅延蛍光体」であると判定することとする。ここで、遅い蛍光成分とは、蛍光寿命が0.1μsec以上であるもののことを言う。蛍光寿命の測定は、例えば蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、C11367-01)を用いて行うことができる。
【0200】
以下の説明では、熱活性型遅延蛍光体をアシスティングドーパントとして用いる有機電界発光素子を、「TAF素子」(TADF Assisting Fluorescence素子)ということがある。
TAF素子における「ホスト化合物」とは、蛍光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位が、アシスティングドーパントとしての熱活性型遅延蛍光体、および、エミッティングドーパントよりも高い化合物のことを意味する。
【0201】
図2に一般的な蛍光ドーパントをエミッティングドーパント(ED)に用いたTAF素子の発光層のエネルギー準位図を示す。図中、ホストの基底状態のエネルギー準位をE(1,G)、ホストの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位をE(1,S,Sh)、ホストのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起三重項エネルギー準位をE(1,T,Sh)、アシスティングドーパントの基底状態のエネルギー準位をE(2,G)、アシスティングドーパントの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位をE(2,S,Sh)、アシスティングドーパントのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起三重項エネルギー準位をE(2,T,Sh)、エミッティングドーパントの基底状態のエネルギー準位をE(3,G)、エミッティングドーパントの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位をE(3,S,Sh)、エミッティングドーパントのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起三重項エネルギー準位をE(3,T,Sh)、正孔をh+、電子をe-、蛍光共鳴エネルギー移動をFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)とする。TAF素子において、一般的な蛍光ドーパントをエミッティングドーパント(ED)として用いた場合、アシスティングドーパントでアップコンバージョンされたエネルギーはエミッティングドーパントの励起一重項エネルギー準位E(3,S,Sh)に移り発光する。しかし、アシスティングドーパント上の一部の励起三重項エネルギーE(2,T,Sh)がエミッティングドーパントの励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)に移動したり、エミッティングドーパント上で励起一重項エネルギー準位E(3,S,Sh)から励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)への項間交差が起こり、引き続いて基底状態E(3,G)へ熱的に失活する。この経路により一部のエネルギーは発光に利用されず、エネルギーの無駄が生じる。
【0202】
これに対して、本態様の有機電界発光素子では、アシスティングドーパントからエミッティングドーパントに移動したエネルギーを効率よく発光に利用することができ、これにより高い発光効率を実現することができる。これは、以下の発光メカニズムによるものと推測される。
【0203】
本態様の有機電界発光素子における好ましいエネルギー関係を
図3に示す。本態様の有機電界発光素子においては、エミッティングドーパントとしての、ホウ素原子を有する化合物が高い励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)を有する。そのため、アシスティングドーパントでアップコンバージョンされた励起一重項エネルギーが、例え、エミッティングドーパントで励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)へ項間交差した場合にも、エミッティングドーパント上でアップコンバージョンされるか、アシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体)上の励起三重項エネルギー準位E(2,T,Sh)へ回収される。したがって、生成した励起エネルギーを無駄なく発光に使用することができる。また、アップコンバージョンおよび発光の機能をそれぞれが得意な2種の分子に分けることで、高いエネルギーの滞留時間が減少し、化合物への負担が減少すると予想される。
【0204】
本態様において、ホスト化合物としては、公知のものを用いることができ、例えばカルバゾール環およびフラン環の少なくとも一方を有する化合物をあげることができ、中でも、フラニルおよびカルバゾリルの少なくとも一方と、アリーレンおよびヘテロアリーレンの少なくとも一方とが結合した化合物を用いることが好ましい。具体例として、mCPやmCBPなどがあげられる。
【0205】
ホスト化合物の燐光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる励起三重項エネルギー準位E(1,T,Sh)は、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高い励起三重項エネルギー準位を有するエミッティングドーパントまたはアシスティングドーパントの励起三重項エネルギー準位E(2,T,Sh)、E(3,T,Sh)に比べて高いことが好ましく、具体的には、ホスト化合物の励起三重項エネルギー準位E(1,T,Sh)はE(2,T,Sh)、E(3,T,Sh)に比べて、0.01eV以上高いことが好ましく、0.03eV以上高いことがより好ましく、0.1eV以上高いことがさらに好ましい。また、ホスト化合物にTADF活性な化合物を用いてもよい。
【0206】
TAF素子で用いる熱活性型遅延蛍光体(TADF化合物)は、ドナーと呼ばれる電子供与性の置換基とアクセプターと呼ばれる電子受容性の置換基を用いて分子内のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)を局在化させて、効率的な逆項間交差(reverse intersystem crossing)が起きるようにデザインされた、ドナー-アクセプター型熱活性型遅延蛍光体(D-A型TADF化合物)であることが好ましい。
【0207】
ここで、本明細書中において「電子供与性の置換基」(ドナー)とは、熱活性型遅延蛍光体分子中でHOMO軌道が局在する置換基および部分構造のことを意味し、「電子受容性の置換基」(アクセプター)とは、熱活性型遅延蛍光体分子中でLUMO軌道が局在する置換基および部分構造のことを意味することとする。
【0208】
一般的に、ドナーやアクセプターを用いた熱活性型遅延蛍光体は、構造に起因してスピン軌道結合(SOC: Spin Orbit Coupling)が大きく、かつ、HOMOとLUMOの交換相互作用が小さくΔES1T1が小さいために、非常に速い逆項間交差速度が得られる。一方、ドナーやアクセプターを用いた熱活性型遅延蛍光体は、励起状態での構造緩和が大きくなり(ある分子においては、基底状態と励起状態では安定構造が異なるため、外部刺激により基底状態から励起状態への変換が起きると、その後、励起状態における安定構造へと構造が変化する)、幅広な発光スペクトルを与えるため、発光材料として使うと色純度を低下させる可能性がある。
【0209】
TAF素子における熱活性型遅延蛍光体として、例えばドナーおよびアクセプターが直接またはスペーサーを介して結合している化合物を用いることができる。本発明の熱活性型遅延蛍光体に用いられる電子供与性基(ドナー性の構造)および電子受容性基(アクセプター性の構造)としては、例えば、Chemistry of Materials, 2017, 29, 1946-1963に記載の構造を用いることができる。ドナー性の構造としては、カルバゾール、ジメチルカルバゾール、ジ-tert-ブチルカルバゾール、ジメトキシカルバゾール、テトラメチルカルバゾール、ベンゾフルオロカルバゾール、ベンゾチエノカルバゾール、フェニルジヒドロインドロカルバゾール、フェニルビカルバゾール、ビカルバゾール、ターカルバゾール、ジフェニルカルバゾリルアミン、テトラフェニルカルバゾリルジアミン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、フェノチアジン、ジメチルジヒドロアクリジン、ジフェニルアミン、ビス(tert-ブチルフェニル)アミン、N1-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)-N4,N4-ジフェニルベンゼン-1,4-ジアミン、ジメチルテトラフェニルジヒドロアクリジンジアミン、テトラメチル-ジヒドローインデノアクリジンおよびジフェニルージヒドロジベンゾアザシリンなどがあげられる。アクセプター性の構造としては、スルホニルジベンゼン、ベンゾフェノン、フェニレンビス(フェニルメタノン)、ベンゾニトリル、イソニコチノニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、パラフタロニトリル、ベンゼントリカルボニトリル、トリアゾール、オキサゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾビス(チアゾール)、ベンゾオキサゾール、ベンゾビス(オキサゾール)、キノリン、ベンゾイミダゾール、ジベンゾキノキサリン、ヘプタアザフェナレン、チオキサントンジオキシド、ジメチルアントラセノン、アントラセンジオン、5H-シクロペンタ[1,2-b:5,4-b’]ジピリジン、フルオレンジカルボニトリル、トリフェニルトリアジン、ピラジンジカルボニトリル、ピリミジン、フェニルピリミジン、メチルピリミジン、ピリジンジカルボニトリル、ジベンゾキノキサリンジカルボニトリル、ビス(フェニルスルホニル)ベンゼン、ジメチルチオキサンテンジオキシド、チアンスレンテトラオキシドおよびトリス(ジメチルフェニル)ボランがあげられる。特に、TAF素子における熱活性型遅延蛍光を有する化合物は、部分構造として、カルバゾール、フェノキサジン、アクリジン、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、チオキサンテン、ベンゾニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、ジフェニルスルホン、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールおよびベンゾフェノンから選択される少なくとも一つを有する化合物であることが好ましい。
【0210】
TAF素子における発光層のアシスティングドーパントとして用いる化合物は、熱活性型遅延蛍光体であって、その発光スペクトルがエミッティングドーパントの吸収ピークと少なくとも一部重なる化合物であることが好ましい。
【0211】
<りん光材料(アシスティングドーパント)>
発光層においては、アシスティングドーパントとしてりん光材料を用いてもよい。りん光材料は金属原子による分子内スピン-軌道相互作用(重原子効果)を利用し、三重項からの発光を得る。このようなりん光材料としては、例えば、発光性金属錯体を用いることができる。発光性金属錯体としては、例えば下記式(B-1)および下記式(B-2)で表される化合物があげられる。
【0212】
【0213】
式(B-1)において、Mは、Ir、Pt、Au、Eu、Ru、Re、AgおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種であり、nは1~3の整数であり、「X-Y」はそれぞれ独立して二座の配位子である。
式(B-2)において、Mは、Pt、ReおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種であり、「W-X-Y-Z」は四座の配位子である。
式(B-1)において、効率と寿命の観点から、MはIrが好ましく、nは3が好ましい。
式(B-2)において、効率と寿命の観点からMはPtが好ましい。
式(B-1)における配位子(X-Y)は、以下からなる群から選択された少なくとも1つの配位子を有する。式(B-2)における配位子(W-X-Y-Z)配位子は、以下からなる群から選択される少なくとも1つの配位子を一部として有する。
【0214】
【0215】
式中、
---において中心金属Mと結合し、
Yは、それぞれ独立して、BRe、NRe、PRe、O、S、Se、C=O、S=O、SO2、CReRf、SiReRf、またはGeReRfであり
環における芳香族炭素C-Hは、それぞれ独立して、Nに置換されてもよく、
ReおよびRfは、任意に縮合または結合して環を形成してもよく、
Ra、Rb、Rc、およびRdは、それぞれ独立して、無置換または1~置換可能な最大数まで置換してもよく、
Ra、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfが、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、または、これらの組み合わせであり、
ただし、Ra、Rb、Rc、およびRdにおける任意の2つの隣接する置換基が縮合または結合して環を形成するか、または多座リガンドを形成してもよい。
【0216】
式(B-1)で表される化合物としては、例えば、Ir(ppy)3、Ir(ppy)2(acac)、Ir(mppy)3、Ir(PPy)2(m-bppy)、BtpIr(acac)、Ir(btp)2(acac)、Ir(2-phq)3、Hex-Ir(phq)3、Ir(fbi)2(acac)、fac-Tris(2-(3-p-xylyl)phenyl)pyridine iridium(III)、Eu(dbm)3(Phen)、Ir(piq)3、Ir(piq)2(acac)、Ir(Fliq)2(acac)、Ir(Flq)2(acac)、Ru(dtb-bpy)3・2(PF6)、Ir(2-phq)3、Ir(BT)2(acac)、Ir(DMP)3、Ir(Mphq)3IR(phq)2tpy、fac-Ir(ppy)2Pc、Ir(dp)PQ2、Ir(Dpm)(Piq)2、Hex-Ir(piq)2(acac)、Hex-Ir(piq)3、Ir(dmpq)3、Ir(dmpq)2(acac)、FPQIrpicなどがあげられる。
【0217】
式(B-1)で表される化合物としては、他には、例えば以下の化合物があげられる。
【化64】
【0218】
【0219】
【0220】
また、特開2006-089398号公報、特開2006-080419号公報、特開2005-298483号公報、特開2005-097263号公報、および特開2004-111379号公報、米国特許出願公開第2019/0051845号明細書などに記載されたイリジウム錯体、または、Advanced Materials, 26: 7116-7121、NPG Asia Materials 13, 53 (2021)、Applied Physics Letters, 117, 253301 (2020)、Light-Emitting Diode - An Outlook On the Empirical Features and Its Recent Technological Advancements, Chapter 5に記載された白金錯体を用いてもよい。
【0221】
<有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層>
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
【0222】
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
【0223】
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
本発明のトリアジン化合物を電子輸送層用の材料として用いることも好ましい。
【0224】
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4'-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
【0225】
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3-ビス[(4-t-ブチルフェニル)1,3,4-オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N-ナフチル-2,5-ジフェニル-1,3,4-トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2'-ビス(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-9,9'-スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3-ビス(2,2’:6’,2”-テルピリジン-4'-イル)ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1-ナフチル)-4-(1,8-ナフチリジン-2-イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などがあげられる。
【0226】
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
【0227】
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
【0228】
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。
【0229】
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
【0230】
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0~2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0231】
<有機電界発光素子における陰極>
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
【0232】
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム-リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
【0233】
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
【0234】
<有機電界発光素子の作製方法>
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm~5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50~+400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-150~+300℃、膜厚2nm~5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
【0235】
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を-の極性として印加すればよく、電圧2~40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0236】
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0237】
<蒸着法>
適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0238】
<湿式成膜法>
湿式成膜法は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物を液状の有機層形成用組成物として準備し、これを用いることによって実施される。この低分子化合物を溶解する適当な有機溶媒がない場合には、当該低分子化合物に反応性置換基を置換させた反応性化合物として溶解性機能を有する他のモノマーや主鎖型高分子と共に高分子化させた高分子化合物などから有機層形成用組成物を準備してもよい。
【0239】
湿式成膜法は、一般的には、基板に有機層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された有機層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。上記高分子化合物が架橋性置換基を有する場合(これを架橋性高分子化合物ともいう)には、この乾燥工程によりさらに架橋して高分子架橋体が形成される。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる方法をスピンコート法、スリットコーターを用いる方法をスリットコート法、版を用いる方法をグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる方法をインクジェット法、霧状に吹付ける方法をスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
【0240】
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
【0241】
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい場合がある。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
【0242】
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
【0243】
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層用材料を含む正孔注入層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層用材料を含む正孔輸送層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順4)ホスト材料とドーパント材料を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
もちろん、電子輸送層および電子注入層についても、それぞれ電子輸送層用材料および電子注入層用材料を含む層形成用組成物を用いて湿式成膜法により成膜してもよい。その際、下層の発光層の溶解を防ぐ手段、または上記手順とは逆に陰極側から成膜する手段を用いることが好ましい。
【0244】
<その他の成膜法>
有機層形成用組成物の成膜化には、レーザー加熱描画法(LITI)を用いることができる。LITIとは基材に付着させた化合物をレーザーで加熱蒸着する方法で、基材へ塗布される材料に有機層形成用組成物を用いることができる。
【0245】
<任意の工程>
成膜の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、露光処理、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等があげられる。さらには、バンクを作製する一連の工程もあげられる。
【0246】
バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。
【0247】
<湿式成膜法に使用される有機層形成用組成物>
有機層形成用組成物は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物、または当該低分子化合物を高分子化させた高分子化合物を有機溶媒に溶解させて得られる。例えば、発光層形成用組成物は、第1成分として少なくとも1種のドーパント材料である多環芳香族化合物(またはその高分子化合物)と、第2成分として少なくとも1種のホスト材料と、第3成分として少なくとも1種の有機溶媒とを含有する。第1成分は、該組成物から得られる発光層のドーパント成分として機能し、第2成分は発光層のホスト成分として機能する。第3成分は、組成物中の第1成分と第2成分を溶解する溶媒として機能し、塗布時には第3成分自身の制御された蒸発速度により平滑で均一な表面形状を与える。
【0248】
<有機溶媒>
有機層形成用組成物は少なくとも一種の有機溶媒を含む。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該有機層形成用組成物より得られる有機層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
【0249】
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布成膜性改善の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移点(Tg)-30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
【0250】
(2)有機溶媒の具体例
有機層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などがあげられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
【0251】
<任意成分>
有機層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等があげられる。
【0252】
<有機層形成用組成物の組成および物性>
有機層形成用組成物における各成分の含有量は、有機層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該有機層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された有機層を有する有機EL素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点を考慮して決定される。
【0253】
有機層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。
【0254】
<有機電界発光素子の応用例>
また、本発明は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
【0255】
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよびセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0256】
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0257】
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
【0258】
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
【0259】
3-2.その他の有機デバイス
本発明に係るトリアジン化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
【実施例0260】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されない。まず、トリアジン化合物の合成例について、以下に説明する。
【0261】
合成例(1)
化合物(1-1):9,9’-(6-(9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)の合成
【化67】
【0262】
9,9’-(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(1-a)の合成
【化68】
【0263】
窒素雰囲気下、9H-カルバゾール(45.7g、274mmol)のテトラヒドロフラン(1000ml)溶液に、水素化ナトリウム(6.5g,274mmol)を分割して加え、室温で30分撹拌した。その後、シアヌル酸クロライド(25g、137mmol)のテトラヒドロフラン(500ml)溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した。反応終了後、水(1000ml)を加えて生じた結晶をろ過し、水、アセトン、メタノールにて洗浄した。得られた結晶をトルエン(100ml)にて2回スラリー洗浄し、ろ液をまとめて濃縮した。得られた結晶をソルミックスにて2回スラリー洗浄後、乾燥することで、9,9’-(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(34.1g、76.7mmol)を得た。
【0264】
3-ブロモ-9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール(1-b)の合成
【化69】
【0265】
窒素雰囲気下、3-ブロモ-9H-カルバゾール(10.2g、41.6mmol)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液に、水素化ナトリウム(0.41g,45.0mmol)を分割して加え、室温で30分撹拌した。その後、2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(10.0g、37.4mmol)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した。反応終了後、水(100ml)を加えて生じた結晶をろ過し、水、アセトン、メタノールにて洗浄した。得られた結晶を乾燥し、3-ブロモ-9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール(19.6g、41.2mmol)を得た。
【0266】
9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)-9H-カルバゾール(1-1c)の合成
【化70】
【0267】
窒素雰囲気下、3-ブロモ-9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール(10.0g、21.0mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(5.6g、22.0mmol)、酢酸カリウム(3.4g,42.0mmol)、酢酸パラジウム(0.094g,0.42mmol)、SPhos(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,6-ビフェニル)(0.04g,0.84mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル(100ml)の入ったフラスコを8時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、水(100ml)を加えて生じた結晶をろ過した。得られた結晶を水、アセトン、メタノールにて洗浄した後、乾燥することにより、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)-9H-カルバゾール(8.7g、16.6mmol)を得た。
【0268】
9,9’-(6-(9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(1-1)の合成
【化71】
【0269】
窒素雰囲気下、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)-9H-カルバゾール(2.0g、4.4mmol)、9,9’-(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(2.3g、4.4mmol)、炭酸カリウム(1.8g,13.1mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.51g,0.44mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.42g,1.31mmol)およびジメトキシエタン(100ml)、水(10ml)の入ったフラスコを8時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、水(100ml)を加えて生じた結晶をろ過した。得られた結晶を水、アセトン、メタノールにて洗浄した後、テトラヒドロフラン(50ml)により2回スラリー洗浄を行った。結晶を乾燥後、昇華精製(380℃)することにより、9,9’-(6-(9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(0.26g、0.32mmol)を得た。
【0270】
NMR測定およびLC-MSにより得られた化合物の構造を確認した。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=7.45-7.62(m,9H)、7.65-7.75(m,7H)、8.15(d,4H)、8.28(d,1H)、8.82(d,4H)、9.02(d,1H)、9.15(d,4H)、9.22(d,1H)、9.38(d,1H)、9.52(s,1H).
LC-MS:m/z=808[M+H].
【0271】
合成例(2)
化合物(1-21):9,9’-(6-(3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)の合成
【化72】
【0272】
9,9’-(6-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(1-c)の合成
【化73】
【0273】
窒素雰囲気下、3-ブロモ-9H-カルバゾール(3.0g、12.4mmol)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液に、水素化ナトリウム(0.32g,13.5mmol)を分割して加え、室温で30分撹拌した。その後、9,9’-(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(5.0g、11.2mmol)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した。反応終了後、水(100ml)を加えて生じた結晶をろ過し、水、アセトン、メタノールにて洗浄した。得られた結晶を乾燥し、9,9’-(6-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(7.1g、10.9mmol)を得た。
【0274】
9,9’-(6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(1-d)の合成
【化74】
【0275】
窒素雰囲気下、9,9’-(6-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(10.0g、15.3mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(4.1g、16.0mmol)、酢酸カリウム(2.5g,30.7mmol)、酢酸パラジウム(0.069g,0.31mmol)、SPhos(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,6-ビフェニル)(0.03g,0.61mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル(100ml)の入ったフラスコを8時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、水(100ml)を加えて生じた結晶をろ過した。得られた結晶を水、アセトン、メタノールにて洗浄した後、乾燥することにより、9,9’-(6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(7.5g、10.6mmol)を得た。
【0276】
9,9’-(6-(3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(1-21)の合成
【化75】
【0277】
窒素雰囲気下、9,9’-(6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(2.0g、2.8mmol)、2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(0.76g、2.8mmol)、炭酸カリウム(1.1g,8.3mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.32g,0.28mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.27g,0.83mmol)およびジメトキシエタン(50ml)、水(5ml)の入ったフラスコを8時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、水(50ml)を加えて生じた結晶をろ過した。得られた結晶を水、アセトン、メタノールにて洗浄した後、テトラヒドロフラン(50ml)により2回スラリー洗浄を行った。結晶を乾燥後、昇華精製(380℃)することにより、9,9’-(6-(3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(0.1g、0.12mmol)を得た。
【0278】
NMR測定およびLC-MSにより得られた化合物の構造を確認した。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=7.45-7.56(m,10H)、7.60-7.66(m,6H)、8.15(d,4H)、8.38(dd,1H)、8.85(d,4H)、8.94(d,1H)、9.04(d,1H)、9.05(d,4H)、9.16(d,1H)、9.55(s,1H).
LC-MS:m/z=808[M+H].
【0279】
合成例(3)
化合物(1-11):9,9’,9’’,9’’’-((9H-カルバゾール-3,9-ジイル)ビス(1,3,5-トリアジン-6,2,4-トリイル))テトラキス(9H-カルバゾール)の合成
【化76】
【0280】
9,9’,9’’,9’’’-((9H-カルバゾール-3,9-ジイル)ビス(1,3,5-トリアジン-6,2,4-トリイル))テトラキス(9H-カルバゾール)(1-11)の合成。
【化77】
【0281】
合成例(1)および(2)と同様にして、9,9’-(6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)-9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(2.0g、2.8mmol)、および9,9’-(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-カルバゾール)(1.3g、2.8mmol)より、9,9’,9’’,9’’’-((9H-カルバゾール-3,9-ジイル)ビス(1,3,5-トリアジン-6,2,4-トリイル))テトラキス(9H-カルバゾール)(0.1g、1.0mmol)を得た。
【0282】
NMR測定およびLC-MSにより得られた化合物の構造を確認した。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=7.45-7.62(m,8H)、7.61-7.75(m,5H)、8.15(d,4H)、8.28-8.38(m,2H)、8.80-8.87(m,8H)、8.93-9.06(m,10H)、9.15-9.22(m,1H)、9.55(s,1H).
LC-MS:m/z=986[M+H].
【0283】
原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法で、本発明の他の化合物を合成することができる。
【0284】
次に、有機EL素子の作製と評価について記載する。ただし、本発明の化合物の適用は以下に示した例に限定されず、各層の膜厚や構成材料は使用する化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。
【0285】
<比較例1-1>
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HAT-CN、HTL-1,TcTa、CzTP、new-DABNA、ETL-1、およびET7をそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
【0286】
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HAT-CNを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して正孔注入層を形成した。次に、HTL-1を加熱して膜厚90nmになるように蒸着して正孔輸送層1を形成し、さらにTcTaを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して正孔輸送層2を形成した。次に、CzTPとnew-DABNAを同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。CzTPとnew-DABNAの重量比がおよそ99対1になるように蒸着速度を調節した。次に、ETL-1を加熱して膜厚20nmになるように蒸着して電子輸送層1を形成し、さらにET7を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して電子輸送層2を形成した。各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1~10nm/秒になるように調節した。
【0287】
<実施例1-1~実施例1-3、実施例2-1~実施例2-3、実施例3-1~実施例3-3、比較例1-2~比較例1-5および比較例2-1~比較例2-3>
比較例1-1のホストまたは電子輸送層1を表1に記載の各材料へ変更して各素子を作製した。
【0288】
【0289】
各実施例および比較例で用いた化合物の化学構造を以下に示す。
【0290】
【0291】
【0292】
<有機EL素子の評価>
作製した有機EL素子に、ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度1000cd/m2における、外部量子効率(EQE)、およびLT50(初期輝度1000cd/m2における電流密度で連続駆動させたときの500cd/m2になるまでの時間)を測定した。
【0293】
外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、電圧を印加することにより素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR-3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。
評価結果を表2に示す。
【0294】
【0295】
表2より、式(1)で表されるトリアジン化合物を用いた例では、式(1)のY1およびY2の両方を持たない化合物(CzTP)、Xであるヘテロアリーレンを持たない化合物(BTB)、またはY1またはY2の一方を持たない化合物(CPCBPTz)を用いた例と比較して、高効率、長寿命が得られていることがわかる。また、トリアジニルに2つのヘテロアリールが結合した構造を有するが、それらのヘテロアリールがNを結合位置とする基ではない類似化合物を用いた例(比較例1-4、比較例1-5、比較例2-2、比較例2-3)と比較しても、式(1)で表されるトリアジン化合物を用いた例(実施例1-1~3、実施例2-1~3)では高効率、長寿命が得られた。
【0296】
発光層中のホスト材料(電子輸送性ホスト材料:ホスト2)と電子輸送層の材料とに式(1)で表されるトリアジン化合物を用いた実施例3-1~3が、他の実施例よりも高効率、長寿命であった。