(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081553
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ形状測定装置、眼鏡レンズ加工装置、及び眼鏡レンズ形状測定プログラム
(51)【国際特許分類】
B24B 9/14 20060101AFI20230606BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20230606BHJP
G01B 5/20 20060101ALI20230606BHJP
G02C 13/00 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
B24B9/14 F
B24B49/10
G01B5/20 C
G02C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195347
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】内門 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】武市 教児
【テーマコード(参考)】
2F062
2H006
3C034
3C049
【Fターム(参考)】
2F062AA51
2F062BC80
2F062CC23
2F062CC27
2F062EE01
2F062FF02
2F062FF17
2F062FG07
2F062GG17
2F062HH01
2F062MM06
2H006DA05
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB92
3C034CA04
3C034CA13
3C034CB01
3C034DD07
3C049AA03
3C049AA14
3C049AA16
3C049AB01
3C049AB05
3C049AC02
3C049BB02
3C049BB06
3C049BB09
3C049BC01
3C049BC02
3C049CA02
3C049CB03
(57)【要約】
【課題】 眼鏡レンズの形状測定の時間短縮を図る。
【解決手段】 眼鏡レンズの形状を測定する眼鏡レンズ形状測定装置であって、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの前面及び後面の少なくとも一方のレンズ屈折面形状を測定する屈折面形状測定手段と、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズのレンズ外形形状を測定する外形形状測定手段と、屈折面形状測定手段と外形形状測定手段とを動作させ、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行う制御手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの形状を測定する眼鏡レンズ形状測定装置において、
レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの前面及び後面の少なくとも一方のレンズ屈折面形状を測定する屈折面形状測定手段と、
前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズのレンズ外形形状を測定する外形形状測定手段と、
前記屈折面形状測定手段と前記外形形状測定手段とを動作させ、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行う制御手段と、
を備えることを特徴とする眼鏡レンズ形状測定装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡レンズ形状測定装置において、
前記屈折面形状測定手段はレンズ屈折面に接触させる屈折面測定子を持ち、
前記外形形状測定手段は眼鏡レンズの周縁に接触させる周縁測定子を持ち、
前記制御手段は、前記屈折面測定子を眼鏡レンズの屈折面に接触させると共に前記周縁測定子を眼鏡レンズの周縁に接触させることで、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行うことを特徴とする眼鏡レンズ形状測定装置。
【請求項3】
請求項2の眼鏡レンズ形状測定装置において、
前記レンズ保持軸を軸回りに回転して眼鏡レンズを回転する回転手段と、
前記レンズ保持軸の軸方向に直交する所定方向に前記レンズ保持軸を移動する移動手段と、
玉型データを取得するデータ取得手段と、を備え
前記制御手段は、前記回転手段を制御して眼鏡レンズを回転し、前記玉型データに対応して前記屈折面測定子が眼鏡レンズの屈折面をトレースするように前記移動手段を制御すると共に、前記外形形状測定手段を動作させ、前記周縁測定子を眼鏡レンズの周縁に接触させることを特徴とする眼鏡レンズ形状測定装置。
【請求項4】
請求項3の眼鏡レンズ形状測定装置において、
前記外形形状測定手段は、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの径方向における前記周縁測定子の位置を検知する周縁測定子位置検知手段を備え、
前記制御手段は、前記周縁測定子位置検知手段の検知結果、前記移動手段の移動データ及び前記回転手段の回転データに基づき、眼鏡レンズのレンズ外形形状を取得することを特徴とする眼鏡レンズ形状測定装置。
【請求項5】
請求項2~4の何れかの眼鏡レンズ形状測定装置において、
前記屈折面形状測定手段と前記外形形状測定手段とは、レンズ屈折面形状及びレンズ外形形状が同時に動作されたときに互いに干渉しない位置に配置されていることを特徴とする眼鏡レンズ形状測定装置。
【請求項6】
眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置であって、請求項1~5の何れかの眼鏡レンズ形状測定装置を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項7】
レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの前面及び後面の少なくとも一方のレンズ屈折面形状を測定する屈折面形状測定手段と、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズのレンズ外形形状を測定する外形形状測定手段と、を備える眼鏡レンズ形状測定装置で実行される眼鏡レンズ形状測定プログラムであって、
眼鏡レンズ形状測定装置の制御ユニットによって実行されることで、
前記屈折面形状測定手段と前記外形形状測定手段とを動作させ、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行う制御ステップを、眼鏡レンズ形状測定装置に実行させることを特徴とする眼鏡レンズ形状測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズの形状を測定する眼鏡レンズ形状測定装置、眼鏡レンズの眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ加工装置、及び眼鏡レンズの形状を測定する眼鏡レンズ形状測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズ形状測定装置としては、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズのレンズ屈折面に屈折面測定子を接触させることでレンズ屈折面の形状を測定するレンズ屈折面形状測定機構と、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの眼鏡レンズの周縁に周縁測定子を接触させることでレンズ外形形状を測定するレンズ外形形状測定機構と、を持つ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。眼鏡レンズ形状測定装置は、例えば、眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来装置においては、レンズ屈折面形状測定機構による屈折面形状の測定と、レンズ外形形状測定機構による外形形状の測定とは、別々に行われていた。また、眼鏡レンズ加工装置においては、レンズ形状の測定の後、その測定結果を利用して眼鏡レンズの周縁の粗加工及び仕上げ加工が行われ、さらに、面取り加工、溝堀り加工、等が行われる場合もあり、結果的に、レンズ保持軸に眼鏡レンズを保持させた後から眼鏡レンズの周縁の加工終了までの全体時間は長く掛かるものであった。このため、加工終了までの全体時間を短縮することが望まれているが、従来は、工程毎の時間短縮のアプローチであった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、眼鏡レンズの形状測定の時間短縮を図ることができる眼鏡レンズ形状測定装置、眼鏡レンズ加工装置、及び眼鏡レンズ形状測定プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 本開示の第1態様に係る眼鏡レンズ形状測定装置は、眼鏡レンズの形状を測定する眼鏡レンズ形状測定装置であって、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの前面及び後面の少なくとも一方のレンズ屈折面形状を測定する屈折面形状測定手段と、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズのレンズ外形形状を測定する外形形状測定手段と、前記屈折面形状測定手段と前記外形形状測定手段とを動作させ、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行う制御手段と、を備えることを特徴とする
(2) 本開示の第2態様に係る眼鏡レンズ加工装置は、(1)の眼鏡レンズ形状測定装置を備えることを特徴とする。
(3) 本開示の第3態様に係る眼鏡レンズ形状測定プログラムは、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの前面及び後面の少なくとも一方のレンズ屈折面形状を測定する屈折面形状測定手段と、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズのレンズ外形形状を測定する外形形状測定手段と、を備える眼鏡レンズ形状測定装置で実行される眼鏡レンズ形状測定プログラムであって、眼鏡レンズ形状測定装置の制御ユニットによって実行されることで、前記屈折面形状測定手段と前記外形形状測定手段とを動作させ、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行う制御ステップを、眼鏡レンズ形状測定装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係る眼鏡レンズ形状測定装置の構成、及び眼鏡レンズ加工装置における加工機構部の構成を説明する図である。
【
図2】レンズ形状測定ユニットの概略構成を説明する図である。
【
図3】レンズ外形測定ユニットの概略構成を説明する図である。
【
図4】レンズ外形測定ユニットによって眼鏡レンズの外形を測定する場合の説明図である。
【
図5】眼鏡レンズ形状測定装置及び眼鏡レンズ加工装置に関する制御系ブロック図である。
【
図6】未加工の眼鏡レンズ上におけるレンズ屈折面形状測定のための測定軌跡の例を示す図である。
【
図7】眼鏡レンズの外形形状を得る演算方法を説明する図である。
【
図8】
図7における眼鏡レンズと周縁測定子の周りの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[概要]
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。
図1~
図5は本実施形態に係る眼鏡レンズ形状測定装置及び眼鏡レンズ加工装置について説明するための図である。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0009】
本開示で例示する眼鏡レンズ形状測定装置(例えば、眼鏡レンズ形状測定装置10)は、屈折面形状測定手段(例えば、レンズ屈折面測定ユニット200)と、外形形状測定手段(例えば、レンズ外形測定ユニット500)と、制御手段(例えば、制御ユニット50)と、を備える。
【0010】
例えば、眼鏡レンズ形状測定装置は、レンズ保持軸(例えば、レンズチャック軸102)を備える。例えば、眼鏡レンズ形状測定装置は、レンズ保持軸を軸回りに回転して眼鏡レンズを回転する回転手段(例えば、モータ120)を備えていてもよい。例えば、眼鏡レンズ形状測定装置は、レンズ保持軸の軸方向に直交する所定の直交方向(例えば、
図1におけるY方向)にレンズ保持軸を移動する移動手段(例えば、移動ユニット300、第2移動ユニット330)を備えていてもよい。例えば、眼鏡レンズ形状測定装置は、玉型データを取得するデータ取得手段(例えば、データ取得ユニット60)を備えていてもよい。例えば、眼鏡レンズ形状測定装置は、演算手段(例えば、制御ユニット50)を備えていてもよい。
【0011】
例えば、眼鏡レンズ形状測定装置は、眼鏡レンズ加工装置(例えば、鏡レンズ加工装置1)に備えられていてもよい。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工具(例えば、加工具168)によって加工する。
【0012】
<屈折面形状測定手段>
例えば、屈折面形状測定手段は、レンズ保持軸に保持された被加工レンズである眼鏡レンズの前面及び後面の少なくとも一方のレンズ屈折面形状を測定する。例えば、屈折面形状測定手段はレンズ屈折面に接触させる屈折面測定子(例えば、屈折面測定子206F、200R)を持つ。例えば、屈折面形状測定手段は、レンズ保持軸の軸方向における屈折面測定子の位置を検知する検知手段(例えば、検知器213F、213R)を備える。
【0013】
<外形形状測定手段>
例えば、外形形状測定手段は、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズのレンズ外形形状を測定する。例えば、外形形状測定手段は、眼鏡レンズの周縁に接触させる周縁測定子(例えば、周縁測定子520)を持つ。例えば、外形形状測定手段は、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの径方向における周縁測定子の位置を検知する検知手段(例えば、エンコーダ511)を備える。眼鏡レンズの径方向は、言い換えれば、レンズ保持軸の軸方向に直交する方向とされる。
【0014】
<制御手段>
例えば、制御手段は、屈折面形状測定手段と外形形状測定手段とを同時に動作させ、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行う。例えば、制御手段は、屈折面測定子をレンズ屈折面に接触させると共に周縁測定子を眼鏡レンズの周縁に接触させることで、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行う。これにより、眼鏡レンズの形状測定の時間短縮を図ることができる。すなわち、従来装置においては、レンズ屈折面形状測定機構による屈折面形状の測定と、レンズ外形形状測定機構による外形形状の測定とは、別々に行われていたので、結果的にトータルの測定時間が長くなるという問題があったが、本開示はこの問題を軽減できる。本開示においては、眼鏡レンズの加工終了までの全体時間の短縮を図る上で、眼鏡レンズの周縁加工、レンズ屈折面形状の測定、レンズ外形形状の測定、等の各工程のアプローチでなく、本開示の発明者によって、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定工程とを同時に行う、とういう新規な着目がなされ、この結果、レンズ加工全体の時間短縮を図ることができるものである。
【0015】
なお、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定の同時は、略同時であってもよい。例えば、両者の測定の同時とは、それぞれの単独の測定に対して、全体の測定時間の短縮をもたらす程度に同時であればよい。例えば、両者の測定の同時は、一部が同時に行われる場合であってもよい。
【0016】
例えば、制御手段は、回転手段を制御して眼鏡レンズを回転し、玉型に対応して屈折面測定子がレンズ屈折面をトレースするように移動手段を制御すると共に、外形形状測定手段を動作させ、周縁測定子を眼鏡レンズの周縁に接触させる。例えば、制御手段は、玉型に対応して屈折面測定子がレンズ屈折面をトレースするように、眼鏡レンズの回転角毎に、移動手段を制御してレンズ保持軸に直交する所定方向(
図1のY方向)における眼鏡レンズの位置を変化させる。そして、例えば、制御手段は、周縁測定子位置検知手段の検知結果、移動手段の移動データ及び回転手段の回転データに基づき、眼鏡レンズのレンズ外形形状を取得(演算)する。例えば、制御手段は、眼鏡レンズの全周におけるレンズ外形形状を取得してもよい。例えば、制御手段は、演算手段を兼ねていてもよい。もちろん、演算手段は制御手段と異なる構成であってもよい。
【0017】
<その他の構成>
例えば、屈折面形状測定手段と外形形状測定手段とは、レンズ屈折面形状及びレンズ外形形状が同時に動作されたときに互いに干渉しない位置に配置される。例えば、屈折面測定子を含む屈折面形状測定手段の移動部材(例えば、アーム204F、204R等)と、周縁測定子を含む外形形状測定手段の移動部材(例えば、アーム501等)とは、レンズ屈折面形状及びレンズ外形形状が同時に動作されたときに互いに干渉しない配置とされている。これにより、レンズ屈折面形状及びレンズ外形形状の同時測定が可能とされ、眼鏡レンズの形状測定の時間短縮を図ることができる。
【0018】
<眼鏡レンズ形状測定プログラム>
なお、本開示においては、本実施形態に記載した装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う眼鏡レンズ形状測定プログラム(ソフトウェア)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【0019】
例えば、眼鏡レンズ形状測定装置で実行される眼鏡レンズ形状測定プログラムは、前記屈折面形状測定手段と前記外形形状測定手段とを動作させ、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定とを同時に行う制御ステップを、眼鏡レンズ形状測定装置に実行させる。例えば、眼鏡レンズ形状測定プログラムは、レンズ外形形状を取得する取得ステップを眼鏡レンズ形状測定装置に実行させる。例えば、制御ステップは、回転手段を制御して眼鏡レンズを回転すると共に、玉型に対応して屈折面測定子がレンズ屈折面をトレースするように移動手段を制御することで、眼鏡レンズの回転角毎に、レンズ保持軸に直交する所定の直交方向における眼鏡レンズの位置を変化させる。例えば、取得ステップは、周縁測定子位置検知手段の検知結果、移動手段の移動データ及び回転手段の回転データに基づき、眼鏡レンズの全周におけるレンズ外形形状を取得(演算)する。
【0020】
[実施例]
本開示の典型的な実施例の一つについて、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係る眼鏡レンズ形状測定装置10の構成、及び眼鏡レンズ形状測定装置10を備える眼鏡レンズ加工装置1における加工機構部の構成を説明する図である。
【0021】
眼鏡レンズ加工装置1は、眼鏡レンズ(以下、レンズLE)を保持するレンズ保持軸を持つレンズ保持手段の例であるレンズ保持ユニット100を備える。眼鏡レンズ加工装置1は加工具ユニット150を備える。加工具ユニット150は、レンズLEの周縁を加工する加工具168を回転させるために構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は移動手段の例である移動ユニット300を備える。移動ユニット300はレンズLEと加工具ユニット150が持つ加工具168との相対的な位置関係を変える(調整する)ために構成されている。
【0022】
眼鏡レンズ形状測定装置10は、レンズ保持手段として眼鏡レンズ加工装置1が備えるレンズ保持ユニット100を共用する。眼鏡レンズ形状測定装置10は、レンズLEの前面及び後面の少なくとも一方のレンズ屈折面形状を測定するレンズ屈折面測定ユニット200を備える。眼鏡レンズ形状測定装置10は、レンズLEのレンズ外形形状を測定するレンズ外形測定ユニット500を備える。また、眼鏡レンズ形状測定装置10は、レンズLEの形状測定時に、移動手段として眼鏡レンズ加工装置1が備える移動ユニット300を共用する。移動ユニット300は、レンズ屈折面測定ユニット200及びレンズ外形測定ユニット500がそれぞれ備える測定子とレンズLEとの相対的な位置関係を変える(調整する)ために構成されている。
【0023】
<レンズ保持ユニット>
レンズ保持ユニット100は、レンズLEを狭持(保持)して回転させるためのレンズ保持軸の例であるレンズチャック軸102と、キャリッジ101と、を備える。レンズチャック軸102は、一対のレンズチャック軸102L及び102Rを備える。キャリッジ101の左腕101Lにレンズチャック軸102Lが回転可能に保持され、キャリッジ101の右腕101Rにレンズチャック軸102Rが回転可能に保持されている。レンズチャック軸102(レンズLE)は、回転手段の例であるモータ120によって回転される。
【0024】
<加工具ユニット>
加工具ユニット150は、加工具回転軸161を回転するためのモータ160を備える。加工具回転軸161は、レンズチャック軸102と平行な位置関係で、本体ベース170に回転可能に保持されている。加工具回転軸161にレンズLEの周縁を加工するための複数の加工具168が取り付けられている。例えば、加工具168は、粗加工具166を備える。例えば、加工具168は、ヤゲン加工具の例である仕上げ加工具164を備える。仕上げ加工具164は、レンズLEの周縁にヤゲンを形成するためのヤゲン加工用のV溝を備える。仕上げ加工具164は、平仕上げ加工用の平仕上げ面を備えていても良い。また、加工具168は、高カーブレンズ用の前ヤゲン加工砥石162と後ヤゲン加工具163と、を含んでいても良い。また、加工具168は、鏡面加工の仕上げ加工具を含んでいてもよい。例えば、加工具168は、砥石が使用されているが、カッターであっても良い。
【0025】
<移動ユニット>
移動ユニット300は、レンズチャック軸102に保持されたレンズLEと、加工具168との相対的な位置を調整するために構成されている。例えば、移動ユニット300は、レンズチャック軸102と加工具回転軸161との軸間距離を変動させる第1移動ユニット310と、レンズチャック軸102の軸方向にレンズLEを移動させる第2移動ユニット330と、を備える。実施例ではレンズチャック軸102の軸方向をX方向とする。レンズチャック軸102の軸方向に直交する方向で、レンズチャック軸102と加工具回転軸161との軸間距離を変動させる所定方向をY方向とする。
【0026】
第1移動ユニット310は、モータ315を備える。モータ315の回転により移動支基301がX方向に移動される。これにより、移動支基301に搭載されたキャリッジ101及びレンズチャック軸102(レンズLE)がX方向に移動される。なお、第1移動ユニット310の構成は、加工具回転軸161をX方向に移動させることでもよい。
【0027】
第2移動ユニット330は、キャリッジ101(レンズチャック軸102)をY方向に移動するためモータ335を備える。キャリッジ101はシャフト333,334に沿ってY方向に移動可能に移動支基301に保持されている。モータ335の回転はY方向に延びるボールネジ337に伝達され、ボールネジ337の回転によりキャリッジ101(レンズチャック軸102とレンズLE)はY方向に移動される。モータ335には、レンズチャック軸102のY方向の位置を検知する検知器336が取り付けられている。なお、実施例では第2移動ユニット330は、レンズチャック軸102をY方向に移動する構成であるが、加工具回転軸161をY方向に移動させる構成でもよい。すなわち、第2移動ユニット330はレンズチャック軸102と加工具回転軸161との軸間の距離を相対的に変化させる構成であってもよい。
【0028】
また、移動ユニット300は、眼鏡レンズ形状測定装置10の移動ユニットとして共用される。すなわち、第1移動ユニット310は、レンズチャック軸102の軸方向(X方向)におけるレンズLEと、レンズ屈折面測定ユニット200及びレンズ外形測定ユニット500がそれぞれ備える測定子(後述する)と、の位置関係を変えるために使用される。また、第2移動ユニット330は、レンズチャック軸102の軸方向に直交する所定方向(Y方向)におけるレンズチャック軸102(レンズLE)と、レンズ屈折面測定ユニット200及びレンズ外形測定ユニット500がそれぞれ備える測定子(後述する)と、の位置関係を変えるために使用される。
<レンズ屈折面測定ユニット>
図1において、キャリッジ101の上方にレンズ屈折面測定ユニット200が配置されている。レンズ屈折面測定ユニット200は、レンズLEのレンズ前面(前屈折面)の形状と、レンズ後面(後屈折面)の形状と、を測定するために使用される。レンズ屈折面測定ユニット200は、例えば、レンズ前面形状を測定するための測定ユニット200Fと、レンズ後面形状を測定するための測定ユニット200Rと、を備える。
【0029】
図2は、測定ユニット200Fの概略構成図である。測定ユニット200Fは、レンズ前面に接触する屈折面測定子206Fを有する。屈折面測定子206Fはアーム204Fの先端に取り付けられている。アーム204Fは、X方向に移動可能に、取付支基201Fに保持されている。アーム204Fは、ラック211F、ピニオン212F、ギヤ214F等を介してモータ216Fに接続されている。モータ216Fの駆動によってアーム204FがX方向に移動され、屈折面測定子206FがレンズLEの前面に押し当てられる。ピニオン212Fは、検知器213F(例えば、エンコーダ)の回転軸に取り付けられている。検知器213FによってX方向に移動される屈折面測定子206Fの位置が検知される。
【0030】
レンズ後面形状を測定するための測定ユニット200Rの構成は、測定ユニット200Fと左右対称であるので、その説明は省略する。測定ユニット200Rは、レンズ後面に接触される屈折面測定子206Rと、屈折面測定子206RをX方向に移動させるモータ216Rと、屈折面測定子206RのX方向における移動位置を検知する検知器213Rと、を備える。
【0031】
レンズ屈折面形状の測定時には、屈折面測定子206Fがレンズ前面に接触され、屈折面測定子206Rがレンズ後面に接触される。この状態でレンズ保持ユニット100によってレンズLEが回転されるとともに、玉型データに基づいて移動ユニット300によってレンズチャック軸102L及び102RがY方向に移動されることにより、玉型に対応したレンズ前面及びレンズ後面のレンズ形状が同時に測定される。すなわち、測定ユニット200Fによって玉型に対応したレンズ前面のコバ位置が測定され、測定ユニット200Rによって玉型に対応したレンズ後面のコバ位置が測定される。
【0032】
<レンズ外形測定ユニット>
レンズ外形測定ユニット500は、
図1において、レンズ屈折面測定ユニット200Rの後方に配置されている。
【0033】
図3は、レンズ外形測定ユニット500の概略構成図である。レンズ外形測定ユニット500は、レンズLEの周縁に接触される円柱状の周縁測定子520を備える。周縁測定子520はアーム501を介して回転軸502と接続されている。周縁測定子520の中心軸520a及び回転軸502の中心軸502aは、レンズチャック軸102の軸方向(X方向)に平行な位置関係に配置されている。回転軸502は、中心軸502aを中心に回転可能に保持部503に保持されている。保持部503は
図1のブロック2に固定されている。また、回転軸502に扇状のギヤ505が固定され、ギヤ505はモータ510に回転される。モータ510の回転軸には、ギヤ505とかみ合うピニオンギヤ512が取り付けられている。また、モータ510の回転軸には検知器としてのエンコーダ511が取り付けられている。
【0034】
図4は、レンズ外形測定ユニット500によってレンズLEの外形を測定する場合の説明図である。レンズ外形測定ユニット500の単独の測定では、レンズチャック軸102のチャック中心CHcが所定の測定位置(回転軸502を中心にして回転される周縁測定子520の中心軸520aの移動軌跡MFc上)に移動される。モータ510によってアーム501がX方向に直行する方向に回転されることにより、退避位置に置かれていた周縁測定子520がレンズLE側に移動され、周縁測定子520がレンズLEの周縁に接触される。また、モータ510によって周縁測定子520に所定の測定圧がかけられる。そして、レンズチャック軸102の回転によってレンズLEが1回転され、この時のレンズLEの回転角毎に周縁測定子520の移動がエンコーダ511によって検知される。これにより、レンズチャック軸102のチャック中心CHcを基準としたレンズLEの外形形状が測定される。例えば、レンズ外形測定ユニット500の単独の測定は、レンズLEの外形が予定通りに加工されているかを確認するために、加工済みレンズの外形形状を得る場合に利用される。
【0035】
<レンズ屈折面測定ユニットとレンズ外形測定ユニットの配置関係>
図4において、レンズ屈折面測定ユニット200の屈折面測定子206F、206RがレンズLEの屈折面に接触する位置MLpは、周縁測定子520の移動軌跡MFcから外れた位置であって、レンズチャック軸102が移動されるY方向の移動軌跡上に設定されている。そして、レンズ屈折面測定ユニット200及びレンズ外形測定ユニット500が同時に動作されたときにも、レンズLEの測定可能な最小径~最大径の範囲において、屈折面測定子206F、206Rを含むレンズ屈折面測定ユニット200の移動部材(アーム204F、204R等)と、周縁測定子520を含むレンズ外形測定ユニット500の移動部材(アーム501等)が、互いに干渉しない配置とされている。これにより、レンズ屈折面形状及びレンズ外形形状の同時測定が可能とされる。
【0036】
<制御系ブロック図>
図5は、眼鏡レンズ形状測定装置10及び眼鏡レンズ加工装置1に関する制御系ブロック図である。眼鏡レンズ形状測定装置10は、制御ユニット50を備える。制御ユニット50は、眼鏡レンズ加工装置1の制御ユニットを兼ねる。制御ユニット50に、
図1~3に示した各ユニットの電気系構成要素(モータ等)が接続されている。制御ユニット50は、レンズLEの形状測定及びレンズ加工のための各種の演算を行うように構成されている。また、制御ユニット50はデータを出力するための出力手段を兼ねていてもよい。
【0037】
眼鏡レンズ形状測定装置10及び眼鏡レンズ加工装置1は、データ取得ユニット60を備える。データ取得ユニット60は、データ入力ユニットの機能を兼ねていてもよい。例えば、データ取得ユニット60は、ディスプレイ62を備える。例えば、データ取得ユニット60はデータ入力ユニット63を備える。例えば、ディスプレイ62はタッチパネルの機能を備え、データ入力ユニット63を含むように構成されていてもよい。
【0038】
眼鏡レンズ形状測定装置10及び眼鏡レンズ加工装置1は、記憶手段の例であるメモリ20を備える。メモリ20にはデータ取得ユニット60によって取得された各種データが記憶される。また、メモリ20には、眼鏡レンズ形状測定装置10及び眼鏡レンズ加工装置1の動作を制御するための各種プログラムが記憶されている。例えば、メモリ20にはレンズLEの屈折面形状及びレンズ外形形状を測定するためのプログラムが記憶されている。また、メモリ20にはレンズLEの周縁加工に関するプログラムが記憶されている。
【0039】
データ取得ユニット60、メモリ20は、制御ユニット50に接続されている。データ取得ユニット60は玉型形状測定装置30に接続されていてもよい。例えば、玉型形状測定装置30は、眼鏡フレームのリムを測定することで、レンズLEの玉型(レンズを周縁加工するための目標の外形形状)を得る。また、玉型はメモリ20に記憶されているものを使用してもよい。データ取得ユニット60は玉型形状測定装置30又はメモリ20から玉型データを取得する。「玉型」は動径長と動径角で定義される二次元の形状であって、当業者には自明・公知であるので詳細な説明は略す。
【0040】
<動作>
以上のような構成を備える眼鏡レンズ形状測定装置10及び眼鏡レンズ加工装置1における動作を説明する。初めに、データ取得ユニット60によってレンズLEの玉型データ(動径長r、動径角θ)が取得される。例えば、玉型形状測定装置30によって測定された眼鏡フレームのリムの輪郭形状がデータ取得ユニット60に入力される。玉型データはメモリ20に記憶されていたデータが呼び出されることで、データ取得ユニット60によって取得されてもよい。
【0041】
玉型データが取得されたら、作業者はレンズLEの周縁を加工するための加工条件をディスプレイ62によって設定(入力)する。例えば、レンズLEの周縁加工のために、玉型に対するレンズLEの光学中心位置を配置するためのレイアウトデータが入力される。例えば、レイアウトデータは、左右の玉型中心間距離FPDと、瞳孔間距離PDと、玉型中心に対する光学中心の高さ距離と、を含む。また、加工条件として、レンズの材質、フレームのタイプ(メタル、セル、リムレス、等)、レンズ周縁の加工タイプ(ヤゲン加工、平加工、溝堀加工、等)、鏡面加工の有無、等が入力される。
【0042】
加工条件の入力が完了したら、作業者はレンズLEをレンズチャック軸102(102L、102R)に保持させ、初めに、眼鏡レンズ形状測定装置10の動作を開始させる。レンズLEの周縁加工に先立ち、制御ユニット50によって眼鏡レンズ形状測定プログラムが実行され、眼鏡レンズ形状測定装置10によるレンズLEの形状測定が行われる。
【0043】
制御ユニット50によって玉型に基づいてレンズ屈折面形状測定のための測定軌跡が決定される。
図6は、未加工のレンズLE上におけるレンズ屈折面形状測定のための測定軌跡MTの例を示す図である。なお、ヤゲン加工の場合、測定軌跡MTは、ヤゲン肩に対応した第1軌跡と、その軌跡より一定距離外側の第2軌跡と、の2周分の測定軌跡が設定されてもよい。ここでは説明を簡単にするために、1周分の軌跡のみを例にとって説明する。
【0044】
制御ユニット50は、測定軌跡MTを取得したら、移動ユニット300を制御し、Y方向における測定軌跡MTの位置がレンズ屈折面測定ユニット200の屈折面測定子206F、206Rの所定の測定位置(
図4の位置MLp)に位置するように、レンズLEをY方向に移動する。次に、制御ユニット50は、レンズ屈折面測定ユニット200のモータ216F、216Rを駆動し、退避位置に置かれていた屈折面測定子206F、206RをレンズLE側に移動してレンズLEの前屈折面及び後屈折面にそれぞれ接触させる。このとき、屈折面測定子206F、206Rが測定軌跡MT上でレンズLEの屈折面に接触する位置は、例えば、
図6の測定軌跡MTにおける90度方向の位置である。同時に、制御ユニット50は、モータ510を駆動し、退避位置に置かれていた周縁測定子520をレンズLE側に移動してレンズLEの周縁に接触させる。この状態で、制御ユニット50は、モータ120を駆動し、レンズLE(レンズチャック軸102)を1回転しながら測定軌跡MTに基づいて第2移動ユニット330の駆動を制御し、玉型(測定軌跡MT)に対応して屈折面測定子206F、206Rが前屈折面及び後屈折面をトレースするように、レンズLEの回転角毎にY方向におけるレンズLE(レンズチャック軸102)の位置を変化させる(制御する)。
【0045】
レンズLEの回転角毎にY方向におけるレンズLEの位置が変化されることにより、屈折面測定子206F、206Rが接触するX方向のレンズLEの前屈折面及び後屈折面の位置も変化する。測定軌跡MTに対応したX方向におけるレンズ回転角毎の前屈折面及び後屈折面の位置は、それぞれ検知器213F、213Rによって検知される。制御ユニット50は、検知器213F、213Rの検知結果に基づき、前屈折面及び後屈折面のそれぞれの形状情報(mr,mθ,mz)を得る。mrは測定軌跡MTの動径長であり、mθは動径角であり、mzはX方向におけるレンズ屈折面の位置データ(所定の基準位置に対する距離データ)である。
【0046】
また、レンズLEの屈折面の測定と同時に、レンズ外形測定ユニット500によってレンズLEの外形形状の測定が行われる。このとき、制御ユニット50は、レンズLEの屈折面の測定と同時にレンズLEの外形形状の測定が行われるため、Y方向におけるレンズLEの位置の変化分を補正して外形形状を取得する。すなわち、制御ユニット50は、レンズ外形測定ユニット500のエンコーダ511の検知結果と、レンズLEの回転角毎のY方向におけるレンズチャック軸102の位置の変化データとなる移動データ(制御データ)と、に基づいてレンズLEの外形形状の測定結果を得る。
【0047】
以下、
図7、
図8に基づき、レンズLEの屈折面の測定に伴うY方向におけるレンズLEの位置の変化分を補正してレンズLEの外形形状を得る演算方法を説明する。
図7は、レンズチャック軸102に保持されたレンズLEをレンズ後面側(
図2の右方向)から見た図を示している。また、
図8は、
図7におけるレンズLEと周縁測定子520の周りの拡大図である。
【0048】
図7において、周縁測定子520の回旋中心(中心軸502aの位置)をUoとする。回旋中心Uoを原点とし、レンズチャック軸102のY方向の移動方向をy軸とし、y軸に直交する方向をx軸とする(x軸、y軸は説明の便宜上の軸であり、
図1に示した装置のX方向、Y方向とは異なる)。
【0049】
また、レンズチャック軸102のチャック中心CHcがY方向に移動される移動軌跡をYAとする。この移動軌跡YAと、周縁測定子520の中心Fc(中心軸520a)の移動軌跡MFcと、の交点を基準位置Soとする。なお、基準位置Soは、レンズ外形測定ユニット500が単独で動作されるときにチャック中心CHcが移動される位置となる。
図7において、屈折面測定子206F、206Rが接触するレンズLEの接触位置は、MLpで示されている。接触位置MLpは、移動軌跡YA上で設定された所定位置である。レンズ屈折面測定ユニット200によるレンズ屈折面の測定時には、レンズLEが回転されながら、接触位置MLpに測定軌跡MTが位置するように、チャック中心CHcが移動軌跡YA上を移動される。レンズLEのある回転角θnのときに、基準位置Soに対するチャック中心CHcの距離をYnとする。
図7、
図8は、基準位置Soに対してチャック中心CHcが距離Ynだけ移動したときに、レンズLEの周縁に周縁測定子520が接触した状態を示している。
【0050】
図7において、回旋中心Uoと基準位置Soとを結ぶ線分をUAとし、線分UAとy軸とが成す角度をκとする。角度κは、レンズ外形測定ユニット500のキャリブレーションによって得られる既知の値である。また、回旋中心Uoに対するレンズ外形測定ユニット500のエンコーダ511の原点方向をNoとする。原点方向Noに対する線分UAの角度をεとする。角度εはレンズ外形測定ユニット500のキャリブレーションによって得られる既知の値である。
【0051】
回旋中心Uoと周縁測定子520の中心Fcとを結ぶ線分をLAとする。線分LAの長さは既知の値である。回旋中心Uoを中心として、原点方向Noに対する線分LAの角度をencとする。角度encはエンコーダ511によって検知される角度である。
【0052】
図8において、基準位置Soと、レンズLEの周縁に接触する周縁測定子520の中心Fcと、を結ぶ線分をRoとする。線分Roの長さは、弦長を求める式により、次の式1で求められる。
【0053】
【数1】
また、基準位置Soを基準として線分Roと線分UAとが成す角度をαとし、基準位置Soを基準としてy軸方向と線分Roとが成す角度をΘoとする。角度Θoは、次の式2で求められる。
【0054】
【数2】
なお、角度αは、線分Ro、線分UA及び線分LAから成る三角形(回旋中心Uo、基準位置So及び中心Fcの3点からなる三角形)が二等辺三角形であることから、次の式3で得られる。
【0055】
【数3】
次に、周縁測定子520の中心Fcと、チャック中心CHcと、を結ぶ線分をRenとする。また、チャック中心CHcを基準としたx方向に対する線分Renの角度をΘnとする。
【0056】
ここで、線分Roのx方向成分Xeo、線分Roのy方向成分Yeo、線分Renのx方向成分Xen、線分Renのy方向成分Yenは、それぞれ次の式で表される。
【0057】
【数4】
上記の式7に示されるように、チャック中心CHcを基準とした周縁測定子520の中心Fcの位置データは、距離Yn(基準位置Soに対するチャック中心CHcの移動距離)が補正されものとなっている。そして、線分Rnのx方向成分Xen及びy方向成分Yenが求められることにより、線分Ren及び角度Θnは、それぞれ次の式で求められる。
【0058】
【数5】
制御ユニット50は、レンズ屈折面測定ユニット200によるレンズ屈折面の測定におけるチャック中心CHcを基準としたレンズLEの回転角毎(例えば、0.36度毎の1,000ポイント)に、Y方向の移動データである距離Yn及びエンコーダ511の検知結果に基づき、線分Ren及び角度Θnを求める。そして、制御ユニット50は、レンズLEの回転角毎の線分Ren及び角度Θnが得られれば、レンズLEの回転角毎に、チャック中心CHcを基準とした線分Ren及び角度Θnの点(周縁測定子520の中心Fc)が描く外周軌跡を求める。このチャック中心CHcを基準とした外周軌跡が求められれば、レンズ外形測定ユニット500の単独での測定時と同様に、この外周軌跡と周縁測定子520の半径FRとに基づき、レンズLEの外形形状(URn、Uθn)が求められる。URnはレンズLEの外形の動径長であり、Uθnは動径角である。例えば、外形形状(URn、Uθn)は、玉型データと同様に、0.36度毎の1,000ポイントで得られる。
【0059】
以上のように、レンズ屈折面測定ユニット200によるレンズ屈折面の測定と、レンズ外形測定ユニット500によるレンズ外形形状の測定と、が同時に行われることにより、それぞれを単独で動作させる場合に比べ、測定時間を短くできる。これにより、眼鏡レンズ加工装置1においては、レンズLEをレンズチャック軸102に保持させた後からレンズ加工の完了までの全体の加工時間の短縮化を図ることができる。
【0060】
レンズLEの屈折面形状及び外形形状の測定結果が得られたら、レンズLEの周縁加工が行われる。レンズLEの周縁加工について簡単に説明する。以下では、ヤゲン加工する場合を説明する。
【0061】
初めに、粗加工が行われる。制御ユニット50は、玉型に基づいて粗加工軌跡を求め、粗加工軌跡に基づいて粗加工の制御データを取得する。例えば、粗加工軌跡は、玉型に基づく仕上げ加工軌跡より一定量(例えば、0.5mm)外側の軌跡として求められる。粗加工の制御データは、レンズチャック軸102と加工具回転軸161との軸間距離LN(図示を略す)に関し、レンズLEの回転角毎に、粗加工軌跡が粗加工具166に接するときの軸間距離LNの最大値を求めることにより得られる。制御ユニット50は、軸間距離LNの制御データに基づいて第2移動ユニット330の駆動を制御し、粗加工具166によってレンズLEの周縁を粗加工する。
【0062】
この粗加工時に、レンズ外形測定ユニット500の測定によって得られたレンズLEの外形形状データが利用されてもよい。例えば、レンズLEの外形形状データは、未加工のレンズLEと粗加工具166とを近づけるときのY方向(軸間距離LNの方向)の移動速度制御に利用される。例えば、制御ユニット50は、待機位置に置かれたレンズLEが粗加工具166の付近に近づくまではレンズLEを速い速度で移動させ、レンズLEが粗加工具166の付近に近づいた後は、レンズLEの周縁を実際に粗加工するために設定された速度でレンズLEを移動する。これにより、レンズLEの加工時間の短縮を図ることができる。
【0063】
また、例えば、レンズLEの外形形状データは、粗加工具166によってレンズLEの周縁を粗加工するときのY方向の移動制御に利用されてもよい。例えば、レンズ前屈折面の測定結果より得られるレンズ前面のカーブ形状及びレンズ後面のカーブ形状と、レンズ外形形状の測定結果と、に基づき、未加工のレンズLEの外形から粗加工軌跡までのレンズLEの回転角毎のレンズ厚データが求められる。そして、レンズ回転角毎の加工点の加工距離(レンズLEの回転中心から加工点までの距離)と加工点でのレンズ厚とに基づいてレンズチャック軸102に掛かるトルクが略一定となる切り込み量が求められ、求められた切り込み量に従ってY方向における第2移動ユニット330の駆動が制御される(この制御の詳細は、特開2010―179397号公報を参照)。これにより、粗加工時にレンズチャック軸102の回転角度に対してレンズLEの軸角度がずれてしまう、いわゆる「軸ずれ」が軽減される。
【0064】
粗加工が終了すると、続いて、ヤゲンの仕上げ加工が行われる。制御ユニット50により、レンズLEの仕上げ加工後に予定する形状情報に基づいてヤゲン軌跡(玉型の動径情報とX方向におけるヤゲン頂点の位置の情報)の演算が行われ、ヤゲン軌跡に基づいて移動ユニット300が制御され、粗加工後のレンズLEの周縁が仕上げ加工具164によってヤゲン加工される。なお、レンズ屈折面測定ユニット200の測定結果は、例えば、ヤゲン軌跡が演算されるときのX方向におけるヤゲン頂点の位置の算出に利用される。仕上げ加工が終了すると、レンズチャック軸102が所定の初期位置に戻され、レンズLEの周縁加工が終了される。
【0065】
<変容例>
例えば、上記実施例では、レンズ屈折面測定ユニット200はレンズLEの前屈折面及び後屈折面を同時に測定するものとしたが、前屈折面と後屈折面とを別々に測定するものであってもよい。この場合、レンズ屈折面形状とレンズ外形形状の同時測定は、レンズLEの前屈折面及び後屈折面の一方の測定と同時にレンズ外形形状の測定が行われるように制御されればよい。
【0066】
また、上記の説明では、レンズ屈折面測定ユニット200の測定での測定軌跡MTは1周分としたが、異なる測定軌跡で2周分の測定であってもよい。この場合、少なくとも1周分の測定軌跡でレンズ屈折面測定ユニット200による測定と同時にレンズ外形測定ユニット500による測定が行われればよい。
【0067】
また、上記の説明では、レンズLEの1回転の間に、屈折面測定子(206F、206R)がレンズ屈折面に接触され、周縁測定子520もレンズLEの周縁に同時に接触されるものとしたが、レンズ屈折面形状の測定とレンズ外形形状の測定の同時は、一部が同時に行われる場合であってもよい。例えば、レンズLEの概略的な外形形状を得る場合には、レンズLEの1回転の間に、一時的に周縁測定子520がレンズLEの周縁に接触されることで両者の測定が同時に行われることでもよい。
【0068】
また、
図3に示されたレンズ外形測定ユニット500は、レンズLEの外形形状を測定する手段の一例であり、他の機構が利用されてもよい。例えば、レンズチャック軸102をY方向に移動させる第2移動ユニット330と、加工具回転軸161に取り付けられた周縁測定子(例えば、粗加工具166であってもよい)を利用してレンズLEの外形形状を測定しても良い。制御ユニット50は、第1移動ユニット310及び第2移動ユニット330の駆動を制御し、レンズLEを加工具回転軸161に取り付けられた周縁測定子に当接させるように、レンズLEをY方向に移動させる。次いで、制御ユニット50は、モータ120を駆動させ、レンズLEを周縁測定子に当接させた状態のまま、レンズLEを1回転させる。このとき、制御ユニット50は、検知器336から出力される検知信号に基づき、レンズLE(レンズチャック軸102)の回転角ごとにチャック中心に対してレンズLEが周縁測定子に当接した距離を求める。これにより、レンズLEの外形形状が取得される。
【0069】
以上、本開示の典型的な実施例を説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、本開示の技術思想を同一にする範囲において種々の変容が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 眼鏡レンズ加工装置
10 眼鏡レンズ形状測定装置
50 制御ユニット
60 データ取得ユニット
102 レンズチャック軸
120 モータ
168 加工具
200 レンズ屈折面測定ユニット
206F、200R 屈折面測定子
213F、213R 検知器
300 移動ユニット
500 レンズ外形測定ユニット
520 周縁測定子
511 エンコーダ