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  • 特開-シリンダ錠及びドア 図1
  • 特開-シリンダ錠及びドア 図2
  • 特開-シリンダ錠及びドア 図3
  • 特開-シリンダ錠及びドア 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081499
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】シリンダ錠及びドア
(51)【国際特許分類】
   E05B 17/20 20060101AFI20230606BHJP
   E05B 27/06 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
E05B17/20 C
E05B27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195255
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】秋山 史記
(72)【発明者】
【氏名】三橋 隆史
(57)【要約】
【課題】鍵穴に回転工具を差し込むことによる不正解錠を防ぐことが可能なシリンダ錠を提供すること。
【解決手段】解錠鍵が挿入される鍵穴の内奥部に、鍵穴の軸を中心に回転可能な回転部材が配置される、シリンダ錠。鍵穴に差し込まれた回転工具が回転部材に当接し、回転工具と回転部材とが同調回転する。即ち、回転工具が空転するため、回転工具は回転部材を容易に破壊できない。これによって、鍵穴の内奥部の破壊を防ぐことができる。回転部材は、複数配置されることが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解錠鍵が挿入される鍵穴の内奥部に、前記鍵穴の軸を中心に回転可能な回転部材が配置される、シリンダ錠。
【請求項2】
前記鍵穴の軸方向に沿って、3列以上のドライバーピン、及びタンブラーピンが配置される、請求項1に記載のシリンダ錠。
【請求項3】
前記回転部材は、複数配置される、請求項1又は2に記載のシリンダ錠。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のシリンダ錠を備えるドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンダ錠及びドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の扉に設置される、シリンダ錠が知られている。シリンダ錠は、外筒と、外筒に回動可能に篏合する内筒と、内筒の回動を規制するドライバーピン、及びタンブラーピンと、を有する。シリンダ錠に対応する解錠鍵には、タンブラーピンとの当接部に凹凸が形成されている。シリンダ錠の鍵穴に対して解錠鍵を挿入し、ドライバーピン、及びタンブラーピンの接触面を、内筒の外周面であるシアーラインに揃えることで、内筒が回動可能になる。これによって、シリンダ錠の施解錠が行われる。
【0003】
住宅用のシリンダ錠は、法律により防犯性能表示が義務付けられている。その一つに、ドリル等の回転工具に対する耐破壊解錠性能がある。回転工具に対する耐破壊解錠に関する技術としては、例えば、シリンダ錠の先端部に自由に回転する空転カバーを設け、シリンダを、その内筒の部分から破壊するのを防止する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-9090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術のように、従来の耐破壊解錠に関する技術は、外筒や内筒自体が破壊されることを防止する技術である。一方で、鍵穴に直接ドリルを差し込み、鍵穴の奥を破壊し、内筒の回動に連動して扉の施解錠を行うデッドボルト等の部材を破壊又は操作可能にするような不正解錠に対しては、何ら対策がなされていないのが現状だった。従来のシリンダ錠は、鍵穴が小径であることに対して鍵穴の奥行きが長く、鍵穴に直接、細径のドリルを差し込んでも、ドリルの先端が折れてしまう蓋然性が高いことから、このような不正解錠を防ぐ対策は考慮されていなかった。しかし、近年、省スペース、製造コストの低減等を目的としてシリンダ錠をコンパクト化する要請がある。このため、従来よりも鍵穴の奥行きが短いシリンダ錠に対して、上記不正解錠を防ぐ対策が求められている。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、鍵穴に回転工具を差し込むことによる不正解錠を防ぐことが可能なシリンダ錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、解錠鍵が挿入される鍵穴の内奥部に、前記鍵穴の軸を中心に回転可能な回転部材が配置される、シリンダ錠に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す分解斜視図である。
図3】本実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す断面斜視図である。
図4】本実施形態に係るシリンダ錠を備えるドアの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<シリンダ錠>
本実施形態に係るシリンダ錠10は、図1に示すように、施錠装置1において、シリンダ錠10を施解錠可能な解錠鍵5と共に用いられる。シリンダ錠10は、図2に示すように、内筒2と、外筒3と、装飾部材41及び42と、ハウジング43と、ドライバーピン61と、タンブラーピン62と、回転部材7と、を有する。内筒2は、固定された外筒3に対して回動可能に篏合する。
【0010】
(内筒)
内筒2は、図2に示すように、外筒3に回動可能に篏合する略円筒状部材である。内筒2の材質は特に限定されないが、例えば、真鍮等の金属により構成される。内筒2は、摺動面である外周面20が、外筒3の内周面30に当接して外筒3と篏合する。内筒2には、内筒2の軸方向に沿って、解錠鍵5が挿入可能な鍵穴21が形成される。本実施形態において、鍵穴21は円形の断面形状を有する。
【0011】
内筒2の外周面20には、図2に示すように、鍵穴21に連通するピン孔22が複数形成される。複数のピン孔22は、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の少なくとも一部が挿脱可能な孔である。複数のピン孔22は、それぞれ円筒形状の内周面22aを有する。本実施形態に係るピン孔22は、内筒2の軸方向に沿って複数列のピン孔22が形成されると共に、上記複数列のピン孔22が内筒2の周方向において複数組形成される。
【0012】
図3に示すように、鍵穴21の内部には、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62が配置される空間と、鍵穴21に挿入された解錠鍵5の先端部と当接する一対のピン91が配置される。鍵穴21の最奥部には、内筒2と連動して同調回転するドライバ81が設けられている。ドライバ81は、内筒2に設けられた溝部(図示せず)と係合し、かつ止め板82によって脱離不能に固定される。ドライバ81により、扉のデッドボルト等の締まり機構に回転力が伝達され、扉の施解錠が行われる。
【0013】
(外筒)
外筒3は、図2に示すように、内側に形成される孔部31に対して内筒2が篏合可能な略円筒状部材である。外筒3の材質は特に限定されないが、例えば、内筒2と同様に、真鍮等の金属により構成される。外筒3は、回動不能に固定されている。外筒3は、摺動面である内周面30が、内筒2の外周面20に当接して内筒2と篏合する。
【0014】
外筒3には、外筒3の軸方向に沿って、内筒が篏合可能な孔部31が形成される。外筒3の外周面には、孔部31に連通するピン孔32が複数形成される。複数のピン孔32は、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の少なくとも一部が挿脱可能な孔である。複数のピン孔32は、それぞれ円筒形状の内周面32aを有する。複数のピン孔22と、複数のピン孔32とは、内筒2を外筒3に対して回動させ、所定の位置とした際に、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の少なくとも一部が挿脱可能であるように互いに連通する。
【0015】
(装飾部材)
装飾部材41及び42は、図1に示すように、シリンダ錠10の正面である、内筒2及び外筒3の鍵穴21側の面を被覆して装飾する部材である。装飾部材41及び42は、鍵穴21と連通するように配置される孔部を有する。装飾部材41及び42は、特に限定されないが、金属等により構成される。装飾部材41及び42の表面には、意匠性を高めるためのメッキ層等が形成されていてもよい。装飾部材41及び42により、内筒2及び外筒3は殆ど外部から視認不能になる。装飾部材41及び42に代えて、内筒2及び外筒3の少なくとも正面部を、メッキ層の形成等により装飾してもよい。
【0016】
(ハウジング)
ハウジング43は、内筒2及び外筒3を収容すると共に、扉体等に固定する部材である。ハウジング43には、固定具を挿通させる孔部が設けられる。
【0017】
(ドライバーピン、タンブラーピン)
ドライバーピン61、及びタンブラーピン62は、ピン孔22及びピン孔32に摺動可能に収容される、略円柱形状の部材である。タンブラーピン62は、鍵穴21側に配置されるピンであり、図3に示すように、解錠鍵5と当接する先端部は丸みを帯びた形状を有している。ドライバーピン61は一方の端部でタンブラーピン62と当接し、他方の端部は付勢部材(図示せず)と当接している。図2では一部図示を省略して一組のドライバーピン61、及びタンブラーピン62のみを図示しているが、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62は、複数組存在し、複数組のピン孔22及びピン孔32に収容される。
【0018】
本実施形態において、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62は、円形の鍵穴21の軸方向に6列配置される。鍵穴21の断面形状が円形であることにより、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62を、鍵穴21の軸方向に沿って任意の列数で配置することができる。これによって、施錠装置1のセキュリティレベルを低下させることなく、内筒2及び外筒3の長さを短くすることができる。ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の、鍵穴21の軸方向の配置数は6列には限定されず、例えば3列以上であることが好ましい。ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の軸方向の列数を所定以上とするため、鍵穴21の径L2は、4mm以上であることが好ましい。
【0019】
(回転部材)
回転部材7は、図3に示すように、鍵穴21の内奥部であるピン91とドライバ81との間に配置される部材である。回転部材7は、鍵穴21の軸を中心に、左右いずれの方向に対しても回転可能な部材である。不正解錠を行おうとする人間が、ドリル等の回転工具を鍵穴21に挿入し、ドライバ81を攻撃しようとしても、ドライバ81の手前には、回転部材7があるので、回転部材7をまず破壊しなければならない。しかし、ドリル等の先端が回転部材7に押し当てられると、回転部材7は左右いずれの方向に対しても自由に回転するので、容易には回転部材7を破壊することができない。従って、回転部材7により、鍵穴21に回転工具を差し込むことによる不正解錠を防ぐことができる。
【0020】
回転部材7は、本実施形態において、所定の厚みを有する円柱形状を有する部材である。上記所定の厚み、とは、回転部材7が鍵穴21の内部で転倒しない程度の厚みを意味する。回転部材7の形状は、鍵穴21の軸を中心に、左右いずれの方向に対しても回転可能であれば上記円柱形状には限定されないが、鍵穴21と同様に断面形状が円形であることが好ましい。
【0021】
回転部材7を構成する材料は、所定以上の硬度を有している部材であればよく、特に限定されないが、硬度、摩擦力、加工性、入手性等の観点から金属であることが好ましい。金属以外の材料としては、プラスチック等であってもよい。
【0022】
回転部材7は、図3上、鍵穴21の径とほぼ同一の径を有しているが、これには限定されず、鍵穴21の内部で転倒しない程度であれば鍵穴21よりも小さい径を有していてもよい。これによって、鍵穴21の内部に回転部材7を鍵穴21の軸を中心に、左右いずれの方向に対しても回転可能に配置できる。更に、回転部材7を固定する部材を別に設けることなく、回転部材7を鍵穴21の内部に配置できる。従って、回転部材7は鍵穴21の軸方向に対する移動は別段規制されておらず、ピン91とドライバ81との間で移動が可能である。
【0023】
回転部材7は、複数配置されることが好ましい。円柱形状を有する回転部材7が単一である場合、ドリル等の先端が回転部材7に押し当てられた場合に、回転部材7と回転部材7の奥に配置される部材との間に発生する摩擦力により、回転部材7の回転が抑制され、回転部材7が破壊される可能性もあり得る。しかし、回転部材7を複数設けることにより、正面側の回転部材7は、奥側の回転部材7と広い面積で当接するので、回転部材7同士が滑りやすくなる。これによって、上記した回転部材7の回転が抑制されるという事態を簡易な構成で容易に回避できる。回転部材7を複数配置する場合、同様の円柱形状を有する回転部材7を複数枚配置することが好ましい。回転部材7を複数配置する場合の回転部材7の数は特に限定されない。
【0024】
[解錠鍵]
解錠鍵5は、シリンダ錠10を施解錠可能な解錠鍵である。本実施形態において、解錠鍵5の鍵穴21への挿入部は、円柱形状を有している。図1における解錠鍵5はブランクキーを図示している。実際に解錠鍵5がシリンダ錠10に適用される際には、挿入部の外周表面に、シリンダ錠10の各ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の長さ及び配置に応じた凹部が形成される。
【0025】
解錠鍵5の挿入部の形状を円柱形状として上記凹部を形成することで、従来の板状の鍵に対して凹凸を形成することで解錠鍵を作成する場合と比較して、加工時に鍵の変形が起こり難く、精度の高い形状を有する解錠鍵5を作成できる。これによって、同一サイズの解錠鍵5に対応するドライバーピン61、及びタンブラーピン62の軸方向に配置される列数を増加することができる。従って、同じセキュリティレベルを有するシリンダ錠であっても、内筒2及び外筒3の全長を短くし、設置スペースを低減することができる。
【0026】
解錠鍵5の先端には、鍵穴21の終端に設けられるピン91と篏合可能な凹部が設けられる。上記凹部とピン91とが篏合することで、解錠鍵5を、内筒2と同調回転させることができる。
【0027】
<ドア>
本実施形態に係るドア100は、図4に示すように、建物躯体のドア開口部Aに開閉可能に納められる。ドア100は、戸先側に、ドア100の開閉操作用のハンドル9と、ハンドル9の上下にそれぞれ配置される一対のシリンダ錠10と、を有する。ドア100は、例えば、玄関ドアとして用いられる。
【0028】
以上、本開示の実施形態に係るシリンダ錠及びドアについて説明した。しかし、本開示は上記の実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
図1
図2
図3
図4