特開 2023-81497 シリンダ錠及びドア

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023081497

(43)【公開日】2023-06-13

(54)【発明の名称】シリンダ錠及びドア

(51)【国際特許分類】

   E05B 27/06 20060101AFI20230606BHJP

【ＦＩ】

E05B27/06

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021195253

(22)【出願日】2021-12-01

(71)【出願人】

【識別番号】504163612

【氏名又は名称】株式会社ＬＩＸＩＬ

(74)【代理人】

【識別番号】100106002

【弁理士】

【氏名又は名称】正林 真之

(74)【代理人】

【識別番号】100165157

【弁理士】

【氏名又は名称】芝 哲央

(74)【代理人】

【識別番号】100126000

【弁理士】

【氏名又は名称】岩池 満

(74)【代理人】

【識別番号】100160794

【弁理士】

【氏名又は名称】星野 寛明

(72)【発明者】

【氏名】秋山 史記

(72)【発明者】

【氏名】三橋 隆史

(57)【要約】

【課題】ドライバーピンを短くした場合であってもピン孔内部でのドライバーピンの転倒を防止できるシリンダ錠を提供すること。
【解決手段】外筒と、外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、外筒及び内筒には、鍵穴に連通しドライバーピンが挿通可能な孔部が形成され、ドライバーピンの外筒側の径は、ドライバーピンの内筒側の径よりも大きい、シリンダ錠。ドライバーピンの外筒側の端部には、軸方向に所定の長さで一定の径を有する姿勢保持領域が設けられることが好ましい。
【選択図】図６

【特許請求の範囲】

【請求項1】

外筒と、前記外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、
前記外筒及び内筒には、鍵穴に連通しドライバーピンが挿通可能な孔部が形成され、
前記ドライバーピンの前記外筒側の径は、前記ドライバーピンの前記内筒側の径よりも大きい、シリンダ錠。

【請求項2】

前記ドライバーピンの前記外筒側の端部から、軸方向に所定の長さで一定の径を有する姿勢保持領域が設けられ、
前記ドライバーピンの前記内筒側には、連通領域が設けられ、
前記姿勢保持領域と、前記連通領域との間には、段差部が形成される、請求項１に記載のシリンダ錠。

【請求項3】

前記姿勢保持領域の、軸方向の長さと径の大きさとの比である、軸方向長さ／径は、０．３以上である、請求項２に記載のシリンダ錠。

【請求項4】

前記外筒が前記内筒と篏合する箇所の長さＬ２は、前記内筒が前記外筒と篏合する箇所の長さＬ１よりも短く、前記Ｌ１とＬ２との差分に相当するクリアランスが形成され、
前記ドライバーピンの前記外筒側の径と、前記ドライバーピンの前記内筒側の径との差は、前記クリアランス以上の長さである、請求項１～３のいずれかに記載のシリンダ錠。

【請求項5】

請求項１～４のいずれかに記載のシリンダ錠を備えるドア。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、シリンダ錠及びドアに関する。

【背景技術】

【0002】

従来、住宅等の扉に設置される、シリンダ錠が知られている。シリンダ錠は、外筒と、外筒に回動可能に篏合する内筒と、内筒の回動を規制するドライバーピン、及びタンブラーピンと、を有する。シリンダ錠に対応する解錠鍵には、タンブラーピンとの当接部に凹凸が形成されている。シリンダ錠の鍵穴に対して解錠鍵を挿入し、ドライバーピン、及びタンブラーピンの接触面を、内筒の外周面であるシアーラインに揃えることで、内筒が回動可能になる（例えば、特許文献１参照）。これによって、シリンダ錠の施解錠が行われる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開平９－１７０３６３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところで、省スペース、製造コストの低減等を目的としてシリンダ錠をコンパクト化するためには、ドライバーピンの全長を短くすることが必要である。一方で、ドライバーピンとドライバーピンが収容される外筒のピン孔との間には一定のクリアランスが設けられている。従って、ドライバーピンの全長を単に短くすると、ピン孔の内部でドライバーピンが転倒するという事態が生じる可能性がある。そこで、上記の事態を回避するため、上記ドライバーピンとピン孔との間のクリアランスを狭くすることも考えられる。しかし、上記の手段では、外筒のピン孔と内筒のピン孔との間の位置ズレに起因して、内筒のピン孔にドライバーピンが挿入されない可能性がある。内筒は外筒に対して回動可能に固定されるため、上記外筒のピン孔と内筒のピン孔との間の位置ズレを完全に無くすことは不可能である。

【0005】

本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、ドライバーピンを短くした場合であってもピン孔内部でのドライバーピンの転倒を防止できるシリンダ錠を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示は、外筒と、前記外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、前記外筒及び内筒には、鍵穴に連通しドライバーピンが挿通可能な孔部が形成され、前記ドライバーピンの前記外筒側の径は、前記ドライバーピンの前記内筒側の径よりも大きい、シリンダ錠に関する。

【図面の簡単な説明】

【0007】

【図1】本実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す斜視図である。

【図2】本実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す分解斜視図である。

【図3】本実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す断面斜視図である。

【図4】本実施形態に係る内筒の側面図である。

【図5】本実施形態に係る外筒の側面図である。

【図6】本実施形態に係るドライバーピン、及びタンブラーピンの正面図である。

【図7】本実施形態に係るシリンダ錠を備えるドアの正面図である。

【発明を実施するための形態】

【0008】

＜シリンダ錠＞
本実施形態に係るシリンダ錠１０は、図１に示すように、施錠装置１において、シリンダ錠１０を施解錠可能な解錠鍵５と共に用いられる。シリンダ錠１０は、図１及び図２に示すように、内筒２と、外筒３と、装飾部材４と、ドライバーピン６１と、タンブラーピン６２と、を有する。内筒２は、固定された外筒３に対して回動可能に篏合する。

【0009】

（内筒）
内筒２は、図２に示すように、外筒３に回動可能に篏合する略円筒状部材である。内筒２の材質は特に限定されないが、例えば、真鍮等の金属により構成される。内筒２は、摺動面である外周面２０が、外筒３の内周面３０に当接して外筒３と篏合する。内筒２には、内筒２の軸方向に沿って、解錠鍵５が挿入可能な鍵穴２１が形成される。

【0010】

内筒２の外周面２０には、図２に示すように、鍵穴２１に連通するピン孔２２が複数形成される。複数のピン孔２２は、ドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２の少なくとも一部が挿脱可能な孔である。複数のピン孔２２は、それぞれ円筒形状の内周面２２ａを有する。本実施形態に係るピン孔２２は、内筒２の軸方向に沿って複数列のピン孔２２が形成されると共に、上記複数列のピン孔２２が内筒２の周方向において複数組形成される。

【0011】

図４に示すように、内筒２の解錠鍵５が挿入される側の端面には、フランジ部２３が設けられている。フランジ部２３は、内筒２と一体に形成されていてもよく、内筒２とは別部材であってもよい。内筒２の解錠鍵５が挿入される側の逆側の端面付近には、一対の固定ピン７が篏合可能な溝部２４が設けられている。本実施形態において、溝部２４は内筒２の周方向に沿って設けられる溝部である。フランジ部２３と、溝部２４に篏合する固定ピン７との間には、図４に示すように、側面視で幅Ｌ１を有する凹部が形成される。上記凹部に対して、外筒３の一部が篏合することで、内筒２は、外筒３に対して回動可能に篏合する。内筒２と外筒３の篏合状態については後段で詳述する。

【0012】

（外筒）
外筒３は、図２に示すように、内側に形成される孔部３１に対して内筒２が篏合可能な略円筒状部材である。外筒３の材質は特に限定されないが、例えば、内筒２と同様に、真鍮等の金属により構成される。外筒３は、回動不能に固定されている。外筒３は、摺動面である内周面３０が、内筒２の外周面２０に当接して内筒２と篏合する。

【0013】

外筒３には、外筒３の軸方向に沿って、内筒が篏合可能な孔部３１が形成される。外筒３の外周面には、孔部３１に連通するピン孔３２が複数形成される。複数のピン孔３２は、ドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２の少なくとも一部が挿脱可能な孔である。複数のピン孔３２は、それぞれ円筒形状の内周面３２ａを有する。複数のピン孔２２と、複数のピン孔３２とは、内筒２を外筒３に対して回動させ、所定の位置とした際に、ドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２の少なくとも一部が挿脱可能であるように互いに連通する。

【0014】

図５に示すように、外筒３の外周面には、一対の固定ピン７が挿通可能な一対の孔部３３が形成される。孔部３３は、ピン孔３２と同様に、孔部３１に連通する孔部である。孔部３３は、図５に示す外筒３の一方側の端面３１ａとは逆側の端面付近に設けられる。

【0015】

内筒２と外筒３との篏合状態について以下に説明する。図２に示す位置関係で、内筒２の、フランジ部２３が設けられる端面とは逆側の端面側から、外筒３を差し込むことで、図５に示す外筒３の一方の端面３１ａと、フランジ部２３の内側の端面２３ａとが当接する。この状態で、一対の固定ピン７を孔部３３に挿通すると、図４に示すように、一対の固定ピン７は内筒２に形成された溝部２４に篏合する。これによって、内筒２と外筒３とが篏合する。この際に、内筒２は外筒３に対して回動可能である必要がある。このため、図５に示す、外筒３に固定ピン７を挿通した状態における端面３１ａと固定ピン７の端部との間の長さＬ２は、上記凹部の幅Ｌ１よりも僅かに小さく、このＬ１とＬ２との差分だけクリアランスを有している。従って、内筒２と外筒３とを篏合させ、解錠鍵５を鍵穴２１に対して抜き差しする際に、上記クリアランスの分だけピン孔２２とピン孔３２の位置にズレが生じる場合がある。

【0016】

（装飾部材）
装飾部材４は、図１に示すように、シリンダ錠１０の正面である、内筒２及び外筒３の鍵穴２１側の面を被覆して装飾する部材である。装飾部材４は、鍵穴２１と連通するように配置される孔部を有する。装飾部材４は、特に限定されないが、金属等により構成される。装飾部材４の表面には、意匠性を高めるためのメッキ層等が形成されていてもよい。装飾部材４により、内筒２及び外筒３は殆ど外部から視認不能になる。装飾部材４に代えて、内筒２及び外筒３の少なくとも正面部を、メッキ層の形成等により装飾してもよい。

【0017】

（ドライバーピン、タンブラーピン）
ドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２は、ピン孔２２及びピン孔３２に摺動可能に収容される、略円柱形状の部材である。タンブラーピン６２は、鍵穴２１側に配置されるピンであり、図６に示すように、解錠鍵５と当接する先端部６２ｂは丸みを帯びた形状を有し、ドライバーピン６１と当接する端部には拡径部６２ａが設けられている。ドライバーピン６１は一方の端部でタンブラーピン６２と当接し、他方の端部は付勢部材（図示せず）と当接している。図２では一部図示を省略して一組のドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２のみを図示しているが、ドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２は、複数組存在し、複数組のピン孔２２及びピン孔３２に収容される。

【0018】

本実施形態において、ドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２は、円形の鍵穴２１の軸方向に６列配置される。ドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２の、鍵穴２１の軸方向の配置数は６列には限定されず、例えば３列以上の任意の数とすることができる。

【0019】

ドライバーピン６１とタンブラーピン６２とは、図６に示すように、それぞれドライバーピン６１のテーパー部６１ｂ１と、タンブラーピン６２のテーパー部６２ａ１とで当接している。本実施形態において、内筒２及び外筒３は略円筒形状であることから、シアーラインＳＬは内筒２の外周面２０（外筒３の内周面３０）に沿って湾曲している。従って、仮にドライバーピン６１とタンブラーピン６２との当接部を平面状にした場合、内筒２を解錠鍵５と同調回転させる際に、当接部とシアーラインＳＬの形状が合わず、同調回転させることができない。このため、ドライバーピン６１とタンブラーピン６２との当接部に上記テーパー部を設けることで、内筒２を解錠鍵５と同調回転させることができる。本実施形態において、テーパー部６１ｂ１及びテーパー部６２ａ１の頂部は一部平面状となっている。

【0020】

［ドライバーピン］
ドライバーピン６１は、鍵穴２１側に向けて付勢部材（図示せず）により付勢されている。図３に示すように、鍵穴２１に解錠鍵５が挿入されていない場合には、ドライバーピン６１は内筒２と外筒３との間に位置しており、これによって、内筒２の回動が規制される。鍵穴２１に解錠鍵５を挿入した状態で、ドライバーピン６１とタンブラーピン６２との接触面が内筒２と外筒３との接触面であるシアーラインＳＬと一致するように、各ドライバーピン６１及びタンブラーピン６２の長さ、並びに解錠鍵５の表面に形成される凹凸が設定される。ドライバーピン６１とタンブラーピン６２との接触面がシアーラインＳＬに揃った状態で解錠鍵５を回転させることで、内筒２が解錠鍵５と同調回転する。これによって、例えば扉のデッドボルトを出し入れし、シリンダ錠１０の施解錠を行うことができる。

【0021】

図６に示すように、ドライバーピン６１の外筒３側の径Ｌ４１は、ドライバーピン６１の内筒２側の径Ｌ５よりも大きい。そして、径Ｌ４１とピン孔３２の径Ｌ３との間のクリアランスを、従来よりも小さくすることで、ドライバーピン６１の全長を短くした場合であっても、ドライバーピン６１がピン孔３２内で転倒することを防止できる。ここで、仮にドライバーピン６１の径の大きさを一定とし、かつピン孔３２の径Ｌ３との間のクリアランスを従来よりも小さくした場合について述べる。この場合、ドライバーピン６１がピン孔３２内で転倒すること自体は防止できるが、上記ピン孔２２とピン孔３２の位置ズレに起因して、ピン孔３２に収容されたドライバーピン６１が、ピン孔２２に挿通されないという事態が生じ得る。一方で、本開示におけるドライバーピン６１の内筒２側の径Ｌ５は、外筒３側の径Ｌ４１よりも小さくなっているため、上記転倒防止の効果を得ながら、かつ、ドライバーピン６１をピン孔２２に挿通させることができる。

【0022】

本実施形態において、ドライバーピン６１は、姿勢保持領域６１ａと、連通領域６１ｂと、を有する。姿勢保持領域６１ａは、外筒３側に配置される領域であり、連通領域６１ｂは、内筒２側に配置される領域である。

【0023】

姿勢保持領域６１ａは、図６に示すように、側面視で略直方形状を有し、ドライバーピン６１の外筒３側の端部から、軸方向に所定の長さＬ４２だけ、一定の径Ｌ４１を有する領域であることが好ましい。即ち、姿勢保持領域６１ａと連通領域６１ｂとの間には、段差６１ｃが設けられることが好ましい。これによって、ドライバーピン６１がピン孔３２内で転倒することを好ましく防止できる。上記以外に、姿勢保持領域６１ａは、ドライバーピン６１の外筒３側に配置される端部が最大の径を有しており、そこから内筒２側に向けて徐々に径が小さくなるテーパー形状を有していてもよい。

【0024】

姿勢保持領域６１ａが、上記のようにドライバーピン６１の外筒３側の端部から、軸方向に所定の長さＬ４２だけ、一定の径Ｌ４１を有する領域である場合、姿勢保持領域６１ａの軸方向の長さＬ４２と、径の大きさＬ４１との比である、軸方向長さ／径は、０．３以上であることが好ましい。これによって、ドライバーピン６１がピン孔３２内で転倒することを防止できると共に、ドライバーピン６１の全長を短くすることができる。軸方向長さ／径は、ドライバーピン６１がピン孔３２内で転倒することを確実に防止する観点からは、０．５以上であることが好ましい。

【0025】

連通領域６１ｂは、ドライバーピン６１の内筒２側の端部から、軸方向に所定の長さだけ、一定の径Ｌ５を有する領域である。連通領域６１ｂの径Ｌ５は、姿勢保持領域６１ａの径の大きさＬ４１よりも小さい。連通領域６１ｂによって、解錠鍵５を鍵穴２１に対して抜き差しする際に、ピン孔２２とピン孔３２の位置にズレが生じた場合であっても、ドライバーピン６１をピン孔２２に対して挿通させることができる。

【0026】

姿勢保持領域６１ａの径の大きさＬ４１が、ピン孔３２の孔径Ｌ３とほぼ等しい場合、姿勢保持領域６１ａの径Ｌ４１と連通領域６１ｂの径Ｌ５との差は、内筒２と外筒３との間のクリアランスに相当する、Ｌ１とＬ２との差以上であることが好ましい。上記クリアランスは、ピン孔２２とピン孔３２のズレの大きさの最大値に相当する。従って、Ｌ５とＬ４１との差を、上記クリアランス以上とすることで、ピン孔２２とピン孔３２にズレが生じた場合であっても、連通領域６１ｂをピン孔２２に対して挿通させることができる。

【0027】

姿勢保持領域６１ａ及び連通領域６１ｂは、別体として構成されていてもよいが、加工精度を確保する観点から、一体として形成されることが好ましい。

【0028】

［解錠鍵］
解錠鍵５は、シリンダ錠１０を施解錠可能な解錠鍵である。本実施形態において、解錠鍵５の鍵穴２１への挿入部は、円柱形状を有している。図１における解錠鍵５はブランクキーを図示している。実際に解錠鍵５がシリンダ錠１０に適用される際には、挿入部の外周表面に、シリンダ錠１０の各ドライバーピン６１、及びタンブラーピン６２の長さ及び配置に応じた凹部が形成される。

【0029】

＜ドア＞
本実施形態に係るドア１００は、図７に示すように、建物躯体のドア開口部Ａに開閉可能に納められる。ドア１００は、戸先側に、ドア１００の開閉操作用のハンドル９と、ハンドル９の上下にそれぞれ配置される一対のシリンダ錠１０と、を有する。ドア１００は、例えば、玄関ドアとして用いられる。

【0030】

以上、本開示の実施形態に係るシリンダ錠及びドアについて説明した。しかし、本開示は上記の実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。

【0031】

上記実施形態において、連通領域６１ｂを、ドライバーピン６１の内筒２側の端部から、軸方向に所定の長さだけ、一定の径Ｌ５を有する領域であるものとして説明した。上記に限定されない。連通領域６１ｂは、テーパー形状等、軸方向において径の大きさが異なる領域であってもよい。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】