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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081592
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】振動検出器及び振動解析システム
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20230606BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
G01H9/00 Z
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195429
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英昭
(72)【発明者】
【氏名】浦壁 浩司
【テーマコード(参考)】
2G064
2G105
【Fターム(参考)】
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G105BB17
2G105HH04
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で振動の検出と振動状態の提示を行う。
【解決手段】振動の状態を検出する対象体である被検出体9に固定されて使用される振動検出器1に、加速度センサ11、演算器12、機能設定部13、外部インタフェース14、LEDドライバ15、発光色が可変なフルカラーLED16を備える。振動検出器1は、フルカラーLED16の発光を外部から視認可能に構成する。外部インタフェース14からの設定に従い、機能設定部13は検出し提示する振動状態の種別を演算器12に設定する。演算器12は、加速度センサ11の出力から、設定された種別の振動状態を検出し、検出した振動状態に応じて、LEDドライバ15を制御し、フルカラーLED16の発光色を変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動の状態を検出する対象体である被検出体に固定されて使用される振動検出器であって、
加速度センサと、
演算器と、
発光色が可変な発光デバイスとを備え、
前記発光デバイスが発した光は、当該振動検出器の外部から視認可能であり、
前記演算器は、前記加速度センサの出力から前記被検出体の振動状態を検出し、検出した振動状態に応じて、前記発光デバイスの発光色を変化させることを特徴とする振動検出器。
【請求項2】
請求項1記載の振動検出器であって、
周波数特性が可変な周波数フィルタを備え、
前記演算器は、前記周波数フィルタを通した前記加速度センサの出力から前記被検出体の振動状態を検出することを特徴とする振動検出器。
【請求項3】
請求項1または2記載の振動検出器であって、
前記演算器の前記振動状態の検出の時定数を変更する時定数変更手段を有することを特徴とする振動検出器。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の振動検出器であって、
前記演算器は、前記振動状態として前記被検出体の加速度を検出し、検出した加速度の漸次的な変化に追従して、前記発光デバイスの発光色の色相と輝度のうちの少なくとも一方が漸次的に変化するように、前記発光デバイスの発光色を変化させることを特徴とする振動検出器。

【請求項5】
請求項1、2または3記載の振動検出器であって、
前記演算器は、前記振動状態として前記被検出体の振動加速度レベルを検出し、検出した振動加速度レベルの漸次的な変化に追従して、前記発光デバイスの発光色の色相と輝度のうちの少なくとも一方が漸次的に変化するように、前記発光デバイスの発光色を変化させることを特徴とする振動検出器。
【請求項6】
請求項1、2または3記載の振動検出器であって、
前記演算器は、前記振動状態として前記被検出体の振動レベルを検出し、検出した振動レベルの漸次的な変化に追従して、前記発光デバイスの発光色の色相と輝度のうちの少なくとも一方が漸次的に変化するように、前記発光デバイスの発光色を変化させることを特徴とする振動検出器。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載の振動検出器であって、
前記演算器による前記発光デバイスの発光色の変化範囲と、前記振動状態の変化レンジとの対応を変更するレンジ変更手段を有することを特徴とする振動検出器。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載の振動検出器であって、
前記演算器が検出した前記被検出体の振動状態を表す信号を外部に出力する外部出力手段を有することを特徴とする振動検出器。
【請求項9】
請求項1、2または3記載の振動検出器であって、
前記演算器は、検出した振動状態が予め定められた正常範囲内にあるときに前記発光デバイスを第1の発光色で発光させ、検出した振動状態が前記正常範囲内にないときに前記発光デバイスが第1の発光色と異なる発光色である第2の発光色で発光させることを特徴とする振動検出器。
【請求項10】
請求項1、2または3記載の振動検出器であって、
当該振動検出器は、切り替え可能な動作モードとして第1の動作モードと第2の動作モードを有し、
前記演算器は、第1の動作モードにあるときに、検出した振動状態の漸次的な変化に追従して、前記発光デバイスの発光色の色相と輝度のうちの少なくとも一方が漸次的に変化するように、前記発光デバイスの発光色を変化させ、第2の動作モードにあるときに、検出した振動状態が予め定められた正常範囲内にあるときに前記発光デバイスを第1の発光色で発光させ、検出した振動状態が前記正常範囲内にないときに前記発光デバイスが第1の発光色と異なる発光色である第2の発光色で発光させることを特徴とする振動検出器。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の振動検出器を備えた振動解析システムであって、
被検出体に固定された1または複数の前記振動検出器と、
前記1または複数の振動検出器を、各振動検出器の発光デバイスの発光した光の像が撮影映像中に含まれるように撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した撮影映像を記録するビデオレコーダと、
前記ビデオレコーダに記録された撮影画像が表す、各振動検出器の位置と各振動検出器の発光デバイスの発光色に基づいて、前記被検出体の振動を解析する解析装置とを有することを特徴とする振動解析システム。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の振動検出器を備えた振動解析システムであって、
被検出体に固定された1または複数の前記振動検出器と、
前記1または複数の振動検出器を、各振動検出器の発光デバイスの発光した光の像が撮影映像中に含まれるように撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した撮影映像を記録し、記録した撮影映像をスロー再生するビデオレコーダ/プレイヤとを有することを特徴とする振動解析システム。
【請求項13】
請求項8記載の振動検出器を備えた振動解析システムであって、
被検出体に固定された1または複数の前記振動検出器と、
前記振動検出器の前記外部出力手段が出力する信号が表す振動状態を用いて前記被検出体の振動を解析する解析装置とを有することを特徴とする振動解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動を検出する技術としては、振動を検出する対象である被検出体に固定される複数の振動計測装置と管理装置を備えたシステムが知られている(たとえば、特許文献1)。このシステムでは、振動計測装置は、加速度センサで被検出体の加速度を検出し、加速度のデータを無線通信により管理装置に送信する。そして、管理装置は、受信した加速度のデータを分析し被検出体の異常振動等を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-76619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術によれば、オペレータが被検出の振動状態を認知するために、被検出体に固定した振動計測装置の他に管理装置が必要となるため、簡易に被検出体の振動状態の確認や監視を行う用途に対しては、その取り扱いの煩わしさやコストが過大となる。
本発明は、比較的簡便な構成で振動の検出と振動状態の提示を行うことを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、振動の状態を検出する対象体である被検出体に固定されて使用される振動検出器に、加速度センサと、演算器と、発光色が可変な発光デバイスとを備えたものである。前記発光デバイスが発した光は、当該振動検出器の外部から視認可能であり、前記演算器は、前記加速度センサの出力から前記被検出体の振動状態を検出し、検出した振動状態に応じて、前記発光デバイスの発光色を変化させる。
【0006】
この振動検出器に、周波数特性が可変な周波数フィルタを備え、前記演算器において、前記周波数フィルタを通した前記加速度センサの出力から前記被検出体の振動状態を検出してもよい。
また、この振動検出器に、前記演算器の前記振動状態の検出の時定数を変更する時定数変更手段を備えてもよい。
また、振動検出器の前記演算器において、前記振動状態として前記被検出体の加速度を検出し、検出した加速度の漸次的な変化に追従して、前記発光デバイスの発光色の色相と輝度のうちの少なくとも一方が漸次的に変化するように、前記発光デバイスの発光色を変化させてもよい。
【0007】
または、振動検出器の前記演算器において、前記振動状態として前記被検出体の振動加速度レベルを検出し、検出した振動加速度レベルの漸次的な変化に追従して、前記発光デバイスの発光色の色相と輝度のうちの少なくとも一方が漸次的に変化するように、前記発光デバイスの発光色を変化させてもよい。
【0008】
または、振動検出器の前記演算器において、前記振動状態として前記被検出体の振動レベルを検出し、検出した振動レベルの漸次的な変化に追従して、前記発光デバイスの発光色の色相と輝度のうちの少なくとも一方が漸次的に変化するように、前記発光デバイスの発光色を変化させてもよい。
【0009】
また、振動検出器に、前記演算器による前記発光デバイスの発光色の変化範囲と、前記振動状態の変化レンジとの対応を変更するレンジ変更手段を備えてもよい。
また、振動検出器に、前記演算器が検出した前記被検出体の振動状態を表す信号を外部に出力する外部出力手段を備えてもよい。
また、振動検出器の前記演算器において、検出した振動状態が予め定められた正常範囲内にあるときに前記発光デバイスを第1の発光色で発光させ、検出した振動状態が前記正常範囲内にないときに前記発光デバイスが第1の発光色と異なる発光色である第2の発光色で発光させてもよい。
【0010】
振動検出器に、切り替え可能な動作モードとして第1の動作モードと第2の動作モードを設け、前記演算器において、第1の動作モードにあるときに、検出した振動状態の漸次的な変化に追従して、前記発光デバイスの発光色の色相と輝度のうちの少なくとも一方が漸次的に変化するように、前記発光デバイスの発光色を変化させ、第2の動作モードにあるときに、検出した振動状態が予め定められた正常範囲内にあるときに前記発光デバイスを第1の発光色で発光させ、検出した振動状態が前記正常範囲内にないときに前記発光デバイスが第1の発光色と異なる発光色である第2の発光色で発光させてもよい。
【0011】
これらの振動検出器によれば、被検出体に固定した振動検出器を見るだけで、被検出体の加速度や振動加速度レベルや振動レベルや振動の正常範囲内/正常範囲外などの振動状態を、発光デバイスの発光色から直ちに認知することができる。よって、振動検出器以外の装置を必要としない簡易な構成で振動の検出と振動状態の提示が行える。なお、加速度変化が速い場合でも、発光デバイスの発光色の変化の速度が、当該発光色の変化を目視によって良好に認知できるレベルとなるように、振動状態検出の時定数を設定することにより、発光色からの振動状態の認知が可能となる。
【0012】
また、本発明は、併せて、振動検出器を備えた振動解析システムを提供する。
振動解析システムには、被検出体に固定された1または複数の前記振動検出器と、前記1または複数の振動検出器を、各振動検出器の発光デバイスの発光した光の像が撮影映像中に含まれるように撮影するカメラと、前記カメラが撮影した撮影映像を記録するビデオレコーダと、
前記ビデオレコーダに記録された撮影画像が表す、各振動検出器の位置と各振動検出器の発光デバイスの発光色に基づいて、前記被検出体の振動を解析する解析装置とを備える。
【0013】
もしくは、振動解析システムに、被検出体に固定された1または複数の前記振動検出器と、
前記1または複数の振動検出器を、各振動検出器の発光デバイスの発光した光の像が撮影映像中に含まれるように撮影するカメラと、前記カメラが撮影した撮影映像を記録し、記録した撮影映像をスロー再生するビデオレコーダ/プレイヤとを備える。
【0014】
または、振動検出器を前記外部出力手段を備えたものとし、振動解析システムに、被検出体に固定された1または複数の前記振動検出器と、前記振動検出器の前記外部出力手段が出力する信号が表す振動状態を用いて前記被検出体の振動を解析する解析装置とを備える。
【0015】
これらの振動解析システムによれば、振動検出器を用いて、被検出体の実稼働状態における振動の各種解析を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、比較的簡便な構成で振動の検出と振動状態の提示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る振動検出器の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る振動検出器の外観と使用例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る振動検出器の振動状態の提示動作を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る振動解析システムの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る振動解析システムの適用例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る振動解析システムの他の構成例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る振動検出器の他の構成例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る振動検出器の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について説明する。
図1に本実施形態に係る振動検出器の構成を示す。
振動検出器1は、振動の状態を検出する対象体である被検出体に固定されて使用される装置であり、図示するように、加速度センサ11、演算器12、機能設定部13、外部インタフェース(外部I/F)14、LEDドライバ15、フルカラーLED16、振動検出器1の検出値を表す信号を外部に出力する出力インタフェース(出力I/F)17を備えている。
【0019】
振動検出器1は、内蔵のバッテリ(図示を省略)の電力で動作する。ただし、有線等による外部給電によって動作してもよい。また、外部給電は、出力インタフェース17の信号出力線を用いて行ってもよい。
フルカラーLED16は、発光色がR、G、Bの3つのLEDを備えており、LEDドライバ15が行う各LEDの駆動のシーケンスを変更することにより発光色(人間に視認される色)を変更することができる。
次に、演算器12は可変周波数フィルタ121、振動加速度レベル演算部122、振動レベル演算部123、コンパレータ124、点灯制御部125を備えている。
演算器12の各部、または、演算器12の各部と機能設定部13は、同じプロセッサの機能として実装してもよい。また、LEDドライバ15も、このプロセッサに内蔵されたものであってもよい。
加速度センサ11は加速度を検出し、検出した加速度を表す加速度信号を、可変周波数フィルタ121、振動加速度レベル演算部122、振動レベル演算部123、コンパレータ124、点灯制御部125に出力する。
可変周波数フィルタ121は、周波数特性が可変なフィルタであり、選択的にLPF(ローパスフィルタ)、BPF(バンドパスフィルタ)、HPF(ハイパスフィルタ)として機能させることができる。
振動加速度レベル演算部122は、加速度センサ11が出力する加速度信号か可変周波数フィルタ121の出力信号のいずれか一方を選択的に振動加速度レベル算出対象信号として、振動加速度レベル算出対象信号の実効値を算定し、算定した実効値をデシベルで表した振動加速度レベルを、コンパレータ124、点灯制御部125に出力する。
【0020】
振動レベル演算部123は、加速度センサ11が出力する加速度信号か可変周波数フィルタ121の出力信号のいずれか一方を選択的に振動レベル算出対象信号として、振動レベル算出対象信号に対して人間の振動感覚補正を行った信号の実効値を算定し、算定した実効値をデシベルで表した振動レベルを、コンパレータ124、点灯制御部125に出力する。
【0021】
コンパレータ124は、加速度センサ11が出力する加速度信号、可変周波数フィルタ121の出力信号、振動加速度レベル演算部122が出力する振動加速度レベル、振動レベル演算部123が出力する振動レベルのいずれか1つを選択的に監視対象信号として、監視対象信号を監視し、監視対象信号が正常範囲内であるか正常範囲外であるかを表す正常有無信号を点灯制御部125に出力する。
【0022】
出力インタフェース17は、加速度センサ11が出力する加速度信号、可変周波数フィルタ121の出力信号、振動加速度レベル演算部122が出力する振動加速度レベル、振動レベル演算部123が出力する振動レベル、コンパレータ124が出力する正常有無信号のいずれかを検出信号として、検出信号の値を表す信号を外部に出力する。
【0023】
外部インタフェース14は、有線もしくは無線の通信インタフェース、もしくは、オペレータの操作を受け付ける入力装置であり、機能設定部13は、外部インタフェース14を介してオペレータの指示を受け取り、受け取った指示に従い各部の設定を行う。
機能設定部13が行う設定には、可変周波数フィルタ121の周波数特性の設定、振動加速度レベル演算部122において振動加速度レベル算出対象信号とする信号の設定、振動レベル演算部123において振動レベル算出対象信号とする信号の設定、点灯制御部125において、加速度センサ11が出力する加速度信号と可変周波数フィルタ121の出力信号のいずれを加速度提示対象信号とするかの設定、出力インタフェース17において検出信号として出力する信号の設定が含まれる。
【0024】
機能設定部13が行う設定には、コンパレータ124において監視対象信号とする信号の設定、コンパレータ124において監視対象信号の正常範囲内/正常範囲外を判定する条件の設定がある。正常範囲内/正常範囲外を判定する条件としては、たとえば、監視対象信号の大きさが所定のしきい値を超えていないときに正常範囲内とし、しきい値を超えているときに正常範囲外とする条件や、監視対象信号の大きさが、所定のしきい値を、所定時間以上、継続して超えている場合に正常範囲外とし、他の場合に正常範囲内とする条件等を設定することができる。
【0025】
また、機能設定部13が行う設定には、点灯制御部125に対する提示モードと発光色制御モードと提示対象レンジの設定がある。提示モードとしては、加速度提示モード、振動加速度レベル提示モード、振動レベル提示モード、コンパレータモード等を設ける。発光色制御モードとしては、色相制御モードと輝度制御モードを設ける。
【0026】
点灯制御部125は、LEDドライバ15を介してフルカラーLED16の発光色の色相や輝度を制御することができ、加速度提示モードが設定されているときには、加速度提示対象信号として設定されている信号の大きさに応じてフルカラーLED16の発光色を変化させ、振動加速度レベル提示モードが設定されているときには、振動加速度レベル演算部122が出力する振動加速度レベルの大きさに応じてフルカラーLED16の発光色を変化させ、振動レベル提示モードが設定されているときには、振動レベル演算部123が出力する振動レベルの大きさに応じてフルカラーLED16の発光色を変化させる。また、コンパレータモードが設定されているときには、コンパレータ124が出力する正常有無信号が正常範囲内を表しているときと正常範囲外を表しているときとで、フルカラーLED16の発光色を切り替える。
【0027】
図2aに振動検出器1の外観の例を示す。
振動検出器1の形状は用途に応じて任意の形状としてよいが、フルカラーLED16の発光が外部から視認できる形状とする。図2aの例では、発光が外部から視認できるように、振動検出器1の上面に上端が露出した導光体160を設け、この導光体160による導光によって、フルカラーLED16の出射光を外部に放射している。
【0028】
振動検出器1は、被検出体にフルカラーLED16の発光が外部から視認できる形態で固定して用いる。また、図2b1の被検出体9が工作機械である場合の例のように、振動検出器1は1つだけ被検出体9に固定して用いることもできるし、図2b2の被検出体9が自動車である場合の例のように、振動検出器1を複数同時に被検出体9に固定して用いることもできる。
【0029】
図3に、点灯制御部125のフルカラーLED16の発光色の制御例を示す。
図3a1は、加速度提示モードと色相制御モードが設定されているときの制御例であり、この例では、加速度提示対象信号(加速度センサ11が出力する加速度信号と可変周波数フィルタ121の出力信号のいずれか)が表す加速度が0のときに発光色が緑色となり、加速度が設定された提示レンジ内にある限りにおいて、加速度がプラス方向に0から離れていくにつれて、発光色の色相が緑、黄、赤と漸次的に変化し、加速度がマイナス方向に0から離れていくにつれて、発光色の色相が緑、青緑、青と漸次的に変化するように、フルカラーLED16の発光色を制御している。また、加速度提示対象信号が提示レンジの下限以下であるときに青に、提示レンジの上限以上であるときに赤に、下限と上限の間であるときに青と赤の間の色相に、フルカラーLED16の発光色は制御する。ただし、加速度提示モードを設定するときには、提示レンジは、正の範囲の幅と負の範囲の幅が等しくなるように設定する。
【0030】
図3a2は、振動加速度レベル提示モードと色相制御モードが設定されているときの制御例であり、この例では、振動加速度レベル演算部122が出力する振動加速度レベルが設定された提示レンジ内にある限りにおいて、振動加速度レベルが増加していくにつれて、発光色の色相が青、青緑、緑、黄、赤と漸次的に変化するように、フルカラーLED16の発光色を制御している。また、振動加速度レベルが提示レンジの下限以下であるときに青に、提示レンジの上限以上であるときに赤に、下限と上限の間であるときに青と赤の間の色相に、フルカラーLED16の発光色を制御する。
【0031】
図3a3は、振動レベル提示モードと色相制御モードが設定されているときの制御例であり、この例では、振動レベル演算部123が出力する振動レベルが設定された提示レンジ内にある限りにおいて、振動レベルが増加していくにつれて、発光色の色相が青、青緑、緑、黄、赤と漸次的に変化するように、フルカラーLED16の発光色を制御している。また、振動レベルが提示レンジの下限以下であるときに青に、提示レンジの上限以上であるときに赤に、下限と上限の間であるときに青と赤の間の色相に、フルカラーLED16の発光色を制御する。
【0032】
図3a4は、コンパレータモードと色相制御モードが設定されているときの制御例であり、この例では、コンパレータ124が出力する正常有無信号が正常範囲内を表しているときにフルカラーLED16の発光色を緑として、正常有無信号が正常範囲外を表しているときにフルカラーLED16の発光色を赤としている。
【0033】
図3b1は、加速度提示モードと輝度制御モードが設定されているときの制御例であり、この例では、加速度提示対象信号(加速度センサ11が出力する加速度信号と可変周波数フィルタ121の出力信号のいずれか)が表す加速度が0のときに発光色の輝度が予め定めた中間輝度となり、加速度が設定された提示レンジ内にある限りにおいて、加速度がプラス方向に0から離れていくにつれて、発光色の輝度が中間輝度から漸次的に増加し、加速度がマイナス方向に0から離れていくにつれて、発光色の輝度が中間輝度から漸次的に漸次的に減少するように、フルカラーLED16の発光色を制御している。また、加速度提示対象信号が提示レンジの下限以下であるときに予め定めた最小輝度に、提示レンジの上限以上であるときに予め定めた最大輝度に、下限と上限の間であるときに最小輝度と最大輝度の間の輝度に、フルカラーLED16の発光色は制御する。ただし、加速度提示モードを設定するときには、提示レンジは、正の範囲の幅と負の範囲の幅が等しくなるように設定する。
【0034】
図3b2は、振動加速度レベル提示モードと輝度制御モードが設定されているときの制御例であり、この例では、振動加速度レベル演算部122が出力する振動加速度レベルが設定された提示レンジ内にある限りにおいて、振動加速度レベルが増加していくにつれて、発光色の輝度が漸次的に増加するように、フルカラーLED16の発光色を制御している。また、振動加速度レベルが提示レンジの下限以下であるときに予め定めた最小輝度に、提示レンジの上限以上であるときに予め定めた最大輝度に、下限と上限の間であるときに最小輝度と最大輝度の間の輝度に、フルカラーLED16の発光色は制御する。
【0035】
図3b3は、振動レベル提示モードと輝度制御モードが設定されているときの制御例であり、この例では、振動レベル演算部123が出力する振動レベルが設定された提示レンジ内にある限りにおいて、振動レベルが増加していくにつれて、発光色の輝度が漸次的に増加するように、フルカラーLED16の発光色を制御している。また、振動レベルが提示レンジの下限以下であるときに予め定めた最小輝度に、提示レンジの上限以上であるときに予め定めた最大輝度に、下限と上限の間であるときに最小輝度と最大輝度の間の輝度に、フルカラーLED16の発光色は制御する。
【0036】
図3b4は、コンパレータモードと輝度制御モードが設定されているときの制御例であり、この例では、コンパレータ124が出力する正常有無信号が正常範囲内を表しているときにフルカラーLED16の発光色の輝度が小(暗)となり、正常有無信号が正常範囲外を表しているときにフルカラーLED16の発光色の輝度が大(明)となるように、フルカラーLED16の発光色を制御している。
【0037】
このような本実施形態によれば、被検出体9に固定した振動検出器1を見るだけで、被検出体9の加速度や振動加速度レベルや振動レベルや振動の正常範囲内/正常範囲外を、フルカラーLED16の発光色から直ちに認知することができる。よって、振動検出器1以外の装置を必要としない簡易な構成で振動の検出と振動状態の提示を行える。また、加速度提示モード、振動加速度レベル提示モード、振動レベル提示モードにおいては、提示レンジにより、フルカラーLED16の発光色で表す値の範囲や、値の変化に対する発光色の変化の感度を適宜設定することができる。
【0038】
また、提示モードの設定と、加速度提示対象信号や振動加速度レベル算出対象信号や振動レベル算出対象信号や監視対象信号の設定と、可変周波数フィルタ121の周波数特性の設定とを組み合わせて、被検出体9の振動の様々な状態の検出と提示を行うことができる。
【0039】
たとえば、可変周波数フィルタ121の出力を加速度提示対象信号や振動加速度レベル算出対象信号や振動レベル算出対象信号に設定することにより、所望の帯域毎に、加速度や振動加速度レベルや振動レベルや振動の正常範囲内/正常範囲外の検出と提示を振動検出器1に行わせることができる。
【0040】
また、複数の振動検出器1を配列して用いることにより、各振動検出器1のフルカラーLED16の発光色をたよりにした振動源の特定なども行える。
次に、本実施形態に係る振動検出器1を用いて構成した振動解析システムについて説明する。
図4に、振動解析システムの構成を示す。
振動解析システム2は、複数の振動検出器1、カメラ21、カメラ21が撮影した映像を記憶/再生表示するビデオレコーダ/プレイヤ22、解析装置23を備えている。カメラ21としては、高速度撮影を行う高速度カメラや、各画素の輝度変化を検出し、輝度変化のデータを画素の位置および時間の情報と組み合わせて出力するイベントベースカメラを用いることができる。
【0041】
図5aの被検出体9が自動車である場合の例のように、複数の振動検出器1は、被検出体9上に所定の配列で配置する。
この例では、加速度センサ11は振動検出器1の導光体160を設けた面と垂直な方向(自動車の左右方向)の加速度を検出するものとする。
また、カメラ21は、各振動検出器1のフルカラーLED16の発光を撮影できるように配置する。
振動解析システム2は実稼働解析を行うシステムであり、たとえば、実稼働振動モードを確認する場合には、点灯制御部125に加速度提示モードを設定する。また、帯域毎の確認を行う場合には、可変周波数フィルタ121にその帯域を抽出する周波数特性を設定し、点灯制御部125に加速度提示対象信号として可変周波数フィルタ121の出力信号を設定する。帯域毎の確認を行わない場合には、点灯制御部125に加速度提示対象信号として加速度センサ11が出力する加速度信号を設定する。
【0042】
また、カメラ21として高速度カメラ用いるときには点灯制御部125に色相制御モードもしくは輝度制御モードを設定し、カメラ21としてイベントベースカメラを用いるときには点灯制御部125に輝度制御モードを設定する。
そして、被検出体9を実稼働させ、カメラ21で撮影を行い、撮影映像をビデオレコーダ/プレイヤ22に記録する。カメラ21で撮影した撮影映像中の各振動検出器1のフルカラーLED16の発光色は、振動検出器1が配置された位置の撮影時点の加速度を表すので、ビデオレコーダ/プレイヤ22に記録された撮影映像は、被検出体9の各位置における各時点の加速度を表すものとなる。
【0043】
そこで、撮影完了後に、解析装置23において、ビデオレコーダ/プレイヤ22に記録された撮影映像を読み出して被検出体9の実稼働振動モードを解析する。
この解析により、自動車を被検出体9として、図5aに示すように自動車の左側面に複数の振動検出器1を配列し、図5bに示すような自動車の左側面が自動車の左右方向に振動する実稼働振動モードを解析することができる。
ここで、可変周波数フィルタ121で抽出する帯域を確認したい帯域に整合させ、被検出体9を実稼働させ、カメラ21で撮影を行えば、ビデオレコーダ/プレイヤ22を用いて記録した撮影映像をスロー再生することにより、簡易的に、目視による実稼働振動モード解析も行うことができる。
【0044】
このような振動解析システム2において行う実稼働解析は、実稼働状態で励起された固有モードの解析に限定されるものではなく、提示モードの設定と、加速度提示対象信号や振動加速度レベル算出対象信号や振動レベル算出対象信号の設定と、可変周波数フィルタ121の周波数特性の設定とを組み合わせて、振動解析システム2を、被検出体9の振動の各種特性の実稼働解析に適用することができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る振動検出器1を用いて、図6に示す振動解析システム3も構築できる。
この振動解析システム3は、各振動検出器1の出力インタフェース17に解析装置31を接続した構成を備えており、解析装置31は、実稼働状態の被検出体9に固定した各振動検出器1の出力インタフェース17から出力される信号が値を表す検出信号に対して周波数解析などの所要の解析を行って、被検出体9の振動の各種特性を算定する。
【0046】
次に、振動検出器1の加速度センサ11は2軸方向、もしくは、3軸方向の加速度を検出するものとすることもできる。
x、y、zの3軸方向の加速度を検出する加速度センサ11を用いる場合には、図7aに示すように、演算器12とLEDドライバ15とフルカラーLED16のセットを3セット、3軸と1対1に対応するように設け、各セットで対応する軸方向の加速度を処理するようにする。
【0047】
この場合には、選択的に一部の軸に対応するセットだけを稼働できるようにしてもよい。
各セットのフルカラーLED16は、図7bに示すように、振動検出器1の相互に異なる3面上に配置してもよい。このとき、各セットのフルカラーLED16を配置する面を、そのセットに対応する軸と直交する面としてよい。
また、振動検出器1の加速度センサ11は、2軸方向もしくは3軸方向の加速度を合成した加速度を出力するものとしてもよい。
または、加速度センサ11を2軸方向、もしくは、3軸方向の加速度を検出するものとし、振動検出器1において、加速度センサ11が出力する各軸方向の加速度を合成した加速度を対象として処理を行えるようにしてもよい。
たとえば、x、y、zの3軸方向の加速度を検出する加速度センサ11を用いる場合には、図8に示すように、振動検出器1に加速度センサ11が出力する3軸方向の加速度を合成し出力する合成部18と、セレクタ19を設ける。そして、セレクタ19において、加速度センサ11が出力するいずれかの軸方向の加速度か、合成部18の出力を、機能設定部13からの設定に従って選択し演算器12に出力する。そして、演算器12において、加速度センサ11の出力に代えてセレクタ19からの出力を対象として上述の処理を行う。
【0048】
以上の振動検出器1は、点灯制御部125において、さらに、加速度提示対象信号や振動加速度レベルや振動レベルの時間平均や、加速度提示対象信号の絶対値や振動加速度レベルや振動レベルのピーク値や、当該ピーク値の最大値を提示するように、フルカラーLED16の発光色を変化させる動作を選択的に行ってもよい。
【0049】
また、点灯制御部125において、フルカラーLED16の発光色の色相と輝度の双方が変化するように制御してもよい。
また、外部インタフェース14を介して受け取ったオペレータの指示に従って、機能設定部13が、振動加速度レベル演算部122における振動加速度レベル検出の時定数や、振動レベル演算部123における振動レベル検出の時定数や、点灯制御部125の加速度提示対象信号の検出の時定数を変更すると共に、点灯制御部125において、加速度提示モードのとき、設定された時定数で加速度提示対象信号の大きさを検出し、検出した大きさに応じてフルカラーLED16の発光色を変化させてもよい。
【0050】
そして、加速度センサ11が検出する加速度の変化速度が大きい場合には、振動検出器1を、フルカラーLED16の目視による振動状態の認知に用いるときに、フルカラーLED16の発光色の変化の速度が、当該発光色の変化を目視によって良好に認知できるレベルとなるように各時定数を比較的大きく設定することにより、発光色からの振動状態の認知を可能としてよい。
【0051】
また、この場合には、振動検出器1を図4や振動解析システム2や図6に示す振動解析システム3の一部として用いるときに、フルカラーLED16の目視による振動状態の認知に用いるときよりも、各時定数をより小さくして、より精緻な解析を可能としてよい。
【符号の説明】
【0052】
1…振動検出器、2…振動解析システム、9…被検出体、11…加速度センサ、12…演算器、13…機能設定部、14…外部インタフェース、15…LEDドライバ、16…フルカラーLED、17…出力インタフェース、18…合成部、19…セレクタ、21…カメラ、22…ビデオレコーダ/プレイヤ、23…解析装置、121…可変周波数フィルタ、122…振動加速度レベル演算部、123…振動レベル演算部、124…コンパレータ、125…点灯制御部、160…導光体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8