(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081500
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】銅又は銅合金の加飾方法
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
C23C26/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195256
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】元矢 伸二
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AB06
4K044BB01
4K044BC09
4K044CA55
(57)【要約】
【課題】銅又は銅合金の表面に水中の溶存酸素により酸化銅皮膜を生成する銅又は銅合金の加飾方法において、溶存酸素量を所定値以上に増やすための処置や水温を高温にする処置が必要のない銅又は銅合金の加飾方法を提供する。
【解決手段】基材部11の表面に酸化銅皮膜12を生成する方法は、(1)基材部11を準備する工程と、(2)密閉可能な容器2を準備する工程と、(3)容器2に40°C以上60°C未満の温度の水3を導入する工程と、(4)基材部11を水3に浸漬する工程と、(5)容器2を密閉し容器2の内側の気相部4の圧力を大気圧から50kPa以下まで減圧する減圧工程と、(6)減圧工程を経た容器2の内側の気相部4の圧力を容器2の内側に大気圧の空気を導入することにより略大気圧まで復圧する復圧工程と、を含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の溶存酸素を利用して銅又は銅合金の表面に酸化銅皮膜を生成させる銅又は銅合金の加飾方法であって、
銅又は銅合金を準備する工程と、密閉可能な容器を準備する工程と、
該容器に40°C以上60°C未満の温度の水を導入する工程と、
前記銅又は銅合金を前記水に浸漬する工程と、
前記容器を密閉し前記容器内の気相部の圧力を大気圧から50kPa以下まで減圧する減圧工程と、
該減圧工程を経た前記容器内の前記気相部の圧力を前記容器内に大気圧の空気を導入することにより略大気圧まで復圧する復圧工程と、
を含む銅又は銅合金の加飾方法。
【請求項2】
請求項1において、前記減圧工程と前記復圧工程とをそれぞれ10回以上50回以下繰り返し行う銅又は銅合金の加飾方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記銅又は銅合金が浸漬された状態の前記水に超音波が印加される工程を含む銅又は銅合金の加飾方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記水にはNPb処理液が含まれている銅又は銅合金の加飾方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記容器に40°C以上50°C未満の温度の水を導入する銅又は銅合金の加飾方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記減圧工程において、前記容器内の気相部の圧力を大気圧から30kPa以下まで減圧する銅又は銅合金の加飾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅又は銅合金の加飾方法に関する。詳しくは、水中の溶存酸素を利用して銅又は銅合金の表面に酸化銅皮膜を生成させる銅又は銅合金の加飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅又は銅合金の表面に黒色の酸化銅皮膜を生成する方法として、銅又は銅合金を亜塩素酸ソーダとカセイソーダの混合水溶液等の酸化処理液中に浸漬して銅又は銅合金の表面に薄い酸化銅皮膜を生成させる方法が知られている。かかる方法による場合、使用する酸化処理液の廃液処理にコストがかかるという問題がある。一方、特許文献1には、酸化処理液を用いない方法として、水中の溶存酸素により酸化銅皮膜を生成する方法が開示されている。特許文献1に開示される技術においては、酸素を溶存させた水中に、銅又は銅合金を浸漬し、この水中の溶存酸素により銅又は銅合金の表面に酸化銅被膜を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術においては、酸化反応を促進するために水中の溶存酸素量を所定値以上に増やすための処置や、水温を60°C以上に高めるための処置が必要であるといった問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、銅又は銅合金の表面に水中の溶存酸素により酸化銅皮膜を生成する銅又は銅合金の加飾方法において、溶存酸素量を所定値以上に増やすための処置や水温を高温にする処置を必要としない簡便な銅又は銅合金の加飾方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、水中の溶存酸素を利用して銅又は銅合金の表面に酸化銅皮膜を生成させる銅又は銅合金の加飾方法であって、銅又は銅合金を準備する工程と、密閉可能な容器を準備する工程と、該容器に40°C以上60°C未満の温度の水を導入する工程と、前記銅又は銅合金を前記水に浸漬する工程と、前記容器を密閉し前記容器内の気相部の圧力を大気圧から50kPa以下まで減圧する減圧工程と、該減圧工程を経た前記容器内の前記気相部の圧力を前記容器内に大気圧の空気を導入することにより略大気圧まで復圧する復圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、容器内の気相部の圧力を大気圧から50kPa以下まで減圧することによって水中の溶存酸素を気化させ、銅又は銅合金の表面に酸化銅被膜を生成させる。これによって、銅又は銅合金の表面に水中の溶存酸素により酸化銅皮膜を生成するに当たって、銅又は銅合金を浸漬する水に対して溶存酸素量を所定値以上に増やすための処置や水温を高温にする処置を施す必要がないので工程の簡便化が図れる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記減圧工程と前記復圧工程とをそれぞれ10回以上50回以下繰り返し行うことを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、溶存酸素による酸化銅皮膜の生成がより確実に行われる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記銅又は銅合金が浸漬された状態の前記水に超音波が印加される工程を含むことを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、超音波の印加により気化した溶存酸素が銅合金の表面に接触するのが促進されるのでより効率的に酸化銅皮膜を生成することができる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第1発明ないし上記第3発明のいずれかにおいて、前記水にはNPb処理液が含まれていることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、酸化銅皮膜を生成させる時間を短縮することができる。
【0014】
本発明の第5発明は、上記第1発明ないし上記第4発明のいずれかにおいて、前記容器に40°C以上50°C未満の温度の水を導入することを特徴とする。
【0015】
第5発明によれば、水温をさらに常温に近い低温で酸化銅皮膜を生成させることができる。
【0016】
本発明の第6発明は、上記第1発明ないし上記第5発明のいずれかにおいて、前記減圧工程において、前記容器内の気相部の圧力を大気圧から30kPa以下まで減圧することを特徴とする。
【0017】
第6発明によれば、酸化銅皮膜を生成させる時間をさらに短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の銅又は銅合金の加飾方法の適用対象の一例である水栓部材を示す図である。
【
図2】本発明の銅又は銅合金の加飾方法の実施に使用する装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について
図1及び
図2を用いて説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態は水栓金具の一部品である水栓部材1に適用されることができる。水栓部材1は、銅又は銅合金の鋳造品である基材部11の表面を黒色の酸化銅皮膜12が覆った状態で形成されている。
【0021】
本実施形態による基材部11の表面に酸化銅皮膜12を生成する方法は、(1)基材部11を準備する工程と、(2)密閉可能な容器2を準備する工程と、(3)容器2に40°C以上60°C未満の温度の水3を導入する工程と、(4)基材部11を水3に浸漬する工程と、(5)容器2を密閉し容器2の内側の気相部4の圧力を大気圧から50kPa以下まで減圧する減圧工程と、(6)減圧工程を経た容器2の内側の気相部4の圧力を容器2の内側に大気圧の空気を導入することにより略大気圧まで復圧する復圧工程と、(7)減圧工程と復圧工程において水3に対して超音波を印加する工程と、を含んでいる。以下(1)~(7)の各工程について説明する。
【0022】
(1)基材部11を準備する工程において、基材部11は銅又は青銅や真鍮等の銅合金の鋳造品に必要に応じてねじ切り加工や表面研磨加工等を施して形成される。
【0023】
(2)密閉可能な容器2を準備する工程において、
図2に示すように、容器2は金属製で有底円筒状の形状をした本体部21と、本体部21の上部に開閉が可能に配設された蓋22と、を有している。本体部21は、底面部23と、側面部24と、を有し、側面部24の上端部に位置する開口部25の外周には径方向外側に延びるフランジ部26が形成されている。側面部24には、底面部23に近い側である下部に水3の水供給管27が配設され、開口部25に近い側の上部に内部の空気を吸引する空気吸引管28が配設されている。空気吸引管28は側面部24への取付け部と反対側の端部に図示しない真空ポンプが取付けられており、真空ポンプを作動させることで容器2内の空気を吸引できるようになっている。また、側面部24の下部には本体部21の内部に溜められた水3を加熱するヒータ5が配設されている。底面部23には、本体部21の内部に溜められた水3を下方に排出する排水管29が配設されている。また、底面部23の上側には本体部21の内部に溜められた水3に対して超音波を印加する超音波装置6が配設されている。本体部21のフランジ部26の上に蓋22の外周縁部が重ね合わされて載置されたとき開口部25が蓋22によって閉じられて容器2の内部が密閉状態とされるようになっている。容器2は、蓋22をした状態で内部の気圧を20kPa以下まで減圧しても変形しない強度を備えている。本体部21の内部に水3が溜められ、蓋22が取付けられたとき、水3の水面と蓋22の下面との間には気相部4が形成される。本体部21の内部に水3が溜められた状態で、基材部11が入れられた籠7が、基材部11を水3の中に浸漬した状態で本体部21に対し保持できるようになっている。
【0024】
(3)容器2に40°C以上60°C未満の温度の水3を導入する工程において、蓋22をしていない状態の本体部21の内部に水供給管27から水3を導入し、基材部11が入れられた籠7が、本体部21に対し保持された状態で、基材部11が水3の中に浸漬された状態となる程度とする。このとき、水3の中にNPb処理液等を入れて水3をアルカリ性にしておくと酸化銅皮膜12を生成させる時間を短縮することができる。この場合、水3の廃液処理が必要となるが、前述した銅又は銅合金を酸化処理液中に浸漬して銅又は銅合金の表面に酸化銅皮膜を生成させる方法における酸化処理液に比べてアルカリ水溶液の濃度を低くできるので廃液処理コストは小さく保つことができる。そして、必要に応じてヒータ5を作動させ水3の温度を40°C以上60°C未満にする。なお、NPb処理液とは、水栓等の金具における表面の鉛を除去し水への鉛溶出を低減するために用いる処理液のことである。
【0025】
(4)基材部11を水3に浸漬する工程において、基材部11が入れられた籠7を、基材部11が水3の中に浸漬された状態で本体部21に対し保持する。基材部11は複数であってかまわない。
【0026】
(5)容器2を密閉し容器2の内側の気相部4の圧力を大気圧から50kPa以下(望ましくは30kPa以下)まで減圧する減圧工程において、基材部11が入れられた籠7が本体部21に対し保持された状態で本体部21に蓋22を載置して真空ポンプを作動させ気相部4の空気を空気吸引管28から吸引する。空気の吸引は、気相部4の気圧が50kPa以下(望ましくは30kPa以下)になるまで行い、その状態で真空ポンプの作動を停止させて5~60秒間その気圧を保つ。これによって、水3の中の溶存酸素の一部が気化して基材部11の表面に接触することによって基材部11の表面を酸化させ基材部11の表面に酸化銅皮膜12を生成させる。
【0027】
(6)減圧工程を経た容器2の内側の気相部4の圧力を容器2の内側に大気圧の空気を導入することにより略大気圧まで復圧する復圧工程においては、(5)の減圧工程に引き続き、空気吸引管28に配設された図示しない開閉弁を開くことによって容器2内に空気を入れて気相部4の圧力を大気圧に戻し5~60秒間その気圧を保つ。
【0028】
(7)減圧工程と復圧工程において水3に対して超音波を印加する工程において、(5)の減圧工程と(6)の復圧工程を実施している間、超音波装置6を作動させて水3に超音波を印加する。これによって、水3の中の溶存酸素の一部が気化するのを活性化してより効率よく酸化銅皮膜12を生成させることができる。超音波装置6の作動による超音波の印加は必須のものではないが、充分な厚さの酸化銅皮膜12を生成させるのに印加することが望ましい。
【0029】
(5)の減圧工程と(6)の復圧工程は、それぞれ10回以上50回以下繰り返す。これによって、基材部11の表面には充分な厚さの酸化銅皮膜12が生成される。
【0030】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。本実施形態では、容器2内の気相部4の圧力を大気圧から50kPa以下まで減圧することによって水3の中の溶存酸素を気化させ、基材部11の表面に酸化銅皮膜12を生成させる。これによって、基材部11の表面に水3の中の溶存酸素により酸化銅皮膜12を生成するに当たって、基材部11を浸漬する水3に対して溶存酸素量を所定値以上に増やすための処置や水温を高温にする処置を施す必要がないので工程の簡便化が図れる。
【0031】
また、工程中の減圧工程と復圧工程とをそれぞれ10回以上50回以下繰り返し行うので、溶存酸素による酸化銅皮膜12の生成がより確実に行われる。さらに、基材部11が浸漬された状態の水3に超音波装置6の作動によって超音波が印加される工程を含むので、超音波の印加により気化した溶存酸素が基材部11の表面に接触するのが促進されることにより、より効率的に酸化銅皮膜12を生成することができる。
【0032】
加えて、水3の中にNPb処理液等を入れて水3をアルカリ性にしておくと酸化銅皮膜12を生成させる時間を短縮することができる。また、容器2に40°C以上50°C未満の温度の水を導入することによって、水温をさらに常温に近い低温で酸化銅皮膜を生成させることができる。さらに、減圧工程において、容器2内の気相部4の圧力を大気圧から30kPa以下まで減圧することにすれば、酸化銅皮膜12を生成させる時間をさらに短縮することができる。
【実施例0033】
(実施例1)
基材部11として、100×150×1mm(厚さ)の銅板を用いた。容器2として、内容積が480×610×620mmの洗浄槽を有する株式会社クリンビー製の真空エマルジョン洗浄機を用いた。真空ポンプは排気能力が90m3/Hの液風式真空ポンプを使用し、超音波装置6は25kHzで1000Wのブランソン社製のものを使用した。水3として、濃度69%の水酸化ナトリウム水溶液を60g/L、濃度25%のリン酸水溶液を4mL/L、ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム6.5g/L、を含有するNPb処理液を用いた。
【0034】
サンプルの作成は次のように行った。基材部11が入れられた籠7が、真空エマルジョン洗浄機の中に保持された状態で、基材部11が水3の中に浸漬された状態となる程度に水3を入れる。この状態でヒータ5を作動させ水3の温度を64°Cにする。真空エマルジョン洗浄機の蓋を閉じて真空ポンプを作動させ槽内の圧力を30kPaとしてその状態で5秒間保持する。次に真空ポンプの作動を停止して空気吸引管28に配設された図示しない開閉弁を開くことによって槽内に空気を入れて槽内の気相部4の圧力を大気圧に戻してその状態で5秒間保持する。この減圧と復圧のサイクルを15回繰り返した。この減圧と復圧のサイクルを繰り返す間中超音波装置6を作動させて水3に対して超音波を印加した。その後、表面に酸化銅皮膜12が生成された基材部11を取出し市水で30秒間洗浄したのち綿布で水分をふき取る。
【0035】
サンプルについて、酸化銅皮膜12が生成される前と酸化銅皮膜12が生成された後との色差ΔEを測定する。測定はコニカミノルタ株式会社製の分光測色機(CM-3600A)を用いて行った。測定条件は、反射モードで、正反射光処理SCI+SCE、測定径LAV25.4mmとし、解析条件は、視野2°、主光源昼光、とした。結果を表1に示す。
【0036】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に対して、水3の温度を46°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を20kPaとする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例3)
実施例3は、実施例1に対して、水3の温度を56°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を20kPaとする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0038】
(実施例4)
実施例4は、実施例1に対して、水3の温度を57°Cにする点でのみ異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例5)
実施例5は、実施例1に対して、水3の温度を57.5°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を40kPaとする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例6)
実施例6は、実施例1に対して、水3の温度を57.5°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を50kPaとする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例7)
実施例7は、実施例1に対して、水3の温度を55°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を20kPaとする点と、減圧時及び復圧時の保持時間を30秒とする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例8)
実施例8は、実施例1に対して、水3の温度を54.5°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を20kPaとする点と、減圧時及び復圧時の保持時間を60秒とする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例9)
実施例9は、実施例1に対して、水3の温度を55°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を20kPaとする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
比較例1は、実施例1に対して、水3の温度を35.5°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を20kPaとする点と、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
比較例2は、実施例1に対して、水3の温度を55.5°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を20kPaとする点と、減圧時及び復圧時の保持時間を1秒とする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(比較例3)
比較例3は、実施例1に対して、水3の温度を55.5°Cにする点と、減圧時の槽内の圧力を20kPaとする点と、減圧時及び復圧時の保持時間を3秒とする点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0047】
(比較例4)
比較例4は、実施例1に対して、水3の温度を58°Cにする点と、減圧及び復圧を行わず600秒浸漬して保持する点で、異なることを除いては、同様の方法によりサンプルを得た。このサンプルについても実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0048】
色の違いを表す色差ΔEの測定は、分光測色機(コニカミノルタ株式会社製で型式CM-3600A)を用いて行った。測定条件は、モード:反射、正反射光処理:SCI+SCE、測定径:LAV25.4mm、UV条件:100%FULL、UVカット:なし、とした。解析条件は、視野:2°、主光源:C、第2光源:なし、第3光源:なし、とした。判定基準は、次の通りとした。〇:比較例4(浸漬)より色差ΔEが大きいもの(20.1<、△:比較例4(浸漬)と色差ΔEが同等のもの(18.1~20.1)、×:比較例4(浸漬)より色差ΔEが小さいもの(<18.1)。ここで、〇と判断されたものが、従来技術で加飾されたものの色差ΔEと同等である。
【0049】
【0050】
表1から次の事項が読み取れる。(1)水3の温度は、45°C~60°Cで判定が〇になる。(2)減圧時の圧力は、20kPa~50kPaで判定が〇になる。(3)減圧時及び復圧時の保持時間は、5秒~60秒で判定が〇になる。(4)減圧-復圧の回数は、15回~30回で判定が〇になる。
【0051】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0052】
1.上記実施形態においては、(3)容器2に40°C以上60°C未満の温度の水3を導入する工程の後に(4)基材部11を水3に浸漬する工程を配置したが、これに限らず、基材部11を容器2内に配置したのちに容器2に40°C以上60°C未満の温度の水3を導入してもよい。
【0053】
2.上記実施形態においては、容器2内の水3は静水状態で減圧工程と復圧工程とを繰り返したが、これに限らず、水3を容器2内で撹拌しながら減圧工程と復圧工程とを繰り返すようにしてもよい。この場合、溶存酸素が基材部11の表面に接触するのが促進されることにより、より効率的に酸化銅皮膜12を生成することができる。