(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081610
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
A01K89/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195457
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘田 悠将
(72)【発明者】
【氏名】松橋 学
(72)【発明者】
【氏名】堀江 博典
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BC19
(57)【要約】
【課題】釣糸の巻き取り操作時における糸擦れによる異音の発生を防止するとともに釣糸が傷付くのを防止する魚釣用スピニングリールを提供する。
【解決手段】釣糸Nが巻回保持されるスプール3に釣糸Nを案内するラインローラ20を備えた魚釣用スピニングリールであって、ラインローラ20は、軸受22,23を介して軸部15に回転可能に設けられたローラ21を備え、ローラ21は、ベール支持部材6側に形成され、釣糸Nをスプール3に案内する釣糸案内部21aと、釣糸案内部21aよりも大径に形成され、釣糸案内部21aに釣糸Nを誘導する釣糸誘導部21bと、釣糸案内部21aと釣糸誘導部21bとの間に傾斜して形成され、軸部15の軸方向において釣糸の移動を規制する釣糸規制部21cと、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの巻き取り操作に連動回転するロータと、
前記ロータの支持アームに取り付けられ、ベールを支持するベール支持部材と、
前記ベール支持部材に支持され、釣糸が巻回保持されるスプールに当該釣糸を案内するラインローラと、を備えた魚釣用スピニングリールであって、
前記ラインローラは、軸受を介して軸部に回転可能に設けられたローラを備え、
前記ローラは、
前記ベール支持部材側に形成され、釣糸を前記スプールに案内する釣糸案内部と、
前記釣糸案内部よりも大径に形成され、前記釣糸案内部に釣糸を誘導する釣糸誘導部と、
前記釣糸案内部と前記釣糸誘導部との間に傾斜して形成され、前記軸部の軸方向において釣糸の移動を規制する釣糸規制部と、を備えることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記軸部の軸心に対する前記釣糸規制部の傾斜角度は35~55°であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記軸部の軸心に対する前記釣糸誘導部の傾斜角度は1~7°であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記釣糸案内部の軸方向の幅は、1mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用スピニングリールは、ハンドルの巻き取り操作に連動回転するロータと、ロータの支持アームに取り付けられ、ベールを支持するベール支持部材と、ベール支持部材に支持され、釣糸が巻回保持されるスプールに当該釣糸を案内するラインローラと、を備えている(特許文献1参照)。ラインローラは、軸受を介して軸部に回転可能に設けられた筒状のローラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラインローラのローラは、釣糸をスプールに案内する釣糸案内部(溝部)を備えている。釣糸案内部の溝幅が大きいと、釣糸を巻き取る際に釣糸が釣糸案内部上を移動し易くなり、釣糸案内部と釣糸とが擦れて異音が発生するという問題がある。一方、釣糸案内部の溝幅を小さくすると、釣糸にテンションが作用した状態からベールをオープンする際、溝部の深さやR形状によっては釣糸案内部と釣糸が擦れて釣糸を傷付けるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、釣糸の巻き取り操作時における糸擦れによる異音の発生を防止するとともに釣糸が傷付くのを防止する魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る魚釣用スピニングリールは、ハンドルの巻き取り操作に連動回転するロータと、前記ロータの支持アームに取り付けられ、ベールを支持するベール支持部材と、前記ベール支持部材に支持され、釣糸が巻回保持されるスプールに当該釣糸を案内するラインローラと、を備えた魚釣用スピニングリールであって、前記ラインローラは、軸受を介して軸部に回転可能に設けられたローラを備え、前記ローラは、前記ベール支持部材側に形成され、釣糸を前記スプールに案内する釣糸案内部と、前記釣糸案内部よりも大径に形成され、前記釣糸案内部に釣糸を誘導する釣糸誘導部と、前記釣糸案内部と前記釣糸誘導部との間に傾斜して形成され、前記軸部の軸方向において釣糸の移動を規制する釣糸規制部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、傾斜する釣糸規制部によって、釣糸案内部の釣糸が軸部の軸方向に大きく移動するのを防ぐことができるため、釣糸の巻き取り操作時における糸擦れによる異音の発生を防止することができる。また、釣糸規制部は、釣糸案内部から釣糸誘導部向けて傾斜しているため、釣糸にテンションが作用した状態でベールを上げたとしても、釣糸が釣糸規制部に引っかかることがなく、釣糸が傷付くのを防ぐことができる。
【0008】
また、前記軸部の軸心に対する前記釣糸規制部の傾斜角度は35~55°であることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、釣糸の太さや材質に関らず様々な釣糸に対してより好適に釣糸の擦れや糸ヨレを防止することができる。
【0010】
また、前記軸部の軸心に対する前記釣糸誘導部の傾斜角度は1~7°であることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、釣糸誘導部を傾斜させることで、釣糸案内部へ釣糸を誘導し易くすることができる。
【0012】
また、前記釣糸案内部の軸方向の幅は、1mm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、釣糸の軸部の軸方向への移動を規制し、釣糸とローラの擦れによる異音をより防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、釣糸の巻き取り操作時における糸擦れによる異音の発生を防止するとともに釣糸が傷付くのを防止する魚釣用スピニングリールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、添付した図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は、適宜省略する。
【0017】
図1に示すように、魚釣用スピニングリールは、リール本体1と、リール本体1を図示しない釣竿のリール取付部に取り付けるための脚部1aと、を備えている。リール本体1内には、ハンドル2の回転操作によって回転駆動される図示しない駆動歯車が設けられている。駆動歯車には、中空のピニオンが噛合している。
【0018】
ピニオン内には、図示しないスプール軸が軸方向に挿通されており、スプール軸の先端には、釣糸が巻回されるスプール3取り付けられている。スプール3の前部には糸巻胴部4が形成されている。ピニオンには、ピニオンと一体に回転するロータ5が取り付けられている。ロータ5には、一対の支持アーム(片側のみ図示)5aが設けられている。一対の支持アーム5aには、一対のベール支持部材6(片側のみ図示)を介してベール7が支持されている。ベール支持部材6とベール7との間にラインローラ20が設けられている。
【0019】
ベール7は、一対のベール支持部材6によって釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置とに移動自在に設けられている。ベール7のうち、ベール支持部材6側の端部にはラインスライダー7aが設けられている。ラインスライダー7aは、ベール7によって拾い上げられた釣糸をラインローラ20に移動する部位である。ラインスライダー7aは、ラインローラ20に向かって次第に拡径し、中空になっている。ラインローラ20の詳細な説明は後記する。
【0020】
前記した駆動歯車には、図示しないオシレーティング機構が係合しており、ハンドル2を回転操作して駆動歯車を回転させることによって、スプール軸(スプール3)を前後動させることができるように構成されている。
【0021】
このような構成を有する魚釣用スピニングリールにおいて、ベール7を釣糸放出位置に移動(回動)させた状態でキャスティングした後、ベール7を釣糸巻き取り位置に移動(回動)させてハンドル2を回転操作すると、ハンドル2の回転運動が、駆動歯車を介してピニオンに伝達され、ピニオンが回転する。また、同時に、ハンドル2の回転運動は、オシレーティング機構を介してスプール軸に伝達され、スプール軸が前後動する。このとき、ロータ5が回転しつつスプール3が前後動することによって、釣糸は、ラインローラ20を介してスプール3の糸巻胴部4に平行かつ均等に巻回される。
【0022】
次に、ラインローラ20の周りの構造について説明する。
図1~3に示すように、ラインローラ20は、軸部15と、ローラ21と、軸受22,23と、支持部材24,25とを備えている。
【0023】
軸部15は、ベール支持部材6とラインスライダー7aとの間においてラインローラ20の各構成部品を締結する締結具である。軸部15の先端は、ベール支持部材6の内部に設けられた受け部9に螺合されている。なお、軸部15は、本実施形態では、ラインスライダー7a側から締結しているが、ベール支持部材6側から締結する構成でもよい。
【0024】
軸部15の外周には、軸部15の軸方向に沿って軸受22,23が並設されている。軸受22とローラ21との間に、筒状の支持部材24が配設されている。また、軸受23とローラ21との間に、筒状の支持部材25が配設されている。支持部材24,25は、ローラ21の内側からローラ21を支持する部材である。ローラ21,支持部材24,25は、軸部15周りに回転可能になっている。また、支持部材24と支持部材25とが突き合わされる部位に、周方向に亘って位置決め溝26が形成されている。
【0025】
ローラ21は、円筒状部材であって、ベール支持部材6とラインスライダー7aとの間に回転可能に配設されている。ローラ21は、外周面に釣糸案内部21aと、釣糸誘導部21bと、釣糸規制部21cとを主に備えている。釣糸案内部21aは、ベール支持部材6側に形成され、釣糸Nをスプール3に案内する部位である。釣糸案内部21aは、軸心Oに対して平行でもよいし、傾斜していてもよい。傾斜させる場合は、釣糸案内部21aがベール支持部材6に向かうにつれて縮径するように傾斜させる。釣糸案内部21aの軸方向の幅(軸方向の長さ)は、適宜設定すればよいが、例えば、1mm以下にすることが好ましい。
【0026】
釣糸誘導部21bは、釣糸案内部21aに対してラインスライダー7a側に配置され、釣糸Nを釣糸案内部21a側に誘導する部位である。釣糸誘導部21bは、釣糸案内部21aよりも大径になっている。釣糸誘導部21bは、ベール支持部材6に向かうにつれて縮径する曲面又は傾斜面、若しくは曲面及び傾斜面の組み合わせになっている。軸心Oに対する釣糸誘導部21bの傾斜角度(釣糸規制部21cに臨む部位の傾斜角度)は適宜設定すればよいが、例えば、1~7°に設定することが好ましい。
【0027】
釣糸規制部21cは、釣糸案内部21aと釣糸誘導部21bの間において傾斜し、軸部15の軸方向において釣糸Nの移動を規制する部位である。釣糸規制部21cは、ベール支持部材6に向かうにつれて縮径するように傾斜している。軸心Oに対する釣糸規制部21cの傾斜角度(
図2の傾斜角度A)は適宜設定すればよいが、例えば、35~55°であることが好ましい。釣糸案内部21aと釣糸規制部21cとの境は傾斜面同士が突き合わされていてもよいし、面取り加工により曲面になっていてもよい。同様に、釣糸誘導部21bと釣糸規制部21cとの境は傾斜面同士が突き合わされていてもよいし、面取り加工により曲面になっていてもよい。
【0028】
図2に示すように、ローラ21の内周面には、軸心O方向に向けて突出する凸部21dが形成されている。凸部21dは、位置決め溝26に嵌め合わされる部位である。凸部21dを設けることで、支持部材24,25に対するローラ21の位置決めを容易に行うことができる。
【0029】
釣糸誘導部21bの端部には、ラインスライダー7a側に延設する延設部21eが形成されている。延設部21eは、ラインスライダー7aの内周面にわずかな隙間をあけて対向している。延設部21eを設けることで、ラインスライダー7aの内部に、水やゴミ、釣糸Nなどが入らないようになっている。
【0030】
釣糸案内部21aの端部には、ベール支持部材6側に延設する立上り部21f、折り返し部21g及び延設部21hが連続して設けられている。立上り部21fは、釣糸案内部21aの端部から径外方向に垂直に立ち上がる部位である。折り返し部21gは、立上り部21fよりもラインスライダー7a側に形成されている。釣糸案内部21a、立上り部21f及び折り返し部21gによって、ベール支持部材6側に凹む凹部21jが形成されている。
【0031】
延設部21hは、折り返し部21gからベール支持部材6側に延設されている。延設部21hは、ベール支持部材6に向かうにつれて拡径するように形成されている。延設部21hは、ベール支持部材6の内周面にわずかな隙間をあけて対向している。延設部21hを設けることで、ベール支持部材6の内部に、水やゴミ、釣糸Nなどが入らないようになっている。
【0032】
以上説明した本実施形態に係る魚釣用スピニングリールによれば、傾斜する釣糸規制部21cによって、釣糸案内部21aの釣糸Nが軸部15の軸方向に大きく移動するのを防ぐことができるため、釣糸Nの巻き取り操作時における糸擦れによる異音の発生を防止することができる。また、釣糸規制部21cは、釣糸誘導部21bから釣糸案内部21a向けて縮径するように傾斜しているため、釣糸Nにテンションが作用した状態で、ベール7を上げたとしても、釣糸Nが釣糸規制部21cに引っかかることがないため、釣糸Nが傷付くのを防ぐことができる。
【0033】
また、軸部15の軸心Oに対する釣糸規制部21cの傾斜角度が35~55°であることにより、釣糸Nの太さや材質に関らず様々な釣糸Nに対してより好適に釣糸Nの擦れや糸ヨレを防止することができる。
【0034】
また、軸部15の軸心Oに対して釣糸誘導部21bが1~7°傾斜しているため、釣糸案内部21aへ釣糸Nを誘導し易くすることができる。また、凹部21jを設けることで、釣糸規制部21cと凹部21jとで釣糸Nの軸方向の移動をより規制することができるとともに、釣糸Nの高さ方向の移動も抑制することができるため、釣糸Nが釣糸案内部21aに収まりやすくなる。
【0035】
また、釣糸案内部21aの軸方向の幅は、1mm以下であるため、釣糸Nの軸方向への移動を規制し、釣糸Nとローラ21の擦れによる異音をより防止することができる。
【0036】
以上、本願発明に係る実施形態について説明した。本発明は、前述の実施形態に限らず各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 リール本体
1a 脚部
2 ハンドル
3 スプール
4 糸巻胴部
5 ロータ
6 ベール支持部材
7 ベール
20 ラインローラ
20a 釣糸案内部
20b 釣糸誘導部
20c 釣糸規制部