(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081474
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】作業スペース確保装置
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0047 20190101AFI20230606BHJP
F24F 1/0317 20190101ALI20230606BHJP
【FI】
F24F1/0047
F24F1/0317
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195207
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
(72)【発明者】
【氏名】浜野 明大
(57)【要約】
【課題】天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物の近傍にメンテナンス用の作業スペースを確保する。
【解決手段】天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物Aの近傍に作業スペースを確保するために設置される作業スペース確保装置1は、折り畳み可能なシート部材4と、シート部材4を保持し、吊設物Aの上面と同一高さ位置、若しくは、吊設物Aの上面よりも高い位置に設定される保持部材2と、を備える。保持部材2は、折り畳んだ状態のシート部材4を吊設物Aの側面の上方において展開させることにより、作業スペースを確保する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物の近傍に作業スペースを確保するために設置される作業スペース確保装置であって、
折り畳み可能なシート部材と、
前記シート部材を保持し、前記吊設物の近傍において前記吊設物の上面と同一高さ位置、若しくは、前記吊設物の上面よりも高い位置に設定される保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、前記シート部材を前記吊設物の近傍において前記作業スペースの上方に展開させることにより、前記作業スペースを確保することを特徴とする作業スペース確保装置。
【請求項2】
天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物の近傍に作業スペースを確保するために設置される作業スペース確保装置であって、
前記吊設物の近傍において確保すべき前記作業スペースの面積に対応する大きさのシート部材と、
前記シート部材を、前記吊設物の上面と同一高さ位置、若しくは、前記吊設物の上面よりも高い位置で前記作業スペースの上方に展開させた状態に保持する保持部材と、
を備えることを特徴とする作業スペース確保装置。
【請求項3】
前記吊設物は、空気調和機であり、
前記保持部材は、前記空気調和機の側面の上方に前記シート部材を展開させた状態で保持することにより、前記空気調和機の側面近傍において作業スペースを確保することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業スペース確保装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記吊設物の上面と同一高さ位置、若しくは、前記吊設物の上面よりも高い位置から、互いに平行な状態で前記吊設物の側面から外側に向かって突出するように配置される一対の棒状体を備え、前記一対の棒状体によって前記シート部材の両端を支持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の作業スペース確保装置。
【請求項5】
前記吊設物を吊り下げた状態に支持する支持部材に取り付けられ、前記吊設物の側面と平行に配置される長尺のベース部材、
を更に備え、
前記一対の棒状体は、一端が前記ベース部材に取り付けられることを特徴とする請求項4に記載の作業スペース確保装置。
【請求項6】
前記一対の棒状体は、前記ベース部材に取り付けられた一端が前記ベース部材に対して回動可能であることを特徴とする請求項5に記載の作業スペース確保装置。
【請求項7】
前記一対の棒状体を回動させて前記吊設物の側面から外側に向かって突出した状態に変位させる付勢部材、
を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の作業スペース確保装置。
【請求項8】
前記保持部材は、
前記吊設物の上面と同一高さ位置、若しくは、前記吊設物の上面よりも高い位置において、前記吊設物の側面から外側に向かって突出するように配置される第1棒状体と、
前記第1棒状体の先端に取り付けられ、前記吊設物の側面と略平行な状態に配置される第2棒状体と、
を有し、
前記シート部材は、一端が前記第2棒状体に取り付けられ、他端が前記吊設物の上面又は上方位置に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の作業スペース確保装置。
【請求項9】
前記吊設物を吊り下げた状態に支持する支持部材に取り付けられ、前記吊設物の側面と平行に配置される長尺のベース部材、
を更に備え、
前記第1棒状体は、一端が前記ベース部材に取り付けられ、
前記シート部材の他端は、前記ベース部材に取り付けられることを特徴とする請求項8に記載の作業スペース確保装置。
【請求項10】
前記第1棒状体は、前記ベース部材に取り付けられた一端が前記ベース部材に対して回動可能であり、
前記第2棒状体は、前記第1棒状体に取り付けられた一端が前記第1棒状体に対して回動可能であることを特徴とする請求項9に記載の作業スペース確保装置。
【請求項11】
前記第1棒状体を前記ベース部材に対して回動させ、前記第1棒状体を前記吊設物の側面から外側に向かって突出した状態に変位させる第1付勢部材と、
前記第2棒状体を前記第1棒状体に対して回動させ、前記第2棒状体を前記吊設物の側面と略平行な状態に変位させる第2付勢部材と、
を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の作業スペース確保装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物の近傍に作業スペースを確保するために設置される作業スペース確保装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井空間に吊り下げられた状態で支持される空気調和機として、上階床スラブと下階天井パネルとの間の天井空間に隠蔽された状態に設置される隠蔽式の空気調和機が知られている(例えば特許文献1)。この種の空気調和機は、上階床スラブから垂下するように設置された複数の吊りボルトによって天井空間に吊り下げられた状態で支持される。特許文献1には、空気調和機がフレーム枠体に取り付けられ、そのフレーム枠体を複数の吊りボルトによって支持する構造が開示されている。しかし、これに限られず、上階床スラブから垂下する複数の吊りボルトがそのまま空気調和機を支持する支持構造も知られている。
【0003】
図22は、空気調和機100が吊り下げられた状態を例示する図である。この空気調和機100は、空気調和機本体110と、吹出チャンバ120と、吸気チャンバ130とが一体的に組み付けられた構成を有する。上階床スラブから垂下する複数の吊りボルト200は、この空気調和機100を略水平な姿勢で支持する。
図22の例では、4本の吊りボルト200で空気調和機本体110の左右両側面を支持し、2本の吊りボルト200で吹出チャンバ120の端面を支持し、残りの2本の吊りボルトで吸気チャンバ130の端面を支持している。空気調和機100の側面には、吊りボルト200などのボルト部材の下端を接続するためのボルト接続部114が設けられている。空気調和機本体110を支持する4本の吊りボルト200は、そのボルト接続部114に接続される。
【0004】
空気調和機本体110には、防塵や集塵のためのフィルタ装着部102が設けられている。空気調和機本体110の2つの側面のうちの一方の側面112には、そのフィルタ装着部102に装着されているフィルタを交換する際に開閉可能な板状の扉部材101が設けられる。また、扉部材101と同じ側面112には、電気系統などが収容されたボックス部103が配置されている。更に、同じ側面112には、冷媒配管やドレン管を接続する接続部が設けられる。このように空気調和機本体110は、メンテナンス作業の必要な部品を一方の側面112に集約させた構成となっている。そのため、空気調和機100は、空気調和機本体110の側面112の近傍に作業スペースを確保した状態で天井空間に設置されることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、例えば新築建造物に空気調和機100を設置する場合、空気調和機100を天井空間に設置した後に、他の天井吊り下げ物(例えば、ケーブル配線用のラック、ダクト、照明器具、天井下地材、天井パネルなど)を天井空間に設置する工程が行われることがある。この場合、空気調和機100を設置する業者は、空気調和機100に関する専門知識を有しているため、空気調和機本体110の側面112の近傍に作業スペースを確保する必要があることを把握している。しかし、他の天井吊り下げ物を設置する他の業者は、空気調和機100に関する専門知識を有しておらず、既に設置されている空気調和機本体110の側面112の近傍に作業スペースを確保しておく必要があることを知らない。そのため、
図22に示すように、他の業者によって、他の天井吊り下げ物を支持する吊りボルト200a,200bが空気調和機本体110の側面112の近傍に設置されてしまう可能性がある。
【0007】
上記のように空気調和機本体110の側面112の近傍に吊りボルト200a,200bなどの障害物が設置されてしまうと、空気調和機100のメンテナンス作業を行うことができなくなる。そのため、他の業者による作業が終了した後の点検で作業スペースが確保されていないことが判明すると、吊りボルト200a,200bなどの障害物を別の場所へ移動させる作業を行わなければならず、作業効率が著しく低下すると共に、新築建造物の工期を遅延させてしまうという問題がある。
【0008】
また、上記問題は、空気調和機100に限られた問題ではない。天井空間には、空気調和機100の他にも、ラックやダクト、照明器具などの様々な吊設物が吊りボルトによって吊り下げられた状態に設置される。そのような他の吊設物にもメンテナンス作業を行う必要が生じることがある。そのとき、吊設物の近傍に別の吊りボルトなどの障害物が設置されていると、吊設物に対するメンテナンス作業を効率的に行うことができないという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物の近傍にメンテナンス用の作業スペースを確保できるようにした作業スペース確保装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物の近傍に作業スペースを確保するために設置される作業スペース確保装置であって、折り畳み可能なシート部材と、前記シート部材を保持し、前記吊設物の近傍において前記吊設物の上面と同一高さ位置、若しくは、前記吊設物の上面よりも高い位置に設定される保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記シート部材を前記吊設物の近傍において前記作業スペースの上方に展開させることにより、前記作業スペースを確保することを特徴とする構成である。
【0011】
第2に、本発明は、天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物の近傍に作業スペースを確保するために設置される作業スペース確保装置であって、前記吊設物の近傍において確保すべき前記作業スペースの面積に対応する大きさのシート部材と、前記シート部材を、前記吊設物の上面と同一高さ位置、若しくは、前記吊設物の上面よりも高い位置で前記作業スペースの上方に展開させた状態に保持する保持部材と、を備えることを特徴とする構成である。
【0012】
第3に、本発明は、上記第1又は第2の構成を有する作業スペース確保装置において、前記吊設物は、空気調和機であり、前記保持部材は、前記空気調和機の側面の上方に前記シート部材を展開させた状態で保持することにより、前記空気調和機の側面近傍において作業スペースを確保することを特徴とする構成である。
【0013】
第4に、本発明は、上記第1乃至第3のいずれかの構成を有する作業スペース確保装置において、前記保持部材は、前記吊設物の上面と同一高さ位置、若しくは、前記吊設物の上面よりも高い位置から、互いに平行な状態で前記吊設物の側面から外側に向かって突出するように配置される一対の棒状体を備え、前記一対の棒状体によって前記シート部材の両端を支持することを特徴とする構成である。
【0014】
第5に、本発明は、上記第4の構成を有する作業スペース確保装置において、前記吊設物を吊り下げた状態に支持する支持部材に取り付けられ、前記吊設物の側面と平行に配置される長尺のベース部材、を更に備え、前記一対の棒状体は、一端が前記ベース部材に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0015】
第6に、本発明は、上記第5の構成を有する作業スペース確保装置において、前記一対の棒状体は、前記ベース部材に取り付けられた一端が前記ベース部材に対して回動可能であることを特徴とする構成である。
【0016】
第7に、本発明は、上記第6の構成を有する作業スペース確保装置において、前記一対の棒状体を回動させて前記吊設物の側面から外側に向かって突出した状態に変位させる付勢部材、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0017】
第8に、本発明は、上記第1乃至第3のいずれかの構成を有する作業スペース確保装置において、前記保持部材は、前記吊設物の上面と同一高さ位置、若しくは、前記吊設物の上面よりも高い位置において、前記吊設物の側面から外側に向かって突出するように配置される第1棒状体と、前記第1棒状体の先端に取り付けられ、前記吊設物の側面と略平行な状態に配置される第2棒状体と、を有し、前記シート部材は、一端が前記第2棒状体に取り付けられ、他端が前記吊設物の上面又は上方位置に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0018】
第9に、本発明は、上記第8の構成を有する作業スペース確保装置において、前記吊設物を吊り下げた状態に支持する支持部材に取り付けられ、前記吊設物の側面と平行に配置される長尺のベース部材、を更に備え、前記第1棒状体は、一端が前記ベース部材に取り付けられ、前記シート部材の他端は、前記ベース部材に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0019】
第10に、本発明は、上記第9の構成を有する作業スペース確保装置において、前記第1棒状体は、前記ベース部材に取り付けられた一端が前記ベース部材に対して回動可能であり、前記第2棒状体は、前記第1棒状体に取り付けられた一端が前記第1棒状体に対して回動可能であることを特徴とする構成である。
【0020】
第11に、本発明は、上記第10の構成を有する作業スペース確保装置において、前記第1棒状体を前記ベース部材に対して回動させ、前記第1棒状体を前記吊設物の側面から外側に向かって突出した状態に変位させる第1付勢部材と、前記第2棒状体を前記第1棒状体に対して回動させ、前記第2棒状体を前記吊設物の側面と略平行な状態に変位させる第2付勢部材と、を更に備えることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シート部材によって吊設物の近傍の上方を覆うことができるので、吊設物以外の天井吊り下げ物を支持する吊りボルトなどの障害物が吊設物の近傍に設置されてしまうことを未然に防止することが可能である。したがって、天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物の近傍にメンテナンス用の作業スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態における作業スペース確保装置の構成例を示す図である。
【
図2】作業スペース確保装置が設置される空気調和機の一例を示す図である。
【
図3】作業スペース確保装置が空気調和機に設置された例を示す図である。
【
図4】第2実施形態における作業スペース確保装置の構成例を示す図である。
【
図5】一対の棒状体を回動させてシート部材を展開する例を示す図である。
【
図6】作業スペース確保装置を空気調和機に取り付けた例を示す図である。
【
図7】一対の棒状体を回転させ、シート部材を展開した状態を示す図である。
【
図8】第3実施形態における作業スペース確保装置の構成例を示す図である。
【
図9】棒状体に設けられる姿勢切替部材とストッパーとの作用を示す図である。
【
図10】第4実施形態における作業スペース確保装置の構成例を示す図である。
【
図11】作業スペース確保装置がシート部材を展開する例を示す図である。
【
図12】第5実施形態における作業スペース確保装置の構成例を示す図である。
【
図13】第5実施形態における作業スペース確保装置の構成例を示す図である。
【
図14】第5実施形態における作業スペース確保装置の構成例を示す図である。
【
図15】第6実施形態の作業スペース確保装置が設置される空気調和機の一例を示す図である。
【
図16】作業スペース確保装置を空気調和機に取り付けた例を示す図である。
【
図17】作業スペース確保装置がシート部材を展開させた状態を示す図である。
【
図18】第7実施形態における空気調和機の支持構造を例示する図である。
【
図19】作業スペース確保装置のシート部材を展開した状態を示す図である。
【
図20】天井空間に吊設物として設けられるケーブル配線用のラックを示す図である。
【
図21】作業スペース確保装置のシート部材を展開した状態を示す図である。
【
図22】空気調和機が天井空間に吊り下げられた状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態及び後述する幾つかの実施形態では、天井空間に吊り下げられた状態で支持される吊設物Aとして、空気調和機100を例示する。
図1は、本発明の第1実施形態における作業スペース確保装置1の構成例を示す図である。
図2は、作業スペース確保装置1が設置される空気調和機100の一例を示す図である。
図3は、作業スペース確保装置1が空気調和機100に設置された例を示す図である。この作業スペース確保装置1は、天井空間に吊り下げられた状態で支持される空気調和機100の側面112の近傍に、メンテナンス用の作業スペースを確保するために設置される装置である。
【0025】
図1に示すように、作業スペース確保装置1は、シート部材4と、シート部材4を保持する保持部材2とを備えている。シート部材4は、例えば布帛や樹脂製シートなどで構成される柔軟性のあるシート部材であり、不燃性の素材によって構成される。保持部材2は、一対の棒状体2a,2bを備えている。棒状体2a,2bは、例えば断面L型のアングル材で構成される。
【0026】
シート部材4の両端には、筒状部4a,4bが形成される。一対の棒状体2a,2bは、その先端がシート部材4の両端に形成された筒状部4a,4bに挿通され、シート部材4を保持する。一対の棒状体2a,2bの長さは、シート部材4の筒状部4a,4bよりも長い。そのため、先端が筒状部4a,4bに挿通されると、一対の棒状体2a,2bの基端部が筒状部4a,4bの端部から露出した状態に延びる。一対の棒状体2a,2bは、その基端部に磁石3を取り付けた構成である。
【0027】
天井空間に吊設物Aとして設置される空気調和機100は、例えば
図2に示すように、上階床スラブと下階の天井パネル310との間の天井空間に隠蔽された状態に設置される。この空気調和機100は、空気調和機本体110に対して吹出チャンバ120と吸気チャンバ130とが一体的に組み付けられた構成を有し、上階床スラブから垂下する複数の吊りボルト200によって略水平な姿勢で支持される。空気調和機本体110は、平面視矩形状の箱形ユニットである。吹出チャンバ120も平面視矩形状の箱形ユニットであり、空気調和機本体110の正面側(前面側)に連結した状態に配置され、少なくとも1つの吹出口125を備えている。この吹出口125には、空調された空気を室内に導くフレキシブルダクトなどが接続される。吸気チャンバ130も平面視矩形状の箱形ユニットであり、空気調和機本体110の背面側(後面側)に連結した状態に配置される。尚、吸気チャンバ130にも外気を取り込むダクトが接続されることがある。
【0028】
図2の例では、合計8本の吊りボルト200が空気調和機100を支持しており、4本の吊りボルト200で空気調和機本体110の左右両側面を支持し、別の2本の吊りボルト200で吹出チャンバ120の端面を支持し、残りの2本の吊りボルトで吸気チャンバ130の端面を支持している。
【0029】
空気調和機本体110の2つの側面112,113には、吊りボルト200などのボルト部材の下端を接続するためのボルト接続部114が設けられている。ボルト接続部114には、防振部材115が取り付けられる。防振部材115は、空気調和機100の稼働中に発生する振動が吊りボルト200に伝わることを低減する部材である。例えば、防振部材115は、概略コ字状の形状した金具116と、その金具116の一端に設けられるコイルバネ117とによって構成される。防振部材115は、一端のコイルバネ117に吊りボルト200の下端が挿通された状態に取り付けられ、他端がボルトとナットとによってボルト接続部114に固定される。つまり、空気調和機本体110を支持する4本の吊りボルト200は、防振部材115を介して空気調和機本体110の2つの側面112,113を支持する。
【0030】
吹出チャンバ120の端面には、ボルト接続部121が設けられる。ボルト接続部121には、防振部材122が取り付けられる。防振部材122は、空気調和機100の稼働中に発生する振動が吊りボルト200に伝わることを低減する部材である。例えば、防振部材122は、ゴムなどの弾性部材で構成された円筒状又は円錐台状の形状を有し、その中心に吊りボルト200を挿通する孔が形成されている。この防振部材122は、例えばボルト接続部121の下面側に取り付けらる。吊りボルト200の下端部は、ボルト接続部121及び防振部材122に挿通され、防振部材122の下面から突出する先端にナットが装着される。したがって、吹出チャンバ120を支持する2本の吊りボルト200は、防振部材122を介して吹出チャンバ120の端面を支持する。
【0031】
吸気チャンバ130の端面には、ボルト接続部131が設けられる。ボルト接続部131にも、上記と同様の防振部材122が取り付けられる。したがって、吸気チャンバ130を支持する2本の吊りボルト200は、防振部材122を介して吸気チャンバ130の端面を支持する。
【0032】
空気調和機本体110の内部には、防塵や集塵のためのフィルタ装着部102が設けられている。そして空気調和機本体110の2つの側面112,113のうち、一方の側面112には、そのフィルタ装着部102に装着されているフィルタを交換する際に開閉可能な板状の扉部材101が設けられる。また、扉部材101と同じ側面112には、電気系統などが収容されたボックス部103が配置されている。更に、同じ側面112には、冷媒配管を接続する接続部104と、ドレン配管を接続する接続部105とが設けられる。つまり、空気調和機本体110は、メンテナンス作業の必要な部品を一方の側面112に集約させた構成である。そのため、空気調和機100は、天井空間に設置されるとき、空気調和機本体110の側面112の近傍にメンテナンス用の作業スペースを確保した状態で設置されることが好ましい。
【0033】
一方、空気調和機100の下方に設置される天井パネル310には、空気調和機本体110の側面112に対する作業スペースの下方位置に開閉可能な開口部311が形成される。この開口部311は、メンテナンス作業が行われないときには別のパネル部材によって閉鎖される。したがって、空気調和機本体110に対するフィルタ交換作業、電気系統や冷媒配管、ドレン配管の点検作業といったメンテナンス作業が行われるとき、天井パネル310に設けられた開口部311を開放することにより、作業者が空気調和機本体110の側面112に対してアクセスできるようになっている。例えば、複数の吊りボルト200によって空気調和機100が天井空間に設置された後に、別の吊りボルトによって天井下地材が空気調和機100の下方位置に吊り下げられた状態に設置され、天井パネル310はその天井下地材に取り付けられる。ただし、天井パネル310の取り付け態様は、必ずしもこれに限られない。
【0034】
作業スペース確保装置1は、複数の吊りボルト200によって空気調和機100が天井空間に設置されることに伴い、
図3に示すように、空気調和機100の上面111に取り付けられる。この作業スペース確保装置1は、天井空間に吊り下げられた状態の空気調和機100の上面側に取り付けられる。作業スペース確保装置1のシート部材4は柔軟性を有するため、折り畳むことが可能である。そのため、シート部材4を折り畳んで一対の棒状体2a,2bを互いに近接させることにより、作業スペース確保装置1は、片手で持ち運び可能なサイズとなる。したがって、作業スペース確保装置1は、空気調和機100が天井空間に設置された後、シート部材4を折り畳んだ状態で空気調和機100の上面側に搬入することが可能であり、取り扱い易いという利点がある。
【0035】
例えば、本実施形態の空気調和機本体110の上面111は、薄い鉄板で形成されている。そのため、作業スペース確保装置1は、一対の棒状体2a,2bの基端部に設けられている磁石3を空気調和機本体110の上面111に付着させることで設置される。このとき、作業スペース確保装置1は、一対の棒状体2a,2bの先端を空気調和機本体110の側面112の外側に突出させた状態に取り付けられる。また、作業者は、一対の棒状体2a,2bの間隔を広げることにより、
図3に示すように、シート部材4を空気調和機本体110の側面112の上方において展開させ、シート部材4が側面112の上方を覆う状態に取り付ける。シート部材4は、空気調和機本体110の側面112の近傍において確保すべき作業スペースの面積に対応する大きさ(面積)を有しており、その両端が一対の棒状体2a,2bによって支持された状態で空気調和機本体110の側面112の上方に展開される。作業スペース確保装置1は、空気調和機本体110の上面111と同じ高さ位置でシート部材4を展開することにより、シート部材4が空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆う状態となり、空気調和機本体110の側面112の近傍の作業スペースに対して別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防ぐことができる。尚、このようなシート部材4は、例えば天井パネル310に設けられた開口部311の上方を覆うように配置されることがより好ましい。
【0036】
このように本実施形態の作業スペース確保装置1は、空気調和機100が天井空間に設置された後に、別の業者によって空気調和機本体110の側面112の近傍に吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防止できる。それ故、別の業者による作業が終了した後に障害物を別の場所へ移動させるような無駄な作業の発生を抑制することが可能であり、作業効率が著しく改善することができる。
【0037】
このように本実施形態の作業スペース確保装置1は、天井空間に吊り下げられた状態で支持される空気調和機100の側面112の近傍に作業スペースを確保するために設置される装置であり、折り畳み可能なシート部材4と、そのシート部材4を保持し、空気調和機100の上面111と同一高さ位置に設定される保持部材2と、を備えている。そして、保持部材2は、折り畳んだ状態のシート部材4を空気調和機100の側面112の上方において展開させることにより、作業スペースを確保する構成である。このような構成によれば、空気調和機100が天井空間に設置された後に、別の業者などによって空気調和機100の側面112の近傍に別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを回避でき、空気調和機100の側面112の近傍にメンテナンス用の作業スペースを確保することができる。このような作業スペース確保装置1は、言い換えると、空気調和機100の側面112の近傍に、
図22に示した吊りボルト200a,200bなどの障害物が設置されてしまうことを防止する障害物防止装置として機能する。
【0038】
新築建造物の建築現場において、例えば天井空間に対する空気調和機100及び他の天井吊り下げ物の設置工程が全て終了した後、上述した作業スペース確保装置1は空気調和機100の上面111から撤去しても良い。このとき、磁石3を空気調和機100の上面111から取り外すことによって、作業スペース確保装置1を簡単に空気調和機100から取り外すことができるため、作業効率に優れている。
【0039】
また、作業スペース確保装置1は、空気調和機100の上面111に取り付けたまま放置しても良い。このとき、シート部材4は、不燃性の素材で形成されているため、天井空間に放置されてもシート部材4が火災や延焼等の原因となることを防ぐことができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、シート部材4を保持する一対の棒状体2a,2bが磁石3によって空気調和機100の上面111に取り付けられる形態を例示した。しかし、空気調和機100の上面が断熱材などによって覆われている場合、磁石3で一対の棒状体2a,2bを空気調和機100の上面111に取り付けることができない。また、一対の棒状体2a,2bを磁石3で空気調和機100の上面111に取り付ける態様では、別の業者が一対の棒状体2a,2bの位置を移動させ、空気調和機100の側面112の近傍に別の吊りボルトなどの障害物を設置してしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、そのような課題を解決することができる作業スペース確保装置1について説明する。
【0041】
図4は、本発明の第2実施形態における作業スペース確保装置1の構成例を示す図である。この作業スペース確保装置1は、ベース部材5と、保持部材2と、シート部材4とを備えている。
【0042】
ベース部材5は、例えば断面L型のアングル材で構成される長尺の金具であり、平板部5aと縦板部5bとを備えている。平板部5aと縦板部5bは互いに直角を成すように接続されており、平板部5aが水平面と略平行に配置され、縦板部5bが鉛直方向と略平行に配置される。ベース部材5は、縦板部5bの両端部に、空気調和機100を吊り下げた状態に支持する吊りボルト200などの支持部材に取り付け可能な連結金具6を備えている。例えば、連結金具6は、吊りボルト200などの支持部材の外周面に係合するU字状の切欠部を有し、その切欠部の内側に支持部材の外周面を接合させた状態でボルト7が締め付けられることにより、縦板部5bとの間に支持部材を挟み込んで固定する。例えば、ボルト7は、縦板部5bに形成された孔を貫通しており、縦板部5bの裏面側に突出する雄螺子部の先端にナットが装着された状態で縦板部5bに取り付けられる。
【0043】
保持部材2は、第1実施形態と同様に、一対の棒状体2a,2bを備えている。一対の棒状体2a,2bは、一端がベース部材5の平板部5aに対して回動可能に取り付けられる。例えば、棒状体2aは、ベース部材5の一端側にボルト8aによって取り付けられる。棒状体2aは、その下面側に図示を省略する筒状のスペーサが配置され、そのスペーサによってベース部材5の平板部5aから所定高さ浮いた状態に保持されている。そして棒状体2aは、ボルト8aが緩く締め付けられている状態のとき、ボルト8aの軸部を中心に回動可能である。また、棒状体2bは、ベース部材5の他端側にボルト8bによって取り付けられる。例えば、棒状体2bの下面側には、棒状体2aのようなスペーサは設けられない。そのため、棒状体2a,2bはそれぞれ異なる高さ位置となるようにベース部材5に取り付けられる。そして棒状体2bは、ボルト8bが緩く締め付けられている状態のとき、ボルト8bの軸部を中心に回動可能である。
【0044】
ここで、ベース部材5に取り付けられるボルト8a,8bの間隔は、一対の棒状体2a,2bの長さよりも長いことが好ましい。ボルト8a,8bの間隔を一対の棒状体2a,2bよりも長くすることにより、それぞれ異なる高さ位置に保持される一対の棒状体2a,2bを平板部5aの上面側において略平行な状態に収納することができる。これにより、作業スペース確保装置1を持ち運ぶ際に一対の棒状体2a,2bを互いに平行な状態に収納して持ち運ぶことが可能である。
【0045】
シート部材4は、第1実施形態と同様、シート部材4は、例えば布帛や樹脂製シートなどで構成される柔軟性のあるシート部材であり、不燃性の素材によって形成される。シート部材4の両端には、第1実施形態と同様に筒状部が形成されている。一対の棒状体2a,2bは、その先端がシート部材4の両端に形成された筒状部に挿通され、シート部材4の両端を保持する。
図4に示す例では、一対の棒状体2a,2bによって保持されたシート部材4が折り畳まれた状態(より詳しくはロール状に巻き取った状態)を示している。また、上述のように一対の棒状体2a,2bは、異なる高さ位置に保持されている。そのため、折り畳んだシート部材4は、
図4に示すように、互いに平行な状態の一対の棒状体2a,2bの間の空間に収容可能である。この状態でボルト8a,8bをきつく締め付ければ、棒状体2a,2bが回転しないため、作業スペース確保装置1を持ち運ぶ際にシート部材4が広がってしまうことを防ぐことができる。
【0046】
上記のように構成される作業スペース確保装置1は、ボルト8a,8bを緩めることで一対の棒状体2a,2bを回動させることが可能となり、一対の棒状体2a,2bを回転させることでシート部材4をベース部材5の側方に展開することができる。
図5は、一対の棒状体2a,2bを回動させてシート部材4を展開する例を示す図である。例えば、
図5(a)に示すように、ボルト8aの軸部を中心に棒状体2aを略90度回転させることに伴い、シート部材4の一部が展開される。その後、
図5(b)に示すように、ボルト8bの軸部を中心に棒状体2bを略90度回転させることに伴い、シート部材4の全体をベース部材5の側方に展開することができる。
【0047】
図6は、作業スペース確保装置1を空気調和機100に取り付けた例を示す図である。例えば、作業スペース確保装置1は、
図6に示すように、ベース部材5に設けられた連結金具6が空気調和機100を支持する吊りボルト200に固定されることで空気調和機100に取り付けられる。連結金具6は、例えば、空気調和機本体110の側面112を支持している2本の吊りボルト200に取り付けられ、ベース部材5を2本の吊りボルト200,200間において略水平姿勢に支持する。このとき、ベース部材5は、空気調和機本体110の上面111と同じ高さ位置、又は、空気調和機本体110の上面111よりも高い位置に取り付けられる。尚、
図6では、ベース部材5の平板部5aが空気調和機100の内側に向くように取り付けられた例を示しているが、これに限られるものではなく、ベース部材5の平板部5aが空気調和機100の外側に向くように取り付けても構わない。尚、ベース部材5を吊りボルト200,200に取り付ける際には、ボルト8a,8bを締め付けておくことにより、一対の棒状体2a,2bがベース部材5に対して回転することを防止でき、スムーズにベース部材5を吊りボルト200,200に取り付けることができる。
【0048】
図6に示すように、ベース部材5を2本の吊りボルト200,200に取り付けると、ボルト8a,8bを緩めることで一対の棒状体2a,2bを回転させ、シート部材4を展開させることができる。
図7は、一対の棒状体2a,2bを回転させ、シート部材4を展開した状態を示す図である。
図7に示すように、一対の棒状体2a,2bを略90度回転させると、一対の棒状体2a,2bは、空気調和機本体110の側面112の上方において外側に突出した状態となる。そして、一対の棒状体2a,2bは、シート部材4を空気調和機本体110の側面112の上方において展開させる。その結果、シート部材4は、その両端が一対の棒状体2a,2bに支持された状態で空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことができる。このようにシート部材4が空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことにより、空気調和機本体110の側面112に対する作業スペースに対して別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防ぐことができる。そして
図7に示すようにシート部材4を展開させた後、ボルト8a,8bを締め付けておけば、一対の棒状体2a,2bは側面112の上方において外側に突出した状態に固定される。そのため、別の業者が一対の棒状体2a,2bを回転させてしまうことを防止することができる。
【0049】
したがって、本実施形態の作業スペース確保装置1は、第1実施形態と同様に、空気調和機100が天井空間に設置された後、別の業者によって空気調和機本体110の側面112の近傍に吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防止でき、別の業者による作業が終了した後に障害物を別の場所へ移動させるような無駄な作業の発生を抑制することが可能であり、作業効率が著しく改善することができる。特に、本実施形態の作業スペース確保装置1は、一対の棒状体2a,2bがベース部材5に設けられており、ベース部材5を吊りボルト200,200などに取り付けられることで空気調和機100の側面112の上方の所定位置に固定しておくことができる。そのため、空気調和機100の上面111が断熱材などによって覆われている場合であっても、空気調和機100の所定位置に作業スペース確保装置1を設置することが可能である。また、本実施形態の作業スペース確保装置1は、一対の棒状体2a,2bを支持するベース部材5が空気調和機100の上方位置に固定されるため、別の業者によって一対の棒状体2a,2bが移動させられてしまうことを防止できるという利点もある。
【0050】
また、本実施形態の作業スペース確保装置1は、シート部材4を一対の棒状体2a,2bから簡単に取り外すことが可能である。すなわち、
図7に示す状態において、一対の棒状体2a,2bの延長方向に向かってシート部材4を引っ張ることにより、シート部材4の両端に設けられた筒状部が一対の棒状体2a,2bから抜けるため、シート部材4を簡単に一対の棒状体2a,2bから取り外すことができる。そのため、例えば天井空間に対する空気調和機100及び他の天井吊り下げ物の設置工程が全て終了した後、空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うシート部材4を撤去する必要がある場合には、シート部材4を一対の棒状体2a,2bから引き抜くことにより、簡単に撤去することができる。そしてシート部材4を撤去した後には、ボルト8a,8bを緩め、一対の棒状体2a,2bを回転させてベース部材5と平行な状態に収納しておくことにより、後のメンテナンス作業において一対の棒状体2a,2bが邪魔になることを防止することができる。
【0051】
ただし、シート部材4は必ずしも作業スペース確保装置1から取り外さなくても良い。この場合、作業スペース確保装置1は、シート部材4を展開させた状態のまま天井空間に放置されても良いし、またシート部材4を折り畳んで一対の棒状体2a,2bをベース部材5と平行な状態に収納した状態として天井空間に放置されても良い。このときも、シート部材4は、不燃性の素材で形成されているため、天井空間に放置されたとしてもシート部材4が火災や延焼等の原因となることを防ぐことができる。
【0052】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0053】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。上記第2実施形態では、一対の棒状体2a,2bの回転を規制するときにはボルト8a,8bを締め付け、一対の棒状体2a,2bの回転を許容するときにはボルト8a,8bを緩めることが必要であった。そのため、作業者は、一対の棒状体2a,2bの一端に取り付けられているボルト8a,8bを締め付けたり、緩めたりする操作を行わなければならない。例えば、一対の棒状体2a,2bが空気調和機本体110の側面112の外側に突出し、シート部材4を展開させた状態であるとき、一対の棒状体2a,2bやシート部材4が邪魔になるため、ボルト8a,8bを締め付ける操作が困難であり、作業効率が低下する可能性がある。そこで、本実施形態では、ボルト8a,8bの締め付け操作を行う必要のない作業スペース確保装置1について説明する。
【0054】
図8は、本発明の第3実施形態における作業スペース確保装置1の構成例を示す図である。
図8(a)に示すように、作業スペース確保装置1は、第2実施形態と同様、ベース部材5と、保持部材2と、シート部材4とを備えている。保持部材2は、シート部材4の両端を保持する部材であり、第2実施形態と同様に、一対の棒状体2a,2bを備えている。例えば、この作業スペース確保装置1は、第2実施形態と同様、
図6に示した態様で空気調和機100に取り付けられる。
【0055】
一対の棒状体2a,2bは、一端がベース部材5の平板部5aに対して回動可能に取り付けられる。例えば、棒状体2aは、ボルト8aによってベース部材5の一端側に取り付けられ、ボルト8aの軸部を中心に回動可能である。また、棒状体2bは、ボルト8bによってベース部材5の他端側に取り付けられ、ボルト8bの軸部を中心に回動可能である。尚、棒状体2aは、その下面側に図示を省略する筒状のスペーサが配置され、そのスペーサによってベース部材5の平板部5aから所定高さ浮いた状態に保持されるのに対し、棒状体2bには棒状体2aのようなスペーサが設けられない点は、第2実施形態と同様である。
【0056】
また、作業スペース確保装置1は、一対の棒状体2a,2bのそれぞれをボルト8a,8bの軸部を中心に所定方向に回動させてベース部材5に対する姿勢を変化させる姿勢切替部材10を備えている。この姿勢切替部材10は、一対の棒状体2a,2bのそれぞれに対して個別に設けられる。
【0057】
姿勢切替部材10は、一対の棒状体2a,2bのそれぞれを所定方向に回動させて空気調和機100の側面112から外側に突出させた状態に変位させる付勢部材11と、一対の棒状体2a,2bがベース部材5に平行な状態から略90度回転した位置で一対の棒状体2a,2bの回転を止めるストッパー13とを備えている。棒状体2aの一端に設けられる付勢部材11は、棒状体2aを回転方向R1に向けて付勢する。また、棒状体2bの一端に設けられる付勢部材11は、棒状体2bを回転方向R2に向けて付勢する。
【0058】
図8(b)は、棒状体2bの一端部分を拡大して示している。付勢部材11は、例えばコイルバネ12によって構成される。コイルバネ12は、伸長させた状態でその両端が棒状体2bとベース部材5とのそれぞれに接続される。例えばコイルバネ12は、一端が棒状体2bに接続され、他端がベース部材5の平板部5aに接続される。また、コイルバネ12は、棒状体2bの背面側において水平方向にボルト8bが設けられた位置を跨ぐように取り付けられる。すなわち、コイルバネ12の一端は、ボルト8bの位置よりも棒状体2bの端部に近い位置に取り付けられる。したがって、
図8(b)に示す状態において、伸長したコイルバネ12は棒状体2bを回転方向R2に付勢している。
【0059】
また、ストッパー13は、例えばワイヤー14によって構成される。ワイヤー14は、一端がベース部材5に接続され、他端が棒状体2bに接続される。ワイヤー14は、棒状体2bがベース部材5と平行な状態に収納されているとき、撓んだ状態となっている。そして棒状体2bが回転方向R2に略90度回転すると、ワイヤー14は、ベース部材5と棒状体2bとの間に張力を作用させ、棒状体2bの更なる回転を規制する。尚、棒状体2aに設けられる姿勢切替部材10もこれと同様の構成である
【0060】
図9は、棒状体2aにおける姿勢切替部材10とストッパー13との作用を示す図である。
図9(a)に示すように、棒状体2aがベース部材5と平行な状態であるとき、ストッパー13として設けられているワイヤー14が撓んでいる。このとき、付勢部材11であるコイルバネ12は、伸長した状態であり、収縮する方向に付勢力を作用させている。この付勢力が、棒状体2aを回転方向R1に付勢している。その付勢力によって棒状体2aは、ボルト8aの軸部を中心に回転方向R1へ回転する。棒状体2aが回転方向R1へ回転していくことにより、ワイヤー14が撓んだ状態から変位する。そして棒状体2aが回転方向R1へ略90度回転すると、ワイヤー14は、
図9(b)に示すように棒状体2aとベース部材5との間で直線状に延びた状態となり、ベース部材5と棒状体2aとの間に張力を作用させる。この張力により、棒状体2aの回転が止まり、棒状体2aは、ベース部材5から略90度回転した位置に保持される。
【0061】
尚、ストッパー13は、必ずしもワイヤー14に限られない。例えば、ストッパー13は、一対の棒状体2a,2bが略90度回転したときに一対の棒状体2a,2bに接触して一対の棒状体2a,2bの回転を止める突起部をベース部材5に設けたものあっても構わない。
【0062】
このように本実施形態の作業スペース確保装置1は、一対の棒状体2a,2bのそれぞれを付勢部材11によって回転方向R1,R2に付勢しており、その付勢力によって棒状体2a,2bをベース部材5と平行な収納状態から略90度回転させることができる。そして、作業スペース確保装置1は、
図8(a)に示すように、ベース部材5の略中央の位置に、一対の棒状体2a,2bの姿勢変化を規制する規制部材15を備えている。例えば、規制部材15は、板状の規制金具16をボルト17でベース部材5の縦板部5bに取り付けた部材である。規制金具16は、ボルト17の軸部を中心に回転方向R3へ回動する。そのため、規制金具16は、ベース部材5の上面から突出した第1姿勢とベース部材5の縦板部5bと平行な第2姿勢との間で姿勢変化する。この規制金具16を第1姿勢としておくことにより、一対の棒状体2a,2bは、規制金具16と干渉するため、回転方向R1,R2へ回転せず、ベース部材5と平行な収納状態を保持する。
【0063】
したがって、
図6に示したように作業スペース確保装置1を吊りボルト200などの支持部材に取り付ける際には、規制金具16を第1姿勢としておくことで一対の棒状体2a,2bをベース部材5の平板部5aの上面に収納した状態で取り付けることが可能である。つまり、一対の棒状体2a,2bやシート部材4が邪魔にならない状態で作業スペース確保装置1を空気調和機100に取り付けることができるので、作業効率に優れている。
【0064】
そして
図6に示したように、作業スペース確保装置1を吊りボルト200などの支持部材に取り付けた後、規制金具16を回転方向R3へ回転させて第2姿勢とすると、一対の棒状体2a,2bは、付勢部材11の付勢力によって回転する。これにより、一対の棒状体2a,2bは、
図7に示したように、空気調和機本体110の側面112の上方において外側に突出した状態となり、シート部材4を空気調和機本体110の側面112の上方において展開させる。このとき、ストッパー13は、一対の棒状体2a,2bがベース部材5に対して略90度回転した位置で一対の棒状体2a,2bの回転を止める。そのため、一対の棒状体2a,2bは、空気調和機本体110の側面112の上方において外側に最も突出した位置で保持されることになる。その結果、シート部材4は、その両端が一対の棒状体2a,2bに支持された状態で空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことができる。そして、シート部材4が空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことにより、空気調和機本体110の側面112に対する作業スペースに対して別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0065】
このような作業スペース確保装置1は、付勢部材11による付勢力が一対の棒状体2a,2bに常に作用している。そのため、
図7に示したようにシート部材4を展開させた状態で、仮に棒状体2a,2bに対して回転方向R1,R2とは反対方向の力が作用し、棒状体2a,2bが変位したとしても、棒状体2a,2bは付勢部材11の付勢力によって直ぐに元の姿勢に戻る。そのため、第2実施形態で説明したように、空気調和機100の側面112の近傍の上方においてシート部材4を展開させた後に、ボルト8a,8bを締め付ける操作を行う必要がなく、作業効率が向上する。
【0066】
また、本実施形態の作業スペース確保装置1は、第2実施形態と同様に、シート部材4を一対の棒状体2a,2bから簡単に取り外すことが可能である。そのため、例えば天井空間に対する空気調和機100及び他の天井吊り下げ物の設置工程が全て終了した後、空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うシート部材4を撤去する必要がある場合には、シート部材4を一対の棒状体2a,2bから引き抜くことにより、簡単に撤去することができる。そしてシート部材4を撤去した後には、付勢部材11の付勢力に抗して一対の棒状体2a,2bをベース部材5と平行な収納状態とし、規制部材15によってその収納状態を維持させるようにすれば良い。一対の棒状体2a,2bをベース部材5と平行な状態に収納しておくことにより、後のメンテナンス作業において一対の棒状体2a,2bが邪魔になることを防止することができる。ただし、シート部材4は必ずしも作業スペース確保装置1から取り外さなくても良い。
【0067】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1及び第2実施形態で説明したものと同様である。
【0068】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態について説明する。
図10は、本発明の第4実施形態における作業スペース確保装置1の構成例を示す図である。
図11は、作業スペース確保装置1がシート部材4を展開する例を示す図である。この作業スペース確保装置1は、ベース部材5と、シート部材4と、保持部材2とを備えている。
【0069】
保持部材2は、シート部材4の両端を保持する部材である。本実施形態の保持部材2は、2つの棒状体2a,2cによって構成される。一方の棒状体2aは、例えば断面L型のアングル材で構成され、第2又は第3実施形態と同様に、ボルト8aによって一端がベース部材5の平板部5aに対して回動可能に取り付けられる。他方の棒状体2cは、例えば円筒状のパイプ部材で構成され、ベース部材5には固定されていない。
【0070】
ベース部材5は、第2実施形態又は第3実施形態で説明したものと同様である。このベース部材5は、その長手方向においてボルト8aの位置から所定距離の位置に円柱状の支持棒18を有している。支持棒18は、その基端部がベース部材5の縦板部5bに取り付けられ、先端部が縦板部5bから突出するように取り付けられる。例えば、支持棒18は、ボルト8aの位置からシート部材4の長さと同等の距離だけ離れた位置に取り付けられる。また、支持棒18は、棒状体2cの内側に挿入可能な外径を有している。
【0071】
シート部材4は、両端が2つの棒状体2a,2cに取り付けられる。例えば、シート部材4は、棒状体2cに巻き付けておくことが可能である。また、シート部材4は、棒状体2cに巻き付けるだけでなく、ロール状若しくは蛇腹状に折り畳んだ状態としても良い。
【0072】
上記のような構成を有する作業スペース確保装置1は、ベース部材5が空気調和機100を吊り下げた状態で支持する吊りボルト200などの支持部材に取り付けられた後、シート部材4を展開させることにより、空気調和機100の側面112の近傍における作業スペースを確保する。
【0073】
図11は、シート部材4を展開させる例を示す図である。まずベース部材5が支持部材に取り付けられた後、
図11(a)に示すように、棒状体2aをボルト8aの軸部を中心に回動させる。このとき、作業者は、2つの棒状体2a,2cを保持した状態で棒状体2aを回動させることが好ましい。棒状体2aをベース部材5に対して略90度回転させると、次に作業者は、
図11(b)に示すように、棒状体2cに巻き付けたシート部材4を展開させる。尚、シート部材4が折り畳まれている場合も同様である。シート部材4を展開させると、
図11(b)に示すように、棒状体2cが支持棒18と略同一の位置に到達する。そして
図11(c)に示すように、作業者は、棒状体2cを、支持棒18に嵌め込んで装着することにより、棒状体2cをベース部材5に取り付ける。これにより、シート部材4は、その両端が2つの棒状体2a,2cによって支持され、ベース部材5の側方に展開した状態に保持される。
【0074】
上記構成を有する作業スペース確保装置1は、第2及び第3実施形態と同様に、ベース部材5が空気調和機100を吊り下げた状態で支持する吊りボルト200などの支持部材に取り付けられる。そのため、
図11(c)に示すように、シート部材4がベース部材5の側方に展開されることに伴い、シート部材4は、その両端が2つの棒状体2a,2cに支持された状態で空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことができる。そして、シート部材4が空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことにより、空気調和機本体110の側面112に対する作業スペースに対して別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0075】
また、本実施形態の作業スペース確保装置1は、支持棒18の位置及びシート部材4の長さを調整することにより、シート部材4が覆う作業スペースの幅Wを調整することができる。例えば、支持棒18を棒状体2aに近づけると、作業スペースの幅Wを棒状体2aの長さよりも小さくすることができる。したがって、幅Wの狭い作業スペースを確保する必要がある場合には、第2及び第3実施形態の作業スペース確保装置1よりも、本実施形態の作業スペース確保装置1の方が利用しやすいという利点がある。
【0076】
また、本実施形態の作業スペース確保装置1は、第2及び第3実施形態と同様に、シート部材4を棒状体2aから簡単に取り外すことが可能である。そのため、例えば天井空間に対する空気調和機100及び他の天井吊り下げ物の設置工程が全て終了した後、空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うシート部材4を撤去する必要がある場合には、棒状体2cを支持棒18から引き抜くと共に、シート部材4を棒状体2aから引き抜くことにより、簡単に撤去することができる。そしてシート部材4を撤去した後には、棒状体2aをベース部材5と平行な収納状態とすれば良い。棒状体2aをベース部材5と平行な状態に収納しておくことにより、後のメンテナンス作業において棒状体2aが邪魔になることを防止することができる。ただし、シート部材4は必ずしも作業スペース確保装置1から取り外さなくても良い。
【0077】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1乃至第3実施形態のいずれかにおいて説明したものと同様である。
【0078】
(第5実施形態)
次に本発明の第5実施形態について説明する。上述した第4実施形態では、作業スペースの幅Wを小さくできるようにした一例を説明した。本実施形態では、第4実施形態とは異なる形態で作業スペースの幅Wを小さくできる構成例について説明する。
【0079】
図12、
図13及び
図14は、第5実施形態における作業スペース確保装置1の構成例を示す図である。この作業スペース確保装置1は、ベース部材5と、シート部材4と、保持部材2とを備えている。保持部材2は、シート部材4を保持する部材であり、第1棒状体2aと、第2棒状体2dとを備えている。
【0080】
ベース部材5は、例えば断面L型のアングル材によって構成され、平板部5aと縦板部5bとを備えている。本実施形態のベース部材5は、シート部材4が展開される方向とは反対側に縦板部5bが配置され、その縦板部5bに、空気調和機100を吊り下げた状態で支持する吊りボルト200などの支持部材が取り付けられる場合を例示している。ただし、ベース部材5の配置形態はこれに限られるものではない。
【0081】
第1棒状体2aは、例えば断面L型のアングル材によって構成される。第1棒状体2aは、ボルト8aによってベース部材5の平板部5aの一端側に取り付けられる。すなわち、第1棒状体2aは、長手方向の一端(基端部)がボルト8aの軸部を中心に回動可能にベース部材5に取り付けられる。また、第1棒状体2aは、長手方向の他端(先端部)に第2棒状体2dの一端(基端部)を回動可能に保持する。
【0082】
第2棒状体2dは、例えば断面L型のアングル材によって構成される。第2棒状体2dは、第1棒状体2aよりも短い長さであり、作業スペースとして確保すべき幅Wに対応する長さを有している。第2棒状体2dは、ボルト8cによって第1棒状体2aの先端部に取り付けられる。すなわち、第2棒状体2dは、長手方向の一端(基端部)がボルト8cの軸部を中心に回動可能に第1棒状体2aに取り付けられる。
【0083】
作業スペース確保装置1は、第1棒状体2aをボルト8aの軸部を中心に所定の回転方向R1に回転させてベース部材5に対する姿勢を変化させる姿勢切替部材10aと、第2棒状体2dをボルト8cの軸部を中心に所定の回転方向R4に回転させて第1棒状体2aに対する姿勢を変化させる姿勢切替部材10bと、を備えている。これら姿勢切替部材10a,10bは、上述した姿勢切替部材10と同様の構成である。すなわち、姿勢切替部材10aは、第1棒状体2aを所定の回転方向R1に回動させてベース部材5の側方に突出させた状態に変位させる付勢部材11と、第1棒状体2aがベース部材5に平行な状態から略90度回転した位置で第1棒状体2aの回転を止めるストッパー13とを備えている。また、姿勢切替部材10bは、第2棒状体2dを所定の回転方向R4に回動させて第1棒状体2aの側方に突出させた状態に変位させる付勢部材11と、第2棒状体2dが第1棒状体2aに平行な状態から略90度回転した位置で第2棒状体2dの回転を止めるストッパー13とを備えている。尚、本実施形態では、シート部材4が姿勢切替部材10bのストッパー13としての機能を有している。
【0084】
シート部材4は、
図14に示すように、一端がベース部材5の平板部5aに取り付けられ、他端が第2棒状体2dに取り付けられる。例えば、シート部材4の一端は粘着テープなどの固定手段によってベース部材5に固定され、空気調和機100の側面112の上方位置に保持される。また、シート部材4の他端には筒状部が形成されており、第2棒状体2dがその筒状部に挿通されることにより、シート部材4の他端が第2棒状体2dによって保持される。
【0085】
上記構成を有する作業スペース確保装置1は、
図12に示すように、付勢部材11の付勢力に抗して第1棒状体2aをベース部材5と平行な状態に収納可能であり、また付勢部材11の付勢力に抗して第2棒状体2dを第1棒状体2aと平行な状態に収納可能である。このとき、シート部材4を折り畳むことにより、シート部材4もベース部材5の上面側に収納することができる。この作業スペース確保装置1は、第1棒状体2a及び第2棒状体2dの姿勢変化を規制する規制部材19を備えている。規制部材19は、
図12に示すように、第1棒状体2a、第2棒状体2d及びシート部材4がベース部材5と平行な状態に収納された状態において第1棒状体2a及び第2棒状体2dの姿勢変化を規制し、
図12に示す収納状態を保持するための部材である。例えば、規制部材19は、U字状又はコ字状の形態を有し、第1棒状体2a、第2棒状体2d及びシート部材4がベース部材5と平行な状態に収納された状態においてベース部材5の上方から被せるように装着され、第1棒状体2a、第2棒状体2d及びシート部材4を拘束する。これにより、第1棒状体2a及び第2棒状体2dは、規制部材19によって回転方向R1,R4への回転が規制され、ベース部材5と平行な収納状態を保持する。そのため、作業スペース確保装置1を吊りボルト200などの支持部材に取り付ける際には、規制部材19を装着して第1棒状体2a及び第2棒状体2dの変位を規制しておくことで第1棒状体2a及び第2棒状体2dのそれぞれをベース部材5の平板部5aの上面に収納した状態で取り付けることが可能である。つまり、第1棒状体2a、第2棒状体2d及びシート部材4が邪魔にならない状態で作業スペース確保装置1を空気調和機100に取り付けることができるので、作業効率に優れている。
【0086】
そして作業スペース確保装置1を吊りボルト200などの支持部材に取り付けた後、規制部材19を取り除くと、
図13に示すように、折り畳まれたシート部材4の一部が展開される。これに伴い、第1棒状体2a及び第2棒状体2dは、付勢部材11の付勢力によってそれぞれ回転方向R1,R4へ回転する。その結果、作業スペース確保装置1は、
図14に示すように、ベース部材5と第2棒状体2dとの間にシート部材4を展開する。シート部材4が展開されると、シート部材4は、ベース部材5と第2棒状体2dとの間に張力を発生させる。この張力によってシート部材4はストッパー13としての機能を発揮し、第2棒状体2dを第1棒状体2aに対して略90度回転した位置に保持する。
【0087】
ベース部材5が吊りボルト200などの支持部材に取り付けられた状態で、
図14に示すようにシート部材4がベース部材5の側方に展開されると、シート部材4は、第2棒状体2dに支持された状態で空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことができる。そして、シート部材4が空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことにより、空気調和機本体110の側面112に対する作業スペースに対して別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0088】
このような作業スペース確保装置1は、付勢部材11による付勢力が第1棒状体2a及び第2棒状体2dに常に作用している。そのため、
図14に示したようにシート部材4を展開させた状態で、仮に第1棒状体2a及び第2棒状体2dのそれぞれに対して回転方向R1,R4とは反対方向の力が作用し、第1棒状体2a及び第2棒状体2dが変位したとしても、第1棒状体2a及び第2棒状体2dは付勢部材11の付勢力によって直ぐに元の姿勢に戻る。そのため、第2実施形態で説明したように、空気調和機100の側面112の近傍の上方においてシート部材4を展開させた後に、作業者はボルト8a,8cを締め付ける操作を行う必要がなく、作業効率が向上する。
【0089】
また、天井空間に対する空気調和機100及び他の天井吊り下げ物の設置工程が全て終了した後、空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うシート部材4を撤去する必要がある場合には、シート部材4を第2棒状体2dから引き抜くと共に、粘着テープなどの固定手段を取り外すことにより、シート部材4を簡単に撤去することができる。そしてシート部材4を撤去した後には、付勢部材11の付勢力に抗して第1棒状体2a及び第2棒状体2dのそれぞれをベース部材5と平行な収納状態とし、規制部材19によってその収納状態を維持させるようにすれば良い。第1棒状体2a及び第2棒状体2dをベース部材5と平行な状態に収納しておくことにより、後のメンテナンス作業において第1棒状体2a及び第2棒状体2dのそれぞれが邪魔になることを防止することができる。
【0090】
更に、本実施形態の作業スペース確保装置1は、第2棒状体2dの長さを調整することにより、シート部材4が覆う作業スペースの幅Wを調整することができる。したがって、幅Wの狭い作業スペースを確保する必要がある場合には、第2及び第3実施形態の作業スペース確保装置1よりも、本実施形態の作業スペース確保装置1の方が利用しやすいという利点がある。
【0091】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1乃至第4実施形態のいずれかにおいて説明したものと同様である。
【0092】
(第6実施形態)
次に本発明の第6実施形態について説明する。
図15は、本実施形態の作業スペース確保装置1が設置される空気調和機100の一例を示す図である。この空気調和機100が
図2に示したものと異なる点は、接続部104に冷媒配管109が接続されている点にある。すなわち、冷媒配管109は、天井空間を鉛直方向に配管され、空気調和機本体110の側面112に設けられた接続部104に接続されている。このような空気調和機100の側面112の近傍において作業スペースを確保するためには、冷媒配管109を跨ぐようにして空気調和機100の前後方向の2箇所にシート部材4を配置することが好ましい。そこで、本実施形態では、冷媒配管109を跨いで2箇所に配置できるようにした作業スペース確保装置1について説明する。
【0093】
図16は、本実施形態における作業スペース確保装置1を空気調和機100に取り付けた一構成例を示す図である。この作業スペース確保装置1は、作業スペース確保装置1aと、作業スペース確保装置1bとを一体的に備えた構成である。すなわち、作業スペース確保装置1は、1つのベース部材5に対して2つの作業スペース確保装置1a,1bを配置した構成を有している。例えば、作業スペース確保装置1aは、第3実施形態で説明した作業スペース確保装置1と同様の構成を有している。また、作業スペース確保装置1bは、第5実施形態で説明した作業スペース確保装置1と同様の構成を有している。尚、作業スペース確保装置1aは、第3実施形態で説明した規制部材15の代わりに第5実施形態で説明した規制部材19を用いている。
【0094】
ベース部材5は、空気調和機本体110の側面112を支持する吊りボルト200などの支持部材に取り付けられる。このベース部材5は、その平板部5aに、2つの作業スペース確保装置1a,1bを搭載している。
【0095】
図17は、作業スペース確保装置1a,1bがシート部材4を展開させた状態を示す図である。
図17に示すように、作業スペース確保装置1aは、冷媒配管109から空気調和機本体110の背面側(後面側)においてシート部材4を展開させることにより、空気調和機本体110の側面112の近傍の作業スペースの上方を覆う。また、作業スペース確保装置1bは、冷媒配管109から空気調和機本体110の正面側(前面側)においてシート部材4を展開させることにより、空気調和機本体110の側面112の近傍の作業スペースの上方を覆う。
【0096】
したがって、本実施形態の作業スペース確保装置1は、空気調和機本体110の側面112の近傍において冷媒配管109が鉛直方向に配管される場合であっても、冷媒配管109を挟むようにシート部材4を展開させることが可能な2つの作業スペース確保装置1a,1bがベース部材5に配置されているため、広い範囲で作業スペースを確保できるという利点がある。
【0097】
また、
図17に示すように作業スペース確保装置1a,1bのそれぞれからシート部材4が展開されると、シート部材4は、空気調和機本体110の側面112の近傍の作業スペースの上方を覆うことができる。特に本実施形態では、鉛直方向に配置される冷媒配管109を跨ぐようにして2枚のシート部材4が作業スペースの上方を覆う。そのため、シート部材4によって覆われた作業スペースに対して別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0098】
尚、本実施形態では、作業スペース確保装置1aとして第3実施形態で説明した作業スペース確保装置1を用い、作業スペース確保装置1bとして第5実施形態で説明した作業スペース確保装置1を用いた例を説明した。しかし、これに限られるものではない。すなわち、本実施形態の作業スペース確保装置1は、上記各実施形態で説明した作業スペース確保装置1を適宜選択して組み合わせることにより実現可能である。
【0099】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1乃至第5実施形態のいずれかにおいて説明したものと同様である。
【0100】
(第7実施形態)
次に本発明の第7実施形態について説明する。上記各実施形態では、空気調和機100が上階床スラブから垂下する複数の吊りボルト200によって天井空間に吊り下げられた状態に設置される場合を例示した。しかし、空気調和機100を天井空間に吊り下げる構造は、必ずしも上記各実施形態で説明した形態に限られない。本実施形態では、フレーム枠体220を用いて空気調和機100を天井空間に吊り下げる例について説明する。
【0101】
図18は、本実施形態における空気調和機100の支持構造を例示する図である。この支持構造は、空気調和機100の上面111側に配置されるフレーム枠体220と、そのフレーム枠体220を天井空間に吊り下げた状態で支持する支持部210とを有する。空気調和機100は、フレーム枠体220から垂下するボルト部材223,224によって天井空間に吊り下げられた状態に支持される。したがって、本実施形態では、支持部210、フレーム枠体220及びボルト部材223,224のそれぞれが、空気調和機100を天井空間に吊り下げた状態で支持する支持部材として設けられている。
【0102】
フレーム枠体220は、空気調和機100の前後方向に沿って配置される一対のフレーム部材221,221と、空気調和機100の左右方向に沿って配置される一対のフレーム部材222,222とを備え、一対のフレーム部材221,221と一対のフレーム部材222,222とが互いに直交するように配置されており、フレーム部材221,222の交点がボルトとナットで固定されることにより、井桁状又は矩形状の枠体として形成される。
【0103】
支持部210は、吊りボルト200とブレースボルト212とを備えている。吊りボルト200は、上端部に固定金具215が設けられ、この固定金具215が上階床スラブから垂下するボルト部材に固定されることにより上階床スラブから垂下する状態に取り付けられる。また、吊りボルト200の下端部はフレーム枠体220に固定される。本実施形態では、4本の吊りボルト200の下端部がフレーム枠体220に固定され、フレーム枠体220を支持する。例えば、4本の吊りボルト200は、例えば平面視で矩形を形成する4つの頂点の位置に配置される。4本の吊りボルト200は、上端近傍位置と下端近傍位置との2箇所にブレースボルト212を連結する連結金具211が取り付けられる。そして4本の吊りボルト200のうち、互いに隣接する2本の吊りボルト200,200間には2本のブレースボルト212,212が互いに交差するように配置される。ブレースボルト212は、一端が2本の吊りボルト200,200のうちの一方の吊りボルト200の上端近傍位置に取り付けられた連結金具211に接続され、他端が他方の吊りボルト200の下端近傍位置に取り付けられた連結金具211に接続される。そして4本の吊りボルト200に合計8本のブレースボルト212が取り付けられることにより、支持部210は、耐震補強された構造となる。
【0104】
フレーム枠体220から垂下するボルト部材223は、空気調和機本体110に装着された吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130の端面を支持する。例えば、本実施形態では、一対のフレーム部材221の端部からボルト部材223が垂下する場合を例示しているが、これに限られるものではない。尚、ボルト部材223は、第1実施形態で説明したように防振部材122を介して吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130の端面を支持することが好ましい。
【0105】
フレーム枠体220から垂下するボルト部材224は、空気調和機本体110の側面1112,113において、ボルト接続部114に取り付けられる防振部材115に接続される。したがって、空気調和機本体110は、フレーム枠体220から垂下するボルト部材224によって支持される。本実施形態では、一対のフレーム部材222の端部からボルト部材223が垂下する場合を例示しているが、これに限られるものではない。
【0106】
空気調和機本体110の側面112を支持するボルト部材224の上端は、フレーム枠体220の上面側に突出している。そして作業スペース確保装置1は、空気調和機本体110の側面112を支持するボルト部材224の上端部に取り付けられる。
図18では、第2実施形態で説明した作業スペース確保装置1をボルト部材224の上端部に取り付けた例を示している。しかし、これに限られるものではなく、本実施形態の作業スペース確保装置1としては、第2乃至第6実施形態のいずれかで説明したものを採用しても良い。
【0107】
図19は、作業スペース確保装置1のシート部材4を展開した状態を示す図である。本実施形態においても、作業スペース確保装置1は、シート部材4を展開させると、シート部材4は、空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことができる。シート部材4が空気調和機本体110の側面112の近傍の上方を覆うことにより、空気調和機本体110の側面112に対する作業スペースに対して別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0108】
尚、
図18及び
図19では、ボルト部材224の上端部に作業スペース確保装置1を取り付けた例を示した。しかし、作業スペース確保装置1を取り付ける位置は、ボルト部材224の上端部に限定されるものではない。すなわち、作業スペース確保装置1は、上記各実施形態と同様に吊りボルト200に取り付けられるものであっても良いし、フレーム枠体220に取り付けられるものであっても良い。作業スペース確保装置1がフレーム枠体220に取り付けられる場合、フレーム枠体220を構成するフレーム部材221を作業スペース確保装置1のベース部材5として利用するものであっても構わない。
【0109】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1乃至第6実施形態のいずれかにおいて説明したものと同様である。
【0110】
(第8実施形態)
次に本発明の第8実施形態について説明する。上記各実施形態では、吊設物Aとして空気調和機100を例示した。しかし、上述した作業スペース確保装置1は、空気調和機100以外の吊設物Aの近傍に作業スペースを確保する装置としても利用することができる。本実施形態では、空気調和機100以外の吊設物Aとしてケーブル配線用のラックを例示し、そのラックの近傍に作業スペースを確保するために作業スペース確保装置1を設置する形態を説明する。
【0111】
図20は、天井空間に配置されるケーブル配線用のラック180を示す図である。このラック180は、互いに平行な一対の壁部181,182の間にケーブル等を支持する棒状の支持部183が所定間隔で配置された構成を有する。一対の壁部181,182は、支持部183の両端から所定高さだけ上方に延びている。このようなラック180は、ケーブル等の配線方向に沿って配置され、一対の壁部181,182の内側にケーブル等を収容し、所定間隔で配置された複数の支持部183でケーブル等を支持する。
【0112】
また、ラック180は、上階床スラブから垂下する複数の吊りボルト200によって所定高さ位置に支持される。例えば、ラック180の下面側には一対の壁部181,182を横断するように支持金具185が配置され、その支持金具185の両端に吊りボルト200の下端が接続されることによって、ラック180は、天井空間の所定高さ位置に支持される。
【0113】
上記のような構成において、例えばラック180の一方の側面184の近傍に作業スペースを確保したい場合、作業スペース確保装置1は、
図20に示すように、ラック180を天井空間に支持する吊りボルト200に取り付けられる。具体的には、所定間隔で配置された2つの支持金具185を支持する4本の吊りボルト200のうち、作業スペースを確保すべき側面184に近い位置にある2本の吊りボルト200に作業スペース確保装置1が取り付けられる。尚、本実施形態では、第2実施形態で説明した作業スペース確保装置1を、ラック180を支持する吊りボルト200に取り付けた例を示しているが、これに限られるものではなく、上記各実施形態で説明した作業スペース確保装置1のいずれを取り付けても良い。
【0114】
図21は、作業スペース確保装置1のシート部材4を展開した状態を示す図である。本実施形態においても、作業スペース確保装置1は、シート部材4を展開させると、シート部材4は、吊設物Aであるラック180の側面184の近傍の上方を覆うことができる。シート部材4がラック180の側面184の近傍の上方を覆うことにより、ラック180に収容されたケーブル等の対するメンテナンス作業を行う際の作業スペースに別の吊りボルトなどの障害物が設置されてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0115】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1乃至第7実施形態のいずれかにおいて説明したものと同様である。また、本実施形態では、吊設物Aとしてケーブル配線用のラック180を例示した。しかし、作業スペース確保装置1が作業スペースを確保するために取り付けられる吊設物Aは、ラック180に限られるものではない。例えば、吊設物Aは、ダクト、照明器具、天井下地材のいずれかであっても良いし、更にそれら以外の物であっても構わない。
【0116】
(変形例)
以上、本発明に関する好ましい実施形態をいくつか説明したが、本発明は、上記各実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0117】
例えば、上記実施形態において吊設物Aとして例示した空気調和機100は、空気調和機本体110の前後方向に吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130が接続された構成であった。しかし、空気調和機100は、吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130が接続されたものに限られない。例えば、空気調和機100は、空気調和機本体110のみで構成されるものであっても良いし、空気調和機本体110の一方側にのみチャンバが装着されたものであっても構わない。
【0118】
また、上記実施形態において吊設物Aとして例示した空気調和機100が隠蔽式の空気調和機である場合を説明した。しかし、上述した作業スペース確保装置1を適用可能な空気調和機100は、必ずしも隠蔽式の空気調和機に限られない。例えば空気調和機100は、天井カセット形の空気調和機であっても良いし、また天井ビルトイン形の空気調和機であっても良い。
【0119】
また、上記実施形態では、シート部材4が例えば布帛や樹脂製シートなどで構成される柔軟性のあるシート部材である例を説明した。しかし、シート部材4は、布帛や樹脂製シートに限られるものではない。例えば、シート部材4は、段ボールシートなどのようにコシのあるシート材で形成されるものであっても良く、折り畳み可能なものであれば良い。ただし、この場合においても、シート部材4は、不燃性であることが好ましく、例えば不燃性塗料などを塗布したものを用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0120】
1,1a,1b…作業スペース確保装置、2…保持部材、2a,2b,2c,2d…棒状体、4…シート部材、5…ベース部材、11…付勢部材、13…ストッパー、100…空気調和機(吊設物)、112…側面、180…ラック(吊設物)。